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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】測定方法、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G01R27/02 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021511186
(86)(22)【出願日】2020-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2020005919
(87)【国際公開番号】W WO2020202832
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019068676
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】▲ひばり▼野 俊寿
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238318(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067709(WO,A1)
【文献】特開2006-200946(JP,A)
【文献】特開2003-294793(JP,A)
【文献】特開平01-277778(JP,A)
【文献】特開2015-152416(JP,A)
【文献】国際公開第2011/121862(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極と複数の第2電極とが互いに離間して設けられた検査対象物における前記第1電極と前記第2電極との間の電極間インピーダンスを測定する測定方法であって、
(a)前記電極間インピーダンスを測定するために用いられる複数の電流検出部のうちの1つの電流検出部を較正する工程と、
(b)複数の前記検査対象物のうちの1つを基準サンプルとして選定する工程と、
(c)前記(a)工程で較正された前記電流検出部である第1電流検出部を用いて、前記基準サンプルの前記電極間インピーダンスである基準インピーダンスを第1基準インピーダンスとして測定する工程と、
(d)複数の前記電流検出部を用いて、前記検査対象物の複数箇所の前記電極間インピーダンスである対象物インピーダンスを並行して測定する工程と、
(e)前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスを、前記(c)工程で測定された前記第1基準インピーダンスに基づいて補正して補正後インピーダンスを算出する工程と、
(f)複数の前記電流検出部を用いて、複数の前記第1電極のそれぞれに対応する第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2電極のそれぞれに対応する第2配線における検査対象物側の端部とが開放された状態において、各前記第1配線及び各前記第2配線の間の配線間インピーダンスを第2開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、
(g)複数の前記電流検出部を用いて、前記基準インピーダンスを第2基準インピーダンスとして測定する工程と、
を含み、
前記(e)工程では、前記(f)工程で測定された前記第2開放配線間インピーダンス、及び前記(g)工程で測定された前記第2基準インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出されることを特徴とする、測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の測定方法において、
前記基準サンプルでは、各前記第1電極と各前記第2電極とが短絡しておらず、且つ各前記第1電極及び各前記第2電極が断線していないことを特徴とする、測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定方法において、
(h)複数の前記電流検出部を用いて、複数の前記第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2配線における検査対象側の端部とが短絡された状態において、各第1配線及び各第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第2短絡配線間インピーダンスとして測定する工程、
を更に含み、
前記(e)工程では、前記(h)工程で測定された前記第2短絡配線間インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出されることを特徴とする、測定方法。
【請求項4】
請求項に記載の測定方法において、
(i)前記第1電流検出部を用いて、複数の前記第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2配線における検査対象側の端部とが開放された状態において、各前記第1配線及び各前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第1開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、
(j)前記第1電流検出部を用いて、複数の前記第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2配線における検査対象側の端部とが短絡された状態において、各前記第1配線及び各前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第1短絡配線間インピーダンスとして測定する工程と、
(k)前記(c)工程で算出された前記第1基準インピーダンスを、前記(i)工程で算出された前記第1開放配線間インピーダンスと、前記(j)工程で算出された前記第1短絡配線間インピーダンスに基づいて補正して補正後基準インピーダンスを算出する工程と、
を含み、
前記(e)工程では、前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスが、前記(k)工程で補正された前記補正後基準インピーダンスに基づいて補正されることを特徴とする、測定方法。
【請求項5】
第1電極と第2電極とが互いに離間して設けられた複数の検査対象物における前記第1電極と前記第2電極との間の電極間インピーダンスを測定する測定方法であって、
(a)前記電極間インピーダンスを測定するために用いられる複数の電流検出部のうちの1つを較正する工程と、
(b)複数の前記検査対象物から複数の基準サンプルを選定する工程と、
(c)前記(a)工程で較正された前記電流検出部である第1電流検出部を用いて、各前記基準サンプルの前記電極間インピーダンスである基準インピーダンスを第1基準インピーダンスとして測定する工程と、
(d)複数の前記電流検出部を用いて、各前記検査対象物の前記電極間インピーダンスである対象物インピーダンスを並行して測定する工程と、
(e)前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスを、前記(c)工程で測定された前記第1基準インピーダンスに基づいて補正して補正後インピーダンスを算出する工程と、
(f)複数の前記電流検出部を用いて、前記第1電極に接続される第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2電極に接続される第2配線における検査対象側の端部とが
開放された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の配線間インピーダンスを第2開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、
(g)複数の前記電流検出部を用いて、各前記基準インピーダンスを第2基準インピーダンスとして測定する工程と、
を含み、
前記(e)工程では、前記(f)工程で測定された前記第2開放配線間インピーダンス、及び前記(g)工程で測定された前記第2基準インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出されることを特徴とする、測定方法。
【請求項6】
請求項に記載の測定方法において、
各前記基準サンプルでは、前記第1電極及び前記第2電極が短絡しておらず、且つ前記第1電極及び前記第2電極が断線していないことを特徴とする、測定方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の測定方法において、
(h)複数の前記電流検出部を用いて、前記第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2配線における検査対象物側の端部とが短絡された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第2短絡配線間インピーダンスとして測定する工程、
を更に含み、
前記(e)工程では、前記(h)工程で測定された前記第2短絡配線間インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出されることを特徴とする、測定方法。
【請求項8】
請求項に記載の測定方法において、
(i)前記第1電流検出部を用いて、前記第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2配線における検査対象物側の端部とが開放された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第1開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、
(j)前記第1電流検出部を用いて、前記第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2配線における検査対象物側の端部とが短絡された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の配線間インピーダンスである第1短絡配線間インピーダンスを測定する工程と、
(k)前記(c)工程で算出された前記第1基準インピーダンスを、前記(i)工程で算出された前記第1開放配線間インピーダンスと、前記(j)工程で算出された第1短絡配線間インピーダンスに基づいて補正して補正後基準インピーダンスを算出する工程と、
を含み、
前記(e)工程では、前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスが、前記(k)工程で補正された前記補正後基準インピーダンスに基づいて補正されることを特徴とする、測定方法。
【請求項9】
請求項4又は8に記載の測定方法において、
前記(k)工程では、以下の式(A)に基づいて前記補正後基準インピーダンスが算出されることを特徴とする、測定方法。
STD=ZO1×(ZS1-ZX1)/(ZX1-ZO1) …(A)
但し、ZSTDは補正後基準インピーダンス、ZO1は第1開放配線間インピーダンス、ZS1は第1短絡配線間インピーダンス、ZX1は第1基準インピーダンス、である。
【請求項10】
請求項に記載の測定方法において、
前記(e)工程では、以下の式(B)に基づき、前記補正後インピーダンスが算出されることを特徴とする、測定方法。
DUT=ZSTD×[{(ZO2-ZX2)×(ZXM-ZS2)}/{(ZX2-ZS2)×(ZO2-ZXM)}] …(B)
但し、ZDUTは補正後インピーダンス、ZO2は第2開放配線間インピーダンス、ZX2は第2基準インピーダンス、ZXMは対象物インピーダンス、ZS2は第2短絡配線間インピーダンス、である。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の測定方法において、
前記検査対象物は、タッチパネルであることを特徴とする、測定方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の測定方法によって検査対象物の補正後インピーダンスを算出することを特徴とする、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示される検査装置は、センサパネルが取り外された状態において、センサパネル検査装置のキャリブレーション部は、複数ある第2ケーブルの少なくとも何れかにシグナル部の交流信号を供給させながら、第1ケーブルに電気的に接続される電流検出部の電流計の出力がゼロになるように、キャリブレーションシグナル部において前記電流計に対応する交流電源の電圧及び位相を調整する。電流計の出力がゼロになると、そのときの前記交流電源の電圧及び位相が記憶される。センサパネルの検査時においては、記憶された電圧及び位相に基づいて、キャリブレーションシグナル部の交流電源に交流信号を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-238318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示される検査装置には、複数の電流検出部が設けられている(例えば特許文献1の図1参照)。電流検出部によって検出される電流値を正確な値とするためには、全ての電流検出部を較正することが考えられる。しかしながら、複数の電流検出部の全ての較正を行うのは時間がかかる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、検査装置に含まれる複数の電流検出部の較正の手間を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る測定方法は、複数の第1電極と複数の第2電極とが互いに離間して設けられた検査対象物における前記第1電極と前記第2電極との間の電極間インピーダンスを測定する測定方法であって、(a)前記電極間インピーダンスを測定するために用いられる複数の電流検出部のうちの1つの電流検出部を較正する工程と、(b)複数の前記検査対象物のうちの1つを基準サンプルとして選定する工程と、(c)前記(a)工程で較正された前記電流検出部である第1電流検出部を用いて、前記基準サンプルの前記電極間インピーダンスである基準インピーダンスを第1基準インピーダンスとして測定する工程と、(d)複数の前記電流検出部を用いて、前記検査対象物の複数箇所の前記電極間インピーダンスである対象物インピーダンスを並行して測定する工程と、(e)前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスを、前記(c)工程で測定された前記第1基準インピーダンスに基づいて補正して補正後インピーダンスを算出する工程と、を含む。
【0007】
この方法によれば、検査装置に含まれる複数の電流検出部を用いて、検査対象物の複数箇所のインピーダンス(対象物インピーダンス)を並行して測定することができる。これにより、検査対象物においてインピーダンス測定が必要な多数箇所のうちの複数箇所のインピーダンスをまとめて測定できるため、測定時間を短縮化できる。
【0008】
また、この方法によれば、上述のように測定された複数箇所の対象物インピーダンスが、較正された電流検出部(第1電流検出部)を用いて測定された基準サンプルのインピーダンス(第1基準インピーダンス)を用いて補正される。よって、この方法によれば、正確な電流値を検出可能な電流検出部を用いて第1基準インピーダンスが測定されるため、対象物インピーダンスを補正するための第1基準インピーダンスを精度よく測定できる。
【0009】
また、この方法によれば、多数の検査対象物の中から選定したものを基準サンプルとして使用できる。すなわち、この方法によれば、全ての測定箇所のインピーダンスが既知となっているサンプルをわざわざ準備する必要がないため、利便性に優れた測定方法を提供できる。
【0010】
従って、この方法によれば、検査装置に含まれる複数の電流検出部の較正の手間を簡略化できる。
【0011】
好ましくは、前記基準サンプルでは、各前記第1電極と各前記第2電極とが短絡しておらず、且つ各前記第1電極及び各前記第2電極が断線していない。
【0012】
この方法によれば、極端なインピーダンス値を有する検査対象物が基準サンプルの対象から外される。これにより、適切なインピーダンス値を有する検査対象物を基準サンプルとして選定でき、対象物インピーダンスを適切な第1基準インピーダンスで補正することができるため、より正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0013】
好ましくは、上述したいずれかの測定方法は、(f)複数の前記電流検出部を用いて、複数の前記第1電極のそれぞれに対応する第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2電極のそれぞれに対応する第2配線における検査対象側の端部とが開放された状態において、各前記第1配線及び各前記第2配線の間の配線間インピーダンスを第2開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、(g)複数の前記電流検出部を用いて、前記基準インピーダンスを第2基準インピーダンスとして測定する工程と、を更に含み、前記(e)工程では、前記(f)工程で測定された前記第2開放配線間インピーダンス、及び前記(g)工程で測定された前記第2基準インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出される。
【0014】
この方法によれば、複数の電流検出部を用いて測定された対象物インピーダンスに対して、いわゆるオープン補正及びロード補正が行われる。これにより、より正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0015】
更に好ましくは、上述した測定方法は、(h)複数の前記電流検出部を用いて、複数の前記第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2配線における検査対象側の端部とが短絡された状態において、各第1配線及び各第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第2短絡配線間インピーダンスとして測定する工程、を更に含み、前記(e)工程では、前記(h)工程で測定された前記第2短絡配線間インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出される。
【0016】
この方法によれば、複数の電流検出部を用いて測定された対象物インピーダンスに対して、上述したオープン補正及びロード補正だけでなく、いわゆるショート補正も行われる。これにより、より一層正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0017】
更に好ましくは、上述した測定方法は、(i)前記第1電流検出部を用いて、複数の前記第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2配線における検査対象側の端部とが開放された状態において、各前記第1配線及び各前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第1開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、(j)前記第1電流検出部を用いて、複数の前記第1配線における検査対象物側の端部と、複数の前記第2配線における検査対象側の端部とが短絡された状態において、各前記第1配線及び各前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第1短絡配線間インピーダンスとして測定する工程と、(k)前記(c)工程で算出された前記第1基準インピーダンスを、前記(i)工程で算出された前記第1開放配線間インピーダンスと、前記(j)工程で算出された前記第1短絡配線間インピーダンスに基づいて補正して補正後基準インピーダンスを算出する工程と、を含み、前記(e)工程では、前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスが、前記(k)工程で補正された前記補正後基準インピーダンスに基づいて補正される。
【0018】
この方法によれば、第1電流検出部を用いて測定された第1基準インピーダンスに対して、いわゆるオープン補正及びショート補正が行われる。これにより、基準サンプルのより正確な補正後基準インピーダンスを得ることができるため、より一層正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係る測定方法は、第1電極と第2電極とが互いに離間して設けられた複数の検査対象物における前記第1電極と前記第2電極との間の電極間インピーダンスを測定する測定方法であって、(a)前記電極間インピーダンスを測定するために用いられる複数の電流検出部のうちの1つを較正する工程と、(b)複数の前記検査対象物から複数の基準サンプルを選定する工程と、(c)前記(a)工程で較正された前記電流検出部である第1電流検出部を用いて、各前記基準サンプルの前記電極間インピーダンスである基準インピーダンスを第1基準インピーダンスとして測定する工程と、(d)複数の前記電流検出部を用いて、各前記検査対象物の前記電極間インピーダンスである対象物インピーダンスを並行して測定する工程と、(e)前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスを、前記(c)工程で測定された前記第1基準インピーダンスに基づいて補正して補正後インピーダンスを算出する工程と、を含む。
【0020】
この方法によれば、検査装置に含まれる複数の電流検出部を用いて、各検査対象物の対象物インピーダンスを並行して測定することができる。これにより、各検査対象物における所望箇所のインピーダンスをまとめて測定できるため、測定時間を短縮化できる。
【0021】
また、この方法によれば、上述のように測定された各対象物インピーダンスが、較正された電流検出部(第1電流検出部)を用いて測定された基準サンプルの第1基準インピーダンスを用いて補正される。よって、この方法によれば、正確な電流値を検出可能な電流検出部を用いて第1基準インピーダンスが測定されるため、検査対象物のインピーダンス(対象物インピーダンス)を補正するための第1基準インピーダンスを精度よく測定できる。
【0022】
また、この方法によれば、多数の検査対象物の中から選定したものを基準サンプルとして使用できる。すなわち、この方法によれば、インピーダンスが既知となっているサンプルをわざわざ準備する必要がないため、利便性に優れた測定方法を提供できる。
【0023】
従って、この方法によれば、検査装置に含まれる複数の電流検出部の較正の手間を簡略化できる。
【0024】
好ましくは、各前記基準サンプルでは、前記第1電極及び前記第2電極が短絡しておらず、且つ前記第1電極及び前記第2電極が断線していない。
【0025】
この方法によれば、極端なインピーダンス値を有する検査対象物が基準サンプルの対象から外される。これにより、適切なインピーダンス値を有する検査対象物を基準サンプルとして選定でき、対象物インピーダンスを適切な第1基準インピーダンスで補正することができるため、より正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0026】
好ましくは、上述したいずれかの測定方法は、(f)複数の前記電流検出部を用いて、前記第1電極に接続される第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2電極に接続される第2配線における検査対象側の端部とが開放された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の配線間インピーダンスを第2開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、(g)複数の前記電流検出部を用いて、各前記基準インピーダンスを第2基準インピーダンスとして測定する工程と、を更に含み、前記(e)工程では、前記(f)工程で測定された前記第2開放配線間インピーダンス、及び前記(g)工程で測定された前記第2基準インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出される。
【0027】
この方法によれば、複数の電流検出部を用いて測定された対象物インピーダンスに対して、いわゆるオープン補正及びロード補正が行われる。これにより、より正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0028】
更に好ましくは、上述した測定方法は、(h)複数の前記電流検出部を用いて、前記第1配線における検査対象物側の端部と、前第2配線における検査対象側の端部とが短絡された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第2短絡配線間インピーダンスとして測定する工程、を更に含み、前記(e)工程では、前記(h)工程で測定された前記第2短絡配線間インピーダンスにも基づき、前記補正後インピーダンスが算出される。
【0029】
この方法によれば、複数の電流検出部を用いて測定された対象物インピーダンスに対して、上述したオープン補正及びロード補正だけでなく、いわゆるショート補正も行われる。これにより、より一層正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0030】
更に好ましくは、上述した測定方法は、(i)前記第1電流検出部を用いて、前記第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2配線における検査対象側の端部とが開放された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の前記配線間インピーダンスを第1開放配線間インピーダンスとして測定する工程と、(j)前記第1電流検出部を用いて、前記第1配線における検査対象物側の端部と、前記第2配線における検査対象側の端部とが短絡された状態において、前記第1配線及び前記第2配線の間の配線間インピーダンスである第1短絡配線間インピーダンスを測定する工程と、(k)前記(c)工程で算出された前記第1基準インピーダンスを、前記(i)工程で算出された前記第1開放配線間インピーダンスと、前記(j)工程で算出された第1短絡配線間インピーダンスに基づいて補正して補正後基準インピーダンスを算出する工程と、を含み、前記(e)工程では、前記(d)工程で測定された前記対象物インピーダンスが、前記(k)工程で補正された前記補正後基準インピーダンスに基づいて補正される。
【0031】
この方法によれば、第1電流検出部を用いて測定された基準サンプルの第1基準インピーダンスに対して、いわゆるオープン補正及びショート補正が行われる。これにより、基準サンプルのより正確な補正後基準インピーダンスを得ることができるため、より一層正確な補正後インピーダンスを得ることができる。
【0032】
好ましくは、前記(k)工程では、ZSTD=ZO1×(ZS1-ZX1)/(ZX1-ZO1)、で表される数式に基づいて前記補正後基準インピーダンスZSTDが算出される。但し、ZSTDは補正後基準インピーダンス、ZO1は第1開放配線間インピーダンス、ZS1は第1短絡配線間インピーダンス、ZX1は第1基準インピーダンス、である。
【0033】
この方法によれば、適切な数式を用いて補正後基準インピーダンスを得ることができる。
【0034】
更に好ましくは、前記(e)工程では、ZDUT=ZSTD×[{(ZO2-ZX2)×(ZXM-ZS2)}/{(ZX2-ZS2)×(ZO2-ZXM)}]、で表される数式に基づいて前記補正後インピーダンスZDUTが算出される。但し、ZDUTは補正後インピーダンス、ZO2は第2開放配線間インピーダンス、ZX2は第2基準インピーダンス、ZXMは対象物インピーダンス、ZS2は第2短絡配線間インピーダンス、である。
【0035】
この方法によれば、適切な数式を用いて検査対象物の補正後インピーダンスを得ることができる。
【0036】
好ましくは、前記検査対象物は、タッチパネルである。
【0037】
この方法によれば、タッチパネルが有する各電極間のインピーダンスを正確に測定することができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る検査装置は、上述したいずれかの測定方法によって検査対象物の補正後インピーダンスを算出する。
【0039】
この構成によれば、複数の電流検出部の較正の手間を簡略化しつつ、正確なインピーダンスを得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の一つの態様によれば、検査装置に含まれる複数の電流検出部の較正の手間を簡略化しつつ、正確なインピーダンス値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の実施形態に係る検査装置の模式図を、検査対象物であるタッチパネルの模式図とともに示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る検査装置を用いて行われる第1実施形態に係るインピーダンス測定方法を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、図2のフローチャートのステップS3を説明するための図である。
図4図4は、図2のフローチャートのステップS4を説明するための図である。
図5図5は、図2のフローチャートのステップS5を説明するための図である。
図6図6は、図2のフローチャートのステップS6を説明するための図である。
図7図7は、図2のフローチャートのステップS7を説明するための図である。
図8図8は、図2のフローチャートのステップS8を説明するための図である。
図9図9は、図2のフローチャートのステップS10を説明するための図である。
図10図10は、式(1)を説明するための図であって、検査装置ユニットに基準パネルを接続した状態を示す模式図である。
図11A図11Aは、式(2)を説明するための図であって、検査装置ユニットに補正後基準インピーダンスの値がZSTDとなる負荷を仮に接続した場合の模式図である。
図11B図11Bは、検査装置ユニットにタッチパネルを接続した状態を示す模式図である。
図12図12は、第2実施形態に係るインピーダンス測定方法を説明するためのフローチャートである。
図13図13は、図12のフローチャートのステップS27を説明するための図である。
図14図14は、図12のフローチャートのステップS28を説明するための図である。
図15図15は、図12のフローチャートのステップS30を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0043】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る検査装置1の模式図を、検査対象物であるタッチパネル50の模式図とともに示す図である。なお、以下で説明する各図において、Xと付されている矢印が示す方向をタッチパネル50のX方向、Yと付されている矢印が示す方向をタッチパネルのY方向とする。以下では、まず、検査装置1の測定対象となるタッチパネル50の構成を説明し、次に検査装置1の構成について説明する。
【0044】
[タッチパネルの概略構成]
図1には、タッチパネル50の一部分のみが模式的に図示されている。実施形態に係るタッチパネル50は、いわゆる静電容量方式のタッチパネルである。タッチパネル50は、平面視において(タッチパネルの厚み方向から視て)、それぞれがX方向に沿って延びる複数の第1透明電極51(51a,51b,51c,51d,…)と、それぞれがY方向に沿って延びる複数の第2透明電極52(52a,52b,52c,52d,…)とを備えている。なお、タッチパネル50は、例えばタブレットデバイスのタッチパネルであり、24本の第1透明電極51、及び32本の第2透明電極52を備えている。図1及び以下で説明する各図では、4本の第1透明電極51及び4本の第2透明電極52のみを図示している。
【0045】
第1透明電極51及び第2透明電極52は、タッチパネル50の厚み方向に間隔をあけて、平面視で互いに直交するように設けられている。各透明電極51,52は、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)で構成されている。第1透明電極51及び第2透明電極52の端部には、配線部53が接続されている。各配線部53の一端は、対応する透明電極51,52に接続される一方、各配線部53の他端は、タッチパネル50の外縁部まで延びている。各配線部53の他端は、配線部53を外部機器に接続するためのタッチパネル端子部54として機能する。
【0046】
静電容量方式のタッチパネル50では、複数の第1透明電極51のそれぞれと、複数の第2透明電極52のそれぞれとの間の各ポイントP(P11~P44)において、タッチパネル50の厚み方向に一種のコンデンサが形成される。ユーザがタッチパネルにおける所望位置を指などでタッチすると、その位置の静電容量が変化する。タッチパネル50は、その静電容量の変化を検出することにより、ユーザにタッチされた位置を検出することができる。
【0047】
[検査装置の構成]
検査装置1は、複数の第1透明電極51のそれぞれと、複数の第2透明電極52のそれぞれとの間(言い換えれば、図1における各ポイントP11~P44)のインピーダンスを測定するためのものである。例えば、24本の第1透明電極51、及び32本の第2透明電極52を備えたタッチパネルの場合、768ポイントのインピーダンスが測定される。検査装置1は、複数の検査装置側端子部6aを有し、これらの端子部6aを介して、タッチパネル50の各電極51,52に交流信号を出力したり、各透明電極51,52間の(すなわち、各ポイントP11~P44の)インピーダンスを測定したりする。本実施形態では、検査装置側端子部6aは、フラットケーブル60及び接続基板70を介してタッチパネル端子部54と電気的に接続される。
【0048】
フラットケーブル60は、互いに僅かな間隔をあけて平行に配置された複数の配線61と、それらの両端に設けられたコネクタ62,63とを備えている。コネクタ62,63は、装置側コネクタ62及び基板側コネクタ63を有している。フラットケーブル60では、複数の配線61が、可撓性の樹脂部材によって覆われている。
【0049】
フラットケーブル60では、装置側コネクタ62が検査装置1のコネクタ6と接続される一方、基板側コネクタ63が接続基板コネクタ72と接続される。これにより、フラットケーブル60の各配線61の一端側が検査装置1の各端子部6aに接続される一方、フラットケーブル60の各配線61の他端側が接続基板70の各端子部に接続される。
【0050】
接続基板70は、例えばガラスエポキシ基板を用いて構成されている。接続基板70は、複数の配線71と、フラットケーブル60側に設けられた接続基板コネクタ72と、タッチパネル端子部54の各端子に対応する間隔となるように形成された接続基板端子部73とを備えている。
【0051】
接続基板70では、接続基板コネクタ72が、フラットケーブル60の基板側コネクタ
63と接続される一方、接続基板端子部73が、異方導電部材75を介してタッチパネル端子部54に接続される。異方導電部材75は、例えば一例として異方導電ゴムシートで構成されており、その厚み方向に押圧すると押圧した方向の抵抗値が低くなるように構成されている。タッチパネル端子部54の露出部を異方導電部材75で覆い、その上に接続基板端子部73をセットしてタッチパネル50側へ押圧すると、接続基板端子部73が異方導電部材75を介してタッチパネル端子部54に接続される。これにより、フラットケーブル60とタッチパネル50とが、接続基板70及び異方導電部材75を介して電気的に接続される。
【0052】
[検査装置の構成]
図1を参照して、検査装置1は、シグナルジェネレータ2と、電圧検出部3と、複数の電流検出部4(4a,4b,4c,4d)と、複数の切替スイッチ5(5a~5k)と、検査装置コネクタ6と、制御部7と、演算部8とを備えている。複数の電流検出部4は、1つの第1電流検出部4aと、複数の第2電流検出部4b,4c,4dとを有している。なお、例えば一例として、検査装置1は、第2透明電極52と同じ数量の電流検出部4を有している。図1では、図示されている第2透明電極52と同じ数の電流検出部4のみが図示されている。
【0053】
シグナルジェネレータ2は、フラットケーブル60及び接続基板70を介して、第1透明電極51及び第2透明電極52へ交流信号を出力する。シグナルジェネレータ2は、一方側の端子が切替スイッチ5a,5b,5c,5dと接続され、他方側の端子が接地されている。
【0054】
電圧検出部3は、フラットケーブル60及び接続基板70を介して、第1透明電極51及び第2透明電極52の間の交流電圧を検出する。電圧検出部3は、一方側の端子が切替スイッチ5a,5b,5c,5dと接続され、他方側の端子が接地されている。
【0055】
各電流検出部4は、フラットケーブル60及び接続基板70を介して、第1透明電極51及び第2透明電極52の間を流れる交流電流を検出する。第1電流検出部4aは、一方
側の端子が切替スイッチ5e,5g,5i,5kと接続され、他方側の端子が接地されている。第2電流検出部4bは、一方側の端子が切替スイッチ5fと接続され、他方側の端子が接地されている。第2電流検出部4cは、一方側の端子が切替スイッチ5hと接続され、他方側の端子が接地されている。第2電流検出部4dは、一方側の端子が切替スイッチ5jと接続され、他方側の端子が接地されている。
【0056】
第1電流検出部4aは、検査装置1が出荷される前に較正される。検査装置1の較正は、フラットケーブル60及び接続基板70が外された状態の検査装置1に対して行われる。第1電流検出部4aの較正では、例えば一例として、切替スイッチ5a,5eがオンとなった状態で各切替スイッチ5a,5eに繋がる配線間に標準キャパシタが接続された状態において、当該標準キャパシタのインピーダンスが計測される。そして、計測された容量値と標準キャパシタの値とのずれが所定値以上の場合には、そのずれが所定値未満となるように第1電流検出部4aの調整が行われることにより較正が完了する。一方、計測された容量値と標準キャパシタの値とのずれが所定値未満の場合には、計測された容量値と標準キャパシタの値とのずれが所定値未満であることが確認されたことになり、これにより較正が完了する。なお、第2電流検出部4b,4c,4dは、較正されていない。
【0057】
切替スイッチ5は、上述したシグナルジェネレータ2、電圧検出部3、及び電流検出部4と、第1透明電極51及び第2透明電極52との接続状態を切り替えるためのものである。切替スイッチ5は、制御部7からの指令信号に応じて、オン状態又はオフ状態に切り替わる。
具体的には、切替スイッチ5aは、シグナルジェネレータ2及び電圧検出部3と第1透明電極51dとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5bは、シグナルジェネレータ2及び電圧検出部3と第1透明電極51cとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5cは、シグナルジェネレータ2及び電圧検出部3と第1透明電極51bとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5dは、シグナルジェネレータ2及び電圧検出部3と第1透明電極51aとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。
【0058】
また、切替スイッチ5eは、第1電流検出部4aと第2透明電極52aとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5fは、第2電流検出部4bと第2透明電極52bとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5gは、第1電流検出部4aと第2透明電極52bとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5hは、第2電流検出部4cと第2透明電極52cとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5iは、第1電流検出部4aと第2透明電極52cとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5jは、第2電流検出部4dと第2透明電極52dとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。切替スイッチ5kは、第1電流検出部4aと第2透明電極52dとの接続状態を、オン又はオフに切り替える。
【0059】
制御部7及び演算部8は、ハードウェア・プロセッサ(例えば、CPU、FPGA等)及び不揮発性メモリ等のデバイスで構成される。例えば、CPUが不揮発性メモリからプログラムを読み出して実行することにより、制御部7及び演算部8は、下記で説明するように動作する。
【0060】
制御部7は、各切替スイッチ5の接続状態を切り替えるために、対象となる切替スイッチ5を制御して、切替スイッチ5をオン又はオフに切り替える。
【0061】
演算部8は、電圧検出部3で検出された電圧値、及び電流検出部4で検出された電流値に基づき、各ポイントP11~P44における正確なインピーダンス値を測定する。この演算部8によるインピーダンス値の測定方法については、詳しくは後述する。
【0062】
なお、以下では、互いに電気的に接続された状態における検査装置1、フラットケーブル60、及び接続基板70を、検査装置ユニット10と称する。検査装置ユニット10とは、検査装置1と、該検査装置1をタッチパネル50に接続するための接続部(本実施形態の場合、フラットケーブル60及び接続基板70)とを備えている。
【0063】
[検査装置によるインピーダンスの測定方法]
図2は、実施形態に係る検査装置1を用いて行われる第1実施形態に係るインピーダンスの測定方法を説明するためのフローチャートである。また、図3から図9は、それぞれ、図2におけるステップS3~S8,S10のそれぞれを説明するための図である。
【0064】
なお、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS1は、検査装置1が出荷される前に行われる工程であり、ステップS2以降は、検査装置1でタッチパネル50の検査を行う段階、言い換えれば検査装置1が出荷された後に行われる工程である。ステップS1は、例えば一例として検査装置1の製造者側で行われる作業であり、ステップS2以降は、検査装置1のユーザ側で行われる作業である。しかしながら、ステップS1で行われる工程が、ユーザ側で行われてもよい。
【0065】
まず、ステップS1((a)工程)では、第1電流検出部4aの較正が行われる。較正には、例えば一例として、1pF、10pF、100pF、1000pFの標準キャパシタが用いられる。第1電流検出部4aの較正では、例えば一例として、切替スイッチ5a,5eがオンとなった状態で各切替スイッチ5a,5eに繋がる配線間に標準キャパシタが接続された状態において、当該標準キャパシタのインピーダンスが計測される。そして、計測された容量値と標準キャパシタの値とのずれが所定値以上の場合には、そのずれが所定値未満となるように第1電流検出部4aの調整が行われることにより較正が完了する。一方、計測された容量値と標準キャパシタの値とのずれが所定値未満の場合には、計測された容量値と標準キャパシタの値とのずれが所定値未満であることが確認されたことになり、これにより較正が完了する。
【0066】
次に、ステップS2((b)工程)では、検査対象となるタッチパネル50の中から、基準パネルSが選定される。この基準パネルSとしては、各ポイントP11~P44のインピーダンスが、標準的なタッチパネル50における各ポイントP11~P44のインピーダンスと大きくかけ離れていないものが選定される。基準パネルSの各ポイントP11~P44における正確なインピーダンス値は算出されている必要がなく、他のタッチパネル50における各ポイントP11~P44のインピーダンス値と相対的に大きく異なっていないことが確認されていればよい。基準パネルSとして、透明電極51,52が断線していないもの、第1透明電極51と第2透明電極52とが短絡していないものが好ましい。なお、ステップS1とステップS2とが行われる手順は、逆であってもよい。
【0067】
引き続き、ステップS3からステップS9が行われる。これらステップS3からステップS9は、検査対象物であるタッチパネル50の各ポイントP11~P44の正確なインピーダンスを測定するために、後述するステップS10で測定されるタッチパネル50の各ポイントP11~P44のインピーダンスを補正するための補正パラメータを導出するための工程である。
【0068】
ステップS3((i)工程)では、図3を参照して、第1電流検出部4aを用いて、検査装置ユニット10が開放状態にある場合のインピーダンス測定(以降、単にZ測定と称する場合もある)が行われる。開放状態にある検査装置ユニット10とは、全ての接続基板端子部73が開放された状態の検査装置ユニット10である。具体的には、ステップS3でのZ測定では、第1透明電極51と接続されうる第1配線11,12,13,14のいずれかと、第2透明電極52と接続されうる第2配線15,16,17,18のいずれかとの間のインピーダンスが、較正済みの電流検出部である第1電流検出部4aのみを用いて測定される。例えば一例として、ステップS3では、切替スイッチ5a,5b,5c,5dのそれぞれがオンされた状態で、スイッチ5e,5g,5i,5kが順次切り替えられ、全ての組み合わせのそれぞれでインピーダンスが測定される。このステップS3での測定値は、補正パラメータとしての第1開放配線間インピーダンスZO1である。
【0069】
なお、第1配線11~14及び第2配線15~18は、フラットケーブル60における検査装置1側の端部から、接続基板70における接続基板端子部73に亘る範囲の配線である。言い換えれば、第1配線11~14及び第2配線15~18は、検査装置1とタッチパネル50とを繋ぐ配線である。
【0070】
次に、ステップS4((f)工程)では、図4を参照して、全ての電流検出部4a~4dを用いて、検査装置ユニット10が開放状態にある場合のZ測定が行われる。具体的には、ステップS4でのZ測定では、第1配線11~14のいずれかと、第2配線15~18のいずれかとの間のインピーダンスが、全ての電流検出部4a~4dを用いて測定される。例えば一例として、ステップS4では、切替スイッチ5e,5f,5h,5jの全てがオンされた状態で、切替スイッチ5a,5b,5c,5dのいずれか1つがオンされる。これにより、電圧検出部3で検出された電圧値と第1電流検出部4aで検出された電流値とに基づくインピーダンスと、電圧検出部3で検出された電圧値と第2電流検出部4bで検出された電流値とに基づくインピーダンスと、電圧検出部3で検出された電圧値と第2電流検出部4cで検出された電流値とに基づくインピーダンスと、電圧検出部3で検出された電圧値と第2電流検出部4dで検出された電流値とに基づくインピーダンスとが、並行して一度に測定される。このステップS4での測定値は、補正パラメータとしての第2開放配線間インピーダンスZO2である。
【0071】
次に、ステップS5((j)工程)では、図5を参照して、第1電流検出部4aを用いて、検査装置ユニット10が短絡状態にある場合のZ測定が行われる。短絡状態にある検査装置ユニット10とは、全ての接続基板端子部73が短絡された状態の検査装置ユニット10である。具体的には、ステップS5でのZ測定では、第1配線11~14のいずれかと、第2配線15~18のいずれかとの間のインピーダンスが、第1電流検出部4aのみを用いて測定される。ステップS5でのZ測定の具体的手順の一例は、接続基板端子部73の状態(短絡状態か開放状態か)が異なる点を除き、ステップS3と同じであるため、その説明を省略する。このステップS5での測定値は、補正パラメータとしての第1短絡配線間インピーダンスZS1である。
【0072】
次に、ステップS6((h)工程)では、図6を参照して、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて、検査装置ユニット10が短絡状態にある場合のZ測定が行われる。具体的には、ステップS6でのZ測定では、第1配線11~14のいずれかと、第2配線15~18のいずれかとの間のインピーダンスが、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定される。ステップS6でのZ測定の具体的手順の一例は、接続基板端子部73の状態(短絡状態か開放状態か)が異なる点を除き、ステップS4と同じであるため、その説明を省略する。このステップS6での測定値は、補正パラメータとしての第2短絡配線間インピーダンスZS2である。
【0073】
次に、ステップS7((c)工程)では、図7を参照して、第1電流検出部4aを用いて、基準パネルSの各ポイントP11~P44のZ測定が行われる。具体的には、ステップS7では、配線11~14のいずれかと、配線15~18のいずれかとの間のインピーダンスが、第1電流検出部4aのみを用いて測定される。ステップS7における基準パネルSのZ測定の具体的手順の一例は、接続基板端子部73に基準パネルSが接続されているか否かが異なる点を除き、ステップS3と同じであるため、その説明を省略する。このステップS7での測定値は、補正パラメータとしての第1基準インピーダンスZX1である。なお、図7及び図8では、図9に示すタッチパネル50と区別するため、基準パネルSにハッチングを付している。
【0074】
次に、ステップS8((g)工程)では、図8を参照して、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて、基準パネルSの各ポイントP11~P44のZ測定が行われる。具体的には、ステップS8では、配線11~14のいずれかと、配線15~18のいずれかとの間のインピーダンスが、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定される。ステップS8における基準パネルSのZ測定の具体的手順の一例は、接続基板端子部73に基準パネルSが接続されているか否かが異なる点を除き、ステップS4と同じであるため、その説明を省略する。このステップS8での測定値は、補正パラメータとしての第2基準インピーダンスZX2である。
【0075】
次に、ステップS9((k)工程)では、ステップS3,S5で求めた各補正パラメータ(第1開放配線間インピーダンスZO1,第1短絡配線間インピーダンスZS1)に基づき、ステップS7で求めた基準パネルSの各ポイントP11~P44の第1基準インピーダンスZX1が補正される。これにより、基準パネルSの各ポイントP11~P44の補正後基準インピーダンスZSTDが算出される。具体的には、ステップS9では、以下の式(1)に基づき、補正パラメータとしての補正後基準インピーダンスZSTDが算出される。
【0076】
[数1]
STD=ZO1×{(ZS1-ZX1)/(ZX1-ZO1)}・・・(1)
【0077】
以上のように、ステップS3からステップS9によって、各補正パラメータ及び補正基準後インピーダンスが算出された後、ステップS10及びステップS11で、タッチパネル50の各ポイントのZ測定が行われる。
【0078】
なお、上述したステップS3からステップS8の工程は、ここで説明したものに限らず、どのような順序であってもよい。また、上述したステップS9の工程は、少なくともステップS3、S5、S7が行われた後であればよい。
【0079】
ステップS10((d)工程)では、図9を参照して、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて、タッチパネル50の各ポイントP11~P44のZ測定が行われる。具体的には、ステップS10では、配線11~14のいずれかと、配線15~18のいずれかとの間のインピーダンスが、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定される。
【0080】
ステップS10におけるZ測定の具体的手順の一例は、基準パネルSの代わりにタッチパネル50が接続される点の除き、ステップS8の場合と同じである。
【0081】
具体的には、ステップS10では、切替スイッチ5e,5f,5h,5jの全てがオンされた状態で、切替スイッチ5a,5b,5c,5dのいずれか1つがオンされる。これにより、電圧検出部3で検出された電圧値と第1電流検出部4aで検出された電流値とに基づくインピーダンスと、電圧検出部3で検出された電圧値と第2電流検出部4bで検出された電流値とに基づくインピーダンスと、電圧検出部3で検出された電圧値と第2電流検出部4cで検出された電流値とに基づくインピーダンスと、電圧検出部3で検出された電圧値と第2電流検出部4dで検出された電流値とに基づくインピーダンスとが、並行して一度に測定される。このステップS10で測定されたインピーダンスは、タッチパネル50の各ポイントP11~P44の対象物インピーダンスZXMとして測定される。
【0082】
そして、ステップS11((e)工程)では、ステップS4,S6,S8で求めた各補正パラメータ(第2開放配線間インピーダンスZO2,第2短絡配線間インピーダンスZS2,第2基準インピーダンスZX2)、及びステップS9で求めた補正後基準インピーダンスZSTDに基づき、ステップS10で求めたタッチパネル50の各ポイントP11~P44のインピーダンスZXMが補正され、補正後インピーダンスZDUTが算出される。具体的には、ステップS11では、以下の式(2)に基づき、補正後インピーダンスZDUTが算出される。
【0083】
[数2]
DUT=ZSTD×[{(ZO2-ZX2)×(ZXM-ZS2)}/{(ZX2-ZS2)×(ZO2-ZXM)}]・・・(2)
【0084】
上述のようにして算出された補正後インピーダンスZDUTは、例えば一例として、測定値としてディスプレイに表示される。或いは、この補正後インピーダンスZDUTが所定の閾値と比較され、その比較結果に基づいてタッチパネル50が良品であるか不良品であるかが判定され、その判定結果がディスプレイに表示される。
【0085】
[式(1)の求め方について]
図10は、上述した式(1)を説明するための図であって、検査装置ユニット10に基準パネルSを接続した状態を示す模式図である。
【0086】
検査装置1と基準パネルSとを接続するフラットケーブル60及び接続基板70の残留インピーダンスを図10に示すFパラメータ(A、B,C,D)で表される線形回路としてモデル化した場合、電圧検出部3及び較正した第1電流検出部4aを用いて測定した基準パネルSのインピーダンス(すなわち、ステップS7で測定されたインピーダンスZX1)は、以下の式(3)で表すことができる。
【0087】
[数3]
X1=(AV+BI)/(CV+DI) …(3)
ただし、Vは出力電圧、Iは出力電流である。
【0088】
また、図10における接続基板端子部73が開放された状態でインピーダンス(すなわち、ステップS3で測定されたインピーダンスZO1)は、以下の式(4)で表すことができる。
【0089】
[数4]
O1=A/C …(4)
【0090】
また、図10における接続基板端子部73が短絡された状態でインピーダンス(すなわち、ステップS5で測定された第1短絡配線間インピーダンスZS1)は、以下の式(5)で表すことができる。
【0091】
[数5]
S1=B/D …(5)
【0092】
また、フラットケーブル60及び接続基板70は対称回路であるため、以下の式(6)が成り立つ。
【0093】
[数6]
A=D …(6)
【0094】
また、図10における基準パネルSの補正後基準インピーダンスZSTDは、以下の式(7)で表すことができる。
【0095】
[数7]
STD=V/I …(7)
【0096】
式(3)から式(7)を用いてFパラメータA~Dを消去すると、式(1)を得ることができる。
【0097】
[式(2)の求め方について]
図11Aは、上述した式(2)を説明するための図であって、検査装置ユニット10に補正後基準インピーダンスの値がZSTDとなる負荷を接続した場合の模式図である。また、図11Bは、検査装置ユニット10にタッチパネル50を接続した状態を示す模式図である。
【0098】
ステップS9では、較正された電流検出部である第1電流検出部4aを用いて測定された基準パネルSの第1基準インピーダンスZX1を補正することにより、補正後基準インピーダンスZSTDが算出された。この補正後基準インピーダンスZSTDを用いれば、図11Bに示すタッチパネル50のインピーダンスの測定誤差、具体的には、較正されていない電流検出部である第2電流検出部4b,4c,4dを用いて測定されたタッチパネル50のZの測定誤差を補正することができる。
【0099】
具体的には、図11Aを参照して、補正後基準インピーダンスZSTDの負荷を接続基板端子部73に接続した場合に、検査装置1でのZ測定値がZとなると仮定すると、以下の式(8)が成り立つ。
【0100】
[数8]
=V/I、Z=V/I、 Z=(AV+BI)/(CV+DI)=(AZ+B)/(CZ+D) …(8)
ただし、Vは入力電圧、Iは入力電流、Zは入力インピーダンス、Zは出力インピーダンスである。
【0101】
上述したパラメータA,B,C,Dは、以下の値を式(8)に適用することにより消去できる。具体的には、ステップS4での測定値である第2開放配線間インピーダンスZO2と、ステップS6での測定値である第2短絡配線間インピーダンスZS2と、ステップS8での測定値である第2基準インピーダンスZX2と、ステップS10での測定値である対象物インピーダンスZXMと、ステップS9での測定値である補正後基準インピーダンスZSTDと、を式(8)に適用することによりA~Dを消去でき、式(2)を算出することができる。ここで、第2開放配線間インピーダンスZO2、第2短絡配線間インピーダンスZS2、第2基準インピーダンスZX2、および、対象物インピーダンスZXMは、較正されていない電流検出部4b,4c,4dの測定結果による値である。すなわち、補正後基準インピーダンスZSTDと、較正されていない電流検出部4b,4c,4dの測定結果とにより、タッチパネル50のZの測定誤差を補正できる。
【0102】
以上のように、第1実施形態に係るインピーダンス測定方法によれば、複数の電流検出部4a,4bによって一度に複数のポイントのインピーダンスを同時に測定することができるため、検査速度を高速化できる。
【0103】
しかも、第1実施形態によれば、式(2)を用いて、較正が行われていない第2電流検出部4b,4c,4dを含む全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定されたインピーダンスを補正することにより、正確なインピーダンス測定を行うことができる。言い換えれば、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを較正せずとも正確なインピーダンス測定を行うことができるため、検査装置1の性能を維持しつつ、製品出荷時に通常必要となる全ての電流検出部4a,4b,4c,4dの較正作業を簡略化できる。
【0104】
[効果]
以上のように、第1実施形態に係る検査装置1を用いたインピーダンスの測定方法によれば、検査装置1に含まれる複数の電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて、タッチパネル50の複数ポイント(例えばP11,P21,P31,P41,…)の対象物インピーダンスZXMを並行して測定することができる。これにより、タッチパネル50においてインピーダンス測定が必要な多数箇所のうちの複数箇所のインピーダンスをまとめて測定できるため、測定時間を短縮できる。
【0105】
また、この測定方法によれば、上述のように測定された複数箇所の対象物インピーダンスZXMが、較正された電流検出部(第1電流検出部4a)を用いて測定された基準パネルSの第1基準インピーダンスZX1を用いて補正される。よって、この方法によれば正確な電流値を検出可能な第1電流検出部4aを用いて第1基準インピーダンスZX1が測定されるため、タッチパネル50の対象物インピーダンスZXMを補正するための第1基準インピーダンスZX1を精度よく測定できる。
【0106】
また、この測定方法によれば、多数のタッチパネル50の中から選定したものを基準パネルSとして使用できる。すなわち、この方法によれば、全ての測定箇所のインピーダンスが既知となっているサンプルをわざわざ準備する必要がないため、利便性に優れた測定方法を提供できる。
【0107】
従って、この測定方法によれば、検査装置1に含まれる複数の電流検出部4a,4b,4c,4dの較正の手間を簡略化しつつ、正確なインピーダンス値を得ることができる。
【0108】
また、この測定方法によれば、極端なインピーダンス値を有するタッチパネル50が基準サンプルSの対象から外される。これにより、適切なインピーダンス値を有するタッチパネル50を基準サンプルSとして選定でき、対象物インピーダンスZXMを適切な第1基準インピーダンスZX1で補正することができるため、より正確な補正後インピーダンスZDUTを得ることができる。
【0109】
また、この測定方法によれば、複数の電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定された対象物インピーダンスZXMに対して、いわゆるオープン補正及びロード補正が行われる。これにより、より正確な補正後インピーダンスZDUTを得ることができる。
【0110】
また、この測定方法によれば、複数の電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定された対象物インピーダンスZXMに対して、上述したオープン補正及びロード補正だけでなく、いわゆるショート補正も行われる。これにより、より一層正確な補正後インピーダンスZDUTを得ることができる。
【0111】
また、この測定方法によれば、較正された電流検出部(第1電流検出部4a)を用いて測定された基準パネルSの第1基準インピーダンスZX1に対して、いわゆるオープン補正及びショート補正が行われる。これにより、基準パネルSのより正確な補正後基準インピーダンスZSTDを得ることができるため、より一層正確な補正後インピーダンスZDUTを得ることができる。
【0112】
また、この測定方法によれば、式(1)を用いて適切な補正後基準インピーダンスZSTDを得ることができる。フラットケーブル60及び接続基板70のインピーダンスを含んだ値である第1基準インピーダンスZX1から、フラットケーブル60及び接続基板70のインピーダンスを含まない値である補正後基準インピーダンスZSTDを得ることができる。
【0113】
また、この測定方法によれば、式(2)を用いて適切な補正後インピーダンスZDUTを得ることができる。
【0114】
また、この測定方法によれば、タッチパネル50が有する各電極51,52間の補正後インピーダンスZDUTを正確に測定することができる。
【0115】
また、検査装置1によれば、複数の電流検出部4a,4b,4c,4dの較正の手間を簡略化しつつ、正確な補正後インピーダンスZDUTを得ることができる。
【0116】
なお、第1実施形態に関する説明は本測定方法及び本検査装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本測定方法および本検査装置は第1実施形態以外に例えば以下に示される上記実施形態の変形例、及び、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0117】
上述した実施形態では、検査装置1の検査対象物としてタッチパネル50を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、検査対象物は、互いに離間した複数の導電部を有するものであればよい。
【0118】
例えば、検査装置1の検査対象物は、IC(Integrated Circuit)であってもよい。この場合、ICのピンは、タッチパネル50のタッチパネル端子部54に相当する。検査装置1は、接続基板端子部73に相当するソケット(図示省略)に挿入されたICと電気的に接続される。これにより、ICのピン間のインピーダンスを測定できる。また、検査装置1の検査対象物は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスであってもよい。MEMSデバイスの入出力端子は、タッチパネル50のタッチパネル端子部54に相当する。検査装置1は、MEMSデバイスと電気的に接続される。これにより、MEMSデバイスのインピーダンスを測定できる。
【0119】
[第2実施形態]
図12は、検査装置1によるインピーダンスの測定方法であって上述した測定方法とは異なる別の測定方法(第2実施形態に係る測定方法)を説明するためのフローチャートである。また、図13から図15は、それぞれ、図12におけるステップS27,28,30のそれぞれを説明するための図である。
【0120】
第2実施形態に係る測定方法によれば、複数のタッチパネル50のそれぞれにおける所望箇所のインピーダンス、具体的には1つの第1透明電極51X(図示省略)と1つの第2透明電極51Y(図示省略)とが交わるポイント(例えば図1のP11)のインピーダンスを、複数のタッチパネル50において並行して測定することができる。以下では、各タッチパネル50のP11におけるインピーダンスを並行して測定する例を挙げて説明する。なお、ステップS21及びS23~S26は、ステップS1及びS3~S6と同様であるため、説明を省略する。また、各タッチパネル50を区別して説明するときには、タッチパネル50の符号として50a,50b,50c,50dを用いる。
【0121】
ステップS22では、複数の基準パネルS~Sが選定される。Nは2以上の自然数であればよいが、本実施形態ではN=4として説明する。基準パネルSにおいて、所望箇所(P11)がインピーダンスの測定対象として選定される。同様に、他の基準パネルS~Sにおいても、P11がインピーダンス測定対象として選定される。基準パネルSとしては、P11におけるインピーダンスが、標準的なタッチパネル50のP11におけるインピーダンスと大きくかけ離れていないものが選定される。基準パネルSのP11における正確なインピーダンスは算出されている必要がなく、他のタッチパネル50のP11におけるインピーダンスを相対的に大きく異なっていないことが確認されていればよい。基準パネルSとして、第1透明電極51X及び第2透明電極51Yの少なくともいずれか一方が断線していないもの、第1透明電極51Xと第2透明電極51Yとが短絡していないものが好適である。
【0122】
ステップS27では、第1電流検出部4aを用いて、各基準パネルS~SのポイントP11における第1基準インピーダンスZX1が測定される。
【0123】
ステップS27では、図13を参照して、まず検査装置1側の各第1配線11~18が各基準パネルS~Sの配線53a,53bに対して接続される。具体的には、例えば、図13に示すように、第1配線14及び第2配線15が、基準パネルSの配線53a及び配線53bのそれぞれに接続され、第1配線13及び第2配線16が、基準パネルSの配線53a及び配線53bのそれぞれに接続され、第1配線12及び第2配線17が、基準パネルSの配線53a及び配線53bのそれぞれに接続され、第1配線11及び第2配線18が、基準パネルSの配線53d及び配線53eのそれぞれに接続される。これにより、4つの基準パネルS~Sが検査装置1と適切に接続される。なお、図13及び図14では、図15に示すタッチパネル50a~50dと区別するため、基準パネルS1~S4にハッチングを付している。また、図13から図15では、第2実施形態に係るインピーダンス測定方法においてインピーダンス測定される箇所(P11)、及びP11に接続されている配線53a,53bのみが模式的に図示されており、それ以外の部分については図示が省略されている。
【0124】
この状態において、切替スイッチ5d及び切替スイッチ5eをオンし且つその他の切替スイッチ5をオフにすることにより基準パネルSのポイントP11における第1基準インピーダンスZX1が測定される。また、切替スイッチ5c及び切替スイッチ5gをオンし且つその他の切替スイッチをオフにすることにより基準パネルSのポイントP11における第1基準インピーダンスZX1が測定される。また、切替スイッチ5b及び切替スイッチ5iをオンし且つその他の切替スイッチをオフにすることにより基準パネルSのポイントP11における第1基準インピーダンスZX1が測定される。また、切替スイッチ5a及び切替スイッチ5kをオンし且つその他の切替スイッチ5をオフにすることにより基準パネルSのポイントP11における第1基準インピーダンスZX1が測定される。これにより、各基準パネルS~SのP11における第1基準インピーダンスZX1が、第1電流検出部4aを用いて測定される。
【0125】
ステップS28では、図14を参照して、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用
いて、各基準パネルS~SのP11における第2基準インピーダンスZX2が測定さ
れる。
【0126】
ステップ28におけるインピーダンス測定を実施する際の、配線11~18と各基準パネルS~Sの配線53a,53bとの接続状態は、ステップ27の場合と同じである。具体的には、第1配線14及び第2配線15が基準パネルSの配線53a及び配線53bのそれぞれに接続され、第1配線13及び第2配線16が基準パネルSの配線53a及び配線53bのそれぞれに接続され、第1配線12及び第2配線17が基準パネルSの配線53a及び配線53bのそれぞれに接続され、第1配線11及び第2配線18が基準パネルSの配線53d及び配線53eのそれぞれに接続されている。この状態において、ステップS28におけるインピーダンス測定が行われる。
【0127】
具体的には、切替スイッチ5d及び切替スイッチ5eをオンし且つその他の切替スイッチ5をオフにすることにより基準パネルSのポイントP11におけるインピーダンスが測定される。また、切替スイッチ5c及び切替スイッチ5fをオンし且つその他の切替スイッチ5をオフにすることにより基準パネルSのポイントP11におけるインピーダンスが測定される。また、切替スイッチ5b及び切替スイッチ5hをオンし且つその他の切替スイッチ5をオフにすることにより基準パネルSのポイントP11におけるインピーダンスが測定される。また、切替スイッチ5a及び切替スイッチ5jをオンし且つその他の切替スイッチ5をオフにすることにより基準パネルSのポイントP11におけるインピーダンスが測定される。これにより、各基準パネルS~SのP11におけるインピーダンスが、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて測定される。
【0128】
ステップS29では、ステップS23,S25で求めた各補正パラメータ(第1開放配線間インピーダンスZO1,第1短絡配線間インピーダンスZS1)に基づき、ステップS27で求めた各基準パネルS~SのP11におけるインピーダンスが補正される。これにより、各基準パネルS~Sの補正後基準インピーダンスZSTDが算出される。補正には、ステップS9と同様に式(1)を用いる。
【0129】
ステップS30では、図15を参照して、全ての電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて、各タッチパネル50のP11におけるインピーダンスが測定される。ステップS30におけるZ測定の具体的手順の一例は、基準パネルSの代わりにタッチパネル50が接続される点を除き、ステップS28の場合と同じであるため、説明を省略する。
【0130】
そして、ステップS31では、ステップS24,S26,S28で求めた各補正パラメータ(第2開放配線間インピーダンスZO2,第2短絡配線間インピーダンスZS2,第2基準インピーダンスZX2)及びステップS29で求めた補正後基準インピーダンスZSTDに基づき、ステップS30で求めた各タッチパネル50のP11におけるインピーダンスが補正され、補正後インピーダンスZDUTが算出される。これにより、各タッチパネル50の補正後インピーダンスZDUTが算出される。補正には、ステップS11と同様に式(2)を用いる。
【0131】
[第2実施形態の効果]
以上のように、第2実施形態に係るインピーダンス測定方法によれば、検査装置1に含まれる複数の電流検出部4a,4b,4c,4dを用いて、複数のタッチパネル50a~50dのポイントP11における対象物インピーダンスZXMを並行して測定することができる。これにより、複数のタッチパネル50a~50dの対象物インピーダンスZXMをまとめて測定できるため、測定時間を短縮できる。
【0132】
また、この測定方法によれば、上述のように測定された各タッチパネル50の対象物インピーダンスZXMが、較正された電流検出部(第1電流検出部4a)を用いて測定された基準パネルの第1基準インピーダンスZX1を用いて補正される。よって、この方法によれば正確な電流値を検出可能な電流検出部4aを用いて第1基準インピーダンスZX1が測定されるため、タッチパネル50の対象物インピーダンスZXMを補正するための第1基準インピーダンスZX1を精度よく測定できる。
【0133】
また、この測定方法によれば、多数のタッチパネル50の中から選定したものを基準パネルSとして使用できる。すなわち、この方法によれば、インピーダンスが既知となっているサンプルをわざわざ準備する必要がないため、利便性に優れた測定方法を提供できる。
【0134】
従って、この方法によれば、第1実施形態に係るインピーダンス測定方法の場合と同様、検査装置に含まれる複数の電流検出部4a,4b,4c,4dの較正の手間を簡略化しつつ、正確なインピーダンス値を得ることができる。
【0135】
なお、第2実施形態に係るインピーダンス測定方法では、検査対象物がタッチパネル50である例を挙げて説明した。しかし、これに限らず、検査対象物は、IC、或いはMEMSデバイスであってもよい。更には、検査対象物は、複数の第1電極及び複数の第2電極を有するものでなくてもよく、1つの第1電極及び1つの第2電極を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 検査装置
4a 第1電流検出部(較正された電流検出部)
4b、4c、4d 第2電流検出部
50、50a~50d タッチパネル(検査対象物)
51、51a~51d 第1透明電極(第1電極)
52、52a~52d 第2透明電極(第2電極)
S、S~S 基準パネル(基準サンプル)
DUT 補正後インピーダンス
STD 補正後基準インピーダンス
XM 対象物インピーダンス
X1 第1基準インピーダンス
X2 第2基準インピーダンス
O1 第1開放配線間インピーダンス
O2 第2開放配線間インピーダンス
S1 第1短絡配線間インピーダンス
S2 第2短絡配線間インピーダンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15