(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240416BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/17 201
B41J2/17 207
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020083925
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019212246
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】菊地 敦史
(72)【発明者】
【氏名】依田 和久
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087719(JP,A)
【文献】特開2019-194008(JP,A)
【文献】特開平05-035004(JP,A)
【文献】特開2003-255660(JP,A)
【文献】特開平02-050168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0218003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドから前記液体が吐出される吐出受けと、を備え、
前記吐出受けは、前記吐出された液体を受ける液体保持部材と、前記液体保持部材を交換可能に支持する支持部と、を含み、
前記吐出受けの前記支持部は、
支持部材と、
前記支持部材に対してスライド可能なスライド部材と、を含み、
前記液体保持部材は、前記スライド部材に着脱可能に支持され、
前記スライド部材は、前記液体保持部材が前記液体を受ける設置位置よりも下方の前記液体保持部材を着脱する着脱位置に変位可能であ
り、
前記スライド部材は、前記支持部材が斜めに傾いた姿勢になったときに、前記支持部材から自重で前記着脱位置まで移動する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記吐出受けは、シート材を搬送する回転体に支持され、
前記吐出受けの支持部の少なくとも一部は、前記回転体の半径方向に変位可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記吐出受けは、前記回転体の周方向に複数配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記吐出受けの前記支持部の一端部側は回動可能に支持され、
前記支持部の他端部側を前記設置位置に取り外し可能に係止する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記スライド部材の移動に対して抵抗となる力を与える手段を備えている
ことを特徴とする請求項
1ないし4のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドから前記液体が吐出される吐出受けと、を備え、
前記吐出受けは、前記吐出された液体を受ける液体保持部材と、前記液体保持部材を交換可能に支持する支持部と、を含み、
前記吐出受けの前記支持部の少なくとも一部は、前記液体保持部材が前記液体を受ける設置位置よりも下方の前記液体保持部材を着脱する着脱位置に変位可能であり、
前記吐出受けの前記支持部
の少なくとも一部が着脱位置に変位するときに、
変位する前記支持部
の少なくとも一部に対して変位する方向と反対の力を与える手段を備えている
ことを特徴とす
る液体を吐出する装置。
【請求項7】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドから前記液体が吐出される吐出受けと、を備え、
前記吐出受けは、前記吐出された液体を受ける液体保持部材と、前記液体保持部材を交換可能に支持する支持部と、を含み、
前記吐出受けの前記支持部の少なくとも一部は、前記液体保持部材が前記液体を受ける設置位置よりも下方の前記液体保持部材を着脱する着脱位置に変位可能であり、
前記吐出受けの前記支持部は、
支持部材と、
前記支持部材に対してスライド可能なスライド部材と、を有し、
前記液体保持部材は前記スライド部材に着脱可能に支持され、
前記スライド部材を前記支持部材から引き出した状態で、前記スライド部材を前記着脱位置まで下降させる昇降手段を備えている
ことを特徴とす
る液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出するヘッドを備える装置では、ヘッドの状態を維持、回復(メンテナンス)するために、例えば、吐出受けの液体保持部材に向けて、液体を付与する付与対象に付着しない液体を吐出する空吐出(フラッシング、パージなどともいう。)などを行うことがある。
【0003】
従来、円筒形状ドラム上に用紙を保持して搬送する搬送部と、円筒形状ドラムに向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、円筒形状ドラムにおいて、用紙が保持されない領域に吐出された液体を回収する空吐出インク回収部6とを備えるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吐出受けの液体保持部材が満杯になったときには、液体保持部材を交換しなければならない。ところが、液体保持部材は吐出された液体を保持していることで重量が増加しており、交換作業が悪くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、吐出受けの液体保持部材の交換作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る液体を吐出する装置は、
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドから前記液体が吐出される吐出受けと、を備え、
前記吐出受けは、前記吐出された液体を受ける液体保持部材と、前記液体保持部材を交換可能に支持する支持部と、を含み、
前記吐出受けの前記支持部は、
支持部材と、
前記支持部材に対してスライド可能なスライド部材と、を含み、
前記液体保持部材は、前記スライド部材に着脱可能に支持され、
前記スライド部材は、前記液体保持部材が前記液体を受ける設置位置よりも下方の前記液体保持部材を着脱する着脱位置に変位可能であり、
前記スライド部材は、前記支持部材が斜めに傾いた姿勢になったときに、前記支持部材から自重で前記着脱位置まで移動する
構成とした。
【0008】
本発明によれば、吐出受けの液体保持部材の交換作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置である印刷装置の概略説明図である。
【
図2】同印刷装置の吐出ユニットの一例の平面説明図である。
【
図3】同印刷装置の吐出受けの配置を説明する説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における吐出受けの外観斜視説明図である。
【
図5】同吐出受けの液体保持部材の交換手順の説明に供する斜視説明図である。
【
図6】液体保持部材が満杯になったときのドラムの回転動作の説明に供する説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における吐出受けの支持構造を液体保持部材の交換手順とともに説明する説明図である。
【
図8】本発明の第2実施形態おける吐出受けの支持構造を液体保持部材の交換手順とともに説明する説明図である。
【
図9】本発明の第3実施形態における吐出受けの支持構造を液体保持部材の交換手順とともに説明する説明図である。
【
図10】本発明の第4実施形態における吐出受けの支持構造の説明に供する説明図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
【
図12】同実施形態における吐出受けの支持構造の説明に供する説明図である。
【
図13】本発明の第6実施形態における吐出受けの斜視説明図である。
【
図14】同吐出受けのスライド部材の断面説明図である。
【
図15】本発明の第7実施形態における吐出受けのスライド部材の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同印刷装置の概略説明図、
図2は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図、
図3は同印刷装置の吐出受けの配置の説明に供する説明図である。
【0011】
印刷装置1は、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50と、反転機構部60を備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0013】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転体)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って反転機構部60に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0017】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部32は、液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~3E)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはブラック(K)、吐出ユニット33Bはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Cはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Dはイエロー(Y)の液体をそれぞれ吐出する。吐出ユニット33Eは、その他の白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットとして使用している。
【0020】
液体吐出部32の各吐出ユニット33(33A~33E)は、例えば、
図2に示すように、複数のノズル104を配列したノズル列を有する複数の液体吐出ヘッド100をベース部材102に配置したヘッドアレイ(ヘッドモジュール)110を備えている。また、ヘッドアレイ110の各ヘッド100に供給する液体を貯留するサブタンク(液体収容容器)も備える。
【0021】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
また、ドラム31には、
図3に示すように、複数(ここでは3つ)の吐出受け500(500A,500B,500C)がほぼ等角度で配置されている。吐出ユニット33のヘッド100の維持回復を行うときに、吐出受け500に対してシート材Pに付与しない液体(空吐出滴)を吐出する空吐出動作が行われる。なお、吐出受け500は、縁なし印刷を行うときにシート材Pをはみ出す液体を受けるものでもよい。
【0023】
乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0024】
反転機構部60は、乾燥部40を通過したシート材Pに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0025】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。反転機構部60から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0026】
次に、本発明の第1実施形態における吐出受けについて
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は同吐出受けの外観斜視説明図、
図5は同吐出受けの液体保持部材の交換手順の説明に供する斜視説明図である。
【0027】
吐出受け500は、ヘッド100から吐出される液体を受けて保持する液体保持部材510と、液体保持部材510を交換可能に支持する支持部520とを備えている。
【0028】
液体保持部材510は、1又は複数枚の吸収体511で構成されている。
【0029】
支持部520は、ドラム31に取り付けられ、液体保持部材510を収容する支持部材としての支持ケース501と、支持ケース501に対してドラム31の軸方向にスライド可能に設けられたスライド部材502とを有している。液体保持部材510は、スライド部材502に着脱可能に取り付けられている。
【0030】
そして、液体保持部材510が満杯になったことが満タン検知手段で検知されたときには、ユーザーは液体保持部材510を支持部520から引き出して交換することができる。
【0031】
この液体保持部材510の交換は、
図5(a)に示すように、矢印A方向に支持部520の一部であるスライド部材502を引き出して、
図5(b)に示す状態にする。このとき、
図5(b)に示すように、液体保持部材510がスライド部材502に設けられた複数の圧入爪502aに対して圧入された状態で露出する。そこで、液体保持部材510を矢印B方向へ引き抜いて、液体保持部材510をスライド部材502から取り外す。
【0032】
そして、
図5(c)に示すように、空の状態になったスライド部材502に対して、新品の液体保持部材510をセットし、スライド部材502を支持ケース501内に戻して
図4の状態にする。
【0033】
このように、本実施形態では、吐出受け500の液体保持部材510が、支持部520に対して着脱可能に設けられており、液体保持部材510のみを交換可能となっている。
【0034】
次に、液体保持部材を交換するときのドラムの回転制御について
図6を参照して説明する。
図6は液体保持部材が満杯になったときのドラムの回転動作の説明に供する説明図である。
【0035】
液体保持部材510が満杯になったことが満タン検知手段で検知されたときには、制御手段によって吐出受け500の液体保持部材510の交換を行うためのドラム31の回転制御を行う。
【0036】
具体的には、ドラム31を回転駆動して、液体保持部材510が満杯になった吐出受け500を規定の位置に移動させ、印刷装置1の操作パネルに吐出受け500が満杯になった旨の表示を行う。なお、上記規定の位置は、支持部520の開口部が上を向く位置(例えば、ドラム31の軸心の鉛直方向の頂部)である。
【0037】
例えば、
図6(a)に示すように、吐出受け500Bの液体保持部材510が満杯になったとすると、ドラム31を回転駆動して、
図5(b)に示すように、吐出受け500Bがドラム31の鉛直方向の頂部に来るように回転させる。
【0038】
このように、吐出受け500Bの支持部520の開口部が上方を向く位置に吐出受け500を位置させることで、液体保持部材510の交換を行うときに、液体保持部材510の吸収体511に吸収保持されている液体が垂れることを防ぐことができる。
【0039】
このとき、吐出受け500をドラム31の鉛直方向の頂部付近に位置させた状態で、液体保持部材510の交換作業を行うことになる。大型の印刷装置の場合、ドラム31の直径は1mを超え、ドラム31の頂部は人の目線付近に位置するものもある。また、大型の印刷装置では、空吐出などで液体保持部材510に吐出する液体量も多く、液体保持部材510の交換頻度を低減させる目的で、大容量の吐出受け500が設置される場合が多い。そのため、液体を吸収した液体保持部材510の重量は数Kg~十数kgとなり、高い位置での重い液体保持部材510の交換作業は容易ではなく、作業性が悪くなる。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態における吐出受けの支持構造について
図7を参照して説明する。
図7は同吐出受けの支持構造を液体保持部材の交換手順とともに説明する説明図である。
【0041】
吐出受け500の支持部520は、シート材Pを搬送する回転体であるドラム31の軸方向両側の側板311(311A、311B)間で支持されている。吐出受け500は、前述したように回転体であるドラム31の周方向に複数配置されているが、
図7では、満杯になってドラム31の鉛直方向の頂部に位置する吐出受け500を示している。
【0042】
吐出受け500の支持ケース501の一端部側は、側板311Bに設けた保持部材521に支軸521aによってドラム31の半径方向に回動可能に支持されている。保持部材521は、吐出受け500の一端部側を回動可能に支持する手段である。
【0043】
吐出受け500の支持ケース501の他端部側は、側板311Aに設けられた係止ピン312に係合する係止爪502bで側板311Aに係脱可能に保持されている。係止ピン312と係止爪502bで、吐出受けの他端部側を設置位置に取り外し可能に係止する係止手段を構成している。係止爪502bは、スライド部材502に回転可能な保持された取っ手部502cに設けられている。
【0044】
これにより、吐出受け500は、係止爪502bが係止ピン312と係合しているとき、
図7(a)に示すように、液体保持部材510が液体を受ける設置位置に支持される。
【0045】
そして、吐出受け500は、係止爪502bが係止ピン312から外れると、
図7(b)に示すように、自重で、設置位置よりも下方の液体保持部材510を着脱する着脱位置に変位(回動)し、他端部側を下にして斜めに傾いた姿勢になる。
【0046】
これにより、吐出受け500の支持部520の支持ケース501からスライド部材502を引き出して液体保持部材510を引出し、前述したようにして液体保持部材510を交換することができるようになる、
【0047】
また、側板311Aには、吐出受け500が自重によって変位する方向と反対の方向に力を与える手段としての弾性部材である圧縮ばね522が配置されている。これにより、吐出受け500の他端部側(スライド部材の引出し側)が勢いよく下方に回動し、衝撃によって吐出受け500が損傷することを防止できる。
【0048】
なお、吐出受け500が変位する方向と反対の方向に力を与える手段としては、圧縮ばね522に限らず、例えば、引っ張りばねや、保持部材521の支軸521aに設けるねじりコイルバネなどでもよい。また、保持部材521の支軸521aに対して設けるトルクリミッタなどでもよい。
【0049】
次に、液体保持部材510の交換手順について説明する。
【0050】
印刷装置1の操作パネルに液体保持部材510が満杯になった旨の表示が出たときに、ユーザーは、次のようにして液体保持部材510を新品と交換する交換作業を行なう。
【0051】
まず、
図7(a)に示すように、ドラム31の鉛直方向の頂部に位置する交換対象となっている吐出受け500に設けられたスライド部材502の取っ手部502cを掴んで矢印方向に操作する。
【0052】
これにより、スライド部材502の係止爪502bが矢印方向に回転し、ドラム31の側板311Aに設けられた係止ピン312から外れる。
【0053】
吐出受け500の一端部側は、ドラム31に設けられた保持部材521により回動可能に支持されている。したがって、吐出受け500は、係止爪502bと係止ピン312の係合が外れたことによって、
図7(b)に示すように、保持部材521の支軸521aを中心に他端部側が下方に回動する。これにより、吐出受け500は設置位置から着脱位置に変位し、液体保持部材510を含めて斜め下方へ傾いた状態となる。
【0054】
このとき、吐出受け500が自重によって変位する方向と反対の方向に力を与える補助ばね522の緩衝作用により、吐出受け500は自重でゆっくり斜め下方に回動変位する。
【0055】
次いで、
図7(c)に示すように、ユーザーはそのままスライド部材502の取っ手部502cを操作して、スライド部材502を支持ケース501から引き出して液体保持部材510を露出させる。
【0056】
その後、
図7(d)に示すように、液体保持部材510をスライド部材502に対して矢印方向に引き抜いて、液体保持部材510をスライド部材502から取り外す。その後、新品の液体保持部材510をスライド部材502に圧入して取り付けた後、スライド部材502を支持ケース501に押し入れる。
【0057】
そして、係止爪502bが係止ピン312と係合するように、取っ手部502cを上方へ操作して、
図7(a)に示す設置位置まで吐出受け500を戻す。
【0058】
このとき、補助ばね522はユーザーが吐出受け500を上方へ持ち上げようとする力をアシストし、ユーザーは軽い力で吐出受け500を上方へ持ち上げることができる。
【0059】
このように、吐出受け500を設置位置から下方の着脱位置まで回動変位させて液体保持部材510を斜め下方へ引き出す構成としている。これにより、液体保持部材510を吐出受け500の設置位置(液体を受ける位置)よりも低い着脱位置にして、液体保持部材510の交換作業を行うことができる。
【0060】
したがって、吐出受け500の規定の位置(
図6(b)の位置)が高く、液体保持部材510の交換が困難な場合でも、液体保持部材510を低い位置に移動させて交換することができ、液体保持部材510の交換作業が容易になる。
【0061】
また、吐出受け500を斜め下方に傾いた姿勢に変位させて、液体保持部材510を斜め下方に引き出すことにより、水平に引き出す場合よりも、小さな力で引き出すことができる。さらに、ドラム31の外へ引き出しているため、液体保持部材510へのアクセスが良好となり、ユーザーによる液体保持部材510の交換作業が容易となる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は同実施形態における吐出受けの支持構造を液体保持部材の交換手順とともに説明する説明図である。
【0063】
本実施形態では、吐出受け500のスライド部材502は、支持ケース501に対してスライド可能であるとともに、昇降手段である昇降機構部523によって昇降可能に保持される。つまり、支持部520の一部であるスライド部材502をドラム31の半径方向にも変位可能としている。
【0064】
本実施形態において液体保持部材510の交換を行うときには、まず、
図8(a)に示すように、液体保持部材510が液体を受ける位置にある吐出受け500の設置位置から水平に液体保持部材510をスライド部材502とともに引き出す。
【0065】
その後、
図8(b)に示すように、吐出受け500内に設けられた昇降機構部523を使って、スライド部材502を設置位置よりも下方の着脱位置まで下降させる。
【0066】
そして、満杯になった液体保持部材510をスライド部材502から取り外して、新品の液体保持部材510をスライド部材502に装着(セット)した後、スライド部材502を上昇させ、支持ケース501に収容する。
【0067】
このように、吐出受け500の支持部520の一部であるスライド部材502を液体保持部材510が液体を受ける設置位置よりも下方の液体保持部材510を着脱する着脱位置に変位することで、液体保持部材510の交換作業が容易になる。
【0068】
また、本実施形態では、液体保持部材510の交換にあたってドラム31内の領域を使わないので、他の部品をその領域に配置できる。前述した第1実施形態の構成では、ドラム31の前方の領域を使わないので、ドラム31を支持するためのフレーム等の部品を回避することができる。第1実施形態及び第2実施形態のいずれも、液体保持部材510の交換作業が容易となるので、その他の構成部品のレイアウト等から選択すると良い。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について
図9を参照して説明する。
図9は同実施形態における吐出受けの支持構造を液体保持部材の交換手順とともに説明する説明図である。
【0070】
本実施形態では、吐出受け500は、ドラム31の側板311Aと側板311Bとの間で、
図9(a)に仮想線図示の設置位置よりも下方の実線図示の着脱位置まで平行移動で変位可能に支持されている。
【0071】
そこで、液体保持部材510を交換するときには、
図9(a)に示すように、ドラム31内で、吐出受け500を、仮想線図示の設置位置から設置位置よりも下方の実線図示の着脱位置まで変位させる。
【0072】
その後、
図9(b)に示すように、吐出受け500から水平に液体保持部材510をスライド部材502とともに引き出す。そして、満杯になった液体保持部材510をスライド部材502から取り外して、新品の液体保持部材510をスライド部材502に装着(セット)した後、スライド部材502を支持ケース501に収容する。
【0073】
そして、吐出受け500を
図9(a)の仮想線図示の液体保持部材510で液体を受ける位置まで上昇させる。
【0074】
本実施形態では、ドラム31内の領域を広く使うことになるが、ドラム31の前方の領域を広く空けることができる。また、操作パネルに液体保持部材510が満杯になった旨の表示を出す段階で、既に吐出受け500が下降完了しているように制御することで、ユーザーは液体保持部材510を水平に引き出すという操作だけで液体保持部材510を交換位置へ移動させることができ、ユーザーによる交換作業が容易になる。
【0075】
次に、本発明の第4実施形態について
図10を参照して説明する。
図10は同実施形態の説明に供する吐出受けの支持構造の説明に供する説明図である。
【0076】
吐出受け500の支持部520のスライド部材502は、スライドレール部材のような支持ケース501に対して摺動性(移動性)の高い部材で構成している。
【0077】
これにより、吐出受け500が斜め下方に傾いたときに、液体保持部材510やスライド部材502の自重により、スライド部材502が斜め下方へ自動的に引き出される(排出される)。
【0078】
このように、吐出受け500の係止爪502bを係止ピン312から外すだけで、支持部520が着脱位置に変位し、スライド部材502が自動的に支持ケース501から引き出されることで、液体保持部材510の交換作業の作業性が向上する。
【0079】
また、本実施形態では、スライド部材502の斜め下方への移動に対して抵抗となる力を与える手段として引っ張りばね524等の弾性部材を設けている。
【0080】
これにより、吐出受け500を傾けたときに液体保持部材510を支持しているスライド部材502が支持部520の支持ケース501から勢いよく飛び出さないようにすることができる。
【0081】
また、引っ張りばね524は、液体保持部材510を交換した後に、スライド部材502を支持ケース501内に押し込むとき補助の役割もするので、ユーザーの作業性を向上させることができる。
【0082】
なお、引っ張りばねに限らず、圧縮ばね等、スライド部材502が引き出されるときに抵抗となり、スライド部材502が押し込まれるときに補助となる構成とすれば良い。
【0083】
また、スライド部材502を支持ケース501内に押し込むときは、基本的には液体保持部材510が交換後の新品状態となるため、その重量は軽く、押し込むときの力はそれほど大きな力を必要としない。
【0084】
したがって、引き出し時と押し込み時の両方に作用する引っ張りばね524のような弾性部材でなくても良く、例えば、スライド部材502が自重で斜め下方へ移動する速度を抑制するブレーキをスライド部材502に設置することもできる。
【0085】
次に、本発明の第5実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について
図11を参照して説明する。
図11は同印刷装置の概略説明図である。
【0086】
この印刷装置1は、繰り出しロール1010から繰り出される連帳紙などのウェブ上のシート材Pを複数の案内ローラ1007を経て印刷部1030に案内する。印刷部1030では、各吐出ユニット33に対向して複数の案内ローラ1031でウェブ1000を案内し、各吐出ユニット33から所要の液体を吐出して印刷する。
【0087】
そして、印刷部1030で印刷が施されたウェブ1000を複数の案内ローラ1007で案内しながら乾燥装置1040によって印刷面を乾燥させた後、巻取りロール1050に巻き取る。
【0088】
次に、本実施形態における吐出受けの支持構造について
図12を参照して説明する。
図12は同吐出受けの支持構造の説明に供する説明図である。
【0089】
本実施形態では、吐出ユニット33が吐出受け500に対して移動する構成としている。吐出受け500は、側板1311A、1311Bの間に支持されている。
【0090】
この吐出受け500の支持構造は、前記第1実施形態で説明した構成と同様であり、一端部側が側板1311Bに支軸521aで回動自在に支持され、他端部側は係止爪502bと係止ピン1312の係合で保持されている。
【0091】
本実施形態において、液体保持部材510を交換する手順は、前記第1実施形態で説明した手順と同様である。
【0092】
本実施形態においても、液体保持部材510は、液体を受ける設置位置よりも下方の着脱位置で交換を行うことができ、液体保持部材の交換作業の作業性が向上する。
【0093】
次に、本発明の第6実施形態における吐出受けについて
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は同吐出受けの斜視説明図、
図14は同吐出受けのスライド部材の断面説明図である。
【0094】
スライド部材502は、液体保持部材510の側面を覆う壁部502dを有している。壁部502dは、液体保持部材510の長手方向に沿い、液体保持部材510の2側面にそれぞれ配置している。壁部502dは、1枚の板材を折り曲げて形成している。そして、折り曲げた壁部502dの底面502eは、スライド部材502に固定している。
【0095】
また、対向する壁部502d、502d間の距離bよりも液体保持部材510の短手方向の長さaが大きく設定されている。したがって、壁部502d、502d間に対して液体保持部材510を圧入気味にセットすることで、液体保持部材510の保持力を高めることができる。
【0096】
壁部502d、502dを幅がある面形状としたことで、壁部502d、502dの強度を高めることができる。
【0097】
また、液体保持部材510の四側方が覆われることで、液体保持部材510の保持力を高めることができる。
【0098】
次に、本発明の第7実施形態における吐出受けについて
図15を参照して説明する。
図15は同吐出受けのスライド部材の断面説明図である。
【0099】
本実施形態では、スライド部材502の液体保持部材510の側面を覆う壁部502dは、スライド部材502の差し込み部502fに圧入して固定し、又は、嵌め込んだ状態で螺子などによって固定している。
【0100】
このような構成でも、前記第6実施形態と同様に、液体保持部材510の保持力を高めることができる。
【0101】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0102】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0103】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0104】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0105】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0107】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0108】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0109】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0110】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0111】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0112】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
31 ドラム
40 乾燥部
50 搬出部
60 反転機構部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
110 ヘッドアレイ
500 吐出受け
501 支持ケース
502 スライド部材
510 液体保持部材
511 吸収体
520 支持部
521 保持部材
522 補助ばね