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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/66 20060101AFI20240416BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20240416BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08G59/66
C08G75/045
C09J163/00
H01L23/30 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553221
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040616
(87)【国際公開番号】W WO2020080389
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2018196085
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 一希
(72)【発明者】
【氏名】新井 史紀
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-302564(JP,A)
【文献】特開平10-237042(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141347(WO,A1)
【文献】特開平03-212422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香環を含まないエポキシ樹脂と、
(B)分子量が210以上1,000以下の下記一般式(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)及び(B-5)で表される2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)アミン化合物と、を含む(但し、セレン原子及び有機溶剤を除く)、樹脂組成物。
【化22】

(一般式(B-1)中、n、mは、それぞれ独立に1~3の整数である。)
【化23】

(一般式(B-2)中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子又は下記一般式(b-1)で表される基である。ただし、R 及びR のいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基であり、R 及びR のいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基である。)
【化24】

(一般式(b-1)中、rは、1~3の整数である。)
【化25】

(一般式(B-3)中、G 、G は、それぞれ独立に-O-又は-CH -であり、但し、G 、G の少なくとも一方は、-O-であり、p、qは、それぞれ独立に2~5の整数である。)
【化26】

(一般式(B-4)中、s、tは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
【化27】

(一般式(B-5)中、u、vは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
【請求項2】
前記(A)成分の重量平均分子量が240~1,000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、下記式(A-1)又は(A-2)で表されるエポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化28】
(式(A-1)中、Rは、炭素数が1~15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、wは、1~20の整数である。)
【化29】
(式(A-2)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項4】
前記(C)成分のアミン化合物が、イミダゾール系化合物、第三級アミン系化合物及びアミンアダクトから選択される少なくとも1種のアミン化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基の総数が、樹脂組成物中の全チオール基の数を100としたとき20~100である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(D)安定剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)成分の安定剤が、液状ホウ酸エステル化合物、アルミキレート、及び、バルビツール酸からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む封止材。
【請求項10】
請求項8に記載の接着剤又は請求項9に記載の封止材を用いて製造されたイメージセンサーモジュール。
【請求項11】
請求項8に記載の接着剤又は請求項9に記載の封止材を用いて製造された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温の熱硬化、具体的には80℃程度での熱硬化が求められる用途において使用可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォンのカメラモジュールとして使用されるイメージセンサーモジュールの製造時には、比較的低温、具体的には80℃程度の温度で熱硬化する接着剤が使用される。半導体素子、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサなどの電子部品の製造時においても、80℃程度の温度で熱硬化する樹脂組成物を含む接着剤の使用が好ましい。
【0003】
また、熱膨張係数の異なる2つの部品を接着剤によって接合する場合は、周囲の温度の変化によってその接合部には熱応力が作用してクラックが発生する場合がある。それらの部品を接合するための接着剤には、部品の熱変形に追従できる程度の柔軟性が必要であり、接着剤が硬化した後にも応力緩和に優れた硬化物であることが要求される。
【0004】
例えば特許文献1には、低温での熱硬化が可能であり、弾性率の小さい硬化物が得られる樹脂組成物として、分子中に2個以上のチオール基を有するチオール化合物を含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/093510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チオール化合物が分子内に3個以上のチオール基を有するポリチオール化合物が主体の接着剤は、架橋点が多くなり、得られる硬化物中の残留応力によって、被着体の熱変形に追従できない場合がある。また、分子内に2個のチオール基を有するポリチオール化合物が、特許文献1に開示されている1,4-ブタンジチオール、1,10-デカンジチオールのようなアルキル基の両末端にチオール基を有する2官能チオール化合物の場合は、分子量が小さいために、揮発性が高く、80℃程度の低温で硬化させた場合でも、得られる硬化物中にボイドが存在し、得られる硬化物の物性が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りであり、本発明は、以下の態様を包含する。
[1](A)芳香環を含まないエポキシ樹脂と、
(B)分子内に芳香環構造又は脂環構造と、ヘテロ原子を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び、分子内に芳香環構造又は複素環構造と、ヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)アミン化合物と、を含む樹脂組成物である。
[2]前記(B)成分が、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含む、2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
[3]前記(B)成分が、分子内に芳香環構造と、エーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含む、2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
[4]前記(B)成分が、下記一般式(B-1)、(B-2)又は(B-3)で表される2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
(一般式(B-1)中、n、mは、それぞれ独立に1~3の整数である。)
【0010】
【化2】
(一般式(B-2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は下記一般式(b-1)で表される基である。ただし、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基であり、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基である。)
【0011】
【化3】
(一般式(b-1)中、rは、1~3の整数である。)
【0012】
【化4】
(一般式(B-3)中、G、Gは、それぞれ独立に-O-又は-CH-で結合される2価の基であり、p、qは、それぞれ独立に2~5の整数である。)
[5]前記(B)成分が、下記一般式(B-4)又は(B-5)で表される2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
【0013】
【化5】
(一般式(B-4)中、s、tは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
【0014】
【化6】
(一般式(B-5)中、u、vは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
[6]前記(A)成分の分子量が240~1,000である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[7]前記(A)成分が、下記式(A-1)又は(A-2)で表されるエポキシ樹脂である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
【0015】
【化7】
(式(A-1)中、Rは、炭素数が1~15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、wは、1~20の整数である。)
【0016】
【化8】
(式(A-2)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[8]前記(C)成分のアミン化合物が、イミダゾール系化合物、第三級アミン系化合物、及びアミンアダクトから選択される少なくとも1種のアミン化合物である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[9]前記(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基の総数が、樹脂組成物中の全チオール基の数を100としたとき20~100である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[10]さらに(D)安定剤を含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[11]前記(D)成分の安定剤が、液状ホウ酸エステル化合物、アルミキレート、及び、バルビツール酸からなる群から選択される少なくとも1つである、前記[10]に記載の樹脂組成物である。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む接着剤である。
[13]前記[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む封止材である。
[14]前記[12]に記載の接着剤又は前記[13]に記載の封止材を用いて製造されたイメージセンサーモジュールである。
[15]前記[12]に記載の接着剤又は前記[13]に記載の封止材を用いて製造された半導体装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、80℃程度の低温での熱硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物が得られる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る樹脂組成物、接着剤、封止材、イメージセンサーモジュール及び半導体装置の実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の樹脂組成物、接着剤、封止材、イメージセンサーモジュール及び半導体装置に限定されない。
【0019】
本発明の第一の実施形態に係る樹脂組成物は、
(A)芳香環を含まないエポキシ樹脂と、
(B)分子内に芳香環構造又は脂環構造と、ヘテロ原子を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び、分子内に芳香環構造又は複素環構造と、ヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)アミン化合物と、を含む。
【0020】
(A)成分:芳香環を含まないエポキシ樹脂
樹脂組成物は、(A)成分として芳香環を含まないエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂が芳香環を含んでいないため、樹脂組成物が硬化した後のガラス転移温度(Tg)が低く、弾性係数が低くなる。このため、本発明の実施形態の樹脂組成物を含む接着剤によって熱膨張係数の異なる2つの部品を接着した場合に、周囲の温度変化によって、接着した2つの部品がそれぞれ異なる熱膨張係数によって膨張・収縮した場合であっても、部品の変化に追従できる柔軟性を有し、応力緩和に優れる。
【0021】
なお、芳香環は、ヒュッケル則を満たす構造であり、例えばベンゼン環である。
【0022】
前記(A)成分のエポキシ樹脂は、重量平均分子量が240~1,000であることが好ましい。前記(A)成分のエポキシ樹脂は、重量平均分子量が、より好ましくは250~1,000であり、さらに好ましくは260~1,000であり、よりさらに好ましくは270~1,000である。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いた値をいう。
【0023】
前記(A)成分のエポキシ樹脂は、樹脂組成物からなる硬化物の耐湿性を改善するためにエステル結合を含まないエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0024】
前記(A)成分は、例えば以下の式(A-1)で表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0025】
【化9】
【0026】
式(A-1)中、Rは、炭素数が1~15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、wは、1~20の整数である。
【0027】
前記式(A-1)で表されるエポキシ樹脂は、下記式(A-1-1)及び/又は(A-1-2)であらわされるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0028】
【化10】
【0029】
式(A-1-1)中、xは、1~15の整数である。
【0030】
【化11】
【0031】
式(A-1-2)中、yは、1~20の整数である。
【0032】
前記(A)成分は、例えば以下の式(A-2)で表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0033】
【化12】
【0034】
式(A-2)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0035】
前記(A)成分は、前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される樹脂組成物の他に、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、シロキサン系エポキシ樹脂などを用いてもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0036】
本発明に係る樹脂組成物は、さらに(A)成分以外のエポキシ樹脂(芳香環を含むエポキシ樹脂)を含んでいてもよい。(A)成分の芳香環を含まないエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の総数は、樹脂組成物中の全エポキシ基の数を100としたとき20~100であることが好ましく、40~100であることがより好ましく、50~100であることがさらに好ましい。(A)成分の芳香環を含まないエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数は、(A)成分の芳香環を含まないエポキシ樹脂の質量を、(A)成分の芳香環を含まないエポキシ樹脂のエポキシ基当量で除すことによって、算出することができる。また、(A)成分と(A)成分以外のエポキシ樹脂のエポキシ基の比は、NMRを用いて算出することもできる。
樹脂組成物中の全エポキシ基の数は、(A)成分の芳香環を含まないエポキシ樹脂を含む場合には、(A)成分以外のエポキシ樹脂のエポキシ基の数は、(A)成分以外のエポキシ樹脂の質量を、(A)成分以外のエポキシ樹脂のエポキシ基当量で除すことによって算出することができ、(A)成分以外のエポキシ樹脂のエポキシ基の数と、(A)成分の芳香環を含まないエポキシ基の数との和を、樹脂組成物中の全エポキシ基の数とすることができる。
【0037】
(B)成分:2官能チオール化合物
本発明の一実施形態の樹脂組成物中に含まれる(B)2官能チオール化合物は、分子内に芳香環構造又は脂環構造と、ヘテロ原子を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び、分子内に芳香環構造又は複素環構造と、ヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物である。(B)成分の2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0038】
(B)成分の2官能チオ―ル化合物は、分子量が210以上であり、揮発性が低いため、例えば80℃の低温で樹脂組成物を熱硬化させる際に2官能チオール化合物が揮発することなく、ボイドの発生が抑制され、物性を維持した硬化物を得ることができる。分子量は280以上であることがより好ましい。また、(B)成分の2官能チオール化合物は、硬化性の観点から、分子量が1,000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。
【0039】
(B)成分の2官能チオール化合物は、ヘテロ原子を有し、(A)成分の芳香環を含まないエポキシ樹脂との相溶性が良好であり、例えば80℃の低温での硬化により、均質な硬化物が得られる。(B)成分の芳香環構造は、5員環以上の単環の芳香環構造、例えばシクロペンタジエン、ベンゼンなどが挙げられる。脂環構造は、5員環以上の単環の脂環構造、例えば、シクロペンタン、シクロヘキセンなどが挙げられる。複素環構造は、単環であっても多環であってもよく、脂環構造であってもよく、芳香環構造であってもよく、縮合多環構造であってもよい。分子鎖中に含まれるヘテロ原子は、例えば硫黄(S)、酸素(O)原子が挙げられ、分子鎖中にチオエーテル結合又はエーテル結合を含むことが好ましい。(B)成分の2官能チオール化合物は、エポキシ樹脂との相溶性及び低揮発性の観点から、ヘテロ原子が硫黄原子であること、すなわち、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖を含むことが好ましい。また、(B)成分の2官能チオール化合物は、エポキシ樹脂との相溶性及び低揮発性の観点から、ヘテロ原子が酸素原子であること、すなわち、分子内に芳香環構造と、エーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含むことが好ましい。金属に対する接着強度の観点から、(B)成分の2官能チオール化合物は、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含み、エステル結合を含まない末端にチオール基を有する分子鎖を含むことがより好ましい。
【0040】
また、(B)成分の2官能チオール化合物は、2個のチオール基を有するため、樹脂組成物を硬化させた場合に、3官能以上のチオール化合物が主体の硬化物に比べ、残留応力が小さく被着体の熱変形に追従可能な、応力緩和の優れた硬化物を得ることができる。
【0041】
さらに、(B)成分の2官能チオール化合物は、分子内にエステル結合を含まないため、例えばプレッシャークッカーテスト(以下「PCT」ともいう)のような、高温高湿下においても、耐加水分解性が高く、得られる硬化物の接着強度を維持することができる。
【0042】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-1)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0043】
【化13】
【0044】
一般式(B-1)中、n、mは、それぞれ独立に1~3の整数であり、n、mは、それぞれ2であることが好ましい。
【0045】
前記一般式(B-1)で表される2官能チオール化合物は、下記一般式(B-1-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。
【0046】
【化14】
【0047】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-2)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-2)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0048】
【化15】
【0049】
一般式(B-2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は下記一般式(b-1)で表される基である。ただし、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基であり、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基である。
【0050】
【化16】
【0051】
一般式(b-1)中、rは、1~3の整数であり、2であることが好ましい。
【0052】
前記一般式(B-2)で表される2官能チオール化合物は、下記一般式(B-2-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。
【0053】
【化17】
【0054】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-3)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-3)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0055】
【化18】
【0056】
一般式(B-3)中、G、Gは、それぞれ独立に-O-又は-CH-で結合される2価の基であり、p、qは、それぞれ独立に2~5の整数である。G、Gは、-O-で結合される2価の基であることが好ましく、p、qは、3または4であることが好ましく、4であることがより好ましい。
【0057】
前記一般式(B-3)で表される2官能チオール化合物は、下記一般式(B-3-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。
【0058】
【化19】
【0059】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-4)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-4)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0060】
【化20】
【0061】
一般式(B-4)中、s、tは、それぞれ独立に3又は4の整数であり、4であることが好ましい。
【0062】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-5)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-5)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0063】
【化21】
【0064】
一般式(B-5)中、u、vは、それぞれ独立に3又は4の整数であり、4であることが好ましい。
【0065】
本発明の一実施形態の樹脂組成物において、さらに(B)成分以外のチオール化合物(単官能チオール化合物、2官能チオール化合物、3官能以上のチオール化合物)を含んでいてもよい。(B)成分の2官能チオール化合物に含まれるチオール基の総数は、樹脂組成物中の全チオール基の数を100としたとき20~100であることが好ましく、40~100であることがより好ましく、50~100であることがさらに好ましい。(B)成分の2官能チオール化合物に含まれるチオール基の数は、(B)成分の2官能チオール化合物の質量を(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基当量で除すことによって、算出することができる。また、(B)成分と(B)成分以外のチオール化合物のチオール基の比は、NMRを用いて算出することもできる。
樹脂組成物中の全チオール基の数は、(B)成分の2官能チオール化合物以外のチオール化合物を含む場合には、(B)成分以外のチオール化合物のチオール基の数は、(B)成分以外のチオール化合物の質量を、(B)成分以外のチオール化合物のチオール基当量で除すことによって算出することができ、(B)成分以外のチオール基の数と、(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基の和を、樹脂組成物中の全チオール基の数とすることができる。
【0066】
樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基に対する全チオール化合物のチオール基の当量比(エポキシ当量:チオール当量)は、1:0.5から1:1.5であることが好ましい。樹脂組成物において、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ当量に対してチオール当量が0.5当量未満あるいは1.5当量超となる量であると、未反応のエポキシ樹脂あるいはチオール化合物が硬化物に残存するため、樹脂組成物の接着強度が低下する。
【0067】
(C)成分:アミン化合物
本発明の一実施形態の樹脂組成物において、(C)成分のアミン化合物は、イミダゾール系化合物、第三級アミン系化合物及びアミンアダクトから選択される少なくとも1種のアミン化合物であることが好ましい。(C)成分のアミン化合物は、エポキシ樹脂の硬化促進剤としての機能を有するものであることが好ましい。例えば、(C)成分のアミン化合物は、室温では不溶の固体で、加熱することにより可溶化し硬化促進剤として機能する化合物であることが好ましく、その例として、常温で固体のイミダゾール系化合物や、第三級アミン化合物、固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤、例えば、アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤)、アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物(尿素型アダクト系潜在性硬化促進剤)などが挙げられる。
【0068】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1)’)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N’-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
第三級アミン系化合物としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類及びヒドラジド類;などが挙げられる。市販されている第三級アミン系化合物としては、例えばフジキュアーFXR-1020、フジキュアーFXR-1020(株式会社T&K TOKA製)が挙げられる。
【0070】
市販されている固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の例としては、ノバキュアHXA9322HP(旭化成株式会社製)、フジキュアーFXR-1121(株式会社T&K TOKA製)、アミキュアPN-23、アミキュアPN-F(味の素ファインテクノ株式会社製)などが挙げられる。固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化剤又は潜在性硬化促進剤のより詳細な例は、特開2014-77024号公報の記載を援用する。
【0071】
樹脂組成物に含まれる(C)成分のアミン化合物の含有量は、アミン化合物の種類によって異なる。ポットライフを長くする観点から、樹脂組成物に含まれる(C)アミン化合物は、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~35質量部、よりさらに好ましくは1.0~30質量部である。なお(C)成分には、エポキシ樹脂に分散された分散液の形態で提供されるものがある。そのような形態の(C)成分を使用する場合、(C)成分が分散しているエポキシ樹脂の量も、本発明の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂((A)成分および(A)成分以外のエポキシ樹脂)の量に含まれる。
【0072】
(D)成分:安定剤
本発明の一実施形態の樹脂組成物は、(D)成分の安定剤を含んでいてもよい。樹脂組成物は、(D)成分の安定剤を含むことにより、常温(25℃)での貯蔵安定性を向上させ、ポットライフを長くすることができる。(D)成分の安定剤としては、液状ホウ酸エステル化合物、アルミキレート、及び、バルビツール酸からなる群から選択される少なくとも1つが、常温(25℃)での貯蔵安定性を向上させる効果が高いため好ましい。
【0073】
液状ホウ酸エステル化合物としては、例えば、2,2’-オキシビス(5,5’-ジメチル-1,3,2-オキサボリナン)、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ-o-トリルボレート、トリ-m-トリルボレート、トリエタノールアミンボレートを用いることができる。
なお、(D)成分として含有させる液状ホウ酸エステル化合物は、常温(25℃)で液状であるため、樹脂組成物の粘度を低く抑えられるため好ましい。
(D)成分として樹脂組成物に液状ホウ酸エステル化合物を含有させる場合、樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~3質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることがさらに好ましい。
【0074】
アルミキレートとしては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(例えば、川研ファインケミカル株式会社製のALA:アルミキレートA)を用いることができる。
(D)成分としてアルミキレートを含有させる場合、樹脂組成物100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。
【0075】
(D)成分としてバルビツール酸を含有させる場合、樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~3質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることがさらに好ましい。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、さらに、必要に応じて、(E)他の成分として、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ガラス、タルク、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリジビニルベンゼンなどの有機フィラー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などのゴムフィラー、カルボキシ基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)やポリブタジエンなどの可撓剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、及び、搖変剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含有してもよい。また、粘度調整剤、難燃剤、あるいは溶剤などを含有してもよい。
【0077】
樹脂組成物の製造方法
本発明の一実施形態の樹脂組成物は、前記(A)成分~(C)成分、及び、必要に応じて(D)成分を添加し、混練することにより製造できる。樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。たとえば、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記(A)成分~(C)成分、必要に応じて(D)成分を含む原料を、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、ハイブリッドミキサー、回転式混合機、あるいは二軸ミキサーなどの混合機によって混合することで製造することができる。これらの成分は、同時に混合してもよく、一部を先に混合し、残りを後から混合してもよい。また、上記装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0078】
接着剤
本発明の一実施形態の接着剤は、上述の樹脂組成物を用いる。本発明の一実施形態の接着剤は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができる。例えば熱膨張係数の異なる2つの部品を、本発明の一実施形態の接着剤を用いて接合した場合は、周囲の温度の変化によって部品が熱変形した場合であっても、部品の熱変形に追従できる柔軟性を有する。具体的な熱硬化条件としては、例えば60℃以上120℃以下である。
【0079】
封止材
本発明の一実施形態の封止材は、上述の樹脂組成物を用いる。本発明の一実施形態の封止材は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができる。例えば2つの部品の隙間を、本発明の一実施形態の封止材を用いて封止した場合に、周囲の温度の変化によって部品が熱変形した場合であっても、部品の熱変形に追従できる柔軟性を有する。具体的な熱硬化条件としては、例えば60℃以上120℃以下である。
【0080】
イメージセンサーモジュール
本発明の一実施形態のイメージセンサーモジュールは、前述の樹脂組成物を含む接着剤又は封止材を用いて形成されたものである。イメージセンサーモジュールには、携帯電話やスマートフォンのカメラモジュールも含まれる。本発明の一実施形態の樹脂組成物は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができため、80℃程度の低温での硬化が要求されるイメージセンサーモジュールの組み立てに用いる接着剤又は封止材に含まれる樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0081】
半導体装置
本発明の一実施形態の半導体装置は、前述の樹脂組成物を含む接着剤又は封止材を用いて形成されたものである。半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電子部品、半導体回路、これらを組み込んだモジュール、電子機器などを含むものである。本発明の一実施形態の樹脂組成物は、80℃程度の低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができため、低温での硬化を要求されるイメージセンサーモジュールの組み立てに用いる接着剤又は封止材に含まれる樹脂組成物として好適に用いることができる。
【実施例
【0082】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
実施例及び比較例
下記表1~3に示す配合で各成分を、混合して樹脂組成物を調製した。なお、下記表において、(A)成分~(E)成分の配合割合を示す数字は、すべて質量部を示している。表1~3中の各成分は、以下の通りである。
【0084】
エポキシ樹脂
(A)成分:芳香環を含まないエポキシ樹脂
(A1)YX8000:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製、重量平均分子量410、エポキシ当量:205g/eq。
(A2)YX7400:一般式(A-1-1)で表され、一般式(A-1-1)中のxが10.3である、エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製、重量平均分子量870、エポキシ当量:435g/eq。
(A3)CDMDG:1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、昭和電工株式会社製、重量平均分子量264、エポキシ当量:132g/eq。
(A4)アデカライザー(登録商標)BF1000:エポキシ変性ポリブタジエン(1,2-ポリブタジエンの側鎖をエポキシ化したもの)、株式会社ADEKA、重量平均分子量1,500、エポキシ当量:178g/eq。
(A5)TSL9906:一般式(A-2)で表され、一般式(A-2)中のR~Rがメチル基であるエポキシ樹脂、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、重量平均分子量296、エポキシ当量181g/eq。
(A’)成分:芳香環を含むエポキシ樹脂
(A’6)EXA-850CRP(EPICLON):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、DIC株式会社、重量平均分子量:344、エポキシ当量:172g/eq。
【0085】
チオール化合物
(B)成分:2官能チオール化合物
(B1)チオール化合物1:一般式(B-1-1)で表される2官能チオール化合物、四国化成工業株式会社製、分子量389、チオール当量:211g/eq。
(B2)チオール化合物2:一般式(B-2-1)で表される2官能チオール化合物、四国化成工業株式会社製、分子量445、チオール当量:243g/eq。
(B3)チオール化合物3:一般式(B-3-1)で表される2官能チオール化合物、四国化成工業株式会社製、分子量286、チオール当量:159g/eq。
(B’)(B)成分以外のチオール化合物
(B’4)3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン):東京化成工業社製、分子量182、チオール当量91g/eq。
(B’5)1,10-デカンジチオール:東京化成工業社製、分子量206、チオール当量103g/eq。
(B’6)EPMG-4:テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製、分子量372、チオール当量186g/eq。
(B’7)PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP)、SC有機化学株式会社製、分子量489、チオール当量122g/eq。
(B’8)C3 TS-G:1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、四国化成工業株式会社製、分子量432、チオール当量114g/eq。
【0086】
(C)成分:アミン化合物
(C1)HXA9322HP:固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤(マイクロカプセル型イミダゾールアダクト)、旭化成株式会社製、重量の1/3がマイクロカプセル型イミダゾールアダクト、2/3がビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物、エポキシ当量180g/eq。
(C2)FXR1121(フジキュアー):固体分散型アミンアダクト、株式会社T&K TOKA製。
(C3)FXR1020(フジキュアー)、第三級アミン系化合物、株式会社T&K TOKA製。
【0087】
(D)成分:安定剤
(D1)TIPB:トリイソプロピルボレート、東京化成工業株式会社製。
【0088】
(E)他の成分
(E1)SOE5:シリカフィラー、株式会社アドマテックス製。
(E2)KBM403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)、信越化学株式会社製。
【0089】
評価方法
揮発性
直径5cm、深さ0.5cmの金属容器の重量を測定する。そこにチオール化合物1.0gを目安に加え、蓋を被せずに80℃のオーブンに1時間放置した。放冷後、金属容器の重量を測定しチオール樹脂からの揮発分を測定した。その結果、1,10-デカンジチオールの揮発分は11%、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオールの揮発分は27%だったのに対して、チオール化合物1、2、3を含むその他のチオール樹脂の揮発分は全て1%以下であった。
【0090】
接着強度
調製した樹脂組成物の接着強度(シェア強度)を以下の手順で測定した。結果を下記表に示す。
(1)試料を3cm×4cmのSUS(Steel Special Use Stainless)304板上に2mmφの大きさで孔版印刷する。
(2)印刷した試料上に1.5mm×3mmのアルミナチップを乗せる。これを送風乾燥機を用いて80℃で180分間熱硬化させる。
(3)卓上万能試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605HTP)にてシェア強度を測定する。接着強度が90N以上180N以下の各実施例及び比較例の樹脂組成物を表1に記載した。接着強度が90N未満の各実施例及び比較例の樹脂組成物を表2に記載した。接着強度が180Nを超える各実施例及び比較例の樹脂組成物を表3に記載した。
【0091】
反り
表1~3に示す各エポキシ樹脂に、ダレ抑制のため、日本アエロジル社製の揺変剤R805を0.6部加え、その他の成分は表1~3の通り混合して樹脂組成物を調製した。なお、下記表において、(A)成分~(E)成分の配合割合を示す数字は、すべて質量部を示している。調製された樹脂組成物を東レ・デュポン株式会社製ポリイミドフィルム(カプトンフィルム:厚み5μm)上に正方形の2cm×2cm、厚み125μmの孔版(宇部興産株式会社製ユーピレックスフィルムにて作成)で孔版印刷を行なった。80℃で180分間熱硬化させた後、25℃の環境に1晩放置した。硬化物が印刷された部分を切り抜き、2cm×2cmの試料を作製した。凸面を上にして、測定顕微鏡にて水平面から最大高さまでの距離を反り量として、測定を行った。応力緩和の観点から、反り量は、4.0mm以下であることが好ましい。
【0092】
耐加水分解性
樹脂組成物中にエステル結合を含む化合物を含む場合には、高温高湿下で加水分解し、比較例3,4の組成物の樹脂硬化物(反り量を測定したサンプル)をPCT条件(121℃2気圧)に10時間入れ続けたところ、樹脂硬化物は液状化し、耐加水分解性が良好ではなかった。一方、実施例16,17の組成物は、樹脂硬化物の外観に異常は見られなかった。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
実施例1~20の樹脂組成物から得られた硬化物は、耐加水分解性、低揮発性が良好であり、硬化後の硬化物中にボイドが存在していなかった。
【0097】
表1に示すように、樹脂組成物の接着強度が90N~180Nの実施例1~11の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りが2.1mm以下であり、比較例1と比べて反りが抑制されていた。この結果から実施例1~11の樹脂組成物は、残留応力が小さく、熱膨張係数の異なる2つの部品を接着した後、周囲の温度変化によって2つの部品が膨張・収縮した場合であっても、2つの部品の変化に追従できる柔軟性を有し、応力緩和に優れていることが確認できた。一方、樹脂組成物の接着強度が90N~180Nの比較例1の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りが2.1mmを超えていた。また、比較例1の樹脂組成物に含まれるチオール化合物は、分子量が小さく、揮発性があり、硬化時に樹脂組成物中に気泡が発生し、得られた硬化物中にボイドが存在していた。なお、実施例5および実施例11は、芳香環を含むエポキシ樹脂を併用した例であるが、接着強度、反りの抑制とも良好であった。
【0098】
表2に示すように、樹脂組成物の接着強度が90N未満の実施例12~14の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りが1.2mm以下であり、比較例2及び3と比べて反りが抑制されていた。この結果から残留応力が小さく、熱膨張係数の異なる2つの部品を接着した後、周囲の温度変化によって2つの部品が膨張・収縮した場合であっても、2つの部品の変化に追従できる柔軟性を有し、応力緩和に優れていることが確認できた。一方、樹脂組成物の接着強度が90N未満の比較例2及び3の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りが1.2mmを超えていた。また、比較例2の樹脂組成物に含まれるチオール化合物は、分子量が小さく、揮発性があり、硬化時に樹脂組成物中に気泡が発生し、得られた硬化物中にボイドが存在していた。比較例3の樹脂組成物に含まれるチオール化合物は、エステル結合を含むために、加水分解する可能性が高く、高温高湿下における接着強度が低下すると予測された。なお、実施例14は、2種の(A)成分を併用した例であるが、接着強度、反りの抑制とも良好であった。
【0099】
表3に示すように、樹脂組成物の接着強度が180Nを超える実施例15~20の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りが4.0mm未満であり、比較例4及び5と比べて反りが抑制されていた。この結果から残留応力が小さく、熱膨張係数の異なる2つの部品を接着した後、周囲の温度変化によって2つの部品が膨張・収縮した場合であっても、2つの部品の変化に追従できる柔軟性を有し、応力緩和に優れていることが確認できた。一方、樹脂組成物の接着強度が180Nを超える比較例4及び5の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りが4.0mmを超えて大きくなった。この結果から、比較例4及び5の樹脂組成物から得られた硬化物は、残留応力が存在し、2つの部品間を接着した場合に、温度の影響による2つの部品の変化に追従可能な柔軟性がないと予測された。また、比較例5の樹脂組成物に含まれるチオール化合物は、エステル結合を含むために、加水分解する可能性が高く、高温高湿下における接着強度が低下すると予測された。なお、実施例16~19は、(B)成分と(B)成分以外のチオール化合物を併用した例であるが、接着強度、反りの抑制とも良好であった。