IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社堀場製作所の特許一覧

<>
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図1
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図2
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図3
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図4
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図5
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図6
  • 特許-異物除去装置及び異物除去方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】異物除去装置及び異物除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240416BHJP
   B08B 5/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01L21/304 645A
B08B5/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022551218
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031402
(87)【国際公開番号】W WO2022064950
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020159394
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇規
(72)【発明者】
【氏名】杉 大作
(72)【発明者】
【氏名】宇木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】河野 高博
(72)【発明者】
【氏名】神崎 豊樹
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-130070(JP,A)
【文献】特開2010-210527(JP,A)
【文献】特開2016-201457(JP,A)
【文献】特開平10-070069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付着した異物を吹出口が形成されたノズルから吹き出される気体によって除去する異物除去装置であって、
前記ノズルが、前記気体の流れる流路が形成されたノズル本体と、前記流路の先端を一部閉塞して前記吹出口を形成するマスク部材とを備え、
前記吹出口は、前記マスク部材が有する閉塞板によって区切られた複数の開口要素からなるものであり、
前記吹出口の両端部の開口率が、当該吹出口の中央部の開口率よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
前記開口率が、前記吹出口の前記中央部から両端へ向かって連続的又は段階的に小さくなるように構成されている請求項1記載の異物除去装置。
【請求項3】
対象物に付着した異物を吹出口が形成されたノズルから吹き出される気体によって除去する異物除去装置であって、
前記ノズルが、前記気体の流れる流路が形成されたノズル本体と、前記流路の先端を一部閉塞して前記吹出口を形成するマスク部材とを備え、
前記吹出口は、前記マスク部材が有する閉塞板によって区切られた複数の開口要素からなるものであり、
前記吹出口の両端部の開口率が、当該吹出口の中央部の開口率よりも小さくなるように構成されており、
前記マスク部材が、前記吹出口の両端方向と直交方向へ延び、当該両端方向に等間隔に設置された複数の第1閉塞板と、当該両端方向へ延び、隣り合う前記第1閉塞板の間に設置された第2閉塞板とを備え、
前記第2閉塞板の数が、前記吹出口の両端に近い前記隣り合う第1閉塞板の間ほど多くなっている異物除去装置。
【請求項4】
対象物に付着した異物を吹出口が形成されたノズルから吹き出される気体によって除去する異物除去装置であって、
前記吹出口の両端部の開口率が、当該吹出口の中央部の開口率よりも小さくなるように構成されており、
前記対象物が、複数の構造物が縦横に配列された半導体ウエハであり、
前記構造物は、所定方向から加わる力に対する強度が当該所定方向と異なる方向から加わる力に対する強度に比べて低い構造のものであり、
前記ノズルは、前記吹出口の両端方向と直交する方向が前記所定方向と一致しないように配置されている異物除去装置。
【請求項5】
前記構造物が、その配列方向に対して斜め方向から加わる力に対する強度が当該斜め方向と異なる方向から加わる力に対する強度に比べて低い構造のものであり、
前記ノズルは、前記吹出口の両端方向と直交する方向が前記斜め方向と一致しないように配置されている請求項記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記対象物と前記ノズルとを相対移動させる移動機構をさらに備えている請求項1乃至のいずれかに記載の異物除去装置。
【請求項7】
複数の構造物が縦横に配列された対象物の表面に付着した異物を、吹出口が形成されたノズルから吹き出される気体によって除去する異物除去方法であって、
前記構造物は、所定方向から加わる力に対する強度が当該所定方向と異なる方向から加わる力に対する強度に比べて低い構造のものであり、
前記吹出口の両端部の開口率が、当該吹出口の中央部の開口率よりも小さくなっており、
前記ノズルを前記吹出口の両端方向と直交する方向が前記所定方向と一致しないように配置することを特徴とする異物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去装置及び異物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタや配線などの構造物(以下、構造物ともいう)が形成された半導体基板や絶縁体基板、これらの基板から切り出して形成されたチップ、又は、電子部品等の表面から異物を除去する異物除去装置として、特許文献1には、同一幅を有するスリット状の吹出口から吹き出された気体を、半導体ウエハの表面に付着した異物にその上方から吹き付ける構造のものが開示されている。当該異物除去装置では、吹出口から吹き出される気体の流量又は流速によって異物除去性能が定まる。
【0003】
しかしながら、前記異物除去装置は、吹出口から吹き出されて半導体ウエハの表面に吹き付けられた気体が、その吹き付け箇所から表面に沿っていずれの方向へも略同じ流量又は流速で放射状に広がる。
【0004】
このため、例えば、前記吹き付け箇所の近傍に強度の小さな構造物があると、その構造物に当たる気体の流量又は流速を当該構造物が破損しない程度に小さくする必要が生じる。そのため、従来は、当該構造物の強度に合わせて吹出口から吹き出される気体の流量又は流速を小さくする必要があり、それがボトルネックとなって異物除去性能を向上させることが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-201457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、対象物の表面に形成された構造物の構造にかかわらず、異物除去性能を向上させることができる異物除去装置を得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る異物除去装置は、対象物に付着した異物を吹出口が形成されたノズルから吹き出される気体によって除去する異物除去装置であって、前記吹出口の両端部の開口率が、当該吹出口の中央部の開口率よりも小さくなるように構成されていることを特徴とするものである。ここで、本発明における開口率とは、吹出口の両端を結ぶ方向(以下、両端方向ともいう)の単位長さ当たりの開口面積の割合をいい、中央部で最大となる。例えば、開口率は、前記単位長さをL、吹出口の最大幅(両端方向と直交する方向の長さ)をW、当該単位長さにおける開口面積をSとすると、(S/(L・W))×100で算出されるパーセンテージで表すことができる。
【0008】
このような構成によれば、吹出口の両端部の開口率が中央部の開口率よりも小さくなっているので、吹出口の中央部よりも両端部から吹き出される気体の流量が小さくなる。これにより、吹出口から吹き出され対象物の表面に吹き付けられた後に、吹出口の両端方向と直交する方向(以下、直交方向ともいう)へ流れる気体の流量又は流速に比べて、他の方向(直交方向と異なる方向)へ流れる気体の流量又は流速を小さくできる。従って、例えば、対象物の表面に形成された構造物が所定方向から加わる力によって特にダメージを受け易い構造である場合、吹出口の直交方向と前記所定方向とを一致させなければ、同じ吹出流量であっても従来の異物除去装置に比べて、構造物に所定方向から当たる気体の流量又は流速を小さくでき、構造物が破損し難くなる。言い換えれば、従来の異物除去装置に比べて、構造物に所定方向から当たる気体の流量又は流速を構造物が破損しない程度に維持しながら、吹出口から吹き出される気体の流量又は流速を大きくできるので、異物除去性能を高められる。
【0009】
また、前記開口率が、前記吹出口の前記中央部から両端へ向かって連続的又は段階的に小さくなるように構成されているものであってもよい。
【0010】
このような構成によれば、吹出口の開口率が中央部から両端へ向かって徐々に小さくなるので、吹出口から吹き出される気体の流量が中央部から両端へ向かって徐々に小さくなる。これにより、吹出口から対象物の表面に吹き付けられた気体は、近くを流れる気体同士で吹出口の直交方向と異なる方向へ流れる成分を打ち消し合うようになる。その結果、吹出口から対象物の表面に吹き付けられた後に、吹出口の直交方向と異なる方向へ流れる気体の流量又は流速を可及的に小さくできるので、異物除去性能をより高められる。
【0011】
また、前記ノズルが、前記気体の流れる流路が形成されたノズル本体と、前記流路の先端を一部閉塞して前記吹出口を形成するマスク部材とを備えているものであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、マスク部材によって吹出口の形状を決めることができるので、加工が容易となる。
【0013】
また、本発明の具体的な実施態様としては、前記吹出口が、閉塞板によって区切られた複数の開口要素からなるものが挙げられる。
【0014】
また、本発明の具体的な実施態様としては、前記マスク部材が、前記吹出口の両端方向と直交方向へ延び、当該両端方向に等間隔に設置された複数の第1閉塞板と、当該両端方向へ延び、隣り合う前記第1閉塞板の間に設置された第2閉塞板とを備え、前記第2閉塞板の数が、前記吹出口の両端に近い前記隣り合う第1閉塞板の間ほど多くなっているものが挙げられる
【0015】
また、前記対象物が、複数の構造物が縦横に配列された半導体ウエハであり、前記構造物は、所定方向から加わる力に対する強度が当該所定方向と異なる方向から加わる力に対する強度に比べて低い構造のものであり、前記ノズルが、前記吹出口の両端方向と直交する方向が前記所定方向と一致しないように設置されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、吹出口の直交方向が所定方向と一致しないので、吹出口から半導体ウエハの表面に吹き付けられた後に、吹出口の直交方向へ流れる気体が所定方向に流れなくなる。これにより、同じ吹出流量であっても従来の異物除去装置に比べて、構造物に所定方向から当たる気体の流量又は流速を構造物が破損しない程度に維持しながら、吹出口から吹き出される気体の流量又は流速を大きくできるので、異物除去性能を高められる。
【0017】
また、本発明の具体的な実施態様としては、前記構造物が、その配列方向に対して斜め方向から加わる力に対する強度が当該斜め方向と異なる方向から加わる力に対する強度に比べて低い構造のものであり、前記ノズルが、前記吹出口の両端方向と直交する方向が前記斜め方向と一致しないように設置されているものが挙げられる。
【0018】
また、前記対象物と前記ノズルとを相対移動させる移動機構をさらに備えているものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、対象物とノズルとを相対移動させることができるので、対象物の表面のどの位置であってもノズルの吹出口をその上方に位置付けられるようになり、異物を除去し易くなる。
【0020】
また、本発明に係る異物除去方法は、複数の構造物が縦横に配列された対象物の表面に付着した異物を吹出口が形成されたノズルから吹き出される気体によって除去する異物除去方法であって、前記構造物は、所定方向から加わる力に対する強度が当該所定方向と異なる方向から加わる力に対する強度に比べて低い構造のものであり、前記吹出口の両端部の開口率が、当該吹出口の中央部の開口率よりも小さくなっており、前記ノズルを前記吹出口の両端方向と直交する方向が前記所定方向に一致しないように配置することを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、両端部の開口率が中央部の開口率よりも小さい吹出口の両端方向と直交する方向と所定方向と一致しないように配置したので、吹出口から対象物の表面に吹き付けられた後に、吹出口の直交方向へ流れる気体に比べて所定方向へ流れる気体の流量又は流速を小さくできる。従って、同じ吹出流量であっても従来の異物除去装置に比べて、構造物に所定方向から当たる気体の流量又は流速を小さくでき、構造物が破損し難くなる。言い換えれば、従来の異物除去装置に比べて、構造物に所定方向から当たる気体の流量又は流速を構造物が破損しない程度に維持しながら、吹出口から吹き出される気体の流量又は流速を大きくできるので、異物除去性能を高められる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した異物除去装置によれば、対象物の表面に形成された構造物の構造にかかわらず、異物除去性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る異物検査除去装置の全体構成を示す模式図である。
図2】第1の実施形態に係る異物検査装置を示す模式図である。
図3】第1の実施形態に係る異物除去装置を示す模式図である。
図4】第1の実施形態に係る異物除去装置を示す模式図である。
図5】第1の実施形態に係るノズルの吹出口を拡大して示す模式図である。
図6】第1の実施形態に係る制御部を示す機能ブロック図である。
図7】その他の実施形態に係るノズルの吹出口を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
100 異物検査除去装置
W 基板(対象物)
W1 表面
T 構造物
D 斜め方向(所定方向)
M1 異物検査装置
M2 異物除去装置
N ノズル
30 ノズル本体
34 吹出口
34h 開口要素
34x 中央部
34y 両端部
α 両端方向
40 マスク部材
41 第1閉塞板
42 第2閉塞板
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る異物除去装置を図面に基づいて説明する。
本発明に係る異物除去装置は、例えば異物検査除去装置を構成するものとして使用される。この異物検査除去装置は、例えば、複数の構造物(例えば、トランジスタ、配線等)が縦横に並べて形成された半導体基板W(例えば、Siウエハ、SiCウエハなど)の表面W1に付着した異物の検査及び除去を行うものである。なお、異物検査除去装置は、半導体基板に限定されず、表面に所定方向から加わる力によってダメージを受け易い構造物が形成されたものに使用することができ、例えば、絶縁体基板(例えば、サファイア基板など)、これらの基板から切り出したチップ(例えば、MEMS、センサー素子、SAWデバイスなど)、又は、電子部品(例えば、HDD素子など)等にも使用できる。なお、異物除去装置は、それ単独でも使用できる。
【0026】
<第1の実施形態> 本実施形態に係る異物検査除去装置100は、検査除去の対象物となる基板Wの表面W1に付着した異物を除去するものであり、図1に示すように、異物検査装置M1と、異物除去装置M2と、制御部Cと、を備えている。異物検査装置M1と異物除去装置M2とは、互いに併設されており、図示しない搬送機構によって基板Wの受け渡しができるようになっている。
【0027】
以下では、前記基板Wが、図4に示すように、円盤状をなし、かつ、その外周の一部を直線状に切り欠いて形成されたオリエンテーション・フラットF(以下、オリフラFともいう。)を有するものとして説明する。また、基板Wの表面W1には、複数の構造物TがオリフラFの延伸方向を横方向とし、その延伸方向と直交する方向を縦方向として縦横に並んでおり、構造物Tは、その基板Wの表面W1に沿った方向であって、その配列方向に対して斜め方向Dから加わる力に対する強度が、他の方向(斜め方向Dと異なる方向)から加わる力に対する強度に比べて低い構造になっているものとする。従って、当該斜め方向Dが、請求項における所定方向に該当する。
【0028】
前記異物検査装置M1は、基板Wの表面W1に付着した異物の有無、大きさ及びその位置等の異物情報を取得するための光散乱式のものである。具体的には、異物検査装置M1は、図2に示すように、基板Wが載せられる検査用移動ステージ10と、検査用移動ステージ10に載せた基板Wの表面W1に検査光を照射して走査する光照射部11と、検査光が照射された基板Wの表面W1からの反射散乱光を検出する光検出部12と、とを備えている。
【0029】
前記異物除去装置M2は、基板Wの表面W1に付着した異物に気体を吹き付けて吹き飛ばすとともに、その吹き飛ばした異物を吸引して除去するものである。具体的には、異物除去装置M2は、図3及び図4に示すように、基板Wが載せられる除去用移動ステージ20と、除去用移動ステージ20に載せられた基板Wと対向させて配置されたノズルNと、を備えている。なお、気体は、例えば、空気、不活性ガス、液滴混じりのガス等である。
【0030】
前記除去用移動ステージ20は、X方向、Y方向、Z方向に移動可能になっており、ノズルNに対して基板Wを相対移動させるものである。従って、除去用移動ステージ20が、請求項における移動機構に該当する。
【0031】
前記除去用移動ステージ20には、基板Wが複数の構造物Tの配列方向がX方向及びY方向に対して斜めになるように位置決めして載置される。すなわち、除去用移動ステージ20には、基板WがオリフラFの延伸方向がX方向及びY方向に対して斜めになるように位置決めして載置される。これにより、除去用移動ステージ20には、基板Wが構造物Tの構造的に弱い方向である斜め方向Dを除去用移動ステージ20の移動方向(具体的には、Y方向)と平行になるように載置される。
【0032】
前記ノズルNは、ノズル本体30と、マスク部材40と、を備えている。
【0033】
前記ノズル本体30には、外部へ吹き出される気体が流れる吹出流路31と、内部へ吸い込まれた気体が流れる一対の吸込流路32と、を備えている。また、ノズル本体30は、除去用移動ステージ20に載せられた基板Wの表面W1との対向面33に、吹出流路31の先端に形成された吹出口34と、吸込流路32の先端に形成された吸込口35と、が設けられている。
【0034】
前記吹出流路31には、吹出口34が形成された先端と反対側の他端に、異物除去装置M2の外に設置された送風機50が配管Pを介して接続されている。また、吸込流路32には、吸込口35が形成された先端と反対側の他端に、異物除去装置M2の外に設置された吸引機60が配管Pを介して接続されている。
【0035】
前記吹出口34は、図5に示すように、長尺矩形状をなしている。具体的には、吹出口34は、吹出流路31の先端をマスク部材40によって一部閉塞して形成されたものであり、複数の開口要素34hから構成されている。そして、吹出口34の開口率は、両端部34yの開口率が中央部34xの開口率に比べて小さくなっている。具体的には、吹出口34の開口率は、中央部34xから両端に向かって段階的に小さくなっている。なお、前記ノズルNは、吹出口34の両端を結ぶ方向(以下、両端方向α)と直交する方向が除去用移動ステージ20に載せられた基板Wに形成された構造物Tの構造的に弱い方向である斜め方向Dと一致しないように配置されている(図4参照)。本実施形態においては、ノズルNは、吹出口34の両端方向αが斜め方向Dと一致するように配置されている。
【0036】
前記中央部34xに設けられた複数の開口要素34hは、いずれも同一開口面積を有しており、吹出口34の両端方向αに沿って等間隔に並んでいる。従って、吹出口34の中央部34xの開口率は、吹出口34の両端方向αに沿って同一になっている。
【0037】
前記両端部34yに設けられた複数の開口要素34hは、吹出口34の両端方向αと直交する方向へ並ぶ同一開口面積を有する開口要素34hの数が、吹出口34の両端に向かって多くなっており、また、吹出口34の両端に近づくほどその開口要素34hの開口面積が小さくなっている。そして、吹出口34の両端方向αと直交する方向に並ぶ複数の開口要素34hの開口面積の合計が、両端に向かって小さくなっている。具体的には、当該合計が、両端に向かって同じ変化率で小さくなっている。従って、吹出口34の両端部34yの開口率は、吹出口34の中央部34x側から両端側に向かって同じ変化率で小さくなっている。
【0038】
また、前記複数の開口要素34hは、吹出口34の両端方向αの中央に対して対称に設けられており、また、吹出口34の両端方向αと直交する方向の中央に対して対称に設けられている。従って、吹出口34の両端部34yは、その両端方向αの長さが互いに同一になっている。なお、吹出口34の両端部34yは、その両端方向αの長さがいずれも中央部34xの両端方向の長さよりも短くなっている。
【0039】
前記両吸込口35は、その長手方向が吹出口34の両端方向αと一致するように配置されており、吹出口34の両側に形成されている。また、両吸込口35は、いずれも吹出口34から同じ距離だけ離した位置に形成されている。
【0040】
前記マスク部材40は、複数の閉塞板41,42を有し、当該複数の閉塞板41,42によって吹出流路31の先端に形成された同一幅を有するスリット状の元吹出口36を一部閉塞して吹出口34を形成するものである。具体的には、マスク部材40は、吹出流路31の先端に設置された状態で、吹出口34の両端方向に互いに間隔を空けて設置され、当該両端方向と直交する方向(吹出口34の幅方向)へ延びる第1閉塞板41と、隣り合う第1閉塞板41の間に設置され、当該両端方向へ延びる第2閉塞板42と、を備えている。また、第1閉塞板41は、吹出口34の両端方向に等間隔に設けられている。また、第2閉塞板42は、吹出口34の両端に近い隣り合う第1閉塞板41の間ほどその数が多くなっている。そして、マスク部材40は、元吹出口36を閉塞板41,42によって区切って吹出口34を構成する複数の開口要素34hを形成している。
【0041】
前記制御部Cは、異物検査装置M1及び異物除去装置M2に接続されて両装置M1,M2を制御する所謂コンピュータである。具体的には、制御部Cは、CPU、内部メモリ、外部メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等を備えており、内部メモリ又は外部メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器等が作動することにより、図6に示すように、異物検査制御部C1、異物情報算出部C2、及び、異物除去制御部C3等としての機能を発揮するように構成されている。
【0042】
前記異物検査制御部C1は、検査用移動ステージ10及び光照射部11に制御信号を出力し、検査中に検査用移動ステージ10を所定方向に一定速度で移動するように制御するとともに、その移動に合わせて光照射部11による検査光の走査を制御するものである。
【0043】
前記異物情報算出部C2は、異物検査制御部C1から検査用移動ステージ10及び光照射部11に出力される制御信号を受け付け、その制御信号に基づき基板Wの表面W1における光照射位置を示す照射位置データを算出するものである。さらに、異物情報算出部C2は、光検出部12から照射位置データが示す光照射位置に検査光が照射されたときの反射散乱光の光強度信号を受け付け、照射位置データと光強度信号とに基づき基板Wの表面W1の異物情報を算出するものである。なお、異物情報は、基板Wの表面W1上の異物の有無、当該異物の大きさ、位置等である。
【0044】
前記異物除去制御部C3は、異物情報算出部C2から異物情報を示す異物情報データを受け付け、その異物情報データに基づき送風機50、吸引機60、及び、除去用移動ステージ20を制御するものである。具体的には、異物除去制御部C3は、異物情報データに基づき基板Wの表面W1に付着した異物が除去対象に該当するか否かを判定し、除去対象に該当すると判定した場合には、除去用移動ステージ20を制御して吹出口34と基板Wと相対移動させながら、送風機50を制御して吹出口34から吹き出される気体を基板Wに吹き付けることによって付着した異物を吹き飛ばし、吸引機60を制御して吸込口45から吹き飛ばされた異物を吸引する。
【0045】
次に、本実施形態の異物検査除去装置100の動作について説明する。
【0046】
先ず、基板Wを異物検査装置M1の検査用移動ステージ10に載置する。
【0047】
次に、異物検査制御部C1が、検査用移動ステージ10及び光照射部11を制御することにより、基板Wの表面W1全体に検査光を照射して走査する。そして、この走査中に、異物情報算出部C2が、異物検査制御部C1の制御信号及び光検出部12で検出された光強度信号を受け付け、基板Wの表面W1の異物情報を算出する。
【0048】
次に、搬送機構によって検査用移動ステージ10に載置された基板Wを除去用移動ステージ20に搬送する。なお、搬送機構によって除去用移動ステージ20に搬送された基板Wは、除去用移動ステージ20上に構造物Tの配列方向が除去用移動ステージ20の移動方向であるX方向及びY方向に対して斜めになるように位置決めされる。
【0049】
次に、異物除去制御部C3は、異物情報算出部C2から異物情報データを受け付け、異物が除去対象に該当するか否かを判定し、除去対象に該当すると判定した場合には、送風機50、吸引機60、及び、除去用移動ステージ20を制御することにより、基板Wの表面W1に付着した異物に気体を吹き付けて除去する。具体的には、異物除去制御部C3は、吹出口34と基板Wとを相対移動させることにより、基板Wに対して吹出口34をジグザグに移動させて異物を除去する。より具体的には、異物除去制御部C3は、基板Wに対して吹出口34をX方向に移動させながら吹出口34から吹き出される気体を基板Wに吹き付けて異物を除去する動作と、基板Wに対して吹出口34をY方向に移動させる動作とを交互に繰り返し、基板Wの表面W1全体に対して異物除去動作を行う。これにより、ノズルNは、吹出口34の両端方向を構造物Tの構造的に弱い方向である斜め方向Dと平行に配置した状態を保ちながら、基板Wに対して移動する。
【0050】
その後、再び搬送機構によって除去用移動ステージ20に載置された基板Wを検査用移動ステージ10に搬送し、異物検査装置M1によって基板Wの表面W1に付着した異物が除去されたか否かを検査する。なお、この一連の検査除去作業を複数繰り返すことにより、異物除去の信頼性を高めることができる。
【0051】
このような構成によれば、スリット状の吹出口34の開口率が中央部34xから両端へ向かって徐々に小さくなるので、吹出口34の開口要素34hから吹き出される気体の流量が中央部34xから両端へ向かって徐々に小さくなる。これにより、吹出口34から基板Wの表面W1に吹き付けられた後に、吹出口34の両端方向αと直交する方向に流れる気体の流量又は流速に比べて、他の方向へ流れる気体の流量又は流速を可及的に小さくできる。従って、ノズルNを吹出口34の両端方向と直交する方向を構造物Tの構造的に弱い方向である斜め方向Dと一致させなければ、同じ吹出流量であっても従来の異物除去装置に比べて、構造物Tに所定方向から当たる気体の流量又は流速を小さくでき、構造物が破損し難くなる。言い換えれば、従来の異物除去装置に比べて、構造物Tに斜め方向Dから当たる気体の流量又は流速を構造物Tが破損しない程度に維持しながら、吹出口34から吹き出される気体の流量又は流速を大きくできるので、異物除去性能を高められる。
【0052】
<その他の実施形態> 前記吹出口は、複数の開口要素からなるものであってもよく、一つの開口要素からなるものであってもよい。また、吹出口の開口要素は、マスク部材によって形成されたものであってもよく、また、吹出流路の先端によって形成されたものであってもよい。すなわち、ノズル本体自体に形成されたものであってもよい。
【0053】
また、前記吹出口は、例えば、正方形状、円形状等のように長尺状でないものであってもよい。さらに、長尺状の吹出口において、幅方向の両端部の開口率が、中央部の開口率よりも小さくなるように構成してもよい。
【0054】
また、前記吹出口34は、図7に示すように、一つの開口要素34hを有し、その開口要素34hが両端に向かうに従って先細り状になったものであってもよい。このように、開口率が、吹出口34の中央部34xから両端へ向かって連続的に小さくなるものであってもよい。
【0055】
また、前記吹出口の開口要素は、吹出口の両端方向の中央又はその両端方向と直交する方向の中央のいずれか一方又は双方に対して非対称になっているものであってもよい。
【0056】
また、前記吹出口は、両端部の両端方向の長さが中央部の両端方向の長さと同一又は当該長さよりも長くなっているものであってもよい。さらに、両端部の両端方向の長さが、互いに異なる長さになっているものであってもよい。
【0057】
また、前記ノズルは、吸込口が設けられていないものであってもよい。
【0058】
また、前記異物除去装置は、除去用移動ステージではなくノズルが移動するものであってもよく、除去用移動ステージ及びノズルのいずれもが移動するものであってもよい。
【0059】
また、前記異物検査装置は、透過方式のものであってもよい。この場合、光照射部又は光検出部のいずれか一方を基板の表面側に設置し、他方を基板の裏面側に設置し、光照射部から基板表面に照射され当該基板を透過した光を光検出部で検出するように構成すればよい。
【0060】
また、前記異物除去制御部は、異物情報データに基づき基板の表面に付着した異物が除去対象に該当すると判定した場合には、基板の異物が検出された位置の直上に吹出口を移動させた後、吹出口から吹き出される気体を基板に吹き付けて異物を除去するようにしてもよい。
【0061】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明であれば、対象物の表面に形成された構造物の構造によらず、十分な異物除去性能を有した異物除去装置を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7