(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】注出用スパウト及び注出用スパウト付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B65D47/06 400
(21)【出願番号】P 2020127489
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小野 松太郎
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080219(JP,A)
【文献】特開2012-210955(JP,A)
【文献】特開2011-088644(JP,A)
【文献】特開2014-076836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出筒部を備えるスパウト本体と、前記注出筒部の軸線方向に沿って移動が可能な可動部材とを備え
る注出用スパウトであって、
前記注出筒部は、前記軸線方向に沿う先端側で前記軸線方向に交差する頂面部と、前記軸線方向に沿って内容物流路を開口したスリットとを有し、前記スリットが前記頂面部を2以上に分割した部分のそれぞれに対応して前記内容物流路が形成され、
前記可動部材は、前記スリットにおいて前記内容物流路を閉止する閉止部と、前記閉止部の基端側において前記注出筒部を環状に囲む筒状部とを有し、
前記注出用スパウトは、前記筒状部の基端側において、前記可動部材の先端側から基端側への移動を阻止する阻止部材を有し、
前記注出筒部の先端側には、前記可動部材の制動凹部に結合可能な制動凸部が形成され、前記制動凸部は、前記注出筒部の前記頂面部から径方向内側に突出し、前記制動凹部は、前記閉止部の先端側で、前記頂面部に接する位置に形成されており、
前記阻止部材を除去した後の前記可動部材を、前記注出筒部に対して先端側から基端側に移動させることにより、前記閉止部が前記スリットの先端側から退避して前記内容物流路が開口することを特徴とする注出用スパウト。
【請求項2】
前記可動部材は、前記注出筒部に対して先端側から基端側に移動させたときに、被注出容器の口部の周囲に接触させるように、前記筒状部から外側に突出した基部を有することを特徴とする請求項1に記載の注出用スパウト。
【請求項3】
前記可動部材は、前記閉止部が前記スリットを閉止する閉止位置と、前記注出筒部に対して先端側から基端側に移動させて前記内容物流路が開口する開放位置との間で、相互に切り替え可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の注出用スパウト。
【請求項4】
前記スパウト本体は、前記可動部材を前記軸線方向のスライド移動に案内する案内部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の注出用スパウト。
【請求項5】
前記スパウト本体は、内容物を収容する本体容器に対する取付部を有し、前記注出筒部は前記取付部から先端側に突出していることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の注出用スパウト。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の注出用スパウトと、内容物を収容する胴部とを備えることを特徴とする注出用スパウト付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詰め替え容器等に好適に用いることができる注出用スパウト及び注出用スパウト付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
詰め替え容器のスパウトとして、特許文献1には、周壁に注出口を有する有天筒状の注出筒を備えた固定部材と、注出筒に取り付けられて注出口を閉鎖する可動部材とからなり、可動部材を被詰め替え容器の口首部に押し付けることにより、可動部材が注出筒に沿って移動し注出口が開放される構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスパウトでは、注出口が注出筒の周壁に設けられているため、可動部材が移動したとき、注出口は被詰め替え容器の口首部に対して、径方向の中心部から外周部に向けて開放される。このため、注出口が口首部の内部に奥深くまで進入していないと、内容物が口首部の外側に漏出するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液体等の内容物が注出しやすい注出用スパウト及び注出用スパウト付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、注出筒部を備えるスパウト本体と、前記注出筒部の軸線方向に沿って移動が可能な可動部材とを備え、前記注出筒部は、前記軸線方向に沿う先端側で前記軸線方向に交差する頂面部と、前記軸線方向に沿って内容物流路を開口したスリットとを有し、前記スリットが前記頂面部を2以上に分割した部分のそれぞれに対応して前記内容物流路が形成され、前記可動部材は、前記スリットにおいて前記内容物流路を閉止する閉止部と、前記閉止部の基端側において前記注出筒部を環状に囲む筒状部とを有し、前記可動部材を、前記注出筒部に対して先端側から基端側に移動させることにより、前記閉止部が前記スリットの先端側から退避して前記内容物流路が開口することを特徴とする注出用スパウトを提供する。
【0007】
前記可動部材は、前記注出筒部に対して先端側から基端側に移動させたときに、被注出容器の口部の周囲に接触させるように、前記筒状部から外側に突出した基部を有してもよい。
前記可動部材は、前記閉止部が前記スリットを閉止する閉止位置と、前記注出筒部に対して先端側から基端側に移動させて前記内容物流路が開口する開放位置との間で、相互に切り替え可能であってもよい。
前記スパウト本体は、前記可動部材を前記軸線方向のスライド移動に案内する案内部を有してもよい。
【0008】
前記注出用スパウトは、前記筒状部の基端側において、前記可動部材の先端側から基端側への移動を阻止する阻止部材を有してもよい。
前記スパウト本体は、内容物を収容する本体容器に対する取付部を有し、前記注出筒部は前記取付部から先端側に突出していてもよい。
また、本発明は、前記注出用スパウトと、内容物を収容する胴部とを備えることを特徴とする注出用スパウト付き容器を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸線方向に沿って内容物流路を開口したスリットが、さらに注出筒部の頂面部を2以上に分割しているので、可動部材を先端側の閉止位置から基端側の開放位置に移動させたとき、スリットが頂面部を分割する位置においても、内容物流路が開口する。スリットにより分割された内容物流路が、頂面部において合流するので、液体等の内容物が注出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の注出用スパウトを示す斜視図である。
【
図2】実施形態の注出用スパウトを正面側から示す斜視図である。
【
図3】実施形態のスパウト本体を示す斜視図である。
【
図5】バンド部を除去した注出用スパウトの閉止位置を示す斜視図である。
【
図6】バンド部を除去した注出用スパウトの開放位置を示す斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0012】
図1から
図7に、実施形態の注出用スパウトを例示する。
図1及び
図2は、実施形態の注出用スパウト10を示す。
図3は、スパウト本体20を示す。
図4は、阻止部材のバンド部32を有する可動部材30を示す。
図5から
図7は、バンド部32を除去した後の注出用スパウト11を示す。
図5は閉止位置における斜視図、
図6は開放位置における斜視図、
図7は開放位置における断面図である。
【0013】
図1から
図4に示すように、実施形態の注出用スパウト10は、注出筒部23を備えるスパウト本体20と、注出筒部23の軸線方向に沿って、先端側から基端側に移動が可能な可動部材30と、を備えている。
【0014】
なお、本明細書において、先端側とは、注出筒部23の中心軸線に沿った両方向のうち、取付部21に取り付けられる本体容器から注出用スパウト10に向かう側である。また、基端側とは、前記中心軸線に沿って注出用スパウト10から前記本体容器に向かう側である。また、以下の説明において、注出筒部23の中心軸線に対する径方向及び周方向を、それぞれ単に径方向及び周方向という場合がある。すなわち、径方向とは、前記中心軸線に直交する方向である。また、周方向とは、前記中心軸線の周りを取り囲む方向である。また、前記中心軸線に沿った方向を、軸線方向という場合がある。
【0015】
本体容器(図示せず)は、注出用スパウト10に取り付けられて、内容物を収容する胴部を有する。本体容器は、自立性を有してもよく、また、平袋のように自立性を有しない容器であってもよい。注出用スパウト10は、本体容器に装着されて、注出用スパウト付き容器を構成することができる。
【0016】
被注出容器(図示せず)は、内容物を注出する相手側となる容器である。本体容器は、被注出容器に内容物を移し替えるための詰め替え容器としてもよい。被注出容器としては、被詰め替え容器、計量容器、その他の各種の容器が挙げられる。実施形態の注出用スパウト10は、例えば、本体容器がパウチ容器等の軟包装容器であり、被注出容器がボトル容器である詰め替えシステムに好適に適用することができる。
【0017】
スパウト本体20は、概略として、本体容器に対する取付部21と、取付部21から先端側に突出した注出筒部23とを有する。
また、可動部材30は、概略として、注出筒部23に装着される筒状部34と、筒状部34から径方向の外側に突出した基部31とを有する。
【0018】
実施形態の注出用スパウト10は、筒状部34の基端側において、可動部材30の先端側から基端側への移動を阻止する阻止部材を有する。阻止部材の具体例として、可動部材30に一体化されたバンド部32が挙げられる。バンド部32は、第1端部32aから第2端部32cに向けて周方向に延びている。基部31とバンド部32との間は、連結部32bにより連結されている。
【0019】
図示例の連結部32bは、周方向に沿ってバンド部32の複数箇所で先端側に向けて形成された突起である。連結部32bは、基部31に接する側の幅が狭くなるように、台形状、三角形状、又はテーパ状に形成されている。第1端部32aと第2端部32cとの間には、手指等を差し入れることが可能な間隙部32dが確保されている。例えば、第1端部32aの径方向の内側に手指を差し入れて、径方向の外側に向けて力をかけると、連結部32bが破断し、バンド部32を除去することができる。
【0020】
注出筒部23は、取付部21から先端側に突出した形状である。また、取付部21と注出筒部23との間には、注出筒部23よりも径方向の外側に突出するフランジ部22が形成されている。これにより、注出筒部23の径方向の外側には、取付部21上で可動部材30を機能させる空間が整然と確保される。図示例の注出筒部23は、スリット26を除く全体形状が略円筒形状であるが、注出筒部23の形状は特に限定されず、三角筒状、四角筒状等の角筒状、楕円筒状等にしてもよい。
【0021】
取付部21とフランジ部22との間の段差は、必ずしも必要な構成ではないが、例えば、取付部21の外周にパウチ容器等の本体容器を接合するとき、本体容器の位置がフランジ部22よりも先端側にずれにくくなる。
【0022】
図3に示すように、注出筒部23は、軸線方向に沿う先端側で軸線方向に交差する頂面部23bと、軸線方向に沿って内容物流路24を開口したスリット26を有する。図示例の注出筒部23は、周方向の2箇所にスリット26を有し、また、周方向でスリット26の位置とは異なる2箇所に内容物流路24を有する。また、周方向の2箇所のスリット26は、頂面部23bまで連続し、スリット26が頂面部23bを2つに分割している。注出筒部23の内部には、頂面部23bが2つに分割された部分のそれぞれに対応して前記内容物流路24が形成されている。
【0023】
すなわち、スリット26が、注出筒部23の側部に加えて、中心軸線付近においても開口している。このため、中心軸線を介して対向して2箇所の内容物流路24から注出される内容物は、中心軸線付近で合流することができる。また、頂面部23bより基端側においては、頂面部23bの側からスリット26の基端部26aまでの区間で、スリット26が注出筒部23の径方向の内側から外側に向けて開口している。
【0024】
なお、図示例のスリット26は、注出筒部23を2つ割り状に分割した形状となっているが、スリット26が注出筒部23を3つ以上に分割した構成でもよい。この場合においても、スリット26が頂面部23bを2以上に分割した部分のそれぞれに対応して形成された内容物流路24から注出される内容物は、スリット26が頂面部23bを分割する中心軸線付近で合流することができる。また、スリット26は、少なくとも、注出筒部23の径方向の内側から外側に向けて開口した箇所を有する。これにより、スリット26の先端側から内容物を注出する際、本体容器から注出される内容物の流れ、又は外部から本体容器に流入する空気の流れをより円滑にすることができる。
【0025】
可動部材30は、スリット26において内容物流路24を閉止する閉止部33を有する。また、閉止部33の基端側には、注出筒部23を環状に囲む筒状部34が設けられている。可動部材30を先端側からスパウト本体20に取り付ける際、スリット26の先端側から閉止部33を挿入することができる。
【0026】
なお、閉止部33と筒状部34との範囲は、必ずしも厳密に区別する必要はない。筒状部34の先端側で、可動部材30がスリット26の位置と重なり合う部分は、スリット26の側部を閉止する閉止部33として機能することができる。すなわち、可動部材30に含まれる同一の部分が、閉止部33の機能と筒状部34の機能とを兼ねてもよい。
【0027】
注出筒部23の外周面には、周方向に沿った環状リブ23cが形成されている。環状リブ23cが、周方向の全周又は複数箇所において筒状部34の内周面と接触することにより、注出筒部23の中心軸線に対して、可動部材30の中心が径方向に変位することが抑制される。図示例の環状リブ23cは、軸線方向に沿って2箇所に配置されている。
環状リブ23cの個数は特に制限されず、1箇所又は3箇所以上であってもよい。また、環状リブ23cが注出筒部23の周方向の一部のみに形成される場合は、例えば、周方向で環状リブ23cを有しない領域の連続する角度範囲が180°未満であることが好ましい。例えば、周方向の一部に環状リブ23cを有する領域が、略120°間隔で3箇所、略90°間隔で4箇所などのように配置されてもよい。
【0028】
また、環状リブ23cの軸線方向に沿った幅が狭いことにより、注出筒部23の外周面と筒状部34の内周面との間の接触面積が制限される。すなわち、注出筒部23の外周面のうち、環状リブ23c以外の箇所で、径方向に環状リブ23cよりも窪んだ領域は、筒状部34の内周面と接触しにくくなり、注出筒部23の外周面と筒状部34の内周面との間に隙間34a(
図7参照)が確保される。これにより、可動部材30を先端側から基端側へ移動させるときの摩擦抵抗を抑制することができる。
【0029】
注出筒部23の外周面には、軸線方向に沿った案内凸部25が形成されている。また、筒状部34の内周面には、案内凸部25と対応するように、軸線方向に沿った案内凹部35が形成されている。これにより、可動部材30が軸線方向のスライド移動に案内される。すなわち、案内凸部25は、スパウト本体20が可動部材30を軸線方向のスライド移動に案内する案内部として機能する。すなわち、可動部材30の変位は、軸線方向の変位を主とし、径方向又は周方向の変位が起こりにくくなっている。
【0030】
図示例の場合は、案内凸部25のうち先端側の部分が、スリット26の周縁に沿って形成されている。また、環状リブ23cの一部が、スリット26の基端部26aに沿って形成されている。これらの案内凸部25及び環状リブ23cが、スリット26の周縁に沿って筒状部34の内周面に接触することにより、注出筒部23の外周面と筒状部34の内周面との間の隙間34aを小さくして、内容物流路24から内容物が隙間34aに漏れることを抑制することができる。
【0031】
図5に示すように、バンド部32を除去したとき、基部31とフランジ部22との間に空間が開くため、可動部材36を、注出筒部23に対して先端側から基端側に移動させることができる。なお、
図5から
図7では、バンド部32を除去した後の可動部材36及び注出用スパウト11は、バンド部32を除去する前の可動部材30及び注出用スパウト10と符号を区別した。
【0032】
バンド部32は、基部31等において可動部材30に一体化された阻止部材の一例である。開封前に阻止部材を可動部材30から除去すると、阻止部材を除去した後の可動部材36は、注出筒部23に対して先端側から基端側への移動が許容される。バンド部32等の阻止部材が可動部材30に一体化されない場合は、阻止部材を除去する前の可動部材が、阻止部材を除去した後の可動部材と同一の構成であってもよい。
【0033】
阻止部材の構成はバンド状に限定されるものではなく、板状、棒状、筒状、爪状などであってもよい。阻止部材が基部31等よりも基端側に配置されることで、可動部材30,36の移動を阻止する構成に限らず、可動部材30,36の先端側その他の位置で、係合、嵌合等により、移動を阻止してもよい。可動部材に一体化された阻止部材の除去を容易にするため、可動部材から阻止部材を破断する構成を有することが好ましい。破断手段の一例は上述した連結部32bであるが、これに限定されず、薄肉部、ミシン目状に断続した貫通部等であってもよい。また、阻止部材が可動部材30,36の基部31等又はスパウト本体20等に対して回転軸、ヒンジ等を介して連結されていて、阻止部材が可動部材の移動を阻止しない位置に変位することで、可動部材の移動を可能にしてもよい。
【0034】
図3及び
図4に示すように、注出筒部23の先端側には、可動部材30の制動凹部33aに結合可能な制動凸部23aが形成されている。制動凸部23aは、注出筒部23の頂面部23bから径方向内側に突出している。また、制動凹部33aは、閉止部33の先端側で、頂面部23bに接する位置に形成されている。制動凸部23a及び制動凹部33aの結合力に抗して、バンド部32を除去した後の可動部材36を先端側から基端側に移動させる外力が作用すると、注出筒部23及び閉止部33の弾性変形等により、制動凸部23a及び制動凹部33aの結合が解除されて、可動部材36が移動可能になる。
【0035】
閉止部33がスリット26を閉止する閉止位置において、上述した制動凸部23a及び制動凹部33a等の作用により、バンド部32を除去した後も、可動部材36の移動は停止されている。閉止位置におけるスパウト本体20と可動部材36との位置関係は、上述したように制動凸部23a及び制動凹部33aの結合を解除する程度の外力が作用するまでは安定している。このため、内容物が本体容器から注出されるように注出筒部23を傾け、さらには注出筒部23を下向きにしても、可動部材36の閉止位置を維持することができる。
【0036】
被注出容器に対して、可動部材36の基部31を押し当てる等すると、閉止位置を超えた移動が可能になり、制動凸部23a及び制動凹部33aの結合が解除される。このため、ユーザーが本体容器から内容物を取り出そうとするとき、スパウト本体20又は可動部材36を手に取って操作しなくても、可動部材36の移動を開始することが可能である。このため、バンド部32を除去した後の注出用スパウト11を被注出容器に容易に接近させることができる。本体容器が柔軟な場合、ユーザーは、スパウト本体20の取付部21等を保持しながら、被注出容器に対する押し込み動作をしてもよい。
【0037】
なお、図示例の制動凸部23a及び制動凹部33aは、注出筒部23の内側で、スリット26に面する位置に設けられているが、注出筒部23の外側など、他の位置に設けられてもよい。図示例の場合、可動部材36が移動する際、閉止部33がスリット26内で変位しても、制動凹部33aが凹んでいるため、閉止部33がスリット26に干渉することなく、円滑な移動が可能である。
【0038】
図6及び
図7に示すように、可動部材36がスパウト本体20に対して先端側から基端側に移動すると、閉止部33がスリット26の先端側から退避して、内容物流路24が外部に開口した開放位置になる。開放位置では、注出筒部23の先端側と、閉止部33の先端側との間で、スリット26を通じて内容物流路24が開口される。注出筒部23を傾け、又は下向きにした状態で、注出用スパウト11が開放位置になると、被注出容器に向けて内容物を注出することができる。
【0039】
図示例の注出用スパウト11の場合は、注出筒部23の中心軸線を含む平面に沿ってスリット26が注出筒部23を2つ割り状に分割し、注出筒部23の先端側で頂面部23bが内容物流路24の断面積を規制している。これにより、スリット26の両側から内容物流路24を経由した内容物の流れは、中心軸線に沿って注出筒部23の中心付近に集中する傾向を示す。これにより、内容物の流れが安定になり、被注出容器に対して、より確実に内容物を注出することができる。
【0040】
図7に示すように、可動部材36の閉止部33は、開放位置においても、内容物流路24の途中に位置している。内容物流路24を横断する閉止部33の断面形状は特に限定されないが、略均等な厚さを有する平板状であってもよい。すなわち、閉止部33の基端側の面33bが平面であってもよい。なお、閉止部33の基端側の面33bが、軸線方向に沿って傾斜した斜面でもよい。基端側の面33bが、閉止部33の両側で対向する内容物流路24に向けて内容物の流れを分けるように、左右対称的な斜面でもよい。
【0041】
可動部材36を注出筒部23に対して先端側から基端側に移動させると、基部31を被注出容器の口部の周囲に接触させることができる。これにより、可動部材36が被注出容器に接触している間は、開放位置を容易に維持することができる。可動部材36が被注出容器から離れた場合は、制動凸部23a及び制動凹部33aを再び結合する等により、開放位置から閉止位置に戻すことも可能である。すなわち、可動部材36を閉止位置と開放位置との間で相互に切り替えることができる。
【0042】
実施形態の注出用スパウト10,11によれば、軸線方向に沿って内容物流路24を開口したスリット26が、注出筒部23の頂面部23bを2以上に分割しているので、可動部材36を先端側の閉止位置から基端側の開放位置に移動させたとき、スリット26が頂面部23bを分割する位置においても、内容物流路24が開口する。スリット26により分割された内容物流路24が、頂面部23bにおいて合流するので、液体等の内容物が注出しやすくなる。
【0043】
内容物は、主として内容物流路24の中央部から注出される。この際、被注出容器に収容されていた空気は、被注出容器の口部と、内容物流路24の中央部に注出される内容物の流れとの間を経て、被注出容器の外部に排出される。すなわち、注出筒部23の頂面部23bより先端側において、被注出容器の口部の範囲内で、内容物の流れと空気の流れが区画されやすいことから、内容物の泡立ち等による溢れも起こりにくくなる。被注出容器の外部に排出された空気は、そのまま外気に放出されてもよく、あるいは、空気の少なくとも一部が内容物流路24の側部等から本体容器の内部に流入してもよい。
【0044】
注出筒部23の頂面部23bより基端側において、被注出容器の外部に排出される空気は、注出筒部23及び筒状部34の外周面と、被注出容器の口部の内周面との間を通過する。このため、特に図示しないが、筒状部34の外周面には、被注出容器の口部の内周面との接触を規制するリブを設けてもよい。これにより、被注出容器の空気をより確実に排出することができる。
【0045】
本体容器において、内容物の収容部を含む胴部の構成は、特に限定されないが、例えば、ボトル容器、パウチ容器、チューブ容器等が挙げられる。本体容器がボトル容器などの成形容器である場合は、成形容器の一部として、スパウト本体が本体容器に一体化されていてもよい。本体容器の構造等に応じて、スパウト本体は、本体容器の口部、胴部、肩部のいずれに取り付けることも可能である。本体容器に対する取付部の取付け方法は特に限定されず、嵌合、係合、接着等が挙げられる。接着は、スパウト本体又は本体容器の材料を溶融させる等による接着でもよく、接着剤を付与した接着でもよい。
【0046】
パウチ容器にスパウト本体20の取付部21を接合する場合は、取付部21の外面又は内面にフィルム、シート等のパウチ部材を接合してもよい。パウチ部材は、少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなるシーラント層、接着層を有することで、パウチ部材同士の接合に食わせて、パウチ部材とスパウト本体20との接合を行うことができる。パウチ容器としては、スタンディングパウチ、側面又は底面にフィルムの折り込みを有するガゼット容器などが挙げられる。
【0047】
ボトル容器などの成形容器を成形する材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種合成樹脂が挙げられる。パウチ容器、チューブ容器、ボトル容器などの容器が、金属、紙、無機化合物、有機化合物等の樹脂以外の材質からなる層を含んでもよい。
【0048】
内容物としては特に限定されないが、液体、粉体、粒体等の流体を採用できる。内容物の種類としては、特に限定されず、飲料品、食料品、調味料、化粧品、医薬品、洗剤、接着剤、家庭用品、工業製品などが挙げられる。液体の内容物としては、飲料、調味液、洗剤、薬剤などが挙げられる。粉体又は粒体の内容物には、塩、砂糖、胡椒、顆粒状調味料、粉末洗剤などを挙げることができる。
【0049】
スパウト本体20、及び可動部材30,36は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種合成樹脂から成形することができる。実施形態の注出用スパウト10,11は、スパウト本体20及び可動部材30,36をそれぞれ一体成形品として2部材から構成することができる。
【0050】
スパウト本体20を2以上の部品から組み立てて構成してもよく、可動部材30,36を2以上の部品から組み立てて構成してもよい。また、スパウト本体20及び可動部材30,36を、紐状の連結部などを介して連結することにより、連結部の端部に各部材が構成された一体成形品とすることも可能である。
【0051】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0052】
可動部材の移動方向は、軸線方向に沿った直線状のスライド移動に限定されず、ねじ等を用いた螺旋状のねじり運動、ヒンジ等を用いた円弧状の回転運動などでもよい。可動部材の移動方向に応じた向きを有する案内部をスパウト本体に設けることにより、所望の移動方向に対応することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10,11…注出用スパウト、20…スパウト本体、21…取付部、22…フランジ部、23…注出筒部、23a…制動凸部、23b…注出筒部の頂面部、23c…環状リブ、24…内容物流路、25…案内凸部、26…スリット、26a…スリットの基端部、30,36…可動部材、31…基部、32…バンド部、32a…第1端部、32b…連結部、32c…第2端部、32d…間隙部、33…閉止部、33a…制動凹部、33b…基端側の面、34…筒状部、34a…隙間、35…案内凹部。