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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20240416BHJP
   F04D 13/14 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F04D13/06 E
F04D13/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020026445
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131057
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】小西 康貴
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-195975(JP,A)
【文献】特開平06-026491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/06
F04D 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャンドモータポンプと、
前記複数のキャンドモータポンプを連結する連結管と、を備え、
前記複数のキャンドモータポンプのそれぞれは、モータケーシングを備えており、
前記モータケーシングは、その両端に形成された、液体を通過させる流通孔を有しており、かつモータを収容しており、
複数のモータケーシングは、前記連結管で連通されており、
前記複数のキャンドモータポンプは、前記複数のキャンドモータポンプのうち、一方のキャンドモータポンプの運転を開始し、かつ他方のキャンドモータポンプの運転を停止して、昇圧された前記液体を、前記連結管を通過させて、運転停止中のキャンドモータポンプに流れ込ませる、単独交互運転を行うように構成されている、給水装置。
【請求項2】
前記モータケーシングは、前記モータケーシングの一端を構成するエンドカバーを備えており、
前記複数のキャンドモータポンプのそれぞれは、前記連結管を、前記エンドカバーに形成された前記流通孔に連結させる連通カバーを備えている、請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記モータケーシングは、前記モータを取り囲んで配置され、かつ前記エンドカバーに接続されたモータフレームを備えており、
前記連通カバーは、前記エンドカバーおよび前記モータフレームを覆っており、
前記連結管は、前記エンドカバーとは反対側の位置で、前記連通カバーに接続されている、請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記モータケーシングは、前記モータのモータロータと前記モータのモータステータとの間に配置された、非導電性のキャンを備えている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記モータケーシングは、前記キャンを補強する補強管を備えている、請求項4に記載の給水装置。
【請求項6】
前記補強管は、円筒形状を有し、かつ前記モータステータの両側に配置された2つの分割フレームから構成されている、請求項5に記載の給水装置。
【請求項7】
給水装置であって、
複数のキャンドモータポンプと、
前記複数のキャンドモータポンプを連結する連結管と、を備え、
前記複数のキャンドモータポンプのそれぞれは、モータケーシングを備えており、
前記モータケーシングは、その両端に形成された、液体を通過させる流通孔を有しており、かつモータを収容しており、
複数のモータケーシングは、前記連結管で連通されており、
前記給水装置は、
前記複数のキャンドモータポンプに接続された吸込管および吐出管と、
前記吸込管および前記吐出管に接続されたバイパス管と、を備えており、
前記連結管は、前記バイパス管に接続されている、給水装置。
【請求項8】
前記給水装置は、前記複数のキャンドモータポンプに隣接して配置されたインバータを備えている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項9】
前記給水装置は、前記複数のキャンドモータポンプの間で運転を切り替えることにより、前記複数のキャンドモータポンプに混入した異物を除去するように構成されている、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャンドモータポンプは、以下に説明する特徴的な構造を有している。
(1)キャンドモータポンプは、メカニカルシールなどの軸封装置を必要としない構造を有しているため、液体の漏洩に起因する故障を軽減することができる。
(2)キャンドモータポンプは、その内部を循環する液体でモータを冷却する構造を有しているため、モータを冷却するためのファンを備える必要はない。したがって、キャンドモータポンプは、低騒音化を実現することができる。
(3)キャンドモータポンプは、玉軸受よりも長寿命なすべり軸受を用いることが可能であるため、キャンドモータポンプの全体の長寿命化を実現することができる。さらに、すべり軸受を有するキャンドモータポンプは、静音性を維持しつつ、高回転速度で運転可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-209976号公報
【文献】特開平9-195975号公報
【文献】特開2007-327441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャンドモータポンプは、上述したような特徴を有しているため、キャンドモータポンプを給水装置に採用することが望ましい。しかしながら、一般的なキャンドモータポンプの冷却構造は複雑であり、キャンドモータポンプの製造コストがかかってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、シンプルな冷却構造を有するキャンドモータポンプを備える給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、複数のキャンドモータポンプと、前記複数のキャンドモータポンプを連結する連結管と、を備える給水装置が提供される。前記複数のキャンドモータポンプのそれぞれは、モータケーシングを備えており、前記モータケーシングは、その両端に形成された、液体を通過させる流通孔を有しており、かつモータを収容しており、複数のモータケーシングは、前記連結管で連通されている。
【0007】
一態様では、前記モータケーシングは、前記モータケーシングの一端を構成するエンドカバーを備えており、前記複数のキャンドモータポンプのそれぞれは、前記連結管を、前記エンドカバーに形成された前記流通孔に連結させる連通カバーを備えている。
一態様では、前記モータケーシングは、前記モータを取り囲んで配置され、かつ前記エンドカバーに接続されたモータフレームを備えており、前記連通カバーは、前記エンドカバーおよび前記モータフレームを覆っており、前記連結管は、前記エンドカバーとは反対側の位置で、前記連通カバーに接続されている。
一態様では、前記モータケーシングは、前記モータのモータロータと前記モータのモータステータとの間に配置された、非導電性のキャンを備えている。
【0008】
一態様では、前記モータケーシングは、前記キャンを補強する補強管を備えている。
一態様では、前記給水装置は、前記複数のキャンドモータポンプに接続された吸込管および吐出管と、前記吸込管および前記吐出管に接続されたバイパス管と、を備えており、前記連結管は、前記バイパス管に接続されている。
一態様では、前記給水装置は、前記複数のキャンドモータポンプに隣接して配置されたインバータを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、キャンドモータポンプとしての特徴(すなわち、(1)液体の漏洩防止、(2)低騒音化の実現、(3)高回転速度での運転可能)を有する給水装置をシンプルな冷却構造で実施することができ、結果として、給水装置の製造に係るコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】給水装置の一実施形態を示す図である。
図2】ポンプ装置の断面図である。
図3】ポンプ装置の運転時におけるポンプ装置内の液体の流れを示す図である。
図4】複数のポンプ装置を連結する連結管を示す図である。
図5】給水装置の他の実施形態を示す図である。
図6】給水装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図7】連通カバーの他の実施形態を示す図である。
図8】連通カバーのさらに他の実施形態を示す図である。
図9】連結管の他の実施形態を示す図である。
図10】3台のポンプ装置を備える給水装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、給水装置の一実施形態を示す図である。図1に示す実施形態では、給水装置1は、オフィスビルや集合住宅などの建物への給水に使用される給水装置である。給水装置1は、水道本管などの供給源に接続されている。給水装置1は、建物の内部に配置された給水器具(例えば蛇口)に連結されており、供給源からの搬送液(例えば、水)を昇圧して建物の給水器具に供給する。
【0012】
図1に示すように、給水装置1は、複数のポンプ装置(図1に示す実施形態では、2台)2A,2Bと、各ポンプ装置2A,2Bに接続された吸込管(すなわち、吸込ヘッダ)3および吐出管(すなわち、吐出し集合管)4と、これら吸込管3および吐出管4に接続されたバイパス管5と、各ポンプ装置2の可変速運転の一例であるインバータ6と、各ポンプ装置2A,2Bの運転を制御する制御部7と、を備えている。図示しないが、給水装置1は、ポンプ装置2A,2Bの吐出圧力を一定期間保持する圧力タンクと、吐出管4に取り付けられた吐出側圧力センサと、吸込管3に取り付けられた吸込側圧力センサと、を備えている。これら給水装置1の構成要素は、キャビネット(図示しない)に収容されてもよい。以下、本明細書において、ポンプ装置2A,2Bを区別せずに、単にポンプ装置2と呼ぶことがある。
【0013】
本実施形態では、ポンプ装置2は、直立姿勢で配置された立軸ポンプ装置であるが(図1および図2の上下左右方向参照)、一実施形態では、ポンプ装置2は、横向き姿勢で配置された横軸ポンプ装置であってもよい。
【0014】
図1に示すように、吸込管3は、各ポンプ装置2の吸込口8に接続された吸込分岐部3A,3Bを備えている。吸込分岐部3Aには、開閉弁10が取り付けられており、吸込分岐部3Bには、開閉弁11が取り付けられている。吐出管4は、各ポンプ装置2の吐出口9に接続された吐出分岐部4A,4Bを備えている。吐出分岐部4Aには、開閉弁12および逆止弁14が取り付けられており、吐出分岐部4Bには、開閉弁13および逆止弁15が取り付けられている。
【0015】
図1に示す実施形態では、給水装置1は、直結給水装置である。一実施形態では、ポンプ装置2は、バイパス管5を備えていない給水装置に適用されてもよい。バイパス管5は、ポンプ装置2を運転せずに、給水装置1に流入する液体の圧力のみで給水を可能にするために設けられている。バイパス管5は、ポンプ装置2を迂回して配置されている。より具体的には、バイパス管5の上流側端部は吸込管3に接続されており、バイパス管5の下流側端部は吐出管4に接続されている。バイパス管5には、逆止弁16が取り付けられている。
【0016】
図1に示す実施形態では、ポンプ装置2は、キャンドモータポンプである。キャンドモータポンプは、液体がその内部を通過する構造を有している。2台のポンプ装置2は同一の構造を有しているため、以下、一方のポンプ装置2の構造について、図面を参照して説明する。
【0017】
図2は、ポンプ装置2の断面図である。図2に示すように、ポンプ装置2は、ポンプPと、このポンプPを駆動するためのモータ部Mと、から構成されている。ポンプPは、液体を移送するための羽根車20と、羽根車20が固定された回転軸(主軸)22と、羽根車20を収容するポンプケーシング24と、を備えている。
【0018】
図2に示す実施形態では、ポンプPは、複数(すなわち、4つ)の羽根車20を備えた多段ポンプである。一実施形態では、ポンプPは、単数の羽根車20を備えた単段ポンプであってもよい。
【0019】
ポンプケーシング24の高圧側の開口部にはケーシングカバー25が固定されている。回転軸22はケーシングカバー25を貫通して延びている。ケーシングカバー25には、ポンプケーシング24内に吸い込まれた液体の一部をモータ部Mとの間で通過させる流通孔(言い換えれば、流入孔)26が形成されている。羽根車20の回転によって昇圧された液体の一部は、これら複数の流入孔26を通ってモータ部Mに導かれる。図2では、2つの流入孔26が描かれているが、流入孔26の数は本実施形態には限定されない。
【0020】
ポンプ装置2は、回転軸22を回転させるモータ30と、回転軸22を回転可能に支持するすべり軸受31,32と、モータ30を収容するモータケーシング35と、を備えている。ケーシングカバー25は、モータケーシング35の構成要素の一部である。
【0021】
モータ30は、回転軸22に固定されたモータロータ36と、モータロータ36の周囲に配置されたモータステータ37と、を備えている。モータステータ37は、ステータコア37aと、ステータコア37aに巻かれた複数のコイル37bと、を備えている。複数のコイル37bはモータロータ36を囲むように配置されている。
【0022】
回転軸22は、モータ30の両側に配置されたすべり軸受31,32によって回転可能に支持されている。図1に示す実施形態では、すべり軸受31は、モータ30の下方に配置されており、すべり軸受32は、モータ30の上方に配置されている。すべり軸受31は、回転軸22のラジアル荷重およびアキシャル荷重を支持する軸受である。すべり軸受32は、ラジアル荷重を受けるが、アキシャル荷重を積極的には受けない。なお、ポンプ装置2の始動時には、すべり軸受32は、エンドカバー38(後述する)に押し付けられる場合がある。すべり軸受31とモータロータ36との間には、スラスト板33が配置されており、すべり軸受32とモータロータ36との間には、スラスト板34が配置されている。
【0023】
モータケーシング35は、すべり軸受31を支持するケーシングカバー25と、すべり軸受32を支持するエンドカバー38と、ケーシングカバー25とエンドカバー38との間に配置されたモータフレーム39と、を備えている。
【0024】
モータフレーム39は、ケーシングカバー25およびエンドカバー38の両方に接続されている。ケーシングカバー25は、モータフレーム39の一方の開口端を閉じており、エンドカバー38は、モータフレーム39の他方の開口端を閉じている。エンドカバー38は、モータ30の反ポンプ側(本実施形態では、上方)に配置されており、ケーシングカバー25は、モータ30のポンプ側(本実施形態では、下方)に配置されている。モータフレーム39の内周面には、モータステータ37が固定されている。
【0025】
図2に示すように、モータロータ36とモータステータ37との間には、円筒状のキャン(ステータキャン)40がモータロータ36を取り囲むように配置されている。モータステータ37は、モータフレーム39とキャン40との間に配置されており、キャン40の外周面に固定されている。モータロータ36、モータステータ37、およびキャン40は同心状に配置されている。モータステータ37は、モータフレーム39、ケーシングカバー25、エンドカバー38、およびキャン40により形成されたステータ室SC内に配置されている。
【0026】
モータロータ36には、円筒状のキャン(ロータキャン)41が配置されている。キャン41は、モータロータ36を覆っており、キャン40に対向して配置されている。
【0027】
モータステータ37のコイル37bに電流を流すと、モータステータ37に磁界が形成され、この磁界により、モータロータ36が回転する。図2に示す実施形態では、キャン40,41は、導電性を有しない非導電性部材(例えば、樹脂)から構成されている。導電性部材から構成されたキャンを備えるキャンドモータポンプでは、モータの駆動によって、キャン内部に渦電流が流れて、損失(キャン損)が発生する。この損失は、モータ効率に悪影響を与える。図2に示す実施形態では、キャン40,41は、非導電性部材から構成されているため、渦電流は、発生しない。したがって、ポンプ装置2は、キャンを導電性部材から構成した場合と比較して、上記損失を削減することができる。
【0028】
モータロータ36は、回転軸22を通じて羽根車20を回転させる。羽根車20が回転軸2とともに回転すると、液体は吸込口8からポンプケーシング24内に吸い込まれ、羽根車20の回転により昇圧された後、吐出口9から吐き出される。
【0029】
図3は、ポンプ装置2の運転時におけるポンプ装置2内の液体の流れを示す図である。図3の矢印に示すように、ポンプケーシング24内に吸い込まれた液体の一部は、ケーシングカバー25に形成された流入孔26を通ってモータ部Mに導かれる。液体の一部は、すべり軸受31と回転軸22との間の僅かな隙間を通過して、すべり軸受31を冷却および潤滑する。
【0030】
流入孔26を通過した液体は、キャン40に囲まれた空間C1を流れる(図3の矢印参照)。液体がキャン40に囲まれた空間C1を流れると、キャン40には、液体の圧力が作用する。キャン40が低い強度を有する非導電性部材(例えば、樹脂)から構成されている場合、キャン40は、液体の圧力によって、その半径方向外側に向かって変形するおそれがある。そこで、図3に示す実施形態では、モータケーシング35は、キャン40を補強する補強管42を備えている。
【0031】
図3に示すように、補強管42は、高い強度を有する金属部材から構成されており、キャン40の外周面に固定されている。より具体的には、補強管42は、円筒形状を有する2つの分割フレーム42A,42Bから構成されている。分割フレーム42A,42Bは、ステータコア37aの両側に配置されている。分割フレーム42Aはエンドカバー38に隣接して配置されており、分割フレーム42Bはケーシングカバー25に隣接して配置されている。キャン40の外側に配置された補強管42は、キャン40の変形を防止する。
【0032】
図3に示すように、エンドカバー38は、キャン40の内部を流れる液体をモータケーシング35の外部に通過させる流通孔(言い換えれば、流出孔)46を有している。図3では、2つの流出孔46が描かれているが、流出孔46の数は本実施形態には限定されない。キャン40の内部を流れる液体は、流出孔46を通じて、モータケーシング35の外部に流出する。このようにして、流入孔26および流出孔46を有するモータケーシング35は、液体の通過を許容する。液体の一部は、すべり軸受32と回転軸22との間の僅かな隙間を流れて、すべり軸受32を冷却および潤滑する。
【0033】
図4は、複数のポンプ装置2を連結する連結管50を示す図である。図4では、給水装置1は、2台のポンプ装置2A,2Bを備えている。図4に示すように、給水装置1は、複数のポンプ装置2A,2Bを連結する連結管50を備えている。複数のモータケーシング35は、連結管50で連通されている。言い換えれば、連結管50は、運転中のポンプ装置2のモータケーシング35に導入された液体を停止中のポンプ装置2のモータケーシング35に供給する構造を有している。
【0034】
図3および図4に示すように、ポンプ装置2は、連結管50をモータケーシング35の流出孔46に連通(連結)させる連通カバー51を備えている。図3および図4に示す実施形態では、連通カバー51は、モータケーシング35の全体を覆うカップ形状を有しており、連通カバー51の開口端51aは、ケーシングカバー25に接続されている。連通カバー51とケーシングカバー25との間には、Oリングなどのシール部材53が配置されている。シール部材53は、連通カバー51とモータケーシング35との間の隙間を流れる液体の漏洩を防止する。
【0035】
連通カバー51は、連結管50が接続可能な接続孔51bを有しており、連結管50は、この接続孔51bに接続されている。図3および図4に示す実施形態では、接続孔51bは、エンドカバー38とは反対側の位置に配置されている。言い換えれば、接続孔51bは、連通カバー51の下部に形成されている。
【0036】
樹脂から構成されたキャン41の熱伝導率は低いため、液体がキャン41に接触しても、ロータ36は、キャン41を介して効率的には冷却されない。しかしながら、ロータ36は、熱伝導率の高い材料(例えば、金属)から構成された回転軸22に固定されているため、ロータ36から発生した熱は、回転軸22を通じて放出される。その一方で、キャン40が樹脂から構成されている場合、液体がキャン40に接触しても、モータステータ37は、キャン40を介して効率的には冷却されない。
【0037】
そこで、本実施形態では、モータフレーム39は、熱伝導率の高い金属部材(例えば、非導電性部材の一例である樹脂よりも熱伝導率の高い金属部材)から構成されている。エンドカバー38の流出孔46から流出した液体は、モータケーシング35と連通カバー51との間の空間C2を流れて、熱伝導率の高いモータフレーム39に接触する。モータステータ37は、モータフレーム39の内周面に固定されているため、モータステータ37は、モータフレーム39を介して冷却される。
【0038】
モータケーシング35と連通カバー51との間の空間C2を流れた液体は、連通カバー51の接続孔51bを通じて、連結管50に流れ込む。図4に示す実施形態では、2台のポンプ装置2は、単独交互運転を行うように構成されている。したがって、一方のポンプ装置2が運転中である場合、他方のポンプ装置2は停止中である。連結管50は、2台のポンプ装置2を連結しているため、運転中のポンプ装置2において、昇圧された液体は、連結管50を通過して、停止中のポンプ装置2に流れ込む。
【0039】
図4に示すように、2台のポンプ装置2は、同一の構造を有している。停止中のポンプ装置2に流れ込んだ液体は、連通カバー51とモータケーシング35との間の空間C2を上昇し、エンドカバー38の流通孔(すなわち、流出孔)46を通じて、キャン40に囲まれた空間C1を下降する。さらに、液体は、ケーシングカバー25に形成された流通孔(すなわち、流入孔)26を通じて、ポンプPまで流れ、複数の羽根車20および吸込口8を通過して、吸込管3に戻される。
【0040】
このように、一方のポンプ装置2が運転されると、吸込管3を流れる液体は、運転中のポンプ装置2に流入し、モータ部Mを通過して、モータ30を冷却する。モータ30を冷却した液体は、停止中のポンプ装置2に流れ込み、モータ部MおよびポンプPをこの順に流れて、吸込管3に戻される。
【0041】
このように、給水装置1は、複数のポンプ装置2を連結する連結管50を備えるだけの簡単な構造で、ポンプ装置2を冷却することができる。一般的なキャンドモータポンプでは、回転軸の中心に貫通孔を形成し、この貫通孔を通じて、モータを冷却する(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような貫通孔を回転軸に形成することは、容易ではない。特に、多段ポンプを採用したキャンドモータポンプでは、回転軸の長さは、長くなってしまい、結果として、貫通孔を形成することは、より一層容易ではない。
【0042】
キャンドモータポンプが回転軸に形成された貫通孔を通じて、液体を循環させる構成を有している場合、液体は、回転軸の内部と、ステータとロータとの間の隙間と、の間を流れる。したがって、ステータキャンを樹脂のような熱伝導率の低い材料から構成した場合、ステータを効果的に冷却することができない。
【0043】
本実施形態によれば、給水装置1は、2台のポンプ装置2を連結する連結管50を備えているため、ポンプ装置2は、回転軸22に液体の通過を許容する貫通孔を有する必要はない。さらに、キャン40を樹脂のような熱伝導率の低い材料から構成したとしても、ステータ37は、モータフレーム39を通じて効果的に冷却される。したがって、キャンドモータポンプとしての特徴(すなわち、(1)液体の漏洩防止、(2)低騒音化の実現、(3)高回転速度での運転可能)を有する給水装置1をシンプルな冷却構造で実施することができる。このような構造を有するポンプ装置2では、回転軸22に貫通孔を形成する必要はないため、より段数の多い多段ポンプを採用することができる。さらに、給水装置1(より具体的には、ポンプ装置2)の製造に係るコストを低減することができる。
【0044】
運転中のポンプ装置2から排出される液体は、モータ30の熱によって加熱されており、この加熱された液体(加熱液体)は、停止中のポンプ装置2に流れ込む。停止中のポンプ装置2に流れ込む加熱液体は、停止中のポンプ装置2の温度低下を防止することができる。ポンプ装置2が運転されると、ポンプ装置2の構成要素の温度は上昇し、ポンプ装置2の運転が停止されると、ポンプ装置2の構成要素の温度は低下する。この温度上昇および温度低下の繰り返しにより、ポンプ装置2の構成要素は、温度疲労の影響を受けて、破損するおそれがある。本実施形態によれば、給水装置1は、温度疲労に起因するポンプ装置2の構成要素の破損を防止することができ、長寿命化を実現することができる。
【0045】
図5は、給水装置1の他の実施形態を示す図である。図5に示すように、インバータ6の冷却を目的として、インバータ6をポンプ装置2A,2B(特に、連通カバー51,51)に隣接するように配置してもよい。図5に示す実施形態では、インバータ6は、ポンプ装置2A,2Bの上に配置されている。インバータ6は、インバータ要素6aと、インバータ要素6aを収容するインバータケース6bと、を備えている。図5に示す実施形態では、インバータケース6bは、連通カバー51,51上に載置されている。このような配置により、給水装置1は、インバータ6が受ける温度疲労の影響をより確実に排除することができる。
【0046】
インバータ要素6aは、特に、温度疲労の影響を受けやすい部材である。インバータ要素6aは、インバータ6の駆動中には、高温になる一方で、インバータ6の駆動停止中には、低温になる。特に、寒冷地では、インバータ6の駆動中と駆動停止中との間におけるインバータ素子6aの温度差は大きくなる。このように、インバータ素子6aの温度上昇および温度低下の繰り返しは、インバータ要素6aの損傷の原因となる。
【0047】
図5に示す実施形態によれば、運転中のポンプ装置2と停止中のポンプ装置2との間を流れる加熱液体は、複数のポンプ装置2上に配置されたインバータ6を加熱し、インバータ素子6aの温度差を小さくすることができる。結果として、給水装置1は、インバータ6の長寿命化を実現することができる。
【0048】
図6は、給水装置1のさらに他の実施形態を示す図である。図5に示す実施形態では、インバータ6は、ポンプ装置2A,2Bの上方(接触または離間)に配置されているが、図6に示すように、インバータ6は、ポンプ装置2A,2Bの側方(接触または離間)に配置されてもよい。この場合であっても、インバータ6は、ポンプ装置2A,2B(特に、連通カバー51,51)に隣接するように配置されている。
【0049】
図5および図6に示す実施形態では、ポンプ装置2A,2Bが立軸ポンプ装置であることを前提として(図5および図6の上下左右方向参照)、インバータ6は、ポンプ装置2A,2Bの上方または側方に配置されている。一実施形態では、ポンプ装置2A,2Bが横軸ポンプ装置である場合であっても、インバータ6は、ポンプ装置2A,2Bの上方または側方に配置されてもよい。
【0050】
一実施形態では、ポンプ装置2は、インバータ6が内蔵された一体型構造を有する電動機組立体を備えてもよい。電動機組立体は、モータ部Mとインバータ6との組み合わせからなる機械装置である。電動機組立体およびポンプPを備えたポンプ装置2では、ポンプP、モータ部M、およびインバータ6は、回転軸22の軸線CL方向に直列的に配置されている。このような構成であっても、給水装置1は、モータ部Mを流れる液体によって、インバータ6を冷却し、かつ温度疲労に起因するインバータ6の故障を防止することができる。
【0051】
上述したように、2台のポンプ装置2は、単独交互運転を行うように構成されている。したがって、図4に示すように、ポンプ装置2Aが運転中であるとき、ポンプ装置2Bは運転停止中である。この場合、吸込管3を流れる液体は、ポンプ装置2Aからポンプ装置2Bに向かって流れる(第1流れ方向)。逆に、ポンプ装置2Aが運転停止中であるとき、ポンプ装置2Bは運転中である。この場合、吸込管3を流れる液体は、ポンプ装置2Bからポンプ装置2Aに向かって流れる(第2流れ方向)。第1流れ方向および第2流れ方向は逆方向である。
【0052】
例えば、吸込管3を流れる液体に異物が混入している場合、ポンプ装置2内の液体の流路に異物が挟まるおそれがある。本実施形態によれば、ポンプ装置2の運転が切り替わると、液体の流れ方向は、第1流れ方向と第2流れ方向との間で切り替わり、液体は逆流する。したがって、流路に挟まった異物は、逆流する液体によって除去される。このように、給水装置1は、ポンプ装置2A,2Bの間で運転を切り替えることにより、ポンプ装置2A,2Bに混入した異物を除去することができる。
【0053】
図7は、連通カバー51の他の実施形態を示す図である。図7では、非導電性部材であるキャン40の代わりに、熱伝導率の高い部材(例えば、金属など)から構成されたキャン60が設けられている。この場合、モータ30(より具体的には、モータステータ37)は、キャン60の内部を流れる液体によって冷却される。したがって、エンドカバー38の流出孔46から流出した液体をモータフレーム39に接触させる必要はない。結果として、図7に示すように、接続孔51bを連通カバー51の上部に配置してもよい。図7に示す実施形態では、キャン60は熱伝導率の高い金属から構成されている。したがって、ポンプ装置2は、補強管42を備えていない。
【0054】
図8は、連通カバー51のさらに他の実施形態を示す図である。図8に示す実施形態では、連通カバー51は、エンドカバー38の流出孔46を覆うカップ形状を有している。連通カバー51の開口端51aは、エンドカバー38に接続されている。図7に示す実施形態と同様に、キャン40が熱伝導率の高い部材から構成されている場合、モータ30は、キャン40の内部を流れる液体によって冷却される。したがって、図8に示す実施形態では、連通カバー51は、エンドカバー38の流出孔46から流出した液体を連結管50に導入する構造を有している。
【0055】
一実施形態では、連結管50は、流出孔46に直接接続されてもよい。複数の流出孔46が設けられている場合、連結管50は、流出孔46の数に対応する数の分岐部を有している。
【0056】
図9は、連結管50の他の実施形態を示す図である。図9に示す実施形態では、連結管50は、ポンプ装置2A,2Bのみならず、バイパス管5にも接続されている。上述したように、ポンプ装置2A,2Bは、単独交互運転を行うように構成されている。ポンプ装置2A,2Bの運転を滑らかに切り替えるために、一方のポンプ装置2の運転が終了する直前に他方のポンプ装置2の運転が開始される場合がある。
【0057】
この場合、ポンプ装置2A,2Bの両方は、一定時間、同時に運転されるが、ポンプ装置2A,2Bの運転によって昇圧された液体は、連結管50を通じてバイパス管5に流れ込む。したがって、一方のポンプ装置2の運転が終了する直前に他方のポンプ装置2の運転が開始されても、連結管50を流れる液体の流れは妨げられない。
【0058】
図10は、3台のポンプ装置2を備える給水装置を示す図である。図10では、図面を見やすくするために、ポンプ装置2A,2B,2Cのそれぞれのモータケーシング35および連結管50のみが描かれている。
【0059】
上述した実施形態では、2台のポンプ装置2A,2Bを備える給水装置1について説明したが、図10に示すように、給水装置1は、3台のポンプ装置2A,2B,2Cを備えてもよい。一実施形態では、給水装置1は、4台以上のポンプ装置2を備えてもよい。
【0060】
図10に示すように、連結管50は、3台のポンプ装置2A,2B,2Cに接続されており、これらポンプ装置2A,2B,2Cを連結している。図10に示す実施形態においても、交互運転時において、複数のポンプ装置2のうちの1台のポンプ装置2は、停止している。したがって、連結管50は、運転中のポンプ装置2のモータケーシング35に導入された液体を停止中のポンプ装置2のモータケーシング35に供給する。結果として、給水装置1は、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
3台のポンプ装置2A,2B,2Cのすべてが運転する場合がある。この場合、連結管50をバイパス管5に接続することにより、ポンプ装置2A,2B,2Cの運転によって昇圧された液体は、連結管50を通じてバイパス管5に流れ込む。
【0062】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 給水装置
2(2A,2B,2C) ポンプ装置
3 吸込管
3A,3B 吸込分岐部
4 吐出管
4A,4B 吐出分岐部
5 バイパス管
6 インバータ
6a インバータ要素
6b インバータケース
8 吸込口
9 吐出口
10 開閉弁
11 開閉弁
12 開閉弁
13 開閉弁
14 逆止弁
15 逆止弁
16 逆止弁
20 羽根車
22 回転軸
24 ポンプケーシング
25 ケーシングカバー
26 流通孔(流入孔)
30 モータ
31,32 すべり軸受
35 モータケーシング
36 モータロータ
37 モータステータ
37a ステータコア
37b コイル
38 エンドカバー
39 モータフレーム
40 キャン(ステータキャン)
41 キャン(ロータキャン)
42 補強管
42A,42B 分割フレーム
46 流通孔(流出孔)
50 連結管
51 連通カバー
51a 開口端
51b 接続孔
53 シール部材
60 キャン(ステータキャン)
P ポンプ
M モータ部
SC ステータ室
C1 空間
C2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10