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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 23/00 20060101AFI20240416BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20240416BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240416BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20240416BHJP
   B23K 26/382 20140101ALN20240416BHJP
   B23K 26/53 20140101ALN20240416BHJP
【FI】
C03C23/00 D
C03C15/00 Z
H05K1/02 C
C03B33/09
B23K26/382
B23K26/53
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023003131
(22)【出願日】2023-01-12
(62)【分割の表示】P 2018085655の分割
【原出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2023052359
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2017090675
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森 重俊
(72)【発明者】
【氏名】小野 元司
(72)【発明者】
【氏名】礒部 衛
(72)【発明者】
【氏名】堀内 浩平
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222529(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072259(WO,A1)
【文献】特開平05-245672(JP,A)
【文献】特開平11-177200(JP,A)
【文献】特開2010-287878(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087483(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00-33/14
C03C 15/00,23/00
H05K 1/02
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラス基板の製造方法であって、
レーザ光を使用して、ガラス基板の第1の表面から第2の表面まで貫通する複数の貫通孔を形成するステップであって、
(i)前記レーザ光を照射して前記貫通孔を形成する際に、前記ガラス基板を固定するステージとして、平坦度±50μm以内のステージを使用するステップ、
(ii)前記レーザ光を照射して前記貫通孔を形成する際に、レーザ光照射位置にエアーブローを実施し、加工中のヒューム、デブリによるレーザ出力低下を抑制するステップ、および
(iii)前記レーザ光を照射して前記貫通孔を形成する際に、レーザ光学系にオートフォーカスを使用し、前記ガラス基板と前記レーザ光の焦点距離を一定にするステップ、
の少なくとも一つを有する、ステップを有し、
前記ガラス基板は、0.3mm(ただし、0.3mmを除く)~0.6mmの範囲の厚さt(mm)を有し、
各貫通孔は、前記第1の表面に直径φ1の上部開口を有し、前記第2の表面に直径φの下部開口を有し、前記直径φは、50μm~200μmの範囲であり、直径φは、30μm~150μmの範囲であり、前記貫通孔の総数は、少なくとも1万個であり、
前記複数の貫通孔から任意に選択された10個の貫通孔を選定貫通孔と称し、
該選定貫通孔のうち、内部にφ1およびφのうちの小さい方の直径よりも小さな直径を有する狭窄部がないものを、ストレート型貫通孔と称し、
前記選定貫通孔のうち、内部にφ1およびφのうちの小さい方の直径よりも小さな直径を有する狭窄部があるものを、X型貫通孔と称し、前記狭窄部での貫通孔の直径をφとしたとき、前記選定貫通孔は、前記X型貫通孔であり
各選定貫通孔を、延伸軸を通る断面から見たとき
前記X型貫通孔において、以下の(2)式
【数2】
から得られる側壁の近似長さをL(mm)としたとき、
比L/tで表されるR値は、1~1.00123の範囲であり、
前記選定貫通孔におけるR値の平均値をRaveとし、最大値をRmaxとし、最小値をRminとしたとき、
【数3】
で表されるB値は、5%以下である、ガラス基板の製造方法
【請求項2】
前記B値は、2%以下である、請求項1に記載のガラス基板の製造方法
【請求項3】
記R値は、1~1.00074の範囲である、請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法
【請求項4】
前記ガラス基板、高周波デバイス用ガラス基板である、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のガラス基板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板に関し、特に、貫通孔を有するガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貫通孔を有するガラス基板が広く利用されている。例えば、複数の貫通孔を有し、該貫通孔に導電性材料が充填されたガラス基板は、ガラスインターポーザとして利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5994954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような貫通孔を有するガラス基板は、今後次世代の高周波デバイスに対しても、適用が拡大していくことが期待されている。
【0005】
しかしながら、そのような高周波デバイスにおいては、貫通孔の寸法の僅かの変化が、特性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、通信分野において、第5世代モバイル・ネットワーク、いわゆる5Gでは、ミリ波帯の高い周波数範囲が利用される。この場合、高周波回路において配線長さにばらつきが生じると、コイル長が変動し、デバイスの安定性が低下するおそれがある。
【0006】
従って、貫通孔を有するガラス基板がこのような次世代の高周波デバイスに適用されるためには、デバイスの不安定性に対する影響をできる限り少なくする設計が必要となることが予想される。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、高周波デバイスにおいても有意に適用することが可能な、貫通孔を有するガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、第1の表面から第2の表面まで貫通する複数の貫通孔を有するガラス基板であって、
当該ガラス基板は、厚さt(mm)を有し、
各貫通孔は、前記第1の表面に直径φ1の上部開口を有し、前記第2の表面に直径φの下部開口を有し、
前記複数の貫通孔から任意に選択された10個の貫通孔を選定貫通孔と称し、
該選定貫通孔のうち、内部にφ1およびφのうちの小さい方の直径よりも小さな直径を有する狭窄部がないものを、ストレート型貫通孔と称し、
前記選定貫通孔のうち、内部にφ1およびφのうちの小さい方の直径よりも小さな直径を有する狭窄部があるものを、X型貫通孔と称し、前記狭窄部での貫通孔の直径をφとし、
各選定貫通孔を、延伸軸を通る断面から見たとき、
前記ストレート型貫通孔の場合、以下の(1)式
【0009】
【数1】
から得られる側壁の近似長さをL(mm)とし、
前記X型貫通孔の場合、以下の(2)式
【0010】
【数2】
から得られる側壁の近似長さをL(mm)としたとき、
比L/tで表されるR値は、1~1.1の範囲であり、
前記選定貫通孔におけるR値の平均値をRaveとし、最大値をRmaxとし、最小値をRminとしたとき、
【0011】
【数3】
で表されるB値は、5%以下である、ガラス基板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、高周波デバイスにおいても有意に適用することが可能な、貫通孔を有するガラス基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態によるガラス基板の一例を模式的に示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるガラス基板に含まれ得る貫通孔の断面の第1の形態を模式的に示した断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるガラス基板に含まれ得る貫通孔の断面の第2の形態を模式的に示した断面図である。
図4】例1に係る選定貫通孔の断面写真の一例である。
図5】例5に係る選定貫通孔の断面写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
(本発明の一実施形態によるガラス基板)
図1には、本発明の一実施形態による、貫通孔を有するガラス基板(以下、「貫通孔含有ガラス基板」と称する)の一例を模式的に示す。
【0016】
図1に示すように、貫通孔含有ガラス基板100は、相互に対向する第1の表面102および第2の表面104を有する。また、貫通孔含有ガラス基板100は、第1の表面102から第2の表面104まで貫通する、多数の貫通孔122を有する。
【0017】
なお、図1に示した例では、貫通孔含有ガラス基板100は、略矩形状である。しかしながら、これは単なる一例であって、貫通孔含有ガラス基板100の形状は特に限られないことに留意する必要がある。例えば、貫通孔含有ガラス基板100の形状は、円形状であってもよく、楕円形状であってもよい。
【0018】
また、図1に示した例では、貫通孔122は、貫通孔含有ガラス基板100の略中央に配置されている。しかしながら、貫通孔122の配置位置は、特に限られないことに留意する必要がある。例えば、貫通孔122は、貫通孔含有ガラス基板100の略中央部分に加えて、またはこれとは別に、貫通孔含有ガラス基板100の略コーナー部近傍などに配置されても良い。
【0019】
なお、貫通孔122には、大きく分けて2つの断面形態が存在する。以下、図2および図3を参照して、そのような2種類の貫通孔の断面形態について説明する。
【0020】
図2には、第1の断面形態を有する貫通孔を模式的に示す。なお、この図2は、貫通孔の延伸軸を通る断面に対応する。
【0021】
図2に示すように、この貫通孔122Aは、ガラス基板100の第1の表面102に形成された上部開口140と、第2の表面104に形成された下部開口150と、側壁155とを有する。
【0022】
上部開口140は直径がφの略円形状であり、下部開口150は直径がφの略円形状であり、φ≧φである。
【0023】
この貫通孔122Aは、断面が略V字型(φ≧φのとき)、または略I字型(φ=φのとき)の形状を有する。以下、このような形態を有する貫通孔122Aを「ストレート型貫通孔」122Aとも称する。
【0024】
図3には、第2の断面形態を有する貫通孔の断面を模式的に示す。なお、この図3は、貫通孔の延伸軸を通る断面に対応する。
【0025】
図3に示すように、この貫通孔122Bも、ガラス基板100の第1の表面102に形成された上部開口140と、第2の表面104に形成された下部開口150と、側壁160とを有する。上部開口140は、直径がφの略円形状であり、下部開口150は直径がφの略円形状であり、φ≧φである。
【0026】
ただし、この貫通孔122Bは、前述のストレート型貫通孔122Aとは異なり、内部に、上部開口140および下部開口150よりも直径が小さな部分、すなわち狭窄部165を有する。狭窄部165の直径をφとする。
【0027】
その結果、貫通孔122Bの側壁160は、一本の直線として近似することはできない。すなわち、側壁160は、狭窄部165を挟んで、上側の第1の部分170と、下側の第2の部分180との組み合わせによって構成される。
【0028】
以下、このような形態を有する貫通孔122Bを「X型貫通孔」122Bとも称する。
【0029】
換言すれば、貫通孔122の内部に、φ1およびφよりも小さな直径を有する狭窄部165が存在しないものは、ストレート型貫通孔122Aと称され、貫通孔122の内部に、φ1およびφよりも小さな直径φを有する狭窄部165が存在するものは、X型貫通孔122Bと称される。
【0030】
ここで、図1に示した貫通孔含有ガラス基板100の特徴を把握するため、以下の操作を行う。
【0031】
まず、貫通孔含有ガラス基板100において、任意に10個の貫通孔122を選定する。これらを特に、「選定貫通孔」と称する。また、各選定貫通孔を、延伸軸を通る断面から観察して、それぞれの選定貫通孔が、前述のストレート型貫通孔122AおよびX型貫通孔122Bのいずれに属するかを判断する。
【0032】
なお、実際には、選定貫通孔の断面形状が、図2(すなわちストレート型貫通孔)、または図3(すなわちX型貫通孔)にぴったりと一致しない場合がしばしば認められる。例えば、選定貫通孔を断面から見たとき、該選定貫通孔の側壁が、実質的に直線形状ではなく、曲線部分と直線部分の両方を有する場合がある。また、例えば、選定貫通孔の側壁が、略「Y型」の形状を有する場合も、しばしば認められる。
【0033】
しかしながら、そのような場合であっても、前述の判断基準が採用される。すなわち、選定貫通孔の断面において、内部に、上部開口の直径φ1および下部開口の直径φよりも小さな直径を有する狭窄部が存在しないものは、ストレート型貫通孔に分類される。また、選定貫通孔の断面において、内部に、φ1およびφよりも小さな直径を有する狭窄部が存在するものは、X型貫通孔に分類される。例えば、断面が略「Y型」の選定貫通孔は、内部に狭窄部が存在しない場合は、ストレート型貫通孔に分類され、内部に狭窄部が存在する場合は、X型貫通孔に分類される。
【0034】
なお、内部に複数の狭窄部を有する選定貫通孔は、いわば、「不良貫通孔」であり、本願では、そのような「不良貫通孔」は、想定していない。
【0035】
次に、選定貫通孔がストレート型貫通孔122Aである場合、以下の(1)式から、側壁155の近似長さL(mm)を求める:
【0036】
【数4】
ここで、前述のように、φはストレート型貫通孔122Aの上部開口140の直径であり、φは下部開口150の直径である。また、t(mm)は、ガラス基板100の厚さである。
【0037】
一方、選定貫通孔がX型貫通孔122Bである場合、以下の(2)式から、側壁160の近似長さL(mm)を求める:
【0038】
【数5】
このような測定を、全ての選定貫通孔に対して実施する。
【0039】
得られた結果から、各選定貫通孔において、比L/tで表されるR値を求める。
【0040】
また、R値の10点平均をRaveとし、最大値をRmaxとし、最小値をRminとし、以下の(3)式で表されるB値を求める:
【0041】
【数6】
このような評価を実施した際に、貫通孔含有ガラス基板100は、R値が1~1.1の範囲であり、B値が5%以下であるという特徴を有する。
【0042】
これは、各貫通孔122の側壁155、160の長さが特定の範囲に収められているとともに、側壁155、160の長さのばらつきが有意に抑制されていることを意味する。
【0043】
従って、このような特徴を有する貫通孔含有ガラス基板100では、高周波デバイスに適用した際に、コイル長が変動してデバイスの安定性が低下するという問題を、有意に抑制することができる。また、これにより、貫通孔含有ガラス基板100は、次世代の高周波デバイスにおいても有意に適用することができる。
【0044】
なお、本願において、貫通孔の上部開口の直径φは、以下のように測定される。ガラス基板の第1の表面において、落射照明により測長器などで観察される貫通孔の上部開口の輪郭を、最小二乗法により近接円で近似する。この近接円の直径を、貫通孔の上部開口の直径φと規定する。
【0045】
同様に、貫通孔の下部開口の直径φは、以下のように測定される。ガラス基板の第2の表面において、落射照明により測長器などで観察される貫通孔の下部開口の輪郭を、最小二乗法により近接円で近似する。この近接円の直径を、貫通孔の下部開口の直径φと規定する。
【0046】
また、貫通孔がX型貫通孔の場合、狭窄部の直径φは、以下のように測定される。ガラス基板の第2の表面の側から透過照明を照射した際に、第1の表面または第2の表面で測長器などで観察される貫通孔の最小輪郭を、最小二乗法により近接円で近似する。この近接円の直径を、貫通孔の狭窄部の直径φと規定する。
【0047】
(貫通孔含有ガラス基板100の詳細)
次に、貫通孔含有ガラス基板100に含まれる各部分または部材の、その他の特徴について説明する。
【0048】
(貫通孔含有ガラス基板100)
貫通孔含有ガラス基板100に使用されるガラス基板の組成は、特に限られない。ガラス基板は、無アルカリガラス、石英ガラスおよび感光性ガラス等であっても良い。
【0049】
ガラス基板の厚さは、特に限られない。ガラス基板の厚さは、例えば、0.05mm~0.8mmの範囲であっても良く、0.1mm~0.6mmの範囲であっても良く、0.3mm~0.5mmの範囲であっても良い。
【0050】
(貫通孔122)
前述のように、貫通孔122から任意に選定された選定貫通孔は、直径φの上部開口140と、直径φの下部開口150とを有する。
【0051】
上部開口140の直径φは、例えば、10μm~200μmの範囲である。直径φは、20μm~160μmの範囲であってもよく、50μm~100μmの範囲であってもよい。また、下部開口150の直径φは、例えば、5μm~150μmの範囲である。直径φは、10μm~100μmの範囲であってもよく、30μm~70μmの範囲であってもよい。
【0052】
なお、選定貫通孔において、前述のように、前記(3)式から算定されるB値は、5%以下である。B値は、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
同様に、R値は、1~1.1の範囲である。R値は、1~1.05の範囲であることが好ましい。
【0054】
このような貫通孔122の形成方法は、特に限られない。
【0055】
貫通孔122は、例えば、ガラス基板にレーザ光を照射することにより、形成されても良い。レーザとしては、COレーザやUVレーザを用いることができる。レーザとして、短パルスレーザ(ピコ秒レーザ、フェムト秒レーザなど)を用いてもよい。また、その後、貫通孔に対して、エッチング処理を実施しても良い。また、レーザ光を照射した段階では非貫通孔またはボイド列が形成され、その後のエッチング処理により貫通孔を形成しても良い。さらに、エッチング処理の前に、アニール処理を行っても良い。あるいは、貫通孔122は、例えば、ドリル孔空け方法のような、機械加工方法で形成されても良い。また、貫通孔122は、例えば、サンドブラスト法により形成されても良い。さらに、貫通孔122は、感光性ガラスを用いた改質法により、形成されても良い。
【0056】
なお、貫通孔122の側壁の長さのばらつきを有意に抑制するためには、下記(i)~(iii)の少なくとも一以上を適用するのが好ましい。
(i)レーザ光を照射して貫通孔を形成する際に、ガラス基板を固定するステージとして、平坦度±50μm以内のステージを使用する。
(ii)レーザ光を照射して貫通孔を形成する際に、レーザ光照射位置にエアーブローを実施し、加工中のヒューム、デブリによるレーザ出力低下を抑制する。
(iii)レーザ光を照射して貫通孔を形成する際に、レーザ光学系にオートフォーカスを使用し、ガラス基板とレーザ光の焦点距離を一定にする。
【0057】
当業者には、この他にも各種方法を用いて、貫通孔122を形成できることが想定される。
【実施例
【0058】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0059】
(例1)
以下の方法で、貫通孔含有ガラス基板を製造した。また、形成された貫通孔における各寸法を測定した。
【0060】
まず、厚さ0.33mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。
【0061】
このガラス基板の第1の表面の略中央に、レーザ光を照射し、約40万個の貫通孔群を形成した。レーザ光源には、COレーザを使用した。
【0062】
次に、得られたガラス基板をフッ酸溶液中でエッチングした。エッチングにより、各貫通孔が拡張されるとともに、ガラス基板の厚さが約0.30mmとなった。
【0063】
以上の工程により、貫通孔含有ガラス基板が得られた。
【0064】
貫通孔群の中から、ランダムに10個の貫通孔を選定貫通孔として選定した。また、各選定貫通孔を延伸軸に沿って切断し、断面の形状を観察した。10個の選定貫通孔は、いずれも、ストレート型の貫通孔であった。
【0065】
図4には、選定貫通孔の断面の形態の一例を示す。
【0066】
各選定貫通孔において、上部開口の直径φおよび下部開口の直径φを測定した。また、得られた結果から、前述の(1)式を用いて、側壁の近似長さLを算定した。さらに、前述の(3)式を用いて、B値を算定した。
【0067】
以下の表1には、各選定貫通孔において測定された値等をまとめて示す。
【0068】
【表1】
この表1から、選定貫通孔のR値は、最大でも1.00023程度であった。また、10個の選定貫通孔におけるB値は、0.009%であった。
【0069】
(例2)
以下の方法で、貫通孔含有ガラス基板を製造した。また、形成された貫通孔における各寸法を測定した。
【0070】
まず、厚さ0.40mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。
【0071】
このガラス基板の第1の表面の略中央に、レーザ光を照射し、約40万個の貫通孔群を形成した。レーザ光源には、COレーザを使用した。
【0072】
次に、得られたガラス基板をフッ酸溶液中でエッチングした。エッチングにより、各貫通孔が拡張されるとともに、ガラス基板の厚さが約0.38mmとなった。
【0073】
以上の工程により、貫通孔含有ガラス基板が得られた。
【0074】
貫通孔群の中から、ランダムに10個の貫通孔を選定貫通孔として選定した。また、各選定貫通孔を延伸軸に沿って切断し、断面の形状を観察した。10個の選定貫通孔は、いずれも、ストレート型の貫通孔であった。
【0075】
各選定貫通孔において、上部開口の直径φおよび下部開口の直径φを測定した。また、得られた結果から、前述の(1)式を用いて、側壁の近似長さLを算定した。さらに、前述の(3)式を用いて、B値を算定した。
【0076】
以下の表2には、各選定貫通孔において測定された値等をまとめて示す。
【0077】
【表2】
この表2から、選定貫通孔のR値は、最大でも1.0012程度であった。また、10個の選定貫通孔におけるB値は、0.032%であった。
【0078】
(例3)
以下の方法で、貫通孔含有ガラス基板を製造した。また、形成された貫通孔における各寸法を測定した。
【0079】
まず、厚さ0.10mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。
【0080】
このガラス基板の第1の表面の略中央に、レーザ光を照射し、約1万個の貫通孔群を形成した。レーザ光源には、COレーザを使用した。
【0081】
次に、得られたガラス基板をフッ酸溶液中でエッチングした。エッチングにより、各貫通孔が拡張されるとともに、ガラス基板の厚さが約0.09mmとなった。
【0082】
以上の工程により、貫通孔含有ガラス基板が得られた。
【0083】
貫通孔群の中から、ランダムに10個の貫通孔を選定貫通孔として選定した。また、各選定貫通孔を延伸軸に沿って切断し、断面の形状を観察した。10個の選定貫通孔は、いずれも、ストレート型の貫通孔であった。
【0084】
各選定貫通孔において、上部開口の直径φおよび下部開口の直径φを測定した。また、得られた結果から、前述の(1)式を用いて、側壁の近似長さLを算定した。さらに、前述の(3)式を用いて、B値を算定した。
【0085】
以下の表3には、各選定貫通孔において測定された値等をまとめて示す。
【0086】
【表3】
この表3から、選定貫通孔のR値は、最大でも1.0155程度であった。また、10個の選定貫通孔におけるB値は、0.276%であった。
【0087】
(例4)
以下の方法で、貫通孔含有ガラス基板を製造した。また、形成された貫通孔における各寸法を測定した。
【0088】
まず、厚さ0.10mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。
【0089】
このガラス基板の第1の表面の略中央に、レーザ光を照射し、約1万個の貫通孔群を形成した。レーザ光源には、COレーザを使用した。
【0090】
次に、得られたガラス基板をフッ酸溶液中でエッチングした。エッチングにより、各貫通孔が拡張されるとともに、ガラス基板の厚さが約0.09mmとなった。
【0091】
以上の工程により、貫通孔含有ガラス基板が得られた。
【0092】
貫通孔群の中から、ランダムに10個の貫通孔を選定貫通孔として選定した。また、各選定貫通孔を延伸軸に沿って切断し、断面の形状を観察した。10個の選定貫通孔は、いずれも、ストレート型の貫通孔であった。
【0093】
各選定貫通孔において、上部開口の直径φおよび下部開口の直径φを測定した。また、得られた結果から、前述の(1)式を用いて、側壁の近似長さLを算定した。さらに、前述の(3)式を用いて、B等を算定した。
【0094】
以下の表4には、各選定貫通孔において測定された値等をまとめて示す。
【0095】
【表4】
この表4から、選定貫通孔のR値は、最大でも1.028程度であった。また、10個の選定貫通孔におけるB値は、1.634%であった。
【0096】
(例5)
以下の方法で、貫通孔含有ガラス基板を製造した。また、形成された貫通孔における各寸法を測定した。
【0097】
まず、厚さ0.50mmのガラス基板(無アルカリガラス)を準備した。
【0098】
このガラス基板の第1の表面の略中央に、レーザ光を照射し、約1万個の貫通孔群を形成した。レーザ光源には、UVレーザを使用した。
【0099】
次に、得られたガラス基板をフッ酸溶液中でエッチングした。エッチングにより、各貫通孔が拡張されるとともに、ガラス基板の厚さが約0.48mmとなった。
【0100】
以上の工程により、貫通孔含有ガラス基板が得られた。
【0101】
貫通孔群の中から、ランダムに10個の貫通孔を選定貫通孔として選定した。また、各選定貫通孔を延伸軸に沿って切断し、断面の形状を観察した。10個の選定貫通孔は、いずれも、X型の貫通孔であった。
【0102】
図5には、選定貫通孔の断面の形態の一例を示す。
【0103】
各選定貫通孔において、上部開口の直径φ、下部開口の直径φ、および狭窄部の直径φを測定した。また、得られた結果から、前述の(2)式を用いて、側壁の近似長さLを算定した。さらに、前述の(3)式を用いて、B値を算定した。
【0104】
以下の表5には、各選定貫通孔において測定された値等をまとめて示す。
【0105】
【表5】
この表5から、選定貫通孔のR値は、最大でも1.00074程度であった。また、10個の選定貫通孔におけるB値は、0.015%であった。
【0106】
本発明に係るガラス基板は、高周波信号を扱う高周波デバイス用の貫通孔を有するガラス基板として有意に適用できる。本発明に係るガラス基板は、例えば、通信機器、周波数フィルター部品、導波管等のバンドパスフィルターなど、貫通孔を有するガラス基板が適用できるデバイスに有意に適用できる。
【符号の説明】
【0107】
100 貫通孔含有ガラス基板
102 第1の表面
104 第2の表面
122 貫通孔
122A ストレート型貫通孔
122B X型貫通孔
140 上部開口
150 下部開口
155 側壁
160 側壁
165 狭窄部
170 第1の部分
180 第2の部分
図1
図2
図3
図4
図5