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特許7471726メタロセン担持触媒の製造方法、メタロセン担持触媒およびこれを利用したポリオレフィンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】メタロセン担持触媒の製造方法、メタロセン担持触媒およびこれを利用したポリオレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/659 20060101AFI20240415BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240415BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08F4/659
C08F4/6592
C08F10/00 510
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022554377
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2021010360
(87)【国際公開番号】W WO2022035132
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0101353
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0102776
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チョルファン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スンミ・イ
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンウ・クォン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159591(JP,A)
【文献】特開2000-038418(JP,A)
【文献】特開平08-053509(JP,A)
【文献】特表2021-525307(JP,A)
【文献】特表2018-529826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00- 4/82
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シリカ系担体に下記化学式1のアルミニウムアルキルハライドを担持する段階;
(ii)前記アルミニウムアルキルハライドが担持された前記シリカ系担体に助触媒化合物を担持する段階;および
(iii)前記アルミニウムアルキルハライドおよび前記助触媒化合物が担持された担体にメタロセン化合物を担持する段階;を含む、メタロセン担持触媒の製造方法。
【化1】
(前記化学式1で、
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、C1-5のアルキルまたはハロゲンであり、前記R11~R13のうちの一つまたは二つはハロゲンである。)
【請求項2】
前記アルミニウムアルキルハライドは、ジメチルアルミニウムクロリド(dimethylaluminum chloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、ジイソブチルアルミニウムクロリド(diisobutylaluminum chloride)、メチルアルミニウムジクロリド(methylaluminum dichloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethylaluminum dichloride)、およびイソブチルアルミニウムジクロリド(isobutylaluminum dichloride)からなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項1に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【請求項3】
前記段階(i)は、前記アルミニウムアルキルハライドを前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり0.1mmol~20mmolで投入して攪拌する方法で行われる、請求項1または2に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【請求項4】
前記シリカ系担体は、シリカ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、およびシリカ-ジルコニアからなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【請求項5】
前記助触媒化合物は、下記化学式2の化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【化2】
(前記化学式2で、
21、R22、およびR23は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-20のヒドロカルビル基、またはハロゲンで置換されたC1-20のヒドロカルビル基である。)
【請求項6】
前記助触媒化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n-ブチルアルミノキサン、およびイソブチルアルミノキサンからなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【請求項7】
前記メタロセン化合物は、下記化学式3の化合物および下記化学式4の化合物からなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【化3】
(前記化学式3および4で、
31、R32、R41、およびR42は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、またはC2-20アルコキシアルキルであり、
31、X32、X41、およびX42は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1-20アルキルである。)
【請求項8】
前記メタロセン化合物は、前記化学式3の第1メタロセン化合物と前記化学式4の第2メタロセン化合物を含み、
前記アルミニウムアルキルハライドおよび前記助触媒化合物が担持されたシリカ系担体に前記第1メタロセン化合物と前記第2メタロセン化合物が順次に担持される、
請求項7に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【請求項9】
前記メタロセン化合物は、前記第1メタロセン化合物および前記第2メタロセン化合物を1:0.3~1:3.5のモル比で含む、請求項8に記載のメタロセン担持触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製造方法によって製造されるメタロセン担持触媒であって、
シリカ系担体;
前記シリカ系担体に担持された下記化学式1のアルミニウムアルキルハライド、助触媒化合物、およびメタロセン化合物を含み、
前記アルミニウムアルキルハライドは、前記シリカ系担体の気孔内部より前記シリカ系担体の表面上に相対的により高い比率で担持されており、
前記助触媒化合物は、前記シリカ系担体の表面より前記シリカ系担体の気孔内部に相対的により高い比率で担持されている、
メタロセン担持触媒。
【化4】
(前記化学式1で、
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、C1-5のアルキルまたはハロゲンであり、前記R11~R13のうちの一つまたは二つはハロゲンである。)
【請求項11】
前記アルミニウムアルキルハライドは、ジメチルアルミニウムクロリド(dimethylaluminum chloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、ジイソブチルアルミニウムクロリド(diisobutylaluminum chloride)、メチルアルミニウムジクロリド(methylaluminum dichloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethylaluminum dichloride)、およびイソブチルアルミニウムジクロリド(isobutylaluminum dichloride)からなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項10に記載のメタロセン担持触媒。
【請求項12】
前記助触媒化合物は、下記化学式2の化合物である、請求項10または11に記載のメタロセン担持触媒。
【化5】
(前記化学式2で、
21、R22、およびR23は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-20のヒドロカルビル基、またはハロゲンで置換されたC1-20のヒドロカルビル基である。)
【請求項13】
前記メタロセン化合物は、下記化学式3の化合物および下記化学式4の化合物からなる群より選択された1種以上の化合物である、請求項10から12のいずれか一項に記載のメタロセン担持触媒。
【化6】
(前記化学式3および4で、
31、R32、R41、およびR42は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、またはC2-20アルコキシアルキルであり、
31、X32、X41、およびX42は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1-20アルキルである。)
【請求項14】
前記メタロセン化合物は、前記化学式3の第1メタロセン化合物と前記化学式4の第2メタロセン化合物を含む、請求項13に記載のメタロセン担持触媒。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載のメタロセン担持触媒の存在下でオレフィン系単量体を重合してポリオレフィンを得る段階を含み、
前記ポリオレフィンは、粒子サイズ125μm未満のポリオレフィン微粉と粒子サイズ2.0mm超過のポリオレフィンチャンクをそれぞれ2重量%以下で含む、
ポリオレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2020年8月12日付韓国特許出願第10-2020-0101353号および2021年8月4日付韓国特許出願第10-2021-0102776号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、メタロセン担持触媒の製造方法、メタロセン担持触媒およびこれを利用したポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン重合触媒系は、チーグラーナッタおよびメタロセン触媒系に分類することができる。
【0004】
そのうち、メタロセン触媒は、遷移金属化合物が主成分である主触媒とアルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒との組み合わせからなる。
【0005】
メタロセン触媒は、均一系錯体触媒であって、シングルサイト触媒(single site catalyst)である。シングルサイト触媒の特性により、分子量分布が狭く、共単量体の組成分布が均一な高分子が得られ、触媒のリガンド構造変形および重合条件の変更により高分子の立体規則度、共重合特性、分子量、結晶化度などを変化させることができる特性を有している。
【0006】
一般にオレフィンの重合工程は、高圧工程、溶液工程、スラリー工程、気相工程などに分類され、前記重合工程に多様なメタロセン系触媒を適用して所望の物性を有するポリオレフィンを製造しようとする努力が多方面でなされている。
【0007】
スラリーまたは気相(gas-phase)重合工程を利用したポリオレフィンの製造方法で使用されるメタロセン触媒は、適当な担体に固く固定化されてリーチング(leaching)による反応器のファウリング(fouling)を発生させてはならない。
【0008】
特に、担持触媒を利用したオレフィン重合の進行時、安定した工程進行のためにポリオレフィンパウダーのモルフォロジーコントロールが重要である。得られるポリオレフィンの不均一な粒子模様は反応器内部で粒子間の衝突により微粉発生を増加させることができる。スラリー工程では、前記微粉の排出が難しくて工程生産性の低下の要因になる。気相工程では、前記微粉が反応器壁面にシーティング(sheeting)やユーティリティー誤作動を誘発するなど安定した工程進行を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、優れたオレフィン重合活性を有しながらも、均一なパウダーモルフォロジー(morphology)を有するポリオレフィンの製造を可能にするメタロセン担持触媒の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、優れたオレフィン重合活性を有しながらも、均一なパウダーモルフォロジーを有するポリオレフィンの製造を可能にするメタロセン担持触媒を提供することにある。
【0011】
そして、本発明の目的は、前記メタロセン担持触媒を利用したポリオレフィンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、
(i)シリカ系担体に下記化学式1のアルミニウムアルキルハライドを担持する段階;
(ii)前記アルミニウムアルキルハライドが担持された前記シリカ系担体に助触媒化合物を担持する段階;および
(iii)前記アルミニウムアルキルハライドおよび前記助触媒化合物が担持された担体にメタロセン化合物を担持する段階;を含む、メタロセン担持触媒の製造方法が提供される。
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1で、
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、C1-5のアルキルまたはハロゲンであり、前記R11~R13のうちの一つまたは二つはハロゲンである。
【0015】
本発明の他の一実施形態によれば、
シリカ系担体;
前記シリカ系担体に担持された前記化学式1のアルミニウムアルキルハライド、助触媒化合物、およびメタロセン化合物を含み、
前記アルミニウムアルキルハライドは、前記シリカ系担体の気孔内部より前記シリカ系担体の表面上に相対的により高い比率で担持されており、
前記助触媒化合物は、前記シリカ系担体の表面より前記シリカ系担体の気孔内部に相対的により高い比率で担持されている、
メタロセン担持触媒が提供される。
【0016】
本発明のまた他の一実施形態によれば、
前記メタロセン担持触媒の存在下でオレフィン系単量体を重合してポリオレフィンを得る段階を含み、
前記ポリオレフィンは、粒子サイズ125μm未満のポリオレフィン微粉と粒子サイズ2.0mm超過のポリオレフィンチャンクをそれぞれ2重量%以下で含む、
ポリオレフィンの製造方法が提供される。
【0017】
以下、発明の実施形態によるメタロセン担持触媒の製造方法、メタロセン担持触媒およびこれを利用したポリオレフィンの製造方法について説明する。
【0018】
本明細書で異なって定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は本発明が属する通常の技術者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限すると意図されない。
【0019】
本明細書で使用される単数の形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0020】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0021】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、前記思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0022】
本明細書で、例えば「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~そばに」などで二つの部分の位置関係が説明される場合、「直ちに」または「直接」という表現が使用されない以上、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することができる。
【0023】
本明細書で、例えば「~後に」、「~に次いで」、「~次に」、「~前に」などで時間的前後関係が説明される場合、「直ちに」または「直接」という表現が使用されない以上、連続的でない場合も含むことができる。
【0024】
本明細書で、「少なくとも一つ」の用語は、一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組み合わせを含むものと理解されなければならない。
【0025】
I.メタロセン担持触媒の製造方法
発明の一実施形態によれば、
(i)シリカ系担体に下記化学式1のアルミニウムアルキルハライドを担持する段階;
(ii)前記アルミニウムアルキルハライドが担持された前記シリカ系担体に助触媒化合物を担持する段階;および
(iii)前記アルミニウムアルキルハライドおよび前記助触媒化合物が担持された担体にメタロセン化合物を担持する段階;を含む、メタロセン担持触媒の製造方法が提供される。
【0026】
【化2】
【0027】
前記化学式1で、
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、C1-5のアルキルまたはハロゲンであり、前記R11~R13のうちの一つまたは二つはハロゲンである。
【0028】
本発明者らの継続的な研究の結果、前記段階の順に製造されたメタロセン担持触媒は、優れたオレフィン重合活性を有しながらも、均一なパウダーモルフォロジーを有するポリオレフィンの製造を可能にすることが確認された。
【0029】
一般に助触媒化合物をシリカ系担体に反応させる時に反応できる作用基は、シリカ系担体の気孔内部および外部表面に全て分布する。そして、反応物の接近が容易なシリカ系担体の外部表面により多量の助触媒化合物が反応するようになる。
【0030】
しかし、オレフィン重合の進行時、触媒の外部よりはオレフィン系単量体の拡散が制限される触媒の内部で反応が活発に起こってこそ均一なフラグメンテーション(fragmentation)が可能であり、均一なパウダーモルフォロジー(morphology)を有するポリオレフィンが得られる。
【0031】
前記実施形態によるメタロセン担持触媒の製造方法は、シリカ系担体に前記化学式1のアルミニウムアルキルハライドを優先的に担持し、以降に助触媒化合物とメタロセン化合物を順次に担持する。
【0032】
前記アルミニウムアルキルハライドを適用した前記順序の担持で行われることによって、触媒活性増加により大きい影響を与える助触媒化合物が前記シリカ系担体の気孔内部に相対的により高い比率で担持され得る。このような方法で製造されたメタロセン担持触媒では、均一なフラグメンテーションが行われ得、高い重合活性で均一なパウダーモルフォロジーを有するポリオレフィンが提供され得る。
【0033】
まず、(i)シリカ系担体に前記化学式1のアルミニウムアルキルハライドを担持する段階が行われる。
【0034】
前記段階(i)は、前記シリカ系担体と前記アルミニウムアルキルハライドを混合した後、攪拌しながら反応させる方法で行われ得る。
【0035】
前記シリカ系担体は、表面に存在するヒドロキシ基含有量が高くて触媒活性改善効果に優れている。また、前記シリカ系担体は、表面および内部に気孔を含んで比表面積が広い。
【0036】
好ましくは、前記シリカ系担体は、シリカ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、およびシリカ-ジルコニアからなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0037】
選択的に、担持効率を上げ、リーチングおよびファウリングを最小化するために、前記アルミニウムアルキルハライドの担持前に前記シリカ系担体に対してか焼(calcination)または乾燥して表面改質する段階が行われ得る。
【0038】
一実施例によれば、前記シリカ系担体は0.1~7重量%の含水率を有することができる。ここで、前記含水率は、担体の総重量に対して担体内に含まれている水分の重量を百分率で示す値である。前記範囲の含水率を有することによって、前記シリカ系担体は0.1~10mmol/g、あるいは0.5~5mmol/g、あるいは0.7~2mmol/gのヒドロキシ基を含むことができる。
【0039】
前記化学式1のアルミニウムアルキルハライドの担持は、前記シリカ系担体が分散された溶液に前記アルミニウムアルキルハライドを投入し、攪拌しながら反応させることによって行われ得る。
【0040】
この時、前記アルミニウムアルキルハライドは、溶媒に溶解した溶液状で投入されることが前記シリカ系担体との接触をより円滑に誘導することができるため好ましい。
【0041】
前記溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体などの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒;アセトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒などを用いることができる。これらの中でもヘキサン、ヘプタン、トルエン、またはジクロロメタンを好適に用いることができ、溶解度が低い触媒に比べて分散効果に優れたトルエンをより好適に用いることができる。
【0042】
前記アルミニウムアルキルハライドは、前記助触媒化合物より先に前記シリカ系担体と反応して、前記シリカ系担体の気孔内部より前記シリカ系担体の表面上に相対的により高い比率で担持され得る。つまり、前記アルミニウムアルキルハライドは、触媒活性増加により大きい影響を与える前記助触媒化合物が前記シリカ系担体の気孔内部に相対的に高い比率で担持され得るようにする。そのため、オレフィン重合の進行時、オレフィン系単量体の拡散が制限される触媒の内部で反応が活発に起こることができ、均一なフラグメンテーションが行われ得る。
【0043】
好ましくは、前記アルミニウムアルキルハライドは、ジメチルアルミニウムクロリド(dimethylaluminum chloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、ジイソブチルアルミニウムクロリド(diisobutylaluminum chloride)、メチルアルミニウムジクロリド(methylaluminum dichloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethylaluminum dichloride)、およびイソブチルアルミニウムジクロリド(isobutylaluminum dichloride)からなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0044】
前記段階(i)は、前記アルミニウムアルキルハライドを前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり0.1mmol~20mmolで投入して攪拌する方法で行われ得る。
【0045】
好ましくは、前記段階(i)で前記アルミニウムアルキルハライドは、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり0.1mmol以上、あるいは1.0mmol以上、あるいは3.0mmol以上;そして20.0mmol以下、あるいは15.0mmol以下、あるいは10.0mmol以下で投入され得る。
【0046】
具体的に、前記段階(i)で前記アルミニウムアルキルハライドは、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり0.1mmol~20.0mmol、あるいは1.0mmol~20.0mmol、あるいは1.0mmol~15.0mmol、あるいは3.0mmol~15.0mmol、あるいは3.0mmol~10.0mmolで投入され得る。
【0047】
前記含有量範囲でアルミニウムアルキルハライドを投入することによって、本発明によるポリオレフィンパウダーの均一なモルフォロジーと微粉発生低減効果を発現させることができる。
【0048】
前記段階(i)は、使用された溶媒の沸点未満の温度下で行われ得る。好ましくは、前記段階(i)は、100℃以下、あるいは30~90℃下で行われ得る。
【0049】
次に、(ii)前記アルミニウムアルキルハライドが担持された前記シリカ系担体に助触媒化合物を担持する段階が行われる。
【0050】
前記段階(ii)は、前記アルミニウムアルキルハライドが担持された前記シリカ系担体と前記助触媒化合物を混合した後、攪拌しながら反応させる方法で行われ得る。
【0051】
この時、前記助触媒化合物は、溶媒に溶解した溶液状で投入されることが前記シリカ系担体との接触をより円滑に誘導することができるため好ましい。
【0052】
前記溶媒としては、前記段階(i)で説明した溶媒を用いることができる。
【0053】
前記助触媒化合物は、メタロセン化合物の活性を補助する化合物として、本発明が属する技術分野で助触媒として知られた化合物を特別な制限なしに用いることができる。
【0054】
好ましくは、前記助触媒化合物は、下記化学式2の化合物でありうる。
【0055】
【化3】
【0056】
前記化学式2で、
21、R22、およびR23は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-20のヒドロカルビル基、またはハロゲンで置換されたC1-20のヒドロカルビル基である。
【0057】
前記ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を除去した形態の1価作用基として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルアルキル基、アルアルケニル基、アルアルキニル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基およびアルキニルアリール基などを含むことができる。
【0058】
前記C1-20のヒドロカルビル基は、炭素数1~15または炭素数1~10のヒドロカルビル基でありうる。具体的に、前記C1-20のヒドロカルビル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシル基などの直鎖、分枝鎖または環状アルキル基;またはフェニル基、ナフチル基、またはアントラセニル基などのアリール基でありうる。
【0059】
前記化学式2の化合物は、前記シリカ系担体上に存在するヒドロキシル基のスカベンジャー(scavenger)として作用して触媒活性を向上させることができる。前記化学式2の化合物は、触媒前駆体のハロゲン基をメチル基に転換させてポリオレフィンの重合時、鎖成長を促進させることができる。また、前記化学式2の化合物は、後述するメタロセン化合物との適用時により優れた触媒活性改善効果を示すことができる。
【0060】
一実施例によれば、前記助触媒化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n-ブチルアルミノキサン、およびイソブチルアルミノキサンからなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0061】
好ましくは、前記段階(ii)で前記助触媒化合物は、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり5.0mmol以上、あるいは8.0mmol以上、あるいは10.0mmol以上;そして25.0mmol以下、あるいは20.0mmol以下で投入され得る。
【0062】
具体的に、前記段階(ii)で前記助触媒化合物は、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり5.0mmol~25.0mmol、あるいは8.0mmol~25.0mmol、あるいは8.0mmol~20.0mmol、あるいは10.0mmol~20.0mmolで投入され得る。
【0063】
次に、(iii)前記アルミニウムアルキルハライドおよび前記助触媒化合物が担持された担体にメタロセン化合物を担持する段階が行われる。
【0064】
前記メタロセン化合物は、前記助触媒化合物と共に触媒としての活性を示すことができるようにする主触媒成分であり、本発明が属する技術分野でポリオレフィンの製造に使用されるものであれば特別な制限なしに用いることができる。
【0065】
発明の一実施例によれば、前記メタロセン化合物は、下記化学式3の化合物および下記化学式4の化合物からなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0066】
【化4】
【0067】
前記化学式3および4で、
31、R32、R41、およびR42は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、またはC2-20アルコキシアルキルであり、
31、X32、X41、およびX42は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1-20アルキルである。
【0068】
前記ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)でありうる。
【0069】
前記C1-20アルキルは、直鎖、分枝鎖または環状アルキルでありうる。具体的に、前記C1-20アルキルは、C1-20直鎖アルキル;C1-10直鎖アルキル;C1-5直鎖アルキル;C3-20分枝鎖または環状アルキル;C3-15分枝鎖または環状アルキル;またはC3-10分枝鎖または環状アルキルでありうる。より具体的に、前記C1-20アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチルまたはシクロヘキシルなどでありうる。
【0070】
前記C2-20アルケニルは、直鎖、分枝鎖または環状アルケニルでありうる。具体的に、前記C2-20アルケニルは、C2-20直鎖アルケニル、C2-10直鎖アルケニル、C2-5直鎖アルケニル、C3-20分枝鎖アルケニル、C3-15分枝鎖アルケニル、C3-10分枝鎖アルケニル、C5-20環状アルケニルまたはC5-10環状アルケニルでありうる。より具体的に、前記C2-20アルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルまたはシクロヘキセニルなどでありうる。
【0071】
前記C1-20アルコキシは、直鎖、分枝鎖または環状アルコキシでありうる。具体的に、前記C1-20アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、フェニルオキシ、シクロヘキシルオキシなどでありうる。
【0072】
前記C2-20アルコキシアルキルは、アルキルの1以上の水素がアルコキシにより置換された置換基を意味することができる。具体的に、前記C2-20アルコキシアルキルは、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ブトキシヘプチル、ブトキシヘキシルなどでありうる。
【0073】
発明の一実施例によれば、前記化学式3でR31およびR32は、それぞれ独立して、C4-20アルキル、またはtert-ブトキシで置換されたC5-9直鎖アルキルでありうる。好ましくは、前記R31およびR32は、それぞれ独立して、n-ブチル、またはtert-ブトキシで置換されたn-ヘキシルでありうる。
【0074】
前記化学式3でX31およびX32は、それぞれ独立して、塩素またはメチルでありうる。
【0075】
非制限的な例として、前記化学式3の化合物は、下記化学式3aまたは化学式3bで表される化合物でありうる。
【0076】
【化5】
【0077】
発明の一実施例によれば、前記化学式4でR41およびR42は、それぞれC1-3アルキルでありうる。好ましくは、前記R41およびR42は、それぞれプロピルでありうる。
【0078】
前記化学式4でX41およびX42は、それぞれ独立して、塩素またはメチルでありうる。
【0079】
非制限的な例として、前記化学式4の化合物は、下記化学式4aまたは化学式4bで表される化合物でありうる。
【0080】
【化6】
【0081】
前記化学式3および4の化合物は、公知の反応を応用して合成され得、より詳細な合成方法は後述する合成例を参照することができる。
【0082】
好ましくは、前記段階(iii)で前記メタロセン化合物は、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり0.01mmol~1.0mmol、あるいは0.01mmol~0.8mmolで投入され得る。
【0083】
十分な触媒活性の発現のために前記メタロセン化合物は、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり0.01mmol以上で投入されることが好ましい。ただし、前記メタロセン化合物が過量投入される場合、触媒活性が過度であり、ファウリングが発生する虞がある。したがって、前記メタロセン化合物は、前記シリカ系担体の単位重量(g)当たり1.0mmol以下で投入されることが好ましい。
【0084】
前記段階(iii)は20℃~120℃の温度下で行われ得る。
【0085】
前記段階(iii)では前記段階(i)で説明した溶媒を用いることができる。
【0086】
発明の一実施例によれば、前記メタロセン化合物は、前記化学式3の第1メタロセン化合物と前記化学式4の第2メタロセン化合物を含むことができる。
【0087】
前記化学式3の第1メタロセン化合物は、低分子量の線状共重合体を作るために寄与することができる。前記化学式4の第2メタロセン化合物は、高分子量の線状共重合体を作るのに寄与することができる。
【0088】
前記メタロセン化合物として前記第1および第2メタロセン化合物を適用することによって優れた担持性能、触媒活性、および高い共重合性を示すことができる。
【0089】
この場合、担持順序制御による担持効率および触媒活性改善の側面から、前記アルミニウムアルキルハライドおよび前記助触媒化合物が担持されたシリカ系担体に前記第1メタロセン化合物と前記第2メタロセン化合物が順次に担持され得る。
【0090】
好ましくは、前記メタロセン化合物は、前記第1メタロセン化合物および前記第2メタロセン化合物を1:0.3~1:3.5のモル比で含むことができる。
【0091】
優れた共重合性の発現のために、前記メタロセン化合物は、前記第1メタロセン化合物および前記第2メタロセン化合物を1:0.3以上のモル比で含むことが好ましい。ただし、前記モル比が過度に大きくなれば所望のポリオレフィンの分子構造を再現し難いこともある。したがって、前記メタロセン化合物は、前記第1メタロセン化合物および前記第2メタロセン化合物を1:3.5以下のモル比で含むことが好ましい。
【0092】
前記第1および第2メタロセン化合物の担持時の温度は、それぞれ40~90℃、あるいは50~80℃で行われ得る。前記第1メタロセン化合物を担持する時の温度より前記第2メタロセン化合物を担持する時の温度をより高めることが、担持効率の側面でより好ましい。
【0093】
II.メタロセン担持触媒
発明の他の一実施形態によれば、
シリカ系担体;
前記シリカ系担体に担持された下記化学式1のアルミニウムアルキルハライド、助触媒化合物、およびメタロセン化合物を含み、
前記アルミニウムアルキルハライドは、前記シリカ系担体の気孔内部より前記シリカ系担体の表面上に相対的により高い比率で担持されており、
前記助触媒化合物は、前記シリカ系担体の表面より前記シリカ系担体の気孔内部に相対的により高い比率で担持されている、
メタロセン担持触媒が提供される。
【0094】
【化7】
【0095】
前記化学式1で、
11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、C1-5のアルキルまたはハロゲンであり、前記R11~R13のうちの一つまたは二つはハロゲンである。
【0096】
前記メタロセン担持触媒は、前述の『I.メタロセン担持触媒の製造方法』により製造され得る。
【0097】
つまり、前記メタロセン担持触媒は、シリカ系担体に前記化学式1のアルミニウムアルキルハライドを優先的に担持し、以降に助触媒化合物とメタロセン化合物を順次に担持して得られたものである。
【0098】
前記アルミニウムアルキルハライドを適用した前記順序の担持で行われることによって、触媒活性増加により大きい影響を与える助触媒化合物が前記シリカ系担体の気孔内部に相対的により高い比率で担持され得る。このような方法で製造されたメタロセン担持触媒では均一なフラグメンテーションが行われ得、高い重合活性で均一なパウダーモルフォロジーを有するポリオレフィンが提供され得る。
【0099】
前記アルミニウムアルキルハライドを適用した前記順序の担持で行われることによって、前記メタロセン担持触媒で前記アルミニウムアルキルハライドは、前記シリカ系担体の気孔内部より前記シリカ系担体の表面上に相対的により高い比率で担持されている。そして、前記メタロセン担持触媒で前記助触媒化合物は、前記シリカ系担体の表面より前記シリカ系担体の気孔内部に相対的により高い比率で担持されている。
【0100】
前記メタロセン担持触媒で前記メタロセン化合物は、前記アルミニウムアルキルハライドと前記助触媒化合物の相互作用により前記シリカ系担体の内部、具体的に前記シリカ系担体の気孔内部に主に担持されている。
【0101】
前記メタロセン担持触媒で、前記アルミニウムアルキルハライド、前記助触媒化合物、および前記メタロセン化合物に対する説明は前記の『I.メタロセン担持触媒の製造方法』で説明したものを代わりにする。
【0102】
発明の一実施例によれば、前記アルミニウムアルキルハライドは、ジメチルアルミニウムクロリド(dimethylaluminum chloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、ジイソブチルアルミニウムクロリド(diisobutylaluminum chloride)、メチルアルミニウムジクロリド(methylaluminum dichloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethylaluminum dichloride)、およびイソブチルアルミニウムジクロリド(isobutylaluminum dichloride)からなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0103】
発明の一実施例によれば、前記助触媒化合物は、前記化学式2の化合物でありうる。非制限的な例として、前記助触媒化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n-ブチルアルミノキサン、およびイソブチルアルミノキサンからなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0104】
発明の一実施例によれば、前記メタロセン化合物は、前記化学式3の化合物および前記化学式4の化合物からなる群より選択された1種以上の化合物でありうる。
【0105】
好ましくは、前記メタロセン化合物は、前記化学式3の第1メタロセン化合物と前記化学式4の第2メタロセン化合物を含むことができる。好ましくは、前記メタロセン化合物は、前記第1メタロセン化合物および前記第2メタロセン化合物を1:0.3~1:3.5のモル比で含むことができる。
【0106】
前記メタロセン担持触媒は、前記のように担持構成を有することによって、優れたオレフィン重合活性を有しながらも、均一なパウダーモルフォロジーを有するポリオレフィンの製造を可能にする。
【0107】
III.ポリオレフィンの製造方法
発明のまた他の一実施形態によれば、
前記メタロセン担持触媒の存在下でオレフィン系単量体を重合してポリオレフィンを得る段階を含み、
前記ポリオレフィンは、粒子サイズ125μm未満のポリオレフィン微粉と粒子サイズ2.0mm超過のポリオレフィンチャンクをそれぞれ2重量%以下で含む、
ポリオレフィンの製造方法が提供される。
【0108】
前記メタロセン担持触媒は、前述の『II.メタロセン担持触媒』として、前述の『I.メタロセン担持触媒の製造方法』により製造され得る。
【0109】
前記ポリオレフィンの製造方法は、前記メタロセン担持触媒の存在下でオレフィン系単量体を原料として通常の装置および接触技術を適用して行われ得る。
【0110】
前記メタロセン担持触媒は、それ自体で利用され得る。または、前記メタロセン担持触媒は、オレフィン系単量体と接触反応させて予備重合された触媒で製造して利用されることもできる。
【0111】
前記メタロセン担持触媒は、重合方法により溶媒にスラリー状態または希釈された状態で利用され得る。または、前記メタロセン担持触媒は、オイルおよびグリースの混合物に混合した泥触媒の形態で利用され得る。
【0112】
前記重合反応は、一つの連続式スラリー重合反応器、ループスラリー反応器、気相反応器、または溶液反応器を利用して行われ得る。
【0113】
前記重合反応は、1種のオレフィン系単量体を使用したホモ重合、または2種以上のオレフィン系単量体を使用した共重合で行われ得る。
【0114】
前記オレフィン系単量体は、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィン、二重結合を2個以上有しているジエンオレフィン、またはトリエンオレフィンでありうる。
【0115】
具体的に、前記オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、3-クロロメチルスチレンなどでありうる。
【0116】
発明の一実施例によれば、前記ポリオレフィンは、エチレンホモ重合体であるポリエチレンでありうる。また、前記ポリオレフィンは、エチレンと共単量体の共重合体でありうる。前記共重合体としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセンなどを用いることができる。
【0117】
前記オレフィン系単量体の重合は、25~500℃の温度および1~100kgf/cmの反応圧力で1~24時間反応させて行うことができる。具体的に、前記オレフィン系単量体の重合は、25~500℃、あるいは25~200℃、あるいは50~約100℃の温度下で行われ得る。そして、前記オレフィン系単量体の重合は、1~100kgf/cm、あるいは1~60kgf/cm、あるいは5~45kgf/cmの反応圧力下で行われ得る。
【0118】
前記製造方法で得られるポリオレフィンは、均一なパウダーモルフォロジーを有することができる。
【0119】
発明の一実施例によれば、前記製造方法で得られるポリオレフィンは、粒子サイズ125μm未満のポリオレフィン微粉と粒子サイズ2.0mm超過のポリオレフィンチャンクをポリオレフィンの総重量を基準に、それぞれ2重量%以下で含むことができる。前記ポリオレフィンの微粉およびチャンク含有量は粒度分布分析を通じて得られる。
【0120】
好ましくは、前記ポリオレフィンは、ポリオレフィンの総重量を基準に、粒子サイズ125μm未満のポリオレフィン微粉を2.0重量%以下、あるいは0.1~2.0重量%、あるいは0.5~2.0重量%、あるいは0.5~1.5重量%、あるいは0.6~1.3重量%で含むことができる。
【0121】
そして、前記ポリオレフィンは、ポリオレフィンの総重量を基準に、粒子サイズ2.0mm超過のポリオレフィン微粉を2.0重量%以下、あるいは0.5~2.0重量%、あるいは1.0~2.0重量%、あるいは1.0~1.8重量%、あるいは1.2~1.7重量%で含むことができる。
【発明の効果】
【0122】
本発明によれば、優れたオレフィン重合活性を有しながらも、均一なパウダーモルフォロジーを有するポリオレフィンの製造を可能にするメタロセン担持触媒の製造方法と、前記方法で製造されたメタロセン担持触媒と、前記メタロセン担持触媒を利用したポリオレフィンの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1】本発明の実施例7により得られたポリオレフィンをカメラで撮影して拡大したイメージである。
図2】本発明の比較例3により得られたポリオレフィンをカメラで撮影して拡大したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明をこれらだけに限定するのではない。
【0125】
[メタロセン担持触媒の製造]
実施例1
シリカ(Grace Davison社製のSP952)を200℃の温度で12時間真空を加えた状態で脱水および乾燥した。
【0126】
2LのSUS高圧反応器にトルエン50mlおよび前記シリカ10gを投入した後、反応器の温度を40℃に上げながら攪拌した。ここにジメチルアルミニウムクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して12時間攪拌した後、デカント(decant)した。
【0127】
次に、10wt%メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液53.1ml(10mmol/g-SiO)を投入して12時間攪拌した。
【0128】
反応器温度を60℃に上げ、下記化学式3bの第1メタロセン化合物(0.01mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して2時間攪拌した。次に、下記化学式4aの第2メタロセン化合物(0.01mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して2時間攪拌した後、デカント(decant)した。
【0129】
反応器にヘキサン1kgを投入してフィルタードライ(filter dry)に移送し、ヘキサン溶液をフィルターした。50℃で4時間減圧下で乾燥してメタロセン担持触媒を得た。
【0130】
【化8】
【0131】
実施例2
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにジエチルアルミニウムクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0132】
実施例3
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにジイソブチルアルミニウムクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0133】
実施例4
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにメチルアルミニウムジクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0134】
実施例5
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにエチルアルミニウムジクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0135】
実施例6
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにイソブチルアルミニウムジクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0136】
比較例1
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液を使用しないことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0137】
具体的に、2LのSUS高圧反応器にトルエン50mlおよび前記シリカ10gを投入した後、反応器の温度を40℃に上げながら攪拌した。次に、10wt%メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液53.1ml(10mmol/g-SiO)を投入して12時間攪拌した。反応器温度を60℃に上げて前記化学式3bの第1メタロセン化合物(0.01mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して2時間攪拌した。次に、前記化学式4aの第2メタロセン化合物(0.01mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して2時間攪拌した後、デカント(decant)した。反応器にヘキサン1kgを投入してフィルタードライ(filter dry)に移送してヘキサン溶液をフィルターした。50℃で4時間減圧下で乾燥してメタロセン担持触媒を得た。
【0138】
比較例2
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液と前記メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液の投入順序を変更したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0139】
具体的に、2LのSUS高圧反応器にトルエン50mlおよび前記シリカ10gを投入した後、反応器の温度を40℃に上げながら攪拌した。ここに10wt%メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液53.1ml(10mmol/g-SiO)を投入して12時間攪拌した後、デカント(decant)した。次に、ジメチルアルミニウムクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して12時間攪拌した。反応器温度を60℃に上げて前記化学式3bの第1メタロセン化合物(0.01mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して2時間攪拌した。次に、前記化学式4aの第2メタロセン化合物(0.01mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入して2時間攪拌した後、デカント(decant)した。反応器にヘキサン1kgを投入してフィルタードライ(filter dry)に移送してヘキサン溶液をフィルターした。50℃で4時間減圧下で乾燥してメタロセン担持触媒を得た。
【0140】
比較例A
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにトリメチルアルミニウム(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0141】
比較例B
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにトリエチルアルミニウム(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0142】
比較例C
前記ジメチルアルミニウムクロリド/トルエン溶液の代わりにトリイソブチルアルミニウム(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を使用したことを除き、前記実施例1と同様な方法でメタロセン担持触媒を得た。
【0143】
[ポリオレフィンの製造]
実施例7
前記実施例1で得られたメタロセン担持触媒の存在下でエチレンを重合してポリエチレンを製造した。
【0144】
具体的に、600mlのオートクレーブ(autoclave)高圧反応器を真空乾燥した後、ここにヘキサン400mlと前記実施例1のメタロセン担持触媒10mgを投入した。反応器温度を80℃に昇温した後、14kgf/cmの圧力が維持されるようにエチレンを投入しながら攪拌して1時間重合反応させた。反応終了後、濾過および乾燥してポリエチレンパウダーを得た。
【0145】
実施例8
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記実施例2で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0146】
実施例9
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記実施例3で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0147】
実施例10
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記実施例4で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0148】
実施例11
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記実施例5で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0149】
実施例12
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記実施例6で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0150】
比較例3
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記比較例1で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0151】
比較例4
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記比較例2で得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0152】
比較例5
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記比較例1で得られたメタロセン担持触媒を利用したこと、そしてジメチルアルミニウムクロリドを重合反応に添加したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0153】
具体的に、600mlのオートクレーブ(autoclave)高圧反応器を真空乾燥した後、ここにヘキサン400mlと前記比較例1のメタロセン担持触媒10mgおよびジメチルアルミニウムクロリド(5mmol/g-SiO)/トルエン溶液を投入した。反応器温度を80℃に昇温した後、14kgf/cmの圧力が維持されるようにエチレンを投入しながら攪拌して1時間重合反応させた。反応終了後、濾過および乾燥してポリエチレンパウダーを得た。
【0154】
比較例A-1
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記比較例Aで得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0155】
比較例B-1
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記比較例Bで得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0156】
比較例C-1
前記実施例1のメタロセン担持触媒の代わりに前記比較例Cで得られたメタロセン担持触媒を利用したことを除き、前記実施例7と同様な方法でポリエチレンパウダーを得た。
【0157】
試験例
(1)ポリエチレンパウダーに対する観察
前記実施例7および比較例3により得られたポリエチレンパウダーをカメラで撮影して拡大したイメージを図1(実施例7)および図2(比較例3)に示した。
【0158】
図1を参照すると、前記実施例7で得られたポリエチレンパウダーは、粒度分布が比較的均一であり、粒子の模様が大部分滑らかであることが確認される。
【0159】
反面、図2を参照すると、前記比較例3で得られたポリエチレンパウダーは、粒度分布が均一でなく、粒子の模様が滑らかでないことが確認される。そして、前記比較例3で得られたポリエチレンパウダーには手で砕けない粒径2mm以上のチャンク(chunk)が多数含まれていた。
【0160】
(2)触媒活性(kg-PE/g-SiO
重合反応に利用された触媒の重量と前記重合反応から得られたポリエチレンパウダーの重量を測定して触媒活性を算出した。
【0161】
(3)重合体内の微粉およびチャンクの含有量(重量%)
ふるい(sieve、size850μm、500μm、300μm、125μm)を利用してポリエチレンパウダーを粒子サイズ別に分離した。
【0162】
具体的に、前記ふるいを利用してポリエチレンの粒子サイズが850μm以上であるグループ;500μm以上850μm未満であるグループ;300μm以上500μm未満であるグループ;125μm以上300μm未満であるグループ;および125μm未満のグループにそれぞれ分離した。各グループの重量を測定した後、ポリエチレンの総重量を基準に、各グループの重量を百分率(wt%)で表示した。前記グループのうち、粒子サイズ125μm未満のグループを微粉(fine)に分類した。
【0163】
追加的に、前記粒子サイズが850μm以上であるグループで粒子サイズが2.0mm超過のグループをチャンク(chunk)に分類し、ポリエチレンの総重量を基準に前記チャンクの重量を百分率(wt%)で表示した。
【0164】
(4)粒度分布(particle size distribution、PSD)
粒度分析器(HELOS/KF、Sympatec GmbH)を利用してISO13320-1(Particle size analysis-laser diffraction methods)の標準測定法により実施例および比較例で得られたポリエチレンパウダーの粒度を分析した。前記分析結果からD50値(μm)およびSpan値[=(D90-D10)/D50]を得た。
【0165】
【表1】
【0166】
前記表1を参照すると、実施例によるメタロセン担持触媒は、6.3kg-PE/g-SiO以上の優れた重合活性を示しながらも、チャンクおよび微粉の含有量が顕著に低く、均一なパウダーモルフォロジーを有するポリエチレンを提供することが確認される。
【0167】
一方、前記比較例3では、メタロセン担持触媒の重合活性に優れているが、チャンクおよび微粉の含有量が実施例に比べて顕著に高く、パウダーモルフォロジーが劣悪であることが確認される。
【0168】
前記比較例4では、前記比較例3と同様にチャンクおよび微粉の含有量が高く、パウダーモルフォロジーが劣悪であった。これによって、アルミニウムアルキルハライドと助触媒化合物の順序を変えて担持する場合には、アルミニウムアルキルハライドを投入しない場合と殆ど差異がないことが分かる。
【0169】
前記比較例5では、実施例に比べて重合活性が小幅高かったが、パウダーモルフォロジーが非常に劣悪であり、チャンクと微粉の含有量が非常に高かった。これによって、重合工程途中にアルミニウムアルキルハライドを投入することは重合活性を高めるのには役に立てるが、パウダーモルフォロジーには悪影響を与えることが分かる。
【0170】
前記比較例A-1、B-1、C-1では、実施例に比べて重合活性が小幅高かったが、パウダーモルフォロジーが低下し、チャンクと微粉の含有量が高かった。これによって、アルミニウムアルキルハライドの代わりにトリアルキルアルミニウム化合物を投入する場合、パウダーモルフォロジーには悪影響を与えることが分かる。
図1
図2