(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/32 20060101AFI20240416BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240416BHJP
H04M 1/738 20060101ALI20240416BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H04N1/32 609
H04N1/00 J
H04N1/00 002B
H04M1/738
H04M1/00 R
(21)【出願番号】P 2020096356
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】松田 範久
(72)【発明者】
【氏名】金子 智彦
(72)【発明者】
【氏名】原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】今野 良太郎
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216959(JP,A)
【文献】特開2018-067032(JP,A)
【文献】特開2006-319240(JP,A)
【文献】特開平11-311654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/32 - 1/36
1/42 - 1/44
H04N 1/00
H04M 1/00
1/24 - 1/82
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気通信回線に接続される画像処理装置であって、
前記電気通信回線から流れ込む電流を、所定の測定タイミングにおいて繰り返し測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段において測定された過去の前記電流の測定結果と、
当該過去の電流の測定時刻に関連付けられているシステム状態と、を教師データとする機械学習プロセスにより、突発電流の発生頻度に関する機械学習をした学習済モデルによって、現時点の前記電流の測定結果と、当該電流の測定時における
システム状態と、に基づ
いて、現時点の前記突発電流の発生頻度に適するように前記測定タイミング
の更新
をするタイミング更新手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記電流の測定結果に基づいて前記電気通信回線の異常を報知する異常報知手段を更に備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記電流の測定結果から前記画像処理装置に用いられている保守部品の故障時期を予測する故障予測手段を更に備え、
前記異常報知手段は、前記故障時期に至っている前記保守部品を示す情報を通知する、請求項
2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
電気通信回線に接続される画像処理装置において実行される画像処理プログラムであって、
前記電気通信回線から流れ込む電流を、所定の測定タイミングにおいて繰り返し測定する電流測定ステップと、
測定された過去の前記電流の測定結果と、
当該過去の電流の測定時刻に関連付けられているシステム状態と、を教師データとする機械学習プロセスにより、突発電流の発生頻度に関する機械学習をした学習済モデルによって、現時点の前記電流の測定結果と、当該電流の測定時における
システム状態と、に基づ
いて、現時点の前記突発電流の発生頻度に適するように前記測定タイミング
の更新
をする
測定タイミング更新ステップと、を有する画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられる画像処理装置は、欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、シートを読み取る読取機能、シートに画像を形成する画像形成機能、および通信機能等を備えることにより、プリンタ、スキャナ、ファクシミリ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
従来のファクシミリ機能を備える画像処理装置では、接続された電気通信回線(ファクシミリ回線)に異常が発生して過電流が流れ込むことで故障に至ることがあった。ファクシミリ回線からの過電流による故障対策として、ファクシミリ回線の電圧あるいは電流を測定して、ファクシミリ回線の異常を検出し、画像処理装置の故障を未然に防止する技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、ファクシミリ回線の電圧あるいは電流を測定するために電力給電が必要となり、また、測定時に画像処理装置の主制御部に処理負荷を与える可能性がある。したがって、特許文献1のような従来技術では、電流測定の影響によって、画像処理装置のシステム動作(たとえばファクシミリ送受信動作)のパフォーマンスが低下することを考慮すると、ファクシミリ回線の計測を常時行うことはせず、システム動作の起動時においてのみ実行せざるをえない。
【0005】
画像処理装置へのイレギュラーな突発電流の流れ込み防止を行うには回線の計測を常時実行することが望ましいが、従来技術によればシステム動作等への影響を考慮して常時計測を実行するには課題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接続されている電気通信回線でイレギュラーに発生する突発電流を効率的に検出するための測定タイミングを自動的に更新できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、電気通信回線に接続される画像処理装置に関し、前記電気通信回線から流れ込む電流を、所定の測定タイミングにおいて繰り返し測定する電流測定手段と、前記電流測定手段において測定された過去の前記電流の測定結果と、当該過去の電流の測定時刻に関連付けられているシステム状態と、を教師データとする機械学習プロセスにより、突発電流の発生頻度に関する機械学習をした学習済モデルによって、現時点の前記電流の測定結果と、当該電流の測定時におけるシステム状態と、に基づいて、現時点の前記突発電流の発生頻度に適するように前記測定タイミングの更新をするタイミング更新手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接続されている電気通信回線でイレギュラーに発生する突発電流を効率的に検出するための測定タイミングを自動的に更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る画像処理装置のハードウェア構成図。
【
図2】上記画像処理装置が備える通信制御ブロックのハードウェア構成図。
【
図4】上記画像処理装置において実行される画像処理プログラムの処理フローの例を示すフローチャート。
【
図5】上記画像処理装置において実行される画像処理プログラムの処理フローの別例を示すフローチャート。
【
図6】上記画像処理装置において実行される画像処理プログラムの処理フローのさらなる別例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る画像処理装置の実施形態としてのMFP(Multi?function Peripheral/Product/Printer)90のハードウェア構成図である。
図1に示すように、MFP90は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作パネル部940、ネットワークI/F950を備えている。
【0011】
これらのうち、コントローラ910は、MFP90が実行可能なシステム動作を実現するための情報処理を行うコンピュータの主要部であるCPU(Central Processing Unit)901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907、HDDコントローラ908、及び、記憶部であるHD909を有する。なお、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続されている。
【0012】
CPU901は、MFP90の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0013】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM(Read Only Memory)902a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM(Random Access Memory)902bとからなる。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0014】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908およびMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0015】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0016】
また、近距離通信回路920には、近距離通信アンテナ920aが備わっている。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
【0017】
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931及びプリンタ部932によって構成されている。
【0018】
また、操作パネル部940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bを備えている。コントローラ910は、MFP90全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル部940からの入力等を制御する。スキャナ部931又はプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
【0019】
なお、MFP90は、操作パネル部940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0020】
また、ネットワークI/F950は、利用してデータ通信をするためのインターフェースであって、後述するファクシミリ通信制御ユニット(FCU)は、ネットワークI/F950を介して通信回線11に電気的に接続される。
【0021】
近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0022】
[電気通信制御ユニットの実施形態]
次に、MFP90が備える電気通信制御ユニットとしてのファクシミリ通信制御ユニット(FCU)の実施形態について説明する。なお、
図2において、FCU1が接続する通信回線11は、いわゆる公衆交換電話網を含む有線の電気通信回線である。FCU1は、前述したネットワークI/F950の一部に相当する構成であって、エンジン制御部930と接続されることで、電気通信の用に供するデータの送受信機能を実現する。例えば、コントローラ910の動作制御によりファクシミリ通信の動作を制御するように構成されている。
【0023】
図2は、FCU1のハードウェア構成図である。
図2に示すようにFCU1は、MFP90が備えるコントローラ910に接続されている。
【0024】
FCU1の構成について説明する。FCU主制御部(CPU)2は、マイクロプロセッサなどから構成されるCPUであり、ROM7に記憶されているプログラムにしたがって、モデム3、SiDAA(SSD)4、SiDAA(LSD)5、通信回路6、RAM9、二次電池(充電部含む)10、不揮発性RAM8を制御する。
【0025】
RAM9は、スキャナ部931によって読み取られた二値化画像データを格納する。読み取られた二値化画像データは、モデム3によって変調されて、SiDAA(SSD)4、SiDAA(LSD)5、通信回路6を介して通信回線11に出力される。
【0026】
また、RAM9は通信回線11から入力されたアナログ波形信号をSiDAA(SSD)4、SiDAA(LSD)5、通信回路6およびモデム3を介して復調し、その復調した二値化画像データを格納する。
【0027】
不揮発性RAM8は、FCU1の電源が遮断された状態であっても、保存しておくべきデータ(例えば、短縮ダイヤル番号など)を確実に格納する。
【0028】
画像形成部としてのプリンタ部932と画像読取部としてのスキャナ部931は、コントローラ910を介してFCU1と接続されている。
【0029】
プリンタ部932は、電子写真方式又はインクジェット方式による画像形成方式を用いて、記録媒体としての用紙等に画像を形成し印刷する処理を実行する。スキャナ部931は、記録媒体に表されている文字や図形を光学的に読み取って画像データに変換する処理を実行する。
【0030】
スキャナ部931は、DMAコントローラ、画像処理IC、イメージセンサ、CMOSロジックICなどから構成され、コンタクトセンサ(CS)を利用して読み取ったデータを二値化し、その二値化画像データを順次RAM9に送る。通常、ファクシミリの時間指定送信ファイルは、二値化されて、RAM9に保存される。
【0031】
また、停電時などに蓄積ファイルを紛失しないためRAM9は、二次電池によるバックアップを可能としている。バックアップ保存時間は、数時間まで可能とする。モデム3は、G3モデムとこれらのモデムに接続されたクロック発生回路などから構成され、FCU主制御部2の制御に基づいてRAM9に格納されている送信データを変調しSiDAA(SSD)4、SiDAA(LSD)5、通信回路6およびモデム3を介して通信回線11に出力する。
【0032】
また、モデム3は通信回線11のアナログ信号をSiDAA(SSD)4、SiDAA(LSD)5、通信回路6を介して導き、その信号を変調して2値化データをRAM9に格納する。
【0033】
SiDAA(SSD)4は、呼出信号を検出する手段を有し、呼出信号が検出されたときは着信信号を電源制御部(マイコン)14に送出することができる。
【0034】
電源制御部(マイコン)14は、FCU1の各部への通電を制御する。電源制御部(マイコン)14は、通信回線11からの呼出信号、外付け電話機12のオフフック信号、起動信号を電源制御SW15に送出し、FCU1のFCU主制御部2、モデム3、SiDAA(SSD)4、ROM7、RAM9、不揮発性RAM8の電源を投入することができる。
【0035】
外付け電話機12はFCU1に外付けで接続される。外付け電話機12はハンドセット、スピーチネットワーク、ダイヤラ、リンガー、テンキー、ワンタッチキーなどから構成される。
【0036】
コントローラ910を介して接続される操作パネル部940は、画像送信、受信などをスタートさせるキー、送受信時におけるファイン、標準、自動受信などの操作モードを指定するモード選択キー、ダイヤリング用のテンキーないしワンタッチキーなどから構成される。
【0037】
FCU主制御部2は、電源が投入さると、FCU1の内部のモデム3、SiDAA(SSD)4などのデバイスの初期化処理を行い、初期化処理が完了すると、FCU1は、スリープモードから復帰し、確認した復帰要因に応じて、ファクシミリ動作を行う。
【0038】
FCU主制御部2と、コントローラ910は、コネクタを介して、PCIバス922により、接続されている。
【0039】
[電流測定部13]
FCU1は、電流測定部13を備えている。電流測定部13は、通信回線11からMFP90に流れる電流値を測定する。MFP90は、FCU主制御部2にて、画像処理装置のシステム動作にかかわらず、常時、通信回線11から流れる電流の観測を実施する。電流を測定するため必ずオフフック状態にして、通信回線11から電流が流れた状態で実施する。
【0040】
FCU主制御部2は、通信回線11から測定した電流値が規格値以内であることを確認する。もし規格値を超える電流が流れている場合はオフフックを停止して、操作パネル部940にて、通信回線11に異常が発生していることを表示する。
【0041】
FCU主制御部2は、電流測定において、通信回線11から流れる電流値、電流を検出した時間、電流を検出したときのシステムの動作状態を不揮発性RAM8に保存する。
【0042】
不揮発性RAM8に保存された結果から、突発的な電流がどのくらいの頻度で発生しているのか、また、画像処理装置のシステムの状態毎の突発的な電流の発生傾向あるのかを確認することができる。
【0043】
電流を測定するためには通信回線11側から電力を給電して電力消費が発生すること、また測定する度にFCU主制御部2においてCPU負荷が発生してシステム動作への影響が発生することから回数を減らす必要がある。FCU主制御部2は、過去の電流測定結果から、どのくらいの頻度(発生タイミング)で突発的な電流が発生しているのか把握することで電流を測定するタイミングを変更することができる。
【0044】
通信回線11において頻繁に突発的な電流が流れているような環境下では、突発的な電流の間隔にあわせて電流の測定回数を増やす、あるいは、突発的な電流がほとんど発生しない正常な環境下であると判断できる場合は測定回数を減らすことを可能とする。また、MFP90のシステム状態により、突発的な電流の発生頻度が異なる場合は、それぞれのシステムの状態ごとに測定タイミングを設定することができる。
【0045】
[機能ブロック]
次に、FCU1において実行される画像処理プログラムによって実現される処理機能ブロックについて、
図3を用いて説明する。
図2に示す画像処理部100は、上述したROM7に格納されている画像処理プログラムをFCU主制御部2において実行することで実現される機能ブロックである。
【0046】
画像処理部100は、例えば、電流測定手段101と、装置状態記録手段102と、測定タイミング更新手段103と、異常報知手段104と、部品寿命予測手段105と、電流変動傾向学習手段106と、を有する。これら各手段は、FCU主制御部2において画像処理プログラムが実行されることで実現される処理機能である。
【0047】
電流測定手段101は、電流測定部13を介して所定の測定タイミングに応じて、通信回線11の電流値を計測する。計測した電流値は、計測時刻とともに不揮発性RAM8に格納する。なお、電流測定手段は、計測した電流値が予め規定する規定値との対比において「異常値」に該当するか否かの判定も実行する。電流測定手段101は、異常検知手段も構成する。
【0048】
装置状態記録手段102は、電流測定手段101において通信回線11の電流値が計測される時の、コントローラ910の処理状態、及びMFP90の動作状態を記録し、電流値の計測時刻とともに不揮発性RAM8に格納する。コントローラ910の処理状態及びMFP90の動作状態とは、例えば、MFP90が電流値の計測時にある種類のシステム動作などを実行しているときの処理負荷を示す指標である。当該指標が過負荷を示すときに電流測定を実行すると、MFP90の全体の処理負荷が過負荷になり、システム動作の実行に悪影響を与えることがある。そこで、装置状態記録手段102によって、電流測定時(測定タイミング)に関連付けて処理負荷を示す情報を記録することで、測定タイミングの更新を行うときに用いるデータ群とする。
【0049】
測定タイミング更新手段103は、不揮発性RAM8に格納された電流値、計測時刻、システム状態に基づいて、電流値の計測タイミングを更新する。
【0050】
異常報知手段104は、電流測定手段101において計測された電流値に基づいて通信回線11が異常であるか否かを判定する。また、異常報知手段104は、異常であると判定したときには、ユーザに対して、MFP90に異常が発生している旨を識別可能な状態とする情報を通知するための情報を生成して、操作パネル部940を介して出力させる。
【0051】
故障予測手段としての部品寿命予測手段105は、不揮発性RAM8に格納された電流値、計測時刻、システム状態に基づいて、MFP90を構成する部品の交換時期(寿命)に到達しているか否かを予測し、予測される故障時期を操作パネル部940に出力する。
【0052】
電流変動傾向学習手段106は、不揮発性RAM8に格納された電流値、計測時刻、システム状態に基づいて、電流の測定タイミングを最適かするための学習モデルを構築し、新たに計測された電流値などに基づいて、更新計測タイミングの自動更新を実行させる。
【0053】
上記の画像処理部100において実行される処理によって実行される画像処理方法の実施形態について、以下説明する。
【0054】
[画像処理方法の第一実施形態]
次に、MFP90において実行される画像処理方法の第一実施形態について
図4のフローチャートを用いて説明する。まず、外部からのファクシミリ通信の着信処理や、操作パネル部940の操作によってファクシミリ送信処理が実行されると、MFP90はファクシミリ処理機能を起動し、FCU1はシステムを起動する(S401)。
【0055】
FCU主制御部2は、電源が投入さると、モデム3、SiDAA(SSD)4などのデバイスの初期化処理を行う。初期化処理が完了すると、FCU1は、スリープモードから復帰し、確認した復帰要因に応じて、ファクシミリ動作を行う。
【0056】
続いて、通信回路6を動作させてオフフック状態にする(S402)。続いて、電流測定部13が通信回線11からの電流の測定を開始する(S403)。初期状態においては、システムの動作状態によらずに常時、通信回線11からの電流測定を実施する。
【0057】
FCU主制御部2は、S403の電流測定ステップにおいて測定された電流値が、あらかじめ規定した電流値規格値以内であることを確認する(S404)。なお電流規格値は、例えば「80mA」である。測定された電流値が電流値規格値以内でなけば(S404:No)、FCU主制御部2は、オンフックにする(オフフックを停止する)(S409)。続いて、操作パネル部940を介して「回線異常」などの表示を実行させる(S410)。これによって、ユーザが通信回線11の異常を知覚できる状態になり、MFP90は所定の動作を終了する。
【0058】
S403において、測定された電流値が電流値規格値以内であれば(S404:YES)、FCU主制御部2は、通信回線11からMFP90に流れ込む電流値と、当該電流値を検出した時刻、及び当該電流を検出したときのMFP90のシステム状態を不揮発性RAM8に保存する(S405)。
【0059】
続いて、FCU主制御部2は、不揮発性RAM8に格納された過去の電流測定値の結果を参照する(S406)。参照結果から、突発的な電流がどのくらいの頻度で流れているのか、また、画像処理装置のシステムの状態毎の突発的な電流の発生傾向あるのかを確認する。ここでの「確認」とは、不揮発性RAM8に格納された過去の電流測定値の結果、及び測定時刻、測定時刻に関連づけられて格納されているシステム状態を教師データとして突発電流の発生頻度を機械学習プロセスにより学習した学習済みモデルとしての電流変動傾向学習手段106において行われる情報処理をいう。
【0060】
すなわち、不揮発性RAM8に保存された結果から、突発的な電流がどのくらいの頻度で流れているのか、また、画像処理装置のシステムの状態毎の突発的な電流の発生傾向あるのかを確認することができる。したがって、MFP90が備えるFCU主制御部2は、過去の電流測定結果から、どのくらいの頻度で突発的な電流が発生しているのか把握したうえで電流の測定タイミングを変更(更新)することができる。
【0061】
FCU主制御部2は、過去の電流測定結果から電流測定タイミングを更新する条件が成立しているか否かを判定する(S407)。電流測定タイミングの更新条件が成立しなければ(S407:No)、処理をS404に戻す。
【0062】
FCU主制御部2は、過去の電流測定結果から電流測定タイミングを更新する条件が成立しているか否かを判定し、電流測定タイミングの更新条件が成立していれば(S404:Yes)、予め規定されていた測定タイミングを新たな測定タイミング、すなわち、システムの状態や突発電流の発生頻度に応じてより適する測定タイミングに更新する(SS408)。このタイミング更新ステップによって、自動的に測定タイミングが更新される。その後、処理をS404に戻す。
【0063】
以上説明した本実施形態に係る画像処理方法によれば、初期状態においては、システムの動作状態によらずに常時、通信回線11からの電流測定を実施する。また、突発的な電流(過電流)の発生頻度に基づいて、電流測定タイミングを更新することができる。
【0064】
MFP90が備えるFCU主制御部2は、電流測定において、通信回線11から流れる電流値、電流を検出した時間、電流を検出したときのシステムの動作状態を不揮発性RAM8に保存する。不揮発性RAM8に保存された結果から、突発的な電流がどのくらいの頻度で発生しているのか、また、画像処理装置のシステムの状態毎の突発的な電流の発生傾向(どのようなシステム状態において突発的な電流が発生しやすいかなど)を確認することができる。
【0065】
電流を測定するためには通信回線11側から電力を給電して電力消費が発生すること、また測定する度にFCU主制御部2においてCPU負荷が発生してシステム動作への影響が発生する。そこで、FCU主制御部2は、過去の電流測定結果から、どのくらいの頻度で突発的な電流が発生しているのか把握することで電流を測定するタイミングを変更し、電流測定回数を自動的に減らすことができる。
【0066】
特に、通信回線11がファクシミリ回線の場合、頻繁に突発的な電流が流れているような環境下では、突発的な電流の間隔にあわせて電流の測定回数を増やせばよい、あるいは、突発的な電流がほとんど発生しない正常な環境下であると判断できる場合は測定回数を減らせばよい。また、画像処理装置のシステム状態により、突発的な電流の発生頻度が異なる場合は、それぞれのシステムの状態ごとに測定タイミングを設定すればよい。
【0067】
以上のとおり、MFP90では、通信回線11における突発電流の発生頻度、突発電流が発生するときのシステム状態の違いに適するタイミングで、通信回線11の電流値を計測する処理を実行できるように自動的に測定タイミングを更新する。
【0068】
[画像処理方法の第二実施形態]
次に、MFP90において実行される画像処理方法の第二実施形態について
図5のフローチャートを用いて説明する。まず、外部からのファクシミリ通信の着信処理や、操作パネル部940の操作によってファクシミリ送信処理が実行されると、MFP90はファクシミリ処理機能を起動し、FCU1はシステムを起動する(S501)。
【0069】
続いて、FCU主制御部2は、MFP90の動作状態が通信回線11の電流測定が可能な状態であるか否かを判定する(S502)。例えば、MFP90の動作状態によっては電流測定処理を実行することで増加する処理負荷によって、動作中の他の機能が阻害されることがある。そのような動作の阻害が生じうるときには、電流測定が可能な状態ではない(S502:NO)。この場合は、電流測定が可能な状態になるまで、処理をループさせる。
【0070】
電流測定が可能な状態になったときは(S502:YES)、通信回路6を動作させてオフフック状態にする(S503)。続いて、電流測定部13が通信回線11からの電流の測定を開始する(S504)。
【0071】
FCU主制御部2は、S504において測定された電流値が、あらかじめ規定した電流値規格値以内であることを確認する(S505)。なお電流規格値は、例えば「80mA」である。測定された電流値が電流値規格値以内でなけば(S505:No)、FCU主制御部2は、オンフックにする(オフフックを停止する)(S510)。続いて、操作パネル部940を介して「回線異常」などの表示を実行させる(S511)。これによって、ユーザが通信回線11の異常を知覚できる状態になり、MFP90は所定の動作を終了する。
【0072】
S504において、測定された電流値が電流値規格値以内であれば(S505:YES)、FCU主制御部2は、通信回線11からMFP90に流れ込む電流値と、当該電流値を検出した時刻、及び当該電流を検出したときのMFP90のシステム状態を不揮発性RAM8に保存する(S506)。
【0073】
S506以降の、S507、S508、S509は、第一実施形態に係るS406、S407、S408と同様の処理であるから、詳細な説明を省略する。なお、S508における「NO」と、S509における「YES」の結果として移行する処理は、回線電流測定可能判定を行う処理(S502)である。
【0074】
以上説明した本実施形態に係る画像処理方法によれば、システム起動後に、通信回線11の電流を測定する際は、動作中のシステム処理に対して電流測定による影響(悪影響)が生ずる可能性があると判定される状況であるか否かをまず判定する。その後、システム動作が完了するなど、電流測定による悪影響が生ずる可能性が抑制された状況に至ったと判定したときに、所定の測定タイミングにおいて電流測定を実行する。
【0075】
[画像処理方法の第三実施形態]
次に、MFP90において実行される画像処理方法の第三実施形態について
図6のフローチャートを用いて説明する。まず、外部からのファクシミリ通信の着信処理や、操作パネル部940の操作によってファクシミリ送信処理が実行されると、MFP90はファクシミリ処理機能を起動し、FCU1はシステムを起動する(S601)。その後の処理である、S602、S603、S604、S605、S606、S607、S611、S612は、第二実施形態に係るS502、S503、S504、S505、S506、S507、S510、S511と、同様の処理内容であるから、詳細な説明を省略する。
【0076】
以下、本実施形態において特徴的なS608以降の処理について、詳細に説明する。FCU主制御部2は、不揮発性RAM8に保存された過去の電流測定値の結果を参照した結果から、突発的な電流の発生頻度と、その時のシステムの状態などの傾向を確認する(S607)。
【0077】
続いて、FCU主制御部2は、過去の電流測定結果から保守部品の故障時期の予測を行う(S608)。FCU主制御部2は、保守部品の故障時期を「部品の寿命」として判定し、樹病が残っていない部品が存在するのであれば(S608:NO)、オフフックを停止して(S613)、例えば、操作パネル部940を介して「保守部品の交換」などの表示を行う。これによって、ユーザが保守部品の交換を必要としていることを知覚できる状態にして処理を終了する(S614)。
【0078】
FCU主制御部2は、交換可能な保守部品の寿命が残っていると判定したとき(S608:YES)、過去の電流測定結果から電流測定タイミングを更新する条件が成立しているか否かを判定する(S609)。電流測定タイミングの更新条件が成立しなければ(S609:NO)、FCU主制御部2は処理をS602に戻し、電流値の測定可能状態であるか否かの確認をする。
【0079】
FCU主制御部2は、過去の電流測定結果から電流測定タイミングを更新する条件が成立しているか否かを判定し、電流測定タイミングの更新条件が成立していれば(S609:YES)、予め規定されていた測定タイミングを更新する(S610)。その後、FCU主制御部2は処理をS602に戻し、電流値の測定可能状態であるか否かの確認をする。
【0080】
以上説明した本実施形態に係る画像処理方法によれば電流値との測定結果から保守部品の故障予測を行い、あらかじめ規定された期限を越えた場合に保守部品の交換を指示することができる。
【0081】
[機械学習の適用]
本明細書中の不揮発性RAM8に格納される電流値の計測値、測定時刻、測定時刻におけるシステム状況を関連づけたデータテーブルは、回線電流測定処理(S403、S504、S604)において取得される情報により構成されている。このデータ群を教師データとして用いて、電流変動傾向学習手段106によって、機械学習処理を実行し、電流測定タイミングの更新を自動的に判断する電流測定タイミング更新モデル(学習済みモデル)を構築する。この場合、測定電流値を「突発電流」として機械学習にて識別することで、突発電流の判定基準をあらかじめ設定しなくてもよい。
【0082】
ここで、機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり,コンピュータが,データ識別等の判断に必要なアルゴリズムを,事前に取り込まれる学習データから自律的に生成し,新たなデータについてこれを適用して予測を行う技術のことをいう。
【0083】
機械学習のための学習方法は、教師あり学習、教師なし学習、半教師学習、強化学習、深層学習のいずれかの方法でもよく、さらに、これらの学習方法を組み合わせた学習方法でもよく、機械学習のための学習方法は問わない。
【0084】
以上説明したとおり、本実施形態に係るMFP90は、検出タイミングを画像処理装置の設置環境に合わせて変更する事により、ファクシミリ回線からイレギュラーに発生する突発的な電流(突入電流)の検出を可能としており、制御を追加しているので、効率的な測定を可能とすることができる。
【0085】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0086】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0087】
1 :FCU
2 :FCU主制御部
3 :モデム
6 :通信回路
7 :ROM
8 :不揮発性RAM
9 :RAM
11 :通信回線
12 :外付け電話機
13 :電流測定部
14 :電源制御部(マイコン)
15 :電源制御SW
90 :MFP
100 :画像処理部
101 :電流測定手段
102 :装置状態記録手段
103 :測定タイミング更新手段
104 :異常報知手段
105 :部品寿命予測手段
106 :電流変動傾向学習手段
901 :CPU
902b :RAM
906 :ASIC
908 :HDDコントローラ
910 :コントローラ
920 :近距離通信回路
920a :近距離通信アンテナ
921 :AGPバス
922 :PCIバス
930 :エンジン制御部
931 :スキャナ部
932 :プリンタ部
940 :操作パネル部
940a :パネル表示部
940b :操作パネル
950 :ネットワークI/F
IC :画像処理
SW15 :電源制御
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】