(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】包装容器、包装方法及び金属箔の輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/672 20060101AFI20240415BHJP
B65D 19/44 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B65D85/672
B65D19/44 A
(21)【出願番号】P 2020015490
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 章
(72)【発明者】
【氏名】宮田 泰暢
(72)【発明者】
【氏名】菊池 和彦
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-080631(JP,A)
【文献】特開2012-131558(JP,A)
【文献】特開2018-030591(JP,A)
【文献】実開平06-076052(JP,U)
【文献】実開平06-030035(JP,U)
【文献】特開2003-072754(JP,A)
【文献】特開2002-205736(JP,A)
【文献】特開平09-315430(JP,A)
【文献】特開2006-131246(JP,A)
【文献】特開2000-142669(JP,A)
【文献】特開2002-080087(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220997(WO,A1)
【文献】特開2004-155442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/67-85/672
B65D 19/44
B65D 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部を備えるパレットと、
前記パレット上に配置され、互いに対向する端壁部に軸受溝を有する胴枠と、
前記胴枠上に設けられる蓋部と、を備え、
前記脚部が、前記パレットの端壁部よりも内側に配置され
、
前記蓋部が、前記胴枠の前記軸受溝を覆うように前記胴枠の前記端壁部上に突出する突出部と、天面補強部とを備え、前記天面補強部が両端部にそれぞれ切欠部を備え、前記突出部と前記切欠部とが略同一形状である、段ボール製の包装容器。
【請求項2】
前記軸受溝が、前記脚部の鉛直方向上に配置されている請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記軸受溝内に配置され、収容対象物の両端から突出する軸支部を押さえるための上押え部を更に備える請求項1又は2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記軸受溝が、前記軸支部を下端部に収容し、前記上押え部を上端部に収容可能とする第1軸受溝を備え、前記第1軸受溝が、前記第1軸受溝内に収容された前記上押え部の下端部を支えるための係止部を備える請求項3に記載の包装容器。
【請求項5】
前記胴枠が、
収容対象物の両端部から突出する軸支部を下端部に収容し、前記軸支部を押さえるための上押え部を上端部に収容可能とする第1軸受溝を、互いに対向する端壁部にそれぞれ備える筒状の胴枠本体と、
前記胴枠本体上に積層される少なくとも1の補助枠と
を備える請求項1~3のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項6】
前記補助枠が、
前記第1軸受溝と略同一形状を有する第2軸受溝を備える第1の補助端壁部と、
前記第1軸受溝の下端部の円弧水平方向の幅よりも、下端部の円弧水平方向の幅が小さい搬送アーム挿入溝を備える第2の補助端壁部と
を備える請求項5に記載の包装容器。
【請求項7】
前記胴枠本体の前記第1軸受溝上に、前記第2軸受溝及び前記搬送アーム挿入溝がこの順で重ねられるように、前記胴枠本体上に、前記第1の補助端壁部及び前記第2の補助端壁部が積層される請求項6に記載の包装容器。
【請求項8】
前記パレットが、底面補強部を備える請求項1~7のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項9】
前記脚部が、脚部補強部を備える請求項1~8のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項10】
前記蓋部の側壁部に、天面の角部から斜め方向へと延びる折曲線を備える請求項
1~9のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項11】
前記パレットの側壁部に、前記パレットの底面の角部から斜め方向へと延びる折曲線を備える請求項1~1
0のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項12】
銅箔又は銅合金箔を収容する請求項1~1
1のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項13】
請求項1~1
2のいずれか1項に記載の包装容器内に収容対象物を収容し、
前記収容対象物を収容した前記包装容器の前記蓋部の天面と前記パレットとの底面との間を結束部材を用いて結束することを含む、包装方法。
【請求項14】
請求項1~1
2のいずれか1項に記載の包装容器内に、中空構造を有する軸心の周りに材料を巻回したロール状物を収容することを含む、包装方法。
【請求項15】
請求項1~1
2のいずれか1項に記載の包装容器内に、金属箔からなる材料を軸心の周りに巻回した収容対象物を収容し、
結束部材を用いて、前記収容対象物を収容した前記包装容器の前記蓋部の天面と前記パレットとの底面との間を結束し、
前記収容対象物を収容した前記包装容器の前記パレットの端壁部と前記脚部の間の底面に設けられた保持面に、吊り上げ運搬用の吊り上げ部材を当接させ、
前記包装容器を吊り上げて輸送すること
を含む金属箔の輸送方法。
【請求項16】
中空構造を有する軸心の周りに材料を巻回したロール状物を、請求項1~1
2のいずれか1項に記載の包装容器内に収容して輸送することを含む、輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器、包装方法及び金属箔の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状物の搬送のための種々の包装容器が知られている。例えば特開2018-30591号公報(特許文献1)には、方形状のパレットと、パレット上に載置された胴枠と、段ボール製の蓋とを備え、胴枠に形成された軸受溝がロール状物の両端部に設けられる支持軸を支持することにより、ロール状物を筒状体内に収容する段ボール製の容器の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような段ボール製の容器を搬送する際は、フォークリフトのリフト爪を容器底部の桁間に差し込んで荷役することが行われる。しかしながら、リフト爪の差し込み位置が不適切であると、リフト爪が容器を突き破り、容器に破損を生じさせる場合がある。
【0005】
別の搬送方法としては、クレーン等の搬送機を用いてロープなどを介して段ボール製の容器を吊り上げ、宙吊り状態にして搬送することが考えられる。しかしながら、収容物の収容形態及び重量によっては、容器の変形が生じる場合、或いは搬送中に容器が傾き、安定して搬送することが難しい場合がある。
【0006】
上記課題に鑑み、本開示は、包装容器の破損や変形を抑制でき、包装容器を宙吊り状態にして搬送した場合においても安定して搬送することが可能な包装容器、包装方法及び金属箔の輸送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の実施の形態は一側面において、脚部を備えるパレットと、パレット上に配置され、互いに対向する端壁部に軸受溝を有する胴枠と、胴枠上に設けられる蓋部と、を備え、脚部が、パレットの端壁部よりも内側に配置される段ボール製の包装容器である。
【0008】
本発明の実施の形態は別の一側面において、上記包装容器内に収容対象物を収容し、収容対象物を収容した包装容器の蓋部の天面とパレットとの底面との間を結束部材を用いて結束することを含む包装方法である。
【0009】
本発明の実施の形態は更に別の一側面において、上記包装容器内に、金属箔からなる材料を軸心の周りに巻回した収容対象物を収容し、結束部材を用いて、収容対象物を収容した包装容器の蓋部の天面とパレットとの底面との間を結束し、収容対象物を収容した包装容器のパレットの端壁部と脚部の間の底面に設けられた保持面に、吊り上げ運搬用の吊り上げ部材を当接させ、包装容器を吊り上げて輸送することを含む金属箔の輸送方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、包装容器の破損や変形を抑制でき、包装容器を宙吊り状態にして搬送した場合においても安定して搬送することが可能な包装容器、包装方法及び金属箔の輸送方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る包装容器の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】パレットの脚部と保持部を表す正面図である。
【
図6】パレットの保管時の積層状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は胴枠本体を形成する胴枠本体部材、
図7(b)は胴枠本体に積層される補強パッドの展開図である。
【
図8】
図8(a)は補助枠の展開図を示し、
図8(b)は胴枠本体に補助枠を積層して胴枠を構成した場合の第1軸受溝、第2軸受溝及び収容対象物の位置関係を示す平面図である。
【
図9】胴枠内に収容部材を収容した状態を表す上面図である。
【
図13】蓋部の保管時の折り畳み状態を表す外観斜視図である。
【
図14】輸送時の包装容器の包装状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の構造、配置及び手順等を下記のものに特定するものではない。本発明の実施の形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、この実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
(包装容器)
本発明の実施の形態に係る包装容器1は、
図1に示すように、脚部21を備えるパレット2と、パレット2上に配置され、互いに対向する端壁部32に軸受溝31を備える胴枠3と、胴枠3の上方に設けられた蓋部4とを備える。軸受溝31内には、軸受溝31に支えられる軸支部11の移動を押さえるための上押え部5を更に備えていてもよい。本発明の実施の形態に係る包装容器1の各部材は、木材、プラスチック等の素材で形成されていてもよく、段ボール製であることがより好ましい。
【0014】
包装容器1内に収容される収容対象物10としては、金属、プラスチック、紙、合成樹脂などの種々のフィルム、シート、箔、条等の材料を軸心12の周りに巻回したロール状物であれば特に限定されない。特に、本実施形態では、銅箔又は銅合金箔を軸心12の周りに巻回した銅箔ロールを収容対象物10として利用する場合を説明するがこれに限定されるものではない。
【0015】
図2に示すように、収容対象物10は、軸心12の軸方向の両端部からそれぞれ突出する軸支部11を備える。収容対象物10の軸支部11を、胴枠3の軸受溝31で支えることにより、収容対象物10を宙吊り状態にして胴枠3内に収容することができる。これにより、収容対象物10のロール部分へ加わる外力及び重力の影響を小さくでき、収容対象物10の変形を抑制できる。
【0016】
図3に示すように、パレット2は、胴枠3を載置する底面22と、底面22から立ち上がり、互いに対向する一対の端壁部23と、端壁部23と連続し、底面22から立ち上がり、互いに対向する一対の側壁部24と、底面22に接続された脚部21とを備える。パレット2に端壁部23及び側壁部24が配置されることにより、パレット2上に積載される胴枠3を所定の位置に収容して胴枠3の位置ずれを抑制できる。
【0017】
脚部21は、
図4に示すように、波状の中芯をライナーとライナーとの間に貼り合わせた段ボール板を複数枚積層して貼り合わせた積層体部21aと、積層体部21a上に貼り合わされたシート状の脚部補強部21bとを備える。積層体部21aは、典型的には、厚さ5~10mm程度の段ボール板が、接着剤層を介して、底面22に対して水平方向(鉛直方向に対して垂直方向)に5~20枚程度積層された構造を有する。脚部補強部21bは積層体部21aの端面を覆うように貼り合わされ、脚部21の底面を補強する。
【0018】
積層体部21a上に、脚部補強部21bが配置されることにより、脚部21の底面の硬度を高め、搬送時の脚部21の破損及びへこみ等の変形による搬送時の不具合を防ぐことができる。なお、パレット2が積載可能な積載重量及び脚部21の強度は、積層体部21aを構成する段ボール板のライナー及び中芯の材質、或いは段ボール板の積層枚数を調節することにより調整できる。
【0019】
図5に示すように、脚部21は、パレット2の端壁部23よりも内側(中央側)に、端壁部23から一定の間隔Sを空けて配置されている。この間隔Sは、包装容器1の両端に吊り上げ具を引っかけて保持するための保持面26として機能する。本実施形態に係る包装容器1によれば、保持面26に対し、ロープ等の吊り上げ用部材を当接させて包装容器1を吊り上げて安定して搬送できるため、包装容器1をより円滑に搬送することが可能となる。
【0020】
また、包装容器1を吊り上げて搬送する搬送方法を採ることができると、フォークリフト等が入れない構造の施設内においても、重量物を梱包した包装容器1をクレーン等によって搬送することが可能となる。このように搬送手段の選択肢を増加させることで、包装容器1の内容物である収容対象物10の搬入先施設についての制限が緩和される。また、作業現場の安全性向上にもつながり得る。
【0021】
パレット2の底面22の脚部21の間には、パレット2の底面22を補強可能な底面補強部25が配置されることが好ましい。これにより、パレット2の底面22を補強して包装容器1の変形を抑制し、強度を向上できる。また、後述するバンド等の結束部材71で包装容器1を結束する際に、結束部材71の結束力が、底面補強部25にめり込む程に強力な場合であっても、パレット2自体の変形を抑制できる。結束部材71を底面補強部25と接触させて底面補強部25に対してめり込ませるように結束することで、結束強度も向上できる。
【0022】
前述のように、保持面26にロープ等の吊り上げ用部材を当接させ、包装容器1を吊り上げる場合、包装容器1の中心付近に荷重がかり、結果包装容器1が変形してしまう場合もある。このような問題に対し、底面補強部25を備えることにより、包装容器1を吊り上げて搬送する際に包装容器1が中心付近で曲がることを抑制できる。フォークリフト等を用いて包装容器1を搬送する場合に、フォークリフトの爪の操作を誤った際においても、パレット2の底面22の破損を抑制できる。
【0023】
底面補強部25の配置位置、形状及び厚さは特に限定されず、用途に応じて種々選択することができる。底面補強部25は、更に保持面26に配置することで、運搬時の包装容器1の破損を更に抑制できる。
【0024】
パレット2は、側壁部24上に、パレット2の矩形の底面22の4つの角部Cからそれぞれ斜め方向上方へと延びる4本の折曲線RLを備える。折曲線RLは、底面22と端壁部23と側壁部24の3面の接する点(角部C)から、底面22と側壁部24との接する線L1に対して約45度の傾きで傾斜している。折曲線RLを山折りに折り曲げることで、端壁部23及び側壁部24を折りたたんだ状態で、パレット2を積層して保管できるため、包装容器1として組み立てる前の保管スペースを削減できる。包装容器1を利用する場合には、パレット2の端壁部23及び側壁部24を立ち上げるだけでよいため、パレット2の組み立ても容易である。
【0025】
図1に示すように、胴枠3は、胴枠本体30と、胴枠本体30上に積層される少なくとも1の補助枠34、35を備える。このように胴枠3を複数の部材で構成することにより、胴枠3が備える軸受溝31をはじめとした胴枠本体30の強度向上を図ることができる。補助枠34、35は、省略することもできる。
【0026】
胴枠本体30は、互いに対向する一対の端壁部32及び互いに対向する一対の側壁部33を有し、互いに対向する端壁部32の間に側壁部33を有する。胴枠本体30は、端壁部32に、収容対象物10の軸支部11を支えるための第1軸受溝310をそれぞれ有する。
【0027】
胴枠本体30は、
図7(a)に示すような胴枠本体部材37を2枚繋ぎ合わせることにより、
図1に示すような筒状体となる。胴枠本体部材37は、端壁部32と、端壁部32と連続する側壁部33と、端壁部32の端部に形成された継ぎしろ部36とを備える。一方の胴枠本体部材37の継ぎしろ部36を他方の胴枠本体部材37の側壁部33の端部とつなぎ合わせることで、胴枠本体30が得られる。
【0028】
第1軸受溝310は、軸支部11を収容可能な収容部311を下端部に備え、上押え部5を収容可能な収容部313を上端部に備える。第1軸受溝310の側面には、上押え部5の下端部54(
図10参照)と当接して支えるために、第1軸受溝310の内側中央方向に向かって突出する係止部312を備える。上押え部5の下端部54の底部と係止部312の上面とが互いに接触することにより、上押え部5が第1軸受溝310の下方側へずれ落ちることを抑制できる。
【0029】
第1軸受溝310は、第1軸受溝310の下端部の円弧水平方向の幅W1が、収容対象物10の軸支部11の直径と同等の寸法を有する。これにより、第1軸受溝310の下端部に、収容対象物10の両端部から突出する軸支部11を収容可能となっている。第1軸受溝310の上端部の水平方向の幅W2は、第1軸受溝310の下端部のW1よりも大きい。これにより、胴枠本体30の端壁部32の破損を防ぎながら、第1軸受溝310内に収容対象物10の軸支部11を収容しやすくできる。
【0030】
胴枠本体30の第1軸受溝310には、
図7(b)に示すような、補強パッド38を、胴枠本体部材37の端壁部32上へ1又は複数枚貼り合わせてもよい。これにより、第1軸受溝310の耐荷重性の向上を図ることができる。
【0031】
補強パッド38は、収容部311、313及び係止部312とそれぞれ略同一の形状を有する収容部3118、3138及び係止部3128を備える軸受溝318を備える。軸受溝318と第1軸受溝310とが略同一の形状を有することにより、軸支部11を載置したときのガタツキを防止することができる。一方、胴枠本体30及び補強パッド38は段ボール製であるため、軸支部11を介して軸受溝318及び第1軸受溝310に荷重される収容対象物10の重量により第1軸受溝310及び軸受溝318の変形も生じ得ることから、ある程度の寸法の余裕を設けることを必要とする場合もある。よって、胴枠本体30の第1軸受溝310及び補強パッド38の軸受溝318の形状は厳密に同一形状を有していなくともよい。なお、補強パッド38の端壁部32への積層枚数は、収納予定の収容対象物10の重量及び収容対象物10の軸支部11の長さを考慮して適宜調整できる。
【0032】
胴枠本体30上には、少なくとも1の補助枠34、35が積層される。補助枠34は、
図8(a)に示すように、補助側壁部334と、補助側壁部334の両端に配置された第1の補助端壁部324a及び第2の補助端壁部324bとを備える。第1の補助端壁部324aは、第1軸受溝310と略同一の形状の収容部3114、3134及び係止部3124を備える第2軸受溝314aを有する。第2の補助端壁部324bは、下端部の円弧水平方向の幅W3が、第1軸受溝310の下端部の円弧水平方向の幅W1よりも小さい搬送アーム挿入溝314bを備える。
【0033】
補助枠35は、補助枠34と同様の構成を有することができる。即ち、補助枠35は、補助側壁部335と、補助側壁部335の両端に配置された第1の補助端壁部325aと、第2の補助端壁部325bとを備える。第1の補助端壁部325aは、第1軸受溝310と略同一の形状の収容部3115、3135及び係止部3125を有する第2軸受溝315aを備える。第2の補助端壁部325bは、下端部の円弧水平方向の幅W3が第1軸受溝310の下端部の円弧水平方向の幅W1よりも小さい搬送アーム挿入溝315bを備える。
【0034】
幅W3が幅W1より小さいということは、胴枠本体30、補助枠34、補助枠35を積層し、端壁部32及び第1の補助端壁部325aが備える第1軸受溝310及び/又は第2軸受溝315a上に軸支部11を載置すると、軸支部11の外側が第2の補助端壁部324bと接し、第2の補助端壁部324bが軸支部11の軸心12の一部を覆う(
図8(b)参照)。これにより、第2の補助端壁部324bが、包装容器1に収容した収容対象物10の軸方向の移動を制限することができる。その結果、包装容器1の搬送中に軸支部11が軸受溝31から脱落し、収容対象物10が落下して、損傷する可能性を低減することができる。
【0035】
搬送アーム挿入溝314bの幅W3は、収容対象物10の軸方向の移動を制限し得る程度に、幅W1より小さければ差し支えない。中でも、軸支部11の軸心12が中空構造を有しており、軸心12の内側に収容対象物10の搬送器具の搬送アームを挿入し、搬送するような態様においては、後述するような好ましい態様が存在する。例えば、幅W3を搬送アームが挿入可能な程度の幅とすると、収容対象物10が中空を有する軸心12に巻回されたロール状物の場合、これを包装容器1内に載置する際、搬送器具を用いることができ、収容対象物10を機械により効率良く運搬することができる。
【0036】
補助枠34の第1の補助端壁部324a上には、第2の補助端壁部324bと略同一の幅W3を下端部に有する搬送アーム溝391を備える補強パッド39aを備えてもよい。補助枠34の第2の補助端壁部324b上には、第2の補助端壁部324bと略同一の幅W3を下端部に有する搬送アーム溝392を備える補強パッド39bを備えてもよい。補助枠35も補助枠34と同様に、補強パッド39a、39bを備えることができる。これにより、包装容器1全体の剛性を高め、包装容器1の宙吊り搬送時の強度を確保できる。補強パッド39a、39bは必要に応じて省略することもできる。
【0037】
胴枠3の組み立て時には、胴枠本体30の一方の第1軸受溝310上に、第2軸受溝315a及び搬送アーム挿入溝314bが、この順で重ねられるように、胴枠本体30上に、第1の補助端壁部325a及び第2の補助端壁部324bが積層される。
【0038】
図9は、補助枠34、35に補強パッド39a、39bを取り付けた場合の胴枠本体30及び補助枠34、35の重ね合わせ方法を表す上面図である。胴枠本体30を間に介して互いに対向するように、補助枠34、35が、胴枠本体30の外側表面上に重ね合わされている。
【0039】
図9の紙面右側に示されるように、胴枠本体30の一方の端壁部32の外側表面には、第2軸受溝315aを備える補助枠35の第1の補助端壁部325aが積層される。第1の補助端壁部325aの外側表面上には、補強パッド39aが貼り付けられ、この外側表面に、搬送アーム挿入溝314bを備える補助枠34の第2の補助端壁部324bが積層される。第2の補助端壁部324bの外側表面には補強パッド39bが貼り付けられている。
【0040】
図9の紙面左側に示されるように、胴枠本体30の他方の端壁部32の外側表面には、第2軸受溝314aを備える補助枠34の第1の補助端壁部324aが積層される。第1の補助端壁部324aの外側表面上には、補強パッド39aが貼り付けられ、この外側表面に、搬送アーム挿入溝315bを備える補助枠35の第2の補助端壁部325bが積層される。第2の補助端壁部325bの外側表面には補強パッド39bが貼り付けられている。
【0041】
このような積層構造を有することにより、
図9の紙面右側の軸支部11は、端壁部32及び第1の補助端壁部325aによって支えられ、第1の補助端壁部325aの外側表面に貼り合わされて付けられた補強パッド39aの内側表面が、収容対象物10の軸支部11の端面とほぼ接触し、軸支部11の軸方向と平行な方向への動きを抑制する。その結果、包装容器1の破損及び変形を抑制しながら宙吊り輸送に適した構成を提供できる。
【0042】
胴枠本体30、補助枠34、35及び補強パッド38、39a、39bを構成する材料は、同じ種類であっても差し支えないが、強度の異なる部材を用いる場合は、第1軸受溝310は、収容対象物10の軸支部11を最も内側で支えるため、胴枠本体30が、補助枠34、35よりも強度の高い材料、より詳しくは圧縮強度が高い材料で形成されることが好ましい。
【0043】
補助枠34、35及び補強パッド38、39a、39bの材料も、胴枠本体30と同等の材料を用いることが好ましい。他方、圧縮強度が高い材料を使用することで材料費用が多大となりかねない。そのため、包装容器1に必要とされる強度に応じ、補助枠34、35及び補強パッド38、39a、39bの材料を胴枠本体30と同様のものにするかどうか、適宜選択すればよい。
【0044】
収容対象物10の軸支部11を支える胴枠3の軸受溝31は、収容対象物10の重量及び輸送時の外力の影響を受け、潰れなどの変形や破損が生じやすくなる。そのため、胴枠3の軸受溝31が、脚部21の鉛直方向上に配置されることが好ましい。
【0045】
胴枠3を胴枠本体30及び補助枠34、35の三層構造とした場合、軸受溝31を構成する第1軸受溝310、第2軸受溝314a、315aのうち、収容対象物10の軸支部11を最も内側で支える胴枠本体30の第1軸受溝310は、収容対象物10の重量及び輸送時の外力の影響を受ける場合がある。そのため、胴枠本体30の第1軸受溝310と収容対象物10の軸支部11との最も内側の接触点との鉛直線上(鉛直方向上)には少なくともパレット2の脚部21が配置されるように、包装容器1を構成することが好ましい。
【0046】
このような構成とする例としては、胴枠本体30、補助枠34、35及び補強パッド38、39a、39bの枚数を調整することによって、脚部21に対する、軸支部11と第1軸受溝310の最も内側の接触点の位置を調整することが挙げられる。これにより、胴枠3の軸受溝31に支えられた軸支部11から伝達される収容対象物10の重量を、脚部21で支えることができるため、長期間の輸送においても、収容対象物10の重量による包装容器1の変形及び破損を生じにくくすることができる。
【0047】
また、胴枠本体30を取り囲むように配置された補助枠34、35が、包装容器1の両端に吊り上げ具を引っかけて保持するための保持面26の直上に配置されることにより、耐荷重性を向上させ、収容対象物10の重量を無理無く支えることができるため、安定した搬送状態が実現できる。
【0048】
保管時においては、筒状の胴枠本体30及び補助枠34、35は、ともに、折り曲げて畳むことができるため、保管時の面積を省スペース化することができる。使用時には、胴枠本体30、補助枠34、35を組み立てて使用することができるため、従来の木製容器のような大きな保管スペースを必要とせず、より効率的に包装容器1を保管することができる。
【0049】
上押え部5は、
図10に示すように、ベースパッド51と、ベースパッド51の中央部付近に積層されたガイドパッド52とを備える。ガイドパッド52の下方には、収容対象物10の軸支部11の外周表面の曲面と略同一形状で、搬送中の収容対象物10の上下の移動を規制する曲面部53が形成されている。上押え部5の下端部54は、胴枠本体30の係止部312上で接して止まるため、輸送時の振動などによる位置ずれが生じにくく、上押え部5を収容部313内に安定して長期間収容させることができる。
【0050】
ベースパッド51上のガイドパッド52は、段ボール板を複数枚、接着剤を介して積層させた構造を有している。ガイドパッド52の積層高さは、胴枠本体30の端壁部32上に積層される積層部分の厚さと合致するように調整されていることが好ましい。胴枠3の軸受溝31内に上押え部5が配置されることにより、搬送時の胴枠3内における収容対象物10の移動を制限することができる。また、
図11に示すような、溝61を備えるスペーサーパッド6を配置することで、収容対象物10の端面と胴枠本体30との隙間を埋め、これにより収容対象物10の軸方向の移動を抑制できる。
【0051】
蓋部4は、
図12に示すように、胴枠3の上方を覆う天面41と、天面41から下方に延び、胴枠3の側壁部33(補助側壁部334、335)の一部を覆う一対の側壁部43と、天面41から下方に延び、胴枠3の端壁部32(第2の補助端壁部324b、325b)の一部を覆う一対の端壁部42と、天面41上に配置された天面補強部44とを備える。輸送の際、包装容器1を結束するために、天面補強部44上には、結束部材71が配置されるが、天面補強部44が配置されることにより、天面補強部44がクッション材として機能するため、蓋部4自体の変形や破損を抑制できる。
【0052】
天面補強部44の両端には、中央方向に凹となる切欠部45が形成されている。また、端壁部42には、端壁部42の先端から下方に向けて突出する突出部46が設けられている。切欠部45と突出部46は略同一形状となるように形成されている。切欠部45と突出部46は略同一形状を有するため、
図13に示すように、蓋部4の保管時に蓋部4を折り曲げて畳む際に、蓋部4の天面補強部44の切欠部45と端壁部42の突出部46とを対向させて重ね合わせることができるため、蓋部4を折り畳んだ状態で積層して保管する際の積層高さを小さくすることができる。
【0053】
突出部46は目隠しの機能を有する。胴枠3は、第1軸受溝310、第2軸受溝314a、315a及び搬送アーム挿入溝314b、315bを有するため、そのまま包装すると、第1軸受溝310、第2軸受溝314a、315a及び搬送アーム挿入溝314b、315bが外部に露出する。これは、第1軸受溝310、第2軸受溝314a、315a及び搬送アーム挿入溝314b、315b又はその内部の収容対象物10へのほこりの付着などに繋がり、好ましくない。蓋部4の端壁部42に突出部46を設けることで、第1軸受溝310、第2軸受溝314a、315a及び搬送アーム挿入溝314b、315bを覆い、外部からのほこりの侵入等を防ぐことができる。
【0054】
蓋部4は、側壁部43上に、天面41の4つの角部Pからそれぞれ斜め方向へと延びる4本の折曲線RL2を備える。折曲線RL2は、天面41と端壁部42と側壁部43の3面の接する点(角部P)から、天面41と側壁部43との接する線に対して約45度の傾きで傾斜している。折曲線RL2を山折りに折り曲げることで、端壁部42及び側壁部43を折りたたんだ状態で、蓋部4を積層して保管できるため、包装容器1として組み立てる前の保管スペースを削減できる。包装容器1を利用する場合には、端壁部42及び側壁部43を立ち上げるだけでよいため、蓋部4の組み立ても容易である。
【0055】
次に本発明の実施の形態に係る包装容器1を用いた包装方法の一例を説明する。まず、パレット2、胴枠3を構成する胴枠本体30、補助枠34、35及び蓋部4がそれぞれ所定の立体形状を有するように組み立てる。次に、パレット2上に、胴枠本体30を配置し、胴枠本体30の周囲に補助枠34、35を配置して胴枠3を組み立てることにより、パレット2上に胴枠3を配置する。次に、収容対象物10の軸支部11を、搬送機械の搬送アーム等で支持して胴枠3内に搬送し、軸支部11を胴枠3の軸受溝31に支持させるように収容する。
【0056】
更に、軸受溝31の上方から上押え部5を挿入し、上押え部5により、軸受溝31に支えられた軸支部11をその上方から固定する。収容対象物10の端部と胴枠本体30の間隙部にはスペーサーパッド6を配置して、収容対象物10の端面と胴枠本体30との隙間を埋める。その後、胴枠3の上に蓋部4を配置し、
図14に示すように、蓋部4の天面とパレット2の底面の間に帯状のバンド等の結束部材71を配置し、包装容器1の周囲をバンド状の結束部材71で結束する。
【0057】
次に、収容対象物10を収容した包装容器1のパレット2の底面22の、端壁部23と脚部21の間に設けられた保持面26に、吊り上げ運搬用の吊り上げ部材を当接させ、包装容器を吊り上げて、複数の包装容器1を積層し、最上層の包装容器1上に補強部材を配置し、積層後の包装容器を帯状の結束部材71を用いて結束し、これを輸送地へ輸送する。
【0058】
このように、発明の実施の形態に係る包装容器、包装方法、及び金属箔の輸送方法によれば、パレット2の脚部21が、パレット2の端壁部23よりも内側に、一定の間隔Sを空けて配置されることにより、収容対象物10を適切な位置で宙吊り状態としたまま、包装容器1を吊り上げて搬送することが可能となる。すなわち、包装容器1を従来のようにフォークリフトの爪等で持ち上げて運搬する以外の搬送態様をとることができ、搬送手段の多様化に繋げられるとともに、搬送効率を向上させることができる。
【0059】
また、胴枠本体30及び補助枠34、35により端壁部32を積層構造とし、収容対象物10の重力を支える胴枠3の軸受溝31(胴枠本体30の第1軸受溝310)と収容対象物10の軸支部11との最も内側の接触点の鉛直線上に、脚部21が配置されることで、軸受溝31を介して伝達される収容対象物10の重量を脚部21で直接支えることができるため、輸送時の包装容器1の潰れ等の変形、破損を抑制することができる。
【0060】
また、包装容器1が段ボール製で製造されることにより、保管時は折り畳んで収容することができるため省ペース化が図れるとともに、重量も従来の木製容器と比べて小さくできるため、輸送手段CO2の排出量低減も期待でき、より環境に優しい包装容器が提供できる。
【0061】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0062】
図1に示す例では、胴枠3を、胴枠本体30及び胴枠本体30を取り囲むように重ね合わされる補助枠34、35の3つの部材で構成する例を示しているが、本実施形態は、この例に限定されない。例えば、補助枠34、35は必ずしも補助側壁部334、335を有していなくともよい。例えば、胴枠本体30の端壁部32と少なくとも対向するように、補強パッド38と同等な形状を有する補助端壁部を備える補助枠を、胴枠本体30の端壁部32上に積層させてもよい。
図1の例では、胴枠本体30の外側に補助枠34、35を配置する例を記載したが、補助枠34、35を胴枠本体30の内側に配置することもまた可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…包装容器
2…パレット
3…胴枠
4…蓋部
5…上押え部
6…スペーサーパッド
10…収容対象物
11…軸支部
21…脚部
30…胴枠本体
31…軸受溝
34、35…補助枠
310…第1軸受溝
314a、315a…第2軸受溝
314b、315b、391、392…搬送アーム挿入溝
324a、325a…第1の補助端壁部
324b、325b…第2の補助端壁部
334、335…補助側壁部