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特許7473092湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20240416BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20240416BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240416BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20240416BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/12
C08G18/42 002
C09J175/06
B32B27/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023568529
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2022039033
(87)【国際公開番号】W WO2023181469
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2022045215
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】長尾 匡憲
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-248152(JP,A)
【文献】特開2008-255187(JP,A)
【文献】特開2011-225636(JP,A)
【文献】特開2022-036653(JP,A)
【文献】特開2021-161218(JP,A)
【文献】特開2022-114079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
B32B 27/00- 27/42
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ポリオール(A)が、
長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)、
前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)以外の、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールを原料とする脂肪族ポリエステルポリオール(a2)、
及び、芳香族ポリエステルポリオール(a3)を含有し、
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)が、数平均分子量1,000~3,000の脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)と、数平均分子量5,000~9,000の脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)とを併用するものであり、
その質量比[(a2-1)/(a2-2)]が、1~3であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールが、ネオペンチルグリコールである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との合計量に対する、
前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)の使用量が、32~40質量であり、
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)の合計使用量が、15~38質量であり、
前記芳香族ポリエステルポリオール(a3)の使用量が、15~35質量である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項5】
基材、及び、請求項4記載の接着剤の塗布物を有することを特徴とする積層体。
【請求項6】
前記基材が、アルミ基材、又は、ポリ塩化ビニル基材である請求項5記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、様々な建築材料用途の接着剤として使用されている。前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、理想的な接着性能を発現するために、その構成としてポリエステルを含む場合が多い。なかでも、比較的平滑であるアルミ基材やポリ塩化ビニル基材に対しては、密着性発現のため、ガラス転移温度が比較的低い非晶性の直鎖脂肪族ポリエステルポリオールを含むことが有効である(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、上記のようなポリオールの使用比率が多い場合、接着初期の凝集力が発現しないことが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-16703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、基材(特に、アルミ基材、及び/又は、ポリ塩化ビニル基材)への初期接着性、及び、密着性に優れる湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)、前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)以外の、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールを原料とする脂肪族ポリエステルポリオール(a2)、及び、芳香族ポリエステルポリオール(a3)を含有し、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)が、数平均分子量1,000~3,000の脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)と、数平均分子量5,000~9,000の脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)とを併用するものであり、その質量比[(a2-1)/(a2-2)]が、1~3であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤を提供するものである。更に、本発明は、基材、及び、前記接着剤の塗布物を有することを特徴とする積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、基材(特に、アルミ基材、及び/又は、ポリ塩化ビニル基材(以下、「PVC基材」と略記する。))への初期接着性、及び、密着性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものである。
【0009】
前記ポリオール(A)は、長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)、前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)以外の、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールを原料とする脂肪族ポリエステルポリオール(a2)、及び、芳香族ポリエステルポリオール(a3)を含有するものである。
【0010】
前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)としては、その凝集力により優れた密着性を得るうえで必須の成分であり、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0011】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、より一層優れた密着性が得られる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及び、デカンジオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0012】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた密着性が得られる点から、アジピン酸、セバシン酸、及び、ドデカン二酸からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0013】
前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた密着性が得られる点から、500~10,000が好ましく、1,000~7,000がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0014】
前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)の使用量としては、より一層優れた未着性が得られる点から、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との合計量に対して、32~40質量%が好ましく、33~37質量%がより好ましい。
【0015】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)は、前記長鎖結晶性ポリエステルポリオール(a1)以外のものであり、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールを原料とするものである。
【0016】
また、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)は、優れた基材(特に、アルミ基材、又は、ポリ塩化ビニル基材)への初期接着性、及び、密着性を両立するうえで、数平均分子量1,000~3,000の脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)と、数平均分子量5,000~9,000の脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)とを併用し、かつ、その質量比[(a2-1)/(a2-2)]が、1~3であることが必須である。
【0017】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)は、分岐構造を有する2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールを原料とすることから、非晶性のポリエステルポリオールとなるが、分子鎖の運動性が高く、アルミ基材やPVC基材のわずかな凹凸にも追従し相互作用することで優れた密着性が発現する。しかしながら、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)を工夫無く使用した場合には、ガラス転移温度が一般的に低く、初期接着性が不良となる。本発明では、上記構成とすることで、脂肪族ポリエステルポリオール全体としてのガラス転移温度、及び、粘度が高くなるため、優れた密着性と初期接着性とを両立することができる。
【0018】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)、及び、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)は、いずれも2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールを必須成分として含む水酸基を有する化合物と、多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0019】
前記2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、その二量体、及び三量体が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた初期接着性が得られる点から、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0020】
前記2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコールの使用量としては、前記水酸基を有する化合物の合計量中10質量%以上が好ましく、10~20質量%が好ましい。
【0021】
前記2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基を有するグリコール以外に用いることができる前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、これらのアルキレンオキサイド付加物、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。
【0022】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)の数平均分子量としては、より一層優れた初期接着性、及び密着性が得られる点から、1,500~2,500が好ましく、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)の数平均分子量としては、6,000~8,000が好ましい。なお、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)及び脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0024】
また、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)及び前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)の質量比[(a2-1)/(a2-2)]としては、より一層優れた初期接着性、及び密着性が得られる点から、1~2.5がより好ましい。
【0025】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a2)の合計使用量としては、より一層優れた初期接着性及び密着性が得られる点から、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との合計量に対して、15~38質量%が好ましく、20~37質量%がより好ましい。
【0026】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a3)としては、その凝集力により優れた密着性を得るうえで必須の成分であり、例えば、水酸基を有する化合物と芳香族多塩基酸を含む多塩基酸との反応物;水酸基を2個以上有する芳香族化合物と多塩基酸との反応物;水酸基を2個以上有する芳香族化合物と芳香族多塩基酸を含む多塩基酸との反応物等を用いることができる。
【0027】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族化合物;シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、これらのアルキレンオキサイド付加物等の脂環式化合物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記水酸基を2個以上有する芳香族化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、これらのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸等を用いることができる。それ以外の多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記芳香族多塩基酸としては、より一層優れた初期接着強度および柔軟性が得られる点から、
【0030】
その他の多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、エイコサ二酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等を用いることができる。
【0031】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a3)としては、より一層優れた密着性が得られる点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及び無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上のフタル酸化合物を原料とするものが好ましい。
【0032】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量としては、より一層優れた密着性が得られる点から、500~10,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。なお、前記芳香族ポリエステルポリオール(a3)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0033】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a3)の使用量としては、より一層優れた未着性が得られる点から、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との合計量に対して、15~35質量%が好ましく、18~32質量%がより好ましい。
【0034】
前記ポリオール(A)は、前記(a1)~(a3)成分を必須ポリオール成分として含有するが、必要に応じて、その他のポリオールを含んでもよい。
【0035】
前記その他のポリオールとしては、例えば、前記(a1)~(a3)成分以外のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0037】
前記ウレタンプレポリマー(i)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中や湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0038】
前記ウレタンプレポリマー(i)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(A)の入った反応容器に、前記ポリイソシアネート(B)を入れ、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0039】
前記ウレタンプレポリマー(i)を製造する際の、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基との当量比[NCO/OH]としては、より一層優れた初期接着性及び密着性が得られる点から、1.5~4が好ましく、1.8~3.0がより好ましい。
【0040】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた初期接着性及び密着性が得られる点から、1~6質量%が好ましく、2~4質量%がより好ましい。なお、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(i)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0041】
本発明で用いる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(i)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じて、その他の添加剤を用いてもよい。
【0042】
前記その他の添加剤としては、例えば、耐光安定性、硬化触媒、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、カーボンブラック、ビヒクル、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、基材(特に、アルミ基材、及び/又は、PVC基材への初期接着性、及び、密着性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、アルミ基材やPVC基材への接着剤として好適に用いることができる。
【0044】
次に、本発明の積層体について説明する。
【0045】
前記積層体は、少なくとも基材、及び、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含む接着剤の塗布物とを有するものである。
【0046】
前記基材としては、例えば、ガラス板、ステンレス鋼(SUS)やマグネシウム、アルミニウム等の金属板、ノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、脂環式ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、乳酸ポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、アルミ等から得られるものを用いることができる。また、前記基材は、必要に応じて、コロナ処理やプラズマ処理、プライマー処理等を行ってもよい。なお、前記アルミとしては、アルミニウム、又は、アルミニウム合金を示す。
【0047】
前記接着剤を前記基材に塗布する方法としては、例えば、前記接着剤を50~130℃で加熱溶融した後、前記基材に塗布する方法が挙げあれる。前記塗布方法としては、ロールコーター、スプレーコーター、T-タイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を用いることができる。
【0048】
前記塗布後には、さらに前記接着剤面に基材を載置し貼り合わせることができる。前記接着層の厚さとしては、用いられる用途に応じて設定することができるが、例えば、30μm~5mmの範囲で好ましく設定することができる。
【0049】
前記貼り合せ後の熟成条件としては、例えば、温度20~80℃、相対湿度50~90%RH、0.5~5日間の間で適宜決定することができる。
【実施例
【0050】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0051】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、長鎖結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及びドデカン二酸の反応物、数平均分子量;3,500、以下「結晶性PEs(1)」と略記する。)34質量部、脂肪族ポリエステルポリオール(ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び、1,6-ヘキサンジオール、及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000、全グリコールの合計量中の前記ネオペンチルグリコールの使用量;14質量%、以下「脂肪族PEs(1)と略記する。」)10質量部、脂肪族ポリエステルポリオール(ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び、1,6-ヘキサンジオール、及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;7,000、全グリコールの合計量中の前記ネオペンチルグリコールの使用量;14質量%、以下「脂肪族PEs(2)と略記する。」)10質量部、芳香族ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール及びオルトフタル酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「芳香族PEs(1)」と略記する。)30質量部を仕込み、100℃減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融した4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)を16質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約2時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(i-1)を含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0052】
[実施例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、結晶性PEs(1)を34質量部、脂肪族PEs(1)を20質量部、脂肪族PEs(2)を10質量部、芳香族PEs(1)を20質量部を仕込み、100℃減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを16質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約2時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(i-2)を含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0053】
[実施例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、結晶性PEs(1)を34質量部、脂肪族PEs(1)を20質量部、脂肪族PEs(2)を15質量部、芳香族PEs(1)を20質量部を仕込み、100℃減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを16質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約2時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(i-3)を含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0054】
[比較例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、結晶性PEs(1)を35質量部、脂肪族PEs(2)を30質量部、芳香族PEs(1)を20質量部を仕込み、100℃減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを15質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約2時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(iR-1)を含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0055】
[比較例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、結晶性PEs(1)を38質量部、脂肪族PEs(1)を10質量部、芳香族PEs(1)を35質量部を仕込み、100℃減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを17質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約2時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(iR-2)を含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0056】
[比較例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、結晶性PEs(1)を35質量部、脂肪族PEs(1)を5質量部、脂肪族PEs(2)を15質量部、芳香族PEs(1)を30質量部を仕込み、100℃減圧加熱してフラスコ内の水分が0.05質量%となるまで脱水した。フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融したMDIを15質量部加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで110℃で約2時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(iR-3)を含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0057】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0058】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0059】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0060】
[初期接着性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物をそれぞれ120℃で1時間溶融した後に、アプリケーターで厚さ0.1mmの厚さにて、ポリエチレンテレフタレートシート上に塗布し、該塗布面に、それぞれアルミ基材、塩ビ基材又は中密度繊維板を載置し、プレスロールを使用した貼り合わせた。幅25mmの切れ込みを入れ、貼り合わせ3分後に温度35℃、荷重150gの条件でクリープ試験を実施し、荷重をかけてから15分後の剥離距離を測定し、以下のように評価した。
「〇」;それぞれの基材に対して、剥離距離が5mm以下である。
「×」;上記以外である。
【0061】
[密着性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物をそれぞれ120℃で1時間溶融した後に、アプリケーターで厚さ0.1mmの厚さにて、ポリエチレンテレフタレートシート上に塗布し、該塗布面に、それぞれアルミ基材、塩ビ基材又は中密度繊維板を載置し、プレスロールを使用した貼り合わせた。幅25mmの切れ込みを入れ、温度23℃×湿度50%の環境下で48時間放置した後、温度60℃、荷重500gの条件でクリープ試験を実施し、荷重をかけてから60分後の剥離距離を測定し、以下のように評価した。
「〇」;それぞれの基材に対して、剥離距離が5mm以下である。
「×」;上記以外である。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


【0064】
表1~2中の数字は、質量部を示す。
【0065】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた初期接着性、及び、密着性を有することが分かった。
【0066】
一方、比較例1は、脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)を用いない態様であるが、初期接着性が不良であった。
【0067】
比較例2は、脂肪族ポリエステルポリオール(a2-2)を用いない態様であるが、密着性が不良であった。
【0068】
比較例3は、脂肪族ポリエステルポリオール(a2-1)及び(a2-2)の質量比が1未満の態様であるが、密着性が不良であった。