(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】荷電粒子照射装置、システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20240415BHJP
H05F 3/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H05F3/04 E
H05F3/00
(21)【出願番号】P 2019222358
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000106900
【氏名又は名称】シシド静電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克幸
(72)【発明者】
【氏名】金 天海
(72)【発明者】
【氏名】高木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】久保 勝也
(72)【発明者】
【氏名】金田 優希
(72)【発明者】
【氏名】山口 晋一
(72)【発明者】
【氏名】日吉 功
(72)【発明者】
【氏名】竹内 隆一
(72)【発明者】
【氏名】永田 秀海
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-086338(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199282(WO,A1)
【文献】特表2018-500723(JP,A)
【文献】特開2016-173686(JP,A)
【文献】特開2013-247069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
H05F 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射装置であって、
荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、
過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、
前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、
前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、
所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、
前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記
機械学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備え
、
前記学習終了条件は、前記機械学習モデルの出力となる照射時間と、前記照射後帯電状態が目標状態又はその近傍状態となったときの前記照射時間との誤差が所定値又は所定割合以下となることである、荷電粒子照射装置。
【請求項2】
前記荷電粒子照射装置は、さらに、
前記照射前帯電状態、目標とする照射後帯電状態、及び前記
機械学習部にて学習された前記機械学習モデルに基づいて、荷電粒子の推定照射時間を生成する、推定部と、
前記推定照射時間に基づいて帯電物に対して荷電粒子を照射する、推定照射部と、
前記終了判定部において前記学習終了条件が満たされた場合は、前記照射部に代えて前記推定照射部を用いて帯電物に対して荷電粒子を照射する、切替部と、を備えた請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項3】
前記照射時間生成部において、
前記帯電物への荷電粒子の照射時間は、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて近似処理を行うことにより算出される、請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項4】
前記近似処理は、目標とする帯電状態へと一次近似又は直線近似することにより行われる、請求項3に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項5】
前記近似処理は、前記照射時間に関する近似処理結果にばらつきをもたせた値を用いて行われる、請求項3に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項6】
前記荷電粒子照射装置は、さらに、
前記帯電物又は環境の変化を検出する、変化検出部と、
前記変化検出部において所定の変化が検出された場合に、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、前記
機械学習部及び前記終了判定部を動作させる、動作開始判定部と、を備える、請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項7】
前記帯電物の前記帯電状態は、前記帯電物の電位である、請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項8】
前記荷電粒子照射装置は、
前記照射後帯電状態が前記照射前帯電状態に対して所定割合以上であると判定された場合に所定のエラー処理を行う、請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項9】
前記エラー処理は、
前記照射後帯電状態が前記照射前帯電状態に対して所定割合以上であると判定された場合に、その割合に応じてポイントを加算し、前記ポイントが所定値以上となった場合に、前記荷電粒子照射装置を停止させる、装置停止処理を含む、請求項
8に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項10】
前記エラー処理は、
前記照射後帯電状態が前記照射前帯電状態に対して所定割合以上であると判定された場合に、判定された各前記帯電状態を、前記機械学習部における機械学習の対象から外す処理を含む、請求項
8に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項11】
前記機械学習モデルは、木構造を利用した学習モデルである、請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
【請求項12】
帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する除電装置であって、
荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、
過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、
前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、
前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、
所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、
前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記
機械学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備え
、
前記学習終了条件は、前記機械学習モデルの出力となる照射時間と、前記照射後帯電状態が目標状態又はその近傍状態となったときの前記照射時間との誤差が所定値又は所定割合以下となることである、除電装置。
【請求項13】
帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射システムであって、
荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、
過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、
前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、
前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、
所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、
前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記
機械学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備え
、
前記学習終了条件は、前記機械学習モデルの出力となる照射時間と、前記照射後帯電状態が目標状態又はその近傍状態となったときの前記照射時間との誤差が所定値又は所定割合以下となることである、荷電粒子照射システム。
【請求項14】
帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射方法であって、
荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出ステップと、
過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成ステップと、
前記照射時間生成ステップにて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射ステップと、
前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出ステップと、
所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成ステップにて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習ステップと、
前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出ステップ、前記照射時間生成ステップ、前記照射ステップ、前記照射後状態検出ステップ、及び前記学習ステップを繰り返し
行う、終了判定ステップと、を備え
、
前記学習終了条件は、前記機械学習モデルの出力となる照射時間と、前記照射後帯電状態が目標状態又はその近傍状態となったときの前記照射時間との誤差が所定値又は所定割合以下となることである、荷電粒子照射方法。
【請求項15】
コンピュータを、
帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射装置であって、
荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、
過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、
前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、
前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、
所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、
前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記
機械学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備え、
前記学習終了条件は、前記機械学習モデルの出力となる照射時間と、前記照射後帯電状態が目標状態又はその近傍状態となったときの前記照射時間との誤差が所定値又は所定割合以下となることである、荷電粒子照射装置、として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、イオン等の荷電粒子を照射する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、イオン等の荷電粒子を照射する技術が普及している。一例として、静電気の除電装置がある。除電装置とは、コロナ放電等により正又は負に帯電したイオンを帯電物に対して照射することで、帯電電荷を中和する装置である(例えば、特許文献1)。除電装置は、電子デバイス、液晶又は半導体等を始めとする様々な製品の製造工程において利用されており、対象製品の歩留まり向上等に寄与している。また、荷電粒子を照射する技術は、除電装置以外でも、半導体プロセスや薄膜プロセス等様々な場面において利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従前、荷電粒子を照射する技術を利用したこの種の装置においては、荷電粒子の照射時間等のパラメータは装置稼働中において固定されていた。そのため、例えば、稼働中において、対象物の帯電状態や環境に変化が生じた場合であっても対応することが出来ず、その結果、対象物を目標とする帯電状態へと適切に遷移させることが出来ないおそれがあった。これにより、例えば、歩留まりの低下等が生じてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述の技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、装置稼働中においても帯電物や環境等の変化に素早く適応し、適応的に荷電粒子を照射することができる荷電粒子照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する荷電粒子照射装置等により解決することができる。
【0007】
すなわち、本発明に係る荷電粒子照射装置は、帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射装置であって、荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備えている。
【0008】
このような構成によれば、逐次的に学習を行いつつ機械学習に十分な回数だけ荷電粒子を照射することで、照射時間を推定する学習済モデルを迅速かつ適応的に生成することができる。すなわち、帯電物や環境等の変化に素早く適応し、適応的に荷電粒子を照射することができる荷電粒子照射装置を提供することができる。これにより、例えば、荷電粒子の照射作業に関し、効率や歩留まりの向上を見込むことができる。
【0009】
前記荷電粒子照射装置は、さらに、前記照射前帯電状態、目標とする照射後帯電状態、及び前記学習部にて学習された前記機械学習モデルに基づいて、荷電粒子の推定照射時間を生成する、推定部と、前記推定照射時間に基づいて帯電物に対して荷電粒子を照射する、推定照射部と、前記終了判定部において前記学習終了条件が満たされた場合は、前記照射部に代えて前記推定照射部を用いて帯電物に対して荷電粒子を照射する、切替部と、を備えてもよい。
【0010】
前記照射時間生成部において、前記帯電物への荷電粒子の照射時間は、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて近似処理を行うことにより算出される、ものであってもよい。
【0011】
前記近似処理は、目標とする帯電状態へと一次近似又は直線近似することにより行われる、ものであってもよい。
【0012】
前記近似処理は、前記照射時間に関する近似処理結果にばらつきをもたせた値を用いて行われる、ものであってもよい。
【0013】
前記学習終了条件は、前記機械学習モデルの出力となる照射時間と、前照射後帯電状態が目標状態又はその近傍状態となったときの前記照射時間との誤差が所定値又は所定割合以下となることであってもよい。
【0014】
前記荷電粒子照射装置は、さらに、前記帯電物又は環境の変化を検出する、変化検出部と、前記変化検出部において所定の変化が検出された場合に、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、前記学習部及び前記終了判定部を動作させる、動作開始判定部と、を備える、ものであってもよい。
【0015】
前記帯電物の前記帯電状態は、前記帯電物の電位であってもよい。
【0016】
前記荷電粒子照射装置は、前記照射後帯電状態が前記照射前帯電状態に対して所定割合以上であると判定された場合に所定のエラー処理を行う、ものであってもよい。
【0017】
前記エラー処理は、前記照射後帯電状態が前記照射前帯電状態に対して所定割合以上であると判定された場合に、その割合に応じてポイントを加算し、前記ポイントが所定値以上となった場合に、前記荷電粒子照射装置を停止させる、装置停止処理を含む、ものであってもよい。
【0018】
前記エラー処理は、前記照射後帯電状態が前記照射前帯電状態に対して所定割合以上であると判定された場合に、判定された各前記帯電状態を、前記機械学習部における機械学習の対象から外す処理を含む、ものであってもよい。
【0019】
前記機械学習モデルは、木構造を利用した学習モデルであってもよい。
【0020】
本発明は除電装置として観念することができる。すなわち、本発明に係る除電装置は、帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する除電装置であって、荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備えている。
【0021】
本発明は荷電粒子照射システムとして観念することができる。すなわち、本発明に係る荷電粒子照射システムは、帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射システムであって、荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備えている。
【0022】
本発明は荷電粒子照射方法としても観念することができる。すなわち、本発明に係る荷電粒子照射方法は、帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射方法であって、荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出ステップと、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成ステップと、前記照射時間生成ステップにて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射ステップと、前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出ステップと、所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成ステップにて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習ステップと、前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出ステップ、前記照射時間生成ステップ、前記照射ステップ、前記照射後状態検出ステップ、及び前記学習ステップを繰り返し動作させる、終了判定ステップと、を備えている。
【0023】
本発明はコンピュータプログラムとして観念することができる。すなわち、本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、帯電物に対して荷電粒子を所定の照射時間だけ照射する荷電粒子照射装置であって、荷電粒子を照射する前の帯電物の帯電状態である照射前帯電状態を検出する、照射前状態検出部と、過去の荷電粒子の照射時間とその照射後の帯電物の帯電状態に基づいて、前記帯電物への荷電粒子の照射時間を生成する、照射時間生成部と、前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間に基づいて、前記照射前帯電状態にある前記帯電物に対して荷電粒子を照射する、照射部と、前記荷電粒子が照射された後の前記帯電物の帯電状態である照射後帯電状態を検出する、照射後状態検出部と、所定の機械学習モデルに対して、前記照射前帯電状態、前記照射後帯電状態、及び前記照射時間生成部にて生成された前記照射時間の対応関係を学習させる、機械学習部と、前記機械学習モデルが所定の学習終了条件を満たすまで、前記照射前状態検出部、前記照射時間生成部、前記照射部、前記照射後状態検出部、及び前記学習部を繰り返し動作させる、終了判定部と、を備えた荷電粒子照射装置、として機能させるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、装置稼働中においても帯電物や環境等の変化に素早く適応し、適応的に荷電粒子を照射することができる荷電粒子照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】
図2は、除電装置の動作に関するゼネラルフローチャートである。
【
図3】
図3は、適応学習の詳細フローチャートである。
【
図4】
図4は、学習処理に関する詳細フローチャートである。
【
図5】
図5は、近似計算について説明する概念図である。
【
図6】
図6は、誤差率演算処理の詳細フローチャートである。
【
図7】
図7は、適応学習処理の過程の一例について示す説明図である。
【
図8】
図8は、学習済モデルに基づく除電処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、学習収束までのデータ数について示す説明図である。
【
図10】
図10は、最初に学習させる入力データと学習収束までのデータ数との関係性について示した説明図である。
【
図11】
図11は、初期電位の切替と誤差率の遷移との関係性について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の一形態について添付の
図1~
図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
(1.第1の実施形態)
本実施形態においては、荷電粒子照射装置の一例として、対象物の静電気等を除電する除電装置100を例に説明する。
【0028】
(1.1 除電装置の構成)
図1を参照しつつ、本実施形態に係る除電装置100の構成について説明する。
図1は除電装置100のブロック図である。同図から明らかな通り、除電装置100は、コロナ放電電極(針電極)6にて発生した正又は負の荷電粒子、すなわちイオンを除電対象物9に対して圧縮空気ノズル5からの圧縮空気により吹き付けて照射することにより、除電対象物9を電気的に中和し除電する。なお、除電対象物はベルトコンベア等により一定速度又は間欠的に搬送され順に除電処理が施される。
【0029】
除電装置100は、制御部1、電源制御ユニット2、高電圧電源3、異常出力物4、圧縮空気ノズル5、コロナ放電電極6、初期電位計測用の表面電位計7、及び除電処理後の残留電位計測用の表面電位計8から構成される。
【0030】
制御部1は、CPU等から成り、後述の動作を実現するプログラムの実行を行う。制御部1は、表面電位計7、8からのセンサ出力を元に、電源制御ユニット2へと提供する印加電圧に関する情報、例えば、電圧のデューティ比等を生成する。また、制御部1は、表面電位計7、8の出力から所定の異常を検出した場合には、異常出力部4へと出力を行う。
【0031】
電源制御ユニット2は、制御部1からの指令に応じて高電圧電源3を制御する。高電圧電源3は、制御部1において生成された印加電圧に応じて、コロナ放電電極6へと電圧印加を行う。コロナ放電電極6の近傍には、圧縮空気ノズル5が設けられており、この圧縮空気ノズル6からの圧縮空気が除電対象物9に吹き付けられることにより、コロナ放電電極(針電極)6にて発生した正又は負の荷電粒子が除電対象物9へと提供される。
【0032】
なお、除電装置100の構成は、本実施形態に記載されたものに限定されない。従って、例えば、各構成をネットワークを介して接続したり、複数の構成を所定の装置等に分離又は統合してもよい。また、制御部1で行われる動作の一部、例えば、機械学習処理等を他の装置等で実行してもよい。
【0033】
(1.2 除電装置の動作)
次に、
図2~
図8を参照しつつ、除電装置100の動作について説明する。
【0034】
図2は、除電装置100の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、除電装置100は、除電対象物9が除電装置100の荷電粒子照射領域において適切に検出されるまで待機する処理を行う(S1NO)。この状態において、荷電粒子照射領域において除電対象物9が検出されると(S1YES)、適応学習の要否判定処理が行われる(S2)。
【0035】
適応学習の要否判定処理(S2)は、除電対象物9や環境に変化があったか否かを判定する処理であり、本実施形態においては、除電対象物9の電位を計測し、当該初期電位が既に学習済の初期電位又はその近傍値か否かを判定する処理である。
【0036】
適応学習の要否判定処理の結果、適応学習が必要でないと判定される場合(S3NO)、既存の学習済モデルに基づく荷電粒子の照射処理が行われる(S7)。一方、適応学習が必要と判定される場合(S3YES)、後述の適応学習を行った後(S5)、獲得された学習済モデルに基づく荷電粒子の照射処理を行う(S7)。これらの処理の後、再び、一連の処理が繰り返される(S1~S7)。
【0037】
(1.2.1 適応学習処理)
図3~
図7を参照しつつ、適応学習(S5)の詳細について説明する。
【0038】
図3は、適応学習の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、除電装置100は、除電対象物9が除電装置100の荷電粒子照射領域において適切に検出されるまで待機する処理を行う(S51NO)。この状態において、荷電粒子照射領域において除電対象物9が検出されると(S51YES)、表面電位計7を用いて除電対象物9の初期電位を検出する処理が行われる(S52)。
【0039】
この初期電位を検出した後、初回については所定の適当な照射時間だけ、その後については近似計算(S68)に基づいて算出された照射時間だけ、除電対象物9へと荷電粒子を照射する処理が行われる(S53)。この照射処理の後、表面電位計8を用いて残留電位を検出する処理が行われる(S55)。
【0040】
残留電位の検出処理の後、残留電位が正常値であるか否かが判定される(S57)。より詳細には、残留電位が初期電位の20%以上である場合(S57NO)、正常値でないと判定する。
【0041】
残留電位が正常値でない場合(S57NO)、機械的異常等の異常の可能性を示唆する注意ポイントの加算処理が行われる(S64)。より詳細には、残留電位が初期電位の20%以上35%未満である場合、注意ポイントを1だけ加算する。残留電位が初期電位の35%以上50%未満である場合、注意ポイントを2だけ加算する。残留電位が初期電位の50%以上である場合、注意ポイントを3だけ加算する。
【0042】
その後、注意ポイントが所定値以上、例えば、5ポイント以上であるか否かが判定される(S65)。注意ポイントが所定値以上でない場合(S65NO)、学習処理等は行わず、再び開始状態(S51)へと戻り一連の処理が行われる。一方、注意ポイントが所定値以上である場合(S65YES)、異常状態であるとして除電装置100の制御を停止する処理を行い、また、異常出力部4へとエラー信号を送信し、異常出力部4は、異常である旨を例えば表示装置や音声出力装置等の図示しない接続機器へと出力する(S66)。
【0043】
一方、残留電位が正常値である場合(S57YES)、初期電位及び残留電位を入力として荷電粒子の推定照射時間を出力する学習済モデルを得るための学習処理を行う(S59)。
【0044】
図4を参照しつつ、除電装置100において行われる学習処理の詳細について説明する。
【0045】
図4は、制御部1において行われる学習処理(S59)に関する詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、学習処理が開始すると、制御部1の記憶部から学習モデルのパラメータを読み出す処理が行われる(S591)。ここで、本実施形態においては、機械学習アルゴリズムとして、学習木(例として、特開2016-173686を参照)が採用される。
【0046】
学習木を用いて学習処理を行う際には、入力されるデータが、分岐条件に応じて階層的に分割された各状態空間に対応付けられ、蓄積されていくこととなる。推定出力は、学習後に各状態空間に内包される各データに対応する出力値又は出力ベクトルの相加平均をとることにより算出される。このような構成により、学習木は、逐次的な学習(オンライン学習)に好適である。
【0047】
階層数、次元又は分割数等の学習モデルのパラメータを読み出す処理が終了すると、学習モデルへと初期電位と残留電位を入力する処理が行われる(S592)。これらの入力が行われると、初期電位と残留電位に基づいて、始端ノードから末端ノードまで対応するノードを特定して経路を特定し、当該経路上の各ノードに対して入出力のデータセットを関連付けて記憶させる処理が行われる(SS593)。その後、学習処理は終了する。
【0048】
図3に戻り、学習処理(S59)が完了すると、残留電位が目標電位(0[V])となっているか又は十分に近接しているか否かが判定される(S60)。残留電位が目標電位となっていないか又は十分に近接していないと判定された場合(S60NO)、次の時間ステップで用いる照射時間を所定の近似計算により算出する処理がなされる(S68)。
【0049】
図5は、近似計算について説明する概念図である。同図から明らかな通り、除電装置100は、処理の開始時には、適当に定められた照射時間t_1だけ荷電粒子の照射を行う(S53)。この照射の結果、所定の電位V
resid_1が残留電位として計測されたとすると(S55)、この残留電位V
resid_1から目標電位である0[V]となる近似照射時間t
app_1が一次近似により算出される。
【0050】
制御部1は、この近似照射時間tapp_1に±20%程度のばらつきを加算したt_2を次の時間ステップにおける照射時間として算出する(S68)。このような処理(S51~S60、S68)を繰り返すことにより、後述するように、少ない学習対象データ数で迅速に学習を収束させることができる。
【0051】
以上の学習処理(S59)と近似計算処理(S68)を含む一連の処理を繰り返した末(S60NO)、残留電位が目標値と一致するか目標値に十分に近接する状態に至った場合(S60YES)、続いて誤差率演算処理が行われる(S62)。
【0052】
図6は、誤差率演算処理(S62)の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、最新の学習済モデルを読み出す処理が行われる(S621)。読み出し処理の後、学習済モデルに対して初期電位と目標(残留)電位を入力する処理を行い(S622)、当該初期電位と目標電位に対応する一連のノードから成る経路の特定処理が行われる(S624)。
【0053】
その後、制御部1は、経路上の一連のノードから出力に利用する出力ノードを特定する処理を行い(S625)、照射時間の推定処理を行う(S627)。この推定照射時間と、残留電位が目標値となる場合の正解照射時間に基づいて、誤差率[%]が算出される。すなわち、誤差率は、(推定照射時間-正解照射時間)/正解照射時間×100により算出される。誤差率の算出の後、処理は終了する。
【0054】
図3に戻り、誤差率が所定値以上、例えば、10%より大きい場合(S63NO)、再び、学習処理(S59)と近似計算処理(S68)を含む一連の処理を繰り返す処理を行う。一方、誤差率が所定値以下(S63YES)、例えば、10%以下となった場合、処理は終了する。
【0055】
図7は、以上述べた一連の適応学習処理の過程の一例について示す説明図である。同図の例にあっては、初期電位が20[V]の除電対象物9を目標電位である0[V]へと遷移させることを目的としている。
【0056】
まず、時間ステップ1において、除電装置100は、適当な照射時間(=0.274[s])にて除電対象物9に対して照射を行う。このときの残留電位が0.8[V]であるので、当該残留電位に基づいて最小二乗法による一次近似を行い、近似照射時間(=0.3[s])が算出される。このときの初期電位、残留電位、照射時間の値を用いて学習モデルについて機械学習を行い、その後、学習済モデルに対して初期電位を20[V]、目標(残留)電位を0[V]として推定処理を行わせると、推定照射時間は0.274として算出される。
【0057】
次に、時間ステップ2において、除電装置100は、ステップ1の近似照射時間(=0.3)に±20%程度のばらつき値、すなわち、同例にあっては20%の値(=0.06)を加算した新たな照射時間(=0.36[s])にて除電対象物9に対して照射を行う。このときの残留電位が-0.5[V]であるので、当該残留電位に基づいて最小二乗法による一次近似を行い、近似照射時間(=0.28[s])が算出される。このときの初期電位、残留電位、照射時間の値を用いて学習モデルについて機械学習を行い、その後、学習済モデルに対して初期電位を20[V]、目標電位を0[V]として推定処理を行わせると、推定照射時間は0.337として算出される。
【0058】
さらに、時間ステップ3において、除電装置100は、ステップ2の近似照射時間(=0.28)に-14%程度の値(=-0.04)を加算した新たな照射時間(=0.24[s])にて除電対象物9に対して照射を行う。このときの残留電位が0[V]であるので、目標電位へと到達しものと判定される。このときの初期電位、残留電位、照射時間の値を用いて学習モデルについて機械学習を行い、その後、学習済モデルに対して初期電位を20[V]、目標電位を0[V]として推定処理を行わせると、推定照射時間は0.25として算出される。このときの誤差率は(0.25-0.24)/0.24×100より、4.2%と算出され、すなわち、時間ステップ3において学習は収束する。
【0059】
上述の構成によれば、近似計算結果を利用して学習データを収集するので探索効率を向上させることができ、これにより、迅速な学習の収束を期待することができる。
【0060】
また、上述の構成によれば、近似処理の過程に所定のばらつきを持たせて取得されたデータに基づいて学習を進めるので、探索効率をさらに向上させ、それにより、さらに迅速な学習の収束を期待することができる。
【0061】
(1.2.2 学習済モデルに基づく除電処理)
【0062】
図8を参照しつつ、学習済モデルに基づく荷電粒子の照射処理(S7)について説明する。
図8は、学習済モデルに基づく除電処理のフローチャートである。
【0063】
処理が開始すると、学習済モデルの読出処理が行われる(S71)。この読出処理の後、除電対象物9の初期電位の計測処理が行われる(S72)。計測処理の後、計測した初期電位と目標電位を学習済モデルへと入力する処理が行われる(S73)。これにより、対応する一連のノードから成る経路が特定される(S74)。
【0064】
この経路を成す一連のノードから出力を生成する出力ノードを特定する処理を行い(S75)、当該出力ノードから照射時間の推定処理が行われる(S77)。その後、この推定照射時間に基づく荷電粒子の照射処理を行い(S79)、処理は終了する。
【0065】
上述の構成によれば、装置稼働中においても帯電物や環境等の変化に素早く適応し、適応的に荷電粒子を照射することができる荷電粒子照射装置を提供することができる。
【0066】
(1.3 実験結果)
次に、
図9~
図11を参照しつつ、本実施形態に係る除電装置100を用いた各種の実験結果について説明する。
【0067】
図9は、学習収束までのデータ数について示す説明図である。
図9には、通常の線形近似のみを利用した場合の学習モデルにおける学習収束までのデータ数と、線形近似結果に±20%のばらつきを持たせた場合の学習モデルにおける学習収束までのデータ数が、初期電位を複数変化させて学習させる場合と、初期電位を20[V]に固定して学習させる場合とに分けて示されている。
【0068】
同図から明らかな通り、初期電位を複数変化させる場合、線形近似のみを用いた場合には学習収束までに99個のデータを要したのに対し、線形近似結果に±20%のばらつきを持たせた場合には42個のデータしか要しなかった。同様に、初期電位を20[V]のみとする場合も、線形近似のみを用いた場合には学習収束までに43個のデータを要したのに対し、線形近似結果に±20%のばらつきを持たせた場合には14個のデータしか要しなかった。
【0069】
すなわち、いずれの場合であっても、通常の線形近似のみを行う場合よりも、線形近似結果に±20%のばらつきを持たせた場合の方が、少ないデータ数で学習が収束することが確認される。
【0070】
なお、ばらつきの値は±20%に限定される訳ではなく、±10%、±5%程度と調整することができる。
【0071】
図10は、目標電位を0[V]としたときの、最初に学習させる入力データと、学習収束までのデータ数との関係性について示した説明図である。同図から明らかな通り、初期電位を20[V]としたとき、学習処理の当初に残留電位が15[V]となるデータを学習させた場合の収束までのデータ数は26個、学習処理の当初に残留電位が10[V]となるデータを学習させた場合の収束までのデータ数は14個、学習処理の当初に残留電位が5[V]となるデータを学習させた場合の収束までのデータ数は12個、学習処理の当初に残留電位が1[V]となるデータを学習させた場合の収束までのデータ数は3個であった。
【0072】
すなわち、この結果より、学習当初から目標電位と近い残留電位のデータを学習させた方が学習収束までのデータ数が少なくなること、すなわち、迅速に学習が収束していることが確認される。
【0073】
図11は、初期電位の切替と誤差率の遷移との関係性について示す説明図である。同図から明らかな通り、当初、初期電位20[V]を目標電位0[V]とするよう学習を行うと、学習の進行に伴い誤差率が低下する。次に、時間ステップ28近傍において、初期電位を10[V]へと切り替えると、一旦誤差率は40%程度まで大きくなるものの、再び、学習の進行に伴い誤差率が低下する。さらに、時間ステップ65近傍において、初期電位を5[V]へと切り替えると、一旦誤差率は65%程度まで大きくなるものの、学習の進行に伴い急激に誤差率が低下する。
【0074】
すなわち、この結果より、除電装置100の動作中に除電対象物9の電位に変化が生じた場合であっても、速やかに誤差率を小さくするような学習がなされることが確認される。また、一旦学習を行うことで後の追加学習時に迅速な学習を期待することもできる。
【0075】
(2.変形例)
上述の実施形態においては、機械学習モデルとして学習木を利用したが、本発明はこのような構成に限定されない。従って、例えば、ニューラルネットワークやサポートベクターマシーン(SVM)等の他の学習モデルを利用してもよい。
【0076】
上述の実施形態においては、近似処理の例として一次近似を利用したが、本発明はこのような構成に限定されない。従って、例えば、指数関数等を利用して近似を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、少なくとも荷電粒子照射装置等を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 制御部
2 電源制御ユニット
3 高電力電源
4 異常出力部
5 圧縮空気ノズル
6 コロナ放電電極
7 表面電位計
8 表面電位計
9 除電対象物
100 除電装置