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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/92 20060101AFI20240416BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240416BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240416BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20240416BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60T8/92
B60T13/74 G
B60T8/17 Z
B60T8/17 B
B60T8/171 A
B60T17/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022555119
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 DE2021200039
(87)【国際公開番号】W WO2021197554
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】102020204221.7
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ボイス・ヨッヘン
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-523619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339885(US,A1)
【文献】欧州特許第01032518(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)と、中央制御ユニット(148)とを有するブレーキシステム(100)であって、
各電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)は、前記それぞれの車輪ブレーキ(102、104、106、108)によって車両車輪(110、112、114、116)に作用する減速モーメントを制御するための車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)を有し、
前記ブレーキシステム(100)は、更に、前記対応する車両車輪(110、112、114、116)の車輪回転速度を説明する車輪回転速度情報項目の確認のために、車両車輪(110、112、114、116)毎に少なくとも1つの車輪回転速度センサ(140、142、144、146)を有し、
前記中央制御ユニット(148)は、制御信号の交換のためにデータバス(150)を介して前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に接続され、
電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)を備える車両車輪(110、112、114、116)の前記車輪回転速度センサ(140、142、144、146)は、それぞれの場合において、前記確認した車輪回転速度情報項目の伝送のために、前記それぞれの車両車輪(110、112、114、116)に配置される前記電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に直接接続され、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)は、それぞれの場合において、前記受信した車輪回転速度情報項目と前記中央制御ユニット(148)から受信する前記制御信号とに基づいて、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)にそれぞれ割り当てられる前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)によって、前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)にそれぞれ割り当てられる前記車両車輪に作用する減速モーメントを制御するよう構成され、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)のうちの少なくとも1つは、直接データ接続(154)を介して前記中央制御ユニット(148)に接続され、前記受信した車輪回転速度情報項目を、前記直接データ接続(154)を介して前記中央制御ユニット(148)に提供することを特徴とする、
ブレーキシステム(100)。
【請求項2】
前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)は、前記車輪回転速度センサ(140、142、144、146)からそれぞれ受信する前記車輪回転速度情報項目を、前記データバス(150)を介して前記中央制御ユニット(148)に送信することを特徴とする、請求項1に記載のブレーキシステム(100)。
【請求項3】
前記車輪回転速度センサ(140、142、144、146)のうちの少なくとも1つは、前記車両車輪(110、112、114、116)に割り当てられる前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に接続され、また、前記確認された車輪回転速度情報項目の前記伝送のために前記中央制御ユニット(148)に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブレーキシステム(100)。
【請求項4】
2つの車輪回転速度センサ(140、142、144、146、156、158、160、162)は前記車両車輪(110、112、114、116)のうちの少なくとも1つに配置され、前記車輪回転速度センサ(156、158、160、162)の1つは前記中央制御ユニット(148)に接続され、他の車輪回転速度センサ(140、142、144、146)は、前記確認された車輪回転速度情報項目の前記伝送のために、前記車両車輪(110、112、114、116)に割り当てられる前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に接続されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のブレーキシステム(100)。
【請求項5】
前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)は、それぞれの場合において、前記それぞれ確認された車輪回転速度情報項目の交換のために、前記ブレーキシステム(100)の少なくとも1つの更なる車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に直接接続されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のブレーキシステム(100)。
【請求項6】
前記ブレーキシステム(100)は、車両運転者によって操作された場合、前記操作に対応するブレーキ要求情報項目を出力するよう構成されるブレーキ作動ユニット(128)を有し、前記ブレーキ作動ユニット(128)は、前記ブレーキ要求情報項目の前記伝送のために、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)のうちの少なくとも1つに直接接続されることを特徴とする、請求項に記載のブレーキシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによるブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるブレーキシステムを図1の実施例によって示している。ここで、図示するブレーキシステム100は、合計4つの電気機械式車輪ブレーキ102、104、106、及び108を有し、これらは、それぞれの場合において、1つの車両車輪110、112、114、及び116に割り当てられている。更に、ブレーキシステム100はブレーキ作動ユニット128を有しており、これは、ブレーキ作動ユニット128に接続されるブレーキペダル130が作動した場合、運転者ブレーキ要求を検出するためのストロークセンサ132及び力センサ134を有している。ストロークセンサ132及び力センサ134によって確認される作動情報項目を処理するために、ブレーキシステム100は2つの中央制御ユニット136及び138を有しており、ここでストロークセンサ132は第1の制御ユニット136に接続され、力センサ138は第2の制御ユニットに接続されている。
【0003】
更に、車両車輪110、112、114、及び116において、それぞれの場合において、関連する車両車輪110、112、114、又は116の現在の回転速度を確認するよう構成される1つの車輪回転速度センサ140、142、144、及び146が配置されている。ここで、車輪回転速度センサ140、142、144、及び146は、それぞれの場合において、確認された車輪回転速度情報項目の伝送のために制御ユニット136に直接接続されている。制御ユニット136は、更に、受信した車輪回転速度情報項目をコピーし、これらを第2の制御ユニット138に送信するよう構成されている。制御ユニット136及び138は、次に、ストロークセンサ132及び力センサ134から受信される作動情報項目に基づいて、及び車輪回転速度情報項目に基づいて制御信号を生成し、この制御信号は、車輪ブレーキ102、104、106、及び108を制御するためにそれらに送信される。
【0004】
ここで、車輪ブレーキ102、104、106、及び108は、それぞれの場合において、制御信号に基づいて、それぞれの車輪ブレーキ102、104、106、及び108によって付与される制動力、又は制動力によって車両車輪110、112、114、及び116に作用する減速モーメントを制御するよう構成される1つの車輪固有制御ユニット118、120、124、及び126を有している。ここで、対応する情報項目の伝送のために、第1の制御ユニット136は、左前輪110の車輪ブレーキ102の車輪固有制御ユニット118及び右後輪116の車輪ブレーキ108の車輪固有制御ユニット124に排他的に接続される一方で、第2の制御ユニット138は、右前輪112の車輪ブレーキ104の車輪固有制御ユニット120及び左後輪114の車輪ブレーキ106の車輪固有制御ユニット122に排他的に接続される。その結果、車輪ブレーキ102、104、106、及び108を対角ブレーキ回路に分割している。ここで、バスシステムは、制御信号の伝送のために用いられることが好ましい。
【0005】
上で説明したインフラストラクチャは、ここで、第1の制御ユニット136から第2の制御ユニット138への車輪回転速度情報項目のコピー及び伝送が、ハードウェア及び特に対応するライン接続に関する追加の費用を伴うという欠点を有する。更に、制御ユニット136及び138の直接接続の場合において、例えば対応するエネルギー供給部の不具合のためにブレーキ回路のうちの1つに障害が発生した場合、この障害が、実際には影響を受けていない制御ユニットにも直接影響を及ぼすリスクが存在する。
【0006】
更に、説明したインフラストラクチャにおいて、中央制御ユニット136及び138は、とりわけ、閉ループABS制御機能等の閉ループブレーキ制御機能を実施するためにも用いられる。ここで、制御装置のうちの1つが故障した場合、影響を受ける車輪ブレーキの閉ループABS制御機能は残りの制御装置に移管されなければならない。かかる混乱のない移管は極めて複雑である。最後に、説明したブレーキシステムは、用いられるバスシステムが閉制御ループの速度に悪影響を及ぼすデッドタイムを生じさせるため、実施されるブレーキ調整機能の性能に関して欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これとは対照的に、本発明は、先行技術の上で説明した欠点を克服する改善されたブレーキシステムを創出する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
目的は、請求項1に記載のようなブレーキシステムによって達成される。従属クレームは好ましい改良に関している。
【0009】
少なくとも2つの電気機械式車輪ブレーキと、中央制御ユニットとを有するブレーキシステムであって、各電気機械式車輪ブレーキは、それぞれの車輪ブレーキによって車両車輪に作用する減速モーメントを制御するための車輪固有制御ユニットを有し、ブレーキシステムは、更に、対応する車両車輪の車輪回転速度を説明する車輪回転速度情報項目の確認のために、車両車輪毎に少なくとも1つの車輪回転速度センサを有し、中央制御ユニットは、制御信号の交換のためにデータバスを介して車輪ブレーキの車輪固有制御ユニットに接続される、ブレーキシステムにおいて、本発明によれば、電気機械式車輪ブレーキを備える車両車輪の車輪回転速度センサは、それぞれの場合において、確認した車輪回転速度情報項目の伝送のために、それぞれの車両車輪に配置される電気機械式車輪ブレーキの車輪固有制御ユニットに直接接続され、車輪固有制御ユニットは、それぞれの場合において、受信した車輪回転速度情報項目と中央制御ユニットから受信する制御信号とに基づいて、車輪固有制御ユニットにそれぞれ割り当てられる車輪ブレーキによって、車輪ブレーキにそれぞれ割り当てられる車両車輪に作用する減速モーメントを制御するよう構成される、ことが提供される。
【0010】
ここで、特に、閉ループブレーキ制御機能、特に閉ループ車輪スリップ制御が、車輪固有制御ユニットによる減速モーメントの制御により実施されることが提供されてもよい。この目的のために、制御信号は特に車両の基準速度を含むことが提供されてもよい。この基準速度を関連する車両車輪の現在の車輪回転速度と比較することによって、車輪固有制御ユニットは、車両車輪のスリップを確認することができ、それに応じて、車輪ブレーキの制動力の閉ループ制御により、車輪ブレーキによって付与される減速モーメントの閉ループ制御を実行することができる。
【0011】
ここで、かかるインフラストラクチャは、先行技術から公知のブレーキシステムに対して多くの利点を有する。
【0012】
第1に、車輪回転速度センサは、極めて短いラインを介して車輪ブレーキの車輪固有制御ユニットに直接接続することができ、この制御ユニットは、通常、車両車輪の領域にも配置され、これは、公知のブレーキシステムに対して材料及びコストの節約を伴う。更に、車輪回転速度情報項目は、対応する閉ループ車輪スリップ制御のダイナミクスが先行技術に対して改善されるように、略遅延なく車輪固有制御ユニットに利用可能である。
【0013】
ここで、一実施形態において、更に、車輪固有制御ユニットは、車輪回転速度センサからそれぞれ受信する車輪回転速度情報項目を、データバスを介して中央制御ユニットに送信することが提供される。これは、ひいては、車輪固有制御ユニットと中央制御ユニットとの間に追加の接続を必要としないように、データバスの形態の既存のインフラストラクチャが車輪回転速度情報項目の伝送のために利用されるという利点を有する。更に、制御信号、車輪回転速度情報項目は、従って、特に車両の基準速度の特定及び提供が促進されるように、極めて迅速に中央制御ユニットに提供することができる。
【0014】
代替として又は追加として、更なる実施形態において、車輪固有制御ユニットのうちの少なくとも1つは、直接データ接続を介して中央制御ユニットに接続され、受信した車輪回転速度情報項目を、直接データ接続を介して中央制御ユニットに提供することが提供される。従って、送信がもはやデータバス及びデータバスを介する伝送に伴う不感時間に拘束されないため、車輪回転速度情報項目をより迅速に中央制御ユニットに提供することが可能になる。これは、強い減速の場合において、前輪が制動力の大部分を付与し、従って、高速閉ループ車輪スリップ制御が特にこれらの車輪において必要とされる場合であるため、特に、車輪固有制御ユニットが車両の前輪の車輪ブレーキに対応して取り付けられている場合に有利であってもよい。
【0015】
中央制御ユニットへの車輪回転速度情報項目の提供を促進するために、更なる実施形態において、車輪回転速度センサのうちの少なくとも1つが、車両車輪に割り当てられる車輪ブレーキの車輪固有制御ユニットに接続され、また、確認された車輪回転速度情報項目の伝送のために中央制御ユニットに接続されることが提供される。信号冗長性は、更に、車輪固有制御ユニットが故障し、車輪回転速度情報項目が、結果として、もはや伝送することができない場合であっても、車輪回転速度情報項目を中央制御ユニットに提供することができるため、このようにして生じる。
【0016】
ここで、更なる実施形態において、中央制御ユニットへの車輪回転速度情報項目の提供は、車両車輪のうちの少なくとも1つに配置される2つの車輪回転速度センサによって更に促進することができ、車輪回転速度センサの1つは中央制御ユニットに接続され、他の車輪回転速度センサは、確認された車輪回転速度情報項目の伝送のために、車両車輪に割り当てられる車輪ブレーキの車輪固有制御ユニットに接続される。かかる構成の更なる利点は、車輪の車輪回転速度センサの1つが故障した場合であっても、車輪回転速度の特定、その結果として減速モーメントの閉ループ制御が依然として可能であることにある。ここで、車両車輪の両方の車輪回転速度センサは、共通のハウジング内に収容されるが、互いにガルバニックに絶縁されることが好ましい。
【0017】
更なる実施形態において、更に、車輪固有制御ユニットが、それぞれの場合において、それぞれ確認された車輪回転速度情報の交換のために、ブレーキシステムの少なくとも1つの更なる車輪固有制御ユニットに直接接続されることが提供される。
【0018】
車輪固有制御ユニット間の車輪回転速度情報項目の通信のために、特にバスシステム、好ましくは車輪固有制御ユニット間を通るデータ接続ラインの形態を用いてもよい。このようにして、中央制御ユニットが故障した場合、車輪固有制御ユニットは、車輪ブレーキによって付与される減速モーメントの閉ループ制御も可能に残るように、車輪回転速度情報項目が車輪固有制御ユニット間で交換され、車輪速度が、それぞれの場合において、独立して計算されることによって、車両の基準速度を独立して確認することができる。
【0019】
ここで、ブレーキシステムのフェイルセーフ性を改善するための更なる実施形態において、更に、ブレーキシステムは、車両運転者によって操作された場合、操作に対応するブレーキ要求情報項目を出力するよう構成されるブレーキ作動ユニットを有し、ブレーキ作動ユニットは、ブレーキ要求情報項目の伝送のために、車輪固有制御ユニットのうちの少なくとも1つに直接接続されることが提供される。ここで、特に、ブレーキ作動ユニットは、車両運転者のブレーキ要求を検出するための2つの互いに独立したセンサを有し、センサのうちの第1のものはブレーキシステムの中央制御ユニットに直接接続される一方で、センサのうちの第2のものは車輪固有制御ユニットのうちの1つに直接接続されることが提供されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
従って、中央制御ユニットの故障を完全に補償することができるように、ブレーキ要求又は対応するブレーキ要求情報項目を車輪固有制御ユニットによって直接処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるブレーキシステムの略図である。
図2】本発明によるブレーキシステムの異なる変形例の略図である。
図3】本発明によるブレーキシステムの異なる変形例の略図である。
図4】本発明によるブレーキシステムの異なる変形例の略図である。
図5】本発明によるブレーキシステムの異なる変形例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるブレーキシステムの好ましい改良を図面に基づいて以下で詳細に説明する。ここで、図2図5は、本発明によるブレーキシステムの異なる変形例の略図である。以下の説明において、類似又は同一の特徴を同じ参照名称によって表す。
【0023】
図1のブレーキシステムと同様に、図2に示すブレーキシステム100は、それぞれの場合において、それらが配置される車両車輪110、112、114、及び116に減速モーメントを付与するよう構成される4つの電気機械式車輪ブレーキ102、104、106、及び108を有している。ここで、車輪ブレーキ102、104、106、及び108は、それぞれの場合において、1つの車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124を有しており、これらの車輪固有制御ユニットは、対応する車両車輪110、112、114、及び116に作用する付与された制動力及びその結果としての減速モーメントに関して、それぞれ関連する車輪ブレーキ102、104、106、及び108を制御するよう構成されている。更に、各車両車輪110、112、114、及び116において、それぞれの場合において、対応する車両車輪110、112、114、116の現在の車輪回転速度を特定するよう構成される1つの車輪回転速度センサ140、142、144、及び146が配置されている。
【0024】
更に、図2のブレーキシステム100は、また、2つのセンサ132及び134によって、ブレーキ作動ユニット128に割り当てられるブレーキペダル130が作動した場合、対応する作動情報項目を出力するブレーキ作動ユニット128も有する。ここで、図示する実施例において、第1のセンサ132はストロークセンサであり、第2のセンサ134は力センサである。図1に関して上で検討したブレーキシステム100とは対照的に、図2のブレーキシステム100は、しかし、単一の中央制御ユニット148のみを有している。ここで、中央制御ユニット148は、検出された作動情報項目の送信のために力センサ132に接続されている。更に、中央制御ユニット148は、星形構成である第1のバスシステム150を介して直接、各車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124に接続される。
【0025】
車輪回転速度センサ140、142、144、及び146は、更に、確認された車輪回転速度情報項目の伝送のために、それぞれの場合において、直接、対応する車輪110、112、114、及び116の車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124に接続されている。従って伝達される車輪回転速度情報項目は、次いで、中央制御ユニット148が、車輪ブレーキ102、104、106、108のための制御信号の確認のために車輪回転速度情報項目を用いることができるように、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124によって中央制御ユニット148に送信される。例えば、ここで、中央制御ユニット148が、受信した車輪回転速度情報項目から車両の基準速度を確認し、前記基準速度を制御信号として、バスシステム150を介して車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124に送信することが提供されてもよい。
【0026】
車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、次いで、直接接続された車輪回転速度センサ140、142、144、及び146から得られる車輪回転速度情報項目と、中央制御ユニット148の制御信号とから車輪スリップを確認し、車輪スリップが所定の限度内に留まるように、必要に応じて車輪ブレーキ102を作動させるよう構成されている。
【0027】
更に、図示するブレーキシステム100において、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、それぞれの場合において、第2のバスシステム152を介して互いに接続されている。ここで、バスシステム152は、各車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124が、多くても2つの更なる車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124に接続され、結果として接続された車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124のチェーンを生じるように構成される。従って、図示する改良において、左前輪110の車輪ブレーキ102の車輪固有制御ユニット118は、左後輪114の車輪ブレーキ106の車輪固有制御ユニット122に排他的に直接接続される。左後輪114の車輪ブレーキ106の車輪固有制御ユニット122は、順に、右後輪116の車輪ブレーキ108の車輪固有制御ユニット124に接続され、これは、順に、右前輪112の車輪ブレーキ104の車輪固有制御ユニット120に接続されている。最後に、右前輪112の車輪ブレーキ104の車輪固有制御ユニット120も、作動信号の伝送のためにブレーキ作動ユニット128の力センサ134に接続されている。
【0028】
第2のバスシステム152を介して接続されるネットワークによって、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、それぞれ受信した車輪回転速度情報項目を更なる車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124と交換し、例えば中央制御ユニット148が故障した場合に、こうして得られた車輪回転速度情報項目から車両の基準速度を独立して特定するよう構成されている。ここで、更に、バスシステム152をブレーキ作動ユニット128の力センサ134に接続することによって、中央制御ユニット148の故障を完全に補償することができるように、ブレーキ要求を確認することが可能である。
【0029】
ここで、説明したバスシステム100は、車輪ブレーキ102、104、106、及び108によって車輪110、112、114、及び116に作用する減速モーメントの閉ループ制御が分散方式で行われ、この目的のために必要な車輪回転速度情報項目が極めて短い信号経路を介して車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124に提供されて、高い閉ループ制御ダイナミクスを可能にするという利点を有している。更に、第2のバスシステム152の使用により、フォールバックレベルもブレーキシステムの説明した構成によって実施することができるように、中央制御ユニット148の故障を補償することができる。ここで、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、システムの1つのコンポーネントにおける不具合がブレーキシステム100の全体としての故障につながらないように、電気的に分離されていることが好ましい。個々の車輪ブレーキ102、104、106、又は108が故障した場合でも、少なくとも残りの3つの車輪ブレーキ102、104、106、又は108によって、閉ループ車輪スリップ制御を行うことができる。
【0030】
図3は、図2に関して上で説明したブレーキシステム100の若干変更した変形例の略図を示している。ここで、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、それぞれの場合において、直接データ接続154を介して中央制御ユニット148に直接、追加として接続されている。ここで、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、それぞれの車輪回転速度センサ140、142、144、及び146から受信される車輪回転速度情報項目を、直接データ接続154を介して中央制御ユニット148に直接送信することが提供される。この目的のために、例えば、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124が、それぞれ受信した車輪回転速度情報項目を、それらを受信した直後にコピーし、これらを遅延なく直接データ接続154を介して送信することが提供されてもよい。中央制御ユニット148によって生成される制御信号は、しかし、更に、第1のバスシステム150を介して車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124に送信されることが好ましい。車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124を車輪回転速度情報項目の伝送のために中央制御ユニット148に直接接続することによって、車輪回転速度情報項目の中央制御ユニット148への提供を促進することができ、これは全体として、実装されるブレーキ制御機能のダイナミクスを改善する。
【0031】
中央制御ユニット148への車輪回転速度情報項目の提供を促進する働きをする、図2に関して検討したブレーキシステム100の更なる変形例を図4に示している。ここで、図2に示すブレーキシステム100とは対照的に、追加として、それぞれの場合において、1つの追加の車輪回転速度センサ156、158、160、及び162が車両車輪110、112、114、及び116毎に設けられ、同様に、関連する車両車輪110、112、114、116の車輪回転速度を確認するよう構成されることが提供される。ここで、追加の車輪回転速度センサ156、158、160、及び162は、それぞれの場合において、確認された車輪回転速度が理想的にはリアルタイムで中央制御ユニット148に提供されるように、中央制御ユニット148に直接接続されている。
【0032】
中央制御ユニット148への車輪回転速度情報項目の、説明したより迅速な提供とは別に、図4に示すブレーキシステム100の改良は更に、車輪回転速度センサ140、142、144、又は146のうちの1つが故障した場合であっても、必要な車輪回転速度情報項目を残りの車輪回転速度センサ156、158、160、又は162によって提供し続けることができるため、影響を受けた車両車輪110、112、114、又は116において閉ループ車輪スリップ制御が可能なままであるという利点を有する。
【0033】
図5に示すブレーキシステム100の代替の改良において、追加の車輪回転速度センサ156、158、160、及び160は、それぞれ既存の車輪回転速度センサ140、142、144、及び146に組み込まれている。従って、4つの車輪回転速度センサ140、142、144、及び146から進んで、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124への直接接続と中央制御ユニット148への直接接続の両方を、リアルタイムでの車輪回転速度情報項目の提供がこの場合においても可能であるように、車輪回転速度情報項目の伝送のために確立することが可能である。
【0034】
ここで、この改良において車輪回転速度センサ140、142、144、及び146のハウジング内に組み込まれている車輪回転速度センサ156、158、160、及び160は、それぞれの場合において、車輪回転速度センサの相互の影響が回避されるように、同じハウジング内に配置される車輪回転速度センサ140、142、144、又は146からガルバニックに分離されている。
【0035】
ここで、図4及び5の変形例において、更に、中央制御ユニット148への車輪回転速度センサ配置の直接接続にも関わらず、車輪固有制御ユニット118、120、122、及び124は、更に、信号送信の冗長性が生じるように、受信した車輪回転速度情報項目を中央制御ユニット148に送信することが提供されてもよい。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.少なくとも2つの電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)と、中央制御ユニット(148)とを有するブレーキシステム(100)であって、
各電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)は、前記それぞれの車輪ブレーキ(102、104、106、108)によって車両車輪(110、112、114、116)に作用する減速モーメントを制御するための車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)を有し、
前記ブレーキシステム(100)は、更に、前記対応する車両車輪(110、112、114、116)の車輪回転速度を説明する車輪回転速度情報項目の確認のために、車両車輪(110、112、114、116)毎に少なくとも1つの車輪回転速度センサ(140、142、144、146)を有し、
前記中央制御ユニット(148)は、制御信号の交換のためにデータバス(150)を介して前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に接続され、
電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)を備える車両車輪(110、112、114、116)の前記車輪回転速度センサ(140、142、144、146)は、それぞれの場合において、前記確認した車輪回転速度情報項目の伝送のために、前記それぞれの車両車輪(110、112、114、116)に配置される前記電気機械式車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に直接接続され、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)は、それぞれの場合において、前記受信した車輪回転速度情報項目と前記中央制御ユニット(148)から受信する前記制御信号とに基づいて、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)にそれぞれ割り当てられる前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)によって、前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)にそれぞれ割り当てられる前記車両車輪に作用する減速モーメントを制御するよう構成される、ことを特徴とする、
ブレーキシステム(100)。
2.前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)は、前記車輪回転速度センサ(140、142、144、146)からそれぞれ受信する前記車輪回転速度情報項目を、前記データバス(150)を介して前記中央制御ユニット(148)に送信することを特徴とする、請求項1に記載のブレーキシステム(100)。
3.前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)のうちの少なくとも1つは、直接データ接続(154)を介して前記中央制御ユニット(148)に接続され、前記受信した車輪回転速度情報項目を、前記直接データ接続(154)を介して前記中央制御ユニット(148)に提供することを特徴とする、上記1.又は2.に記載のブレーキシステム(100)。
4.前記車輪回転速度センサ(140、142、144、146)のうちの少なくとも1つは、前記車両車輪(110、112、114、116)に割り当てられる前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に接続され、また、前記確認された車輪回転速度情報項目の前記伝送のために前記中央制御ユニット(148)に接続されることを特徴とする、上記1.~3.のいずれか一つに記載のブレーキシステム(100)。
5.2つの車輪回転速度センサ(140、142、144、146、156、158、160、162)は前記車両車輪(110、112、114、116)のうちの少なくとも1つに配置され、前記車輪回転速度センサ(156、158、160、162)の1つは前記中央制御ユニット(148)に接続され、他の車輪回転速度センサ(140、142、144、146)は、前記確認された車輪回転速度情報項目の前記伝送のために、前記車両車輪(110、112、114、116)に割り当てられる前記車輪ブレーキ(102、104、106、108)の前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に接続されることを特徴とする、上記1.~4.のいずれか一つに記載のブレーキシステム(100)。
6.前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)は、それぞれの場合において、前記それぞれ確認された車輪回転速度情報項目の交換のために、前記ブレーキシステム(100)の少なくとも1つの更なる車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)に直接接続されることを特徴とする、上記1.~5.のいずれか一つに記載のブレーキシステム(100)。
7.前記ブレーキシステム(100)は、車両運転者によって操作された場合、前記操作に対応するブレーキ要求情報項目を出力するよう構成されるブレーキ作動ユニット(128)を有し、前記ブレーキ作動ユニット(110)は、前記ブレーキ要求情報項目の前記伝送のために、前記車輪固有制御ユニット(118、120、122、124)のうちの少なくとも1つに直接接続されることを特徴とする、上記6.に記載のブレーキシステム(100)。
図1
図2
図3
図4
図5