(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240416BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/68 K
(21)【出願番号】P 2022195713
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2019510257の分割
【原出願日】2018-03-30
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2017071013
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】原 篤史
(72)【発明者】
【氏名】坂田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】橋場 成史
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-251788(JP,A)
【文献】特開2007-027331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0061218(US,A1)
【文献】特開2004-104023(JP,A)
【文献】特開2014-098731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30、21/67-21/683
G05D 3/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上を駆動可能な第1移動体と、
前記第1移動体上を駆動可能な第2移動体と、
前記第2移動体を前記第1移動体上で駆動させる第1推力を付与する第1アクチュエータと、
一端が前記第1移動体に連結され、他端が前記第2移動体に連結され、前記第2移動体を前記第1移動体上で駆動させる推力として前記第1推力よりも大きい第2推力を付与する第2アクチュエータと、
前記第1移動体を前記ベース上で駆動させる第3推力または第4推力を付与する第3アクチュエータと、
前記第1乃至第3アクチュエータを制御する制御系と、
を備え、
前記第2アクチュエータは、一端が前記第1移動体に連結されるとともに他端が前記第2移動体に連結された振動減衰部であるベローズを含み、
前記制御系は、
前記ベローズ内の圧力を制御することで、前記第2アクチュエータから前記第2移動体に付与する推力を制御し、
前記第3アクチュエータから前記第1移動体に前記第3推力を付与させ、且つ前記第2アクチュエータから前記第2移動体に前記第2推力を付与させることで、
前記第1移動体及び前記第2移動体の相対移動を制限しつつ、前記第1及び第2移動体を
前記ベースに対して相対移動させ、
前記第3アクチュエータから前記第1移動体に前記第4推力を付与させ、且つ前記第1アクチュエータから前記第2移動体に前記第1推力を付与させることで、
前記第2アクチュエータ
の前記ベローズの前記一端が前記第1移動体
に連結されるとともに前記他端が前記第2移動体
に連結
された状態で前記第1移動体及び前記第2移動体の相対移動を可能に
しつつ、前記第1移動体及び前記第2移動体を前記ベースに対して相対移動させる、
移動体装置。
【請求項2】
前記第1アクチュエータは、リニアモータである請求項1
に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記第2アクチュエータは、空圧アクチュエータである請求項1
に記載の移動体装置。
【請求項4】
請求項1
に記載の移動体装置と、
前記第1移動体に保持された物体にエネルギビームを用いてパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【請求項5】
前記物体は、フラットパネルディスプレイ用の基板である請求項
4に記載の露光装置。
【請求項6】
請求項
4に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、投影光学系(レンズ)を介して照明光(エネルギビーム)でガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)を露光することによって、該基板にフォトマスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)が有する所定のパターンを転写する露光装置が用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、水平面内を長ストロークで移動可能な粗動ステージと、基板を保持する微動ステージとを備え、電磁モータなどの微動アクチュエータを用いて粗動ステージから微動ステージに推力を付与し、微動ステージの高精度位置制御を行う粗微動構成のステージ装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、近年の基板の大型化により、微動ステージが大型化する傾向にある。これに伴い、上述した微動アクチュエータも、駆動対象物である微動ステージの大型化に対応するため、高出力化(大型化)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/0018950号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、ベースと、前記ベース上を駆動可能な第1移動体と、前記第1移動体上を駆動可能な第2移動体と、前記第2移動体を前記第1移動体上で駆動させる第1推力を付与する 第1アクチュエータと、一端が前記第1移動体に連結され、他端が前記第2移動体に連結され、前記第2移動体を前記第1移動体上で駆動させる推力として前記第1推力よりも大きい第2推力を付与する第2アクチュエータと、前記第1移動体を前記ベース上で駆動させる第3推力または第4推力を付与する第3アクチュエータと、前記第1乃至第3アクチュエータを制御する制御系と、を備え、前記制御系は、前記第3アクチュエータから前記第1移動体に前記第3推力を付与させ、且つ前記第2アクチュエータから前記第2移動体に前記第2推力を付与させることで、前記第1移動体及び前記第2移動体の相対移動を制限しつつ、前記第1及び第2移動体を移動させ、前記第3アクチュエータから前記第1移動体に前記第4推力を付与させ、且つ前記第1アクチュエータから前記第2移動体に前記第1推力を付与させることで、前記第2アクチュエータによる前記第1移動体及び前記第2移動体の連結を維持しつつ前記第1移動体及び前記第2移動体の相対移動を可能にする移動体装置が、提供される。
【0007】
第2の態様によれば、ベースと、前記ベース上を駆動可能な第1移動体と、前記第1移動体上を駆動可能な第2移動体と、前記第2移動体を前記第1移動体上で駆動させる第1アクチュエータと、一端が前記第1移動体に連結され、他端が前記第2移動体に連結された第2アクチュエータと、前記第1及び第2アクチュエータを制御する制御系と、を備え、前記制御系は、前記第2アクチュエータを第1状態にすることで、前記第1移動体及び前記第2移動体の相対移動を制限し、前記第2アクチュエータを第2状態にし、前記第1アクチュエータを制御することで、前記第1移動体及び前記第2移動体の相対移動を可能にする移動体装置、が提供される。
【0008】
第3の態様によれば、第1及び第2の態様に係る移動体装置と、前記第1移動体に保持された物体に対してエネルギビームを用いてパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置が、提供される。
【0009】
第4の態様によれば、第3の態様に係る露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の液晶露光装置が備える基板駆動系のうち第1駆動系(微動ステージ駆動系)の構成を説明するための図である。
【
図4】第1駆動系が有する2つのアクチュエータの制御バランスを説明するための図である。
【
図6】液晶露光装置が有する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について、
図1~
図6を用いて説明する。
【0012】
図1には、一実施形態に係る露光装置(ここでは液晶露光装置10)の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、物体(ここではガラス基板P)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。ガラス基板P(以下、単に「基板P」と称する)は、平面視矩形(角型)に形成され、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる。
【0013】
液晶露光装置10は、照明系12、回路パターンなどが形成されたマスクMを保持するマスクステージ装置14、投影光学系16、装置本体18、表面(
図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを投影光学系16に対し相対的に移動させる移動体装置(ここでは基板ステージ装置20)、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系16に対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0014】
照明系12は、米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されており、図示しない光源(水銀ランプ、あるいはレーザダイオードなど)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、複数の露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、i線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0015】
マスクステージ装置14が保持するマスクMとしては、下面(
図1では-Z側を向いた面)に所定の回路パターンが形成された、透過型のフォトマスクが用いられる。マスクステージ装置14は、国際公開第2010/131485号に開示されるものと同様の、いわゆる粗微動構成のステージ装置であって、マスクMを保持するメインステージ(微動ステージ)14aと、一対のサブステージ(粗動ステージ)14bとを備えている。各サブステージ14bは、対応する架台14c上で、リニアモータによってX軸方向に長ストロークで駆動される。マスクステージ装置14では、上記リニアモータと併せてマスク駆動系92(
図1では不図示。
図6参照)を構成する複数のボイスコイルモータ14dによって、サブステージ14bからメインステージ14aに対して適宜推力が付与される。主制御装置90(
図1では不図示。
図6参照)は、マスク駆動系92を介してメインステージ14a(マスクM)を照明光ILに対して、一対のサブステージ14bとともにX軸方向に長ストロークで駆動するとともに、一対のサブステージ14bに対してXY平面内(Y軸方向、及びθz方向を含む)で適宜微小駆動する。メインステージ14aのXY平面内の位置情報は、エンコーダシステム、あるいは干渉計システムなどを含むマスク計測系94(
図1では不図示。
図6参照)を介して主制御装置90により求められる。
【0016】
投影光学系16は、マスクステージ装置14の下方に配置されている。投影光学系16は、米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数のレンズモジュールを備えている。
【0017】
液晶露光装置10では、照明系12からの複数の照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過(透過)した照明光ILにより、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0018】
装置本体18は、マスクステージ装置14、及び投影光学系16を支持しており、防振装置19を介してクリーンルームの床F上に設置されている。装置本体18は、米国特許出願公開第2008/0030702号明細書に開示される装置本体と同様に構成されており、上架台部18a、一対の中架台部18b、及び下架台部18cを有している。上述したマスクステージ装置14の架台14cは、装置本体18に対して振動的に絶縁状態となるように、装置本体18とは物理的に分離した状態で床F上に設置されている。
【0019】
基板ステージ装置20は、基板Pを投影光学系16(照明光IL)に対して高精度で位置制御するための装置であり、具体的には、基板Pを照明光ILに対して水平面(X軸方向、及びY軸方向)に沿って所定の長ストロークで駆動するとともに、6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、及びθzの各方向)に微少駆動する。基板ステージ装置20は、後述する第1駆動系62(
図6参照)を除き、米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるものと同様に構成された、いわゆる粗微動構成のステージ装置であって、基板ホルダ22を介して基板Pを保持する微動ステージ24、ガントリタイプの粗動ステージ26、自重支持装置28、ベースフレーム30、及び基板ステージ装置20を構成する各要素を駆動するための基板駆動系60(
図1では不図示、
図6参照)、上記各要素の位置情報を計測するための基板計測系96(
図1では不図示、
図6参照)などを備えている。
【0020】
微動ステージ24は、平面視矩形の板状(あるいは箱型)に形成され、その上面に基板ホルダ22が固定されている。基板ホルダ22は、微動ステージ24よりもX軸及びY軸方向の寸法が長い平面視矩形の板状(あるいは箱形)に形成され、その上面(基板載置面)に基板Pが載置される。基板ホルダ22の上面のX軸及びY軸方向の寸法は、基板Pと同程度に(実際には幾分短く)設定されている。基板Pは、基板ホルダ22の上面に載置された状態で基板ホルダ22に真空吸着保持されることによって、ほぼ全体(全面)が基板ホルダ22の上面に沿って平面矯正される。
【0021】
粗動ステージ26は、Y粗動ステージ32とX粗動ステージ34とを備えている。Y粗動ステージ32は、微動ステージ24の下方(-Z側)であって、ベースフレーム30上に配置されている。Y粗動ステージ32は、Y軸方向に所定間隔で平行に配置された一対のXビーム36を有している。一対のXビーム36は、機械的なリニアガイド装置を介してベースフレーム30上に載置されており、ベースフレーム30上でY軸方向に移動自在となっている。ベースフレーム30は、上述した装置本体18に対して振動的に絶縁状態となるように、装置本体18とは物理的に分離した状態で床F上に設置されている。
【0022】
X粗動ステージ34は、Y粗動ステージ32の上方(+Z側)であって、微動ステージ24の下方に(微動ステージ24とY粗動ステージ32との間に)配置されている。X粗動ステージ34は、平面視矩形の板状の部材であって、Y粗動ステージ32が有する一対のXビーム36上に複数の機械的なリニアガイド装置38を介して載置されており、Y粗動ステージ32に対してX軸方向に関して移動自在であるのに対し、Y軸方向に関しては、Y粗動ステージ32と一体的に移動する。
【0023】
自重支持装置28は、微動ステージ24の自重を下方から支持する重量キャンセル装置42と、該重量キャンセル装置42を下方から支持するYステップガイド44とを備えている。重量キャンセル装置42(心柱などとも称される)は、X粗動ステージ34に形成された開口部(不図示)に挿入されており、その重心高さ位置において、X粗動ステージ34に対してフレクシャ装置とも称される複数の連結部材(不図示)を介して機械的に接続されている。重量キャンセル装置42は、X粗動ステージ34に牽引されることによって、該X粗動ステージ34と一体的にX軸、及び/又はY軸方向に移動する。
【0024】
重量キャンセル装置42は、レベリング装置46と称される疑似球面軸受装置を介して微動ステージ24の自重を下方から非接触で支持している。レベリング装置46は、微動ステージ24をXY平面に対して揺動(チルト動作)自在に支持している。レベリング装置46は、不図示のエアベアリングを介して重量キャンセル装置42に下方から非接触状態で支持されている。これにより、微動ステージ24の重量キャンセル装置42(及びX粗動ステージ34)に対するX軸、Y軸、及びθz方向への相対移動、及び水平面に対する揺動(θx、θy方向への相対移動)が許容される。重量キャンセル装置42、レベリング装置46、フレクシャ装置の構成及び機能に関しては、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0025】
Yステップガイド44は、X軸に平行に延びる部材から成り、Y粗動ステージ32が有する一対のXビーム36間に配置されている。Yステップガイド44は、エアベアリング48を介して重量キャンセル装置42を非接触状態で支持しており、重量キャンセル装置42がX軸方向へ移動する際の定盤として機能する。Yステップガイド44は、下架台部18c上に機械的なリニアガイド装置50を介して載置されており、下架台部18cに対してY軸方向に移動自在となっている。Yステップガイド44は、一対のXビーム36に対して、複数の連結部材52(フレクシャ装置)を介して機械的に接続されており、Y粗動ステージ32に牽引されることによって、Y粗動ステージ32と一体的にY軸方向に移動する。
【0026】
基板駆動系60(
図1では不図示。
図6参照)は、微動ステージ24を投影光学系16(照明光IL)に対して6自由度方向に駆動するための第1駆動系62(
図6参照)、Y粗動ステージ32をベースフレーム30上でY軸方向に長ストロークで駆動するための第2駆動系64(
図6参照)、及びX粗動ステージ34をY粗動ステージ32上でX軸方向に長ストロークで駆動するための第3駆動系66(
図6参照)を備えている。第2駆動系64、及び第3駆動系66を構成するアクチュエータの種類は、特に限定されないが、一例として、リニアモータ、あるいはボールねじ駆動装置などを使用することが可能である(
図1ではリニアモータが図示されている)。第2、及び第3駆動系64、66の詳細な構成に関しては、一例として米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0027】
図2には、基板ホルダ22(
図1参照)を取り除いた状態の基板ステージ装置20の平面図が示されている(Y粗動ステージ32、ベースフレーム30(それぞれ
図1参照)なども不図示)。
図2に示されるように、第1駆動系62は、微動ステージ24にX軸方向の推力を付与するための一対のXアクチュエータユニット70X
1、70X
2と、微動ステージ24にY軸方向の推力を付与するための一対のYアクチュエータユニット70Y
1、70Y
2とを有している。一対のXアクチュエータユニット70X
1、70X
2は、微動ステージ24の+X側において、Y軸方向に離間して配置されている。一対のXアクチュエータユニット70X
1、70X
2は、微動ステージ24を含む系(質量系)の重心位置Gに対して対称(
図2では上下対称)に配置されている。ここで、「微動ステージ24を含む系」とは、微動ステージ24、及びその一体物(基板ホルダ22など。
図1参照)を含むものという意味である。
【0028】
一対のYアクチュエータユニット70Y
1、70Y
2は、微動ステージ24の+Y側において、X軸方向に離間して配置されている。一対のYアクチュエータユニット70Y
1、70Y
2は、微動ステージ24を含む系の重心位置Gに対して対称(
図2では左右対称)に配置されている。各Yアクチュエータユニット70Y
1、70Y
2の構成は、配置が異なる点を除き、Xアクチュエータユニット70X
1と同じであるので、以下、4つのアクチュエータユニットを代表してXアクチュエータユニット70X
1の構成について説明する。なお、
図1では、粗動ステージ26、及び自重支持装置28などの構成を説明するため、便宜上一対のXアクチュエータユニット70X
1、70X
2が不図示となっている。
【0029】
Xアクチュエータユニット70X
1は、ムービングマグネット型のXボイスコイルモータ72Xと、Xエアアクチュエータ(空圧アクチュエータ)74Xとを含む一組のアクチュエータを有している。Xボイスコイルモータ72Xは、主に微動ステージ24の投影光学系16(
図1参照)に対するサブミクロンオーダーでの位置制御(微小駆動)に用いられ、Xエアアクチュエータ74Xは、主に微動ステージ24を所定の露光速度まで加速する際に用いられる。Xアクチュエータユニット70X
1が有するXボイスコイルモータ72X、及びXエアアクチュエータ74Xとしては、それぞれストローク(最大送り量)が±数mm(一例として2~3mm)程度のものが用いられているが、Xエアアクチュエータ74Xは、Xボイスコイルモータ72Xに比べ、高出力の(大推力を発生可能な)ものが用いられている。これに対し、Xボイスコイルモータ72Xとしては、Xエアアクチュエータ74Xよりも、駆動対象物(ここでは微動ステージ24)をサブミクロンオーダーで位置制御可能(微少駆動)なものが用いられている。
【0030】
Xボイスコイルモータ72Xの固定子76aは、X粗動ステージ34に支柱78を介して取り付けられ、可動子76bは微動ステージ24の側面に取り付けられている。Xエアアクチュエータ74Xは、合成ゴム製のベローズを有し、該ベローズは、伸縮方向(ここではX軸方向)の一端が上記支柱78(X粗動ステージ34)に機械的に接続され、他端が微動ステージ24の側面に機械的に接続されている。このように、Xボイスコイルモータ72XとXエアアクチュエータ74Xとは、並列的に配置されており、いずれのアクチュエータ72X、74Xを用いて微動ステージ24に推力を付与する際も、その駆動反力は、X粗動ステージ34にのみ作用する(X粗動ステージ34から微動ステージ24に推力を付与する、もしくはX粗動ステージ34から微動ステージ24に推力を伝達するとみなすことができる)。Xボイスコイルモータ72X、及びXエアアクチュエータ74X、並びにその制御系の詳細は、後述する。
【0031】
主制御装置90(
図6参照)は、走査露光動作において、微動ステージ24を静止状態(速度、及び加速度がゼロの状態)から所定の等速移動状態とするために、第3駆動系66(
図6参照)を介してX粗動ステージ34にX軸方向の推力(加速度)を付与して該X粗動ステージ34を走査方向に長ストロークで移動させるとともに、第1駆動系62を介してX粗動ステージ34から微動ステージ24にX軸方向の推力(加速度)を付与する。また、X粗動ステージ34、及び微動ステージ24が所望の露光速度に到達した後(あるいは露光速度に到達する直前)には、所定の整定時間を含み、等速移動するX粗動ステージ34から第1駆動系62を介して微動ステージ24に上記加速駆動制御時よりも小さい推力を付与することによって、微動ステージ24を等速駆動制御する。また、走査露光時には、該等速移動制御と並行し、アライメント計測結果等に基づいて、第1駆動系62を介して微動ステージ24を、投影光学系16(
図1参照)に対して水平面内3自由度方向(X軸方向、Y軸方向、θz方向の少なくとも一方向)に微少駆動する。また、主制御装置90は、Y軸方向に関する基板Pのショット領域間移動動作(Yステップ動作)時には、第2駆動系64(
図6参照)を介してY粗動ステージ32、及びX粗動ステージ34にY軸方向の推力を付与するとともに、第1駆動系62を介してX粗動ステージ34から微動ステージ24にY軸方向の推力を付与する。
【0032】
このように、微動ステージ24の駆動制御時において、主制御装置90(
図6参照)は、第1駆動系62が備える合計で4つのアクチュエータユニット(70X
1、70X
2、70Y
1、70Y
2)を適宜用いて、微動ステージ24に対してX軸方向、Y軸方向、及びθz方向の推力を適宜付与する。この際、1つのアクチュエータユニットが有する一組(2つ)のアクチュエータ(Xアクチュエータユニット70X
1であればXボイスコイルモータ72X、及びXエアアクチュエータ74X)の一方、あるいは両方が、微動ステージ24を駆動する際の条件に基づいて予め設定された、所定の制御バランスで(制御アルゴズムに従って)用いられる。この所定の制御バランスに関しては、後述する。
【0033】
また、第1駆動系62(
図6参照)は、微動ステージ24をX粗動ステージ34に対してZチルト方向(Z軸方向、及びXY平面に対して揺動する方向)に駆動するためのZチルト駆動系68(
図6参照)を備えている。Zチルト駆動系68は、
図1に示されるように、微動ステージ24とX粗動ステージ34との間に配置された複数のZボイスコイルモータ72Zを含む。複数のZボイスコイルモータ72Zは、同一直線上にない、少なくとも3箇所に配置されている。Zボイスコイルモータ72Zを含み、Zチルト駆動系68の構成については、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0034】
微動ステージ24(基板P)の6自由度方向の位置情報は、基板計測系96を介して主制御装置90(それぞれ
図6参照)により求められる。基板計測系96は、装置本体18に固定された光干渉計54を含む光干渉計システムを含む。なお、
図1では、微動ステージ24のY軸方向の位置情報を求めるためのY干渉計のみが図示されているが、実際には、Y干渉計、及び微動ステージ24のX軸方向の位置情報を求めるためのX干渉計が、それぞれ複数配置されている。また、微動ステージ24には、光干渉計54に対応するバーミラー56が固定されている(
図1ではY干渉計に対応するYバーミラーのみが図示されている)。また、
図1では不図示であるが、基板計測系96は、微動ステージ24のZチルト方向の位置情報を求めるためのZチルト計測系(構成は特に限定されない)も含む。光干渉計システム、及びZチルト計測系の一例は、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。なお、微動ステージ24の水平面内の位置情報を求めるための計測系の構成は、適宜変更が可能であり、上述した光干渉計システムに限られず、国際公開第2015/147319号に開示されるようなエンコーダシステム、あるいは光干渉計システムとエンコーダシステムとのハイブリッド型の計測システムを用いても良い。
【0035】
次に、上述した第1駆動系62を構成する各アクチュエータの構成、及びその制御系について説明する。ここで、第1駆動系62が有する4つのアクチュエータユニット70X1、70X2、70Y1、70Y2の構成は、配置(推力の発生方向)が異なる点を除き、実質的に同じであることから、ここでは、説明の便宜上、4つのアクチュエータユニット70X1、70X2、70Y1、70Y2を、特に区別せずにアクチュエータユニット70と称するとともに、アクチュエータユニット70は、ボイスコイルモータ72、及びエアアクチュエータ74を有するものとして説明する。
【0036】
図3に示されるように、アクチュエータユニット70は、制御器80を有している。制御器80は、4つのアクチュエータユニット70X
1、70X
2、70Y
1、70Y
2(
図2参照)それぞれに独立に配置されている。1つのアクチュエータユニット70が有する一組のアクチュエータ(ボイスコイルモータ72、及びエアアクチュエータ74)は、共通の制御器80によって制御される。なお、
図3では、制御器80がアクチュエータユニット70の一部を構成するように図示されているが、制御器80は、液晶露光装置10(
図1参照)を統括制御する主制御装置90(
図6参照)の一部であっても良い。
【0037】
制御器80は、ボイスコイルモータ72の固定子が有するコイルに対する電流の供給制御によって、ボイスコイルモータ72の駆動制御(推力の大きさ、及び向きの制御)を行う。また、制御器80は、エアアクチュエータ74が有するベローズ内の圧力を計測する圧力センサ74aの出力を常時モニタリングしつつ、エアアクチュエータ74とコンプレッサなどを含む加圧エア装置74bとの間に配置されたバルブ74cの開閉制御を行うことにより、エアアクチュエータ74の駆動制御(推力の大きさ、及び向きの制御)を行う。
【0038】
ここで、エアアクチュエータ74に空気が供給された(推力を発生した)状態では、エアアクチュエータ74自体の剛性により、X粗動ステージ34と微動ステージ24とが、機械的に連結された状態となる。この連結状態でX粗動ステージ34がX軸及び/又はY軸方向に長ストロークで移動した場合には、該X粗動ステージ34に機械的に連結された微動ステージ24を、X粗動ステージ34とともに長ストロークで移動させることができる。上述したように、エアアクチュエータ74自体のストロークは、数ミリ程度であるが、エアアクチュエータ74に空気を供給した状態では、X粗動ステージ34がエアアクチュエータ74を介して微動ステージ24を押圧、あるいは牽引するので、ボイスコイルモータ72に電流供給を行うことなく、微動ステージ24を長ストロークで移動させることができる。
【0039】
これに対し、エアアクチュエータ74に空気が供給されていない(推力を発生しない)状態では、エアアクチュエータ74自体の剛性が実質的に無視できる状態となり、微動ステージ24は、X粗動ステージ34に対して、XY平面に沿った方向に関して機械的な拘束がない(移動自在な)状態となる。この非拘束状態でX粗動ステージ34がX軸及び/又はY軸方向に長ストロークで移動した場合には、ボイスコイルモータ72を用いて微動ステージ24に対して推力を付与することにより,微動ステージ24をX粗動ステージ34とともに長ストロークで移動させることができる。また、この長ストロークでの移動と並行して、ボイスコイルモータ72により微動ステージ24をX粗動ステージ34に対して水平面内で微小駆動することもできる。なお、上述の「エアアクチュエータ74の剛性を実質的に無視できる状態」とは、ボイスコイルモータ72で微動ステージ24を駆動する際に、エアアクチュエータ74(ベローズ)の剛性がボイスコイルモータ72の抵抗(負荷)にならないといった程度の意味である。なお、「エアアクチュエータ74による推力を発生しない状態」とは、エアアクチュエータ74に空気が供給されていても良く、微動ステージ24がX粗動ステージ34に対して、XY平面に沿った方向に関して機械的な拘束がない(移動自在な)状態であれば良い。
【0040】
なお、本実施形態のアクチュエータユニット70では、エアアクチュエータ74が微動ステージ24及びX粗動ステージ34それぞれに機械的に接続される構造であるため、微動ステージ24とX粗動ステージ34との間には、エアアクチュエータ74に空気が供給されていない状態を含み、常に振動を相互に伝達可能な物体が介在していることになる。これに対し、エアアクチュエータ74が備えるベローズは、公知の防振(除震)装置(本実施形態の防振装置19(
図1参照)など)に用いられている合成ゴム製のベローズ型空気ばねと同様の除震機能を有しており、微動ステージ24とX粗動ステージ34との間における振動を減衰(振動の伝達を阻害)することができる。このように、エアアクチュエータ74では、ベローズが減衰部として機能し、微動ステージ24とX粗動ステージ34とが、振動的に擬似的な分離状態となる。したがって、ボイスコイルモータ72を用いた微動ステージ24の位置制御を高精度で行うことができる。
【0041】
また、本実施形態の基板ステージ装置20では、上述したように、微動ステージ24の位置制御時において、アクチュエータユニット70が有する2つ(一組)のアクチュエータ、すなわちボイスコイルモータ72とエアアクチュエータ74とが所定の制御バランスで用いられる。以下、2つのアクチュエータの制御バランスについて説明する。
【0042】
図4は、本実施形態のアクチュエータユニット70が有する2つのアクチュエータの制御バランスを説明するための概念図である。
図4に示されるように、本実施形態では、微動ステージ24の位置制御時において、必要な(要求される)推力を微動ステージ24に加えるアクチュエータを、周波数によって使い分ける。具体的には、2つのアクチュエータのうち、微動アクチュエータであるボイスコイルモータ72は、エアアクチュエータ74に比べて、高帯域で制御駆動ができることから、高帯域での微動ステージ24の位置制御時には、ボイスコイルモータ72が使用される。また、低帯域での微動ステージ24の位置制御時には、ボイスコイルモータ72に比べて大きな推力を発生可能なエアアクチュエータ74が使用される。また、高帯域と低帯域との間の中帯域では、エアアクチュエータ74が使用される。なお、本実施形態では、一例として、低帯域として3Hz未満、中帯域として3Hz以上且つ10~20Hz未満、高帯域として10~20Hz以上の帯域を想定しているが、各帯域の周波数はこれに限定されず、適宜変更が可能である。
【0043】
また、
図4から分かるように、エアアクチュエータ74を用いる低帯域での微動ステージ24の位置制御では、フィードフォワード(FF)制御により微動ステージ24に推力(Air FF Force)を付与する。エアアクチュエータ74を用いる中帯域での微動ステージ24の位置制御では、フィードバック(FB)制御により微動ステージ24に推力(Air FB Force)を付与する。また、ボイスコイルモータ72を用いる高帯域での微動ステージ24の位置制御では、ボイスコイルモータ72の推力(Motor Force)を微動ステージ24に付与する。なお、中帯域での微動ステージの24の位置制御では、エアアクチュエータ74を用いたフィードバック(FB)制御による推力とボイスコイルモータ72の推力とを、微動ステージ24に付与するようにしても良い。
【0044】
図5は、上記フィードフォワード制御、及びフィードバック制御を行うためのアクチュエータユニット70の制御回路の一例を示すブロック図である。
図5に示されるように、制御器80(
図3参照)から供給される基板Pの目標駆動位置に基づく指令値が、FF(フィードフォワード)コントローラ82a、及びFB(フィードバック)コントローラ82bに入力され、低周波とそれ以外の周波数の2つの信号に分けられる。FFコントローラ82aは、低周波の信号に基づいて演算された出力値を、エアアクチュエータ74(実際にはバルブ74c)を制御するためのエアドライバ84aに出力する。エアアクチュエータ74は、上記出力値に基いて微動ステージ24に推力を付与する。このフィードフォワード制御は、静止状態の微動ステージ24を走査速度に到達するまで加速する際、あるいは微動ステージ24のYステップ動作時、微動ステージ24の減速時(マイナス加速度を付与する場合)など、微動ステージ24を高精度に位置制御する必要がないような場合に行われる。
【0045】
また、微動ステージ24(
図3参照)の位置制御系では、所定の制御サンプリング間隔毎に基板計測系96(
図3参照)の出力に基いて微動ステージ24の現在位置情報を更新し、この微動ステージ24の位置の実測値と指令値との差分である位置誤差信号をフィードバックして、より高精度に微動ステージ24の位置制御を行う。
図5に示されるように、フィードバック信号(位置誤差信号)は、フィードバックコントローラ82bに入力される。フィードバックコントローラ82bからの出力(指令値)は、ローパスフィルタ(LPF
mix86a、及びLPF
air86b)で周波数に基いて分けられる。すなわち、上述したように、中周波(位置誤差信号の低帯域)の信号に基づいて演算された出力値は、エアドライバ84aに入力され、高周波の信号に基づいて演算された出力値は、ボイスコイルモータ72を制御するためのモータドライバ84bに入力される。エアアクチュエータ74、及びボイスコイルモータ72(位置誤差が微少(高帯域)である場合には、ボイスコイルモータ72のみ)は、上記出力値に基いて微動ステージ24に推力を付与する。このフィードバック制御は、微動ステージ24の整定動作時、及び走査露光動作時など、微動ステージ24を高精度で位置制御する際に行われる。
【0046】
また、本実施形態の基板ステージ装置20(
図1参照)では、上述した位置誤差信号に基いて行われるフィードバック制御と併せて、微動ステージ24の加速度を加速度センサ88(
図3参照)によってモニタリングし、微動ステージ24の振動に基づく微動ステージ24の位置誤差を補正する加速度フィードバック制御が行われる。この加速度フィードバック制御は、公知のアクティブ防振(除震)装置などで行われている制御と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の基板ステージ装置20では、微動ステージ24(基板P)の高精度位置制御を行うためのフィードバック制御において、必要な推力を加えるアクチュエータを、周波数の帯域によって分ける(2つのアクチュエータを使い分ける)ので、仮にフィードバック制御(微小位置決め制御)を全てボイスコイルモータ72で行う場合に比べ、ボイスコイルモータ72の負荷が軽いので、ボイスコイルモータ72として、より低出力(小型、且つ低消費電力)のものを用いることができる。
【0048】
また、本実施形態では、フィードフォワード制御として、大推力を発生可能なエアアクチュエータ74のみを用いて微動ステージ24に推力を付与するので、ボイスコイルモータ72に通電することなく、微動ステージ24を加減速することができ、効率が良い。
【0049】
また、アクチュエータユニット70は、2つのアクチュエータ(ボイスコイルモータ72、エアアクチュエータ74)が1つの制御器80によって(1つの信号入力により)統括的に制御されるので、制御系の構成が簡単である。
【0050】
なお、以上説明した実施形態に係る液晶露光装置10を構成する各要素の構成は、上記説明したものに限定されず、適宜変更が可能である。一例として、上記実施形態の第1駆動系62は、合計で4つのアクチュエータユニット(70X1、70X2、70Y1、70Y2)を備えていたが、アクチュエータユニットの数は、これに限られない。また、X軸方向の推力を発生するXアクチュエータユニットとY軸方向に推力を発生するYアクチュエータユニットとで、数が異なっていても良い。
【0051】
また、上記実施形態のアクチュエータユニット70では、2つのアクチュエータ(ボイスコイルモータ72、及びエアアクチュエータ74)が隣接して(離間して)配置される(微動ステージ24の異なる位置に推力を作用させる)構成であったが、各アクチュエータの配置は、これに限られず、ボイスコイルモータ72とエアアクチュエータ74とを同軸上に配置しても良い。具体的には、エアアクチュエータ74に筒状のベローズを使用するとともに、該ベローズの内径側にボイスコイルモータ72を挿入することによって、2つのアクチュエータをほぼ同軸上に配置することができる。
【0052】
また、1つのアクチュエータユニットを構成するアクチュエータの種類も、適宜変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、微少駆動用のアクチュエータとして電磁力(ローレンツ力)駆動方式のボイスコイルモータ72が用いられたが、別種のアクチュエータ(ピエゾ素子などを用いた微動アクチュエータ)を用いても良い。同様に微動ステージ24に大推力を付与するためのアクチュエータとしてエアアクチュエータ74が用いられたが、別種のアクチュエータ(電磁モータなど)を用いても良い。また、複数のアクチュエータユニットにおいて、各アクチュエータユニットが有するアクチュエータの構成は、必ずしも共通していなくても良く、例えばX軸用アクチュエータユニットとY軸用アクチュエータユニットとで構成が異なっていても良い。
【0053】
また、上記実施形態の各アクチュエータユニットは、2つ1組のアクチュエータ(1つのボイスコイルモータ72、及び1つのエアアクチュエータ74)を有していたが、各アクチュエータユニットを構成するアクチュエータの数は、3つ以上であっても良い。この場合、上記実施形態と同様にアクチュエータを2種類とし、一方あるいは両方のアクチュエータを複数配置しても良いし、3つ以上のアクチュエータの種類が互いに異なっていても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、2次元平面内の直交2軸方向(X軸、及びY軸)に推力を発生するアクチュエータユニットが配置されたが、アクチュエータユニットが発生する推力の方向は、これに限られず、1軸方向のみであっても良いし、3自由度方向以上であっても良い。また、上記実施形態では、アクチュエータユニットが、微動ステージ24の+X側と+Y側とに配置されたが、-X側と-Y側とにも配置されるようにしても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、フィードフォワード制御時、及びフィードバック制御時に必要な推力を微動ステージ24に加えるアクチュエータを、3つの帯域(低帯域、中帯域、及び高帯域)によって選択的に使い分ける構成であったが、これに限られず、2つの帯域(低帯域、及び高帯域)によってアクチュエータを選択的に使い分けても良い。具体的には、フィードフォワード制御で低帯域用のエアアクチュエータ74のみを用いて微動ステージ24を加速し、フィードバック制御で高帯域用のボイスコイルモータ72のみを用いて微動ステージ24の位置制御を行っても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、基板Pを保持する微動ステージ24を高精度位置制御するための第1駆動系62が複数のアクチュエータユニットを備える場合を説明したが、これに限られず、マスクM(
図1参照)を駆動するためのマスク駆動系92(
図6参照)に、同様の構成のアクチュエータユニットを配置しても良い。上記実施形態のマスクステージ装置14では、マスクMは、X軸方向にのみ長ストロークで移動するので、アクチュエータユニットとしては、X軸方向に推力を発生するもののみを配置すれば良い。
【0057】
また、上記実施形態の基板ステージ装置20の構成も、上記実施形態で説明したものに限られず、適宜変更が可能であり、それらの変形例にも、本実施形態と同様の基板駆動系60を適用することが可能である。すなわち、基板ステージ装置としては、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるような、X粗動ステージ上にY粗動ステージが配置されるタイプの粗動ステージであっても良い(この場合、微動ステージ24は、Y粗動ステージから各アクチュエータユニットによって推力が付与される)。また、基板ステージ装置としては、必ずしも自重支持装置28を有していなくても良い。また、基板ステージ装置は、基板Pを走査方向にのみ長ストローク駆動するものであっても良い。
【0058】
また、制御器80は、4つのアクチュエータユニット70X
1、70X
2、70Y
1、70Y
2(
図2参照)それぞれに独立に配置されていると説明したが、一対のXアクチュエータユニット70X
1、70X
2に1つの制御器80、一対のYアクチュエータユニット70Y
1、70Y
2アクチュエータユニット70に1つの制御器80が配置されるようにしても良い。つまり、駆動方向毎に制御器80が配置される構成としても良い。また、4つ全てのアクチュエータユニット70X
1、70X
2、70Y
1、70Y
2に対して1つの制御器80が配置されるようにしても良い。
【0059】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、エルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0060】
また、投影光学系16が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系16としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0061】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、有機EL(Electro―Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0062】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、ウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、フィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0063】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、移動体を駆動するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【0065】
なお、上記実施形態で引用した露光装置などに関する全ての国際公開、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書などの開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0066】
10…液晶露光装置、20…基板ステージ装置、24…微動ステージ、26…粗動ステージ、34…X粗動ステージ、70X1…Xアクチュエータユニット、72X…Xボイスコイルモータ、74X…Xエアアクチュエータ、90…主制御装置、P…基板。