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特許7472020周縁部に設けられた第1及び第2ステージアレイを備えるクライオポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】周縁部に設けられた第1及び第2ステージアレイを備えるクライオポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/08 20060101AFI20240415BHJP
   F25B 9/14 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F04B37/08
F25B9/14 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020526354
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018061566
(87)【国際公開番号】W WO2019099862
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】62/588,221
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】バートレット アレン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スザレック ジェラルド エム
(72)【発明者】
【氏名】マホーニー ポール ケイ
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-173378(JP,A)
【文献】特開2000-213460(JP,A)
【文献】特開2012-180846(JP,A)
【文献】特開平02-271088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 25/00-37/20
F04B 41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ステージとより低温の冷却ステージとを有する極低温冷凍機と、
側部と閉鎖端と閉鎖端の反対側の前面開口部とを有する輻射シールドであって、前記冷却ステージに熱連結され、前記冷却ステージによって冷却され、前記輻射シールドの中央空間及び前記前面開口部はクライオポンピング表面がほぼない輻射シールドと、
前記輻射シールド側部から間隔を置いているが、前記輻射シールド側部に近接し、前記輻射シールド側部に沿って伸びる1次クライオポンピングアレイであって、吸着材料を支持し、前記より低温の冷却ステージに連結され、前記より低温の冷却ステージによって冷却される1次クライオポンピングアレイと、
前記1次クライオポンピングアレイに沿って伸びる凝縮クライオポンピングアレイであって、前記輻射シールドの前面開口部を通過する輻射から前記1次クライオポンピングアレイを遮蔽する凝縮クライオポンピングアレイとを備え、
前記1次クライオポンピングアレイが、内方に面する表面に吸着材料を備える円筒体である、
ことを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記凝縮クライオポンピングアレイが、前記前面開口部に面する表面を有するバッフルのアレイを備える、
請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記凝縮クライオポンピングアレイが、前記輻射シールドの前面開口部から前記1次クライオポンピングアレイへの略全ての直線経路上にある、
請求項1または2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記輻射シールド閉鎖端が、前記前面開口部からの分子を前記1次クライオポンピングアレイに向けて再指向させる隆起面を備える、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記隆起面が前記輻射シールドの中心軸に沿った一点に隆起している、
請求項4に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記隆起面が、円錐状である、
請求項4または5に記載のクライオポンプ。
【請求項7】
少なくとも20%の水素捕捉率を有する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項8】
前記1次クライオポンピングアレイへの輻射負荷量が、3%未満である、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項9】
前記1次クライオポンピングアレイへの輻射負荷量が、2%未満である、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項10】
前記1次クライオポンピングアレイへの輻射負荷量が、1%未満である、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項11】
前記極低温冷凍機が、前記冷却ステージと前記より低温の冷却ステージとを有し前記輻射シールドに対して接線方向に伸びるコールドフィンガを備える、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項12】
前記輻射シールドが、前記冷却ステージに連結され前記極低温冷凍機の前記より低温の冷却ステージを包囲するシールドに熱連結され、前記シールドを介して冷却される、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項13】
前記極低温冷凍機が、コールドフィンガを備え、前記極低温冷凍機の前記より低温の冷却ステージが前記1次クライオポンピングアレイのベースに連結され、前記前面開口部からの分子を前記1次クライオポンピングアレイに向けて再指向させる隆起面が、前記1次クライオポンピングアレイのベース上方の床に設けられ、前記凝縮クライオポンピングアレイ及び前記床が、前記極低温冷凍機の前記冷却ステージに、前記1次クライオポンピングアレイのベースを貫通する支柱を介して連結されている、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項14】
真空容器がフランジ開口部の周りに取付フランジを備え、前記真空容器と前記輻射シールドと前記1次クライオポンピングアレイとのそれぞれが前記フランジ開口部の直径より大きい直径を有する、
請求項1ないし13のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2017年11月17日出願の米国仮特許出願第62/588、221号の優先権を主張するものである。上記出願の技術の全体が、引用によって本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能なクライオポンプは、開放型と閉鎖型とのいずれの極低温サイクルによって冷却されるかに関わらず一般的に同じ設計コンセプトに従っている。通常4~25ケルビンの範囲内で作動する低温第2ステージアレイが、1次排気面である。この面は、通常、65~130ケルビンの温度範囲内で作動される高温円筒体によって包囲され、より低温のアレイに輻射遮蔽を提供する。輻射シールドは、一般的に、1次排気面と排気されるチャンバとの間に位置決めされた前面アレイのところを除いて閉鎖されたハウジングを有する。このより高い温度、第1ステージ、前面アレイは、1型ガスとして知られる水蒸気のような高沸点ガスのための排気場所になる。
【0003】
作動中、水蒸気のような高沸点ガスが冷却前面アレイ上で凝縮される。低沸点ガスが前面アレイを通過し、輻射シールド内の空間に入る。窒素のような2型ガスは、より低温の第2ステージアレイ上で凝縮する。水素、ヘリウム、ネオンのような3型ガスは、4ケルビンでかなりの蒸気圧を有する。3型ガスを捕捉するために、第2ステージアレイの内面が、炭、ゼオライト、または分子ふるいのような吸着材で被覆されるのがよい。吸着は、極低温温度に保たれた材料によってガスが物理的に捕捉され、これにより、周囲から取り除かれるプロセスである。このように、排気面上でガスが凝縮または吸着されると、真空のみがワークチャンバ内に残される。
【0004】
閉鎖サイクル冷却機によって冷却されるシステムでは、冷却機は、輻射シールドを貫通するコールドフィンガを有する2段式冷却機であるのが典型的である。冷却機の第2の、より低温の冷却ステージの低温端部は、コールドフィンガの先端にある。1次クライオポンピングアレイ、即ちクライオパネルは、コールドフィンガの第2ステージの最低温端部でヒートシンクに連結される。このクライオパネルは、例えば、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,494,381号明細書及び第7,313,922号明細書のように、第2ステージヒートシンクの周りに配置された、あるいはこのヒートシンクに連結された、単なる金属プレート、カップ、または金属バッフルの円筒状のアレイでもよい。この第2ステージクライオパネルは、前述のように、炭またはゼオライトのような低温凝縮ガス吸着材を更に支持してもよい。
【0005】
冷凍機コールドフィンガは、カップ状の輻射シールドのベースを貫通し、シールドと同心であるのがよい。他のシステムでは、コールドフィンガが輻射シールドの側部を貫通する。このような構成は、時には、クライオポンプを配置することのできる利用可能なスペースによりうまくはまる。
【0006】
輻射シールドは、冷凍機の冷却第1ステージの最低温端部でヒートシンク、即ちヒートステーションに連結される。このシールドは、より低温の第2ステージクライオパネルを、輻射熱からクライオパネルを保護するような方法で包囲する。輻射シールドを閉鎖する前面アレイは、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第4、356、701号明細書に開示されるようにシールドを介してあるいは熱支柱を介して冷却第1ステージヒートシンクによって冷却される。
【0007】
大量のガスを収集した後に、時々クライオポンプを再生する必要がある。再生は、クライオポンプによって前に捕捉されたガスを解放するプロセスである。再生は、通常、クライオポンプが外気温度に戻ることを可能にすることによって達成され、次いで、第2のポンプによってクライオポンプからガスが取り除かれる。ガスの解放及び除去に続いて、クライオポンプが再起動され、事後再冷却が、大量のガスをワークチャンバから取り除くことを再度可能にする。
【0008】
この従来技術のやり方は、例えば、山形を備える第2ステージ吸着材を包囲することによって第2ステージクライオパネルに配置された吸着材を保護し、凝縮ガスが凝縮することを防ぎ、したがって吸着材層を遮蔽する。このやり方は、層が、窒素、ネオン、またはヘリウムのような非凝縮ガスの吸収を防ぐ。これが、再生サイクルの頻度を減らしている。しかしながら、山形部は、吸着材への非凝縮物のアクセス性を減少させる。
【0009】
クライオポンプの良度示数は、水素の捕捉率、ポンプの外側からクライオポンプの開口部に到達する水素分子がアレイの第2ステージで捕捉される確率である。捕捉率は、ポンプによって捕捉される毎秒リットルの水素の排気の速度に直接関連する。従来設計のより速い速度のポンプは、20%かそれより多い水素の捕捉率を有する。
【0010】
図1は、真空容器102に位置決めされた従来技術のクライオポンプを示す。真空容器は、周囲温度であり、典型的にはゲートバルブを介してフランジ104によってプロセスチャンバに取り付けられている。真空容器102内のクライオポンプの構成要素は、2段式極低温冷凍機106によって冷却される。冷凍機は、コールドフィンガの円筒体112、116内を往復運動する第1ステージディスプレーサ110及び第2ステージディスプレーサ114とを備えるコールドフィンガを有する。コールドフィンガは、フランジ118を介して駆動モータに取り付けられ、真空容器102の側部ポート108を貫通する。
【0011】
真空容器内に位置決めされた輻射シールド120が、第1ステージヒートシンク122を介して冷凍機の冷却第1ステージ112によって約65ケルビンで冷却される。前面アレイ124は、支柱128上で支持され、放射シールドを介して支柱128によって約80ケルビンまで冷却されるルーバー126で形成される。
【0012】
前面アレイの設計は、設計目標のバランスである。より開放された前面アレイは、より多くのガスを輻射シールド内の空間に流入させ捕捉させることを可能にし、より高い捕捉率をもたらす。例えば、開放型の設計は、水素のより高い捕捉率のために、水素が空間内によりたやすく流入することを可能にし、多くの用途の欠かせない設計要件となる。一方で、より開放させた設計は、輻射が第2ステージアレイをより多く通過することを許容し、したがって、第2ステージアレイに望ましくない輻射負荷を生じさせる。第2ステージアレイの輻射負荷量は、第2ステージアレイに直接衝突するアレイの前面開口部で受け入れる輻射のパーセンテージである。より閉鎖された設計で、輻射は、前面アレイによって遮蔽される、あるいは輻射シールド120への見通し線の列に限定され、第2ステージ輻射負荷量を減少させると考えられる。しかしながら、第2ステージアレイ上に凝縮あるいは吸着させようとするガスは、まず前面アレイのルーバー126に衝突する傾向が強いと考えられる。高い真空環境下では、このようなガスは、プロセスチャンバに向けて戻されると考えられる。
【0013】
特許第7,313,922号明細書及び図1での前面アレイは、水素のより高い捕捉率のために開放されているが、第2ステージへの輻射負荷量の増加をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第4,494,381号明細書
【文献】米国特許第7,313,922号明細書
【文献】米国特許第4,356,701号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
高い捕捉率と低い輻射負荷量とを第2ステージアレイに備える改良されたクライオポンプシールドは、開示されたクライオポンピングアレイ構成によって得られる。クライオポンプでは、極低温冷凍機が、冷却ステージとより低温の冷却ステージとを備える。輻射シールドは、側部と、閉鎖端と、閉鎖端と反対側の前面開口部と、を有する。輻射シールドは冷却ステージに熱連結され、冷却ステージによって冷却される。輻射シールドの中央空間及び前面開口部は、クライオポンピング表面がほぼない。1次クライオポンピングアレイは輻射シールドの側部から間隔を置いているが、これに近接し、これに沿って伸びる。1次クライオポンピングアレイは、吸着材料を支持し、より低温の冷却ステージに連結され、この冷却ステージによって冷却される。凝縮クライオポンピングアレイは、1次クライオポンピングアレイに沿って伸びる。凝縮クライオポンピングアレイが、輻射シールドの前面開口部を通過する輻射から1次クライオポンピングアレイを遮蔽する。
【0016】
1次クライオポンピングアレイは、内方に面する表面に吸着材を備える円筒体でもよい。凝縮クライオポンピングアレイが、前面開口部に面する表面を有するバッフルのアレイを備えてもよい。バッフルは、輻射シールドの前面開口部から1次クライオポンピングアレイへの略全ての直線の経路上にあってもよい。
【0017】
輻射シールド閉鎖端が、前面開口部からの分子を1次クライオポンピングアレイに向けて再指向させる隆起面を備えてもよい。隆起面は、輻射シールドの中心軸に沿った一点に隆起してもよく、円錐状でもよい。
【0018】
クライオポンプが、少なくとも20%の水素捕捉率を有するのがよい。1次クライオポンピングアレイへの輻射負荷量は、3%未満であればよく、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満である。
【0019】
極低温冷凍機は、冷却ステージとより低温の冷却ステージとを有し輻射シールドに対し接線方向に伸びるコールドフィンガを備えるのがよい。輻射シールドが、冷却ステージに連結され冷凍機の冷却ステージを包囲するシールドに熱連結され、このシールドを介して冷却されるのがよい。
【0020】
代替的に、冷凍機のより低温の冷却ステージが、1次クライオポンピングアレイのベースに連結され、前面開口部からの分子をクライオポンピングアレイに向けて再指向させる隆起面が、1次クライオポンピングアレイのベース上方の床に設けられるのがよい。凝縮クライオポンピングアレイ及び床は、ベースを貫通する支柱を介して冷凍機の冷却ステージに連結されるのがよい。
【0021】
クライオポンプが、フランジ開口部を有する取付フランジを備えてもよい。真空容器、輻射シールド、及び1次クライオポンピングアレイはそれぞれ、フランジ開口部の内径より大きい内径を有する。
【0022】
前記のことは、異なる図にわたって類似の引用記号が同一部品を示す添付の図面に図示されているように、例示の実施形態の後述のより詳細な説明から明確になるだろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに実施形態を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来技術のクライオポンプを示す断面斜視図である。
図2】本発明の実施形態のクライオポンプの断面図である。
図3】本発明の別の実施形態の断面斜視図である。
図4図3のクライオポンプの斜視図である。
図5図3のクライオポンプの水平断面斜視図である。
図6】真空容器の底面からクライオポンピング面に連結されている二段式冷凍機である本発明の別の実施形態である。
図7】容器と、輻射シールドと、第2ステージクライオポンピングアレイと、凝縮バッフルとが、径方向に広がっている本発明の別の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示の実施形態の説明を以下に示す。
【0025】
どのようなクライオポンプの設計でも、第2ステージアレイへの分子コンダクタンスと、第2ステージアレイへの熱輻射からの保護との間でトレードオフがなされる。上述したように、従来のクライオポンプの設計では、第2ステージアレイは、周囲輻射シールド内で中心に配置されるのが典型的である。輻射シールドの開口部は、アレイへの分子の伝達を可能にする一方で第2ステージアレイへの輻射を同時に遮蔽するように設計された平面輻射バッフル組立体を含む。従来のデザインでは、高い排気速度は、高輻射及び第2ステージアレイの汚染物質曝露の代償をもたらす。
【0026】
本明細書に示す本発明は、従来のクライオポンプの設計手法を「逆転」したものである。これは、第2ステージアレイ組立体を中心配置から輻射シールドの外周部へ動かすことによって達成される。アレイをこの位置へ動かすことで、アレイの表面領域の増大という利点によってアレイへの分子コンダクタンスを著しく増加させることができる。また、第2ステージアレイの内側の外周部のところに第1ステージアレイを提供する代わりに前面アレイを取り除くことによって、増大したコンダクタンスと同時に増大した輻射シールドも提供することができる。
【0027】
輻射バッフルの配置及び構成を従来の平面前面配置から円筒周面配置に変えることによって、高いパーセンテージの入射分子を依然として伝達しながら、バッフルが輻射をより通さないようにできる。事実、第2ステージアレイへの高い分子コンダクタンスを維持する間、前面開口部からの輻射の全ての直接経路を遮蔽することができる。これは、輻射バッフル組立体の表面領域を著しく増大させることによって達成される。本発明では、円筒状輻射バッフル組立体が、従来の平面バッフル組立体の4倍までの表面領域を有することができる。
【0028】
例として、従来設計の直径320mmの前面開口部のクライオポンプは、1,5000L/秒の水素排気速度を達成することができるが、合計入射前面輻射量の10%より大きい第2ステージへの輻射負荷量を有するという代償がある。第2ステージの輻射負荷量は、第2ステージアレイに直接衝突する輻射シールドの前面開口部で受けられる輻射量のパーセンテージである。「逆転」の設計手法では、合計入射前面輻射量の5%未満の輻射負荷量で、1,5000L/秒より速い水素排気速度が予測される。実際には、直接輻射負荷量は、0.1%未満まで削減される場合がある。
【0029】
また、輻射負荷量は、輻射シールドの前面開口部で受け入れられた後に第2ステージアレイに固着するプロセスチャンバからのフォトレジストのような汚染物質のパーセンテージの近似値である。このような汚染物質は、高い真空環境下で直線的に移動し、第1の接触表面に固着する。
【0030】
本発明の実施形態を、図2に示す。真空容器202は、典型的にはゲートバルブを介してプロセスチャンバに連結するためのフランジ204を備えている。改良された円筒輻射シールド206は、真空容器内に位置決めされる。従来のクライオポンプと異なり、第2ステージアレイが、輻射シールド内の中心に配置されず、代わりに輻射シールドの長さに沿って伸びるように再構成されている。図示のように、極低温冷凍機の冷却第2ステージによって冷却される単純円筒部材208でもよい。また、角度の付いたバッフルのような、より複雑なアレイが使用されてもよい。吸着部材209が、第2ステージ円筒体208の内側表面の全体を被覆してもよい。第2ステージ円筒体208は、前面開口部214に面するように下方に角度を付けられたバッフル212の円筒凝縮クライオポンピングアレイによって、輻射シールドの前面開口部を通過する輻射から保護される。輻射シールドの頂部で内方に伸びるリム210は、第2ステージクライオポンピングアレイへの輻射を同様に遮蔽する。
【0031】
この機能強化は、アレイの表面領域を著しく増大させ、排気空間の中心コアを開放する。開放中心空間は、ポンプのコア内への分子の高いコンダクタンスを可能にする。高い表面領域の第2ステージアレイ208で、入射分子の高い実質捕捉率が得られる。
【0032】
この改良の更なる機能強化は、第1ステージアレイの底への分子集中要素216の追加である。この要素は、輻射シールド206の閉鎖端の隆起面216として図示されている。この特徴の目的は、この面へ衝突する分子を、第2ステージ凝結/吸着アレイに向けて再指向させるためである。高い真空状態では、分子は、入射の角度が出射の角度と等しくなる直接反射の規則を満たさない。寧ろ、輻射シールド温度で凝結しない分子は、衝突すると、輻射シールド上で有限滞留時間を有し、次いで表面から再放出される。再放出の方向は、表面の垂線から表面が好まれ、放出の角度の余弦によって制御される。輻射シールド床が平坦な場合、分子が入口開口部に向かって真っすぐ再放出し、捕捉されないことが好ましい。輻射シールドの端面を隆起させることによって、分子放出が、凝結/吸着面に向かうように強制されることが好ましい。この面の形状と角度と領域とは、捕捉された分子の数を最大化するように変更されてもよい。したがって、1型ガスは、輻射シールドの閉鎖端で凝縮されると予測されるが、2型及び3型ガスは、第2ステージでの凝結または吸着のための周縁第2ステージクライオパネル208に向かって指向される。
【0033】
隆起面の代替形状が、図2に図示されている。輻射シールドの中心軸の右側に、隆起面が円錐形で示されている。中心軸の左側に、隆起面が、より好ましくは、分子を第2ステージ円筒体に指向させるように湾曲させられて示されているが、製造の複雑さ及び費用を増加させる。
【0034】
図3は、図2と同様の円錐形の隆起面216を有したより明確な実施形態の斜視図である。バッフル212のクライオポンピングアレイは、輻射シールドの閉鎖端にねじ止めされた取付部219から伸びる支柱218によって支持される。本実施形態では、頂部の第3リムの302が、輻射シールド206の頂部から直接下方に傾斜している。それは、バッフル212のアレイに構造的支持を提供する支柱218の上端を受け、更に、輻射シールドの上端を介して熱連結をバッフルに提供する。したがって、バッフルが、上端及び上リム302と、下端及び取付部219との両方からの支柱を通じて輻射シールドから冷却される。
【0035】
バッフル212は、前面アレイからの全直接輻射を完全に遮断するように互いに対して、寸法決めされ、角度づけられ、配置され、バッフルは、輻射シールド前面開口部214から1次クライオポンピング部材208までの全直線の経路上にある。
【0036】
2段式冷凍機は、従来技術でもよい。例えば、65ケルビン冷却を輻射シールドに、13ケルビン冷却を第2ステージアレイ208に、あるいは、従来範囲内のあらゆる温度を提供してもよい。
【0037】
第2ステージアレイが輻射シールド及び真空容器に近接して位置決めされていることから、冷凍機の代替的接続部が、図3図4図5に図示されるように提供される。本構成では、2段式コールドフィンガが、真空容器202及び輻射シールド206に対し接線方向に取付けられる。2段式コールドフィンガは、図5に図示される。図1に図示した従来の冷凍機のように、コールドフィンガは、フランジ506を介して駆動モータにとりつけられた第1ステージ円筒体502と第2ステージ円筒体504とを有する。これら円筒体内の2段式ディスプレーサは、極低温冷却を提供するように往復運動する。第1ステージの端部のヒートシンク508が、冷却第1ステージ温度、典型的には約65ケルビンまで冷却される。第2ステージの端部の第2ステージヒートシンク510は、より冷たい温度、典型的には約13ケルビンまで冷却される。
【0038】
コールドフィンガの第2ステージが、第2ステージアレイを支持するように真空容器の中心に向かって径方向に伸び、第1ステージアレイが、径方向の円筒状ポートを貫通するのが典型的である一方で、本構成では、両ステージが、真空容器202に接線方向に連結された円筒状ポート512内に収容される。ポート512は、フランジ518を介してフランジ506及び駆動モータ組立体に取り付けられる。
【0039】
円筒状第2ステージアレイは、インターフェース514を介して、第2ステージヒートシンク510に直接、熱連結される。従来設計のように、第2ステージ円筒体は、第1ステージによって冷却された円筒体内で包囲されている。この場合、第1ステージヒートシンク508で冷却され、第2ステージを包囲した冷却円筒体516は、第1ステージヒートシンク508から輻射シールド206への熱連結を提供するのにも役立つ。
【0040】
図6は、接線方向ではなく真空容器の底からのアレイセットに冷凍機が連結された本発明の別の実施形態を図示する。本実施形態では、真空容器602が、2段式冷凍機を受け入れるようにベースのところに側部ポート604を有する。ポート604は、従来の駆動モータに取り付けることのできるフランジ606を有する。前述のように、冷凍機は、コールドフィンガ―内に第1及び第2円筒体608、610を有する。コールドフィンガは、フランジ612を介して駆動モータに取り付けられる。
【0041】
先行の実施形態のように、第1ステージヒートシンク616に取り付けられた円筒体614が、第2ステージを包囲し、更に、第1ステージヒートシンクを輻射シールドベース618及び円筒体620に熱連結する。
【0042】
本実施形態では、第2ステージアレイ621が、輻射シールドの円筒体620に沿って伸びる円筒体だけでなく、第2ステージヒートシンク624によって冷却されるようにインターフェース626に連結するベース622を更に有する。したがって、第2ステージアレイが、輻射シールドのカップの内側のカップの形態である。前述のように、バッフル212が、輻射シールドのベース618に連結された支柱218によって支持される。しかしながら、本実施形態では、支柱が、第2ステージアレイのベース622の開口部を貫通する。
【0043】
本実施形態では、第1ステージ集中円錐体628が、輻射シールドの閉鎖端の延長部として第2ステージアレイのベース622上部に位置決めされた床630からの隆起面である。床630は、輻射シールドのベース618から第2ステージアレイのベース622の開口部を通して伸びる1組のより短い支柱を介して冷却される。細長い開口部が、短い支柱630及び伸びた支柱218の両方が単一の長い開口部を貫通することができるようにベース622に提供されてもよい。
【0044】
図7の実施形態は、図3ないし図5の側接線方向連結、あるいは図6のベース連結された冷凍機のどちらとも一緒に使用されてもよいが、ここでは、図3ないし図5の接線方向に取付られた冷凍機が実施形態と一致した構成を示す。本実施形態では、真空容器702が、706のところのフランジの下方の704のところで拡がる。これは、円筒状輻射シールド708及び円筒状第2ステージアレイ710が、同様に広がり、第1ステージのバッフル712が広がることを可能にする。この広がりで、バッフル組立体の内側の空間の直径が拡大し、その結果、増加したコンダクタンスを排気コアの中心空間に下げる。コンダクタンスは、領域の関数であり、領域は直径の二乗で増大し、したがって、直径増大の増加分は、著しくコンダクタンスを増加させる。前述のように、集中円錐体714は、輻射シールドのベースに提供される。
【0045】
本明細書で引用した全ての特許、公開された出願、引用文献の技術は、引用によってその全体が組み込まれる。
【0046】
例示の実施形態が、詳細に示され、説明されてきたが、形態及び詳細の種々の変更が、添付の特許請求の範囲によって包含された実施形態の範囲から離れることなくなされることが当業者に理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7