(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240415BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240415BHJP
C08K 9/10 20060101ALI20240415BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20240415BHJP
C08L 29/00 20060101ALI20240415BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20240415BHJP
C08L 27/00 20060101ALI20240415BHJP
C08K 5/41 20060101ALI20240415BHJP
C08K 5/5397 20060101ALI20240415BHJP
C08F 20/04 20060101ALI20240415BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08K5/09
C08K9/10
C08L25/02
C08L29/00
C08L33/00
C08L27/00
C08K5/41
C08K5/5397
C08F20/04
C08L101/14
(21)【出願番号】P 2022550004
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2021016321
(87)【国際公開番号】W WO2022114610
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0162890
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0152460
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウイ・ソク・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジェ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・イ
(72)【発明者】
【氏名】ギチョル・キム
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/038740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08J 99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 25/02
C08L 29/00
C08L 33/00
C08L 27/00
C08F 20/04
C08L 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子;および
カルボン酸系添加剤を含む高吸水性樹脂であって、
前記カルボン酸系添加剤は下記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上であり、
前記高吸水性樹脂は、
1)EDANA法WSP 270.2方法に従って前記高吸水性樹脂を1時間の間膨潤させた後に測定された水可溶成分が高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%以下であり、
2)下記数式1により計算されるBPI(Base Polymer Index)が31以上である、
高吸水性樹脂:
【化1】
前記化学式1において、
Aは炭素数5~21のアルキルであり、
B
1は-OCO-、-COO-、または-COOCH(R
1)COO-であり、
B
2は-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH(R
2)-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
ここで、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
nは1~3の整数であり、
Cはカルボキシル基であり、
【数1】
前記数式1において、
CRCはEDANA法WSP 241.3の方法に従って測定した遠心分離保水能を意味し、
ln(水可溶成分の含有量)は前記水可溶成分の含有量の自然対数値を意味する。
【請求項2】
前記化学式1において、
Aは-C
6H
13、-C
11H
23、-C
12H
25、-C
17H
35、または-C
18H
37である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記化学式1において、
B
1は
【化2】
であり、
ここで、*は隣り合う原子との結合サイトである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記化学式1において、
B
2は
【化3】
であり、
ここで、*は隣り合う原子との結合サイトである、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸、そのアルカリ金属塩およびそのアルカリ土類金属塩で構成される群より選ばれる1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項6】
前記カルボン酸系添加剤は下記化学式1-1ないし1-7で表される化合物のうちいずれか一つである、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂:
【化4】
【請求項7】
前記高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に、表面架橋剤を媒介として前記架橋重合体が追加架橋して形成された表面架橋層をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
内部架橋剤、カプセル化された発泡剤、カルボン酸系添加剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);および
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階(段階2)を含み、
前記カルボン酸系添加剤は下記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
【化5】
前記化学式1において、
Aは炭素数5~21のアルキルであり、
B
1は-OCO-、-COO-、または-COOCH(R
1)COO-であり、
B
2は-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH(R
2)-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
ここで、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
nは1~3の整数であり、
Cはカルボキシル基である。
【請求項9】
前記カプセル化された発泡剤は炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有する、請求項8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記炭化水素はn-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群より選ばれた1種以上であり、
前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリロニトリル系化合物、芳香族ビニル系化合物、酢酸ビニル系化合物およびハロゲン化ビニル系化合物で構成された群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項9に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記カプセル化された発泡剤は膨張前の平均直径が5~30μmであり、空気中での最大膨張比率が5~15倍である、請求項8から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記カプセル化された発泡剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.05~1重量部で使用される、請求項8から11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記カルボン酸系添加剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~10重量部で使用される、請求項8から12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記含水ゲル重合体に対して下記1)~4)の方法に従って測定した表面べたつき指数(25℃温度条件)が200g以下である、請求項8から13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
1)底面(含水ゲル重合体の製造時の反応容器と当たる面)を備えた含水ゲル重合体を横2.5cm×縦2.5cm×厚さ2cmにカットした2個の試験片を製造する段階;
2)製造された2個の試験片それぞれをTexture Analyzer機器の上/下ホルダにそれぞれ入れて固定し、この時、前記2個の試験片は試験片の底面が各ホルダの外側に1mm出るように固定される段階;
3)前記2個の試験片が固定された上/下ホルダをホルダ間の距離が1mmになるように近接させて前記2個の試験片の底面を付着させた後、これを5秒間維持する段階;および
4)前記上のホルダを引っ張って前記2個の試験片が付着した部分が分離される時の最大力(max force,g)を測定し、これを表面べたつき指数とする段階。
【請求項15】
表面架橋剤の存在下で、製造された高吸水性樹脂の粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層を形成する段階をさらに含む、請求項8から14のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年11月27日付韓国特許出願第10-2020-0162890号および2021年11月8日付韓国特許出願第10-2021-0152460号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は吸収性能が低下することなく水可溶成分の含有量が減少した高吸水性樹脂およびそのような高吸水性樹脂を製造できる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)等それぞれ異なる名称で名付けられている。前記のような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤および湿布用等の材料として広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は主におむつや生理用ナプキン等衛生材分野で広く使用されている。前記衛生材の中で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に広がった状態で含まれることが一般的である。しかし、最近では、より薄い厚さのおむつ等衛生材を提供するための努力が続いており、その一環としてパルプの含有量が減少するか、さらにはパルプが全く使用されていないいわゆるパルプレス(pulpless)おむつ等の開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少するか、パルプを使用しない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い割合で含まれ、高吸水性樹脂粒子が衛生材内に不可避的に多層で含まれる。このように多層で含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子が効率よく多量の小便等の液体を吸収するためには、液体に対する高い吸収力および速い吸収速度を示さなければならないだけでなく、外部の圧力にも吸収された液体が抜け出てはならず、これに加えて、液体を吸収して膨潤された状態でも本来の形態をよく維持するための通液性(permeability)が必要である。
【0006】
また、このような高吸水性樹脂は液体、具体的には水に対する高い吸収特性を示すためにその表面に多数の親水性部分を含んでいるので、空気中に露出すると空気内に含まれている水分を吸収して高吸水性樹脂粒子間の凝集およびケーキング(caking)現象が発生した。
【0007】
そのため、高吸水性樹脂の基本的な吸収力および保水力を示す物性である保水能(CRC)と加圧吸収能(AUP)の改善の他にも、高吸水性樹脂の高吸水性樹脂粒子間のケーキング現象を防止しながらも吸収速度が低下することなく通液性(permeability)が改善された高吸水性樹脂に対する開発が持続的に要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、カプセル化された発泡剤の存在下で単量体を重合し、含水ゲル重合体に特定構造の添加剤を添加して粗粉砕することによって、吸収速度が速くて通液性およびケーキング防止効率が向上した高吸水性樹脂を製造できる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、
発明の一実施形態によれば、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子;および
カルボン酸系添加剤を含む高吸水性樹脂であって、
前記カルボン酸系添加剤は下記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上であり、
前記高吸水性樹脂は、
1)EDANA法WSP 270.2方法に従って前記高吸水性樹脂を1時間の間膨潤させた後に測定された水可溶成分が高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%以下であり、
2)下記数式1により計算されるBPI(Base Polymer Index)が31以上である、
高吸水性樹脂を提供する:
【0010】
【0011】
前記化学式1において、
Aは炭素数5~21のアルキルであり、
B1は-OCO-、-COO-、または-COOCH(R1)COO-であり、
B2は-CH2-、-CH2CH2-、-CH(R2)-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
ここで、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
nは1~3の整数であり、
Cはカルボキシル基であり、
【0012】
【0013】
前記数式1において、
CRCはEDANA法WSP 241.3の方法に従って測定した遠心分離保水能を意味し、
ln(水可溶成分の含有量)は前記水可溶成分の含有量の自然対数値を意味する。
【0014】
また、本発明は、
内部架橋剤、カプセル化された発泡剤、カルボン酸系添加剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);および
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階(段階2)を含み、
前記カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上である、
高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高吸水性樹脂およびその製造方法によれば、特定構造のカルボン酸系添加剤を含み、高吸水性樹脂の吸収性能が低下することなく水可溶成分の含有量を減少させることができる。また、このようなカルボン酸系添加剤は重合段階で発泡剤とともに添加されて含水ゲル重合体の表面べたつき特性を顕著に減少させることができ、そのため含水ゲル重合体の細切段階で重合体の裂け現象が防止されて最終的に製造された高吸水性樹脂の水可溶成分が減少するだけでなく、吸収性能が低下しない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」等の用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の異なる特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたもの等の存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解しなければならない。
【0017】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0018】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂の製造方法および高吸水性樹脂についてより詳細に説明する。
【0019】
それに先立ち、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0020】
本発明の明細書に使用される「重合体」、または「高分子」という用語は水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のものとして含水率(水分含量)が約30重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と指称し、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と指称する。
【0021】
また、「高吸水性樹脂粒子」という用語は酸性基を含んで前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体が重合されて内部架橋剤によって架橋した架橋重合体を含む、粒子状の物質を指す。
【0022】
また、「高吸水性樹脂」という用語は文脈によって酸性基を含んで前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば乾燥、粉砕、分級、表面架橋等を経て製品化に適する状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。したがって、「高吸水性樹脂」という用語は高吸水性樹脂を含む組成物、すなわち、複数の高吸水性樹脂粒子を含むと解釈することができる。
【0023】
また、「高吸水性樹脂正常粒子」という用語は高吸水性樹脂粒子のうち150μm~850μmの粒径を有する粒子を意味する。
【0024】
また、「微粉」という用語は高吸水性樹脂粒子のうち150μm未満の粒径を有する粒子を意味する。
【0025】
また、「チョッピング(chopping)」という用語は乾燥効率を上げるために含水ゲル重合体を細片に細切することであり、正常粒子水準まで粉砕することとは区分して使用される。
【0026】
従来の高吸水性樹脂は単量体を重合して製造した含水ゲル重合体を乾燥した後に所望する粒度まで粉砕して製造されるが、このとき通常含水ゲル重合体の乾燥を容易にし、粉砕工程の効率性を高めるために乾燥工程の前に含水ゲル重合体をチョッピング(chopping)または細切する工程が行われる。しかし、一般に製造された含水ゲル重合体はその表面がべたつくので均一な大きさにチョッピングしにくくチョッピングの効率が劣り、チョッピング段階で重合体の裂け現象が発生する問題があった。特に、高吸水性樹脂の比表面積を増加させて吸収速度を向上させるために重合時に発泡剤がともに使用されるが、この場合は発泡剤によって単量体組成物の内部まで十分な光照射が行われず重合反応が行われていない単量体の一部によって含水ゲル重合体のべたつきが増加してより問題となった。
【0027】
さらに、含水ゲル重合体の表面べたつきのために重合器ベルトの一部に重合体が付く現象が発生し、そのため重合器ベルトの一部に残っている残余物によって重合が不均一に発生するだけでなく、重合器に対するメンテナンス期間が増加する問題ももたらした。
【0028】
そして、チョッピング段階で重合体の裂け現象が発生して製造された高吸水性樹脂の場合、重合後に一部の架橋重合体の高分子構造が維持できず最終の高吸水性樹脂の水可溶成分が増加し、保水能などの諸般物性もまた低下することになる。
【0029】
そこで、本発明者らは、特定構造のカルボン酸系添加剤を含む場合、高吸水性樹脂の吸収性能が低下することなく水可溶成分の含有量を減少させ得ることを確認して本発明を完成した。特に、前記カルボン酸系添加剤を重合段階で発泡剤とともに添加する場合、前記カルボン酸系添加剤は重合反応には参加せず重合された含水ゲル重合体の内部および/または表面に吸着し、この中で表面に吸着したカルボン酸系添加剤は含水ゲル重合体の表面に疎水性を付与することができる。そのため、含水ゲル重合体の表面べたつき特性を顕著に減少させることができ、チョッピング段階で重合体の裂け現象が防止されるので最終的に製造された高吸水性樹脂の水可溶成分は減少するが吸収性能は低下しない。
【0030】
この時、前記含水ゲル重合体に添加されるカルボン酸系添加剤は、前記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上の化合物であり、疎水性官能基(hydrophobic functionalgroup)および親水性官能基(hydrophilic functionalgroup)を同時に持っている。一方、水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基(-COOH)および/または中和した酸性基(-COO-)を含むので、重合によって製造された含水ゲル重合体の表面には重合に参加せずに残っている酸性基(-COOH)および/または中和した酸性基(-COO-)による親水性部分が多量に存在する。したがって、前記添加剤は前記含水ゲル重合体の表面に存在する親水性部分のうち少なくとも一部に前記添加剤の親水性官能基が吸着し、前記添加剤が吸着した重合体の表面は添加剤の他の末端に位置する疎水性官能基によって疎水性を示す。そのため、前記含水ゲル重合体の表面は疎水性を示し、表面のべたつきを低下させることができる。
【0031】
より具体的には、前記カルボン酸系添加剤における疎水性官能基は、炭素数5~21のアルキル基(A部分)であり、親水性官能基はC部分であって、カルボキシル基(COOH)であり、塩である場合はカルボキシレート基(COO-)であり、前記疎水性官能基および親水性官能基はそれぞれ添加剤の両末端に位置する。特に、前記カルボン酸系添加剤は両末端のAおよびC部分の他に(B1-B2)部分をさらに含むが、前記(B1-B2)部分はC部分だけでは不足し得る重合体の表面に対する吸着性能を向上させる役割をする。そのため、前記化学式1の構造を有する添加剤は、(B1-B2)部分なしでA-C構造を有する化合物に比べて、親水性を示す重合体の表面に対する吸着性能に優れる。
【0032】
また、前記化学式1において(B1-B2)部分なしでA-C構造を有する化合物の場合、溶媒が水である単量体組成物内に溶解するほどの親水性を示さないため単量体組成物に添加できない。
【0033】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂およびその製造方法についてより具体的に説明する。
【0034】
高吸水性樹脂
発明の一実施形態によれば、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子;および
カルボン酸系添加剤を含む高吸水性樹脂であって、
前記カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上であり、
前記高吸水性樹脂は、
1)EDANA法WSP 270.2方法に従って前記高吸水性樹脂を1時間の間膨潤させた後に測定された水可溶成分が高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%以下であり、
2)前記数式1により計算されるBPI(Base Polymer Index)が31以上である、
高吸水性樹脂が提供される。
【0035】
前記高吸水性樹脂は、複数の少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子を含む。この時、前記架橋重合体は前記少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で架橋重合されたものであり、前記単量体が重合されて形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋する形態の3次元網状構造を有する。
【0036】
言い換えると、一実施形態の高吸水性樹脂は、複数の少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤の間の架橋重合体を含む高吸水性樹脂粒子を含む。このように、前記架橋重合体が前記単量体が重合されて形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋する形態の3次元網状構造を有する場合、内部架橋剤によって追加架橋していない2次元線状構造を有する場合に比べて高吸水性樹脂の諸般物性である保水能および加圧吸収能を顕著に向上させることができる。
【0037】
また、前記高吸水性樹脂は下記1)および2)の物性を満たす:
1)EDANA法WSP 270.2方法に従って前記高吸水性樹脂を1時間の間膨潤させた後に測定された水可溶成分が高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%以下であり、
2)前記数式1により計算されるBPI(Base Polymer Index)が31以上。
【0038】
この時、前記高吸水性樹脂の「水可溶成分(Extractable content)」は、高吸水性樹脂の製造過程で架橋化されていない高分子形態の化合物を意味し、重合時の架橋化が不完全で架橋化されないか、またはチョッピング若しくは乾燥過程で架橋剤が分解するかまたは主高分子鎖が切れて発生し得る。このような水可溶成分は高吸水性樹脂が液体を吸収して膨潤される場合は容易に溶出され得るので問題になる。したがって、前記高吸水性樹脂の水可溶成分が高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%を超える場合は高吸水性樹脂が溶出され、適用される衛生用品の表面がべたべたになるか皮膚等に損傷を与える問題を発生させ得る。より具体的には、前記高吸水性樹脂の水可溶成分は高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%以下、3.8重量%以下、3.6重量%以下、3.5重量%以下、または3.4重量%以下であり得る。また、前記水可溶性成分はその値が小さいほど優れ、下限は理論上0重量%であるが、一例として1重量%以上、2重量%以上、または3重量%以上であり得る。
【0039】
また、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3に従って測定した保水能(CRC)が30g/g以上、32g/g以上、33g/g以上、または34g/g以上であり、かつ40g/g以下、または38g/g以下、または36g/g以下の範囲を有することができる。
【0040】
また、前記高吸水性樹脂は前記数式1により計算されるBPI(Base Polymer Index)が31以上の値を有するが、このとき、BPI値が31未満の場合には同一水準の保水能を有しても水可溶成分含有量が高く高吸水性樹脂内の架橋重合体のネットワークが弱くて強度が低下する問題があり得るだけでなく、再湿潤(rewet)現象が増加することにより衛生および安全性において好適でない。より具体的には、前記高吸水性樹脂のBPIは32以上、33以上、34以上、35以上、または36以上であり得る。また、前記BPI値はその値が大きいほど優れ、その上限はないが、一例として45以下、43以下、40以下、または38以下の値を有することができる。
【0041】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は下記化学式2で表される化合物であり得る:
【0042】
[化学式2]
R-COOM’
【0043】
前記化学式2において、
Rは不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M’は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0044】
好ましくは、前記単量体は(メタ)アクリル酸、およびこれら酸の1価(アルカリ)金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0045】
このように水溶性エチレン系不飽和単量体として(メタ)アクリル酸および/またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができるため有利である。この他にも前記単量体としては無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が使用できる。
【0046】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は酸性基を有して、前記酸性基のうち少なくとも一部は中和剤によって中和している。具体的には、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、前記内部架橋剤、前記重合開始剤および中和剤を混合する段階で前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基のうち少なくとも一部が中和することができる。この時、中和剤としては酸性基を中和させ得る水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性物質が使用できる。
【0047】
また、前記水溶性エチレン系不飽和単量体に含まれた酸性基のうち前記中和剤によって中和した程度を指す水溶性エチレン系不飽和単量体の中和度は、50~90モル%、または60~85モル%、または65~85モル%、または65~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性によって変わり得るが、中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大幅に落ちるだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示し得る。
【0048】
また、本明細書で使用する「内部架橋剤」という用語は後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための表面架橋剤と区分するために使用する用語であり、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割をする。前記段階での架橋は表面または内部を区分せず行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合、最終的に製造された高吸水性樹脂の粒子表面は表面架橋剤によって架橋した構造で形成されており、内部は前記内部架橋剤によって架橋した構造からなる。
【0049】
前記内部架橋剤としては前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時の架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤はN,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート等のアクリレート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;トリアリールアミン;プロピレングリコール;グリセリン;またはエチレンカーボネート等の多官能性架橋剤が単独使用または2以上を併用できるが、これらに制限されるものではない。
【0050】
一実施形態によれば、前記内部架橋剤としては前記エポキシ系化合物を使用できる。例えば、前記内部架橋剤としてはエチレングリコールジグリシジルエーテルが使用できるが、この場合、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアクリレート系化合物のみを内部架橋剤として使用した場合とは異なり重合がin-situで行われず、反応が遅く行われて架橋度が低くなる。したがって、内部架橋剤としてエポキシ系化合物を使用して製造された含水ゲル重合体は、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアクリレート系化合物を内部架橋剤として使用して製造された含水ゲル重合体に比べて表面べたつきが激しくなり、このような重合体によって最終的に製造される高吸水性樹脂の水可溶成分の含有量が高い。しかし、上述したカルボン酸系添加剤を含む高吸水性樹脂の場合、内部架橋剤としてエポキシ系化合物を使用しても重合体の表面べたつく現象を低下させることができる。
【0051】
この時、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアクリレート系化合物が前記エポキシ系化合物と共に使用されることもできる。
【0052】
このような内部架橋剤の存在下での前記水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合は、重合開始剤、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤等の存在下で熱重合、光重合または混成重合により行われるが、具体的な内容は後述する。
【0053】
また、前記高吸水性樹脂粒子は約150~約850μmの粒径を有することができ、このような粒径は欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association,EDANA)の規格EDANA WSP 220.3方法に従って測定されることができる。
【0054】
また、前記高吸水性樹脂は前記カルボン酸系添加剤を含む。前記添加剤は前述したように、含水ゲル重合体に混合されて含水ゲル重合体の粉砕が凝集現象なしで容易に行われるように添加される。この時、カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸およびその金属塩で構成される群より選ばれる1種以上である。具体的には、前記カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸、前記化学式1で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩および前記化学式1で表されるカルボン酸のアルカリ土類金属塩で構成される群より選ばれる1種以上である。より具体的には、前記カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸、前記化学式1で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩および前記化学式1で表されるカルボン酸のアルカリ土類金属塩の一つである。
【0055】
前記化学式1において、Aは疎水性を示す部分であり、炭素数5~21の線状または分枝状アルキル基であり得るが、Aが線状構造のアルキル基である場合が粉砕された粒子の凝集を抑制して分散性を向上させるという側面からより有利である。Aが炭素数5未満のアルキル基である場合、鎖長が短くて粉砕された粒子の凝集制御が効果的に行われないという問題があり、Aが炭素数21超過のアルキル基である場合、前記添加剤の移動性(mobility)が減少して含水ゲル重合体に効果的に混合されず、添加剤の費用上昇によって組成物単価が高くなる問題があり得る。
【0056】
具体的には、前記化学式1において、Aは炭素数5~21の線状アルキル、すなわち、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、n-ウンデカニル、n-ドデカニル、n-トリデカニル、n-テトラデカニル、n-ペンタデカニル、n-ヘキサデカニル、n-ヘプタデカニル、n-オクタデカニル、n-ノナデカニル、n-イコサニル、またはn-ヘンエイコサニルであり得る。
【0057】
より具体的には、Aは炭素数6~18の線状アルキルであり得る。例えば、Aは-C6H13、-C11H23、-C12H25、-C17H35、または-C18H37であり得る。
【0058】
また、前記化学式1において、(B1-B2)部分はC部分だけでは不足し得る重合体の表面に対する吸着性能を向上させる役割をする部分であり、B2の炭素数が3個以上である場合にはB1部分とC部分の距離が遠くなり、含水ゲル重合体に対する吸着性能が低下し得る。
【0059】
この時、R1およびR2はそれぞれ独立して、線状または分枝状の炭素数1~4のアルキルであり得、より具体的には、R1およびR2はそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルであり得るが、前記添加剤が高吸水性樹脂粒子に吸着するという側面から、添加剤の分子構造がバルキー(bulky)でないことが有利であるので、R1およびR2はすべてメチルであり得る。
【0060】
また、前記化学式1において、nは1、2または3であり得る。より具体的には、(B1-B2)の個数を意味するnは、(B1-B2)部分がC部分に対する吸着性能を補強するためのものである点と、前記カルボン酸系添加剤が含水ゲル重合体に効果的に吸着するための分子長さを考慮すると、nは1であることが好ましい。
【0061】
具体的には、前記化学式1において、B1は
【0062】
【0063】
であり得、ここで、*は隣り合う原子との結合サイトである。
【0064】
例えば、B1は
【0065】
【0066】
であり得る。
【0067】
また、前記化学式1において、B2は
【0068】
【0069】
であり得、ここで、*は隣り合う原子との結合サイトである。
【0070】
この時、C部分と共に架橋重合体に対する添加剤の吸着性能を向上させるという側面からB2が
【0071】
【0072】
であることが好ましい。
【0073】
また、前記化学式1において、C部分は親水性を示す部分であり、カルボキシル基(COOH)であり、ただし前記カルボン酸系添加剤が塩である場合、親水性を示す部分はカルボキシレート基(COO-)である。
【0074】
言い換えると、前記カルボン酸系添加剤は下記化学式1aで表される化合物であり得る:
【0075】
【0076】
前記化学式1aにおいて、
MはH+、アルカリ金属の1価陽イオン、またはアルカリ土類金属の2価陽イオンであり、
kはMがH+またはアルカリ金属の1価陽イオンであれば1であり、アルカリ土類金属の2価陽イオンであれば2であり、
A、B1、B2およびnに係る説明は前記化学式1で定義したとおりである。
【0077】
より具体的には、前記カルボン酸系添加剤が前記化学式1で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩である場合、前記添加剤は下記化学式1’で表されることができる:
【0078】
【0079】
前記化学式1’において、
M1はアルカリ金属、例えば、ナトリウムまたはカリウムであり、
A、B1、B2およびnに係る説明は前記化学式1で定義したとおりである。
【0080】
また、前記カルボン酸系添加剤が前記化学式1で表されるカルボン酸のアルカリ土類金属塩である場合、前記添加剤は下記化学式1”で表されることができる:
【0081】
【0082】
前記化学式1”において、M2はアルカリ土類金属、例えば、カルシウムであり、
A、B1、B2およびnに係る説明は前記化学式1で定義したとおりである。
【0083】
一例として、前記カルボン酸系添加剤は下記からなる群より選ばれるいずれか一つのカルボン酸であり得る:
【0084】
【0085】
または前記カルボン酸系添加剤は下記からなる群より選ばれるいずれか一つのアルカリ金属塩であり得る:
【0086】
【0087】
前記において、
M1はそれぞれ独立して、アルカリ金属である。
【0088】
または前記カルボン酸系添加剤は下記からなる群より選ばれるいずれか一つのアルカリ土類金属塩であり得る:
【0089】
【0090】
前記において、
M2はそれぞれ独立して、アルカリ土類金属である。
【0091】
例えば、前記カルボン酸系添加剤は下記化学式1-1ないし1-7で表される化合物のうちいずれか一つであり得るが、これらに限定されるものではない:
【0092】
【0093】
また、前記高吸水性樹脂は、前記カルボン酸系添加剤の他に前記添加剤が含水ゲル重合体とともに粉砕後に乾燥される過程でB1のエステル結合が分解されて形成される化合物をさらに含むことができる。
【0094】
具体的には、前記添加剤が、nが1であり、B1が-OCO-である化合物の場合、前記高吸水性樹脂はA-OH構造のアルコールとHOOC-B2-C構造の化合物をさらに含むことができる。
【0095】
また、前記添加剤が、nが1であり、B1が-COO-である化合物の場合、前記高吸水性樹脂はA-COOH構造のカルボン酸とHO-B2-C構造の化合物をさらに含むことができる。
【0096】
また、前記添加剤が、nが1であり、B1が-COOCH(R1)COO-である化合物の場合、前記高吸水性樹脂はA-COOH構造のカルボン酸とHOCH(R1)COO-B2-C構造の化合物をさらに含むことができる。
【0097】
このように、前記高吸水性樹脂が添加剤分子内のエステル結合が分解されて形成される化合物をさらに含むことによって、添加剤の移動度(mobility)が増加し、粉砕後に再凝集される現象をより防止することができる。
【0098】
この時、前記カルボン酸系添加剤は前記高吸水性樹脂の総重量を基準として0.01~10重量%含まれ得る。具体的には、上述したような水可溶性成分およびBPI物性を有する高吸水性樹脂は、前記架橋重合体の製造時に前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~10重量部でカルボン酸系添加剤を投入する場合に実現可能である。より具体的には、高吸水性樹脂内で前記添加剤の含有量が過度に低い場合、前記添加剤による凝集制御効果が少なく所望する粒径まで粉砕されていない高吸水性樹脂粒子を含み得、前記添加剤の含有量が過度に高い場合、高吸水性樹脂の諸般物性である保水能および加圧吸収能が低下し得る。
【0099】
前記高吸水性樹脂での添加剤の含有量は先に、高吸水性樹脂1gを蒸留水1mlに投入した後にスウェリングされるまで1時間の間十分に混合し、その後フィルタして溶液部分のみを抽出した後にHPLC分析を実施して、溶液部分に溶解している添加剤含有量を分析して測定する。
【0100】
より具体的には、前記カルボン酸系添加剤は、前記高吸水性樹脂の総重量を基準として0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上または0.5重量%以上であり、10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下で含まれ得る。
【0101】
一方、前記高吸水性樹脂は後述する表面架橋層をさらに含まない場合、複数の前記高吸水性樹脂粒子、前記カルボン酸系添加剤および前記添加剤が高吸水性樹脂の製造過程中に加水分解されて生成される前記添加剤の加水分解物以外の他の添加剤は含まなくてもよい。
【0102】
具体的には、一実施形態の高吸水性樹脂は、微細結晶質セルロース(Microcrystalline Cellulose)などの分子内の多数のヒドロキシ基含有グルコースユニット(glucose unit)を有する化合物は含まなくてもよい。例えば、前記高吸水性樹脂がFMC社から入手可能な下記化学式3で表されるアビセル(AVICEL)(登録手票)PH-101などの平均粒径が1~10μmの微細結晶質セルロースを含む場合、多数のヒドロキシ基によって高吸水性樹脂粒子間の凝集が抑制されず、上述した添加剤による効果が効果的に発現されない。
【0103】
【0104】
また、一実施形態の高吸水性樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)共重合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボキシレート、ラウリルスルフェート、ナトリウムラウリルスルフェート等の親水性添加剤を含まなくてもよい。このような添加剤は分子内に前記化学式1の(B1-B2)部分を持っておらず、架橋重合体の表面に十分に吸着できないため高吸水性樹脂粒子間の凝集が効果的に抑制されない問題がある。そのため、前記高吸水性樹脂が前記カルボン酸系添加剤の代わりに前記のような親水性添加剤を含む場合、架橋重合体粉砕後の粒子間の凝集が抑制されないので、前記高吸水性樹脂は多量の微粉を含み、かつ低い保水能および低い見掛け密度を示す。
【0105】
一方、前記高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に、表面架橋剤を媒介として前記架橋重合体が追加架橋して形成された表面架橋層をさらに含むことができる。これは高吸水性樹脂粒子の表面架橋密度を高めるためのものであり、上記のように高吸水性樹脂粒子が表面架橋層をさらに含む場合、内部より外部の架橋密度が高い構造を持つようになる。
【0106】
前記表面架橋剤としては従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特に制限なくすべて使用できる。例えば、前記表面架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選ばれた1種以上のポリオール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選ばれた1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;オキサゾリジノン等のオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;等を含むことができる。
【0107】
具体的には、前記表面架橋剤として上述した表面架橋剤のうち1種以上、または2種以上、または3種以上が使用できるが、例えば、エチレンカーボネート-プロピレンカーボネート(ECPC)、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールカーボネートが使用できる。
【0108】
高吸水性樹脂の製造方法
また、他の実施形態によれば、
内部架橋剤、発泡剤、カルボン酸系添加剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);および
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階(段階2)を含み、
前記カルボン酸系添加剤は前記化学式1で表されるカルボン酸およびその塩で構成される群より選ばれる1種以上である、
高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0109】
(段階1)
前記段階は内部架橋剤、発泡剤、カルボン酸系添加剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階であり、前記水溶性エチレン系不飽和単量体、発泡剤、カルボン酸系添加剤、内部架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備する段階および前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階からなる。この時、各成分に係る説明は上述した内容を参照する。
【0110】
前記単量体組成物において、このような内部架橋剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~5重量部で使用できる。例えば、前記内部架橋剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、または2.5重量部以下で使用できる。上部内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起きず適正水準以上の強度の実現が難しく、上部内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなり所望する保水能の実現が難しい。
【0111】
また、前記重合開始剤は重合方法に応じて適宜選択でき、熱重合方法を用いる場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を用いる場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光をすべて使用する方法)を用いる場合には熱重合開始剤と光重合開始剤をすべて使用できる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射等の光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0112】
前記光重合開始剤は紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であればその構成の限定なく使用できる。
【0113】
前記光重合開始剤としては例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenylglyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上を使用できる。一方、アシルホスフィンの具体例としてはジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンエート等が挙げられる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings: Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0114】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用できる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)等があり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))等がある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley, 1981)」,p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0115】
このような重合開始剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して2重量部以下で使用できる。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出され得るので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなり、水可溶成分の含有量が高くなり加圧吸収能が低くなる等樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0116】
前記単量体組成物は必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤等の添加剤をさらに含むことができる。
【0117】
そして、前記単量体を含む単量体組成物は、例えば、水などの溶媒に溶解した溶液状態であり得、このような溶液状態の単量体組成物中の固形分含有量、すなわち単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は重合時間および反応条件等を考慮して適宜調節することができる。例えば、前記単量体組成物内の固形分含有量は10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であり得る。
【0118】
前記単量体組成物が前記の範囲の固形分含有量を有する場合、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を用いて重合後に未反応単量体を除去する必要が無いようにしながらも、後述する重合体の粉砕時の粉砕効率を調節するために有利であり得る。
【0119】
この時、使用できる溶媒は上述した成分を溶解できるものであれば、その構成の限定なく使用でき、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミド等より選択された1種以上を組み合わせて使用できる。
【0120】
また、前記カプセル化された発泡剤はコア-シェル構造を有する熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を意味し、炭化水素を含むコアと前記コア上に形成された熱可塑性樹脂からなるシェルを含むコア-シェル構造を有する。具体的には、前記コアを構成する炭化水素は低い沸点を有する液体炭化水素で熱によって気化しやすくなる。したがって、前記カプセル化された発泡剤に熱が加えられる場合、シェルをなす熱可塑性樹脂が軟化すると同時にコアの液体炭化水素が気化して、カプセル内部の圧力が増加することにより膨張し、そのため既存の大きさより増加した大きさの気泡が形成される。
【0121】
したがって、前記カプセル化された発泡剤は炭化水素気体を発生させるものであり、高分子の生成に参加する単量体間の発熱分解反応により窒素気体を発生させる有機発泡剤および高分子生成時に発生する熱を吸収して二酸化炭素気体を発泡させる無機発泡剤とは区分される。
【0122】
このようなカプセル化された発泡剤は前記コアとシェルをなす成分と各成分の重量、直径によって膨張特性が変わるので、これを調節することによって所望する大きさへの膨張が可能であり、そのため前記高吸水性樹脂の多孔性を調節することができる。
【0123】
具体的には、前記カプセル化された発泡剤は膨張前の平均直径(D0)が5~30μmである粒子形態を有する。前記カプセル化された発泡剤が5μm未満の平均直径を有するようにするのは製造上困難性があり、前記カプセル化された発泡剤の平均直径が30μmを超える場合には気孔の大きさが過度に大きいため効率よく表面積を増加させにくい。したがって、前記カプセル化された発泡剤が前記のような平均直径を示す時に樹脂内の適切な程度の気孔構造を達成するのに好適であると判断することができる。
【0124】
例えば、前記カプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径は5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、または10μm以上であり、また、30μm以下、25μm以下、20μm以下、17μm以下、16μm以下、または15μm以下であり得る。
【0125】
このようなカプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径(D0)はカプセル化された発泡剤粒子それぞれの直径を光学顕微鏡により平均フェレ(Feret)径として測定した後、これらの平均値を求めて測定する。
【0126】
この時、前記カプセル化された発泡剤のカプセル厚さは2~15μmであり得る。
【0127】
また、前記カプセル化された発泡剤は空気中での最大膨張大きさが20~190μmである。ここで、前記「カプセル化された発泡剤の最大膨張大きさ」とは、カプセル化された発泡剤に熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の粒子の直径範囲を意味する。前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張大きさを20μmより小さくするのは製造上困難性があり、空気中での最大膨張大きさが190μmを超える場合には気孔の大きさが過度に大きいため効率よく表面積を増加させにくい。
【0128】
例えば、前記カプセル化された発泡剤は空気中での最大膨張大きさが50~190μm、または70~190μm、75~190μm、または80~150μmであり得る。
【0129】
このようなカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張大きさは、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後150℃に予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した後、膨張したカプセル化された発泡剤を光学顕微鏡で観察して多く膨張した粒子の上位10重量%の直径を光学顕微鏡により平均フェレ(Feret)径として測定して求める。
【0130】
そして、前記カプセル化された発泡剤は空気中での最大膨張比率が5~15倍である。ここで、前記「カプセル化された発泡剤の最大膨張比率」とは、カプセル化された発泡剤の、熱を加える前に測定された平均直径(D0)に対する熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(DM)の比率(DM/D0)を意味する。前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率が5倍未満の場合、高吸水性樹脂内に適切な気孔構造を形成できず、使用しても高吸水性樹脂の吸収能および吸収速度が同時に向上した高吸水性樹脂の製造が不可能であるという問題があり、前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率が15倍を超えるようにするのは前記カプセル化された発泡剤の上述した膨張前の平均直径を考慮すると製造することが難しいという問題がある。したがって、上述した範囲の最大膨張比率を有するカプセル化された発泡剤が高吸水性樹脂に適切な気孔構造を形成するのに好適であると判断することができる。
【0131】
例えば、前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率は5倍以上、7倍以上、または8倍以上であり、また、15倍以下、13倍以下、11倍以下、または10倍以下であり得る。
【0132】
この時、前記カプセル化された発泡剤の熱を加える前に測定された平均直径(D0)は前述したように測定する。また、前記カプセル化された発泡剤の熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(DM)は、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後150℃に予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した後、膨張したカプセル化された発泡剤を光学顕微鏡で観察して多く膨張した粒子の上位10重量%の粒子それぞれの直径を光学顕微鏡により平均フェレ(Feret)径として測定した後、これらの平均値を求めて測定することができる。
【0133】
前記カプセル化された発泡剤の膨張特性は後述する実施例でより具体化することができる。
【0134】
前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張大きさおよび最大膨張比率を測定する理由は、前記カプセル化された発泡剤を使用して製造される高吸水性樹脂内に所望する大きさの気孔が形成されるかどうかを把握するためである。具体的には、発泡剤が発泡された形態は高吸水性樹脂の製造条件により変わるので一つの形態に定義するのは難しい。したがって、先にカプセル化された発泡剤を空気中で発泡させて膨張大きさおよび膨張比率を確認することによって、所望する気孔を形成するのに適するかどうかを確認することができる。
【0135】
そして、前記カプセル化された発泡剤のコアを構成する炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群より選ばれた1種以上であり得る。この中でも炭素数3~5の炭化水素(n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン)が上述した大きさの気孔を形成するのに好適であり、iso-ブタンが最も好適である。
【0136】
そして、前記カプセル化された発泡剤のシェルを構成する熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリロニトリル系化合物、芳香族ビニル系化合物、酢酸ビニル系化合物およびハロゲン化ビニル系化合物で構成された群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーであり得る。この中でも(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体が上述した大きさの気孔を形成するのに最も好適である。
【0137】
また、前記カプセル化された発泡剤の発泡開始温度(Tstart)は60℃~120℃、または65℃~120℃、または70℃~80℃であり得、発泡最大温度(Tmax)は100℃~160℃、または105℃~155℃、または110℃~120℃であり得る。上述した範囲を有する場合に後続の熱重合工程または乾燥工程で容易に発泡が起きて重合体内の気孔構造を導入することができる。このような発泡開始温度および発泡最大温度は熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer)を用いて測定可能である。
【0138】
また、前記カプセル化された発泡剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.05~1重量部で使用できる。前記発泡剤の含有量が0.05重量部未満の場合には発泡剤としての役割が微小であり、前記発泡剤の含有量が1重量部を超える場合には架橋重合体内の気孔が過度に多くて含水ゲル重合体のべたつきが増加して水溶性成分およびBPI値が減少するだけでなく、製造される高吸水性樹脂のゲル強度が落ち、密度が小さくなり流通と保管に問題を招く。例えば、前記カプセル化された発泡剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.05重量部以上、0.07重量部以上、0.09重量部以上、または0.1重量部以上であり、かつ0.8重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、または0.2重量部以下で使用できる。
【0139】
また、前記カプセル化された発泡剤とともに通常気泡安定剤として使用される界面活性剤をさらに添加することができる。例えば、前記気泡安定剤としてはアルキルスルフェート系化合物およびポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物で構成される群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。前記アルキルスルフェート系化合物の例としてはドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、ラウリル硫酸アンモニウム(ammonium lauryl sulfate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulfate)、またはミレス硫酸ナトリウム(sodium myreth sulfate)等が挙げられ、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物の例としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。この時、前記アルキルスルフェート系化合物はアニオン性界面活性剤であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物は非イオン性界面活性剤に該当する。
【0140】
この時、前記カプセル化された発泡剤および前記気泡安定剤は1:0.01~1:0.5の重量比で使用できる。
【0141】
また、前記カルボン酸系添加剤は乾式で混合するか、溶媒に溶解させた後溶液状態で混合するか、または前記添加剤を溶融させた後に混合することができる。この中で、例えば、前記添加剤は溶媒に溶解した溶液状態で混合されることができる。この時、溶媒としては無機溶媒または有機溶媒に制限されず、すべての種類を用いることができるが、乾燥過程の容易性と溶剤回収システムの費用を考慮すると水が最も好適である。
【0142】
また、前記カルボン酸系添加剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~10重量部で使用できる。この時、前記カルボン酸系添加剤が0.01重量部未満で使用される場合、含水ゲル重合体の表面べたつきを減少させるための役割をするのに充分でなく、前記カルボン酸系添加剤が10重量部を超えて使用される場合、泡発生による未反応物が生じ得る。より具体的には、前記カルボン酸系添加剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.05重量部以上、0.1重量部以上であり、かつ2重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、または0.4重量部以下であることが含水ゲル重合体の表面べたつきを最小化し、かつ高吸水性樹脂の吸収性能を低下させないので好適である。
【0143】
一方、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合は、熱重合、光重合または混成重合して含水ゲル重合体を形成できれば、特に構成の限定なく行われることができる。
【0144】
具体的には、重合方法は重合エネルギ源によって大きく熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ得、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われるか、底が平らな容器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0145】
一例として、前述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給するか反応器を加熱して熱重合を行って得られた含水ゲル重合体は反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器の排出口から排出される含水ゲル重合体は数センチメートルないし数ミリメートルの形態であり得る。具体的には、得られる含水ゲル重合体の大きさは注入される単量体組成物の濃度および注入速度等によって多様に示されるが、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル重合体が得られる。
【0146】
また、前述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器または底が平らな容器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度または注入量に応じて変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度の単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合は過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均一に起きない。
【0147】
この時、このような方法で得られた含水ゲル重合体は含水率が30~70重量%であり得る。例えば、前記含水ゲル重合体の含水率は35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、または50重量%以上であり、かつ70重量%以下、65重量%以下、または60重量%以下であり得る。前記含水ゲル重合体の含水率が過度に低い場合、後の粉砕段階で適切な表面積を確保しにくいため効果的に粉砕されず、前記含水ゲル重合体の含水率が過度に高い場合は後の粉砕段階で受ける圧力が増加して所望する粒度まで粉砕させることが難しい。
【0148】
一方、本明細書の全体における「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によってクラム状態の重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は常温で約180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階の5分を含んで40分に設定して含水率を測定する。
【0149】
一方、前記含水ゲル重合体に対して下記1)~4)の方法に従って測定した表面べたつき指数(25℃温度条件)は200g以下であり得る:
1)底面(含水ゲル重合体の製造時の反応容器と当たる面)を備えた含水ゲル重合体を横2.5cm×縦2.5cm×厚さ2cmにカットした2個の試験片を製造する段階;
2)製造された2個の試験片それぞれをTexture Analyzer機器の上/下ホルダにそれぞれ入れて固定し、この時、前記2個の試験片は試験片の底面が各ホルダの外側に1mm出るように固定される段階;
3)前記2個の試験片が固定された上/下ホルダをホルダ間の距離が1mmになるように近接させて前記2個の試験片の底面を付着させた後、これを5秒間維持する段階;および
4)前記上のホルダを引っ張って前記2個の試験片が付着した部分が分離される時の最大力(max force,g)を測定し、これを表面べたつき指数とする段階。
【0150】
この時、含水ゲル重合体の「底面」とは、重合時の反応容器と当たって重合のための光源を直接受けない面を意味し、このような底面は通常べたつきを有するので、前記のようなべたつき指数の測定に用いられる。
【0151】
このような表面べたつき指数に対する定量分析により、含水ゲル重合体のべたつきの有無を数値化することができ、含水ゲル重合体の表面べたつき程度と水可溶成分との関係を把握することができる。より具体的には、前記含水ゲル重合体の表面べたつき指数は200g以下、180g以下、150g以下、または50g以下であり得る。また、前記含水ゲル重合体の表面べたつき指数は低いほど有利であり、その下限は0gであるが、一例として5g以上、10g以上、または20g以上であり得る。
【0152】
(段階2)
前記段階は製造された含水ゲル重合体を乾燥した後正常粒子水準まで粉砕して、最終高吸水性樹脂を製造する段階である。
【0153】
先に、含水ゲル重合体を乾燥する前に、含水ゲル重合体を粉砕機を用いてチョッピングまたは細切する段階を行うことができる。
【0154】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbogrinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0155】
この中で、前記チョッピングはチョッパー(chopper)、より具体的にはミートチョッパー(meat chopper)により行われることができる。この時、前記ミートチョッパーは1個以上の多孔板を含む細切モジュールを含み、前記多孔板それぞれは含水ゲル重合体が通過できる一定の大きさを有する多数の細切孔を備えているものであり得る。また、前記多孔板の細切孔の孔径(hole size)は3mm~16mmであり得る。言い換えると、前記粉砕は前記添加剤が混合された含水ゲル重合体が多孔板の細切孔を通過しながら粉砕されるように押し出す方式によって行われると見ることができる。この時、前記含水ゲル状重合体を押し出すために押出機が用いられるが、例えば単一または多重スクリュー型押出機が用いられる。
【0156】
次に、チョッピングされた含水ゲル重合体を乾燥して、水分を除去する段階である。具体的には、前記チョッピングされた含水ゲル重合体の乾燥は、製造された高吸水性樹脂に含まれている複数の高吸水性樹脂粒子それぞれの含水率が約10重量%以下、具体的には、約0.01~約10重量%になるように行われ得る。
【0157】
この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約150~約250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生し得、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは前記乾燥は約150~約200℃の温度で、さらに好ましくは約160~約180℃の温度で行われる。
【0158】
一方、乾燥時間は工程効率等を考慮して、約20分~約90分間行われるが、これに限定されない。
【0159】
前記乾燥段階の乾燥方法は含水ゲル重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択されて用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射等の方法により乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階を行った後の重合体の含水率は約5~約10重量%であり得る。
【0160】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0161】
粉砕段階後に得られる重合体粉末であるベース樹脂は粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)等が用いられるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0162】
そして、このような粉砕段階の後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られるベース樹脂を粒径によって分級する。好ましくは粒径が約150~約850μmである重合体を分級して、このような粒径を有するベース樹脂に対してのみ表面架橋反応段階を経ることができる。このような粒径は欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association,EDANA)の規格EDANA WSP 220.3方法に従って測定されることができる。
【0163】
(表面架橋段階)
以後、必要に応じて、表面架橋剤の存在下で、前記高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層を形成する段階をさらに含むことができる。前記段階によって、前記高吸水性樹脂粒子に含まれている架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋し、前記高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成されることができる。
【0164】
前記表面架橋剤としては従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特に制限なくすべて使用できる。例えば、前記表面架橋剤はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選ばれた1種以上のポリオール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選ばれた1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;オキサゾリジノン等のオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;等を含むことができる。
【0165】
具体的には、前記表面架橋剤として上述した表面架橋剤のうち1種以上、または2種以上、または3種以上が使用できるが、例えば、エチレンカーボネート-プロピレンカーボネート(ECPC)、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールカーボネートが使用できる。
【0166】
このような表面架橋剤は前記高吸水性樹脂粒子100重量部に対して約0.001~約5重量部で使用できる。例えば、前記表面架橋剤は高吸水性樹脂粒子100重量部に対して0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.05重量部以上であり、5重量部以下、4重量部以下、または3重量部以下の含有量で使用できる。表面架橋剤の含有量の範囲を上述した範囲に調節して優れた吸収諸般物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0167】
また、前記表面架橋層を形成する段階は、前記表面架橋剤に無機物を追加して行われる。すなわち、前記表面架橋剤および無機物質の存在下で、前記高吸水性樹脂粒子の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を行うことができる。
【0168】
このような無機物質としてシリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群より選ばれた1種以上の無機物質を使用できる。前記無機物質は粉末形態または液状形態で使用でき、特にアルミナ粉末、シリカ-アルミナ粉末、チタニア粉末、またはナノシリカ溶液を使用できる。また、前記無機物質は高吸水性樹脂粒子100重量部に対して約0.001~約1重量部の含有量で使用できる。
【0169】
また、前記表面架橋剤を高吸水性樹脂組成物に混合する方法についてはその構成の限定はない。例えば、表面架橋剤と高吸水性樹脂組成物を反応槽に入れて混合するか、高吸水性樹脂組成物に表面架橋剤を噴射する方法、連続して運転されるミキサーに高吸水性樹脂組成物と表面架橋剤を連続して供給して混合する方法等が用いられる。
【0170】
前記表面架橋剤と高吸水性樹脂組成物を混合時、追加で水およびメタノールを共に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤が高吸水性樹脂組成物にまんべんなく分散できる利点がある。この時、追加される水およびメタノールの含有量は表面架橋剤の均一な分散を誘導し、高吸水性樹脂組成物の固まる現象を防止すると同時に架橋剤の表面浸透の深さを最適化するために適宜調節されることができる。
【0171】
前記表面架橋工程は約80℃~約250℃の温度で行われる。より具体的には、前記表面架橋工程は約100℃~約220℃、または約120℃~約200℃の温度で、約20分~約2時間、または約40分~約80分間行われる。上述した表面架橋工程条件を充足する時高吸水性樹脂粒子の表面が十分に架橋して加圧吸収能が増加することができる。
【0172】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体等を使用できるが、これらに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0173】
以下、発明の理解を深めるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものであり、発明をこれらだけに限定するものではない。
【0174】
<実施例>
カプセル化された発泡剤の準備
実施例に使用されるカプセル化された発泡剤として、コアはiso-ブタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体からなる、Matsumoto社製のF-36Dを準備した。この時、F-36Dの発泡開始温度(Tstart)は70℃~80℃であり、発泡最大温度(Tmax)は110℃~120℃である。
【0175】
それぞれのカプセル化された発泡剤の直径は光学顕微鏡により平均フェレ(Feret)径として測定された。そして、カプセル化された発泡剤の直径の平均値を求めてカプセル化された発泡剤の平均直径と規定した。
【0176】
また、前記カプセル化された発泡剤の膨張特性を確認するために、ガラスペトリ皿の上に前記準備したカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後150℃に予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した。カプセル化された発泡剤は熱によって徐々に膨張するが、これを光学顕微鏡で観察してカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率および最大膨張大きさを測定した。
【0177】
カプセル化された発泡剤に熱を加えた後に多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径を測定して最大膨張大きさと規定し、カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D0)に対する熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(DM)の比率(DM/D0)を求めて最大膨張比率であると規定した。
【0178】
準備したカプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径は13μmであり、空気中の最大膨張比率は約9倍であり、最大膨張大きさは約80~150μmであった。
【0179】
実施例1
(段階1)
攪拌機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸100g(1.388mol)、内部架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート(Mn=508)0.001g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.24g、光重合開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.008g、熱重合開始剤過硫酸ナトリウム0.2g、32%の苛性ソーダ溶液123.5g、カプセル化された発泡剤(F-36D)0.1g、下記化学式1-6で表されるナトリウムステアロイル-2-ラクチレート(Sodium stearoyl-2-lactylate,Almax-6900,イルシンウェルス社製)0.4g、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate;SDS)水溶液0.09gを水59.0gと常温で混合して、全体固形分含有量が45重量%である単量体組成物を製造した(アクリル酸の中和度:70モル%)。この時、ナトリウムステアロイル-2-ラクチレートは水に溶解させた状態で投入した。
【0180】
【0181】
その後、前記単量体組成物を幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。そして、前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cm2の強度を有する紫外線を照射して60秒間重合反応を行い、含水率が50重量%であるシート状の含水ゲル重合体を得た。
【0182】
(段階2)
次に、前記重合反応により得た含水ゲル重合体をミートチョッパー(meat chopper)を用いて前記含水ゲル重合体が300μm~5000μmの粒径を有する粒子になるように粗粉砕した。この時、ミートチョッパーとしては孔径が3mmである多数の細切孔を備えた多孔板が含まれたミートチョッパーを用いた。
【0183】
その後、前記粉砕物を上下に風量転移が可能なコンベクションオーブンを用いて180℃のホットエア(hot air)を43分間乾燥して、乾燥物である粉末形態のベース樹脂を得た。得られた生成物をASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子の大きさを有する高吸水性樹脂を製造した。
【0184】
実施例2
実施例1でカプセル化された発泡剤(F-36D)を0.15g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0185】
実施例3
実施例1でカプセル化された発泡剤(F-36D)を0.2g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0186】
実施例4
実施例1で化学式1-6で表されるナトリウムステアロイル-2-ラクチレートを0.1g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0187】
実施例5
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートの代わりに化学式1-1で表されるモノラウリルマレエート(monolauryl maleate)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。この時、下記化学式1-1で表されるモノラウリルマレエートはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)と1-ドデカノールを1:1のモル比で混合した後60℃で3時間の間反応させて製造した。
【0188】
【0189】
実施例6
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートの代わりに化学式1-4で表されるモノステアリルマレアート(monostearyl maleate)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。この時、下記化学式1-4で表されるモノステアリルマレアートはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)とステアリルアルコールを1:1のモル比で混合した後80℃で3時間の間反応させて製造したものを使用した。
【0190】
【0191】
実施例7
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートの代わりに化学式1-5で表されるモノラウリルサクシネート(monolauryl succinate)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。この時、下記化学式1-5で表されるモノラウリルサクシネートは無水コハク酸(Succinic acid anhydride)と1-ドデカノールを1:1のモル比で混合した後110℃で3時間の間反応させて製造したものを使用した。
【0192】
【0193】
比較例1
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートを使用しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0194】
比較例2
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートを使用せず、カプセル化された発泡剤(F-36D)を0.15g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0195】
比較例3
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートを使用せず、カプセル化された発泡剤(F-36D)を0.2g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0196】
比較例4
実施例1でナトリウムステアロイル-2-ラクチレートの代わりにステアリン酸ナトリウムを使用して高吸水性樹脂を製造しようとしたが、水に溶解しない不溶性を示して単量体組成物と混合されなかったので、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造することができなかった。
【0197】
試験例1
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、下記のような方法で遠心分離保水能(CRC)、加圧吸水能(AUP)、吸収速度、通液性およびケーキング防止効率をそれぞれ測定し、その結果を下記表1に示した。特に表記しない限り、下記物性評価はすべての過程を恒温恒湿室(23±2℃,相対湿度45±10%)で行い、測定誤差を防止するために3回測定平均値を測定データとした。また、下記物性評価で生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0198】
(1)遠心分離保水能(CRC,Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂組成物の無荷重下吸収倍率による保水能を欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association,EDANA)の規格EDANA WSP 241.3に従って測定した。
【0199】
具体的には、実施例および比較例によりそれぞれ得た樹脂組成物から、#30-50のふるいで分級した樹脂組成物を得た。このような樹脂組成物W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同じ操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。
【0200】
得られた各質量を用いて下記数式2によりCRC(g/g)を算出した。
【0201】
[数式2]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0202】
(2)水可溶成分(E/C)
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂のうち分級(#40-50)された高吸水性樹脂粒子を試料とし、EDANA法WSP 270.2方法に従って前記試料を1時間の間膨潤させた後に水可溶成分を測定した。
【0203】
具体的には、ASTM規格の標準網ふるい#40-50を用いて分級した高吸水性樹脂1.0gを、200g 0.9重量%のNaCl溶液に入れて500rpmで攪拌しながら1時間の間自由膨潤させた後、フィルターペーパーで水溶液を濾過した。前記濾過された溶液を0.1N苛性ソーダ溶液でpH10.0に1次滴定した後、0.1N塩化水素溶液でpH2.7に逆滴定を行って中和時に必要な量から架橋化されていない高分子物質を水可溶成分として計算して測定した。
【0204】
(3)BPI(Base Polymer Index)
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、前記で求めたCRCおよび水可溶成分を用いて下記数式1によりBPI値を求めた。この時、求めた値は小数点第2桁で四捨五入して示した。
【0205】
【0206】
(4)表面べたつき指数(表面べたつきの有無の定量分析)
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂の段階1で製造された含水ゲル重合体に対して、下記1)~4)の方法に従って測定した表面べたつき指数(25℃温度条件)を測定し、一つの高吸水性樹脂に対して別途の試験片で3回繰り返して測定した後にその平均値を求めた。
【0207】
1)底面(含水ゲル重合体の製造時の反応容器と当たる面)を備えた含水ゲル重合体を横2.5cm×縦2.5cm×厚さ2cmにカットした2個の試験片を製造した。
2)製造された2個の試験片それぞれをTexture Analyzer機器の上/下ホルダにそれぞれ入れて固定した。この時、前記2個の試験片は試験片の底面が各ホルダの外側に1mm出るように固定された。
3)前記2個の試験片が固定された上/下ホルダをホルダ間の距離が1mmになるように近接させて前記2個の試験片の底面を付着させた後、これを5秒間維持した。
4)前記上のホルダを引っ張って前記2個の試験片が付着した部分が分離される時の最大力(max force,g)を測定し、これを表面べたつき指数とした。
【0208】
(5)表面べたつきの分析(表面べたつきの有無の定性分析)
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂の段階1で製造された含水ゲル重合体を手で触った時べたつきがない場合は「X」、若干ある場合は「△」、べたつきが多い場合は「O」で表記した。
【0209】
【0210】
前記表1で確認できるように、前記化学式1で表されるカルボン酸またはその塩を含む実施例の高吸水性樹脂は、比較例の高吸水性樹脂に比べて製造工程中の含水ゲル重合体のべたつきが顕著に減少して、高吸水性樹脂の総重量を基準として4重量%以下の水可溶成分および31以上のBPI(Base Polymer Index)値を示すことがわかる。