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  • 特許-トナーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240416BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/08 384
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020103034
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196507
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 敦史
(72)【発明者】
【氏名】阪下 真悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆幸
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139226(JP,A)
【文献】特開2017-097303(JP,A)
【文献】特開2016-151739(JP,A)
【文献】特開2017-151185(JP,A)
【文献】特開2019-164209(JP,A)
【文献】特開2017-097315(JP,A)
【文献】特開2004-246345(JP,A)
【文献】特開2011-133518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバインダー樹脂、及び離型剤を含有するトナーを製造するためのトナーの製造方法であって、
トナー母体粒子を水系媒体中で造粒する工程と、前記トナー母体粒子にシリカを外添する工程とを有し、
ヘキサンによる前記離型剤の抽出量が、31mg/g以上95mg/g以下であり、
前記トナーの25℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が、0.05以下であり、
前記バインダー樹脂がポリエステル樹脂を含むことを特徴とするトナーの製造方法
【請求項2】
前記ヘキサンによる前記離型剤の抽出量が、60mg/g以上85mg/g以下である、請求項1に記載のトナーの製造方法
【請求項3】
前記トナーが表面に細孔を有し、前記細孔の平均数が0.5個以上11.0個以下である、請求項1から2のいずれかに記載のトナーの製造方法
【請求項4】
前記細孔の円相当径が、0.2μm以上3.0μm以下である、請求項3に記載のトナーの製造方法
【請求項5】
前記トナーの120℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が、0.20以上である、請求項1から4のいずれかに記載のトナーの製造方法
【請求項6】
前記トナーの120℃における貯蔵弾性率G'と損失粘性率G"との比率tanδ(G"/G')の値が、0.80以上1.50以下である、請求項1から5のいずれかに記載のトナーの製造方法
【請求項7】
前記トナーを40kNの圧力で加圧後のFTIR-ATR法による前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が0.20以上である、請求項1から6のいずれかに記載のトナーの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記電子写真法における定着の方式としては、エネルギー効率の良さの点から、加熱ローラを直接記録媒体上のトナー像に圧接して定着する加熱ヒートローラ方式が広く一般に用いられている。前記加熱ヒートローラ方式は、定着のために多大な電力が必要となる。
【0003】
前記加熱ヒートローラ方式はスリープ時から加熱ローラの温度を定着に必要な温度に上昇させるために、数10秒間程度の待機時間が必要となり、ユーザーにとってはこの待機時間がストレスになるという問題がある。また、画像を出力しない時には、ヒータを完全にオフにすることで、消費電力を抑えることが望まれている。これらの要求を達成するためには、トナー自体の定着温度を下げ、使用可能時のトナーの定着温度を低下させかつ高離型のトナーが必要である。
【0004】
低温定着性のトナーは低融点の樹脂、離型剤を使用するため、部材汚染が発生しやすくなる課題がある。特に低融点の離型剤がトナー表層に多量に存在する場合、離型剤が感光体に付着することが起因となってフィルミングと呼ばれる画像異常が発生するという問題がある。一方でトナー表層に離型剤が十分に存在しない場合、特に低温定着性トナーにおいては十分な離形性を発揮できず、定着ローラや定着ベルトに付着したトナーによるオフセットの発生や、定着後用紙が剥離せず紙詰まりが発生しやすい。
【0005】
このような問題に対して、トナー粒子の表面に存在する前記離型剤の量を規定する値として、FTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる、離型剤由来のピークとバインダー樹脂由来のピークとの強度比を0.01以上0.40以下の範囲と規定している方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、トナー表面の離型剤量を規定するだけでなく、ヘキサンによる抽出で求められる離型剤露出量が18mg/g以上30mg/g以下と規定することにより、離型剤のトナー表層と内部の割合を規定し、離型剤の配置を制御したトナーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、感光体汚染によるフィルミングと、光沢ムラ及びホットオフセットによる画像異常とが発生しない安定した画像を提供できるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明のキャリアは、少なくともバインダー樹脂、及び離型剤を含有するトナーであって、
ヘキサンによる前記離型剤の抽出量が、31mg/g以上95mg/g以下であり、
前記トナーの25℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が、0.05以下であるトナーである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、感光体汚染によるフィルミングと、光沢ムラ及びホットオフセットによる画像異常とが発生しない安定した画像を提供できるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のトナーの断面の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(トナー)
本発明のトナーは、少なくともバインダー樹脂、及び離型剤を含有し、着色剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明のトナーは、ヘキサンによる前記離型剤の抽出量が30mg/g以上90mg/g以下であり、前記トナーの25℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が0.05以下である。
【0011】
従来技術である特許文献1のトナーは、トナー表層に存在する離型剤の量を規定しただけであり、トナー表面に存在する離型剤の過多によって、離型性と離型剤の悪影響に対する両立が達成できないという問題がある。
従来技術である特許文献2のトナーは、低温定着化・高速化の進む状況では定着時に抽出される離型剤の量が十分ではなく、定着性の悪化やホットオフセットのような画像異常が発生するという問題がある。
このように、トナー表面の離型剤の量を抑えながら、定着時に抽出される離型剤の量を十分に確保する必要があるが、トナー表面の離型剤の量と定着時に抽出される離型剤の量とは、トレードオフの関係にあり、現在までに両立する製造条件は確立されていない。
【0012】
本発明者らは鋭意検討の結果、トナーの内部に離型剤を有することで、感光体へのフィルミングを防止することができ、トナーの定着の際に離型剤がトナー表面に染み出すことで、ホットオフセットが発生するのを防ぐことができることを知見した。
【0013】
前記ヘキサンによる離型剤の抽出量としては、31mg/g以上95mg/gであり、35mg/g以上85mg/g以下が好ましく、45mg/g以上85mg/g以下がより好ましく、60mg/g以上85mg/g以下が特に好ましい。前記抽出量が31mg/g以上であると、優れた低温定着性が得られ、ホットオフセットを防ぐことができる。前記抽出量が95mg/g以下であると、画像における光沢のムラを抑えることができる。前記離型剤の抽出量は、トナーの定着時における離型剤の染み出し量と関係があり、前記離型剤の抽出量が多いほど定着時に離型剤がトナーから染み出し、ホットオフセットの発生や紙詰まりを防止することができる。
前記ヘキサンによる抽出で求められる離型剤の抽出量としては、以下の方法によって、測定することができる。
[離型剤の抽出量の測定方法]
トナー1.0gに対してn-ヘキサン7mLを加え、ロールミルを用いて120rpm、1分間の条件で攪拌した後、吸引濾過を行う。その後、n-ヘキサンを真空乾燥で除去し、残った成分の質量(mg)を離型剤の抽出量として測定する。
【0014】
前記トナーの25℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる、前記離型剤由来のピーク(P2850、波長:2850cm-1)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828、波長:828cm-1)との強度比(P2850/P828)としては、0.05以下であり、0.01以上0.04以下が好ましい。前記強度比(P2850/P828)が0.05以下であると、トナー表面の離型剤の量が少なく、フィルミングの発生を抑制することができる。
【0015】
前記トナーの25℃における前記強度比(P2850/P828)としては、FTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法によって測定することができる。
[25℃における強度比(P2850/P828)の測定方法]
トナーを7.5kN、1分間、25℃の条件で、錠剤成型圧縮機(株式会社前川試験機製作所製 BRE-32)を用いてプレスし、トナーをディスク化する。前記プレスにおいては、FT-IR(PerkinElmer社製)を用いて、Geクリスタルを使用したATR法により、ディスク化されたトナー表面に存在する離型剤及びバインダー樹脂の吸光度(それぞれ離型剤由来のピーク(P2850、波長:2850cm-1)及びバインダー樹脂由来のピーク(P828、波長:828cm-1))を測定する。測定した離型剤由来のピーク及びバインダー樹脂由来のピークから、25℃における強度比(P2850/P828)を算出する。
【0016】
前記トナーの120℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる、前記離型剤由来のピーク(P2850、波長:2850cm-1)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828、波長:828cm-1)との強度比(P2850/P828)としては、0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましい。前記強度比(P2850/P828)が0.20以上であると、トナー定着時の加熱により融解した離型剤が細孔を通ってトナー表面に露出し、優れた低温定着性が得られ、ホットオフセットの発生を防止することができる。
【0017】
前記トナーの120℃における前記強度比(P2850/P828)としては、前記25℃における強度比(P2850/P828)の測定方法において、トナーをディスク化した後に120℃で1分間加熱した以外は、同様にして120℃における前記強度比(P2850/P828)を算出することができる。
【0018】
本発明のトナーとしては、表面に細孔を有することが好ましい。前記細孔とは、トナー粒子中に存在する、バインダー樹脂、離型剤等のトナー成分が存在しない、ある一定範囲の円相当径をもつ空隙のことをいう。前記トナーが表面に細孔を有すると、トナーの定着時においてトナー内部から離型剤が染み出し、ホットオフセットの発生や紙詰まりを防止することができる。
前記細孔の平均数としては、0.5個以上11.0個以下であり、4.0個以上9.0個以下が好ましい。前記細孔の平均数が0.5個以上であると、定着時に離型剤がトナーから染み出し、ホットオフセットの発生や紙詰まりを防止することができる。前記細孔の平均数が11.0個以下であると、トナー同士の接触によるトナーの崩壊や、トナーの定着前における離型剤の露出を防ぎ、フィルミングの発生を防止することができる。
【0019】
前記細孔の円相当径としては、0.2μm以上3.0μm以下が好ましい。前記細孔の円相当径が0.2μm以上であると、定着時に離型剤がトナーから染み出し、ホットオフセットの発生や紙詰まりを防止することができる。前記細孔の円相当径が3.0μm以下であると、トナー同士の接触によるトナーの崩壊や、トナーの定着前における離型剤の露出を防ぎ、フィルミングの発生を防止することができる。
【0020】
前記トナーの表面における細孔の平均数及び円相当径としては、以下の方法で測定することができる。
[トナーの表面における細孔の平均数及び円相当径の測定方法]
トナーの細孔の評価は、トナー各粒子の細孔の平均数と大きさを測定することは困難なため、以下の手法により、面積が最大となるトナーの断面における細孔の平均数及び円相当径を測定した。
具体的には、測定対象となるトナーを樹脂等に包埋後に支持体上に固定保持し、ウルトラミクロトーム(ライカ株式会社製、RM2265)によりトナー包埋樹脂の表面を平滑化処理する。その後、支持体上の樹脂の表面写真を走査型電子顕微鏡(FE-SEM S-4800、日立製作所製)を用いて撮影する。得られた表面写真をPhotoshopで2値化後、画像処理ソフト(Image Plus Pro)で、面積が最大となるトナーの断面の全体における、細孔の数及び円相当径を測定し、トナー粒子数に対する平均値を算出する。細孔の円相当径は、画像処理によって得られた細孔の面積より算出し、トナー表面のひび割れは、前記ひび割れの隙間の面積から円相当径を算出する。1サンプルにつき、トナー粒子は少なくとも300粒子以上解析する。
【0021】
図1は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した本発明のトナーの一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明のトナー10は、細孔11を有する。前記トナー10の表面に細孔11を有することで、トナーの定着時においてトナー内部から離型剤12が染み出し、ホットオフセットの発生や紙詰まりを防止することができる。
【0022】
<離型剤>
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワックス、シリコーンオイルなどが挙げられる。前記離型剤としては、定着プロセスで加熱されたときに十分に粘度が低く、かつ着色樹脂粒子のほかの物質と定着部材表面に相溶あるいは膨潤しにくい物質が使用され、着色樹脂粒子そのものの保存安定性を考えると、通常保管時に着色樹脂粒子中で固体として存在する点から、ワックスが好ましい。
【0023】
前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長鎖炭化水素、カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、離型性がよい点から、長鎖炭化水素が好ましい。前記長鎖炭化水素を離型剤として用いる場合、前記カルボニル基含有ワックスを併用してもよい。
前記長鎖炭化水素としては、例えば、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);石油系ワックス(パラフィンワックス、サゾールワックス、マイクロクリスタリンワックスなど);フィッシャートロプシュワックスなどが挙げられる。
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル(カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。
【0024】
前記離型剤の含有量としては、トナー全体に対して、1質量%~20質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましい。離型剤の含有量が、1質量%以上であると、オフセット性が悪化するという不具合を防止できる。また、20質量%以下であると、定着時にワックスの溶け出しが多くなり微粒子(UFP)の発生が多くなるという不具合を防止できる。
【0025】
<バインダー樹脂>
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低温定着性に優れ、低分子量化しても十分な可撓性を有する点で、ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂の少なくともいずれかと、他の前記バインダー樹脂とを組み合わせた樹脂が好ましい。
【0026】
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未変性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記未変性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)で表されるポリオールと、下記一般式(2)で表されるポリカルボン酸とをポリエステル化した樹脂などが挙げられる。
【0028】
【化1】
(ただし、前記一般式(1)中、Aは、炭素数1~20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有してもよい芳香族基又はヘテロ環芳香族基を表し、mは、2~4の整数を表す。)
【0029】
【化2】
(ただし、前記一般式(2)中、Bは、炭素数1~20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有してもよい芳香族基又はヘテロ環芳香族基を表し、nは、2~4の整数を表す。)
【0030】
前記一般式(1)で表されるポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロ
ールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記一般式(2)で表されるポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニル
コハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記変性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能なポリエステル(以下、「ポリエステルプレポリマー」と称することがある)とを、伸長反応及び/又は架橋反応して得られる樹脂などが挙げられる。前記伸長反応及び/又は架橋反応は、必要に応じて、反応停止剤(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、ケチミン化合物等のモノアミンをブロックしたものなど)により停止させてもよい。
【0033】
前記活性水素基含有化合物は、水相中で、前記ポリエステルプレポリマーが伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
前記活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリエステルプレポリマーが後述するイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーである場合、高分子量化が可能となる点で、アミン類が好ましい。
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミン類のアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等);脂環式ジアミン(4,4’-ジアミノ-3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。
前記3価以上のポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコールとしては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタンとしては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
前記アミン類のアミノ基をブロックしたものとしては、例えば、前記アミン類(ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸等)のいずれかとケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記アミン類は、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のポリアミンとの混合物が好ましい。
【0034】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としては、前記活性水素基含有化合物と反応可能な基を少なくとも有する重合体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶融時の高流動性、透明性に優れ、高分子成分の分子量を調節しやすく、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着性、離型性に優れる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)が好ましく、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーがより好ましい。
【0035】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物、活性水素基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応物などが挙げられる。
【0036】
前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のアルキレンエーテルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド
付加物のジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価脂肪族アルコール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等の3価以上のポリオール、ジオールと3価以上のポリオールとの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ポリオールは、前記ジオール単独、前記ジオールと少量の前記3価以上のポリオールとの混合物が好ましい。
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数2~12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物等)が好ましい。
【0037】
前記ポリオールのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーにおける含有量としては、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下が特に好ましい。前記含有量が0.5質量%以上であると、ホットオフセットの発生を防止でき、トナーの保存性と低温定着性との両立を図ることができ、前記含有量が40質量%以下であると、優れた低温定着性を有する。
【0038】
前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のアルキレンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等のアルケニレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ポリカルボン酸としては、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。なお、前記ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸の無水物、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)などを用いてもよい。
【0039】
前記ポリオールと前記ポリカルボン酸の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ポリオールの水酸基[OH]と前記ポリカルボン酸のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]として、2/1~1/1が好ましく、1.5/1~1/1がより好ましく、1.3/1~1.02/1が特に好ましい。
【0040】
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ,例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン-4,4'-ジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルジフェニル、3-メチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4'-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリス-イソシアナトアルキル-イソシアネート、トリイソシアナトシクロアルキル-イソシアネート等のイソシアネート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独でも使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記ポリイソシアネートと、前記活性水素基含有ポリエステル樹脂(水酸基含有ポリエステル樹脂)との混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ポリイソシアネートのイソシアネート基[NCO]と前記水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基[OH]との当量比[NCO]/[OH]として、5/1~1/1が好ましく、4/1~1.2/1がより好ましく、3/1~1.5/1が特に好ましい。前記当量比[NCO]/[OH]が、1/1以上であると、優れた耐オフセット性を有し、5/1以下であると、優れた低温定着性を有する。
【0042】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー中の前記ポリイソシアネートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下が特に好ましい。前記含有量が、0.5質量%以上であると、優れた耐ホットオフセット性を有し、保存性と低温定着性との両立を図ることができ、40質量%以下であると、優れた低温定着性を有する。
【0043】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーの1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2以上5以下がより好ましく、1.5以上4以下がより好ましい。前記平均数が1以上であると、ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が高くなり、優れた耐ホットオフセット性を有する。
【0044】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーと、前記アミン類との混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー中のイソシアネート基[NCO]と、前記アミン類中のアミノ基[NHx]の混合当量比[NCO]/[NHx]が、1/3以上3/1以下が好ましく、1/2以上2/1以下がより好ましく、1/1.5以上1.5/1以下が特に好ましい。前記混合当量比([NCO]/[NHx])が1/3以上であると、優れた低温定着性を有し、前記混合当量比([NCO]/[NHx])が3/1以下であると、ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が高くなり、優れた耐ホットオフセット性を有する。
【0045】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、3,000以上40,000以下が好ましく、4,000以上30,000以下がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が3,000以上であると、保存性が良好となり、前記重量平均分子量(Mw)が40,000以下であると、低温定着性に優れる。
【0046】
前記重量平均分子量(Mw)としては、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mLの流速で流し、試料濃度を0.05~0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50μL~200μL注入して測定する。試料における分子量の測定では、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure ChemicalCo.又は東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、及び4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0047】
前記結晶性ポリエステルとしては、着色樹脂粒子の低温定着性を向上させるために用いることができる。前記結晶性ポリエステルは、結晶性を有するがゆえに定着開始温度付近において、急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。つまり、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性が良く、溶融開始温度では急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし、定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性を兼ね備えたトナーを設計することが出来き、離型幅(定着下限温度と定着上限温度の差)についても、良好な結果を示す。
前記結晶性ポリエステルとしては、アルコール成分と酸成分とから合成され、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が好ましい。
[-O-CO-(CR1=CR2)l-CO-O-(CH2)n-]m(1)・・・一般式(1)
(ここでn、mは繰り返し単位の数である。Lは1~3の整数である。 R1、R2は水素原子もしくは炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
前記アルコール成分としては、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の炭素数2~6のジオール化合物、これらの誘導体などが挙げられる。前記アルコール成分の含有量としては、80モル%以上が好ましく、85モル%以上100モル%以下がより好ましい。
前記酸成分としては、例えば、フマル酸、二重結合(C=C結合)を有するカルボン酸、これらの誘導体などが挙げられる。
【0048】
前記結晶性ポリエステルの結晶性及び軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分としてグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分として無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを使用するなどの方法が挙げられる。
【0049】
前記結晶性ポリエステルの分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものが挙げられる。
【0050】
前記結晶性ポリエステルの分子量としては、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れるという観点から、o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0であり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で1,000~30,000であり、数平均分子量(Mn)で500~6,000であり、Mw/Mnが2~8が好ましい。
【0051】
前記結晶性ポリエステルの融解温度及び1/2流出温度(F1/2温度)については耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが望ましく、好ましくはDSC吸熱ピーク温度が50~150℃である。融解温度およびF1/2温度が50℃以下の場合は耐熱保存性が悪化し、現像装置内部の温度でブロッキングが発生しやすくなり、130℃以上の場合には定着下限温度が高くなるため低温定着性が得られなくなる。
【0052】
結晶性ポリエステルの酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であることが好ましく、一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。更に、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0~50mgKOH/g、より好ましくは5~50mgKOH/gのものが好ましい。
【0053】
<着色剤>
前記着色剤としては、公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0054】
前記着色剤としては、バインダー樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげたバインダー樹脂、変性樹脂の他にポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0055】
前記マスターバッチ作製方法としては、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得ることができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。またフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0056】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、通常のトナーに含まれるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、有機溶剤、帯電制御剤などが挙げられる。
【0057】
-有機溶剤-
前記有機溶剤は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
有機溶剤中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒を用いたほうが溶解性が高く好ましく、このなかでは溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0058】
前記界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。
【0059】
前記フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2~10のフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3-[ω-フルオロアルキル(C6~C11)オキシ]-1-アルキル(C3~C4)スルホン酸ナトリウム、3-[ω-フルオロアルカノイル(C6~C8)-N-エチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11~C20)カルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7~C13)、パーフルオロアルキル(C4~C12)スルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N-プロピル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6~C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6~C10)-N-エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6~C16)エチルリン酸エステル、これらの金属塩などが挙げられる。
前記カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6~C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0060】
前記水系媒体に含まれる樹脂微粒子は、トナー粒子形成前の水系媒体に乳化剤として添加することによって、油滴同士の合一を抑制し、造粒性を向上させることが出来る。
前記水系媒体に含まれる樹脂微粒子としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂粒子の水性分散体を得やすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
前記ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸-アクリル酸エステル重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0061】
-帯電制御剤-
前記帯電制御剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNXVP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0062】
(トナーの製造方法)
前記トナーの製造方法としては、油相作製工程、乳化工程、脱溶工程、熟成工程を有し、更に必要に応じてその他の工程を有する。
【0063】
<油相作製工程>
前記油相作製工程としては、有機溶剤中にバインダー樹脂、離型剤、着色剤などを攪拌しながら徐々に添加し、分散させる工程である。前記離型剤、前記着色剤などは有機溶剤への添加に先立って粒子を小さくしておくことが好ましく、前記離型剤の粒径を微小化することによって、離型剤がトナー内部に内包されやすくなりトナー表面への露出量が減少する。前記分散には公知のビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。追加で分散を行う際に、前記分散助剤を追加で加えることにより、離型剤粒子の分散効率の向上と微小化を一層進めることが可能となる。
【0064】
<乳化工程>
前記乳化工程としては、少なくとも界面活性剤を有する水系媒体中に前記油相を分散させ、油相からなるトナー粒子が分散した分散液を作製する工程である。前記乳化工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などが挙げられる。これらの中でも、分散体の粒径を2μm~20μmにできる点から、高速せん断式が好ましい。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に制限はないが、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000~15,000rpmがより好ましい。
【0065】
<脱溶工程>
前記脱溶工程としては、例えば、得られた前記分散液を攪拌して、有機溶剤を除去する工程などが挙げられ、前記分散液を攪拌しながら徐々に昇温し、前記有機溶剤を完全に蒸発させて除去することが好ましい。
前記脱溶工程としては、例えば、前記分散液を15℃以上45℃以下で、0.5時間以上2.0時間以下攪拌し、前記分散液における有機溶剤の濃度が15質量%以下とする方法などが挙げられる。これにより、短時間で前記有機溶剤を除去し、除去された前記有機溶剤が存在した部分が周囲の前記バインダー樹脂によって閉塞せずにトナーの表面に細孔を形成することができる。前記有機溶剤の濃度としては、ガスクロマトグラフィー(GC-2010、島津製作所製)などで測定することができる。
また、前記脱溶工程としては、得られた着色樹脂分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶剤を完全に除去することも可能である。着色樹脂分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶剤を蒸発除去しても良い。
乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
【0066】
<熟成工程>
末端にイソシアネート基を有する変性樹脂を添加している場合は、イソシアネートの伸長・架橋反応を進めるために熟成工程を行っても良い。熟成時間は通常10分~30時間、好ましくは2~15時間である。反応温度は、通常、20~65℃、好ましくは35~50℃である。
【0067】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄工程、乾燥工程、外添処理工程などが挙げられる。
【0068】
トナー母体粒子の体積平均粒子径(Dv)としては、3.0μm以上6.0μm以下が好ましい。前記体積平均粒子径(Dv)が、3.0μmであると、一成分現像剤を用いる場合では、現像ローラやブレードなどの部材へのトナーの融着を防ぐことができ、二成分現像剤を用いる場合では、キャリア表面へのトナーの融着によるキャリアの帯電能力の低下を防ぐことができる。また、前記体積平均粒子径(Dv)が6.0μm以下であると、高解像度で高画質の画像を得ることができる。
トナー母体粒子の個数平均粒子径(Dn)に対する、トナー母体粒子の体積平均粒子径(Dv)の比(Dv/Dn)は、1.05以上1.25以下が好ましい。前記比(Dv/Dn)が、1.25以下であると、高解像度で高画質の画像を得ることができる。また、前記比(Dv/Dn)が、1.05以上であると、トナーの帯電性及びクリーニング性が良好となる。
【0069】
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジ等があげられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段のから選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【実施例
【0070】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0071】
(樹脂微粒子分散液の製造例)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30、三洋化成工業製)11質量部、ドデカノールエチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(キャリポンEN-200、三洋化成工業製)5質量部、スチレン83質量部、メタクリル酸83質量部、アクリル酸ブチル110質量部、過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して温度75℃まで昇温し、2時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を滴下にて加え、75℃で8時間熟成し、固形分20%の樹脂微粒子分散液を得た。体積平均粒径は38nmであった。
【0072】
(低分子ポリエステル樹脂の製造例)
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物220質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物561質量部、テレフタル酸218質量部、アジピン酸48質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応した。次いで、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させた後、反応容器内に無水トリメリット酸45質量部を入れ、常圧下、180℃で2時間反応し、低分子ポリエステル樹脂を得た。
得られた低分子ポリエステル樹脂は、数平均分子量2,500、重量平均分子量6,700、ガラス転移温度(Tg)43℃、酸価25mgKOH/gであった。
【0073】
(離型剤分散液の製造例1)
エステルワックス(LW-13、三洋化成株式会社製)12.2質量部、分散剤(スチレンアクリル、三洋化成株式会社製)8.5質量部、前記低分子ポリエステル樹脂36.6質量部、酢酸エチル81.0質量部を、60℃で3時間混合した後、外部熱交換器で30℃以下になるまで冷却し混合物を得た。次に、得られた混合物に分散剤(スチレンアクリル、三洋化成株式会社製)3.7質量部を加え0.5時間混合し、ビーズミル装置(LMZ60、アシザワファインテック製)を用いて循環分散し、離型剤分散液1を得た。メディアはビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。
【0074】
(離型剤分散液の製造例2)
前記離型剤分散液の製造例1において、分散剤(スチレンアクリル、三洋化成株式会社製)の含有量を、7.3質量部に変更し、得られた混合物に分散剤(スチレンアクリル、三洋化成株式会社製)を添加しなかった以外は、前記離型剤分散液の製造例1と同様にして離型剤分散液2を得た。
【0075】
(結晶性ポリエステル分散液の製造例)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、1,4-ブタンジオール2,070質量部、フマル酸2,535質量部、無水トリメリット酸291質量部、ハイドロキノン4.9質量部を入れ、160℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。その後、8.3kPaにて1時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂36重量%を、酢酸エチル中に55℃で1時間溶解させた。その後、冷却水を用いた外部熱交換器を使用して、20℃以下になるまで冷却し、結晶性ポリエステル樹脂を析出させて晶析液を得た。得られた晶析液を、ビーズミル装置(LMZ25、アシザワファインテック製)を用いて循環粉砕し、結晶性ポリエステル樹脂分散液を得た。メディアはビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。
【0076】
(実施例1)
-油相の作製-
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管を備えた反応槽内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物を795質量部、イソフタル酸200質量部、テレフタル酸65質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部をそれぞれ投入し、常圧窒素気流下、210℃で8時間縮合反応した。次に、10mmHg~15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応し、80℃まで冷却した後、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート170質量部と2時間反応を行い、プレポリマーを得た。得られたプレポリマーの重量平均分子量は5,000であった。
前記離型剤分散液1を307質量部、前記低分子ポリエステル溶解液を212質量部、黒色顔料C-60を26質量部、結晶性ポリエステル分散液を78質量部、酢酸エチル22質量部をタンク内に投入し、3時間溶解、分散して混合液を得た。
次に、前記混合液を395質量部、プレポリマーを51質量部、及びイソホロンジアミンの50質量%酢酸エチル溶液3.5質量部を混合し、TK式ホモミキサー(特殊機化社製)にて回転数5,000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散して油相を得た。
【0077】
-水相の作製-
水1180質量部、前記樹脂微粒子分散液51質量部、50重量%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)262質量部、及び酢酸エチル138質量部を、それぞれ投入し、混合撹拌して、水相を得た。
【0078】
-乳化-
次いで、撹拌機及び温度計をセットした別の容器内に水相550質量部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)にて11,000rpmで攪拌しながら前記油相450質量部を添加し、1分間混合して乳化スラリーを得た。
【0079】
-脱溶・熟成-
得られた乳化スラリーを、温水ジャケット及び減圧ラインを具備するSUS製のタンク内に溜め、攪拌翼外周端周速10.5m/秒の攪拌下、徐々に減圧を行い、最終的に-95kPaの減圧条件で脱溶剤を行った。この時、乳化スラリー中の有機溶剤濃度が、時間推移に従って以下のような濃度推移になるように減圧条件を調整しながら実施した。乳化スラリー中の有機溶剤濃度はガスクロマトグラフィー(GC-2010、島津製作所製)で測定することにより求めた。
・STEP1:スラリー温度30℃で40分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とした。
・STEP2:スラリー温度30℃で80分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を5質量%とした。
・STEP3:スラリー温度を36℃に昇温しつつ180分溶剤を除去し、有機溶剤濃度が0.1質量%となった。
その後、50℃で4時間熟成を行い、分散スラリーを得た。
【0080】
-洗浄・乾燥工程-
分散スラリーを加圧濾過して濾過ケーキを得た。得られた濾過ケーキに対し、以下の処理を行った。
(1)イオン交換水100質量部を加え、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)で混合(回転数6,000rpmで5分間)した後、濾過を行った。
(2)イオン交換水100質量部を加え、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)で混合(回転数6,000rpmで5分間)した後、攪拌しながら1質量%塩酸をpH5.0程度になるまで加え、1時間の攪拌後に濾過を行った。
(3)イオン交換水300質量部を加え、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)で混合(回転数6,000rpmで5分間)した後、濾過を2回行った。
得られた濾過ケーキを循風乾燥機にて40℃で48時間乾燥した。その後目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子1を作製した。
【0081】
-混合-
前記トナー母体粒子100質量部、及び疎水性シリカ(HDK-2000、ワッカー・ケミー株式会社製)1.5質量部を、20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)にて周速33m/sにて5分間混合し、500メッシュの篩により分級しトナーを得た。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、油相の作製の前記離型剤分散液を361質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0083】
(実施例3)
実施例1において、油相の作製の前記離型剤分散液を253質量部、混合液を383質量部、及びプレポリマーを64質量部に変更し、前記脱溶・熟成のSTEP1を、スラリー温度24℃で100分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とし、STEP2を、スラリー温度24℃で80分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を5質量%に変更し、STEP3として、スラリー温度36℃で180分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を0.1質量%とし、45℃で4時間熟成を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0084】
(実施例4)
実施例3において、前記脱溶・熟成のSTEP1を、スラリー温度30℃で80分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とした以外は、実施例3と同様にしてトナーを得た。
【0085】
(実施例5)
実施例3において、前記脱溶・熟成のSTEP1を、スラリー温度30℃で40分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とした以外は、実施例3同様にしてトナーを得た。
【0086】
(実施例6)
実施例3において、前記脱溶・熟成のSTEP1を、スラリー温度30℃で40分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とし、STEP2を、スラリー温度30℃で80分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を5質量%とした以外は、実施例3と同様にしてトナーを得た。
【0087】
(実施例7)
実施例3において、前記脱溶・熟成のSTEP1を、スラリー温度36℃で40分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とし、STEP2を、スラリー温度36℃で80分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を5質量%に変更し、STEP3として、スラリー温度36℃で180分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を0.1質量%とした以外は、実施例3と同様にしてトナーを得た。
【0088】
(実施例8)
実施例1において、油相の作製の前記離型剤分散液を253質量部に変更し、前記脱溶・熟成のSTEP1を、スラリー温度24℃で160分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を15質量%とし、STEP2を、スラリー温度24℃で80分溶剤を除去し、有機溶剤濃度を5質量%とし、45℃で熟成を行った以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0089】
(実施例9)
実施例8において、50℃で熟成を行った以外は、実施例8と同様にしてトナーを得た。
【0090】
(実施例10)
実施例1において、油相の作製の混合液を404質量部、及びプレポリマーを43質量部に変更した以外は、実施例9と同様にしてトナーを得た。
【0091】
(実施例11)
実施例1において、油相の作製の前記離型剤分散液を253質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0092】
(実施例12)
実施例7において、油相の作製の前記離型剤分散液を361質量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてトナーを得た。
【0093】
(実施例13)
実施例10において、油相の作製の前記離型剤分散液を361質量部に変更した以外は、実施例10と同様にしてトナーを得た。
【0094】
(比較例1)
実施例8において、油相の作製の離型剤分散液1を、前記離型剤分散液2に変更し、混合液を383質量部、及びプレポリマーを64質量部に変更した以外は、実施例8と同様にしてトナーを得た。
【0095】
(比較例2)
実施例8において、油相の作製の前記離型剤分散液を145質量部、混合液を383質量部、及びプレポリマーを64質量部に変更した以外は、実施例8と同様にしてトナーを得た。
【0096】
(比較例3)
実施例1において、油相の作製の前記離型剤分散液を434質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0097】
(比較例4)
実施例3において、油相の作製の前記離型剤分散液を217質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0098】
次に、各トナーについて、以下のようにして、「フィルミング」、「耐ホットオフセット性」、「低温定着性」及び「光沢ムラ」を評価した。結果を表1に示す。
【0099】
(フィルミング)
リコー株式会社製複写機(MP9001)を用いて、連続で100枚の印字を50回繰り返して行い、下記評価基準に基づき、フィルミングを評価した。
〇:フィルミングが発生しない
△:フィルミングがわずかに発生
×:フィルミングが多量に発生
【0100】
(耐ホットオフセット性)
定着ローラとしてテフロン(登録商標)ローラを使用した株式会社リコー製複写機(MF2200)の定着部を改造した装置に、リコー製のタイプ6200紙をセットし複写テストを行なった。定着温度を変化させてホットオフセットが発生する温度(定着上限温度)を求めて、下記評価基準に基づき、耐ホットオフセット性を評価した。なお、評価条件は紙送りの線速度を50mm/sec、面圧2.0Kgf/cm、ニップ幅4.5mmと設定した。
◎:定着上限温度が195℃以上
〇:定着上限温度が190℃以上195℃未満
△:定着上限温度が180℃以上190℃未満
×:定着上限温度が180℃未満
【0101】
(低温定着性)
オイルレス定着方式に改造した画像形成装置(「IPSIO Color 8100」;リコー社製)に、厚紙(複写印刷用紙<135>;NBSリコー製)をセットし、ベタ画像で1.0±0.1mg/cmのトナーが現像されるように調節して、定着画像を得た。得られた定着画像をパットで擦った後の画像の残存率が、70%となる定着ロール温度(定着下限温度)を求め、下記評価基準に基づき、低温定着性を評価した。
◎:定着下限温度が120℃未満
〇:定着下限温度が120℃以上135℃未満
△:定着下限温度が135℃以上150℃未満
×:定着下限温度が150℃以上
【0102】
(光沢ムラ)
リコー株式会社製複写機(MP9001)を用いて、mondi社製mondi Color Copy 300(坪量:300g/m)に、トナー付着量1.00±0.03mg/cmとなるように、評価用チャート(図1)の1枚目の画像と、2枚目の全ベタ画像を続けて形成した。紙送りの線速度:400mm/秒、面圧:1.6kgf/cm2、ニップ幅:15mmとして、定着温度を変化させて定着し、それぞれの定着温度での前記2枚目の定着画像の「光沢ムラ」の評価画像とした。光沢ムラの評価は、光沢度計VG-7000(日本電色工業製)を用いて、前記評価画像の評価部位(1)、及び(2)のそれぞれ任意の3箇所の60度光沢度を測定し、それぞれの平均光沢度を求め、これらの光沢度差が20%以上となる定着温度を求め、下記評価基準に基づき、光沢ムラを評価した。
〇:定着温度が180℃以上、又は前記光沢度差が20%以上にならない
△:定着温度が170℃以上180℃未満
×:定着温度が170℃未満
【0103】
(総合評価)
「フィルミング」、「耐オフセット性」、「低温定着性」及び「光沢ムラ」の評価結果から、下記基準により評価した。
◎:「◎」が1個以上かつ「△」及び「×」が0個
〇:「△」が1個以上かつ「×」が0個、又は「〇」が4個
×:「×」が1個以上
【0104】
【表1】
【0105】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくともバインダー樹脂、及び離型剤を含有するトナーであって、
ヘキサンによる前記離型剤の抽出量が、31mg/g以上95mg/g以下であり、
前記トナーの25℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が、0.05以下であることを特徴とするトナーである。
<2> 前記ヘキサンによる前記離型剤の抽出量が、60mg/g以上85mg/g以下である、前記<1>に記載のトナーである。
<3> 前記トナーが表面に細孔を有し、前記細孔の平均数が0.5個以上11.0個以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナー。
<4> 前記細孔の円相当径が、0.2μm以上3.0μm以下である、前記<3>に記載のトナーである。
<5> 前記トナーの120℃におけるFTIR-ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が、0.20以上である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6> 前記トナーの120℃における貯蔵弾性率G’と損失粘性率G”との比率tanδ(G”/G’)の値が、0.80以上1.50以下である、前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーである。
<7> 前記トナーを40kNの圧力で加圧後のFTIR-ATR法による前記離型剤由来のピーク(P2850)と前記バインダー樹脂由来のピーク(P828)との強度比(P2850/P828)が0.20以上である、前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニットである。
【0106】
前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナー、前記<8>に記載のトナー収容ユニットによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【文献】特許第6488866号公報
【文献】特開2017-167387号公報
図1