(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20240416BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240416BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240416BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240416BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20240416BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y80/00
B29C64/124
C08G18/67
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2023521492
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035298
(87)【国際公開番号】W WO2023188464
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2022053197
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁馬
(72)【発明者】
【氏名】出口 義信
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199611(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143293(WO,A1)
【文献】特開2021-146657(JP,A)
【文献】特開2021-102676(JP,A)
【文献】特開2020-105526(JP,A)
【文献】特開2018-111240(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205954(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/196753(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/132699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
C08F283/01
C08F290/00 -290/14
C08F299/00 -299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)、及び光重合開始剤を含有し、
前記ウレタン樹脂(A)は、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物であり、
前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して50~85質量部の範囲であり、
前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)を少なくとも含有し、前記化合物(B-2)の重合体のガラス転移温度が10℃以上50℃未満である、デジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)以外の多官能(メタ)アクリル系化合物を含有しない請求項1記載のデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)を少なくとも含有し、前記化合物(B-1)の重合体のガラス転移温度が10℃未満である請求項1記載のデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)を少なくとも含有し、前記化合物(B-3)の重合体のガラス転移温度が50℃以上である請求項1記載のデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂固形分における(メタ)アクリロイル基の濃度が、2~4mmоl/gの範囲である請求項1記載のデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂(A)におけるアクリロイル基の濃度が0.5~2mmоl/gの範囲である請求項1記載のデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂(A)の含有量は、前記デジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物全量に対して、30質量%以上50質量%以下である、請求項1記載のデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
ウレタン樹脂(A)、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)、及び光重合開始剤を含有し、
前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して50~85質量部の範囲であり、前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、互いに構造の異なる2種の単官能(メタ)アクリル系化合物を少なくとも含有し、前記2種の単官能(メタ)アクリル系化合物のうち、一方の単官能(メタ)アクリル系化合物の重合体のガラス転移温度が10℃未満であり、他方の単官能(メタ)アクリル系化合物の重合体のガラス転移温度が10℃以上であるデジタルライトプロセッシング方式光造形用硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂成型品の製造方法として、3次元CAD等の立体デザインシステムにより設計した立体形状データをもとに、硬化性樹脂組成物を紫外線レーザー等の活性エネルギー線によって選択的に重合硬化させることにより、立体造形物を作製する光学的立体造形法(光造形法)が用いられている。この光学的立体造形法は、切削加工では困難な複雑な形状にも対応が可能であり、製造時間も短く、取扱いも容易であることから、樹脂成型品の他、工業製品の試作モデルの製造に幅広く用いられるようになってきている。
【0003】
光学的立体造形法の代表的な例としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂にコンピューターで制御されたスポット状の紫外線レーザーを上から照射して所定厚みの1層を硬化させ、その造形物を1層分だけ下げることで層上に液状樹脂を供給し、同様に紫外線レーザー光で前記と同様に照射硬化させ積層する、この操作の繰り返しにより立体造形物を得る方法が挙げられる。また、最近では、スポット状の紫外線レーザーを用いる上記の点描方式に加えて、LED等のレーザー以外の光源を用い、複数のデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置したDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)と呼ばれる面状描画マスクを介して、光硬化性樹脂を入れた透明容器を通して紫外光を下から照射して所定の断面形状パターンの1層を硬化させ、その造形物を1層分だけ上に引き上げて、前記と同様に次の1層を照射硬化させ、順次積層して立体造形物を得る面露光方式が増加している。
【0004】
前記光学立体造形法に用いられる光硬化性樹脂に対する要求特性としては、粘度が低く、平滑な液面を形成することができること、優れた硬化性を有することなど様々なものが挙げられる。このような光硬化性樹脂としては、ラジカル重合性化合物を主体とする樹脂組成物が知られているが(例えば、特許文献1及び2参照。)、引き裂き強度、及び復元力を表す圧縮永久歪み率の測定はなされておらず、それらの要求特性を十分に満足するものではなかった。したがって、柔らかい感触がありつつも、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な組成物の実現は困難であった。
【0005】
そこで、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成できる光造形用硬化性樹脂組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-228644号公報
【文献】特開2008-189782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化性樹脂組成物、硬化物及び立体造形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のウレタン樹脂、単官能(メタ)アクリル系化合物、及び光重合開始剤を含有し、前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の含有量が特定の値を示す光造形用硬化性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]ウレタン樹脂(A)、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)、及び光重合開始剤を含有し、前記ウレタン樹脂(A)は、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物であり、前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して50~85質量部の範囲である光造形用硬化性樹脂組成物。
[2]前記ウレタン樹脂(A)以外の多官能(メタ)アクリル系化合物を含有しない[1]の光造形用硬化性樹脂組成物。
[3]前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)を少なくとも含有し、前記化合物(B-1)の重合体のガラス転移温度が10℃未満である[1]又は[2]の光造形用硬化性樹脂組成物。
[4]前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)を少なくとも含有し、前記化合物(B-2)の重合体のガラス転移温度が10℃以上50℃未満である[1]~[3]のいずれかの光造形用硬化性樹脂組成物。
[5]前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)を少なくとも含有し、前記化合物(B-3)の重合体のガラス転移温度が50℃以上である[1]~[4]のいずれかの光造形用硬化性樹脂組成物。
[6]樹脂固形分における(メタ)アクリロイル基の濃度が、2~4mmоl/gの範囲である[1]~[5]のいずれかの光造形用硬化性樹脂組成物。
[7]前記ウレタン樹脂(A)におけるアクリロイル基の濃度が0.5~2mmоl/gの範囲である[1]~[6]のいずれかの光造形用硬化性樹脂組成物。
[8]ウレタン樹脂(A)、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)、及び光重合開始剤を含有し、前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して50~85質量部の範囲であり、前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、互いに構造の異なる2種の単官能(メタ)アクリル系化合物を少なくとも含有し、前記2種の単官能(メタ)アクリル系化合物のうち、一方の単官能(メタ)アクリル系化合物の重合体のガラス転移温度が10℃未満であり、他方の単官能(メタ)アクリル系化合物の重合体のガラス転移温度が10℃以上である光造形用硬化性樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれかの光造形用硬化性樹脂組成物の硬化反応物である硬化物。
[10]活性エネルギー線の照射を硬化条件とする[9]の硬化物。
[11]ASTM D395-03に準拠した圧縮永久歪み率が、60%以下である[9]又は[10]の硬化物。
[12][9]~[11]のいずれかの硬化物からなる立体造形物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成できる光造形用硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/またはメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
【0012】
(光造形用硬化性樹脂組成物)
本発明の光造形用硬化性樹脂組成物は、ウレタン樹脂(A)、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)、及び光重合開始剤を含有する。
前記ウレタン樹脂(A)は、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、前記単官能(メタ)アクリル系化合物(B)は、樹脂固形分100質量部に対して50~85質量部の範囲で含有される。単官能(メタ)アクリル系化合物の含有量をこの数値範囲とすることで、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成できる。
本発明における樹脂固形分とは、硬化性樹脂組成物に含有される重合性二重結合を有する化合物全体を指す。すなわち樹脂固形分とは、ウレタン樹脂(A)の固形分と、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の固形分との合計、又は、硬化性樹脂組成物が他の樹脂(重合体)やアクリル系化合物を含む場合は(A)の固形分と、(B)の固形分と他の樹脂又はアクリル系化合物の固形分との合計である。
また、本発明の光造形用硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ウレタン樹脂(A)及び/又は単官能(メタ)アクリル系化合物(B)以外の2官能以上の他の(メタ)アクリル系化合物を含有することもできる。
さらにまた、本発明の光造形用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、光増感剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機フィラー等のその他の添加剤を含有することもできる。
【0013】
<ウレタン樹脂(A)>
本発明で用いるウレタン樹脂(A)は、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基及び1つ以上のウレタン結合を有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
ウレタン樹脂(A)は、例えばポリイソシアネート(a1)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)とを反応させることにより得ることができる。また前記化合物(a2)以外の水酸基を有する化合物(a3)をさらに反応原料として用いても構わない。
【0014】
<<ポリイソシアネート(a1)>>
ポリイソシアネート(a1)としては、本発明で用いる(メタ)アクリロイル基の含有量が特定の値であるウレタン樹脂(A)が形成できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
【0015】
また、ポリイソシアネート(a1)が、特にイソホロンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体であると、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成するうえで、より好ましい。
【0016】
上述したポリイソシアネート(a1)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0017】
<<水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)>>
水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)としては、分子内に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A)が形成できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記各種の水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、上記各種の水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。
【0018】
また、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)が、特にヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はそのラクトン変性体であると、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成するうえで、より好ましい。
【0019】
上述した水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0020】
<<水酸基を有する化合物(a3)>>
水酸基を有する化合物(a3)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を有さず水酸基を有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチレングリコール、1、3-プロピレングリコール、1、4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1、9-ノナンジオール、1、10-デカンジオール等の直鎖アルキル構造を有する多価アルコール;3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐アルキル構造を有する多価アルコール;それら多価アルコールと炭酸エステルのエステル交換反応により合成されたポリカーボネートポリオール;上記多価アルコールと二塩基酸の脱水縮合反応により合成されたポリエステルポリオール;ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体等のポリアルキレングリコール等を用いることができる。
【0021】
また、水酸基を有する化合物(a3)が、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールであると、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、より好ましい。
さらに、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が200~5000の範囲であることが好ましく、400~3500の範囲であることがより好ましく、500~3000の範囲であることが特に好ましい。数平均分子量をこれら範囲とすることで、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られる。
【0022】
<<ウレタン樹脂(A)の製造方法>>
ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、上記ポリイソシアネート(a1)と、上記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)とを含有する反応原料を一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を分けて順次反応させる方法で製造してもよい。また水酸基を有する化合物(a3)を反応原料として用いても良く、用いなくても構わない。
なお、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、上記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a2)が有する水酸基(OH)と、ポリイソシアネート(a1)が有するイソシアネート基(NCO)との当量比(OH/NCO)は、0.95/1.00~1.05/1.00の範囲であることが好ましく、1/1であることがより好ましい。
【0023】
ウレタン樹脂(A)の製造においては、触媒として、例えば、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート等を用いることができ、通常行われるウレタン化反応の条件で製造することができる。また、必要に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の溶媒、あるいは、イソシアネートと反応する部位を含有しないラジカル重合性単量体のうち水酸基またはアミノ基を含有しないもの等を溶媒として用いることもできる。
【0024】
<<ウレタン樹脂(A)の特性>>
ウレタン樹脂(A)における(メタ)アクリロイル基の含有量は、ウレタン樹脂(A)の単位質量あたりの量(mmоl/g)である。
ウレタン樹脂(A)における(メタ)アクリロイル基の含有量は、0.5mmоl/g以上2mmоl/g以下の範囲であることが好ましく、0.6mmоl/g以上1.8mmоl/g以下であることがより好ましく、0.7mmоl/g以上1.3mmоl/g以下の範囲であることが特に好ましい。(メタ)アクリロイル基の含有量がこれら特定の値であるウレタン樹脂(A)を硬化性樹脂組成物に含有させることで、該硬化性樹脂組成物は、下記実施例でも示す通り、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成することができる。
ウレタン樹脂(A)における(メタ)アクリロイル基の含有量は、例えば、1HNMR分析装置を用いて測定サンプルと内部標準の各ピークを帰属し、積分比により求める方法や、IR分析装置を用いて、アクリロイル基に起因するピークと標準物質の特定ピークとの比から検量線を作成し、定量する方法などで求めることができる。本出願においては、原料の(メタ)アクリロイル基の含有量(理論値)を基に、ウレタン樹脂(A)の(メタ)アクリロイル基含有量を算出した。
【0025】
<光重合開始剤>
本発明の光造形用硬化性樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含有するものである。光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、ポリメリックTPO-L等が挙げられる。
【0026】
その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」「Omnirad TPO-L」、「Omnipol TP」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)、等が挙げられる。
【0027】
光重合開始剤の添加量は、例えば、光造形用硬化性樹脂組成物中に、0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0028】
<単官能(メタ)アクリル系化合物(B)>
(メタ)アクリル系化合物には、窒素含有(メタ)アクリル系化合物も含み得る。
例えば、(メタ)アクリル系化合物として、(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリルアミド類などの(メタ)アクリル系化合物が挙げられる。
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルメトキシ(メタ)アクリレート、2-エチルエトキシ(メタ)アクリレート、2-エチルブトキシ(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、グリセリンカーボネート(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(1,2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。
単官能(メタ)アクリル系化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0029】
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)の好ましい実施態様として、下記<<<第一~四の実施態様>>>を挙げることができる。
【0030】
<<第一の実施態様>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)を含有することが好ましい。
【0031】
<<<単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)>>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)は、その重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と略記する。)が、10℃未満である単官能(メタ)アクリル系化合物である。
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)の重合体とは、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)と光重合開始剤を混合し、活性エネルギー線を照射することで得られる重合体のことであり、後述の(B-2)及び(B-3)においても同様である。
また、本明細書におけるTgとは、示差走査熱量測定(DSC)法、動的粘弾性測定(DMA)法等の一般的な手法により測定されるTgのことである。
【0032】
柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)の重合体のTgは、-100℃以上10℃未満であることが好ましく、-60℃以上5℃以下であることがより好ましく、-30℃以上0℃以下であることが特に好ましい。
【0033】
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)として例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tg:-15℃)、ラウリルアクリレート(Tg:-30℃)、ラウリルメタクリレート(Tg:-65℃)、イソデシルアクリレート(Tg:-60℃)、イソオクチルアクリレート(Tg:-54℃)、トリデシルアクリレート(Tg:-55℃)、トリデシルメタクリレート(Tg:-40℃)、ノニルフェノールアクリレートのエチレンオキサイド8mol付加物(Tg:-45℃)、ノニルフェノールアクリレートのエチレンオキサイド4mol付加物(Tg:-28℃)、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン2mol付加物(Tg:-40℃)、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン4mol付加物(Tg:-51℃)、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン10mol付加物(Tg:-60℃以下)、フェノキシベンジルアクリレート(Tg:6℃)、エトキシエトキシエチルアクリレート(Tg:-56℃)、フェノキシエチルアクリレート(Tg:7℃)等が挙げられる。なかでも優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、ノニルフェノールアクリレートのエチレンオキサイド8mol付加物、ノニルフェノールアクリレートのエチレンオキサイド4mol付加物、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン2mol付加物、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン4mol付加物、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン10mol付加物、フェノキシベンジルアクリレート等を使用することが好ましい。
これら単官能(メタ)アクリル系化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0034】
<<第二の実施態様>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)を含有することが好ましい。
【0035】
<<<単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)>>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)は、その重合体のTgが、10℃以上50℃未満である単官能(メタ)アクリル系化合物である。単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)として例えば、ベンジルアクリレート(Tg:11℃)、トリメチルシクロヘキシルアクリレート(Tg:43℃)、ステアリルアクリレート(Tg:46℃)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(Tg:27℃)、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート(Tg:33℃)等が挙げられる。なかでも優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等を使用することが好ましい。
これら単官能(メタ)アクリル系化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0036】
<<第三の実施態様>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)を含有することが好ましい。
【0037】
<<<単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)>>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)は、その重合体のTgが、50℃以上である単官能(メタ)アクリル系化合物である。
【0038】
柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)の重合体のTgは、50℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上170℃以下であることがより好ましく、100℃以上150℃以下であることが特に好ましい。
【0039】
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)として例えば、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(Tg:52℃)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(Tg:65℃)、アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:94℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:180℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)が挙げられる。なかでも優れた機械的物性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アクリロイルモルホリン等を使用することが好ましい。
これら単官能(メタ)アクリル系化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0040】
<<第四の実施態様>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、互いに構造の異なる2種の単官能(メタ)アクリル系化合物を含有し、2種のうち一方の重合体のTgが10℃未満であり、他方の重合体のTgが10℃以上であることがより好ましい。そうすることで、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られる。
例えば上述の単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)の重合体のTgは10℃未満であり、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)及び単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)の重合体のTgは10℃以上であることから、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)または単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)のいずれか一方と、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)を併用することが好ましい。
【0041】
重合体のTgが10℃未満の単官能(メタ)アクリル系化合物の配合量Xに対する、重合体のTgが10℃以上である単官能(メタ)アクリル系化合物の配合量Yの比率[(X)/(Y)]は、5/65~65/5の範囲であることが好ましく、10/60~50/20の範囲であることがより好ましく、10/60~30/40の範囲であることが特に好ましい。これらの範囲とすることで、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成しやすくなる。
【0042】
<<第五の実施態様>>
単官能(メタ)アクリル系化合物(B)が、上述の単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)、及び単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)の全てを含有することがより好ましい。そうすることで、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られる。
【0043】
この場合、単官能(メタ)アクリル系化合物(B-1)の含有量は、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)中に10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-2)の含有量は、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)中に10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
単官能(メタ)アクリル系化合物(B-3)の含有量は、単官能(メタ)アクリル系化合物(B)中に1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
<その他(メタ)アクリル系化合物>
本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに必要に応じて、本発明の光造形用硬化性樹脂組成物には、上記ウレタン樹脂(A)及び単官能(メタ)アクリル系化合物(B)以外に、2官能以上の(メタ)アクリル系化合物を併用して含有させることもできる。
具体的には、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート3-メチル-1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,5-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,6-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、1,3-アダマンチルジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]アダマンタン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
【0045】
EO変性グリセロールアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、(EO)或いは(PO)変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート;
【0046】
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;
【0047】
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;
【0048】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる
【0049】
<その他の添加剤>
また、本発明の光造形用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、シランカップリング剤、リン酸エステル化合物、有機ビーズ、無機微粒子、有機フィラー、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、着色剤等の各種添加剤を含有することもできる。
【0050】
本発明の光造形用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することができる。
光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、アントラキノン誘導体等の縮合多環系化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0052】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0053】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、P-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等が挙げられる。
【0054】
シリコン系添加剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体等のアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらのシリコン系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0055】
フッ素系添加剤としては、例えば、DIC株式会社製「メガフェース」シリーズ等が挙げられる。これらのフッ素系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0056】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系のシランカップリング剤;
【0057】
ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系のシランカップリング剤;
【0058】
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチレン系のシランカップリング剤;
【0059】
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ系のシランカップリング剤;
【0060】
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系のシランカップリング剤;
【0061】
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系のシランカップリング剤;
【0062】
3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系のシランカップリング剤;
【0063】
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキンシラン等のメルカプト系のシランカップリング剤;
【0064】
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイド等のスルフィド系のシランカップリング剤;
【0065】
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系のシランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0066】
リン酸エステル化合物としては、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられ、市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製「カヤマーPM-2」、「カヤマーPM-21」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-1M」「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-1A(N)」、SOLVAY社製「SIPOMER PAM 100」、「SIPOMER PAM 200」、「SIPOMER PAM 300」、「SIPOMER PAM 4000」、大阪有機化学工業社製「ビスコート#3PA」、「ビスコート#3PMA」、第一工業製薬社製「ニューフロンティア S-23A」;分子構造中にアリルエーテル基を有するリン酸エステル化合物であるSOLVAY社製「SIPOMER PAM 5000」等が挙げられる。
【0067】
有機ビーズとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビーズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらの有機ビーズは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら有機ビーズの平均粒径は、1~10μmの範囲であることが好ましい。
【0068】
無機微粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン等の微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら無機微粒子の平均粒径は、95~250nmの範囲であることが好ましく、特に100~180nmの範囲であることがより好ましい。
【0069】
無機微粒子を含有する場合には、分散補助剤を用いることができる。
分散補助剤としては、例えば、イソプロピルアシッドホスフェート、トリイソデシルホスファイト、エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート等のリン酸エステル化合物等が挙げられる。これらの分散補助剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、分散補助剤の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製「カヤマーPM-21」、「カヤマーPM-2」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-2M」等が挙げられる。
【0070】
有機フィラーとしては、例えば、セルロース、リグニン、及びセルロースナノファイバー等の植物由来の溶剤不溶性物質等が挙げられる。
【0071】
無機フィラーとしては、例えば、ガラス(粒子)、シリカ(粒子)、アルミナシリケート、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0072】
レオロジーコントロール剤としては、例えば、楠本化成株式会社製「ディスパロン6900」等のアマイド・ワックス類;ビッグ・ケミー社製「BYK410」等の尿素系レオロジーコントロール剤類;楠本化成株式会社製「ディスパロン4200」等のポリエチレン・ワックス;イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製「CAB-381-2」、「CAB 32101」等のセルロース・アセテート・ブチレートなどが挙げられる。
【0073】
脱泡剤としては、例えば、フッ素或いは、硅素原子を含んだオリゴマー、または高級脂肪酸、アクリル重合体等のオリゴマー等が挙げられる。
【0074】
着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。
【0075】
顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0076】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。
【0077】
有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0078】
染料としては、例えば、モノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系染料等が挙げられる。これらの染料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0079】
<光造形用硬化性樹脂組成物の特性>
本発明の光造形用硬化性樹脂組成物におけるウレタン樹脂(A)の含有量は、柔らかい感触がありつつも、引き裂き強度及び復元力に優れる硬化物を形成可能であるという観点から、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
本発明の光造形用硬化性樹脂組成物は、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られる観点から、ウレタン樹脂(A)以外の2官能以上の(メタ)アクリル系化合物を含有しない方がより好ましい。
【0081】
柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られる観点から、樹脂固形分における(メタ)アクリロイル基の濃度が、2~4mmоl/gの範囲であることが好ましく、2.5~3.5mmоl/gの範囲であることがより好ましく、3~3.3mmоl/gの範囲であることが特に好ましい。
【0082】
(硬化物)
本発明の硬化物は、本発明の光造形用硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0083】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0084】
活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、50~5,000mJ/cm2であることが好ましく、300~1,000mJ/cm2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止または抑制ができることから好ましい。
【0085】
(立体造形物)
本発明の立体造形物は、公知の光学的立体造形法により作製することができる。
【0086】
光学的立体造形法としては、例えば、ステレオリソグラフィー(SLA)方式、デジタルライトプロセッシング(DLP)方式、インクジェット方式が挙げられる。
【0087】
ステレオリソグラフィー(SLA)方式とは、液状の硬化性樹脂組成物の槽にレーザー光線等の活性エネルギー線を点で照射し、造形ステージを移動させながら一層ずつ硬化して立体造形を行う方式である。
【0088】
デジタルライトプロセッシング(DLP)方式とは、液状の硬化性樹脂組成物の槽にLED等の活性エネルギー線を面で照射し、造形ステージを移動させながら一層ずつ硬化して立体造形を行う方式である。
【0089】
インクジェット光造形法とは、光造形用硬化性樹脂組成物の微小液滴を、ノズルから所定の形状パターンを描画するよう吐出してから、紫外線を照射して硬化薄膜を形成する方法である。
【0090】
これらの光学的立体造形法のなかでも、面による高速造形が可能なことからDLP方式が好ましい。
【0091】
DLP方式の立体造形方法としては、DLP方式の光造形システムを用いた方法であれば特に制限されないが、その造形条件としては、立体造形物の造形精度が良好となることから、光造形の積層ピッチが0.01~0.2mmの範囲であり、照射波長が350~410nmの範囲であり、光強度が0.5~50mW/cm2の範囲であり、1層当たりの積算光量が1~100mJ/cm2の範囲であることを要し、なかでも、より一層立体造形物の造形精度が良好となることから、光造形の積層ピッチが、0.02~0.1mmの範囲であり、照射波長が、365~410nmの範囲であり、光強度が、5~15mW/cm2の範囲であり、1層当たりの積算光量が、5~15mJ/cm2の範囲であることが好ましい。
【0092】
本発明では、光造形で得られた立体造形物に対して複数方向から活性エネルギー線を照射して最終的な立体造形物としても構わない。この照射工程を後硬化という。
【0093】
<硬化物及び立体造形物の特性>
本発明の硬化物及び立体造形物は、柔らかい感触を有する。硬化物及び立体造形物が柔らかい感触を有する場合、硬化物及び立体造形物のJIS K 6253;2012に準拠したショア-A硬度は、低くなる。
ただし、後硬化をしていない立体造形物のショア-A硬度が低すぎる場合は、光造形の過程でその形状が歪み、目標とする形状になっていない可能性がある。よって、柔らかい感触を有しつつも高い造形精度を保つためには、後硬化をしていない状態で低すぎないショア-A硬度を示し、且つ後硬化後においてもショアA硬度が大きく上昇しない(ショア-A硬度を低いまま維持できる)ことが好ましい。
このことから、後硬化をしていない状態でのショア-A硬度は、30以上であることが好ましく、後硬化後のショア-A硬度は99以下であることが好ましく、75以下であることがより好ましく、60以下であることが特に好ましい。
【0094】
さらに、硬化物及び立体造形物が柔らかい感触を有する場合、硬化物及び立体造形物のASTM D412-06aに準拠した引張強度は低くなる。例えば、10MPa以下であることが好ましく、8Mpa以下であることがより好ましく、3Mpa以下であることが特に好ましい。
【0095】
また、本発明の硬化物及び立体造形物は引き裂き強度に優れる。ただし、引き裂き強度が高すぎる硬化物及び立体造形物は、柔らかい感触を有しない傾向にある。したがって、ASTM D624-00に準拠した引き裂き強度は、1kN/m以上40kN/m以下であることが好ましく、3kN/m以上30kN/m以下であることがより好ましく、10kN/m以上20kN/m以下であることが特に好ましい。
【0096】
また、本発明の硬化物及び立体造形物は外力による形状変化後の復元力に優れる。硬化物及び立体造形物が復元力に優れる場合、ASTM D395-03に準拠した圧縮永久歪み率は、低くなる。50以下であることがより好ましく、15以下であることが特に好ましく、3以下であることが最も好ましい。
【0097】
本発明の立体造形物は、柔らかい感触がありつつ、引き裂き強度及び復元力に優れることから、例えば、靴底部材、介護用品、ヘルメット内部、プロテクター、車両用の緩衝材料、床材、スポーツ用品、化粧道具など、衝撃吸収性、反発性、耐久性、耐屈曲性などが必要な用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
以下の実施例で用いた材料は、次のとおりである。
【0100】
・IPDI:イソホロンジイソシアネート、製品名「VESTANAT IPDI」(Evonik社製)
・スミジュールN3300:イソシアヌレートタイプヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製)
【0101】
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・プラクセルFA2D:カプロラクトン2mol付加型2-ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製)、水酸基価:163.1KOHmg/g、(メタ)アクリロイル基含有量(理論値):2.87mmоl/g
・プラクセルFA4DT:カプロラクトン4mol付加型2-ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製)、水酸基価:98.1KOHmg/g、(メタ)アクリロイル基含有量(理論値):1.76mmоl/g
・プラクセルFA10L:カプロラクトン10mol付加型2-ヒドロキシエチルアクリレート(固形分70%)(株式会社ダイセル製)、水酸基価:31KOHmg/g、(メタ)アクリロイル基含有量(理論値):0.552mmоl/g
【0102】
・PPG1000:ポリプロピレングリコール、製品名「サンニックスPP-1000」(三洋化成工業社製)、数平均分子量1000
・PTG650SN:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業社製)、数平均分子量650
・PTG850SN:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業社製)、数平均分子量850
・PTG1000SN:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業社製)、数平均分子量1000
・PTG2000SN:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業社製)、数平均分子量2000
・PTG2900SN:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業社製)、数平均分子量2900
【0103】
・MIRAMER M170:エトキシエトキシエチルアクリレート(MIWON社製)、Tg:-56℃
・MIRAMER M166:エチレンオキサイド8mol付加型ノニルフェノールアクリレート(MIWON社製)、Tg:-45℃
・MIRAMER M164:エチレンオキサイド4mol付加型ノニルフェノールアクリレート(MIWON社製)、Tg:-28℃・MIRAMER M1122:フェノキシベンジルアクリレート(MIWON社製)、Tg:6℃
・MIRAMER M140:フェノキシエチルアクリレート(MIWON社製)、Tg:7℃
・ビスコート#200:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(大阪有機化学工業社製)、Tg:27℃
・MIRAMER M1142:o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート(MIWON社製)、Tg:33℃
・MIRAMER M1150:4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(MIWON社製)、Tg:65℃
・ファンクリルFA-513AS:ジシクロペンタニルアクリレート(昭和電工マテリアルズ社製)、Tg120℃
・ACMO:アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ社製)、Tg145℃
【0104】
・MIRAMER M210:ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(MIWON社製)
・MIRAMER M2100:エチレンオキサイド10mol付加型ビスフェノールAジアクリレート(MIWON社製)
【0105】
・Omnirad819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(IGM Resins社製)
【0106】
(合成例1:ウレタン樹脂(A1)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、IPDI(267質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、PPG1000(591質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、HEA(139質量部)を1時間にわたって添加した。添加後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A1)を得た。
原料のアクリロイル基含有量(理論値)から算出したウレタン樹脂(A1)1gあたりの(メタ)アクリロイル基の含有量は、1.18mmolであった(下記表1~3に記載。尚、下記合成例で得られた各ウレタン樹脂における(メタ)アクリロイル基の含有量も表1~3に記載する)。
【0107】
(合成例2:ウレタン樹脂(A2)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、IPDI(338質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、PTG650SN(483質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、HEA(176質量部)を1時間にわたって添加した。添加後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A2)を得た。
【0108】
(合成例3:ウレタン樹脂(A3)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、IPDI(288質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)質量部を加え、70℃に昇温し、PTG850SN(560質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、HEA(150質量部)を1時間にわたって添加した。添加後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A3)を得た。
【0109】
(合成例4:ウレタン樹脂(A4)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、IPDI(269質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、PTG1000SN(588質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、HEA(141質量部)を1時間にわたって添加した。添加後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A4)を得た。
【0110】
(合成例5:ウレタン樹脂(A5)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、IPDI(167質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、PTG2000SN(744質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、HEA(87質量部)を1時間にわたって添加した。添加後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A5)を得た。
【0111】
(合成例6:ウレタン樹脂(A6)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた2リットルのフラスコに、IPDI(123質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、PTG2900SN(810質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、70℃で3時間反応させた後、HEA(64質量部)を1時間にわたって添加した。添加後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、アクリロイル基を有するウレタン樹脂(A6)を得た。
【0112】
(合成例7:ウレタン樹脂(A7)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、株式会社ダイセル製プラクセルFA2D(643質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、住化コベストロウレタン社製スミジュールN3300(355質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、ウレタン樹脂(A7)を得た。
【0113】
(合成例8:ウレタン樹脂(A8)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、株式会社ダイセル製プラクセルFA4DT(746質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、住化コベストロウレタン社製スミジュールN3300(252質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、ウレタン樹脂(A8)を得た。
【0114】
(合成例9:ウレタン樹脂(A9)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、株式会社ダイセル製プラクセルFA10L(1219質量部)、ターシャリブチルヒドロキシトルエン(2.0質量部)、メトキシハイドロキノン(0.2質量部)、ジブチル錫ジアセテート(0.2質量部)を加え、70℃に昇温し、住化コベストロウレタン社製スミジュールN3300(132質量部)を1時間にわたって分割仕込みした。仕込み後、イソシアネート基を示す2250cm-1の赤外吸収スペクトルが消失するまで70℃で反応を行い、減圧下で脱溶剤後、ウレタン樹脂(A9)を得た。
【0115】
(実施例1:硬化性樹脂組成物(1)の調製)
撹拌機、温度計及び冷却管を備えた4つ口のフラスコに、合成例5で得たウレタン樹脂(A5)を30質量部、MIWON社製MIRAMER M1142を70質量部、IGM Resins社製Omnirad 819を1.2質量部添加し、60℃以下で、均一溶解するまで撹拌し、硬化性樹脂組成物(1)を得た。
硬化性樹脂組成物に含有される各成分のアクリロイル基含有量(理論値)から算出した硬化性樹脂組成物中の樹脂固形分1gあたりの(メタ)アクリロイル基の含有量は、2.83mmolであった(下記表1~3に記載。尚、下記合成例で得られた樹脂固形分における(メタ)アクリロイル基の含有量も表1~3に記載する)。
【0116】
(実施例2~21:硬化性樹脂組成物(2)~(22)の調製)
実施例1において、ウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル系化合物を表1~3に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて硬化性樹脂組成物(2)~(22)を得た。
【0117】
(比較例1~2:硬化性樹脂組成物(C1)~(C2)の調製)
実施例1において、ウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル系化合物を表3に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて硬化性樹脂組成物(C1)~(C2)を得た。
【0118】
上記の実施例1~22、及び比較例1~2で得られた硬化性樹脂組成物を用いて、下記の評価を行った。
【0119】
[ショア-A硬度の測定方法]
光造形3Dプリンター(3D’LIGHT社製「Vittro P100」)を用いて、1層当たりの照射時間5秒およびz軸(高さ方向)のピッチ100μmの条件で、短冊状のサンプル(縦40mm×横20mm×厚み(高さ)4mm)を作製し、イソプロピルアルコールで洗浄し、常温で1時間乾燥させた。このサンプルについて、タイプAデュロメーターを用い、荷重1kgの条件で、JIS K 6253;2012に準拠して、ショア-A硬度を測定し、この値が一定以上である場合、優れた造形精度を示し、30以上のものを合格とした。
さらに、後硬化機(XYZ Printing社製「Multicure180」)を用いて上述の洗浄及び乾燥後のサンプルの両面に対してそれぞれUV照射(Preset02条件にて各面10分間)し、後硬化させた。この後硬化後のサンプルについても、同様の手法でショア-A硬度を測定し、この値が低いほど柔らかい感触を有し、96以下のものを合格とした。
【0120】
[引張強度の測定方法]
光造形3Dプリンター(3D’LIGHT社製「Vittro P100」)を用いて、1層当たりの照射時間5秒およびz軸(高さ方向)のピッチ100μmの条件で、ASTM D412-06a(試験片TypeC)に準拠したダンベル状のサンプルを作製し、イソプロピルアルコールで洗浄し、常温で1時間乾燥させた。続いて、後硬化機(XYZ Printing社製「Multicure180」)を用いて上述の洗浄及び乾燥後のサンプルの両面に対してそれぞれUV照射(Preset02条件にて各面10分間)し、後硬化させた。
ASTM D412-06aに準拠して、このサンプルの引張強度[Mpa]を測定した。具体的には、INSTRON社製万能材料試験機「5965」を用い、室温、チャック間距離85mm、引張速度500mm/分の条件で、引張強度[Mpa]を測定した。尚、同じサンプルを5個用意し、各サンプルについて測定を行い、その平均値を表1~3に示す。この値が低いほど、柔らかい感触を有するものとし、10以下を合格とした。
【0121】
[引き裂き強度の測定方法]
光造形3Dプリンター(3D’LIGHT社製「Vittro P100」)を用いて、1層当たりの照射時間5秒およびz軸(高さ方向)のピッチ100μmの条件で、ASTM D624-00(試験片TypeC)に準拠したダンベル状のサンプルを作製し、イソプロピルアルコールで洗浄し、常温で1時間乾燥させた。続いて、後硬化機(XYZ Printing社製「Multicure180」)を用いて上述の洗浄及び乾燥後のサンプルの両面に対してそれぞれUV照射(Preset02条件にて各面10分間)し、後硬化させた。
ASTM D624-00に準拠して、このサンプルの引張強度[Mpa]を測定した。具体的には、島津製作所製精密万能試験機「AGS-1KNX」を用い、室温、チャック間距離58mm、引張速度500mm/分の条件で、引張強度[Mpa]を測定した。尚、同じサンプルを5個用意し、各サンプルについて測定を行い、その平均値を表1~3に示す。この値が大きいほど、引き裂き強度が高く、高すぎると柔らかい感触を有しないことから、1以上40以下を合格とした。
【0122】
[圧縮永久歪み率の測定方法]
光造形3Dプリンター(3D’LIGHT社製「Vittro P100」)を用いて、1層当たりの照射時間5秒およびz軸(高さ方向)のピッチ100μmの条件で、ASTM D395-03(試験方法B、試験片Type2)に準拠した円柱状(直径13mm、厚み6.0mm)のサンプルを作製し、イソプロピルアルコールで洗浄し、常温で1時間乾燥させた。続いて、後硬化機(XYZ Printing社製「Multicure180」)を用いて上述の洗浄及び乾燥後のサンプルの両面に対してそれぞれUV照射(Preset02条件にて各面10分間)し、後硬化させた。
このサンプルについて、ASTM D395-03(試験方法B)に準拠して圧縮永久歪み率[%]を測定した。具体的には、高分子計器社製「圧縮永久歪試験機」を用い、サンプルを4.5mm厚に圧縮した状態で23℃の恒温室にて22時間静置した。前記サンプルを圧力から開放した30分後に該サンプルの厚みを測定し、次式により、圧縮永久歪み率[%]を求めた。尚、この値が小さいほど、復元力に優れるものとし、50%以下を合格とする。
圧縮永久歪み率CS[%]=(t0-t1)×100/(t0-t2)
CS:圧縮永久歪み率
t0:測定前のサンプルの厚み
t1:圧力から開放した30分後のサンプルの厚み
t2:スペーサーの厚み
【0123】
実施例1~22、及び比較例1~2で得られた硬化性樹脂組成物の組成及び評価結果を下記表1~表3に示す。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
上記表の結果より、本発明の硬化性樹脂組成物は、柔らかい感触がありつつも、引き裂き強度及び復元力に優れた硬化物を形成できることが確認できた。
一方、単官能(メタ)アクリル系化合物の配合量が樹脂固形分100質量部に対して50質量部未満であった比較例1及び比較例2の硬化性樹脂組成物は、硬い質感を有し、復元力が低下した硬化物を形成することを確認した。