IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナミックス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20240416BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20240416BHJP
   C09J 181/02 20060101ALI20240416BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240416BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20240416BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240416BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 23/10 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08G75/045
C09J4/00
C09J181/02
C09J4/02
C09J11/00
C09J11/06
C09K3/10 F
C09K3/10 E
H01L23/10 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553223
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040618
(87)【国際公開番号】W WO2020080391
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2018196087
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 一希
(72)【発明者】
【氏名】新井 史紀
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/147708(WO,A1)
【文献】特開2000-154251(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163794(WO,A1)
【文献】FIRDAUS, M. et al.,Renewable co‐polymers derived from castor oil and limonene,Eur. J. Lipid Sci. Technol.,2014年,Vol. 116,p. 31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00-75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物と、
(B)分子量が210以上1,000以下の下記一般式(B-1)、(B-2)又は(B-3)で表される2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)反応開始剤と、
(D)ラジカル重合禁止剤と、を含む(但し、下記式(1)で表される2官能チオール化合物と硫黄との反応物を除く)、樹脂組成物。
(式中、rは0~3の整数を表し、Rは炭素数1~3のアルキレン基を表す。)
【化16】

(一般式(B-1)中、n、mは、それぞれ独立に1~3の整数である。)
【化17】

(一般式(B-2)中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子又は下記一般式(b-1)で表される基である。ただし、R 及びR のいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基であり、R 及びR のいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基である。)
【化18】

(一般式(b-1)中、rは、1~3の整数である。)
【化19】

(一般式(B-3)中、G 、G は、それぞれ独立に-O-であり、p、qは、それぞれ独立に2~5の整数である。)
【請求項2】
(A)分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物と、
(B)下記一般式(B-4)で表される分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び下記一般式(B-5)で表される分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)反応開始剤と、
(D)ラジカル重合禁止剤と、を含む樹脂組成物。
【化20】
(一般式(B-4)中、s、tは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
【化21】
(一般式(B-5)中、u、vは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
【請求項3】
前記(A)成分の化合物の炭素-炭素二重結合基が、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、又は、アリルエーテル基である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基の総数が、樹脂組成物中の全チオール基の数を100としたとき20~100である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の反応開始剤が、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤及び熱塩基開始剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)成分のラジカル重合禁止剤の含有量が、樹脂組成物全量100質量%に対して、0.0001~3.0質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)成分のラジカル重合禁止剤が、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、ジフェニルニトロソアミン、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル、メチルヒドロキノン、ハイドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む封止材。
【請求項10】
請求項8に記載の接着剤又は請求項9に記載の封止材を用いて製造されたイメージセンサーモジュール。
【請求項11】
請求項8に記載の接着剤又は請求項9に記載の封止材を用いて製造された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温の熱硬化、具体的には80℃程度での熱硬化が求められる用途において使用可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォンのカメラモジュールとして使用されるイメージセンサーモジュールの製造時には、比較的低温、具体的には80℃程度の温度で熱硬化する接着剤や封止材が使用される。半導体素子、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサなどの電子部品を含む半導体装置の製造時においても、80℃程度の温度で熱硬化する樹脂組成物を含む接着剤や封止材の使用が好ましい。
【0003】
比較的低温の熱硬化が要求される接着剤や封止材に使用される樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、炭素-炭素二重結合基を有する化合物と、チオール化合物とを含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-77024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イメージセンサーモジュールや半導体装置を構成する部品を接着又は封止する樹脂組成物は、熱膨張係数の異なる2つの部品を接合するため、周囲の温度の変化によってその接合部には熱応力が作用してクラックが発生する場合がある。熱膨張係数の異なる2つの部品を接合するための接着剤又は封止材に用いられる樹脂組成物は、部品の熱変形に追従できる程度の柔軟性が必要であり、接着剤が硬化した後にも応力緩和に優れた硬化物であることが要求される。
【0006】
特許文献1に開示されているような分子内に3個以上のチオール基を有するポリチオール化合物が主体の樹脂組成物は、架橋点が多くなり、得られる硬化物中の残留応力によって、被着体の熱変形に追従し難い場合がある。また、分子内に2個のチオール基を有するポリチオール化合物が、特許文献1に開示されているような1,4-ブタンジチオール、1,10-デカンジチオールなどのアルキル基の両末端にチオール基を有する2官能チオール化合物の場合は、分子量が小さいために、揮発性が高く、80℃程度の低温で硬化させた場合でも、得られる硬化物にボイドが存在し、硬化物の物性が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、より応力緩和に優れた硬化物が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りであり、本発明は、以下の態様を包含する。
[1](A)分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物と、
(B)分子内に芳香環構造又は脂環構造と、ヘテロ原子を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び、分子内に芳香環構造又は複素環構造と、ヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)反応開始剤と、
(D)ラジカル重合禁止剤と、を含む樹脂組成物である。
[2]前記(B)成分が、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含む、2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
[3]前記(B)成分が、分子内に芳香環構造と、エーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含む、2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
[4]前記(B)成分が、下記一般式(B-1)、(B-2)又は(B-3)で表される2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
【化1】
(一般式(B-1)中、n、mは、それぞれ独立に1~3の整数である。)
【化2】
(一般式(B-2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は下記一般式(b-1)で表される基である。ただし、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基であり、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基である。)
【化3】
(一般式(b-1)中、rは、1~3の整数である。)
【化4】
(一般式(B-3)中、G、Gは、それぞれ独立に-O-又は-CH-で結合される2価の基であり、p、qは、それぞれ独立に2~5の整数である。)
[5] 前記(B)成分が、下記一般式(B-4)又は(B-5)で表される2官能チオール化合物である、前記[1]に記載の樹脂組成物である。
【化5】
(一般式(B-4)中、s、tは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
【化6】
(一般式(B-5)中、u、vは、それぞれ独立に3又は4の整数である。)
[6]前記(A)成分の化合物の炭素-炭素二重結合基が、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、又は、アリルエーテル基である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[7]前記(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基の総数が、樹脂組成物中の全チオール基の数を100としたとき20~100である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[8]前記(C)成分の反応開始剤が、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤及び熱塩基開始剤からなる群から選択される少なくも1種である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[9]前記(D)成分のラジカル重合禁止剤の含有量が、樹脂組成物全量100質量%に対して、0.0001~3.0質量%である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[10]前記(D)成分のラジカル重合禁止剤が、、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、ジフェニルニトロソアミン、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル、メチルヒドロキノン、及びハイドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
[11]前記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む接着剤である。
[12]前記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む封止材である。
[13]前記[11]に記載の接着剤又は前記[12]に記載の封止材を用いて製造されたイメージセンサーモジュールである。
[14]前記[11]に記載の接着剤又は前記[12]に記載の封止材を用いて製造された半導体装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、80℃程度の低温での熱硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物が得られる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る樹脂組成物、接着剤、封止材、イメージセンサーモジュール及び半導体装置の実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の樹脂組成物、接着剤、封止材、イメージセンサーモジュール及び半導体装置に限定されない。
【0011】
本発明の第一の実施形態に係る樹脂組成物は、
(A)分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物と、
(B)分子内に芳香環構造又は脂環構造と、ヘテロ原子を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び、分子内に芳香環構造又は複素環構造と、ヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物と、
(C)反応開始剤と、
(D)ラジカル重合禁止剤と、を含む樹脂組成物である。
【0012】
(A)成分:分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物
樹脂組成物は、(A)成分として分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物を含む。(A)成分の化合物に含まれる炭素-炭素二重結合基は、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、又は、アリルエーテル基であることが好ましい。
【0013】
本明細書において「(メタ)アクリル」は、メタクリル及びアクリルの両方を含む。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、メタクリルレート及びアクリレートの両方を含む。
【0014】
(A)成分の分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物は、分子内に(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、又は、アリルエーテル基を含む化合物であることが好ましい。(A)成分の化合物は、分子内に炭素-炭素二重結合を有するモノマー又はオリゴマーであってもよい。(A)成分の化合物は、光又は熱重合性を有する化合物であることが好ましい。(A)成分の化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(A)成分の化合物として、(メタ)アクリル基を有する化合物のなかで、例えば多官能モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ポリエステルアクリレートを好適に使用することができる。中でも、応力緩和に優れた物性を有する硬化物が得られる観点からポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートが好ましい。
【0016】
(A)成分の化合物として、(メタ)アクリル基を有する化合物のなかで、例えば(メタ)アクリル系のオリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を持ったアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル等が挙げられる。例えば、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソブチルメタクリレート(IBMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とアクリロイルモルホリン(ACMO)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とジエチルアクリルアミド(DEAA)の共重合体、1-アダマンチルアクリレート(ADA)とメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、シクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体等を挙げることができる。
【0017】
その他に、(A)成分の化合物である、(メタ)アクリル基を有する化合物として、例えばジシクロペンタニルジアクリレート(DCPA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又はそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又はそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレートが挙げられる。中でも、応力緩和に優れた物性を有する硬化物が得られる観点から、ジシクロペンタニルジアクリレートが好ましい。
【0018】
(A)成分の化合物として、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、又は、アリルエーテル基を含むモノマー又はオリゴマーとしては、例えば多官能モノマーとしては、例えば、シクロへキシルビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ピペリレン、イソプレン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、クロロプレン、ブタジエン、メチルブタジエン、シクロペンタジエン、メチルペンタジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルビニルエーテル、メチルビニルケトン、ジメチルアリルビニルケトン、2-クロルエチルビニルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、メチルジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、テトラアリルグリコールウリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムル等が挙げられる。中でも、応力緩和に優れた物性を有し、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルエーテル、ジアリルものグリシジルエーテルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルが好ましい。
【0019】
(A)成分の化合物として、上述の化合物の他に、例えば、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、カルボキシ基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)等を使用してもよい。中でも、応力緩和に優れた物性を有する硬化物が得られる観点から、エポキシ変性ポリブタジエン、カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)が好ましい。
【0020】
(A)成分の化合物は、重量平均分子量が、好ましくは150~10000、より好ましくは180~5000、さらに好ましくは190~3000である。(A)成分の化合物の重量平均分子量が150~10000であれば、作業性に好ましい粘度であり、また、熱膨張係数の異なる2つの部品を接着した場合に、周囲の温度変化によって、接着した2つの部品がそれぞれ異なる熱膨張係数によって膨張・収縮した場合であっても、部品の変化に追従できる柔軟性を有し、応力緩和に優れる。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いた値をいう。
【0021】
(B)成分:2官能チオール化合物
本発明の一実施形態の樹脂組成物中に含まれる(B)成分の2官能チオール化合物は、分子内に芳香環構造又は脂環構造と、ヘテロ原子を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物、及び、分子内に芳香環構造又は複素環構造と、ヘテロ原子を含んでいてもよく、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含み、分子量が210以上の2官能チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の2官能チオール化合物である。(B)成分の2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0022】
(B)成分の2官能チオ―ル化合物は、分子量が210以上であり、揮発性が低いため、例えば80℃の低温で樹脂組成物を熱硬化させる際に2官能チオール化合物が揮発することなく、ボイドの発生が抑制され、物性を維持した硬化物を得ることができる。分子量は280以上であることがより好ましい。また、(B)成分の2官能チオール化合物は、硬化性の観点から、分子量が1,000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。
【0023】
(B)成分の2官能チオール化合物は、例えば80℃の低温での硬化により、均質な硬化物が得られる。(B)成分の芳香環構造は、5員環以上の単環の芳香環構造、例えばシクロペンタジエン、ベンゼンなどが挙げられる。脂環構造は、5員環以上の単環の脂環構造、例えば、シクロペンタン、シクロヘキセンなどが挙げられる。複素環構造は、単環であっても多環であってもよく、ヘテロ原子を有する脂環構造であってもよく、ヘテロ原子を有する芳香環構造であってもよく、ヘテロ原子を有する縮合多環構造であってもよい。分子鎖中に含まれるヘテロ原子は、例えば、硫黄(S)、酸素(O)原子が挙げられ、分子鎖中にチオエーテル結合又はエーテル結合を含むことが好ましい。(B)成分の2官能チオール化合物は、低揮発性の観点から、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含む分子鎖とを含むことが好ましい。ヘテロ原子が硫黄原子であること、すなわち、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖を含むことが好ましい。また、(B)成分の2官能チオール化合物は、(A)成分との相溶性及び低揮発性の観点から、ヘテロ原子が酸素原子であること、すなわち、分子内に芳香環構造と、エーテル結合を含み、エステル結合を含まない、末端にチオール基を有する分子鎖とを含むことが好ましい。金属に対する接着強度の観点から、(B)成分の2官能チオール化合物は、分子内に脂環構造と、チオエーテル結合を含み、エステル結合を含まない末端にチオール基を有する分子鎖を含むことがより好ましい。
【0024】
また、(B)成分の2官能チオール化合物は、2個のチオール基を有するため、樹脂組成物を硬化させた場合に、3官能以上のチオール化合物が主体の硬化物に比べ、残留応力が小さく被着体の熱変形に追従可能な、応力緩和の優れた硬化物を得ることができる。
【0025】
さらに、(B)成分の2官能チオール化合物は、分子内にエステル結合を含まないため、例えばプレッシャークッカーテスト(以下「PCT」ともいう)のような高温高湿下においても、耐加水分解性が高く、得られる硬化物の接着強度を維持することができる。
【0026】
(B)成分は、例えば下記一般式(B-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-1)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0027】
【化7】
【0028】
一般式(B-1)中、n、mは、それぞれ独立に1~3の整数であり、n、mは、それぞれ2であることが好ましい。
【0029】
一般式(B-1)で表される2官能チオール化合物は、下記一般式(B-1-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。
【0030】
【化8】
【0031】
(B)成分は、例えば下記一般式(B-2)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-2)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0032】
【化9】
【0033】
一般式(B-2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は下記一般式(b-1)で表される基である。ただし、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基であり、R及びRのいずれか一方は、下記一般式(b-1)で表される基である。
【0034】
【化10】
【0035】
一般式(b-1)中、rは、1~3の整数であり、2であることが好ましい。
【0036】
一般式(B-2)で表される2官能チオール化合物は、下記一般式(B-2-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。
【0037】
【化11】
【0038】
(B)成分は、例えば下記一般式(B-3)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-3)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0039】
【化12】
【0040】
一般式(B-3)中、G、Gは、それぞれ独立に-O-又は-CH-で結合される2価の基であり、p、qは、それぞれ独立に2~5の整数である。G、Gは、-O-で結合される2価の基であることが好ましく、p、qは、3または4であることが好ましく、4であることが好ましい。
【0041】
前記一般式(B-3)で表される2官能チオール化合物は、下記一般式(B-3-1)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。
【0042】
【化13】
【0043】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-4)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-4)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0044】
【化14】
【0045】
一般式(B-4)中、s、tは、それぞれ独立に3又は4の整数であり、4であることが好ましい。
【0046】
前記(B)成分は、例えば下記一般式(B-5)で表される2官能チオール化合物であることが好ましい。(B-5)で表される2官能チオール化合物は、四国化成工業株式会社から入手することができる。
【0047】
【化15】
【0048】
一般式(B-5)中、u、vは、それぞれ独立に3又は4の整数であり、4であることが好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態の樹脂組成物において、さらに(B)成分以外のチオール化合物(単官能チオール化合物、2官能チオール化合物、3官能以上のチオール化合物)を含んでいてもよい。(B)成分の2官能チオール化合物に含まれるチオール基の総数は、樹脂組成物中の全チオール基の数を100としたとき20~100であることが好ましく、40~100であることがより好ましく、50~100であることがさらに好ましい。(B)成分の2官能チオール化合物に含まれるチオール基の数は、(B)成分の2官能チオール化合物の質量を(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基当量で除すことによって、算出することができる。また、(B)成分と(B)成分以外のチオール化合物のチオール基の比は、NMRを用いて算出することもできる。
樹脂組成物物中の全チオール基の数は、(B)成分の2官能チオール化合物以外のチオール化合物を含む場合には、(B)成分以外のチオール化合物のチオール基の数は、(B)成分以外のチオール化合物の質量を、(B)成分以外のチオール化合物のチオール基当量で除すことによって算出することができ、(B)成分以外のチオール基の数と、(B)成分の2官能チオール化合物のチオール基の和を、樹脂組成物中の全チオール基の数とすることができる。
樹脂組成物中に含まれる(A)成分の化合物の炭素-炭素二重結合基に対する全チオール化合物のチオール基の当量比(炭素-炭素二重結合当量:チオール当量)は、1:0.5から1:1.5であることが好ましい。樹脂組成物において、樹脂組成物に含まれる(A)成分の化合物の炭素-炭素二重結合当量に対してチオール当量が0.5当量未満あるいは1.5当量超となる量であると、未反応の(A)成分の化合物あるいはチオール化合物が硬化物に残存するため、樹脂組成物の接着強度が低下する。
【0050】
(C)成分:反応開始剤
(C)成分の反応開始剤は、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤及び熱塩基開始剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これら開始剤には、潜在性が付与されていてもよい。樹脂組成物は、(C)成分の反応開始剤として、光ラジカル開始剤を含むことにより、本硬化前に仮硬化をすることができ、後述するイメージセンサーモジュールを組み立てる際の取り扱い性が良好となる。また、樹脂組成物は、(C)成分の反応開始剤として、熱ラジカル開始剤又は熱塩基開始剤を含むことによって、(A)成分の化合物の硬化剤として機能し、樹脂組成物を仮硬化後に本硬化するか、樹脂組成物を仮硬化せずに硬化して、硬化物を得ることができる。樹脂組成物は、(C)成分の反応開始剤として、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤及び熱塩基開始剤の3種を含んでいてもよく、光ラジカル開始剤及び熱ラジカル開始剤の2種を含んでいてもよく、光ラジカル開始剤及び熱塩基開始剤の2種を含んでいてもよく、熱ラジカル開始剤又は熱塩基開始剤の1種を含んでいてもよい。
【0051】
光ラジカル開始剤
(C)成分の反応開始剤として、光ラジカル開始剤は、例えば、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。中でも、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。
【0052】
アルキルフェノン系化合物の例には、市販品としてはIGM Resins社製2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Omnirad 651)等のベンジルジメチルケタール;2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン(Omnirad 907)等のα-アミノアルキルフェノン;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Omnirad 184)等のα-ヒドロキシアルキルフェノン等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad 819)が挙げられる。
【0053】
(C)成分の反応開始剤としては、上述の光ラジカル開始剤の他に、光ラジカル開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノンなどが挙げられる。
【0054】
熱ラジカル開始剤
(C)成分の反応開始剤として、熱ラジカル開始剤は、特に制限はなく、一般的に知られているものを使用することができ、例えば、特開2018-145354号公報に記載されたパーオキサイド類やアゾ化合物等を用いることができる。熱ラジカル開始剤は、保存安定性の点から、パーオキサイド類が好ましい。(C)成分の反応開始剤のうち、熱ラジカル開始剤として使用することのできるパーオキサイド類としては、分子内に-O-O-結合を持つ物質であればよく、特に制限されるものではない。パーオキサイド類の例として、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等を挙げることができる。この中では、パーオキシエステルを用いることが好ましい。パーオキシエステルの具体的な例として、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1,1,3,3-Tetramethylbutyl peroxy-2-ethylhexanoate)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(t-Butyl peroxyneodecanoate)、などを挙げることができる。熱ラジカル開始剤の市販品としては、日油株式会社製の1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(品名:パーオクタO)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(品名:パーブチルZ)が挙げられる。
【0055】
熱塩基開始剤
(C)成分の反応開始剤として、熱塩基開始剤は、イミダゾール系化合物、第三級アミン系化合物及びアミンアダクトから選択される少なくとも一種のアミン化合物であることが好ましい。(C)成分の反応開始剤として、熱塩基開始剤は、(A)成分の化合物の硬化促進剤としての機能を有し、かつ、潜在性を有する潜在性硬化触媒であることが好ましい。例えば、潜在性硬化触媒は、室温では不溶の固体で、加熱することにより可溶化し硬化促進剤として機能する化合物であることが好ましく、その例として、常温で固体のイミダゾール系化合物や、第三級アミン化合物、固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤、例えば、アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤)、アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物(尿素型アダクト系潜在性硬化促進剤)などが挙げられる。
【0056】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1)’)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N’-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
第三級アミン系化合物としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類及びヒドラジド類;などが挙げられる。市販されている第三級アミン系化合物としては、例えばフジキュアーFXR-1020(株式会社T&K TOKA製)が挙げられる。
【0058】
市販されている固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の例としては、ノバキュアHXA9322HP(旭化成株式会社製)、フジキュアーFXR-1121(株式会社T&K TOKA製)、アミキュアPN-23、アミキュアPN-F(味の素ファインテクノ株式会社製)などが挙げられる。固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤のより詳細な例は、特開2014-77024号公報の記載を援用する。
【0059】
樹脂組成物に含まれる(C)成分のアミン化合物の含有量は、アミン化合物の種類によって異なる。ポットライフを長くする観点から、樹脂組成物に含まれる(C)アミン化合物は、樹脂組成物に含まれる(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~35質量部、よりさらに好ましくは1.0~30質量部である。なお(C)成分には、エポキシ樹脂に分散された分散液の形態で提供されるものがある。
【0060】
(D)成分:ラジカル重合禁止剤
(D)成分のラジカル重合禁止剤は、樹脂組成物の保存時の安定性を高めるために添加されるものであり、意図しないエン-チオール反応を抑制するために添加されるものである。(D)成分のラジカル重合禁止剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等のリン系化合物;p-メトキシフェノ-ル、メチルヒドロキノン、ハイドロキノン、ピロガロ-ル、ナフチルアミン、tert-ブチルカテコ-ル、塩化第一銅、2、6ージ-tert-ブチル-p-クレゾ-ル、2、2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノ-ル)、2、2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノ-ル)、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル等のラジカル重合禁止剤が挙げられる。中でも、保存時の安定性を高める観点から、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、ジフェニルニトロソアミン、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル、メチルヒドロキノン、ハイドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合禁止剤であることが好ましい。
【0061】
樹脂組成物に含まれる(D)成分のラジカル重合禁止剤の含有量は、種類によって異なる。保存時の安定性を高めるために、樹脂組成物に含まれる(D)成分のラジカル重合禁止剤は、樹脂組成物全量100質量%に対して、0.0001~3.0質量%である。樹脂組成物に含まれる(D)成分のラジカル重合禁止剤の含有量が0.0001~3.0質量%であれば、意図しないエン-チオール反応を抑制して、樹脂組成物の保存時の安定性を高めることができる。樹脂組成物に含まれる(D)成分のラジカル重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物全量100質量%に対して、好ましくは0.0005~2.0質量%、より好ましくは0.001~1.5質量%、よりさらに好ましくは0.002~1.0質量%である。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、さらに、必要に応じて、エポキシ樹脂等の樹脂の他、シリカフィラー、シランカップリング剤、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、及び、搖変剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含有してもよい。また、粘度調整剤、難燃剤、あるいは溶剤などを含有してもよい。
【0063】
樹脂組成物の製造方法
本発明の一実施形態の樹脂組成物は、前記(A)成分~(D)成分を添加し、混練することにより製造できる。樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。たとえば、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記(A)成分~(D)成分を、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、ハイブリッドミキサー、回転式混合機、あるいは二軸ミキサーなどの混合機によって混合することで製造することができる。これらの成分は、同時に混合してもよく、一部を先に混合し、残りを後から混合してもよい。また、上記装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0064】
接着剤
本発明の一実施形態の接着剤は、上述の樹脂組成物を用いる。本発明の一実施形態の接着剤は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができる。例えば熱膨張係数の異なる2つの部品を、本発明の一実施形態の接着剤を用いて接合した場合は、周囲の温度の変化によって部品が熱変形した場合であっても、部品の熱変形に追従できる柔軟性を有する。具体的な熱硬化条件としては、例えば60℃以上120℃以下である。
【0065】
封止材
本発明の一実施形態の封止材は、上述の樹脂組成物を用いる。本発明の一実施形態の封止材は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができる。例えば2つの部品の隙間を、本発明の一実施形態の封止材を用いて封止した場合に、周囲の温度の変化によって部品が熱変形した場合であっても、部品の熱変形に追従できる柔軟性を有する。具体的な熱硬化条件としては、例えば60℃以上120℃以下である。
【0066】
イメージセンサーモジュール
本発明の一実施形態のイメージセンサーモジュールは、前述の樹脂組成物を含む接着剤又は封止材を用いて形成されたものである。イメージセンサーモジュールには、携帯電話やスマートフォンのカメラモジュールも含まれる。本発明の一実施形態の樹脂組成物は、低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができため、80℃程度の低温での硬化が要求されるイメージセンサーモジュールの組み立てに用いる接着剤又は封止材に含まれる樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0067】
半導体装置
本発明の一実施形態の半導体装置は、前述の樹脂組成物を含む接着剤又は封止材を用いて形成されたものである。半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電子部品、半導体回路、これらを組み込んだモジュール、電子機器などを含むものである。本発明の一実施形態の樹脂組成物は、80℃程度の低温での硬化が可能であり、物性を損なうことなく、応力緩和に優れた硬化物を得ることができため、低温での硬化を要求されるイメージセンサーモジュールの組み立てに用いる接着剤又は封止材に含まれる樹脂組成物として好適に用いることができる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例及び比較例
下記表1~3に示す配合で各成分を、混合して樹脂組成物を調製した。なお、下記表において、(A)成分~(E)成分の配合割合を示す数字は、すべて質量部を示している。表1~3中の各成分は、以下の通りである。
【0070】
(A)成分:分子内に炭素-炭素二重結合基を有する化合物
(A1)DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート、製品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製、アクリル基当量152g/eq(炭素-炭素二重結合/1分子:2個)、重量平均分子量304。
(A2)M7100:ポリエステルアクリレート、製品名:アロニックス(登録商標)M7100、東亜合成株式会社製、アクリル当量188g/eq(炭素-炭素二重結合/1分子:4個)、重量平均分子量:752。
(A3)M8530:ポリエステルアクリレート、製品名:アロニックス(登録商標)M8530、東亜合成株式会社、アクリル当量150g/eq(炭素-炭素二重結合/1分子:4個)、重量平均分子量:600。
(A4)BF1000:エポキシ変性ポリブタジエン(1,2-ポリブタジエンの側鎖をエポキシ化したもの)、製品名:アデカライザーBF1000、株式会社ADEKA、エポキシ当量:178g/eq、ビニル当量:80g/eq、重量平均分子量1,000。
(A5)CTBN:カルボキシ末端ブタジエンニトリルゴム、製品名:CTBN-1008-SP、宇部興産株式会社製、重量平均分子量:4,000。
(A6)TAIC:トリアリルイソシアヌレート、製品名:TAIC、三菱ケミカル株式会社製、アリル当量83g/eq(炭素-炭素二重結合/1分子:3個)、重量平均分子量:249。
(A7)DAMGIC:ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、製品名:DAMGIC、四国化成工業株式会社製、アリル当量132.5g/eq(炭素-炭素二重結合/1分子:2個)、重量平均分子量:265。
(A8)CHDVE:シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、製品名:CHDVE、日本カーバイド工業株式会社製、ビニル当量98g/eq(炭素-炭素二重結合/1分子:2個)、重量平均分子量:196。
【0071】
チオール化合物
(B)成分:2官能チオール化合物
(B1)チオール化合物1:一般式(B-1-1)で表される2官能チオール化合物、四国化成工業株式会社製、分子量389、チオール当量:211g/eq。
(B2)チオール化合物2:一般式(B-2-1)で表される2官能チオール化合物、四国化成工業株式会社製、分子量445、チオール当量:243g/eq。
(B3)チオール化合物2:一般式(B-3-1)で表される2官能チオール化合物、四国化成工業株式会社製、分子量286、チオール当量:159g/eq。
(B’)(B)成分以外のチオール化合物
(B’4)3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン):東京化成工業社製、分子量182、チオール当量91g/eq。
(B’5)1,10-デカンジチオール:東京化成工業社製、分子量206、チオール当量103g/eq。
(B’6)EPMG-4:テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製、分子量372、チオール当量186g/eq。
(B’7)PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP)、SC有機化学株式会社製、分子量489、チオール当量122g/eq。
(B’8)C3 TS-G:1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、四国化成工業株式会社製、分子量432、チオール当量114g/eq。
【0072】
(C)成分:反応開始剤
(C1)フジキュア―FXR1121:固体分散型アミンアダクト、潜在性熱塩基開始剤、株式会社T&K TOKA製。
(C2)Omnirad907:2-メチル‐1[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリンプロパン‐1‐オン、製品名:Omnirad907、 IGMResins社製。
(C3)パーオクタO:1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、熱ラジカル開始剤、日油株式会社製。
【0073】
(D)ラジカル重合禁止剤
(D1)NNAS:N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、製品名Q‐1301、富士フイルム和光純薬株式会社製。
(D2)TEMPO:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、製品名2,2,6,6‐Tetramethylpiperidine1‐OxylFreeRadical、東京化成工業株式会社製。
(D3)MEHQ:メチルヒドロキノン、重合禁止剤、製品名:4‐Methoxyphenol、東京化成工業株式会社製。
(D4)HQ:ハイドロキノン、ラジカル重合禁止剤、製品名:Hydroquinone、東京化成工業株式会社製。
【0074】
(E)他の成分
(E1)アエロジルR805:ヒュームドシリカのオクチルシラン処理、日本アエロジル株式会社製。
【0075】
評価方法
揮発性
直径5cm、深さ0.5cmの金属容器の重量を測定する。そこにチオール化合物1.0gを目安に加え、蓋を被せずに80℃のオーブンに1時間放置した。放冷後、金属容器の重量を測定しチオール樹脂からの揮発分を測定した。その結果、1,10-デカンジチオールの揮発分は11%、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオールの揮発分は27%だったのに対して、チオール化合物1、2、3を含むその他のチオール樹脂の揮発分は全て1%以下であった。
【0076】
接着強度
調製した樹脂組成物の接着強度(シェア強度)を以下の手順で測定した。結果を下記表に示す。
(1)試料を3cm×4cmのSUS(Steel Special Use Stainless)304板上に2mmφの大きさで孔版印刷する。
(2)印刷した試料上に1.5mm×3mmのアルミナチップを乗せる。(C1)及び(C3)を使用した樹脂組成物については、これを送風乾燥機を用いて80℃で180分間熱硬化させる。(C2)を使用した樹脂組成物については、これをエクセリタス・テクノロジーズ社製UV LED照射装置AC475を用いて2000mJ/cm照射して硬化させる。UV照度は、ウシオ電機株式会社製UIT-250、受光機は、UVD-S365にて測定する。
(3)卓上万能試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605HTP)にてシェア強度を測定する。接着強度は4N以上であることが好ましい。
【0077】
反り
調製された樹脂組成物を東レ・デュポン株式会社製ポリイミドフィルム(カプトンフィルム:厚み5μm)上に正方形の2cm×2cm、厚み125μmの孔版(宇部興産株式会社製ユーピレックスフィルムにて作成)で孔版印刷を行なった。硬化条件は、上記接着強度と同条件とした。硬化後、25℃の環境に一晩放置した。硬化物が印刷された部分を切り抜き、2cm×2cmの試料を作製した。凸面を上にして、測定顕微鏡にて水平面から最大高さまでの距離を反り量として、測定を行った。反り量が5.0mm以下の場合は、反りがないか、反りが小さいとし、反り量が5.0mmより大きい場合は、反りがあるとした。反り量は、好ましくは、4.5mm以下である。
【0078】
耐加水分解性
樹脂組成物中にエステル結合を含む化合物を含む場合には、高温高湿下で加水分解し、比較例3~6の組成物の樹脂硬化物(反り量を測定したサンプル)をPCT条件(121℃2気圧)に3時間入れ続けた所、樹脂硬化物は液状化し、耐加水分解性が良好ではなかった。一方、樹脂組成物中にエステル結合を含むチオール化合物を含むが、本発明に係る2官能チオール化合物を併用した実施例7,8の組成物は、樹脂硬化物の外観に異常は見られなかった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
実施例1~13及び比較例1~4は、(C)成分として熱塩基開始剤を用いた例である。実施例14~21及び比較例5は、(C)成分として光ラジカル開始剤を用いた例である。実施例22~29及び比較例6は、(C)成分として熱ラジカル開始剤を用いた例である。実施例1~29の樹脂組成物から得られた硬化物は、耐加水分解性、低揮発性が良好であり、硬化後の硬化物中にボイドが存在していなかった。また、実施例1~29の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りがないか、あるいは反りが小さかった。この結果から残留応力が小さく、熱膨張係数の異なる2つの部品を接着した後、周囲の温度変化によって2つの部品が膨張・収縮した場合であっても、2つの部品の変化に追従できる柔軟性を有し、応力緩和に優れていることが確認できた。
【0083】
比較例4~6の樹脂組成物から得られた硬化物は、反りがあり、この結果から残留応力が存在し、2つの部品間を接着した場合に、温度の影響による2つの部品の変化に追従可能な柔軟性がないと予測された。
比較例1,2の樹脂組成物から得られた硬化物は、チオール化合物の分子量が小さく、揮発性があり、硬化時に樹脂組成物中に気泡が発生し、得られた硬化物中にボイドが存在していた。
比較例3~6の樹脂組成物から得られた硬化物は、耐加水分解性評価の結果から、樹脂組成物中に、エステル結合を含むチオール化合物を含むため、加水分解する可能性が高く、高温高湿下における接着強度が低下すると予測された。