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特許7472666タッチパネル装置、画像形成装置及び感度調整プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】タッチパネル装置、画像形成装置及び感度調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/041 590
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020101826
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021196771
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 健吾
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-086797(JP,A)
【文献】特開2010-286942(JP,A)
【文献】特開2017-010104(JP,A)
【文献】特開2017-049696(JP,A)
【文献】特開2004-078606(JP,A)
【文献】特開2016-170754(JP,A)
【文献】特開2015-197703(JP,A)
【文献】特開2019-121254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜方式の操作面を備えたタッチパネル装置であって、
シングルタッチ操作を有効とする前記操作面を介して検出されるマルチタッチ操作、及び、マルチタッチ操作を有効とする前記操作面を介して検出されるシングルタッチ操作を、それぞれ異常接触操作として検出する異常接触操作検出部と、
前記異常接触操作が検出された際に、前記異常接触操作検出部で異常接触操作が検出されないように、前記操作面の感度を調整制御する感度制御部と、
前記操作面が操作されることで生成される信号を増幅して、前記異常接触操作検出部に供給する増幅器と、
を有し、
前記感度制御部は、シングルタッチ操作及びマルチタッチ操作の両方を有効とする前記操作面では、記憶部に記憶されている、異常接触操作の検出を回避可能なレベルの中間値に、前記増幅器の増幅率を設定する、
ことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
記感度制御部は、シングルタッチ操作を有効とする前記操作面を介してマルチタッチ操作が検出された場合は、増幅率を下げるように前記増幅器を制御し、マルチタッチ操作を有効とする前記操作面を介してシングルタッチ操作が検出された場合は、増幅率を上げるように前記増幅器を制御すること
を特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記感度制御部は、記憶部に記憶されているユーザ毎の前記増幅率の設定値に基づいて、前記増幅器の増幅率を制御すること
を特徴とする請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記感度制御部は、記憶部に記憶されている、前記操作面における前記シングルタッチ操作又は前記マルチタッチ操作の接触操作仕様に応じた接触感度の設定値に基づいて、前記増幅器の増幅率を制御すること
を特徴とする請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記異常接触操作検出部は、前記操作面の接触操作位置を示す座標の検出状況に応じて、前記異常接触操作の有無を検出すること
を特徴とする請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記異常接触操作が検出された際に、接触感度の補正の有無を問うメッセージを表示部に表示制御する表示制御部を、さらに備え、
前記感度制御部は、接触感度の補正の実行が指示された際に、前記操作面の感度を制御すること
を特徴とする請求項1から請求項5のうち、いずれか一項に記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
前記感度制御部は、増幅器の増幅率を最小の増幅率まで下げても、マルチタッチの接触操作の誤検出が発生する場合、マルチタッチ機能を無効制御すること
を特徴とする請求項2から請求項6のうち、いずれか一項に記載のタッチパネル装置。
【請求項8】
前記異常接触操作検出部は、シングルタッチ操作を有効とする前記操作面を介してマルチタッチ操作が複数回検出された場合、及び、マルチタッチ操作を有効とする前記操作面を介してシングルタッチ操作が複数回検出された場合に、それぞれ異常接触操作として検出すること
を特徴とする請求項1から請求項7のうち、いずれか一項に記載のタッチパネル装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうち、いずれか一項に記載のタッチパネル装置と、
所定の画像を形成する画像形成部と、
を有する画像形成装置。
【請求項10】
抵抗膜方式の操作面を備えたタッチパネル装置の感度調整プログラムであって、
コンピュータを、
シングルタッチ操作を有効とする前記操作面を介して検出されるマルチタッチ操作、及び、マルチタッチ操作を有効とする前記操作面を介して検出されるシングルタッチ操作を、それぞれ異常接触操作として検出する異常接触操作検出部と、
前記異常接触操作が検出された際に、前記異常接触操作検出部で異常接触操作が検出されないように、前記操作面の感度を調整制御する感度制御部と、
前記操作面が操作されることで生成される信号を増幅して、前記異常接触操作検出部に供給する増幅器と、
として機能させ
前記感度制御部は、シングルタッチ操作及びマルチタッチ操作の両方を有効とする前記操作面では、記憶部に記憶されている、異常接触操作の検出を回避可能なレベルの中間値に、前記増幅器の増幅率を設定すること、
を特徴とする感度調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置、画像形成装置及び感度調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、様々な機器のユーザインタフェースとしてタッチパネル装置が多く用いられている。タッチパネル装置は、シングルタッチ検出機能により、ユーザの一本の指による接触操作を検出する。また、ユーザの複数本の指による接触操作を検出可能とするマルチタッチ検出機能を備えたものも知られている。抵抗膜方式タッチパネルにおいてマルチタッチ検出を行う場合、それぞれの指の接触位置に応じた電極間抵抗値の変動量を検出することで、複数本の指の位置を特定する。
【0003】
特許文献1(特開2017-010104号公報)には、温度変化又は経年劣化による端子抵抗値の変化に起因するマルチタッチの誤検出を目的としたタッチパネル装置が開示されている。この抵抗膜方式のタッチパネル装置は、内部に設けたスイッチを、起動時に適宜切り替えることで、タッチパネル装置の端子間抵抗値を測定する。そして、この測定値と初期値との差異に応じて、シングルタッチを検出するための閾値及びマルチタッチを検出するための閾値を更新する。これにより、温度変化又は経年劣化に対応した閾値に基づいて、シングルタッチ及びマルチタッチを検出できるため、誤検出を低減可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているタッチパネル装置も含め、従来のマルチタッチ機能を有する抵抗膜方式のタッチパネル装置は、例えばラジオ電波塔付近等の妨害電波の影響を受けやすい場所で接触操作を行った場合に、シングルタッチをマルチタッチとして誤検出し、又は、マルチタッチをシングルタッチとして誤検出する問題があった。このような誤検出は、ユーザの「人体」がアンテナとなり妨害電波を受信している状態でタッチパネル装置を接触操作することで、人体からタッチパネル装置にノイズが混入することを一つの要因として発生する。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、様々な環境下でのタッチパネルの接触操作の誤検出を防止可能としたタッチパネル装置、画像形成装置及び感度調整プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、抵抗膜方式の操作面を備えたタッチパネル装置であって、シングルタッチ操作を有効とする操作面を介して検出されるマルチタッチ操作、及び、マルチタッチ操作を有効とする操作面を介して検出されるシングルタッチ操作を、それぞれ異常接触操作として検出する異常接触操作検出部と、異常接触操作が検出された際に、異常接触操作検出部で異常接触操作が検出されないように、操作面の感度を調整制御する感度制御部と、前記操作面が操作されることで生成される信号を増幅して、前記異常接触操作検出部に供給する増幅器と、を有し、前記感度制御部は、シングルタッチ操作及びマルチタッチ操作の両方を有効とする前記操作面では、記憶部に記憶されている、異常接触操作の検出を回避可能なレベルの中間値に、前記増幅器の増幅率を設定する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、様々な環境下でのタッチパネルの接触操作の誤検出を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態のMFPのハードウェア構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態のMFPに設けられているタッチパネル装置の断面図である。
図3図3は、タッチパネル装置の接触操作の検出原理を説明するための図である。
図4図4は、マルチタッチの接触操作の検出原理を説明するための図である。
図5図5は、マルチタッチの接触操作の判定動作を説明するためのブロック図である。
図6図6は、CPUが感度調整プログラムを実行することで実現される各機能の機能ブロック図である。
図7図7は、接触操作の検出感度の調整動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施の形態となる複合機(MFP:Multi Function Peripheral)の説明をする。なお、複合機は、あくまでも適用例であり、抵抗膜方式タッチパネル装置を備えた機器であれば、どのような機器に適用してもよい。
【0010】
(MFPのハードウェア構成)
図1は、MFPのハードウェア構成を示す図である。この図1に示すように、MFP9は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作部940、ネットワークI/F950を備えている。
【0011】
コントローラ910は、CPU901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、ローカルメモリ(MEM-C)907、HDDコントローラ908、及び、HDD909を有している。NB903とASIC906との間は、AGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続されている。
【0012】
CPU901は、MFP9の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジである。NB903は、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0013】
MEM-P902は、メモリコントローラの各機能を実現させるプログラム又はデータの格納用メモリであるROM902a、プログラム又はデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリ等に用いられるRAM902bを有する。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。
【0014】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス922、HDDコントローラ908及びMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。
【0015】
このASIC906は、PCIターゲット及びAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)及びMEM-C907を制御するメモリコントローラを有する。また、ASIC906は、ハードウェアロジック等により画像の回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットを有する。なお、ASIC906には、USBインタフェース又はIEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインタフェースを接続してもよい。
【0016】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HDD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HDD909は、CPU901の制御にしたがってHDD909に対するデータの書き込み及び読み出しを制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースである。AGPバス921は、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることで。グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0017】
近距離通信回路920には、近距離通信回路920を有している。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth等の通信回路である。更に、エンジン制御部930は、画像形成部の一例となるスキャナ部931及びプリンタ部932を有している。
【0018】
操作部940は、現在の設定値又は選択画面等を表示し、操作者からの接触入力を受け付ける抵抗膜方式の操作面を備えたタッチパネル装置940aを有している。また、操作部940は、濃度の設定条件等の画像形成に関する条件の設定値の入力を行うためのテンキー及びコピー開始を指示するためのスタートキー等のハードウェアキー940bを有している。
【0019】
コントローラ910は、MFP9全体の制御を行い、例えば描画制御、通信制御、操作部940からの入力処理等を行う。スキャナ部931又はプリンタ部932は、誤差拡散処理及びガンマ変換処理等の画像処理機能を有している。また、記憶部の一例であるROM902aには、感度調整プログラム及び接触感度設定値が記憶されている。CPU901は、この感度調整プログラム及び接触感度設定値に基づいて、後述するように接触操作の検出感度の調整制御を行い、様々な環境下におけるタッチパネル装置940aの誤操作を防止する。
【0020】
なお、操作部940内にCPU及び記憶部を設け、感度調整プログラム及び接触感度設定値を、操作部940内の記憶部に記憶してもよい。この場合、操作部940に設けられたCPUが、操作部940内の記憶部に記憶された感度調整プログラム及び接触感度設定値に基づいて、後述するように接触操作の検出感度の調整制御を行い、様々な環境下におけるタッチパネル装置940aの誤操作を防止することとなる。
【0021】
また、MFP9は、操作部940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、及びファクシミリ機能を順次に切り替えて実行可能となっている。MFP9は、ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなる。また、MFP9は、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0022】
ネットワークI/F950は、通信ネットワーク100を利用してデータ通信をするためのインタフェースである。近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0023】
(タッチパネル装置の構成)
図2は、タッチパネル装置940aの断面図である。この図2に示すように、タッチパネル装置940aは、透明フィルム500、ITO膜(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)501、ITO膜501及びガラス板502が順に積層されて形成されている。ITO膜501は、一様に形成された抵抗分を有している。
【0024】
相対向するITO膜501の間には、ドットスペーサ503が設けられている。また、相対向するITO膜501は、張り合わせ材504により相互に接着されている。また、上面側のITO膜501からは、コネクタテール505が引き出されている。
【0025】
このようなタッチパネル940aは、専用ペン又は指550等で透明フィルム500を接触操作すると、透明フィルム500が撓み、上下のITO膜501が接触して導通する。これにより、入力操作が検知される。
【0026】
なお、軽荷重タイプのタッチパネル装置の場合、透明フィルム500の薄型化、及び、ドットスペーサ503の形状を工夫することで、軽い力でも接触操作の検出が可能となっている。
【0027】
(シングルタッチの検出原理)
図3は、タッチパネル装置940aの操作面を一本の指等で接触操作するシングルタッチの接触操作の検出原理を説明するための図である。この図3は、それぞれ二次元上で直交するX座標及びY座標のうち、Y座標の接触操作の検出原理を示している。この図3において、透明フィルム500の電極間に例えば1.5Vの電圧を印加すると、透明フィルム500のフィルム面は、0V~1.5Vの電圧分布となる。この状態で、透明フィルム500のフィルム面が接触操作されると、接触操作された点の電圧がガラス板502に伝達される。
【0028】
接触操作された点の電圧(0V~1.5V)は、ガラス板502の電極を介して、タッチパネル制御機能を備えたASIC906に伝達される。ASIC906は、接触操作された点の電圧を、A/D変換部601により、例えば12ビットのデジタル値(0~4095)に変換する。また、ASIC906は、座標変換部602により、接触操作された点の電圧のデジタル値を、タッチパネル装置940aの表示画面の座標(LCD座標、Liquid Crystal Display)に変換する。
【0029】
なお、X座標の接触操作された点の検出は、ガラス板502の電極間に例えば1.5Vの電圧を印加し、透明フィルム500上における接触操作された点の電圧を読み出すことで行う。
【0030】
このように、シングルタッチの接触操作の検出は、接触操作された位置に応じたX軸方向及びY軸方向の電圧値を、ASIC906へ供給し、A/D変換処理を行い、座標に変換することで行う。
【0031】
(マルチタッチの検出原理)
これに対して、タッチパネル装置940aの操作面を複数の指等で接触操作するマルチタッチの接触操作を検出する場合、図4(a)に示すようにシングルタッチの接触操作の検出と同様に、2点の接触点f(PX),f(PY)の中心座標Pを算出すると共に、2点の接触操作による電極間抵抗値の変化(図4(b)参照)を電流変化として検出することで行う。
【0032】
2点の接触操作の場合、合成抵抗により電極間抵抗値がシングルタッチの接触操作時より小さくなり、タッチパネル装置940aからの出力電流の電流量が、その分だけ多くなる。具体的には、図5に示すタッチパネル装置940aの抵抗R11~R13は、透明フィルム500の抵抗を示し、このうち、抵抗R12は、接触操作して2点の間の抵抗を示している。また、抵抗Rc1及び抵抗Rc2は、接触操作された2点の透明フィルム500及びガラス板502の間の接触抵抗を示している。また、抵抗R22は、ガラス板502の接触操作に対応する2点間の抵抗を示している。
【0033】
2本の指でマルチタッチによる接触操作が行われると、抵抗R11~抵抗R13に対して、図5に点線の四角で囲って示す抵抗Rc1、抵抗Rc2及び抵抗R22が並列に合成され、透明フィルム500の電極間の抵抗値が減少する。接触操作による2点間の距離が大きいほど、抵抗22の抵抗値が大きくなるため、透明フィルム500の電極間の抵抗値の減少量は大きくなる。なお、シングルタッチの接触操作時には、抵抗Rc1、抵抗Rc2及び抵抗R22の影響は、殆ど無い。
【0034】
ASIC906は、タッチパネル装置940aからの電流を、抵抗R30により電圧信号に変換する。このときの電圧信号(測定値)は、数十mVと微小であるため、ASIC906は、増幅器603により、測定値を数百倍に増幅する。ASIC906は、この増幅した測定値を、AD変換部601により、例えば12ビット(0~4095(最下位ビット))のデジタル値に変換する。
【0035】
また、ASIC906は、差分計算部604により、接触操作がされていないときに予め検出したタッチパネル装置940aの電圧値である基準値と、上述の測定値との差分値(PX,PY)を検出する。そして、ASIC906は、接触操作判定部605により、「PX-PY」の絶対値が、例えば「25以上」の場合に、マルチタッチ操作が行われているものと判定する。なお、「PX-PY」の絶対値が、例えば「24以下」の場合、接触操作判定部605は、シングルタッチ操作が行われているものと判定する。
【0036】
(増幅処理による問題点)
このように、マルチタッチの接触操作を検出する場合、途中、増幅器603により信号増幅処理を行う。妨害電波による電流変化、温度変化又は経年劣化による抵抗値の変化等のノイズ成分が、増幅器603で増幅する前の信号に重畳した場合、増幅器603によりノイズ成分も信号と共に増幅される。このノイズが与える影響は、シングルタッチの接触操作の検出に与える影響よりも、マルチタッチの接触操作の検出に与える影響の方が大きくなる。マルチタッチ有りとして接触操作を誤検出するか、マルチタッチ無しとして接触操作を誤検出するかは、ノイズの受け方に依存し、各誤検出は同等の割合で発生すると考えられる。そして、正方向(+方向)のノイズの場合、接触操作検出用の電圧値は上昇してマルチタッチ有りと、誤検出し易くなる。また、負方向(-方向)のノイズの場合、接触操作検出用の電圧値は下降してマルチタッチ無しと、誤検出し易くなる。
【0037】
抵抗膜方式タッチパネル装置940aにおいては、タッチパネル装置940aからの入力電圧を増幅する増幅器603の増幅率を変化させることで、タッチパネル感度を調整可能となっている。例えば、増幅器603の増幅率を300倍から100倍に下げると、マルチタッチの接触操作による2点電極間抵抗値を電圧変換した電圧値が下がるため、マルチタッチと判定されにくくすることができる(2点間の距離が小さくなるとマルチタッチと判定されにくくなる)。これは、外部ノイズ等の影響でシングルタッチをマルチタッチと誤検出する状況で有効である。
【0038】
一方で、タッチパネル感度を下げ過ぎると、マルチタッチの接触操作を行っているにも関わらず、接触操作の2点間の距離を広げないと、マルチタッチとして検出されず、また、接触操作の2点間の距離を広げないと、シングルタッチと誤検出される不都合を生ずる。
【0039】
このようなことから実施の形態のMFP9は、シングルタッチ操作が求められる操作画面でマルチタッチ操作が検出された場合、又は、マルチタッチ操作が求められる操作画面でシングルタッチ操作が検出された場合に、例えば妨害電波等の外的要因の影響で誤検出が発生していると判断し、接触操作の検出感度の調整を行う。これにより、妨害電波等により接触操作の誤検出が発生し得る環境下でも、サービスによる処理又は接触操作の検出感度補正用の特殊なモードへの移行を要することなく、接触操作の誤検出を防止可能としている。
【0040】
(感度調整機能)
接触操作の検出感度の調整動作は、図1に示すCPU901が、ROM902aに記憶されている感度調整プログラムに基づいて実行する。図6は、CPU901が感度調整プログラムを実行することで、実現される各機能を示す機能ブロック図である。この図6に示すように、CPU901は、感度調整プログラムを実行することで、遷移判断部701、異常接触操作検出部702、及び、感度制御部703の各機能を実現する。
【0041】
(感度調整動作)
図7は、接触操作の検出感度の調整動作の流れを示すフローチャートである。CPU901は、感度調整プログラムを実行することで、この図7のフローチャートに示す接触操作の検出感度の調整制御を行う。すなわち、まず、ステップS1では、タッチパネル装置940aの現在の画面が、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面に遷移したか否かを、遷移判断部701が判別する。現在の画面が、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面に遷移したと判別した場合(ステップS1:Yes)、処理がステップS2に進み、現在の画面が、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面に遷移していないと判別した場合(ステップS1:No)、処理がステップS7に進む。
【0042】
現在の画面が、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面に遷移したと判別した場合(ステップS1:Yes)、異常接触操作検出部702が、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面において、マルチタッチの接触操作(この場合、異常操作となる)を検出したか否かを判別する(ステップS2、ステップS3)。
【0043】
シングルタッチの接触操作のみ有効な画面において、マルチタッチの接触操作を検出しない場合は(ステップS3:No)、ユーザは、シングルタッチの接触操作を行っていることを意味するため、異常接触操作検出部702は、「異常無し」と判断し(ステップS5)、図7のフローチャートの全処理を終了する。
【0044】
これに対して、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面において、マルチタッチの接触操作を検出した場合(ステップS3:Yes)、異常接触操作検出部702は、「異常有り」と判断する(ステップS4)。上述のように、増幅器603の増幅率を例えば300倍から100倍に下げると、マルチタッチの接触操作による2点電極間抵抗値を電圧変換した電圧値を下げることができ、マルチタッチと判定されにくくすることができる(2点間の距離が小さくなるとマルチタッチと判定されにくくなる)。このため、感度制御部703は、増幅器603の増幅率を下げて、タッチパネル装置940aの感度を低下させる。これにより、例えば外部ノイズ等の影響でシングルタッチをマルチタッチと誤検出する不都合を防止でき、接触操作の検出精度を向上させることができる。
【0045】
なお、この例では、感度制御部703は、シングルタッチがマルチタッチとして誤検出された際に、増幅器603の増幅率を例えば300倍から100倍に下げて、タッチパネル装置940aの感度を低下させることとした。しかし、シングルタッチを正確に検出できれば、増幅器603の増幅率を上げて、タッチパネル装置940aの感度を調整してもよい。すなわち、感度制御部703は、シングルタッチを正確に検出可能なように、増幅器603の増幅率を調整して、タッチパネル装置940aの感度を調整するものである。
【0046】
一方、現在の画面は、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面ではないと判別した場合(ステップS1:No)、処理がステップS7に進む。ステップS7では、遷移判断部701が、現在の画面は、マルチタッチの接触操作のみ有効な画面に遷移したか否かを判別する。現在の画面が、マルチタッチの接触操作のみ有効な画面に遷移したと判別された場合(ステップS7:Yes)、異常接触操作検出部702が、マルチタッチの接触操作のみ有効な画面において、シングルタッチの接触操作(この場合、異常操作となる)を検出したか否かを判別する(ステップS8、ステップS9)。
【0047】
マルチタッチの接触操作のみ有効な画面において、シングルタッチの接触操作を検出しない場合(ステップS9:No)、ユーザは、マルチタッチの接触操作を行っていることを意味するため、異常接触操作検出部702は、「異常無し」と判断し(ステップS11)、図7のフローチャートの全処理を終了する。
【0048】
これに対して、マルチタッチの接触操作のみ有効な画面において、シングルタッチの接触操作を検出した場合(ステップS9:Yes)、異常接触操作検出部702は、「異常有り」と判断する(ステップS10)。
【0049】
増幅器603の増幅率を例えば100倍から300倍に上げると、マルチタッチの接触操作による2点電極間抵抗値を電圧変換した電圧値を上げることができ、マルチタッチの接触操作を検出し易くすることができる。このため、感度制御部703は、増幅器603の増幅率を上げて、タッチパネル装置940aの感度を上昇させる。これにより、例えば外部ノイズ等の影響でマルチタッチをシングルタッチと誤検出する不都合を防止でき、接触操作の検出精度を向上させることができる。
【0050】
なお、この例では、感度制御部703は、マルチタッチがシングルタッチとして誤検出された際に、増幅器603の増幅率を例えば100倍から300倍に上げて、タッチパネル装置940aの感度を上げることとした。しかし、マルチタッチを正確に検出できれば、増幅器603の増幅率を下げて、タッチパネル装置940aの感度を調整してもよい。すなわち、感度制御部703は、マルチタッチを正確に検出可能なように、増幅器603の増幅率を調整して、タッチパネル装置940aの感度を調整するものである。
【0051】
また、ステップS2、ステップS3、ステップS8及びステップS9における異常接触操作検出は、異常接触検出部702が、複数回の異常接触操作を検知した際に、「タッチ異常」と判断してもよい。
【0052】
また、感度制御部703は、増幅器603の増幅率を最小の増幅率まで下げても、マルチタッチの接触操作の誤検出が発生する場合、マルチタッチ機能を無効制御しても良い。これにより、感度調整が困難であるにも関わらず、感度調整を継続して行う不都合を防止できる。
【0053】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態のMFP9は、シングルタッチ操作が求められる操作画面でマルチタッチ操作が検出された場合、又は、マルチタッチ操作が求められる操作画面でシングルタッチ操作が検出された場合に、例えば妨害電波等の外的要因の影響で誤検出が発生していると判断し、接触操作の検出感度の調整を行う。
【0054】
これにより、妨害電波等により接触操作の誤検出が発生し得る環境下でも、サービスによる処理又は接触操作の検出感度補正用の特殊なモードへの移行を要することなく、接触操作の誤検出を防止することができる。
【0055】
(第1の変形例)
妨害電波の影響による接触操作の誤検出は、ユーザの人体がアンテナとなることが原因であるため、その影響の大きさは、ユーザ毎に異なる。このため、増幅器603の増幅率の、ユーザ毎の設定値をROM902a等の記憶部に記憶しておく。そして、感度制御部703が、ユーザAのログイン時には、ユーザA用の設定値に基づいて、増幅器603の増幅率を制御し、ユーザBのログイン時には、ユーザB用の設定値に基づいて、増幅器603の増幅率を制御する。これにより、ユーザ毎の感度制御を可能とすることができる。
【0056】
また、感度制御部703は、各ユーザのログイン中にタッチパネル装置940aの感度の変更を検知した場合、記憶部に記憶されているそのユーザ用の設定値を更新制御する。これにより、各ユーザに、より適した感度制御を可能とすることができる。
【0057】
(第2の変形例)
また、タッチ感度(増幅器603の増幅率)の設定値を、ROM902a等の記憶部に複数記憶しておき、感度制御部703が、操作画面のタッチ操作仕様に合わせて、各設定値を選択的に用いてもよい。この場合、感度制御部703は、シングルタッチのみ有効な画面では、増幅器603の増幅率を最小値に制御し、マルチタッチのみ有効な画面では、増幅器603の増幅率を最大値に制御する。また、感度制御部703は、シングルタッチ及びマルチタッチの両方が有効な画面では、補正制御により判定した接触操作の誤検出を回避可能なレベルの中間値に、増幅器603の増幅率を設定する。これにより、接触操作の検出精度を、より向上させることができる。
【0058】
(第3の変形例)
また、ノイズのレベルはランダムに変化する。このため、マルチタッチ等の接触操作が誤検出である場合、座標が振動する挙動となる(検出される座標が短時間に変動する)。これに対して、ノイズの影響がない場合、マルチタッチ等の接触操作に対応して安定した座標が検出される。すなわち、検出される座標の検出状況(安定具合)が、ノイズに応じて異なる。
【0059】
このため、異常接触操作検出部702は、座標の検出状況に応じてノイズの影響の有無を判断し、この判断結果に基づいて、ステップS4、ステップS5、ステップS10及びステップS11でタッチ異常の有無を検出する。これにより、異常操作の検出精度の向上を図ることができる。
【0060】
(第4の変形例)
また、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面でマルチタッチの接触操作を検出した場合、及び、マルチタッチの接触操作のみ有効な画面でシングルタッチの接触操作を検出した場合に、所定のメッセージを表示し、注意喚起及びタッチ補正実行指示の催促を行っても良い。
【0061】
具体的には、シングルタッチの接触操作のみ有効な画面でマルチタッチの接触操作を検出した場合、CPU901(表示制御部の一例)は、増幅器603の増幅率を制御する前に、例えば「マルチタッチ入力が無効な画面でマルチタッチを検出しました。電波障害によるタッチ異常が発生している可能性があります。タッチ感度補正を開始しますか?」等の注意喚起及びタッチ補正実行指示(=増幅器603の増幅率の変更指示)を促すメッセージをタッチパネル装置940a(表示部の一例)に表示制御する。
【0062】
ユーザによるタッチ補正実行指示は、タッチパネル装置940aのソフトウェアキーを用いて指示してもよいし、ハードウェアキー940bを用いて指示してもよい。
【0063】
この場合、感度制御部703は、タッチパネル装置940aのソフトウェアキー又はハードウェアキー940bでユーザからのタッチ補正実行指示を検出した際に、増幅器603の増幅率を変更制御して、タッチパネル装置940aの感度を調整する。これにより、ユーザから指示されたときのみ、タッチパネル装置940aの感度調整を行うことができるため、ユーザにとって不要な感度調整を無駄に実行する不都合を防止できる。
【0064】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。このような実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
9 複合器(MFP)
601 A/D変換部
602 座標変換部
603 増幅器
604 差分計算部
605 接触操作判定部
701 遷移判断部
702 異常接触操作検出部
703 感度制御部
902a ROM
906 ASIC
940 操作部
940a タッチパネル装置
940b ハードウェアキー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【文献】特開2017-010104号公報
図1
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図7