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特許7472792液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜、及び液晶表示素子
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  • 特許-液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜、及び液晶表示素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】液晶配向膜の製造方法、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240416BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20240416BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
G02F1/1337 525
C08F220/00
C08G73/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020539573
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033837
(87)【国際公開番号】W WO2020045548
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018162941
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 祐太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080307(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/061490(WO,A1)
【文献】特開平11-095224(JP,A)
【文献】特開平11-133429(JP,A)
【文献】特開平11-212095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08F 220/00
C08G 73/10
C08L 33/04
C08L 79/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチドメイン液晶配向膜の製造方法であって、当該方法は、
液晶配向剤を基板上に塗布し、乾燥及び焼成により硬化膜を形成する工程、
前記硬化膜に紫外線を斜め方向から照射する1回目の照射によりプレチルト角を形成する工程、並びに、
前記1回目の照射工程により得られた、紫外線照射後の硬化膜に、前記1回目の照射工程における照射方向とは異なる方向から紫外線を照射する2回目の照射により、1回目の照射により形成されたプレチルト角とは異なるプレチルト角を形成する工程をこの順番で含み、
前記1回目の照射工程と前記2回目の照射工程の少なくとも一方は、遮光された領域と遮光されていない領域とを含むマスクを介して行われることにより、配向方向が異なる領域が複数形成されたマルチドメイン液晶配向膜を得ることを特徴とし、
前記2回目の照射工程のみが前記マスクを介して行われる場合、前記2回目の照射工程における紫外線の照射量が、前記1回目の照射工程における紫外線の照射量よりも多く、
前記1回目の照射工程のみが前記マスクを介して行われる場合、前記2回目の照射工程における紫外線の照射量が、前記1回目の照射工程における紫外線の照射量よりも少なく、
前記液晶配向剤は、(A)下記式(pa-1)
【化1】
(式中、Aは場合によりフッ素、塩素、シアノから選択される基によるか、又は炭素数1~5のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル残基(これは、場合により1個のシアノ基又は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい)で置換されてもよい、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-チオフェニレン、2,5-フラニレン、1,4-若しくは2,6-ナフチレン又はフェニレンを表し、Rは単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-であり、Rは炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3~40の1価の有機基であり、Dは、酸素原子、硫黄原子又は-NR-(ここで、Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキルを表す)を表し、X及びYは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1~3のアルキル基であり、aは0~3の整数であり、*は結合位置を表す。)
で表される光配向性基と熱架橋性基Aとを有する重合体、及び
溶媒を含有し、かつ
前記液晶配向剤は、
Z1:前記(A)重合体が熱架橋性基Bをさらに有するか、及び/又は
Z2:(B)分子内に2個以上の熱架橋性基Bを有する化合物をさらに含有する
(熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは、それぞれ独立に、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、水酸基、エポキシ部位含有基、オキセタニル基、チイラニル基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基からなる群から選ばれる基であって、熱架橋性基Aと熱架橋性基Bとが熱により架橋反応するように選択されてなり、ただし、熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは互いに同じでもよい。)
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記1回目の照射工程及び前記2回目の照射工程で照射される紫外線の少なくとも一方が偏光紫外線である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法を用いて形成されたマルチドメイン液晶配向膜。
【請求項4】
請求項に記載のマルチドメイン液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤を用いる液晶配向膜の製造方法、これにより得られる液晶配向膜、及び得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、特定の液晶配向剤を用いることにより得られる、焼成温度が低く、焼成時間が短い場合においても、液晶配向性が良好であり、プレチルト角発現能にも優れ、且つ高い信頼性が得られるとともに、プレチルト角の上書きが可能である液晶配向膜、および特定の液晶配向剤を用いる、表示品位に優れるマルチドメイン液晶配向膜の製造方法、マルチドメイン液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。現在、工業的に使用されている主な液晶配向膜は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸ともいわれる)、ポリアミック酸エステルや、ポリイミドの溶液からなるポリイミド系の液晶配向剤を、基板に塗布し成膜することで作製される。
また、基板面に対して液晶を平行配向又は傾斜配向させる場合は、成膜した後、更にラビングによる表面延伸処理が行われている。
【0003】
一方、基板に対して垂直に液晶を配向させる場合(垂直配向(VA)方式と呼ばれる)は、長鎖アルキルや環状基又は環状基とアルキル基の組み合わせ(例えば特許文献1参照)、ステロイド骨格(例えば特許文献2参照)などの疎水性基をポリイミドの側鎖に導入した液晶配向膜が用いられている。この場合、基板間に電圧を印加して液晶分子が基板に平行な方向に向かって傾く際に、液晶分子が基板法線方向から基板面内の一方向に向かって傾くようにする必要がある。このための手段として、例えば、基板上に突起を設ける方法、表示用電極にスリットを設ける方法、ラビングにより液晶分子を基板法線方向から基板面内の一方向に向けてわずかに傾けておく(プレチルトさせる)方法、さらには、あらかじめ液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、ポリイミド等の垂直配向膜と共に用いて、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することで、液晶をプレチルトさせる方法(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
近年、VA方式の液晶配向制御における突起やスリットの形成、及びPSA技術に代わるものとして偏光紫外線照射等による異方的光化学反応を利用する方法(光配向法)も提案されている。すなわち、光反応性を有する垂直配向性のポリイミド膜に、偏光紫外線照射し、配向規制能およびプレチルト角発現性を付与することにより、電圧印加時の液晶分子の傾き方向を均一に制御できることが知られている(特許文献4参照)。この場合も、従来の配向膜と同様に、耐久性に優れ、液晶のプレチルト角の制御に好適なポリイミド系の液晶配向膜が用いられている。ポリイミド系液晶配向膜は200℃以上の高温で焼成されることが一般的である。
【0005】
一方、液晶表示素子の基板を、薄くて軽量であるプラスチック基板を用いる検討も精力的になされている。この場合、プラスチック基板の耐熱性が低いため、液晶配向膜を作製する際の焼成を、より低温で行うことが必要になる。同様に、この焼成温度を低温にすることで、液晶表示素子の製造におけるエネルギーコストを削減することも求められている。
【0006】
低温での焼成を行った場合、配向膜材料が充分に硬化しない状態で硬化を終了せざるを得ないといった課題があり、信頼性の高い液晶表示素子を得ることが困難であった(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
一方、配向方向が異なる領域を複数形成(配向分割)するマルチドメイン化技術の需要が高まっているが、従来の製造法においては、複数の開口部を所定間隔で設けた露光マスクを用いて露光した後に、所定間隔分だけ露光マスクをずらして再度露光する必要があり、露光マスクのアライメントや複数の開口部の形成に高精度が要求され、製造工程が煩雑であり、改善が求められている。ここで、光分解型のポリイミドに垂直配向性基が結合したポリマーを用いるマルチドメイン液晶表示素子の製造方法が知られているが、非常に大きな光照射量が必要であり、製造効率が悪い(例えば、特許文献6、7及び8参照)。マルチドメイン配向膜の製造方法の例はさらに存在するが、どのような配向膜を用いれば発明が実施可能となるかが明らかではなかった(例えば、特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3-179323号公報
【文献】特開平4-281427号公報
【文献】特許第4504626号公報
【文献】特許第4995267号公報
【文献】特開平7-209633号公報
【文献】特開平11-95224号公報
【文献】特開2005-148442号公報
【文献】特開2005-316027号公報
【文献】特開2007-219191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、少ないマスク処理工程で、より簡便に、配向方向が異なる領域を複数形成(配向分割)し、視野角特性に優れたVAモード液晶表示素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の目的は、上記目的に加えて、向上した視野角特性を有するECB液晶表示素子及び該素子のための液晶配向膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の<X>を要旨とする発明を見出した。
<X> (A)成分として下記式(pa-1)で表される光配向性基と熱架橋性基Aとを有する重合体及び溶媒を含有するとともに、下記要件Z1及びZ2の少なくとも一方を満たす液晶配向剤を基板上に塗布し、乾燥及び焼成により硬化膜を形成する工程、
当該硬化膜に紫外線を斜め方向から照射する1回目の照射工程、並びに、
当該紫外線照射後の硬化膜に、当該1回目の照射工程とは異なる方向から紫外線照射を行う2回目の照射工程をこの順番で含み、
当該1回目の照射工程と2回目の照射工程の少なくとも一方は、遮光された領域と遮光されていない領域とを含むマスクを介して行われることを特徴とする、マルチドメイン液晶配向膜の製造方法。
Z1:(A)成分である重合体が、熱架橋性基Bをさらに有する。
Z2:(B)成分として、分子内に2個以上の熱架橋性基Bを有する化合物をさらに含有する。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Aは場合によりフッ素、塩素、シアノから選択される基によるか、又は炭素数1~5のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル残基(これは、場合により1個のシアノ基又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)で置換されている、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-チオフェニレン、2,5-フラニレン、1,4-若しくは2,6-ナフチレン又はフェニレンを表し、Rは単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-であり、Rは炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3~40の1価の有機基であり、Dは、酸素原子、硫黄原子又は-NR-(ここで、Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキルを表す)を表し、aは0~3の整数であり、*は結合位置を表す。
熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは、それぞれ独立に、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、水酸基、エポキシ部位含有基、オキセタニル基、チイラニル基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基からなる群から選ばれる有機基であって、熱架橋性基Aと熱架橋性基Bとが熱により架橋反応するように選択されてなり、ただし、熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは互いに同じでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、少ないマスク処理工程で、より簡便に、配向方向が異なる領域を複数形成(配向分割)し、視野角特性に優れたVAモード液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の照射工程を示す模式図である。Θは1回目の照射工程における照射角を、Φは2回目の照射工程における照射角を、Ψはチルト角を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のマルチドメイン液晶配向膜の製造方法は、(A)成分として上記式(pa-1)で表される光配向性基と熱架橋性基Aとを有する重合体及び溶媒を含有するとともに、下記要件Z1及びZ2の少なくとも一方を満たす液晶配向剤を基板上に塗布し、乾燥及び焼成により硬化膜を形成する工程、
当該硬化膜に紫外線を斜め方向から照射する1回目の照射工程、並びに、
当該紫外線照射後の硬化膜に、当該1回目の照射工程とは異なる方向から紫外線照射を行う2回目の照射工程をこの順番で含み、
当該1回目の照射工程と2回目の照射工程の少なくとも一方は、遮光された領域と遮光されていない領域とを含むマスクを介して行われることを特徴とする、マルチドメイン液晶配向膜の製造方法。
Z1:(A)成分である重合体が、熱架橋性基Bをさらに有する。
Z2:(B)成分として、分子内に2個以上の熱架橋性基Bを有する化合物をさらに含有する。
熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは、それぞれ独立に、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、水酸基、エポキシ部位含有基、オキセタニル基、チイラニル基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基からなる群から選ばれる有機基であって、熱架橋性基Aと熱架橋性基Bとが熱により架橋反応するように選択されてなり、ただし、熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは互いに同じでもよい。
【0016】
ここで、「分子内に2個以上」とは、例えばエポキシ基を2個以上など、同種の基を2個以上、分子内に含有する場合の他、例えばエポキシ基とチイラン基という組合せのように、異種の基を合計2個以上、分子内に含有する場合をも含む意である。「分子内に2個以上」は、好ましくは、同種の基を2個以上、分子内に含有するのがよい。
【0017】
本発明の液晶配向剤中に含有される(A)成分である重合体は、光に対して感度が高いため、低露光量の偏光紫外線照射においても、配向制御能を発現できる。
【0018】
また、(A)成分である重合体が熱架橋性基Aを含有するとともに、さらに熱架橋性基Bを成分中に含有することによって、液晶配向剤の焼成時間が短い場合でも(A)成分である重合体を含む架橋反応が可能となる。これにより、光配向性部位が光反応により異方性を発現した際に、液晶配向膜に異方性が残存(メモリー)しやすくなるため、液晶配向性を高め、且つ液晶のプレチルト角を発現することが可能となる。
【0019】
なお、上記式(pa-1)で表される光配向性基を有する部位(例えば、後述の式(a-1)で表される基)、熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは、いずれも重合体における側鎖になりうるものであることから、必要に応じて、「側鎖」と言い換えることもできる。
以下、本発明の各構成要件、につき詳述する。
【0020】
<(A)成分:特定重合体>
[式(pa-1)で表される光配向性基]
本発明において、分子内に上記式(pa-1)で表される光配向性を有する部位は、例えば下記式(a-1)で表すことができる。また、該部位は、下記式(a-1-m)で表されるモノマー由来の構造を挙げることができるがこれに限定されない。式中、Iは、下記式(pa-1)で表される1価の有機基である。
【0021】
【化2】
【0022】
式(pa-1)中、Aは場合によりフッ素、塩素、シアノから選択される基によるか、又は炭素数1~5のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル残基(これは、場合により1個のシアノ基又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)で置換されている、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-チオフェニレン、2,5-フラニレン、1,4-若しくは2,6-ナフチレン又はフェニレンを表し、Rは単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-であり、Rは炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3~40の1価の有機基であり、Dは、酸素原子、硫黄原子又は-NR-(ここで、Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキルを表す)を表し、aは0~3の整数であり、*はSとの結合位置を表す。
【0023】
上記式(a-1)又は(a-1-m)中、Sは、スペーサー単位を表し、Sの左の結合基は、第1及び第2の特定重合体の主鎖に、任意にスペーサーを介して結合することを示す。
【0024】
は、例えば下記式(Sp)の構造で表すことができる。
【0025】
【化3】
【0026】
式(Sp)中、
の左の結合はMへの結合を表し、
の右の結合はIへの結合を表し、
、W及びWは、それぞれ独立して、単結合、二価の複素環、-(CH-(式中、nは1~20を表す)、-OCH-、-CHO-、―COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCF-又は-C≡C-を表すが、これらの置換基において非隣接のCH基の一つ以上は独立して、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-Si(CH-O-Si(CH―、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-OCO-NR-、-NR-CO-NR-、-CH=CH-、-C≡C-又は-O-CO-O-(式中、Rは独立して水素又は炭素原子数1から5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す)で置換することができ、
及びAは、それぞれ独立して、単結合、2価のアルキル基、2価の芳香族基、2価の脂環式基、又は2価の複素環式基から選ばれる基であり、それぞれの基は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。
【0027】
式(a-1-m)中、Mは重合性基を表す。該重合性基として、(メタ)アクリレート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体のラジカル重合性基、及びシロキサンを挙げることができる。好ましくは(メタ)アクリレート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、アクリルアミドであるのがよい。
rは、1≦r≦3を満たす整数である。
【0028】
式(a-1-m)中、Mは、単結合、(r+1)価の複素環、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状アルキル基、(r+1)価の芳香族基、(r+1)価の脂環式基から選ばれる基であり、それぞれの基は無置換であるか又は一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、シアノ基、メチル基又はメトキシ基によって置換されていても良い。
【0029】
、A2、及びMにおける芳香族基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレンのような炭素数6~18の芳香族炭化水素を挙げることができる。A、A2、及びMにおける脂環式基としては、例えばシクロヘキサン、ビシクロヘキサンのような炭素数6~12の脂環式炭化水素を挙げることができる。A、A2、及びMにおける複素環としては、例えばピリジン、ピペリジン、ピペラジン等の窒素含有複素環を挙げることができる。A、Aにおけるアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状アルキル基等を挙げることができる。
【0030】
良好な垂直配向制御能と安定なプレチルト角を発現し得る観点から、(a-1)の構造として、上記(pa-1)で表される基、又は、下記(pa-1-a)で表される基を挙げることができる。また、該部位は、下記式(pa-1-ma)で表されるモノマー由来の構造を挙げることができるがこれに限定されない。
【0031】
【化4】
【0032】
式(pa-1-a)又は(pa-1-ma)中、M、M、及びSは、上述と同じ定義である。
Zは酸素原子、または硫黄原子である。
及びXは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素数1~3のアルキル基である。
は単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-である。
は2価の芳香族基、2価の脂環式基、又は2価の複素環式基である。
は単結合、酸素原子、-COO-または-OCO-である。
は炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3~40の1価の有機基である。
は炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、フッ素原子またはシアノ基、好ましくはメチル基、メトキシ基又はフッ素原子である。
aは0~3の整数であり、bは0~4の整数である。
【0033】
式(pa-1-a)又は(pa-1-ma)中、Sの炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基として、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基が好ましい。
【0034】
の2価の芳香族基として、例えば1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン基等を挙げることができる。
【0035】
の2価の脂環式基として、例えばトランス-1,4-シクロヘキシレン、トランス-トランス-1,4-ビシクロヘキシレン等を挙げることができる。
【0036】
の2価の複素環式基として、例えば1,4-ピリジレン基、2,5-ピリジレン基、1,4-フラニレン基、1,4-ピペラジン基、1,4-ピペリジン基等を挙げることができる。
【0037】
は、炭素数1~8のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~6のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~4のアルキレン基であるのがよい。
【0038】
の2価の芳香族基として、例えば1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-フェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができる。
【0039】
の2価の脂環式基として、例えばトランス1,4-シクロヘキシレン、トランス-トランス-1,4-ビシクロヘキシレン等を挙げることができる。
【0040】
の2価の複素環式基として、例えば1,4-ピリジレン基、2,5-ピリジレン基、1,4-フラニレン基、1,4-ピペラジン基、1,4-ピペリジン基等を挙げることができる。
【0041】
は、1,4-フェニレン基、トランス1,4-シクロヘキシレン、トランス-トランス-1,4-ビシクロヘキシレンであるのがよい。
【0042】
の炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、例えば炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を挙げることができ、このアルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子により置換されていてもよい。かかるアルキル基の例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ラウリル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、4,4,4-トリフロロブチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、2-(パーフルオロオクチル)エチル基、2-(パーフルオロデシル)エチル基等を挙げることができる。
【0043】
の脂環式基を含む炭素数3~40の1価の有機基としては、例えばコレステニル基、コレスタニル基、アダマンチル基、下記式(Alc-1)または(Alc-2)(式中、Rは、それぞれ、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、炭素数1~20のアルキル基はフッ素原子で置換されていてもよく、*は結合位置を示す)で表される基等を挙げることができる。
【0044】
【化5】
【0045】
上記式(pa-1-ma)で表されるモノマーとして、式(paa-1-ma1)~(paa-1-ma18)で表される構造を挙げることができるがこれらに限定されない。なお、式中、「E」は、E体であることを表し、「t」は、シクロヘキシル基がトランス型であることを表す。
【0046】
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
[熱架橋性基A及び熱架橋性基B]
熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは、それぞれ独立に、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、水酸基、エポキシ部位含有基、オキセタニル基、チイラニル基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基からなる群から選ばれる有機基であって、熱架橋性基Aと熱架橋性基Bとが熱により架橋反応するように選択されてなり、ただし、熱架橋性基A及び熱架橋性基Bは互いに同じでもよい。
【0049】
このような熱架橋性基Aと熱架橋性基Bとの組み合わせとしては、一方がカルボキシル基であり、もう一方がエポキシ基、オキセタニル基またはチイラニル基である組み合わせ、一方がヒドロキシ基であり、他方がブロックイソシアネート基である組み合わせ、一方がフェノール性ヒドロキシ基であり、他方がエポキシ基、オキセタニル基またはチイラニル基である組み合わせ、一方がカルボキシル基であり、他方がブロックイソシアネート基である組み合わせ、一方がアミノ基であり、他方がブロックイソシアネート基である組み合わせ、両者がともにN-アルコキシメチルアミドである組み合わせなどである。より好ましい組み合わせは、カルボキシル基とエポキシ基、ヒドロキシ基とブロックイソシアネート基などである。
【0050】
かかる熱架橋性基Aを(A)成分である重合体に導入するには、熱架橋性基Aを有するモノマーを共重合させればよい。
【0051】
また、本発明に用いられる液晶配向剤が要件Z1を満足する場合、(A)成分である重合体を製造する際に、熱架橋性基Aを有するモノマーおよび熱架橋性基Bを有するモノマーの双方を共重合すればよい。
【0052】
熱架橋性基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N-(カルボキシフェニル)マレイミド、N-(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、及びN-(カルボキシフェニル)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するモノマー;
【0053】
2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2-(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5-アクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン、及び5-メタクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン等のヒドロキシ基を有するモノマー;
【0054】
ヒドロキシスチレン、N-(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)マレイミド、及びN-(ヒドロキシフェニル)マレイミド等のフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー;
【0055】
アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、及びアミノプロピルメタクリレート等のアミノ基を有するモノマー;
【0056】
N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換された(メタ)アクリルアミド化合物;
【0057】
アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-メチルグリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4-エポキシブチル、メタクリル酸3,4-エポキシブチル、アクリル酸6,7-エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロへキシルメチル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等のエポキシ部位含有基を有するモノマー;
【0058】
3-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-トリフルオロメチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-ペンタフルオロエチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2,2-ジフルオロオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2,2,4-トリフルオロオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2,2,4,4-テトラフルオロオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2-エチルオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-3-エチルオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2-トリフルオロメチルオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2-ペンタフルオロエチルオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2-フェニルオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2,2-ジフルオロオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2,2,4-トリフルオロオキセタン、3-(2-アクリロイルオキシエチル)-2,2,4,4-テトラフルオロオキセタン等のアクリル酸エステル;3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-トリフルオロメチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-ペンタフルオロエチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2,2-ジフルオロオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2,2,4-トリフルオロオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2,2,4,4-テトラフルオロオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-エチルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-3-エチルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-トリフルオロメチルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ペンタフルオロエチルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-フェニルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2,2-ジフルオロオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2,2,4-トリフルオロオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2,2,4,4-テトラフルオロオキセタン等のオキセタニル基を有するモノマー;
【0059】
2,3-エピチオプロピルアクリレートまたはメタクリレート、及び2-または3―または4-(β-エピチオプロピルチオメチル)スチレン、2-または3―または4-(β-エピチオプロピルオキシメチル)スチレン、2-または3―または4-(β-エピチオプロピルチオ)スチレン、2-または3―または4-(β-エピチオプロピルオキシ)スチレン等のチイラニル基を有するモノマー;
【0060】
アクリル酸2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチル、アクリル酸2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチル、メタクリル酸2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ)エチル等のブロックイソシアネート基を有するモノマー;等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドとメタクリルアミドの双方を意味する。
【0061】
また、本発明においては、特定共重合体を得る際に、上記式(a-1-m)で表される光配向性基を有するモノマー及び熱架橋性基A及び必要に応じて熱架橋性基Bを有するモノマーの他に、これらのモノマーと共重合可能なその他もモノマーを併用することができる。
【0062】
そのようなその他モノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド化合物、窒素含有芳香族複素環基と重合性基とを有するモノマーが挙げられる。
【0063】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0064】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0065】
前記(メタ)アクリル酸アミド化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0066】
前記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、及び3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0067】
前記スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、及びブロモスチレン等が挙げられる。
【0068】
前記マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0069】
窒素含有芳香族複素環は、下記式[N-a]~[N-b](式中、Zは炭素数1~5の直鎖または分岐アルキル基である)からなる群から選ばれる構造を少なくとも1個、好ましくは1個~4個含有する芳香族環式炭化水素であるのがよい。
【0070】
【化8】
【0071】
具体的には、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、1-ピラゾリン環、イソキノリン環、チアジアゾール環、ピリダジン環、トリアジン環、ピラジン環、フェナントロリン環、キノキサリン環、ベンゾチアゾール環、オキサジアゾール環、アクリジン環などを挙げることができる。さらに、これら窒素含有芳香族複素環の炭素原子には、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。これらのうち、例えば、ピリジン環が挙げられる。
【0072】
窒素含有芳香族複素環基と重合性基とを有するモノマーとして、例えば、2-(2-ピリジルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-ピリジルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ピリジルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0073】
本発明に用いるその他のモノマーは1種類単独で用いてもよく、また2種以上のモノマーを組合せて用いてもよい。
【0074】
本発明の重合体に含有させる上記式(pa-1)で表される光反応性の部位は1種類単独で用いてもよく、また2種以上の部位を組合せて用いてもよい。
上記式(pa-1)で表される光反応性の部位は、(A)成分である重合体の全繰り返し単位の5~50mol%、10~40mol%、又は15~35mol%の割合で含有されることが好ましい。
【0075】
本発明の重合体に含有させる熱架橋性基を有する部位は熱架橋性基Aを単独で用いてもよく、また熱架橋性基Aと熱架橋性基Bを含む2種以上の部位を組合せて用いてもよい。
熱架橋性基を有する部位の導入量は、(A)成分である重合体の全繰り返し単位の50~95mol%、60~90mol%、又は65~85mol%であることが好ましい。
【0076】
上記その他のモノマー由来の構造の含有量は、(A)成分である重合体の全繰り返し単位の0~40mol%、0~30mol%、又は0~20mol%含まれることが好ましい。
【0077】
<特定重合体の製造方法>
本発明の液晶配向剤に含有される(A)成分の特定重合体は、上記の式(pa-1)で表される光配向性基を有するモノマー、上記の熱架橋性基Aを有するモノマー、及び、所望により上記の熱架橋性基Bを有するモノマーを共重合することによって得られる。また、上記その他のモノマーと共重合することができる。
【0078】
本発明における(A)成分の特定重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0079】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシシクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ 2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。
このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0080】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン等、公知の化合物を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0081】
(A)成分の特定重合体の重合反応に用いる溶媒としては、生成した高分子が溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述の<溶媒>の項に記載の溶媒、例えば、N-アルキル-2-ピロリドン類、ジアルキルイミダゾリジノン類、ラクトン類、カーボネート類、ケトン類、式(Sv-1)で表される化合物及び式(Sv-2)で表される化合物、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の溶媒に混合して使用してもよい。
また、ラジカル重合において溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
【0082】
ラジカル重合の際の重合温度は30~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、モノマー濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%であるのがよい。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1~10mol%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0083】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0084】
(A)成分の特定重合体の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2000~1000000が好ましく、より好ましくは、5000~100000である。
【0085】
<(B)成分>
本発明に用いられる液晶配向剤が要件Z2を満たす場合には、(B)成分として架橋剤を含有する。(B)成分としては、熱架橋性基Bを2個以上有する架橋剤が挙げられる。
【0086】
(B)成分である架橋剤としては、エポキシ化合物、アミノ基を2個以上有する化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物、フェノプラスト化合物、ブロックイソシアネート化合物等の低分子化合物、N-アルコキシメチルアクリルアミドの重合体、エポキシ基を有する化合物の重合体、イソシアネート基を有する化合物の重合体等の重合体が挙げられる。
【0087】
上述したエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0088】
アミノ基を2個以上有する化合物の例としては、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、芳香族-脂肪族ジアミン、脂肪族ジアミン等のジアミンが挙げられる。
【0089】
脂環式ジアミン類の例としては、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0090】
芳香族ジアミン類の例としては、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノ-2-メトキシベンゼン、2,5-ジアミノ-p-キシレンおよび1,3-ジアミノ-4-クロロベンゼンなどが挙げられる。
【0091】
芳香族-脂肪族ジアミンの例としては、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミン、3-アミノ-N-メチルベンジルアミン、4-アミノ-N-メチルベンジルアミン、3-アミノフェネチルアミン、4-アミノフェネチルアミン、3-アミノ-N-メチルフェネチルアミン、4-アミノ-N-メチルフェネチルアミン、3-(3-アミノプロピル)アニリン、4-(3-アミノプロピル)アニリン、3-(3-メチルアミノプロピル)アニリン、4-(3-メチルアミノプロピル)アニリン、3-(4-アミノブチル)アニリン、4-(4-アミノブチル)アニリン、3-(4-メチルアミノブチル)アニリン、4-(4-メチルアミノブチル)アニリン、3-(5-アミノペンチル)アニリン、4-(5-アミノペンチル)アニリン、3-(5-メチルアミノペンチル)アニリン、4-(5-メチルアミノペンチル)アニリン、2-(6-アミノナフチル)メチルアミン、3-(6-アミノナフチル)メチルアミン、2-(6-アミノナフチル)エチルアミン、3-(6-アミノナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。
【0092】
脂肪族ジアミン類の例としては、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,6-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、1,7-ジアミノ-2,5-ジメチルヘプタン、1,7-ジアミノ-4,4-ジメチルヘプタン、1,7-ジアミノ-3-メチルヘプタン、1,9-ジアミノ-5-メチルヘプタンなどが挙げられる。
【0093】
メチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、及びアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
【0094】
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、および1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名:サイメル(登録商標)1170、パウダーリンク(登録商標)1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、DIC(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J-300S、同P-955、同N)等が挙げられる。
【0095】
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としては、例えば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製(商品名:サイメル(登録商標)1123)、(株)三和ケミカル製(商品名:ニカラック(登録商標)BX-4000、同BX-37、同BL-60、同BX-55H)等が挙げられる。
【0096】
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MW-30、同MW-22、同MW-11、同MS-001、同MX-002、同MX-730、同MX-750、同MX-035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MX-45、同MX-410、同MX-302)等が挙げられる。
【0097】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物及びベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物およびベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)303(三井サイテック(株)製)等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)1123(三井サイテック(株)製)等が挙げられる。
【0098】
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、VESTANAT B1358/100、VESTAGON BF 1540(以上、イソシアヌレート型変性ポリイソシアネート、デグサジャパン(株)製)、タケネート(登録商標)B-882N、同B-7075(以上、イソシアヌレート型変性ポリイソシアネート、三井化学(株)製)等が挙げられる。
【0099】
フェノプラスト化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられるが、フェノプラスト化合物は以下の化合物例に限定されるものではない。
【0100】
【化9】
【0101】
前記分子末端にヒドロキシアルキルアミド基を2個以上有する化合物の具体的な例としては、例えば下記の化合物やPrimid XL-552、Primid SF-4510が挙げられる。
【0102】
【化10】
【0103】
ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、コロネートAPステーブルM、コロネート2503、2515、2507、2513、2555、ミリオネートMS-50(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートB-830、B-815N、B-820NSU、B-842N、B-846N、B-870N、B-874N、B-882N(以上、三井化学(株)製)等を挙げることができる。
【0104】
さらに、上述したN-アルコキシメチルアクリルアミドの重合体としては、例えば、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーが挙げられる。
【0105】
そのようなポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(N-ブトキシメチルアクリルアミド)、N-ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N-エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体、及びN-ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2-ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、さらに好ましくは3,000乃至50,000である。
【0106】
エポキシ基を有する化合物の重合体としては、例えば、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等のエポキシ基を有する化合物を使用して製造されるポリマーが挙げられる。
【0107】
そのようなポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、さらに好ましくは3,000乃至50,000である。
【0108】
上述したイソシアネート基を有する化合物の重合体としては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート(カレンズMOI[登録商標]、昭和電工(株)製)、2-イソシアナトエチルアクリレート(カレンズAOI[登録商標]、昭和電工(株)製)等のイソシアネート基を有する化合物、または2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルメタクリレート(カレンズMOI-BM[登録商標]、昭和電工(株)製)、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(カレンズMOI-BP[登録商標]、昭和電工(株)製)等のブロックイソシアネート基を有する化合物を使用して製造されるポリマーが挙げられる。
【0109】
そのようなポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(2-イソシアナトエチルアクリレート)、ポリ(2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルメタクリレート)、2-イソシアナトエチルメタクリレートとスチレンとの共重合体、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000乃至200,000であり、より好ましくは3,000乃至150,000であり、さらに好ましくは3,000乃至50,000である。
【0110】
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0111】
本発明に用いる液晶配向剤に(B)成分の架橋剤を含有させる場合の含有量は、(A)成分である樹脂の100質量部に基づいて1質量部乃至100質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部乃至80質量部である。
【0112】
[液晶配向剤の調製]
本発明に用いられる液晶配向剤は、液晶配向膜の形成に好適となるように塗布液として調製されることが好ましい。すなわち、本発明の液晶配向剤は、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。ここで、その樹脂成分とは、既に説明した(A)成分である特定重合体である。その際、特定重合体の含有量は、液晶配向剤全体に対して0.5~20質量%が好ましく、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは1~15質量%、特に好ましくは1~10質量%であるのがよい。
【0113】
<溶媒>
本発明に用いられる液晶配向剤に含有する溶媒は、(A)成分及び必要に応じて有する(B)成分を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。液晶配向剤に含有する溶媒は1種でも良く、2種類以上混合して使用しても良い。また、(A)成分や(B)成分を溶解させる溶媒でなくとも、(A)成分や(B)成分を溶解させる溶媒と併用することができる。この場合、(A)成分や(B)成分を溶解させない溶媒の表面エネルギーが(A)成分や(B)成分を溶解させる溶媒よりも低いと、液晶配向剤の基板への塗布性を良くすることができるため好ましい。
【0114】
具体例として、水、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどのN-アルキル-2-ピロリドン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどのジアルキルイミダゾリジノン類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどのラクトン類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、イソアミルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類、下記式(Sv-1)で表される化合物及び下記式(Sv-2)で表される化合物、酢酸4-メチル-2-ペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2-メチルシクロヘキシル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、ジイソブチルカルビノール、ジイソペンチルエーテル等をあげることができる。
【0115】
【化11】
【0116】
式(Sv-1)~(Sv-2)中、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基であり、Xは酸素原子又は-COO-であり、X2は単結合又はカルボニル基であり、Rは炭素数2~4のアルカンジイル基である。nは1~3の整数である。nが2又は3の場合、複数のRは同じでも異なっていてもよい。Zは炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基である)等が挙げられる。
【0117】
式(Sv-1)中、Y及びYの炭素数1~6の1価の炭化水素基として、例えば炭素数1~6の1価の鎖状炭化水素基、炭素数1~6の1価の脂環式炭化水素基及び炭素数1~6の1価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭素数1~6の1価の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~6のアルキル基等を挙げることができる。Rのアルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0118】
式(Sv-2)中、Zの炭素数1~6の2価の炭化水素基として、例えば炭素数1~6のアルカンジイル基等を挙げることができる。
及びYの炭素数1~6の1価の炭化水素基としては、炭素数1~6の1価の鎖状炭化水素基、炭素数1~6の1価の脂環式炭化水素基及び炭素数1~6の1価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭素数1~6の1価の鎖状炭化水素基としては炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。
【0119】
式(Sv-1)で表される溶媒の具体例としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングルコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メトキシブチルアセテート、3-エトキシブチルアセタート等を;
【0120】
(Sv-2)で表される溶媒の具体例としては、例えばグリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、エチル-3-エトキシプロピオネート、メチル-3-メトキシプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチルなどをそれぞれ挙げることができる。
【0121】
前記溶媒としては沸点が80~200℃にあることが好ましい。より好ましくは、80℃~180℃であり、好ましい溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラメチル尿素、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、プロパノール、イソプロパノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、イソアミルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸4-メチル-2-ペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2-メチルシクロヘキシル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、ジイソブチルカルビノール、ジイソペンチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングルコールモノアセタート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、 プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、エチル-3-エトキシプロピオネート、メチル-3-メトキシプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸エチル、等を挙げることができる。
沸点がこの範囲であることは、特に、前記溶媒を含む液晶配向剤が後述するプラスチック基板上に塗布される場合に好ましい。
【0122】
<他の成分>
本発明に用いられる液晶配向剤は、上記(A)成分及び(B)成分以外の他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、架橋触媒や、液晶配向剤を塗布した際の、膜厚均一性や表面平滑性を向上させる化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物、等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0123】
<架橋触媒>
本発明に用いられる液晶配向剤に、熱架橋性基Aと熱架橋性基Bとの反応を促進させる目的で、架橋触媒を添加してもよい。このような架橋触媒としては、p-トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、m-キシレン-2-スルホン酸、4-エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2-エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸またはその水和物や塩等が挙げられる。熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p-ニトロベンジルトシレート、o-ニトロベンジルトシレート、1,2,3-フェニレントリス(メチルスルホネート)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p-トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p-トルエンスルホン酸エチルエステル、p-トルエンスルホン酸プロピルエステル、p-トルエンスルホン酸ブチルエステル、p-トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、p-トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp-トルエンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、2-ヒドロキシブチルp-トルエンスルホネート、N-エチル-p-トルエンスルホンアミド等が挙げられる。
【0124】
[膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物]
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
具体的には、例えば、エフトップ(登録商標)301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R-30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(旭硝子社製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤の使用割合は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~2質量部、より好ましくは0.01質量部~1質量部である。
【0125】
[液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物]
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物などが挙げられる。
例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン含有化合物が挙げられる。
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、重合体組成物に含有される樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部~20質量部である。
【0126】
ある実施形態において、光配向性基の光反応性を向上させるために添加剤として、光増感剤を用いることもできる。具体例として、芳香族2-ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタール等を挙げることができる。
【0127】
本発明に用いられる液晶配向剤において、前述の樹脂成分は、全てが上述した特定重合体であってもよいが、それら以外の他の重合体(以下、「その他の重合体」ともいう)が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中におけるその他の重合体の含有量として、(A)成分とその他の重合体の合計100質量部に対し、5~95質量部、又は10~90質量部を挙げることができる。
そのような他の重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸、ポリアミック酸エステルやポリイミド等であって、上記特定重合体の構成要件のうち、少なくとも1つを満たさない重合体が挙げられる。
【0128】
当該他の重合体としては、ポリイミド及びその前駆体(以下、ポリイミド成分ともいう)であって、(A)成分である重合体と表面エネルギーが近い重合体が好ましい。(A)成分のようなアクリル成分は基本的に極性が低く、表面エネルギーが低い。一方、ポリイミド成分は極性が高く、表面エネルギーが高い。しかし、この二成分の表面エネルギーの差異が大きすぎると、うまく相溶せず凝集が発生することにより、凹凸のある膜ができたり、ハジキやムラが発生することによりプロセスマージンが狭くなってしまうといった問題を生じる恐れがある。そこで、ポリイミド成分の極性を低くすることにより、表面エネルギーをアクリル成分よりは高いものの、差異が小さい値に制御することができる。ポリイミド成分の極性を下げる方法として、化学的イミド化をしたのちに(A)成分と混ぜる方法や、側鎖を導入する方法がある。
【0129】
そのような重合体としては、公知のテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸誘導体と公知のジアミンとを重合したのち、化学的イミド化して得られる重合体、側鎖を有するジアミンを用いて得られるポリイミド前駆体、それをイミド化して得られるポリイミド、ターシャリーブトキシカルボニルオキシ基を有するジアミンを用いて得られるポリイミド前駆体、それをイミド化して得られるポリイミドなどが挙げられる。このような側鎖や化学的イミド化により、表面エネルギーを(A)成分であるアクリルポリマーに近づけることができるため、液晶配向剤を塗布、焼成して硬化膜を形成した際に、凝集等が起こらず、平坦な硬化膜を与えることができる。側鎖を有するジアミンとしては、国際特許出願公開WO2016/125870の段落[0023]~[0039]に記載の、式(2)、(3)、(4)、(5)で表されるジアミン及びその具体例としての式[A-1]~[A-32]で表されるジアミンが挙げられる。ターシャリーブトキシカルボニルオキシ基を有するジアミンとしては、国際特許出願公開WO2017/119461の段落[0011]~[0034]に記載の式[A-1]、[A-2]、[A-3]の構造を有するジアミンおよびその具体例として例示されているジアミンが挙げられる。
【0130】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、又は一部の垂直配向用途などでは配向処理無しで液晶配向膜とすることができる。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル及びトリアセチルセルロースなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。
基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜などを用いることができる。
【0131】
<塗膜形成工程>
本発明の液晶配向剤の塗布方法は特に限定されないが、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット、ディップコーティング、ロールコーティング、スリットコーティング、スピンコーティングなどがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。これらの方法により基板上に塗布した後、ホットプレートなどの加熱手段により溶媒を蒸発させて、塗膜を形成させることができる。
【0132】
液晶配向剤を塗布した後の焼成は、40~300℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは40℃~250℃であり、より好ましくは40℃~230℃である。プラスチック基板からなる透明基板を用いる場合は、40~150℃とすることが好ましく、80~140℃とすることがより好ましい。焼成時間は、0.1~15分とすることが好ましく、1~10分とすることがより好ましい。
基板上に形成される塗膜の膜厚は、好ましくは5~1,000nmであり、より好ましくは10~500nm又は10~300nmである。この焼成はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などで行うことができる。
【0133】
<光照射工程>
本発明における光照射工程は、前記塗膜形成工程で得られた硬化膜に紫外線を斜め方向から照射する1回目の照射工程、並びに、当該紫外線照射後の硬化膜に、当該1回目の照射工程とは異なる方向から紫外線照射を行う2回目の照射工程をこの順番で含み、当該1回目の照射工程と2回目の照射工程の少なくとも一方は、遮光された領域と遮光されていない領域とを含むマスクを介して行われる。
【0134】
光照射による配向処理で照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線、可視光線などを挙げることができる。これらのうち、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光は偏光であっても非偏光であってもよい。偏光としては、直線偏光を含む光を使用することが好ましい。
【0135】
光の照射量は、0.1mJ/cm以上1,000mJ/cm未満とすることが好ましく、1~500mJ/cmとすることがより好ましく、2~200mJ/cmとすることがさらに好ましい。
【0136】
紫外線の照射方向は、通常、基板法線に対して1°から89°であるが、好ましくは20°~70°、特に好ましくは30°~60°である。この角度が小さすぎる場合はプレチルト角が小さくなるという問題があり、大きすぎる場合は照射装置の設計が難しくなるという問題がある。
【0137】
照射方向を上記の角度に調節する方法としては、基板自体を傾ける方法と、光源を傾ける方法があるが、光源自体を傾けるのがスループットの観点からより好ましい。
【0138】
なお、本発明は、特定の組成物を用いることにより、ある方向からの紫外線の照射により形成されたプレチルト角を、別方向からの紫外線の照射によりキャンセルし、異なるプレチルト角を形成することができる。
これにより、例えば紫外線の全面露光により特定方向のプレチルト角を形成したあと、マスクを介して別方向から紫外線を照射することにより、簡便に、配向方向が異なる領域を複数形成(配向分割)することが可能となり、効率的にマルチドメイン液晶表示素子を製造することが可能である。
【0139】
本発明の製造方法で得られるマルチドメイン液晶配向膜は、プレチルト角が、垂直配向モードに適したプレチルト角として90°からマイナス0.1°~マイナス10°傾いた領域1と、90°からプラス0.1°~プラス10°傾いた領域2を有することが好ましい。すなわち、プレチルト角として80°~89.9°の領域1および90.1°~100°の領域2を有することが好ましく、85°~89°の領域1および91°~95°の領域2を有することがさらに好ましい。
【0140】
なお、上記領域1および領域2を形成する際、1回目の照射工程で領域1を形成し、2回目の照射工程で領域2を形成してもよく、1回目の照射工程で領域2を形成し、2回目の照射工程で領域1を形成してもよい。1回目の照射工程がマスクを介さずに行われる場合、二回目の照射工程における光の照射量は、1回目の照射工程における光の照射量よりも多い方が好ましい。一方、1回目の照射工程がマスクを介して行われる場合、2回目の照射工程における光の照射量は、1回目の照射工程における光の照射量よりも少ない方が好ましい。
【0141】
本発明によれば、1回目の照射工程と2回目の照射工程でともにパターン状のマスクを用いた場合、マスクがずれた場合であっても、2回目の照射領域では1回目の照射領域のチルトをキャンセルして、2回目の照射によるチルト角に書き換えることができるため、マスクがずれた場合に「暗線」となってしまうことがない。
【0142】
本発明の液晶表示素子は、本発明で得られたマルチドメイン液晶配向膜を用いて、通常の方法により作製することができ、その作製方法は特に限定されるものではない。 上記一対の基板が、適正なギャップを介して対向し、基板間に挟持される液晶の厚さを均一とする目的で、基板間にスペーサーを配置することが好ましい。このスペーサーとしては、旧来からの散布型スペーサー、感光性のスペーサー形成用組成物から形成されたスペーサーなどの公知のスペーサー材料を使用することができるほか、液晶硬化物からなる層に形成した凹凸をスペーサーとして使用することも可能である。
【0143】
<液晶挟持工程>
基板間に液晶を挟持して液晶セルを構成するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。第1の方法として、各液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して一対の基板を対向配置し、該一対の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面および適当なシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造する方法を挙げることができる。
【0144】
第2の方法として、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数カ所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造する方法(ODF(One Drop Fill)法)を挙げることができる。
【0145】
液晶としては、用途に応じて正や負の誘電率異方性を有するフッ素系液晶やシアノ系液晶、また加熱および光照射のうちの少なくとも1種の処理によって重合する液晶化合物または液晶組成物(以下、重合性液晶又は硬化性液晶組成物ともいう)を用いても良い。
ある実施形態において、前記液晶配向剤の塗膜を形成する工程が、ロール・ツー・ロール方式によって行われてもよい。ロール・ツー・ロール方式によって行われると、液晶表示素子の製造工程を簡略化し、もって製造コストを削減することが可能となる。
そして、前記液晶セルの外側両面に偏光板を貼付することにより、液晶表示素子を得ることができる。
【0146】
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
上記のようにして本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、液晶配向性が良好であり、プレチルト角発現能にも優れ、且つ高い信頼性が得られる。また、本発明の方法によって製造された液晶表示素子は優れた表示特性を有する。
【実施例
【0147】
実施例において使用した化合物の構造を以下に示す。
なお、式中、「t」は、シクロヘキシル基がトランス型であることを示す。
【0148】
【化12】
【0149】
MA-1、MA-2、MA-3、MA-4は光配向性モノマーであり、CR-1、CR-2、MOI-BP、HEMA、MAAは熱架橋性モノマーである。
【0150】
【化13】
【0151】
X-1、X-2、X-3はテトラカルボン酸二無水物モノマーである。
【0152】
【化14】
【0153】
X-4は側鎖ジアミンモノマーであり、X-5、X-6はその他ジアミンモノマーである。
【0154】
実施例等で使用した有機溶媒の略号は以下の通りである。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
CHN:シクロヘキサノン
実施例等で使用した重合開始剤の略称は以下の通りである。
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0155】
<ポリマー分子量測定>
合成例におけるポリマーの分子量はセンシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC-7200、Shodex社製カラム(KD-803、KD-805)を用い以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:DMF(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、THFが10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約9000,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量約12,000、4,000、1,000)。
【0156】
<参考例1>
MA-1(4.95g、12.0mmol)とMOI-BP(7.04g、28.0mmol)をCHN(69.8g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.33g、2.0mmol)を加え再び脱気を行った。この後55℃で13時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノールと純水=5/5の混合溶媒(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(A)を得た。このポリマーの数平均分子量は44200、重量平均分子量は141800であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(A)(1.5g)にCHN(18.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にCR-1(0.15g)及びPGME(18.0g)を加え攪拌することにより液晶配向剤(A1)を得た。
【0157】
<実施例1-0>
[液晶セルの作製]
参考例1で得られた液晶配向剤(A1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板のITO面にスピンコートし、40℃のホットプレートで300秒間乾燥を行った。次いで、120℃のホットプレートで10分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。その後、配向膜の塗膜面に偏光板を介して、照射強度4.3mW/cmの313nmの直線偏光紫外光を基板法線方向から40°傾斜した角度から50mJ/cm照射することで、液晶配向膜付き基板を得た。照射する313nmの直線偏光紫外光は高圧水銀ランプから出射される紫外光を313nmのバンドパスフィルターとブリュースター偏光板を通過させることで取り出した。
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、シール剤(三井化学製、XN-1500T)を塗布した。次いで、もう一方の基板を、液晶配向膜面が向き合い、入射する偏光紫外光の照射方向が、対向する基板に入射した紫外光の照射方向に対して180°になるようにして張り合わせた後、120℃で90分シール剤を熱硬化させることで空セルを作製した。この空セルにネガ型液晶(メルク社製、MLC-3022)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
【0158】
[プレチルト角の評価]
液晶セルのプレチルト角の測定はAxo Metrix社製の「AxoScan」を用いてミューラーマトリックス法により測定した。結果を表1にまとめる。
【0159】
[液晶配向性の評価]
液晶セル作製後、120℃で1時間等方相処理を行った後に偏光顕微鏡にてセル観察を行い、光抜けやドメイン発生などの配向不良が無い場合や液晶セルに電圧印可した際に均一な液晶の駆動が得られる場合を配向性良好とした。結果を表1にまとめる。
【0160】
<実施例1-1>
実施例1-0の[液晶セルの作製]において、基板法線方向から40°傾斜した角度から直線偏光紫外線を50mJ/cm照射した後、さらに基板法線方向から40°傾斜した角度から50mJ/cm照射を行った以外、実施例1-0と同様な方法により、液晶セルを得た。なお、1回目の照射と2回目の照射は、それぞれ法線方向から反対方向に40°傾斜させた。また、実施例1-0と同様な方法でプレチルト角と液晶セル配向性を評価した。
【0161】
<実施例1-2、1-3>
実施例1-1の[液晶セルの作製]において、2回目の偏光紫外線照射量を100mJ/cm(実施例1-2)、150mJ/cm(実施例1-3)に変更した以外、実施例1-1と同様な方法により、液晶セルを得た。また、実施例1-0と同様な方法でプレチルト角と液晶セル配向性を評価した。
【0162】
<参考例2>
MA-1(4.95g、12.0mmol)とMOI-BP(3.52g、14.0mmol)、HEMA(1.82g、14.0mmol)をCHN(60.2g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.33g、2.0mmol)を加え再び脱気を行った。この後55℃で13時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノールと純水=5/5の混合溶媒(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(B)を得た。このポリマーの数平均分子量は33800、重量平均分子量は123500であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(B)(1.5g)にCHN(18.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にPGME(18.0g)を加え攪拌することにより液晶配向剤(B1)を得た。
【0163】
<参考例3>
MA-1(3.30g、8.0mmol)とMAA(2.75g、32.0mmol)をCHN(36.2g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.33g、2.0mmol)を加え再び脱気を行った。この後55℃で13時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノールと純水=5/5の混合溶媒(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(C)を得た。このポリマーの数平均分子量は51500、重量平均分子量は143000であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(C)(1.5g)にCHN(18.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にCR-2(0.45g)とPGME(18.0g)を加え攪拌することにより液晶配向剤(C1)を得た。
【0164】
<参考例4>
X-4(2.28g、3.00mmol)、X-5(1.22g、4.00mmol)、X-6(1.45g、3.00mmol)及びX-1(2.23g、6.00mmol)をNMP(27.2g)中に溶解し、60℃で5時間反応させた後、X-2(1.00g、2.00mmol)及びX-3(0.87g、2.00mmol)とNMP(9.1g)を加え、40℃で10時間反応させポリアミック酸ポリマー溶液を得た。
ポリアミック酸ポリマー溶液(50g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(8.8g)及びピリジン(2.7g)を加え、75℃で2.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(700ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミドポリマー粉末を得た。このポリイミドポリマーのイミド化率は71%であり、数平均分子量は13000、重量平均分子量は42000であった。
得られたポリイミド粉末(6.0g)にNMP(44.0g)を加え、70℃にて20時間攪拌して溶解させた。この溶液にNMP(10.0g)、BCS(40.0g)を加え、室温で5時間攪拌することによりポリイミドポリマー溶液(H1)を得た。
得られたポリイミドポリマー溶液(H1)(14.0g)と、参考例2で得られた液晶配向剤(B1)(6.0g)を室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(D1)を得た。
【0165】
<参考例5>
参考例(4)で得られたポリイミドポリマー溶液(H1)(14.0g)と、参考例3で得られた液晶配向剤(C1)(6.0g)を室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(E1)を得た。
【0166】
<実施例2-0~5-3>
参考例1で得られた液晶配向剤(A1)の代わりに、表1に記載の液晶配向剤を用いた以外は、実施例1-0~1-3と同様に試験を行なった。評価結果を表1に記す。
【0167】
<参考例6>
MA-2(13.74g、24.0mmol)とMA-3(7.02g、16.0mmol)をCHN(119.5g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.33g、2.0mmol)を加え再び脱気を行った。この後55℃で13時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノールと純水=5/5の混合溶媒(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(D)を得た。このポリマーの数平均分子量は35700、重量平均分子量は126000であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(D)(1.5g)にCHN(18.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にCHN(18.0g)を加え攪拌することにより液晶配向剤(F1)を得た。
【0168】
<比較例1-0>
[液晶セルの作製]
参考例6で得られた液晶配向剤(F1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板のITO面にスピンコートし、40℃のホットプレートで300秒間乾燥を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。塗膜面に偏光板を介して、照射強度4.3mW/cmの313nmの直線偏光紫外線を基板法線方向から40°傾斜した角度から50mJ/cm照射した。次いで、120℃のホットプレートで10分間焼成を行い、液晶配向膜付き基板を得た。入直線偏光UVは高圧水銀ランプの紫外光に313nmのバンドパスフィルターを通した後、313nmの偏光板を通すことで調製した。
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、シール剤(協立化学製、XN-1500T)を塗布した。次いで、もう一方の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が180°になるようにして張り合わせた後、120℃で90分シール剤を熱硬化させることで空セルを作製した。この空セルにネガ型液晶(メルク社製、MLC-3022)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
また、実施例1-0と同様な方法でプレチルト角と液晶セル配向性を評価した。
【0169】
<比較例1-1>
比較例1-0の[液晶セルの作製]において、基板法線方向から40°傾斜した角度から直線偏光紫外線を50mJ/cm照射した後、さらに基板法線方向から40°傾斜した角度から50mJ/cm照射を行った以外、比較例1-0と同様な方法により、液晶セルを得た。なお、1回目の照射と2回目の照射は、それぞれ法線方向から反対方向に40°傾斜させた。また、実施例1-0と同様な方法でプレチルト角と液晶セル配向性を評価した。
【0170】
<比較例1-2、1-3>
比較例1-0の[液晶セルの作製]において、2回目の偏光紫外線照射量を100mJ/cm(比較例1-2)、150mJ/cm(比較例1-3)に変更した以外、比較例1と同様な方法により、液晶セルを得た。また、実施例1-0と同様な方法でプレチルト角と液晶セル配向性を評価した。
【0171】
<参考例7>
MA-2(17.18g、30.0mmol)とMAA(1.72g、20.0mmol)をNMP(108.51g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.25g、1.5mmol)を加え再び脱気を行った。この後55℃で13時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノールと純水=5/5の混合溶媒(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(E)を得た。このポリマーの数平均分子量は22700、重量平均分子量は131000であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(E)(1.5g)にCHN(18.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にCHN(18.0g)を加え攪拌することにより液晶配向剤(G1)を得た。
【0172】
<比較例2-0~2-3>
参考例7で得られた液晶配向剤(G1)を用いて、焼成温度を120℃から150℃に変更した以外は比較例1-0~1-3と同様に試験を行った。
【0173】
<参考例8>
MA-4(4.05g、8.0mmol)とMAA(2.75g、32.0mmol)をCHN(28.5g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.33g、2.0mmol)を加え再び脱気を行った。この後55℃で13時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノールと純水=5/5の混合溶媒(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(H)を得た。このポリマーの数平均分子量は47000、重量平均分子量は140000であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(H)(1.5g)にCHN(18.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にCR-2(0.45g)とPGME(18.0g)を加え攪拌することにより液晶配向剤(I1)を得た。
【0174】
<参考例9>
参考例(4)で得られたポリイミドポリマー溶液(H1)(14.0g)と、参考例(8)で得られた液晶配向剤(I1)(6.0g)を室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(J1)を得た。
【0175】
<実施例6-0~7-3>
参考例1で得られた液晶配向剤(A1)の代わりに、表2に記載の液晶配向剤を用いた以外は、実施例1-0~1-3と同様に試験を行なった。評価結果を表2に記す。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
表1、2から明らかなように、実施例ではいずれも2回目の照射を行うことによりチルト角の書き換えが可能であり、書き換えた後の液晶配向性も良好であった。一方、比較例では、いずれもチルト角の書き換えが不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の製造方法によれば、マルチドメイン液晶配向膜を効率的に製造することができる。また、得られたマルチドメイン液晶配向膜を用いた液晶表示素子は、ECB用液晶表示素子等に好適に用いることができる。
図1