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特許7472011有機膜形成材料、パターン形成方法ならびに化合物及び重合体
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  • 特許-有機膜形成材料、パターン形成方法ならびに化合物及び重合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】有機膜形成材料、パターン形成方法ならびに化合物及び重合体
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/96 20060101AFI20240415BHJP
   C08G 8/00 20060101ALI20240415BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20240415BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20240415BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C07D311/96 CSP
C08G8/00 Z
G03F7/26 511
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020216966
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102308
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 汐里
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208796(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/033174(WO,A1)
【文献】特開2002-105139(JP,A)
【文献】特開2005-316174(JP,A)
【文献】HOSSEINZADEH, R. et al.,Convenient synthesis of naphthopyrans using montmorillonite K-10 as heterogeneous catalyst,Journal of Chemical Sciences,2014年,126(4),pp. 1081-1089
【文献】TANAKA, K. et al.,One-Pot Synthesis of Photochromic Naphthopyrans in the Solid State,Organic Letters,2000年,2(14),pp. 2133-2134
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/96
C08G 8/00-8/20
G03F 7/004-7/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される化合物及び/又は下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体および(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成材料。
【化1】
(上記一般式(1)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは下記式(T1)で表されるいずれかの基である。)
【化2】
【化3】
(破線部は結合手を表す)
【化4】
(上記一般式(4)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、R1、n、Wは前記と同じである。R2、R3は、これらが結合する式中の炭素原子とともに、下記式(T2)で表されるいずれかの基を形成する。
【化5】
(破線部は結合手を表す)
【請求項2】
前記化合物が下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成材料。
【化6】
(上記一般式(3)中のAR5、AR6、R1、nは前記と同じである。)
【請求項3】
前記重合体が下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成材料。
【化7】
(上記一般式(5)中のAR5、AR6、R1、R2、R3、nは前記と同じである。)
【請求項4】
前記重合体の重量平均分子量が、1000~10000であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機膜形成材料。
【請求項5】
前記有機溶剤は、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機膜形成材料。
【請求項6】
更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤および(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機膜形成材料。
【請求項7】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板をエッチングして該被加工基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板をエッチングして該被加工基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板をエッチングして該被加工基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記レジスト上層膜のパターン形成方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記被加工基板を、半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜または金属酸化窒化膜とすることを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記金属を、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、コバルト、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、マンガン、モリブデン、ルテニウムまたはこれらの合金とすることを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする化合物。
【化8】
(上記一般式(1)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは下記式(T1)で表されるいずれかの基である。)
【化9】
【化10】
(破線部は結合手を表す)
【請求項17】
前記化合物が、下記一般式(3)で示されるものであることを特徴とする請求項16に記載の化合物。
【化11】
(上記一般式(3)中のAR5、AR6、R1、nは前記と同じである。)
【請求項18】
下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする重合体。
【化12】
(上記一般式(4)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは下記式(T1)で表されるいずれかの基である。R2、R3は、これらが結合する式中の炭素原子とともに、下記式(T2)で表されるいずれかの基を形成する。
【化13】
【化14】
(破線部は結合手を表す)
【化15】
(破線部は結合手を表す)
【請求項19】
前記重合体が、下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項18に記載の重合体。
【化16】
(上記一般式(5)中のAR5、AR6、R1、R2、R3、nは前記と同じである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に適用される塗布型有機膜形成材料及びこれを用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、極端紫外線(EUV、13.5nm)、電子線(EB)、X線露光に好適なパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、用いられる光源に対して如何により微細かつ高精度なパターン加工を行うかについて種々の技術開発が行われている。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源として、集積度の低い部分では水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられている。一方、集積度が高く微細化が必要な部分ではより短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)やArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーも実用化されており、更に微細化が必要な最先端世代では極端紫外線(EUV、13.5nm)によるリソグラフィーも実用化が近づいている。
【0004】
このようにレジストパターンの細線化が進むと、典型的なレジストパターン形成方法として用いられる単層レジスト法では、パターン線幅に対するパターンの高さの比(アスペクト比)が大きくなり、現像時に現像液の表面張力によりパターン倒れを起こすことは良く知られている。そこで、段差基板上に高アスペクト比のパターンを形成するにはドライエッチング特性の異なる膜を積層させてパターンを形成する多層レジスト法が優れることが知られており、ケイ素含有感光性ポリマーによるフォトレジスト層と、炭素と水素および酸素を主構成元素とする有機系ポリマー、例えばノボラック系ポリマーによる下層を組み合わせた2層レジスト法(特許文献1等)や、単層レジスト法に用いられる有機系感光性ポリマーによるフォトレジスト層とケイ素系ポリマーあるいはケイ素系CVD膜による下層と有機系ポリマーによる有機層を組み合わせた3層レジスト法(特許文献2等)が開発されてきている。
【0005】
この3層レジスト法では、まず、フルオロカーボン系のドライエッチングガスを用いてフォトレジスト層のパターンをケイ素含有の下層にパターン転写した後、そのパターンをマスクとして、酸素含有ガスによるによって炭素及び水素を主構成元素とする有機膜にドライエッチングでパターン転写して、これをマスクとして被加工基板上にドライエッチングでパターン形成を行う。しかしながら、20nm世代以降の半導体素子製造プロセスでは、この有機膜パターンをハードマスクとして被加工基板にドライエッチングでパターン転写すると、当該有機膜パターンでよれたり曲がったりする現象が見られている。
【0006】
被加工基板直上に形成されるカーボンハードマスクとしては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料としてCVD法で作製したアモルファスカーボン(以後CVD-C)膜が一般である。このCVD-C膜では、膜中の水素原子を極めて少なくすることが出来、上記のようなパターンのよれや曲りに対して非常に有効であることが知られているが、下地の被加工基板に段差がある場合、CVDプロセスの特性上このような段差をフラットに埋め込むことが困難であることも知られている。そのため、段差のある被加工基板をCVD-C膜で埋め込んだ後、フォトレジストでパターニングすると、被加工基板の段差の影響でフォトレジストの塗布面に段差が発生し、そのためフォトレジストの膜厚が不均一になり、結果としてリソグラフィー時の焦点裕度やパターン形状が劣化する。
【0007】
一方、被加工基板直上に形成されるカーボンハードマスクとしての有機膜を回転塗布法によって形成した場合、段差基板の段差を平坦に埋め込むことができる長所があることが知られている。この有機膜材料で当該基板を平坦化すると、その上に成膜するケイ素含有下層やフォトレジストの膜厚変動が抑えられ、リソグラフィーの焦点裕度を拡大することができ、正常なパターンを形成できる。
【0008】
そこで、被加工基板のドライエッチング加工を行う際にエッチング耐性が高く、被加工基板上に高い平坦性を持つ膜の形成が可能な有機膜を回転塗布法によって形成できる有機膜材料および有機膜を形成するための方法が求められている。
【0009】
従来、このような有機膜材料にはフェノール系やナフトール系化合物に対して縮合剤としてケトン類やアルデヒド類などのカルボニル化合物や芳香族アルコール類を用いた縮合樹脂類が多層レジスト法用の有機膜形成用材料として知られている。例えば、特許文献2に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特許文献3に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特許文献4に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特許文献5に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂などが例示できる。このような材料に用いられる樹脂は炭素密度の高いナフタレン、フルオレン、アダマンタン等を主骨格として構成しているがフェノール性水酸基に起因する酸素原子によるエッチング耐性劣化は回避することができなかった。
【0010】
更にエッチング耐性を損なわないため酸素のようなヘテロ原子を含まない有機膜材料用の樹脂として特許文献6に記載のフルオレン構造を有する樹脂が例示されるが、メチロール化合物などの架橋剤を添加した組成物を用いることで硬化膜を形成しているため、樹脂の炭素含量を上げたとしても炭素含量の低い架橋剤が含まれるためエッチング耐性が損なわれる問題があった。
【0011】
また、エッチング耐性を改善するための有機膜材料として特許文献7に示すようなベンゾピラン構造を導入した有機膜材料が検討されているが耐熱性やエッチング耐性といった有機膜材料に要求されている諸物性については改善の余地を残す。また、被加工基板の形状は複雑化し、被加工基板自体の材質も多種多様な材料が使用されており、プロセス裕度に優れる有機膜材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平6-118651号公報
【文献】特開2005-128509号公報
【文献】特開2006-293298号公報
【文献】特開2006-285095号公報
【文献】特開2010-122656号公報
【文献】WO2013-047106号公報
【文献】WO2017-208796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、樹脂本来の炭素含量を損なうことなく高いエッチング耐性、優れたよれ耐性を発現できる有機膜形成材料、これを用いたパターン形成方法、ならびにこのような有機膜形成材料に好適な化合物および重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、
(A)下記一般式(1)で示される化合物及び/又は下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体および(B)有機溶剤を含有するものである有機膜形成材料を提供する。
【化1】
(上記一般式(1)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは炭素数2~50の2価の有機基である。)
【化2】
【化3】
(上記一般式(4)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、R1、n、Wは前記と同じである。R2、R3は水素原子又は炭素数が1~20個の有機基であり、R2とR3が分子内で結合することにより環状有機基を形成してもよい。)
【0015】
上記一般式(1)で示される本発明の化合物は炭素含量が高い縮合芳香環構造を多く含む構造で主骨格を形成し、さらにベンゾピラン環構造の架橋作用により緻密な炭素密度が高い有機膜を形成できるため、本発明の化合物を用いた有機膜形成材料であればよれ耐性(曲り耐性)が高くドライエッチング耐性も高い有機膜を形成でき有機膜材料として用いる際に有用である。また、上記一般式(4)のような繰り返し単位を有する重合体を用いることでエッチング耐性の劣化がなく、硬化性を高めることで緻密な有機膜が形成でき、さらに基板材質や形状の依存性なく成膜可能な有機膜形成材料となる。また、上記一般式(1)の化合物と上記一般式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体の混合物であれば、埋め込み/平坦化特性、昇華物起因のアウトガスなど有機膜を用いた場合に要求される諸物性を適切な範囲で調整することが可能となる。
【0016】
そして、前記化合物が下記一般式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【化4】
(上記一般式(3)中のAR5、AR6、R1、nは前記と同じである。)
【0017】
このような構造を導入することでエッチング耐性、よれ耐性をさらに高めることができる。
【0018】
また、前記重合体が下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【化5】
(上記一般式(5)中のAR5、AR6、R1、R2、R3、nは前記と同じである。)
【0019】
このような繰り返し単位とする重合体を用いることで有機溶剤への溶解性などのハンドリング性能も改善できる。
【0020】
更に、前記重合体の重量平均分子量が、1000~10000であることが好ましい。
【0021】
このような範囲の重量平均分子量を有する重合体を含む有機膜形成材料であれば、有機溶剤への溶解性を損なわず、ベーク時のアウトガスを抑制できるものとなる。
【0022】
加えて、前記有機溶剤は、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0023】
上記有機溶剤が上記混合物であれば、上記化合物及び/又は重合体に高沸点溶剤の添加による有機膜の熱流動性が付与されることで、有機膜形成材料は高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つものとなる。
【0024】
更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤および(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0025】
上記添加剤を含む有機膜形成材料であれば、塗布性、埋め込み/平坦化特性のより優れたものとなる。
【0026】
本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0027】
上記3層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0028】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板をエッチングして該被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0029】
上記4層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンをより一層高精度で形成することができる。
【0030】
更に、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板をエッチングして該被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0031】
この3層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0032】
加えて、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工基板上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板をエッチングして該被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0033】
この4層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0034】
この場合、前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0035】
上記無機ハードマスクをCVD法あるいはALD法によって形成すると、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0036】
前記レジスト上層膜のパターン形成方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることが好ましい。
【0037】
上記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として上記方法を用いると、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0038】
前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることが好ましい。
【0039】
現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いると、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0040】
前記被加工基板を、半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜または金属酸化窒化膜とすることが好ましい。
【0041】
本発明では、上記被加工基板として、例えば、上記のものを用いることができる。
【0042】
前記金属を、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、コバルト、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、マンガン、モリブデン、ルテニウムまたはこれらの合金とすることが好ましい。
【0043】
上記金属としてこれらのものを用いることができる。このように、本発明の有機膜形成用材料を用いてパターン形成を行うと、被加工基板に上層フォトレジストのパターンを高精度で転写、形成することが可能になる。
【0044】
本発明では、下記一般式(1)で示されるものである化合物を提供する。
【化6】
(上記一般式(1)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは炭素数2~50の2価の有機基である。)
【化7】
【0045】
一般式(1)で示される化合物であれば縮合芳香環構造および縮環構造を多数含むため、耐熱性、よれ耐性、ドライエッチング耐性に優れた有機膜を形成可能な有機膜形成材料用化合物となる。
【0046】
前記化合物が、下記一般式(3)で示されるものであることが好ましい。
【化8】
(上記一般式(3)中のAR5、AR6、R1、nは前記と同じである。)
【0047】
このような化合物を用いることでエッチング耐性、よれ耐性をさらに高めることができる。
【0048】
また、本発明では、下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有するものである重合体を提供する。
【化9】
(上記一般式(4)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは炭素数2~50の2価の有機基である。R2、R3は水素原子又は炭素数が1~20個の有機基であり、R2とR3が分子内で結合することにより環状有機基を形成してもよい。)
【化10】
【0049】
このような繰り返し単位中にカルド構造を複数含むため、有機膜形成材料用重合体として用いた場合、エッチング耐性、耐熱性、埋め込み特性、平坦化特性、溶剤溶解性、成膜性などのトレードオフとなる諸物性を両立することが可能となる。
【0050】
前記重合体が、下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【化11】
(上記一般式(5)中のAR5、AR6、R1、R2、R3、nは前記と同じである。)
【0051】
このような繰り返し単位とすることで炭素密度を高め、エッチング耐性、よれ耐性に優れた有機膜形成材料用の重合体となる。
【発明の効果】
【0052】
以上説明したように、本発明の化合物または重合体は縮合芳香環を多く含む構造により主骨格を構成されているため、エッチング耐性とよれ耐性に優れた有機膜を形成するために有用である。また、この化合物または重合体を含む有機膜形成材料は、優れたエッチング耐性やよれ耐性を有するとともに耐熱性、埋め込み/平坦化特性などの諸特性を兼ね備えた有機膜を形成するのに有用な材料となる。そのため、例えば、2層レジストプロセス、ケイ素含有レジスト下層膜を用いた3層レジストプロセス又はケイ素含有レジスト下層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスといった多層レジストプロセスにおける有機膜形成材料として極めて有用である。また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
図2】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
樹脂本来の炭素含量を損なうことなく高いエッチング耐性、優れたよれ耐性を発現できる有機膜形成材料、これを用いたパターン形成方法、ならびにこのような有機膜形成材料に好適な化合物および重合体が求められていた。
【0055】
本発明者は、本発明の化合物または重合体が縮合芳香環を多く含む構造により主骨格を構成されているためエッチング耐性とよれ耐性に優れた有機膜を形成するために有用な化合物または重合体となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0056】
すなわち、本発明は、
(A)下記一般式(1)で示される化合物及び/又は下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体および(B)有機溶剤を含有するものである有機膜形成材料である。
【化12】
(上記一般式(1)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは炭素数2~50の2価の有機基である。)
【化13】
【化14】
(上記一般式(4)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、R1、n、Wは前記と同じである。R2、R3は水素原子又は炭素数が1~20個の有機基であり、R2とR3が分子内で結合することにより環状有機基を形成してもよい。)
【0057】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<有機膜形成材料用化合物>
本発明の有機膜形成材料用の化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化15】

(上記一般式(1)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6はベンゼン環またはナフタレン環であり、R1は下記式(2)で示される基のいずれかである。nは1~2の整数を表し、Wは炭素数2~50の2価の有機基である。)
【化16】
【0059】
上記一般式(1)中のWは炭素数2~50の2価の有機基であり、具体的には下記に示される構造などを例示することができる。
【化17】
(破線部は結合手を表す)
【0060】
上記一般式(1)中のAR1、AR2またはAR3、AR4で構成されるフルオレン型の部分構造としては下記などを例示することができる。この中でもAR1、AR2、AR3、AR4がベンゼン環、つまりフルオレンとなる場合が特に好ましい。
【化18】
(破線部は結合手を表す)
【0061】
上記一般式(1)中AR5、AR6はベンゼン環、ナフタレン環を表し、AR5、AR6はフルオレンの9位とベンゾピラン型のヘテロ環構造を構成する。下記などを具体的な構造として例示することができる。
【化19】
(上記式中のAR1、AR2、AR3、AR4、R1、n、Wは前記と同じである。)
【0062】
R1は上記式(2)で示される基のいずれかである。また、一般式(2)で示される基は溶剤への溶解性、重合性、硬化性を高めるための置換基となり、硬化性を向上させる観点からエチニル基、プロパルギルオキシ基であることが特に好ましい。
【0063】
本発明の化合物はフルオレンなどの縮合芳香環構造、ベンゾピラン型の複素環構造を有するため、エッチング耐性が高く、耐熱性に優れるだけでなく、熱硬化性を有するため緻密な膜を形成可能となる。
【0064】
さらに本発明の化合物は、下記一般式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【化20】
(上記一般式(3)中のAR5、AR6、R1、nは前記と同じである。)
【0065】
上記一般式(3)で表される化合物としては下記を具体例として例示でき、この中でもAR5、AR6がナフタレン環である場合が特に好ましい。
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】
[化合物の製造方法]
本発明の一般式(1)で示される化合物の製造方法の一例として、下記に示されるフェノール類とAR1、AR2、AR3、AR4、Wで構成されるフルオレノール類との脱水を伴う環化反応による合成できる。下記式中のAR1、AR2、AR3、AR4、R1、n、Wは前記と同じ、ARxはベンゼン環またはナフタレン環を表す。
【化24】
【0070】
上記の化合物は、通常、有機溶媒中で酸触媒の存在下、室温または必要に応じて冷却または加熱下で得ることが出来る。用いられる酸触媒として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。
【0071】
用いられる溶媒としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0072】
反応方法としては、フェノール類、フルオレノール類と触媒である酸触媒を一括で仕込む方法、フェノール類、フルオレノール類を分散または溶解後、触媒を一括または分割により添加する方法や溶剤で希釈し滴下する方法、触媒を分散後または溶解後、フルオレノール類またはフェノール類を一括または分割により添加する方法や、溶剤で希釈し滴下する方法がある。このときフェノール類およびフルオレノールは1種だけではなく、2種以上用いることができる。フェノール類の反応性にもよるがフルオレノール類を1モルとしたとき、フェノール類は2モル以上用いることが好ましい。反応終了後、反応に使用した触媒を除去するために有機溶剤に希釈後、分液洗浄を行い目的物を回収できる。
【0073】
この時使用する有機溶剤としては、目的物を溶解でき、水と混合しても2層分離するものであれば特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物などを挙げることが出来る。この際に使用する洗浄水は、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0074】
分液洗浄の際に系内の酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0075】
更に、分液洗浄の際に系内の金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0076】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0077】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1~5回程度である。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0078】
更に、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜形成材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30重量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0079】
このときの溶剤としては、化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0080】
<有機膜形成材料用重合体>
本発明の有機膜形成材料用の重合体は、下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【化25】
(上記一般式(4)中、AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、R1、n、Wは前記と同じである。R2、R3は水素原子又は炭素数が1~20個の有機基であり、R2とR3が分子内で結合することにより環状有機基を形成してもよい。)
【0081】
これらは上記一般式(1)で表される化合物を用いて得られる重合体であり、前記の化合物を用いているため耐熱性、エッチング耐性、熱硬化性に優れる。また、単量体ではなく繰り返し単位を有する重合体であるためアウトガス成分が少なく、また、分子量分布を有する重合体であるため結晶性が緩和され成膜性の改善も期待できる。
【0082】
上記一般式(4)の繰り返し単位を構成するR2、R3で構成される部分構造はR2、R3は水素原子又は炭素数が1~20個の有機基であり、R2とR3が分子内で結合することにより環状有機基を形成してもよいものであるが、具体的には下記などを例示することができる。下記の中でも原料の入手の容易さからメチレン基であることが好ましい。
【0083】
【化26】
(破線部は結合手を表す)
【0084】
さらに本発明の有機膜形成材料用の重合体は、下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【化27】
(上記一般式(5)中のAR5、AR6、R1、R2、R3、nは前記と同じである。)
【0085】
これらは上記一般式(3)で表される化合物を用いて得られる重合体である。
【0086】
さらに上記記載の重合体のMw(重量平均分子量)が1000~10000であることが好ましく、さらにMwが1000~5000であることが好ましい。なお、分子量は、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として求めることができる。
【0087】
このような分子量範囲であれば、有機溶剤への溶解性が確保でき、ベーク時に生じる昇華物を抑制することができる。また、有機膜形成材料用重合体の熱流動性が良好なものとなるため、材料に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる有機膜を形成することができる。
【0088】
[重合体の製造方法]
本発明の有機膜形成材料に用いられる重合体を得る手段としては、一般式(1)で表される化合物とアルデヒド類またはケトン類との重縮合反応によって得ることができる。下記式中のAR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、W、R1、R2、R3、nは前記と同じである(R2、R3のどちらか一方または両方が水素原子の場合はアルデヒド、それ以外の場合はケトンとの重縮合を表す)。
【化28】
【0089】
重縮合反応には、通常、有機溶媒中で酸触媒の存在下、室温または必要に応じて冷却または加熱下で得ることが出来る。用いられる酸触媒として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。
【0090】
用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類等を例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0091】
反応方法および重合体の回収方法については上記の一般式(1)で示される化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。
【0092】
[化合物および重合体の製造方法の別法]
また、本発明の有機膜形成材料に用いられる化合物または重合体のうちR1で表される置換基がプロパルギルエーテルの場合、下記のとおり、水酸基を有する化合物又は重合体を中間体としてプロパルギルエーテル化する方法などを例示することができる。プロパルギルエーテル基を導入できる反応であれば特に限定は無いが、下記のようにプロパルギル基を有するハロゲン化物またはトシレート、メシレートと塩基触媒を用いた置換反応等が例示できる。下記式中のXはハロゲン、トシル基またはメシル基を表す、下記式中のAR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、W、R2、R3、nは前記と同じ。
【0093】
【化29】
【0094】
【化30】
【0095】
置換反応に用いられる塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等、これらを単独または混合して用いることができる。
【0097】
反応方法および化合物または重合体の回収方法については上記の一般式(1)で示される化合物の製造方法に記載の方法によって行うことができる。
【0098】
この方法で得られる有機膜形成材料に用いられる化合物または重合体の調製には種々のハロゲン化物やトシレートおよびメシレートを要求性能に合わせて単独または複数組み合わせて用いることが可能である。例えば平坦化特性の向上に寄与する側鎖構造、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造などを持つものを任意の割合で組み合わせることができる。そのためこれらの重合体を用いた有機膜形成材料は埋め込み/平坦化特性とエッチング耐性を高い次元で両立することが可能となる。
【0099】
以上のように、本発明の有機膜形成材料用化合物または重合体であれば、高いエッチング耐性、優れたよれ耐性を発現できる有機膜形成材料を与えるものとなる。
【0100】
<有機膜形成材料>
また、本発明では、有機膜形成材料であって、(A)上述の本発明の有機膜形成材料用化合物及び/又は重合体及び(B)有機溶剤を含有する有機膜形成材料を提供する。
【0101】
[(A)本発明の化合物及び/又は重合体]
本発明の有機膜形成材料において、本発明の有機膜形成材料用化合物または重合体を単独又は複数組み合わせて用いることができる。
【0102】
さらに本発明では、上述の有機膜形成材料用化合物、重合体から選ばれる各々1種以上を含有することが好ましい。
【0103】
上記のような混合物であれば、埋め込み/平坦化特性、昇華物起因のアウトガスなどの有機膜を用いた場合に要求される諸物性を適切な範囲で調整することが可能となる。
【0104】
[(B)有機溶剤]
本発明の有機膜形成材料において使用可能な有機溶剤としては、上記の化合物及び/又は重合体(ベースポリマー)、及び含まれる場合には後述の酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0091]~[0092]段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。有機溶剤の配合量は、(A)前記化合物及び/又は重合体100部に対して好ましくは200~10,000部、より好ましくは300~5,000部である。
【0105】
このような有機膜形成材料であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の有機膜形成材料用化合物及び/又は重合体を含有するため、良好なドライエッチング耐性を有するとともに耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成材料となる。
【0106】
さらに、本発明の有機膜形成材料には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤の混合物)。高沸点有機溶剤としては、有機膜形成材料用化合物及び/又は重合体を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0107】
上記、高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成材料を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、200℃~300℃であることがより好ましい。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高すぎることなくベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0108】
また、上記、高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
【0109】
このような有機膜形成材料であれば、上記の有機膜形成材料に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0110】
[(C)酸発生剤]
本発明の有機膜形成材料においては、硬化反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0061]~[0085]段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0111】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、(A)前記化合物及び/又は重合体100部に対して好ましくは0.05~50部、より好ましくは0.1~10部である。
【0112】
[(D)界面活性剤]
本発明の有機膜形成材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の[0142]~[0147]記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、(A)前記化合物及び/又は重合体100部に対して好ましくは0.01~10部、より好ましくは0.05~5部である。
【0113】
[(E)架橋剤]
また、本発明の有機膜形成材料には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、多核フェノール類のメチロールまたはアルコキシメチル型架橋剤、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。架橋剤を添加する場合の添加量は、(A)前記化合物及び/又は重合体100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~50部である。
【0114】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0115】
多核フェノール系架橋剤としては、具体的には下記一般式(6)で示される化合物を例示することができる。
【化31】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R5は水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。qは1~5の整数である。)
【0116】
Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。qは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qとしては具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンからq個の水素原子を除いた基を例示できる。R5は水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。炭素数1~20のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、エイコサニル基を例示でき、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0117】
上記一般式(6)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できる。この中でも有機膜の硬化性および膜厚均一性向上の観点からトリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が好ましい。
【化32】
【0118】
【化33】
(R5は上記の通りである。)
【0119】
[(F)可塑剤]
また、本発明の有機膜形成材料には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、(A)前記化合物及び/又は重合体100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~30部である。
【0120】
また、本発明の有機膜形成材料には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0121】
【化34】
(式中、Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Yは炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0122】
【化35】
(式中、R6aは炭素数1~4のアルキル基である。Yは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0123】
[(G)その他の成分]
本発明の有機膜形成材料には更に別の化合物やポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、本発明の有機膜形成材料と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。
【0124】
このような材料としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’,4,4’-ヘキサメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-5,5’-ジオール、5,5’-ジメチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール及び1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004-205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005-250434号公報記載のアセナフチレン共重合体、特開2006-227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006-293298号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006-285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010-122656号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008-158002号公報記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。
【0125】
上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、本発明の有機膜形成材料100質量部に対して0~1,000質量部が好ましく、より好ましくは0~500質量部である。
【0126】
なお、本発明の有機膜形成材料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記有機膜形成材料は有機膜材料又は半導体装置製造用平坦化材料の用途に用いることができる。
【0127】
また、本発明の有機膜形成材料は、2層レジストプロセス、ケイ素含有下層膜を用いた3層レジストプロセス、ケイ素含有無機ハードマスク下層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用有機膜材料として、極めて有用である。
【0128】
(有機膜形成方法)
本発明では、上述の有機膜形成材料を用い、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜の有機膜又は半導体製造用平坦化膜として機能する有機膜を形成する方法を提供する。
【0129】
本発明の有機膜形成材料を用いた有機膜形成方法では、上記の有機膜形成材料を、スピンコート法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト下層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。ベークは100℃以上600℃以下、10~600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは200℃以上500℃以下、10~300秒の範囲内で行う。デバイスダメージやウエハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハープロセスでの加熱温度の上限は、600℃以下とすることが好ましく、より好ましくは500℃以下である。
【0130】
また、本発明の有機膜形成材料を用いた有機膜形成方法では、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を、上記同様スピンコート法等でコーティングし、上記有機膜形成材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより有機膜を形成することもできる。
【0131】
本発明の有機膜形成材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。ベーク中の雰囲気としては空気中でも構わないが、酸素を低減させるためにN、Ar、He等の不活性ガスを封入しておくことは、有機膜の酸化を防止するために好ましい。酸化を防止するためには酸素濃度をコントロールする必要があり、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。ベーク中の有機膜の酸化を防止すると、吸収が増大したりエッチング耐性が低下したりすることがないため好ましい。
【0132】
このような本発明の有機膜形成材料を用いた有機膜形成方法は、その優れた埋め込み/平坦化特性により、被加工基板の凹凸に係らず平坦な硬化膜を得ることができるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板上に平坦な硬化膜を形成する場合に、極めて有用である。
【0133】
なお、この有機膜又は半導体装置製造用平坦化膜等の有機膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0134】
(パターン形成方法)
本発明では、このような有機膜形成材料を用いた3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜上にケイ素原子を含有するレジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして上記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、得られたケイ素含有レジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、さらに得られた有機膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターン転写するパターン形成方法を提供する。
【0135】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト下層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記3層レジストプロセスにおいて、ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして行う有機膜のドライエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0136】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト下層膜としては、ポリシロキサンベースの下層膜も好ましく用いられる。ケイ素含有レジスト下層膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト下層膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト下層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0137】
また、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスとしても好適で、この場合、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして上記有機反射防止膜と上記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、得られたケイ素含有レジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに得られた有機膜パターンをエッチングマスクにして上記被加工基板にエッチングで上記被加工基板にパターンを転写することで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0138】
また、ケイ素含有レジスト下層膜の代わりに無機ハードマスクを形成してもよく、この場合には、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスク上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして上記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、得られた無機ハードマスクパターンをエッチングマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに得られた有機膜パターンをエッチングマスクにして上記被加工基板にエッチングでパターンを転写することで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0139】
上記のように、有機膜の上に無機ハードマスクを形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5~200nmが好ましく、より好ましくは10~100nmである。また、無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300~500℃となるために、有機膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いる有機膜形成材料は、高い耐熱性を有しており300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0140】
また、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスとしても好適で、この場合、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスク上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして上記有機反射防止膜と上記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、得られた無機ハードマスクパターンをエッチングマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに得られた有機膜パターンをエッチングマスクにして上記被加工基板にエッチングでパターンを転写することで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0141】
上記のように、無機ハードマスクの上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、無機ハードマスクの上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0142】
上記3層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、さらに、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0143】
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0144】
上記レジスト上層膜のパターン形成方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることが好ましい。
【0145】
また、前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることが好ましい。
【0146】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト下層膜や無機ハードマスクのエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて上層レジストパターンをマスクにして行う。これにより、ケイ素含有レジスト下層膜パターンや無機ハードマスクパターンを形成する。
【0147】
次いで、得られたケイ素含有レジスト下層膜パターンや無機ハードマスクパターンをマスクにして、有機膜のエッチング加工を行う。
【0148】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト下層膜パターンは基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有レジスト下層膜パターンの剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0149】
本発明の有機膜形成材料によって得られる有機膜は、これら被加工基板エッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。
【0150】
なお、被加工基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0151】
被加工基板としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0152】
被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0153】
なお、被加工基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、ルテニウム、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0154】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0155】
3層レジストプロセスの一例について、図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。3層レジストプロセスの場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト下層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0156】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜5の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてケイ素含有レジスト下層膜4をエッチング加工してケイ素含有レジスト下層膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたケイ素含有レジスト下層膜パターン4aをマスクとして有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する(図1(E))。さらにケイ素含有レジスト下層膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(図1(F))。
【0157】
無機ハードマスクを用いる場合、ケイ素含有レジスト下層膜4が無機ハードマスクであり、BARCを敷く場合はケイ素含有レジスト下層膜4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはケイ素含有レジスト下層膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト下層膜4のエッチングを行うことができる。
【0158】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例
【0159】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0160】
合成例 有機膜形成材料用化合物および重合体の合成
【0161】
有機膜形成材料用の化合物(A1)~(A7)および比較例用化合物(R1)の合成には下記に示すフェノール類(B1)~(B5)、フルオレノール類(C1)~(C4)を用いた。
【0162】
フェノール類:
【化36】
【0163】
フルオレノール類:
【化37】
【0164】
(合成例1)
化合物(A1)の合成
【化38】
窒素雰囲気下、フェノール類(B1)22.8g、フルオレノール類(C1)30.0g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸15.4gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK(メチルイソブチルケトン)400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF150gを加え均一溶液とした後、メタノール500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A1):Mw=720、Mw/Mn=1.04
【0165】
(合成例2)
化合物(A2)の合成
【化39】
窒素雰囲気下、フェノール類(B2)32.9g、フルオレノール類(C2)20.0g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸9.9gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF150gを加え均一溶液とした後、IPE(ジイソプロピルエーテル)500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A2):Mw=840、Mw/Mn=1.06
【0166】
(合成例3)
化合物(A3)の合成
【化40】
窒素雰囲気下、フェノール類(B4)24.4g、フルオレノール類(C2)20.0g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸9.9gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK350mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF180gを加え均一溶液とした後、メタノール500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A3):Mw=890、Mw/Mn=1.04
【0167】
(合成例4)
化合物(A4)の合成
【化41】
窒素雰囲気下、フェノール類(B1)21.9g、フルオレノール類(C3)30.0g、1,2-ジクロロエタン100gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸14.8gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、メタノール500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A4)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A4):Mw=710、Mw/Mn=1.03
【0168】
(合成例5)
化合物(A5)の合成
【化42】
窒素雰囲気下、フェノール類(B3)32.9g、フルオレノール類(C3)20.0g、1,2-ジクロロエタン100gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸9.9gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、IPE500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A5)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A5):Mw=900、Mw/Mn=1.06
【0169】
(合成例6)
化合物(A6)の合成
【化43】
窒素雰囲気下、フェノール類(B1)18.1g、フルオレノール類(C4)30.0g、1,2-ジクロロエタン100gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸12.3gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、メタノール500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A6)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A6):Mw=850、Mw/Mn=1.05
【0170】
(合成例7)
化合物(A7)の合成
【化44】
窒素雰囲気下、フェノール類(B2)27.3g、フルオレノール類(C4)20.0g、1,2-ジクロロエタン200gを加え、内温50℃で均一分散液とした。メタンスルホン酸8.2gをゆっくりと加え、内温50℃で6時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK400mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、IPE500gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A7)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A7):Mw=950、Mw/Mn=1.07
【0171】
(合成例8)
重合体(A8)の合成
【化45】
窒素雰囲気下、化合物(A2)20.0g、37%ホルマリン水溶液1.47g、1,2-ジクロロエタン100gを加え、内温50℃で均一溶液とした。メタンスルホン酸2.5gをゆっくりと加え、内温50℃で8時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A8)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A8):Mw=3300、Mw/Mn=1.68
【0172】
(合成例9)
重合体(A9)の合成
【化46】
窒素雰囲気下、化合物(A5)20.0g、2-ナフトアルデヒド2.84g、1,2-ジクロロエタン100gを加え、内温50℃で均一溶液とした。メタンスルホン酸2.5gをゆっくりと加え、内温50℃で8時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A9)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A9):Mw=3400、Mw/Mn=1.76
【0173】
(合成例10)
重合体(A10)の合成
【化47】
窒素雰囲気下、化合物(A7)20.0g、9-フルオレノン3.31g、1,2-ジクロロエタン100gを加え、内温50℃で均一分散液とした。あらかじめ調製したメタンスルホン酸2.2gおよび3-メルカプトプロピオン酸0.73gの混合液をゆっくりと加え、内温70℃で12時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK300mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、IPE300gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、IPE200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A10)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A10):Mw=4300、Mw/Mn=1.86
【0174】
(合成例11)
重合体(A11)の合成
【化48】
窒素雰囲気下、重合体(A8)10.0g、炭酸カリウム7.1gおよびジメチルホルムアミド50gを加え、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド4.6gをゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK200mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。反応液にメチルイソブチルケトン200mlと純水100gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液50gで2回、純水50gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF40gを加え均一溶液とした後、メタノール150gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A11)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A11):Mw=3700、Mw/Mn=1.73
【0175】
(合成例12)
重合体(A12)の合成
【化49】
窒素雰囲気下、重合体(A9)10.0g、炭酸カリウム6.1gおよびジメチルホルムアミド50gを加え、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド3.9gをゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK200mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。反応液にメチルイソブチルケトン200mlと純水100gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液50gで2回、純水50gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF40gを加え均一溶液とした後、メタノール150gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A12)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A12):Mw=3800、Mw/Mn=1.85
【0176】
(合成例13)
比較例用化合物(R1)の合成
【化50】
窒素雰囲気下、ジオール化合物であるフェノール類(B5)10.0g、9-エチニル―9-フルオレノール13.8g、オルトギ酸トリメチル14.1gおよび1,2-ジクロロエタン250gを液温80℃で均一溶液とした後、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム3.4gを加えて、液温80℃で12時間反応を行った。室温まで冷却後、MIBK300mlを加え、有機層を純水100gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF50gを加え均一溶液とした後、メタノール200gで結晶を析出させた。沈降した結晶をろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R1):Mw=900、Mw/Mn=1.04
【0177】
(合成例14)
比較例用化合物(R2)の合成
【化51】
窒素雰囲気下、2,7-ジプロパルギルオキシナフタレン80g、37%ホルマリン溶液22g、及び1,2-ジクロロエタン250gを液温70℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸5gをゆっくり加え、液温80℃で12時間反応を行った。室温まで冷却後、MIBK500mlを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、ヘキサン2000gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R2):Mw=2900、Mw/Mn=1.57
【0178】
実施例に用いた化合物および重合体(A1)~(A12)および比較例に用いた化合物(R1)および(R2)のMw、Mw/Mnの結果一覧を表1~4に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
【表4】
【0183】
有機膜形成材料(UDL-1~16、比較UDL-1~2)の調製
上記化合物及び/又は重合体(A1)~(A12)および(R1)、(R2)、高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃、(S2)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃を用い、PF-6320(オムノバ社製)を0.1質量%含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて表5に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形成材料(UDL-1~16、比較UDL-1~2)をそれぞれ調製した。
【表5】
【0184】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1-1~1-16、比較例1-1~1-2)
上記で調製したUDL-1~16、比較UDL-1~2をシリコン基板上に塗布し、大気中、350℃で60秒間ベークした後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、PGMEA処理前後の膜厚を測定した。成膜後の膜厚とPGMEA処理後の膜厚を用いて残膜率を求めた。その結果を表6に示す。
【表6】
【0185】
表6に示されるように、本発明の化合物及び/又は重合体を用いた有機膜(実施例1-1~1-16)は、PGMEA処理後の残膜率が99.5%以上あり、熱処理により架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。特に単分子化合物である実施例1-1~1-4、13、14と比較例1-1を比較すると、比較例1-1の化合物は架橋部位がベンゾピラン環のみしかないのに対して本発明の化合物は末端の置換基にも架橋部位が存在するため、実施例1-1~1-4、13、14のほうが膜減りが少なく熱による硬化が効率的に進んでいることがわかる。
【0186】
実施例2 耐熱特性評価(実施例2-1~2-16、比較例2-1~2-2)
上記の有機膜形成材料(UDL-1~16、比較UDL-1~2)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、350℃で60秒間、焼成して200nmの塗布膜を形成し、膜厚Aを測定した。この基板を更に酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃でさらに10分間焼成して膜厚Bを測定した。これらの結果を表7に示す。
【表7】
【0187】
表7に示されるように、本発明の有機膜形成材料(実施例2-1~2-16)は、450℃での焼成後も膜厚減少が5%未満となり、本発明の有機膜形成材料は450℃焼成後においても高温ベーク前の膜厚を保持しており耐熱性が優れていることがわかる。特に連結基にアルキル基でなく芳香環構造を導入した実施例2-2~2-16においては残膜率が99%以上保持されており耐熱性が改善されていることがわかる。一方、比較例2-1においては実施例1の結果より架橋密度が不足が起因することによる耐熱性が実施例2-1~2-16に比べ劣る結果となった。比較例2-2においては実施例1の結果の通り、膜の硬化性は十分であったが、重合体が繰り返し単位を構成する部分構造の剛直性が劣るため耐熱性に劣る結果となった。
【0188】
実施例3 ハードネス測定(実施例3-1~3-16、比較例3-1~3-2)
上記で調製したUDL-1~16、比較UDL-1~2をシリコン基板上に塗布し、大気中、350℃で60秒間ベークし膜厚200nmの塗布膜を形成した。これらの膜を東陽テクニカ社製ナノインデンターSA2型装置でナノインデンテーション試験を行い、上記塗布膜のハードネスを測定、その結果を表8に示す。
【0189】
【表8】
【0190】
表8で示されるように実施例3-1~3-16はハードネス0.6以上の膜を形成できており、比較例3-1に比べ緻密で強度の高い膜が形成可能なことが確認できた。これは実施例1の結果から示唆される結果である。また、比較例3-2においては実施例1の結果の通り硬化性は十分であるため、実施例2の結果の通り耐熱性は劣るが0.6以上のハードネスを有していた。
【0191】
実施例4 エッチング試験(実施例4-1~4-16、比較例4-1~4-2)
[CF/CHF系ガスでのエッチング試験]
上記で調製したUDL-1~16、比較UDL―1~2をシリコン基板上に塗布して、大気中、350℃で60秒間ベークし膜厚200nmになるよう有機膜を形成後、下記条件でCF/CHF系ガスでのエッチング試験を行った。この場合、東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE-8500を用いエッチング前後のポリマー膜の膜厚差を求め、エッチング速度(nm/min.)を算出した。結果を表9に示す。
【0192】
エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,000W
CHFガス流量 10ml/min
CFガス流量 100ml/min
Heガス流量 200ml/min
時間 20sec
【0193】
[O系ガスでのエッチング試験]
上記と同様にUDL-1~16、比較UDL―1~2をシリコン基板上に塗布して、空気雰囲気下、大気中、350℃で60秒間ベークし、膜厚 200nmになるよう有機膜を形成し、下記条件でO系ガスでのエッチング試験を行った。この場合、東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE-8500を用い、エッチング前後のポリマー膜の膜厚差を求め、エッチング速度(nm/min.)を算出した。CF/CHF系ガスの結果と併せて表9に示す。
エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 100W
ガス流量 30ml/min
ガス流量 70ml/min
時間 60sec
【0194】
上記、CF/CHF系ガスおよびO系ガスのエッチング試験において、エッチング速度が小さいほど、エッチング耐性に優れた膜となる。
【表9】
【0195】
表9に示す通り、実施例4-1~4-16と比較例4-1、4-2を比べるとCF/CHF系ガス、O系ガスのいずれのエッチング試験においても、実施例の方が比較例に比べてエッチング速度が小さい値となり、エッチング耐性に優れた膜が形成されていることがわかる。
【0196】
実施例5 パターンエッチング試験(実施例5-1~5-16、比較例5-1~5-2)
上記で調製したUDL-1~16、比較UDL-1~2を膜厚200nmのSiO膜が形成された直径300mmSiウェハー基板上に塗布し、大気中、350℃で60秒間ベーク後の膜厚200nmになるように有機膜を形成した。その上にケイ素含有レジスト下層膜材料(SOG-1)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0197】
レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表10の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0198】
【表10】
【0199】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)の構造式を以下に示す。
【化52】
【0200】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表11の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0201】
【表11】
【0202】
用いたポリマー(PP1)の構造式を以下に示す。
【化53】
【0203】
ケイ素含有レジスト下層膜材料(SOG-1)としてはArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)で示されるポリマー、及び架橋触媒(CAT1)を、FC-4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表12に示す割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素含有レジスト下層膜材料(SOG-1)を調製した。
【0204】
【表12】
【0205】
用いたArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)、架橋触媒(CAT1)の構造式を以下に示す。
【化54】
【0206】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光量を変えながら露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、ピッチ100nmでレジスト線幅を50nmから30nmまでのポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0207】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにしてケイ素含有レジスト下層膜の加工、ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして有機膜、有機膜をマスクにしてSiO膜の加工を行った。
【0208】
エッチング条件は下記に示すとおりである。
レジストパターンのSOG膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 15sccm
ガス流量 75sccm
時間 15sec
【0209】
SOG膜パターンの有機膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
2ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0210】
有機膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
ガス流量 60sccm
時間 90sec
【0211】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察し、形状を比較し、表13にまとめた。
【0212】
【表13】
【0213】
表13に示されるように、本発明の有機膜形成材料(実施例5-1~5-16)の結果の通り、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成材料は多層レジスト法による有機膜材料として好適に用いられることが確認された。また、露光により作られたレジスト線幅に従って、基板転写後のパターン寸法も変化し、比較例5-1においては40nm程度の線幅でパターンよれが発生したが、本発明の化合物及び/又は重合体を用いた実施例5-1~5-16においてはパターン寸法35nm以下までよれがなく、高いよれ耐性を有することが判明した。本発明の化合物および重合体のように、ハードネスが0.60GPaを超える緻密な高強度の膜が形成できる有機膜を使用することにより高いよれ耐性を得られることがわかる。
【0214】
実施例6 平坦化特性評価(実施例6-1~6-13、比較例6-1)
有機膜形成材料(UDL-2~3、5~8、10~16、比較UDL-2)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO基板(図2中の8)上に塗布し、大気中、350℃で60秒間焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜(図2中の7)の段差(図2中のdelta)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表14に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、膜厚約0.2μmの有機膜形成材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。
【表14】
【0215】
表14に示されるように、本発明の有機膜形成材料は、比較例6-1に比べてトレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。これは実施例2の通り、本発明の重合体は耐熱性に優れるためベークによる膜のシュリンクが抑制されていることに起因する。また、高沸点溶剤を添加した実施例6-10~6-13と添加していない実施例6-1~6-3、6-6とを比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性が改善していることがわかる。また、重合体と化合物を混合した実施例6-7~6-9と重合体のみの実施例6-3~6-5を比較すると平坦性が改善されており、この結果は、前記の実施例1~実施例5の結果の通り、溶剤耐性、耐熱性、よれ耐性、エッチング耐性といった有機膜に求められている諸物性を損なうことなく平坦性を改善することができる。
【0216】
以上のように、本発明の有機膜形成材料は、耐熱性、高いエッチング耐性、エッチング時のよれ耐性に優れており、超微細かつ高精度なパターン加工のための多層レジストプロセス、特に3層レジストプロセス用有機膜として極めて有用である。
【符号の説明】
【0217】
1…基板、 2…被加工層、 2a…基板に形成されるパターン、
3…有機膜、 3a…有機膜パターン、 4…ケイ素含有レジスト下層膜、
4a…ケイ素含有レジスト下層膜パターン、 5…レジスト上層膜、
5a…レジストパターン、 6…所用部分、 7…有機膜、 8…SiO基板
delta…段差
図1
図2