(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240415BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240415BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240415BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240415BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
C09J4/02
C09J11/06
C09J175/14
(21)【出願番号】P 2022517245
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2021000744
(87)【国際公開番号】W WO2021194072
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035829
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・グ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・スン・リム
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053212(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0031033(KR,A)
【文献】特開2002-241732(JP,A)
【文献】特開2015-147833(JP,A)
【文献】特開2007-009135(JP,A)
【文献】特開2018-165305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一面に粘着剤層が備えられた表面保護フィルムにおいて、
前記粘着剤層は、末端や側鎖に光反応性基を有するウレタン系樹脂;単官能(メタ)アクリレート単量体;末端に2個以上の光反応性基を有する架橋剤;イソシアネート系硬化剤;硬化遅延剤;および光開始剤;を含み、
前記硬化遅延剤は、カルボキシ基を有する単量体であり、
前記硬化遅延剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して0.1重量部~10重量部であり、
溶剤;を含まない粘着剤組成物の硬化物である、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記ウレタン系樹脂は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを反応させて得られるものであり、前記ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記イソシアネート系硬化剤は、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つである、請求項
2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記単官能(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して50重量部~200重量部である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記架橋剤は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、およびこれらの混合物からなる群より選択された1つである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記架橋剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して5重量部~50重量部である、請求項1または5に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
前記光開始剤は、前記ウレタン系樹脂、前記単官能(メタ)アクリレート単量体、前記架橋剤、および前記硬化遅延剤の総和100重量部に対して0.1重量部~5重量部含まれるものである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含むものである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
前記粘着剤層は、厚さが10μm~100μmである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項10】
前記粘着剤組成物は、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムのヘイズが、2.0%以下のものである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
前記表面保護フィルムの、ガラスに対する180゜の剥離角度および1.8m/minの剥離速度で測定した剥離力が、0.5gf/in~6gf/inである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項12】
前記粘着剤組成物は、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムの全光線透過率が、85%以上のものである、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項13】
前記基材フィルムの他面、前記基材フィルムの一面と前記粘着剤層との間の少なくとも1箇所に帯電防止層がさらに備えられた、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年3月24日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0035829号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。本発明は、表面保護フィルムに関し、具体的には、硬化遅延剤を含むことで、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物の安定性を向上させると同時に光特性を向上させた表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)は自発光型表示装置であって、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)とは異なり、別の光源を必要としないので軽量薄型で製造可能である。また、有機発光ダイオードは、低電圧駆動によって消費電力の面で有利であるだけでなく、応答速度、視野角およびコントラスト比(contrast ratio)にも優れていて、次世代ディスプレイとして研究されている。
【0003】
前記有機発光ダイオードは、不純物、酸素および水分に非常に弱く、外部露出または水分、酸素の浸透によって特性が劣化しやすく、寿命が短縮する問題がある。このような問題を解決するために、有機発光電子装置の内部に酸素、水分などが流入するのを防止するための封止層(Encapsulation)が要求される。
【0004】
前記封止層は、製造過程または製造された後に封止層を保護するための保護フィルムを含むが、保護フィルムは、封止層との貼り合わせ後に除去され、除去後、封止層の損傷と残渣があってはならないので、低い剥離力と高い残留粘着力が要求される。また、前記保護フィルムは一般的に溶剤を用いて製造されており、溶剤が揮発する工程で気泡が発生したり、レベリング(Leveling)の低下が発生したりし、前記溶剤を処理する過程で生じる環境問題が存在していた。
【0005】
さらに、硬化剤および触媒が一緒に含まれた組成物は、硬化前まで前記組成物の反応が進行しないように硬化遅延剤を使用することが通常である。具体的には、組成物が配合された後に基材フィルムなどへのコーティングが完了する前まで時間を要するので、このために硬化遅延剤を使用するのである。しかし、無溶剤型の粘着剤組成物の場合、通常使用される硬化遅延剤であるアセチルアセトンを溶媒として使用することが不可能な問題があった。
【0006】
したがって、前記溶剤を含まなくても粘着剤層を形成するための粘着剤組成物の安定性を向上させることができる無溶剤タイプの表面保護フィルムに対する開発が急がれるのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が達成しようとする技術的課題は、粘着剤層を製造するための粘着剤組成物の安定性を向上させ、光特性を向上させた表面保護フィルムを提供することである。
ただし、本発明が解決しようとする課題は上記の課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様は、基材フィルムの一面に粘着剤層が備えられた表面保護フィルムにおいて、前記粘着剤層は、末端や側鎖に光反応性基を有するウレタン系樹脂;単官能(メタ)アクリレート単量体;末端に2個以上の光反応性基を有する架橋剤;硬化遅延剤;および光開始剤;を含み、溶剤;を含まない粘着剤組成物の硬化物である、表面保護フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施態様である表面保護フィルムは、光特性を向上させ、粘着剤層を製造するための粘着剤組成物の安定性を向上させることができる。
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、言及されていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0011】
本願明細書全体において、単位「重量部」は、各成分間の重量比率を意味することができる。
本願明細書全体において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを通称する意味で使われる。
本願明細書全体において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびB、またはAまたはB」を意味する。
【0012】
本願明細書全体において、用語「単量体単位(monomer unit)」は、重合体内で単量体が反応した形態を意味することができ、具体的には、その単量体が重合反応を経て、その重合体の骨格、例えば、主鎖または側鎖を形成している形態を意味することができる。
【0013】
本願明細書全体において、ある化合物の「重量平均分子量」および「数平均分子量」は、その化合物の分子量と分子量分布を利用して計算される。具体的には、1mlのガラス瓶に、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れて、化合物の濃度が1wt%であるサンプル試料を用意し、標準試料(ポリスチレン、polystyrene)とサンプル試料を、フィルタ(ポアサイズが0.45μm)を通して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して化合物の分子量および分子量分布を得ることができる。この時、測定機器としてInfinity II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0014】
本願明細書全体において、「ガラス転移温度(Glass Temperature、Tg)」は、示差走査熱計量法(Differnetial Scanning Analysis、DSC)を用いて測定することができ、具体的には、DSC(Differential Scanning Calorimeter、DSC-STAR3、METTLER TOLEDO社)を用いて、試料を-60℃~150℃の温度範囲で加熱速度5℃/minに昇温し、前記区間で2回(cycle)の実験を進行させて、熱変化量がある地点として作成されたDSC曲線の中間点を測定してガラス転移温度を求めることができる。
【0015】
本願明細書全体において、ウェッティング性(wetting)は、粘着剤が被着剤の表面全部に対してウェッティングされるのにかかる時間を意味することができる。
本願明細書全体において、「無溶剤型」は、溶剤を含まないことを意味することができる。
【0016】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の一実施態様は、基材フィルムの一面に粘着剤層が備えられた表面保護フィルムにおいて、前記粘着剤層は、末端や側鎖に光反応性基を有するウレタン系樹脂;単官能(メタ)アクリレート単量体;末端に2個以上の光反応性基を有する架橋剤;硬化遅延剤;および光開始剤;を含み、溶剤;を含まない粘着剤組成物の硬化物である、表面保護フィルムを提供する。
【0017】
本発明の一実施態様である表面保護フィルムは、光特性を向上させ、粘着剤層を製造するための粘着剤組成物の安定性を向上させることができ、溶剤を使用しないので溶剤を揮発する工程で気泡の発生及びレベリング(Leveling)の低下を防止することができ、光硬化方式を利用するウレタン樹脂を用いて生産性を向上させることができる。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルム、またはポリイミドフィルムなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。より具体的には、前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることが好ましい。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、前記基材フィルムの厚さは、10μm以上150μm以下であってもよい。具体的には、前記基材フィルムの厚さは、50μm以上125μm以下または50μm以上100μm以下であってもよい。上述した範囲で前記基材フィルムの厚さを調節することにより、有機発光素子の封止材層に粘着剤層が形成された基材層を貼着する時に基材フィルムの変形を防止することができ、前記基材フィルムの貼着時の不良を防止することができる。
【0020】
本発明の一実施態様によれば、前記基材フィルムには、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、またはスパッタエッチング処理などの適切な粘着処理が行われていてもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、前記ウレタン系樹脂は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤とを反応させて得られるものであってもよい。具体的には、前記ウレタン系樹脂は、ポリオールとイソシアネート系硬化剤を含有する組成物とを反応させて形成することができる。前記ポリオールは、1または2以上のポリオールを混合して使用することができ、前記イソシアネート系硬化剤は、単官能または多官能のイソシアネート系硬化剤であってもよい。
本明細書において、多官能の意味は、官能基が2以上結合したものを意味することができる。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、前記ウレタン系樹脂は、主鎖末端や側鎖に光反応性基を有するものであってもよい。具体的には、前記ウレタン系樹脂は、主鎖末端や側鎖にヒドロキシ基がある単官能アクリレートでキャッピング(capping)されているものであってもよい。より具体的には、前記ウレタン系樹脂は、主鎖末端や側鎖に2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)または4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)でキャッピング(capping)されたものが好ましい。上述のように、前記ウレタン系樹脂は、主鎖末端や側鎖に光反応性基を含むことにより、容易に光硬化反応を行うことができる。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、2個以上のヒドロキシ基を有する有機化合物を称するもので、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、またはポリカプロラクトンであってもよいが、これに限定されない。
【0024】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、イソシアネート(NCO)基を含まないものであってもよい。具体的には、前記ポリオールは、反応性アミノ基と反応する追加の官能基を含まないことが好ましい。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、末端にヒドロキシ基を含有する化合物、または鎖にわたって分布した側面ヒドロキシ基を含む化合物であってもよい。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、分子あたり2~10個のヒドロキシ基を有するものであってもよい。具体的には、前記ポリオールは、2~6個のヒドロキシ基を有するものが好ましい。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの数平均分子量は、500g/mol以上100,000g/mol以下であってもよい。具体的には、前記ポリオールの数平均分子量は、1,000g/mol以上80,000g/mol以下、10,000g/mol以上70,000g/mol以下、30,000g/mol以上60,000g/mol以下、または40,000g/mol以上50,000g/mol以下であってもよい。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、(ポリ)エチレングリコール;(ポリ)プロピレングリコール;ジエチレングリコール;1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD);2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール;1-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ブチレングリコール;1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(BEPD);ペンタンジオール;2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ペンタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;ヘキシレングリコール;1,6-ヘキサンジオール;1,4-シクロヘキサンジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール;3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-プロパノエート(ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート(HPHP));2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(TMPD);水素化ビスフェノールA;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール;これらのうち任意のもののエトキシル化および/またはプロポキシル化形態(例えば、プロポキシル化グリセロール);およびこれらの混合物であってもよい。具体的には、前記ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つであってもよい。上述したものから前記ポリオールを選択することにより、前記ウレタン系樹脂の基本的な物性を調節することができる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤は、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つであってもよい。具体的には、前記イソシアネート系硬化剤は、ポリオールと反応してウレタン系樹脂(プレポリマー)を形成する、イソシアネート基を含む有機化合物を指すものである。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤は、分子あたり平均6個以下のイソシアネート基、好ましくは2以上5以下、より好ましくは2以上4以下のイソシアネート基を含むことができるが、これに限定されない。より具体的には、前記イソシアネート系硬化剤は、2個のイソシアネート基を含有したジイソシアネート化合物であってもよい。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記ウレタン系樹脂を形成するのに使用されるイソシアネート系硬化剤は、ジイソシアネート化合物のオリゴマー、ポリマー、環状単量体、または通常の脂肪族または芳香族ジイソシアネート化合物から選択されてもよいし、商用化されたジイソシアネート化合物のオリゴマーなどを入手して使用することができる。より具体的には、エチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネート、ペルヒドロ-2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ペルヒドロ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-スチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、トルエン2,4-ジイソシアネート、トルエン2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート(MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などを使用することができる。上述したものから前記イソシアネート系硬化剤を選択することにより、前記ウレタン系樹脂の物性を調節することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層は、単官能(メタ)アクリレート単量体を含む。
本発明の一実施態様によれば、前記単官能(メタ)アクリレート単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせから構成された群より選択された1つであってもよい。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記単官能(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して50重量部以上200重量部以下であってもよい。具体的には、前記単官能(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して60重量部~190重量部、70重量部~180重量部、80重量部~170重量部、90重量部~160重量部、または100重量部~150重量部であってもよい。上述した範囲で前記単官能(メタ)アクリレート単量体の含有量を調節することにより、粘着剤層によって実現される粘着力を調節することができる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記架橋剤は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、およびこれらの混合物からなる群より選択された1つであってもよい。具体的には、前記架橋剤は、光硬化可能な多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましく使用できる。より具体的には、前記多官能性(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート、または9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのような2官能性アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレート、またはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、またはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレート;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物)などの6官能型アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独または2種以上混合して使用できる。上述したものから前記架橋剤を選択することにより、鉛筆硬度および濡れ性(ウェッティング性)を向上させることができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記架橋剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して5重量部以上50重量部以下であってもよい。具体的には、前記架橋剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して6重量部以上40重量部以下、7重量部以上30重量部以下、または8重量部以上20重量部以下であってもよい。上述した範囲内で前記架橋剤の含有量を調節することにより、鉛筆硬度および濡れ性(ウェッティング性)を向上させることができる。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層は、硬化遅延剤を含む。上述のように前記粘着剤層を製造するために混合される粘着剤組成物に前記硬化遅延剤が含まれることにより、粘着剤組成物の安定性を向上させ、硬化反応を遅延させて前記基材フィルムに安定的なコーティングを形成することができる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化遅延剤は、カルボキシ基を有する単量体であってもよい。より具体的には、前記硬化遅延剤は、アクリル酸であってもよい。上述のように前記粘着剤層を製造するために混合される粘着剤組成物に含まれる前記硬化遅延剤がカルボキシ基を有する単量体として選択されることにより、粘着剤組成物の安定性を向上させ、硬化反応を遅延させて前記基材フィルムに安定的なコーティングを形成することができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記硬化遅延剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して0.1重量部~10重量部であってもよい。具体的には、前記硬化遅延剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して0.2重量部~8重量部、0.3重量部~6重量部、または0.4重量部~5重量部であってもよい。上述した範囲で前記硬化遅延剤の含有量を調節することにより、硬化反応の遅延度を向上させることができ、前記粘着剤組成物の安定性を向上させることができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層は、イソシアネート系硬化剤を含むことができる。前記イソシアネート系硬化剤は、上述したウレタン系樹脂の重合過程で使用される硬化剤と別途に添加されるもので、前記イソシアネート系硬化剤は、前記ウレタン系樹脂の重合過程で使用される硬化剤と同一または異なっていてもよい。上述のように前記粘着剤層がイソシアネート系硬化剤を含むことにより、粘着剤層のヒドロキシ基および基材フィルムのヒドロキシ基と反応して粘着剤層間の架橋度を向上させると同時に、粘着剤層と基材フィルム層との間の結合力を向上させることができる。さらに、イソシアネート系硬化剤を含むことにより、ガラス転移温度が向上して高温での粘着力を維持できる効果が向上する。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上4重量部以下であってもよい。具体的には、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して1.0重量部以上3.5重量部以下、または1.5重量部以上3.0重量部以下であってもよい。上述した範囲で前記イソシアネート系硬化剤の含有量を調節することにより、粘着剤層間の架橋度を向上させ、基材フィルムとの結合力を維持させると同時にガラス転移温度の低下を防止して高温粘着力を維持できるようにする。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤は、2個以上6個以下のイソシアネート基を含むものであってもよい。具体的には、前記イソシアネート系硬化剤は、3個以上5個以下または4個以上5個以下のイソシアネート基を含むことができる。より具体的には、前記イソシアネート系硬化剤は、2個のイソシアネート基を含むものが好ましい。上述した範囲で前記イソシアネート系硬化剤に含まれるイソシアネート基の数を調節することにより、粘着剤層間の架橋度を向上させ、基材フィルムとの結合力を維持させることができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記イソシアネート系硬化剤は、芳香族環状ジイソシアネート系化合物、脂肪族非環状イソシアネート系化合物、脂肪族環状イソシアネート系化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つであってもよい。具体的には、前記芳香族環状ジイソシアネート系化合物は、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つであってもよいし、前記脂肪族非環状イソシアネート系化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つであってもよく、前記脂肪族環状イソシアネート系化合物は、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つであってもよい。上述したものから前記イソシアネート系硬化剤を選択することにより、粘着剤層のヒドロキシ基および基材フィルムのヒドロキシ基と反応して粘着剤層間の架橋度を向上させると同時に、粘着剤層と基材フィルム層との間の結合力を向上させることができ、ガラス転移温度が向上して高温での粘着力を維持することができる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層は、可塑剤をさらに含むことができる。
本発明の一実施態様によれば、前記可塑剤は、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(DINCH)、ビス-2-エチルヘキシルヘキサンジオエート(DEHA)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、トリエチレングリコールビス-2-エチルヘキサノエート(TEG-EH)、ポリ(イソブチレン-コ-パラメチルスチレン)(IPMS)、イソプロピルパルミテート(IPP、Isopropyl Palmitate)、イソプロピルミリステート(IPMS、Isopropyl myristate)、シトレート系化合物であってもよいが、これに限定されない。前記可塑剤は、粘着剤層の被着剤層に対するウェッティング性を高め、粘着剤層のソフトな物性を高めることができ、粘着剤層の低粘着特性を高めることができる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記シトレート可塑剤は、トリエチルシトレート(TEC)、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート(TBC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、またはアセチルトリオクチルシトレートであってもよいが、これに限定されない。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記可塑剤は、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して5重量部~50重量部含まれる。上述した範囲内で前記可塑剤の含有量を調節することにより、鉛筆硬度および濡れ性(ウェッティング性)を向上させることができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層は、光開始剤を含む。上述のように粘着剤層が光開始剤を含むことにより、粘着剤層の硬化度を調節することができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記光開始剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂、前記単官能(メタ)アクリレート単量体、前記架橋剤、および前記硬化遅延剤の総和100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下であってもよい。具体的には、前記光開始剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂、前記単官能(メタ)アクリレート単量体、前記架橋剤、および前記硬化遅延剤の総和100重量部に対して0.2重量部以上4重量部以下、0.3重量部以上3重量部以下、または0.4重量部以上2重量部以下であってもよい。好ましくは、前記光開始剤の含有量は、前記ウレタン系樹脂、前記単官能(メタ)アクリレート単量体、前記架橋剤、および前記硬化遅延剤の総和100重量部に対して0.5重量部であることが好ましい。上述した範囲で前記光開始剤の含有量を調節することにより、前記粘着剤層の硬化度および物性を調節することができる。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含むものであってもよい。具体的には、前記帯電防止剤は、有機塩タイプの帯電防止剤、無機塩タイプの帯電防止剤、およびこれらの混合物の中から選択された1つであってもよい。通常の保護フィルムは、素材の特性上、高い表面電気抵抗による静電気によって保護フィルムを封止層から剥離する時、前記封止層に残像が残り、塵や埃などの異物が付着して有機発光素子に損傷を示し、有機発光素子の発光不良を引き起こすことがある。上述のように表面保護フィルムが帯電防止剤をさらに含むことにより、静電気による異物の付着を防止することができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層の厚さは、10μm~100μmであってもよい。具体的には、前記粘着剤層の厚さは、12μm以上95μm以下、14μm以上90μm以下、16μm以上85μm以下、20μm以上80μm以下、または15μm以上75μm以下であってもよい。上述した範囲で前記粘着剤層の厚さを調節することにより、工程用保護フィルムに適用可能でありながらも、粘着性およびウェッティング性に優れた粘着剤層を提供することができる。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤層は、粘着剤組成物を基材フィルム上に硬化させて形成できるが、形成方法は特に限定されない。一実施態様において、例えば、上述した粘着剤組成物およびこれを用いて製造したコーティング液を、Applicatorコーティング、バーコーターなどの通常の手段で基材層に塗布し硬化させる方法で粘着剤層を製造することができる。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記表面保護フィルムは、ガラスに対して180゜の剥離角度および1.8m/minの剥離速度で測定した剥離力が0.5gf/in~6gf/in、好ましくは1gf/in~6gf/inである。前記剥離力は、後述する実験例の剥離力評価方法によって測定できる。
【0052】
本明細書において、剥離力は、表面保護フィルムを幅が25mm、長さが150mmとなるように裁断して試験片を製造し、2kgのローラを用いて前記表面保護フィルムの粘着剤層をガラスに付着させ、常温で24時間保管した後、Texture Analyzer(英国のステーブルマイクロシステムズ社)を用いて、前記表面保護フィルムをガラスから1.8m/minの剥離速度および180゜の剥離角度で剥離する時の剥離力を意味することができる。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記表面保護フィルムの全光線透過率が85%以上である。上述のように表面保護フィルムの全光線透過率が85%以上で実現されることにより、前記表面保護フィルムの光特性を向上させることができる。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤組成物は、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定された場合である前記表面保護フィルムの全光線透過率は85%以上であってもよい。具体的には、前記粘着剤組成物は、混合された時点から1時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定された場合である前記表面保護フィルムの全光線透過率は85%以上であり、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定された場合である前記表面保護フィルムの全光線透過率は85%以上であってもよい。より具体的には、主鎖末端や側鎖に光反応性基を有するウレタン系樹脂;単官能(メタ)アクリレート単量体;末端に2個以上の光反応性基を有する架橋剤;硬化遅延剤;および光開始剤;を含み、溶剤;を含まない粘着剤組成物が混合された時点から1時間経過した前記粘着剤組成物で前記粘着剤層を形成して測定された前記表面保護フィルムの全光線透過率は86%以上または87%以上であってもよいし、前記粘着剤組成物は、混合された時点から24時間経過した前記粘着剤層を形成して測定された前記表面保護フィルムの全光線透過率は86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、または90%以上であってもよい。上述のように混合された時点から特定時間が経過した前記粘着剤組成物を使用しても全光線透過率が85%以上となるように実現することにより、光特性の変化を最小化して作業性を向上させることができ、経時変化を最小化することができる。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤組成物は、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムのヘイズが、2.0%以下のものであってもよい。上述のように、混合された時点から24時間経過した前記粘着剤組成物で前記粘着剤層を形成し、測定される前記表面保護フィルムのヘイズを、2.0%以下とすることにより、前記表面保護フィルムのヘイズを改善することができ、前記粘着剤組成物の安定性を向上させることができる。さらに、前記粘着剤組成物を混合後に時間が経過しても物性が変化せず、安定的に粘着剤層を形成することができる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着剤組成物は、混合された時点から1時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムのヘイズが、1.0%以下のものであり、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムのヘイズは、2.0%以下であってもよい。上述のように、前記粘着剤組成物は、混合された時点から1時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムのヘイズが、1.0%以下のものであり、混合された時点から24時間経過後に前記粘着剤層を形成して測定した場合の前記表面保護フィルムのヘイズを2.0%以下とすることにより、前記表面保護フィルムのヘイズを改善することができ、前記粘着剤組成物の安定性を向上させることができる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記基材フィルムの他面、前記基材フィルムの一面と前記粘着剤層との間の少なくとも1箇所に帯電防止層がさらに備えられる。具体的には、前記基材フィルムの他面にのみ帯電防止層がさらに備えられてもよいし、前記基材フィルムの一面と前記粘着剤層との間にのみ帯電防止層がさらに備えられてもよい。より具体的には、前記基材フィルムの他面および前記基材フィルムの一面と前記粘着剤層との間それぞれに帯電防止層があらに備えられてもよい。上述のような位置に帯電防止層がさらに備えられることにより、静電気による異物の付着を防止することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0059】
実施例1
(1)粘着剤層を製造するための組成物
2Lの5口コンデンサガラス反応器を用意した後、2官能ポリオールであるSC-2204(韓国ポリオール社、Mn-2,000g/mol)764gとジシクロヘキサメチレンジイソシアネート(Evoniki社、H12MDI)110g投入後、順次に2-エチルヘキシルアクリレート(LG化学社、2EHA)300g、ラウリルアクリレート(Miwon Specialty社、M120)300gを定量投入した。投入が終わった後、100rpmの速度で撹拌しながら、均一相となるように70℃まで昇温および維持する。同温でDBTDL50ppmを投入してNCO prepolymer反応を誘導し、78~82℃で3時間維持する。以後、2-HEA(日本触媒社)を26gを投入後、80℃でhr維持し、FT-IRでNCO peak(2,260cm-1)が消滅するまで反応させて、重量平均分子量約80,000g/molのポリエーテルウレタンアクリレート樹脂であるウレタン系樹脂を製造した。
【0060】
前記製造されたウレタン系樹脂100重量部、前記ウレタン系樹脂100重量部に対して、単官能メタアクリレート単量体として2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)112重量部、架橋剤(トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA)10重量部、可塑剤(イソプロピルミリステート、IPMS)40重量部、硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)3重量部、および硬化遅延剤であるアクリル酸0.4重量部を混合して混合物を製造し、前記混合物100重量部に対して、光開始剤(Irgacure184)0.5重量部を混合して粘着剤組成物を製造した。
【0061】
(2)表面保護フィルムの製造
75μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(H33P、コーロン社)である基材フィルムの両面に、それぞれ50nmの帯電防止層をコーティングして基材フィルムを用意した。保護層としては50μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(XD510P、TAK社)の両面に帯電防止層が形成され、1つの帯電防止層上に離型層がコーティングされたフィルム(12ASW、SKC社)を用意した。
【0062】
次に、前記基材フィルムの一面に前記粘着剤組成物を過剰に塗布した後、前記基材フィルムと前記離型層とが向かい合うように貼り合わせ、前記基材フィルムと前記離型層との間の前記粘着剤組成物の厚さが75μmとなるようにコーティングをする。光源(black light)を用いて700mJ/cm2の光エネルギーの条件下で光硬化させて表面保護フィルムを製造した。
【0063】
実施例2
実施例1における前記粘着剤組成物の製造時、前記アクリル酸の含有量を0.8重量部用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを製造した。
【0064】
実施例3
実施例1における前記粘着剤組成物の製造時、前記アクリル酸の含有量を1.2重量部用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを製造した。
【0065】
実施例4
実施例1における前記粘着剤組成物の製造時、前記アクリル酸の含有量を5.0重量部用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを製造した。
【0066】
比較例1
実施例1における前記粘着剤組成物の製造時、前記アクリル酸を用いないことを除けば、実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを製造した。
【0067】
比較例2
実施例1における前記粘着剤組成物の製造時、前記アクリル酸の含有量を11.0重量部用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で表面保護フィルムを製造した。
【0068】
[実験例1:剥離力の測定]
前記実施例1~4および比較例1および2で製造された表面保護フィルムを幅が25mm、長さが150mmとなるように裁断して試験片を製造した。2kgのローラを用いて前記表面保護フィルムの粘着剤層をガラスに付着させ、常温で24時間保管する。次いで、Texture Analyzer(英国のステーブルマイクロシステムズ社)を用いて、20℃の温度でそれぞれ前記表面保護フィルムをガラスから1.8m/minの剥離速度および180゜の剥離角度で剥離する時の剥離力を測定した。
【0069】
[実験例2:全光線透過率の測定]
前記実施例1~4および比較例1および2で製造された表面保護フィルムを幅が25mm、長さが150mmとなるように裁断して試験片を製造した。以後、前記試験片を、ヘイズメーター(日本電色社のDOH-400)を用いて全光線透過率(Tt)を測定した。
【0070】
[実験例3:ヘイズの測定]
前記実施例1~4および比較例1および2で製造された表面保護フィルムを幅が25mm、長さが150mmとなるように裁断して試験片を製造した。以後、前記試験片を、ヘイズメーター(日本電色社のDOH-400)を用いて、JIS K7105-1規格によりヘイズ(Haze)を測定した。
前記実験例1~3で測定された結果を下記の表1にまとめた。
【0071】
【0072】
前記表1を参照すれば、実施例1~実施例4は、硬化遅延剤であるアクリル酸を含み、前記硬化遅延剤の含有量が特定の含有量を満足する場合、剥離力が0.5gf/in以上6gf/in以下であり、全光線透過率が85%以上であると同時に、前記粘着剤組成物が混合された時点から24時間経過して測定された前記表面保護フィルムのヘイズは2.0%以下であることを確認した。さらに、前記粘着剤組成物が混合された時点から1時間経過して測定された前記表面保護フィルムのヘイズは1.0%以下であることを確認することができる。
【0073】
これに対し、硬化遅延剤であるアクリル酸が含まれていない比較例1は、前記粘着剤組成物が混合された時点から24時間経過して測定された前記表面保護フィルムのヘイズが過度に増加し、硬化遅延剤であるアクリル酸が過剰に含まれた比較例2は、剥離力が過度に増加することを確認した。
【0074】
したがって、本発明の一実施態様に係る表面保護フィルムは、粘着剤組成物に硬化遅延剤を含むことにより、適正な剥離力を有すると同時に光学的特性に優れ、粘着剤組成物を混合後に時間が経過しても物性の変化を抑制することができる。
【0075】
以上、本発明は単に限定された実施例によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と以下に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正および変形が可能であることはもちろんである。