(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】半導体材料ガス反応装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20240416BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2021201885
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕大
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0105483(US,A1)
【文献】特許第5787324(JP,B2)
【文献】特開2007-211346(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料ガスを生成・供給するための半導体材料ガス反応装置であって、
内部空間の下部に固体材料又は液体材料を収納し、前記内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスを混合させた混合ガスを流し、前記固体材料又は前記液体材料と前記混合ガスとの反応により所望の半導体材料ガスを生成するための複数の反応容器と、
前記反応容器に前記混合ガスを輸送するガス流路と、
前記混合ガスと前記固体材料又は前記液体材料とが反応して得られた前記半導体材料ガスを前記反応容器から排出するガス流路と、
前記反応容器を加熱するための加熱機構と、
前記反応容器の上部及び下部に放熱防止用の断熱材を備える半導体材料ガス反応装置において、
前記半導体材料ガスを希釈ガスにより所望の濃度に希釈するための希釈構造を有
し、
前記希釈構造は、前記半導体材料ガス反応装置の内部にあって、前記半導体材料ガスと前記希釈ガスを混合するための前記反応容器と同様の空間、又は前記半導体材料ガスに前記希釈ガスを輸送させる輸送管、又はこれらを組み合わせた構造からなり、半導体材料ガス排出管である材料ガス流路に希釈ガス導入用の石英管を合流させる構造である、
半導体材料ガス反応装置。
【請求項2】
さらに、半導体材料ガス排出構造を有する、
請求項1に記載の半導体材料ガス反応装置。
【請求項3】
前記半導体材料ガス排出構造は、断熱材による断熱機構、真空封入管からなる真空断熱機構、ヒーターによる加熱機構、及びこれらのうち2種以上の組合せからなる群から選択される1種である、
請求項2に記載の半導体材料ガス反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料ガス反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、次世代の半導体デバイスの材料として、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ガリウム(Ga2O3)等のワイドギャップ半導体が盛んに研究されている。またGaAsやInPを使用した超高効率低損失を実現する太陽電池の研究も行われている。これらデバイスの製造には主に有機金属気相成長(MOCVD法)が用いられているが、原料となる有機金属はCを含むため一定量(1015cm-3以上)のCが不純物として膜中に混入する。C濃度がn型不純物よりも高い場合、低濃度n型伝導性制御が困難となるため、Cを含まない原料を使用することが理想である。
そこで注目されているのが特許文献1に示すハライド気相成長(HVPE法)である。HVPE法は例えば金属ガリウムと塩素系ガスを反応させて一塩化ガリウム(GaCl)や三塩化ガリウム(GaCl3)を供給するため、原料に炭素(C)をほとんど含まないことがメリットである。原料が安価なので製造コストで秀でているが、現状技術では原料のGaClやGaCl3を炉内で生成しなければならないので、大口径量産型エピ成膜装置を実現する上で塩化ガリウム(又はInCl3やAlCl3など金属塩化物)の供給方法は大きな課題である。またワイドギャップ半導体の普及のためには、エピコストを現在の1/10以下(Siデバイス並みの低コスト)に低減することが要求されている。
【0003】
特許文献1には、金属ガリウムと塩素ガスとを反応させて一塩化ガリウムガスを生成する第1工程と、生成した一塩化ガリウムガスと塩素ガスとを反応させて三塩化ガリウムガスを生成する第2工程と、を有する三塩化ガリウムガスの製造方法、及びその三塩化ガリウムガスの製造方法により三塩化ガリウムガスを製造する工程と、少なくとも前記三塩化ガリウムガスとアンモニアガスとを原料ガスとして用い、基体上に、気相成長法により、ガリウムを含む窒化物半導体結晶を成長させる工程と、を有する窒化物半導体結晶の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状の小型HVPE装置ではエピコストの低減は困難であるため、大口径(6インチ)かつ複数枚対応の量産型HVPE成膜装置を開発し、低コスト化を実現することが必須である。
特許文献1に記載の窒化物半導体結晶の製造方法を実施するためのHVPE装置は原料となる塩化ガリウムを反応炉内部で生成する内部供給方式である。この内部供給方式は石英反応炉を使用していることから、大口径複数枚対応が困難である。大口径複数枚対応可能な量産型HVPE装置を実現するためには、原料となる金属塩化物を反応炉外部から供給するための材料ガス反応装置(外部供給装置)及び供給技術確立が課題となる。外部供給技術が実現するとMOCVD装置で採用されている大口径複数枚のステンレス反応炉を採用した次世代の量産型HVPE装置が実現可能となる。
【0006】
本発明は、金属塩化物の安定大量供給を可能にさせる半導体材料ガス反応装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 半導体材料ガスを生成・供給するための半導体材料ガス反応装置であって、
内部空間の下部に固体材料又は液体材料を収納し、前記内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスを混合させた混合ガスを流し、前記固体材料又は前記液体材料と前記混合ガスとの反応により所望の半導体材料ガスを生成するための複数の反応容器と、
前記反応容器に前記混合ガスを輸送するガス流路と、
前記混合ガスと前記固体材料又は前記液体材料とが反応して得られた前記半導体材料ガスを前記反応容器から排出するガス流路と、
前記反応容器を加熱するための加熱機構と、
前記反応容器の上部及び下部に放熱防止用の断熱材を備える半導体材料ガス反応装置において、前記半導体材料ガスを希釈ガスにより所望の濃度に希釈するための希釈構造を有する半導体材料ガス反応装置。
[2] 前記希釈構造は前記半導体材料ガス反応装置の内部にあって、前記半導体材料ガスと前記希釈ガスを混合するための前記反応容器と同様の空間、又は前記半導体材料ガスに前記希釈ガスを輸送させる輸送管、又はこれらを組み合わせた構造からなることを特徴とする、[1]に記載の半導体材料ガス反応装置。
[3] さらに、半導体材料ガス排出構造を有する、[1]又は[2]に記載の半導体材料ガス反応装置。
[4] 前記半導体材料ガス排出構造は、断熱材による断熱機構、真空封入管からなる真空断熱機構、ヒーターによる加熱機構、及びこれらのうち2種以上の組合せからなる群から選択される1種である、[3]に記載の半導体材料ガス反応装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属塩化物の安定大量供給を可能にさせる半導体材料ガス反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0011】
[半導体材料ガス反応装置]
図面を適宜参照しながら、本実施形態の半導体材料ガス反応装置の例について説明をする。
図1に示す半導体材料ガス反応装置100は、半導体材料ガスを生成・供給するための半導体材料ガス反応装置である。
半導体材料ガス反応装置100の収納容器13の内部には、半導体材料ガス合成部200が収納されている。
【0012】
図2に示す半導体材料ガス合成部200は、金属材料Mと原料ガスG1とを反応させて半導体材料ガスG2を合成する反応容器等で構成される。
【0013】
収納容器13の内側に配置された半導体材料ガス合成部200は、第1反応容器1、第2反応容器2、及び第3反応容器3を、この順に上限に積層した構造を有する。
第1反応容器1、第2反応容器2、及び第3反応容器3のそれぞれには、蓋部、底部及び側壁によって規定される内部空間が存在する。
第2反応容器2の蓋部は、第1反応容器1の底部で代用してもよい。同様に、第3反応容器の蓋部は第2反応容器の底部で代用してもよい。このように、一段上の反応容器の底部をその一段下の反応容器の蓋部として代用することによって、反応容器の構造をより簡略化できる。この場合、一段上の反応容器の底部とその一段下の反応容器の上部とは、内部空間からガスが漏れないように密着することが好ましい。
各反応容器は、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、石英又はグラファイト製とすることができるが、反応容器の側壁の内部にガス流路を配設するため、グラファイト製が好ましい。
【0014】
収納容器13は、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、石英製とすることができる。
収納容器13の外側には、収納容器内の反応容器を加熱するための加熱機構17が設置されている。加熱機構17としては、例えば、マントルヒーターを使用できる。前記マントルヒーターは、金属ガリウムと塩素ガスとの反応性を高めるため、800℃以上に加熱できるものが好ましく、1000℃以上に加熱できるものがより好ましい。マントルヒーターの加熱温度の上限は特に限定されないが、1500℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましい。
収納容器13の内部は、断熱材14と半導体材料ガス合成部200との間の領域(ゾーン1)、半導体材料ガス合成部200が配置された領域(ゾーン2)、半導体材料ガス合成部200と断熱材15との間の領域(ゾーン3)、収納容器13の上部蓋と断熱材14との間の領域、及び断熱材15とフランジ19との間の領域に分けられる。断熱材14と断熱材15に挟まれたゾーン1、ゾーン2、及びゾーン3は、それぞれ、加熱機構16、加熱機構17、及び加熱機構18によって、加熱されている。
【0015】
各反応容器の側壁内部にはガス流路が配設されており、原料ガスG1は、第1原料ガス流路4を通じて第1反応容器1の内部空間の上部に供給される。原料ガスG1は、さらに、第2原料ガス流路8を通じて最下段の第3反応容器3の内部空間の上部に供給される。
原料ガスG1は、キャリアガスとともに供給されてもよい。
第1反応容器1に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は第1反応容器1の内部空間の下部に収容された金属材料Mと反応して半導体材料ガスG2を生成する。半導体材料ガスG2は、未反応の原料ガスG1とともに、第1生成ガス流路9を通じて、第2反応容器2の内部空間の上部に供給される。
第2反応容器2に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は第2反応容器2の内部空間の下部に収容された金属材料Mと反応して半導体材料ガスG2を生成する。半導体材料ガスG2は、未反応の原料ガスG1とともに、第2生成ガス流路10を通じて、第3反応容器3の内部空間の上部に供給される。
第3反応容器3に半導体材料ガスG2とともに供給された生成ガスG2’は、第2原料ガス流路8を通じて第3反応容器3の内部空間の上部に供給される原料ガスG1と反応して、半導体材料ガスG2を生成する(G2’+G1→G2)。生成した半導体材料ガスG2は、材料ガス流路5を通じて、半導体材料ガス合成部200の外に導出される。
【0016】
第1原料ガス流路4は、第1反応容器1と、第2反応容器2と、第3反応容器3とを、この順に上下に積層することによって、第1反応容器1の側壁内部の原料ガス流路と、第2反応容器2の側壁内部の原料ガス流路と、第3反応容器3の側壁内部の原料ガス流路とが接続されることで形成される。
【0017】
第1生成ガス流路9及び第2生成ガス流路10は、それぞれ、第1反応容器1と第2反応容器2、第2反応容器2と第3反応容器3を上下に積層することによって、形成される。
【0018】
収納容器13内において、半導体材料ガス合成部200は、第1反応容器1の上方に配置された断熱材14と、第3反応容器3の下方に配置された断熱材15によって、放熱を低減し、金属材料Mと原料ガスG1との反応性が低下しないようにしている。
断熱材14(15)の材料としては、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、アルミナ繊維、発砲石英又は真空断熱ガラスを用いることができ、低コストであることから、アルミナ繊維を用いることが好ましい。
【0019】
第1反応容器1及び第2反応容器2のそれぞれの内部空間の下部には、金属材料Mが収容されている。
金属材料Mは固体及び液体のどちらでもよい。金属材料Mとしては、従来半導体材料ガスの製造に用いられている金属が好ましく、例えば、ガリウム、アルミニウム及びインジウムが挙げられる。金属材料Mとしては、ワイドギャップ半導体である窒化ガリウムの製造のため、ガリウムが好ましい。
【0020】
原料ガスG1としては、従来半導体ガスの製造に用いられているガスが好ましく、例えば、ハロゲンガス及びハロゲン化水素ガスが挙げられる。原料ガスG1としては、製造が容易で入手しやすいことから、塩素ガス又は塩化水素ガスが好ましく、塩素ガスが好ましい。
【0021】
原料ガスG1はキャリアガスと混合して半導体材料ガス反応装置100に供給してもよい。前記キャリアガスとしては、従来半導体材料ガスの製造に用いられているキャリアガスが好ましく、例えば、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスが挙げられる。前記キャリアガスとしては、大気から容易に製造することができ、安価であることから、窒素ガスが好ましい。
【0022】
図2に示す半導体材料ガス合成部200において、金属材料Mと原料ガスG1は、2段階の反応により半導体材料ガスG2を生成する。中間生成物として、生成ガスG2’が生成する。
・第1段階:M+G1→G2’
・第2段階:G2’+G1→G2
【0023】
まず、金属材料Mを収容した最上段の第1反応容器1に過剰に原料ガスG1を導入する。
1段階目の金属材料Mと原料ガスG1の反応により半導体材料ガスG2及び生成ガスG2’が生成される。半導体材料ガスG2、生成ガスG2’及び未反応の原料ガスG1は金属材料Mが収容された下段の第2反応容器へ流れ込む。第2反応容器2には金属材料Mが収容されているため、上段から流れてきた未反応の原料ガスG1は金属材料Mと反応し、中間生成物である生成ガスG2’が生成される。最終的には最下段の第3反応容器3に大量の生成ガスG2’が流れ込む。そして最下段の第3反応容器に原料ガスG1を添加することで、2段階目の生成ガスG2’と原料ガスG1との反応が起こり、半導体材料ガスG2が生成される。本発明の半導体材料ガス反応装置では、金属材料Mが収容されている反応容器内で、1段階目の反応(M+G1→G2’)及び部分的な2段階目の反応(G2’+G1→G2)が起こり、金属材料Mが収容されていない反応容器内で、第1反応容器1及び第2反応容器2で反応しきれなかった生成ガスG2’が原料ガスG1と2段階目の反応(G2’+G1→G2)を起こす2段階反応方式が採用されている。
本発明の半導体材料ガス反応装置は、反応容器を複数積層することによって、フットプリントを小さくすることができ、さらに金属材料Mの表面積を容易に稼ぐことができるため、半導体材料ガスG2の大量生成を見込むことができる。
生成した半導体材料ガスG2は、半導体成膜装置に移送され、ウェハーの成膜に使用される。
【0024】
金属材料Mと原料ガスG1との反応効率を高めるために、金属材料Mを収容する反応容器の内部空間には、突出部材を有することが好ましい。突出部材には、ガスの循環流を形成する機能がある。
金属材料Mと原料ガスG1とが反応して半導体材料ガスG2及び生成ガスG2’が生成されると、半導体材料ガスG2及び生成ガスG2’は原料ガスG1よりも比重が大きいため、反応容器の底部に近い金属材料Mの表面付近に滞留しやすい。半導体材料ガスG2が金属材料Mの表面付近に滞留すると、金属材料Mと原料ガスG1との反応が阻害され、反応効率が低下して未反応の原料ガスG1が増加する。
本実施形態の半導体材料ガス反応装置100及び半導体材料ガス合成部200では、各反応容器の形状を直径が略同一の円筒形として、内部空間に突出部材を設けることが好ましい。
図3は、第1反応容器1に突出部材21を設けた例である。第1反応容器1の内部空間において、突出部材21は、半径方向に向けて放射状に突出する。突出部材21は、第1反応容器1と独立し、かつ分離されており、第1反応容器1の内部に設けられたガイドに沿って上下に動かすことができ、着脱自在である。
突出部材21には、
図3に示すように、円周方向に原料ガスG1及び金属材料Mを通過させることが可能な開口部21bが垂直部21aに設けられている。突出部材21の上部は垂直部21aと鈍角をなすように曲がり部21cが設けられている。
開口部21bの大きさは、原料ガスG1及び金属材料Mを通過させることが可能な大きさ及び位置であれば特に限定されないが、大きさは、垂直部21aの半径方向の長さの2~50%、高さ方向の長さの5~90%が好ましい。
曲がり部21cは、垂直部21aと110~160°の角度をなすことが好ましい。
突出部材21を構成する材料の比重は、金属材料Mよりも比重が小さいものが好ましい。金属材料Mが液体である場合、突出部材21が金属材料Mに僅かに浮遊するため、反応容器の蓋部の内側に突出部材21の上辺が接触して隙間を塞ぐ。これにより、原料ガスG1は効率よく開口部21bを通り、金属材料Mと反応する。突出部材を構成する材料としては、耐熱性が高く、多くの場合金属材料Mよりも比重が小さいことから、石英又はグラファイトが好ましい。突出部材と反応容器とを同じ材料、例えば、グラファイトで構成してもよい。
【0025】
本実施形態の半導体材料ガス反応装置100は、半導体材料ガス合成部200で合成された半導体材料ガスG2を希釈ガスG3により希釈して、半導体材料ガスG2を所定の濃度に希釈する希釈構造を備えている。
本実施形態の希釈構造の例示的態様を
図4~
図6に示す。本実施形態の半導体材料ガス反応装置100は、希釈ガスG3を内部に導入する。本実施形態の希釈構造の一態様は、
図4に示すように、半導体材料ガス排出管(石英管)である材料ガス流路5に希釈ガスG3導入用の石英管を合流させる希釈構造7である。この希釈ガス導入用石英管は、反応装置内部の高温部を通過させ、熱交換により希釈ガスG3をより高温化させる構造でもよい。半導体材料ガス排出管(石英管)である材料ガス流路5と希釈ガス導入用石英管である希釈ガス流路6は、
図7に示すようにガス滞留が防げるようなR加工を施し、希釈ガスG3を本流、そこに支流となる半導体材料ガスG2が合流する構造が好ましい。また、別の態様として、
図5のように反応容器と同形状の希釈容器を希釈構造7’をとして設けて、その中で希釈させる方法でもよい。さらに別の態様として、上述した2態様を組み合わせた構造でもよい。なお、希釈ガスとしては、半導体材料ガスG2との反応性が乏しいものが好ましく、例えば、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスが挙げられる。前記希釈ガスとしては、大気から容易に製造することができ、安価であることから、窒素ガスが好ましく、高温(200~300℃)の窒素ガスがより好ましい。これにより材料ガス流路5がフランジ19を通過する部分において、半導体材料ガスG2は希釈された高温状態のガスであり、凝結しないため、ガス流路を閉塞することがない。
【0026】
図8に示す本実施形態の半導体材料ガス反応装置の半導体材料ガス排出構造20は、冷却されたフランジ19における半導体材料ガスG2の温度低下を抑制することが可能となる。この半導体材料ガス排出構造20は断熱材による断熱機構、又は真空部を有する真空断熱機構であってもよい。また、半導体材料ガス排出構造20にカートリッジヒーター等のヒーターを導入することにより、加温してもよい。これらの断熱機構または加熱機構を有することで、半導体材料ガスG2が凝縮しないように200℃以上の温度を保持することができる。
前記希釈構造を備えていない場合は、高濃度の半導体材料ガスG2を生成・供給する際にフランジ19通過部にて半導体材料ガスG2の凝縮が起こる可能性が高い。その場合はフランジ19通過部を300℃以上の高温に維持する必要があり、半導体材料ガス排出構造20の加熱機構が複雑かつコストアップに繋がるので好ましくない。前記希釈構造を備えることで、半導体材料ガス排出構造の断熱・加熱機能は簡易な仕様で済ませることができ、コストダウンにも繋がる。
【0027】
[作用効果]
本発明を用いて、生成された半導体材料ガスの濃度を希釈し、かつ温度低下を防ぐことで、半導体材料ガスが輸送配管内で凝縮・液化することを防止することが可能となる。結果として、所望の半導体材料ガスを安定的に成膜反応炉へ供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1…第1反応容器
1a…蓋部
1b…底部
1c…側壁
1z…内部空間
2…第2反応容器
3…第3反応容器
4…第1原料ガス流路
5…材料ガス流路
6,6a,6b…希釈ガス流路
7,7’…希釈構造
8…第2原料ガス流路
9…第1生成ガス流路
10…第2生成ガス流路
13…収納容器
14,15…断熱材
16,17,18…加熱機構
19…フランジ
20…半導体材料ガス排出構造
21…突出部材
21a…垂直部
21b…開口部
21c…曲がり部
100…半導体材料ガス反応装置
200…半導体材料ガス合成部
G1…原料ガス
G2…半導体材料ガス
G2’…生成ガス
G3…希釈ガス
M…金属材料