(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】イオン注入システムのための熱的に絶縁された捕捉フィーチャ
(51)【国際特許分類】
H01J 27/08 20060101AFI20240416BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20240416BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2022556512
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 US2021021052
(87)【国際公開番号】W WO2021194725
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-21
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン, アダム エム.
(72)【発明者】
【氏名】タイ, ジョーダン ビー.
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0213684(US,A1)
【文献】特開2012-221629(JP,A)
【文献】特開2019-087531(JP,A)
【文献】特表2017-523562(JP,A)
【文献】特開平10-021867(JP,A)
【文献】特表2010-511270(JP,A)
【文献】実開平03-077354(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0139739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357151(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0124903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/08
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源において使用するための電極であって、
前記イオン源内に配置されるように適合された電極質量体であって、開口を介して当該電極質量体の外部と連通する
囲まれた内部空洞を有
し、
前記開口は前記電極質量体を貫通して延在していない、電極質量体、並びに
ポスト及びフレア状ヘッドを有する電極ステムであって、前記フレア状ヘッドが、前記
囲まれた内部空洞内に配置され、前記フレア状ヘッドの大きさが、前記開口を通過することができないほどの大きさであ
り、
前記フレア状ヘッドは前記囲まれた内部空洞内に捕捉的に保持される、電極ステム
を備えている電極。
【請求項2】
前記電極がリペラを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記フレア状ヘッドがディスクを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記フレア状ヘッドが複数のスポークを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記フレア状ヘッドが、ドーム形状、逆ドーム形状、ボール、テーパ状コーン、又は正方形を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記電極ステムの断面面積が、その長さに沿って減少する、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記電極ステムと前記電極質量体とが互いに対して回転できないように、キーイングフィーチャをさらに備えている、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
イオン注入システムにおいて使用するためのワークピースホルダであって、
開口を介してプラテンの外部と連通する内部空洞を有する前記プラテン、並びに
シャフト及びフレア状ヘッドを有する係留ファスナであって、前記フレア状ヘッドが、前記内部空洞内に配置され、前記フレア状ヘッドの大きさが、前記開口を通過することができないほどの大きさである、係留ファスナ
を備えているワークピースホルダ。
【請求項9】
前記プラテンとベースとの間に間隔を設けるために、前記シャフト上に突出リングが配置される、請求項8に記載のワークピースホルダ。
【請求項10】
前記プラテン及び前記係留ファスナが、セラミックで構成されている、請求項8に記載のワークピースホルダ。
【請求項11】
前記係留ファスナが、前記プラテンの表面に対して直角をなして前記内部空洞から脱出する、請求項8に記載のワークピースホルダ。
【請求項12】
ベースであって、当該ベースが、貫通孔を有し、前記貫通孔を通って前記係留ファスナの前記シャフトが通過するベースをさらに備え、前記シャフトを前記ベースに固定するための保持ナットをさらに備えている、請求項8に記載のワークピースホルダ。
【請求項13】
前記プラテンと前記ベースとの間の分離を維持するために、前記係留ファスナを囲むスペーサをさらに備えている、請求項12に記載のワークピースホルダ。
【請求項14】
前記係留ファスナが、前記プラテンの表面に対してある角度で前記内部空洞を脱出し、前記角度が直角ではない、請求項8に記載のワークピースホルダ。
【請求項15】
前記フレア状ヘッドが、シリンダを備えている、請求項8に記載のワークピースホルダ。
【請求項16】
半導体処理システムであって、
イオン源、及び
構成要素であって、
内部空洞を有する本体であって、前記内部空洞が、開口を介して当該本体の外部と連通する、本体と、
フレア状ヘッドを有する係留ファスナであって、当該フレア状ヘッドが、前記内部空洞内に配置され、当該フレア状ヘッドの大きさが、前記開口を通過できないほどの大きさである、係留ファスナと
を備えた構成要素
を備えている半導体処理システム。
【請求項17】
前記構成要素が、取り付け壁又はチャンバ壁を備えている、請求項16に記載の半導体処理システム。
【請求項18】
ライナ及び嵌合ファスナをさらに備え、前記嵌合ファスナを前記係留ファスナに取り付けることによって、前記ライナが、前記取り付け壁又は前記チャンバ壁に近接して保持される、請求項17に記載の半導体処理システム。
【請求項19】
前記構成要素が、ライナを含む、請求項16に記載の半導体処理システム。
【請求項20】
ねじ孔を有する壁をさらに備え、前記係留ファスナを前記ねじ孔内にねじ込むことによって、前記ライナが、前記壁に近接して保持される、請求項19に記載の半導体処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、熱的に絶縁された捕捉フィーチャに関し、より具体的には、イオン注入システムを用いる高温用途に使用するための捕捉フィーチャに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体処理設備で使用されるイオンを生成するために、様々な種類のイオン源が使用され得る。例えば、フリーマン型イオン源(Freeman ion source)は、チャンバの一端から反対側の端まで通されたフィラメントに電流を供給することによって作動する。バーナス型イオン源(Bernas ion source)及びカルトロン型イオン源(Calutron ion source)は、チャンバの一端の近くに配置されたフィラメントに電流を供給することによって作動する。これらの源では、フィラメントは熱イオン電子(thermionic electron)を放出し、この熱イオン電子はチャンバ内に放出される。これらの電子は、供給ガスと衝突し、プラズマを発生させる。
【0003】
もう1つのタイプのイオン源は、間接加熱カソード(IHC:indirectly heated cathode)イオン源である。IHCイオン源は、カソードの背後に配置されたフィラメントに電流を供給することによって作動する。フィラメントは熱イオン電子を放出し、これらの熱イオン電子は、カソードに向かって加速し、カソードを加熱し、次いでカソードに、イオン源のチャンバ内に向けて電子を放出させる。フィラメントはカソードによって保護されるので、バーナス型イオン源に比べて寿命が延びる場合がある。カソードは、チャンバの一端に配置される。リペラは、典型的に、カソードとは反対側のチャンバの一端に配置される。カソード及びリペラをバイアスさせることにより、電子を跳ね返し、チャンバの中心に向けて戻すことができる。幾つかの実施形態では、電子をチャンバの内部にさらに閉じ込めるために電界が使用される。
【0004】
これらのイオン源の特定の実施形態では、側部電極が、チャンバの1つ又は複数の壁にさらに配置される。これらの側部電極を正又は負にバイアスさせて、イオン及び電子の位置を制御し、チャンバの中心付近のイオン密度を増加させることができる。抽出開孔が、チャンバの中心近くの別の側部に沿って配置される。この抽出アパーチャによってイオンを抽出することができる。
【0005】
イオンを発生させたとき、所望のイオンの種が最適温度に影響を及ぼす場合がある。例えば、ある特定の種については、イオン源を比較的低温に維持することが好ましい場合がある。炭素系種のイオン化などの他の実施形態では、チャンバ内の堆積を最小限に抑えるためにより高い温度が望ましい場合もある。
【0006】
チャンバ内を高温に維持することが課題となり得る。アークチャンバ内の構成要素の温度は、多くの場合、フィラメントによって放散される電力の量によって制御されるが、各構成要素の温度は、放出される熱放射の量と、嵌合構成要素を介してこれらの構成要素から熱を奪う伝導量によって制限される。例えば、リペラ及び電極は、イオン源の外部に配置されたクランプであって、イオン源を所定の位置に保持するために使用されるクランプに取り付けられ得る。これらのクランプは、金属から構成されてもよく、アークチャンバベースのような冷却構成要素に取り付けられてもよい。この熱経路は、リペラ及び電極からの熱の逃げ道をつくることになり、リペラ及び電極が所望よりも低い温度で作動することになる。
【0007】
さらに、処理されるワークピースは、プラテン上に配置されてもよい。特定の実施形態では、プラテンを高温に維持することが有益であり得る。しかしながら、プラテンは、大型のベースとつながっていることが多い。このベースは、冷却されることが多く、プラテンから熱を奪う。さらに、高温の構成要素と低温の構成要素とが出会う場所は、応力がかなり集中する場合があり、これが故障を引き起こすことがある。
【0008】
したがって、イオン注入システム内の部品間の熱伝導を最小限に抑えるシステムが有益であり得る。このシステムは、部品を高温に維持するための電力を低減し、温度勾配を減らすことができ、より堅牢な設計を可能にする。さらに、当該システムが、これらの部品間の機械的接続も可能にすると有利である。このようにして、熱伝導を低減しながら、部品同士を機械的に取り付けることができる。
【発明の概要】
【0009】
イオン注入システムの様々な構成要素において配置された、熱的に絶縁された捕捉フィーチャが開示される。リペラ及び側部電極などの電極は、捕捉フィーチャを有するように構成されてもよく、捕捉フィーチャは電極ステムとして機能する。電極ステムのフレア状ヘッドを保持する内部空洞内に生じた間隙により、電極ステムと電極質量体との物理的接触は最小限となる。このようにして、伝導が低減されるので、電極質量体の温度は、物理的接触が最小限とならない場合に可能となる温度に比べて、高く維持することができる。さらに、この概念をワークピースホルダに適用することができる。例えば、セラミックプラテンは、プラテンをベースに固定するために使用される1つ又は複数の係留ファスナを有するように製造される。これにより、プラテンとベースとの間の熱伝導を最小限に抑え、改善された機械的接続を設けることができる。両方の場合において、捕捉フィーチャは高真空状態にある。これは、接続されている物体間の間隙にガスが存在しないことを意味する。2つの構成要素の間にガスが存在しないことにより、対流による熱伝達がなくなる。
【0010】
一実施形態によれば、イオン源において使用するための電極が開示される。電極は、イオン源内に配置されるように適合された電極質量体であって、開口を介して電極質量体の外部と連通する内部空洞を有する、電極質量体と、ポスト及びフレア状ヘッドを有する電極ステムであって、フレア状ヘッドが、内部空洞内に配置され、フレア状ヘッドの大きさが、開口を通過することができないほどの大きさである、電極ステムとを備えている。特定の実施形態では、電極は、リペラを含む。特定の実施形態では、フレア状ヘッドは、ディスクを含む。特定の実施形態では、フレア状ヘッドは、複数のスポークを含む。特定の実施形態では、フレア状ヘッドは、ドーム形状、逆ドーム形状、ボール、テーパ状コーン、又は正方形を含む。幾つかの実施形態では、電極ステムの断面面積が、その長さに沿って減少する。幾つかの実施形態では、電極は、電極ステムと電極質量体とが互いに対して回転できないように、キーイングフィーチャを備えている。
【0011】
別の実施形態によれば、イオン注入システムにおいて使用するためのワークピースホルダが開示される。ワークピースホルダは、開口を介してプラテンの外部と連通する内部空洞を有するプラテンと、シャフト及びフレア状ヘッドを有する係留ファスナであって、フレア状ヘッドが、内部空洞内に配置され、フレア状ヘッドの大きさが、開口を通過することができないほどの大きさである、係留ファスナとを備えている。特定の実施形態では、プラテンとベースとの間に間隔を設けるために、シャフト上に突出リングが配置されている。幾つかの実施形態では、プラテン及び係留ファスナは、セラミックで構成されている。特定の実施形態では、係留ファスナは、プラテンの表面に対して直角をなして内部空洞から脱出する。幾つかの実施形態では、ワークピースホルダは、ベースを備え、ベースは貫通孔を有し、貫通孔を通って係留ファスナのシャフトが通過し、ワークピースホルダは、シャフトをベースに固定するための保持ナットをさらに備えている。特定の実施形態では、ワークピースホルダは、プラテンとベースとの間の分離を維持するために、係留ファスナを囲むスペーサを備えている。幾つかの実施形態では、係留ファスナは、プラテンの表面に対してある角度で内部空洞を脱出し、当該角度は直角ではない。幾つかの実施形態では、フレア状ヘッドは、シリンダを備えている。
【0012】
別の実施形態によれば、半導体処理システムが開示される。半導体処理システムは、イオン源と、構成要素であって、内部空洞を有する本体であって、内部空洞が、開口を介して本体の外部と連通する、本体、及びフレア状ヘッドを有する係留ファスナであって、フレア状ヘッドが、内部空洞内に配置され、フレア状ヘッドの大きさが、開口を通過できないほどの大きさである、係留ファスナを備えた構成要素とを備えている。特定の実施形態では、構成要素は、取り付け壁又はチャンバ壁を備えている。特定のさらなる実施形態では、半導体処理システムは、ライナ及び嵌合ファスナを備え、嵌合ファスナを係留ファスナに取り付けることによって、ライナは、取り付け壁又はチャンバ壁に近接して保持される。別の実施形態では、構成要素は、ライナを含む。特定のさらなる実施形態では、半導体処理システムは、ねじ孔を有する壁を備え、係留ファスナをねじ孔内にねじ込むことによって、ライナは、壁に近接して保持される。
【0013】
本開示をより良く理解するために、添付の図面を参照する。これらの図面は、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る、本明細書に記載されたリペラ及び電極の設計を利用し得るイオン源である。
【
図4B】別の実施形態に係るステムの斜視図である。
【
図4C】別の実施形態に係るステムの断面図及び斜視図である。
【
図9A-9B】一実施形態に係るワークピースホルダを示す。
【
図10】サーマルスペーサを有するワークピースホルダを示す。
【
図11A-11D】別の実施形態に係るワークピースホルダを示す。
【
図12A-12C】種々の実施形態に係るチャンバ壁及びライナを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述のように、間接加熱カソード(IHC)イオン源などのイオン源を、特定の状況において高温で作動させることは有益であり得る。しかしながら、リペラ及び電極は、かなりの量の熱をチャンバから放出させる。本開示は、この熱損失を最小限に抑える新しいリペラ及び電極の設計を説明する。
【0016】
図1は、これらの問題を克服した、リペラ120及び側部電極10a、130bを含むイオン源10を示す。
図2は、
図1のイオン源の断面を示す。イオン源10は、間接加熱カソード(IHC)イオン源であってもよい。イオン源10は、チャンバ100を含み、チャンバ100は、2つの対向する端部、及びこれらの端部に接続する壁101を備える。これらの壁101は、側壁104、抽出プレート102、及び抽出プレート102に対向する底壁103を含む。チャンバ100の壁101は、導電性材料で構成され得、互いに電気的に通じ得る。カソード110は、チャンバ100の第1の端部105においてチャンバ100内に配置される。フィラメント160は、カソード110の背後に配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と通じている。フィラメント電源165は、フィラメント160が熱イオン電子を放出するように、フィラメント160に電流を流すように構成されている。フィラメントバイアス電源115は、フィラメント160をカソード110に対して負にバイアスするため、これらの熱イオン電子は、フィラメント160からカソード110に向けて加速させられ、これらの熱イオン電子がカソード110の背面に衝突すると、カソード110を加熱する。フィラメントバイアス電源115は、例えば、カソード110の電圧よりも負に、200Vから1500Vの間の電圧を有するように、フィラメント160をバイアスし得る。次いで、カソード110は、その前面の熱イオン電子をチャンバ100内へ放出する。
【0017】
したがって、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を供給する。フィラメントバイアス電源115は、カソード110よりも負になるようにフィラメント160をバイアスし、その結果、電子がフィラメント160からカソード110に向けて引き寄せられる。特定の実施形態では、カソード110は、カソードバイアス供給源125とも通じている。他の実施形態では、カソード110は接地されてもよい。特定の実施形態では、チャンバ100は、電気接地に接続される。特定の実施形態では、壁101が他の電源のための接地基準を設ける。
【0018】
この実施形態では、リペラ120が、カソード110とは反対側のチャンバ100の第2の端部106でチャンバ100内に配置される。名称が示すように、リペラ120は、カソード110から放出された電子をチャンバ100の中心に向けて跳ね返す(repel)働きをする。例えば、特定の実施形態では、リペラ120は、電源と通じ得る。他の実施形態では、リペラ120は、チャンバ100に対して浮遊してもよい。言い換えると、浮動時には、リペラ120は電源又はチャンバ100に電気的に接続されていない。この実施形態では、リペラ120の電圧は、カソード110の電圧に近い電圧に浮動する傾向がある。
【0019】
特定の実施形態では、磁界190がチャンバ100内で発生する。この磁界は、1つの方向に沿って電子を閉じ込めることを意図されている。磁界190は、典型的に、第1の端部105から第2の端部106まで、側壁104に対して平行に延びる。例えば、電子は、カソード110からリペラ120への方向(すなわち、y方向)に平行なカラム内に閉じ込められ得る。したがって、電子は、y方向に移動する電磁力の影響をまったく受けない。しかし、他の方向への電子の移動は、電磁力の影響を受ける場合がある。
【0020】
図1に示された実施形態では、側部電極がチャンバ100内に位置するように、第1の側部電極130a及び第2の側部電極130bは、チャンバ100の側壁104に配置され得る。側部電極は、それぞれ、浮遊していてもよく、又は電源と通じていてもよい。
図2は、
図1のイオン源10の断面図を示す。この図では、カソード110は、イオン源10の第1の端部105に対して示されている。第1の側部電極130a及び第2の側部電極130bは、チャンバ100の互いに対向する壁101に示されている。磁界190は、Y方向に、ページ外に向かうように示されている。特定の実施形態では、絶縁体を使用することによって、電極をチャンバ100の壁101から分離することができる。
【0021】
カソード110、リペラ120、第1の側部電極130a、及び第2の側部電極130bの各々は、金属などの導電性材料から製作されている。これらの構成要素の各々は、壁101から物理的に分離され得る。
【0022】
抽出プレート102には、抽出アパーチャ140が配置され得る。
図1では、抽出アパーチャ140は、X-Y平面と平行な(ページと平行な)側面に配置されている。さらに、図示されていないが、イオン源10は、イオン化されるガスがチャンバ100に導入されるガス入口も備えている。
【0023】
コントローラ180は、電源の1つ又は複数と通じることができ、これにより、これらの電源によって供給される電圧又は電流を修正することができる。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、専用コントローラ、又は別の適切な処理ユニットといった処理ユニット181を含み得る。コントローラ180は、半導体メモリ、磁気メモリ、又は別の適切なメモリといった非一時的記憶要素を含み得る。この非一時的記憶要素は、コントローラ180が本明細書に記載された機能を実行することを可能ならしめる命令及び他のデータを含み得る。
【0024】
動作中、電子がカソード110によって放出される。これらの電子は、チャンバ100内の磁界及び電界によって捕捉され得、それにより、供給ガスと衝突し、プラズマ150を生成する。抽出アパーチャ140を通してプラズマ150からイオンを抽出するために、チャンバ100の外側の電極を使用することができる。
【0025】
上述のように、特定の実施形態では、イオン源を高温で作動させることが有利である。こうした高温は、チャンバ100内の構成要素への材料の堆積を防止するのに役立つことができる。例えば、炭素系種をイオン化する際には、炭素が、内表面、リペラ120、及び側部電極130a、130bに蓄積する傾向がある。この堆積を最小限に抑える1つの方法は、チャンバ100内の温度、特に、リペラ120及び側部電極130a、130bの温度を上昇させることである。
【0026】
上述のように、リペラ120及び側部電極130a、130bは、チャンバベース198によって支持されている外部クランプ195(
図2を参照)に取り付けられ得る。チャンバベース198は、より低温、例えば、400℃未満であり得る。しかしながら、リペラ120及び側部電極130a、130bをチャンバ100内の温度に近い温度(600℃以上であり得る)に維持することが望ましい場合がある。
【0027】
リペラ120及び/又は側部電極130a、130bは、熱的に絶縁された係留フィーチャを有するように形成され得る。
図3は、熱的に絶縁された捕捉フィーチャを利用する電極の実施形態を示す。「電極」という用語は、リペラ120及び側部電極130a、130bの両方を包含するように用いられる。
【0028】
電極250は、電極質量体(electrode mass)200及び電極ステム210を含み得る。電極質量体200は、ディスク形状、長方形、又は任意の他の適切な形状であってもよい。内部空洞201が、電極質量体200内に配置される。内部空洞201は、開口202を介して電極質量体200の外部と連通している。
【0029】
電極ステム210は、ポスト211及びフレア状ヘッド212を有し得る。ポスト211は、真っ直ぐな円筒状のロッドであってもよい。フレア状ヘッド212は、電極質量体200の内部空洞201内に配置される。電極ステム210は、ポスト211の断面面積が開口202の断面面積よりも小さくなるようにサイズ形成される。加えて、フレア状ヘッド212は、フレア状ヘッド212の断面面積が開口202の断面面積よりも大きいようにサイズ形成される。このようにして、電極ステム210は、電極質量体200によって捕捉的に保持される。特定の実施形態では、フレア状ヘッド212と内部空洞201との間の間隙は、0.001”であり得るが、この値よりも大きくても小さくてもよい。
【0030】
さらに、特定の実施形態では、内部空洞201の容積は、フレア状ヘッド212の容積よりも大きく、その結果、ほとんど位置においてフレア状ヘッド212と電極質量体200との間に間隙が存在する。開口202が、電極ステム210が電極質量体200から脱着することを防止する限り、内部空洞201の内部形状はどんな形状であってもよい。
【0031】
特定の実施形態では、電極250は、付加製造技術を用いることによって製作されてもよい。付加製造技術は、構成要素を異なるように製造することを可能にする。従来行われているように材料を除去するのではなく、付加製造技術は、構成要素を層ごとに形成する。このような付加製造技術のうちの1つは、直接金属レーザ焼結(DMLS:Direct Metal Laser Sintering)として知られており、粉体層及びレーザを使用する。粉末の薄層が、ワークピース空間に付加される。構成要素が形成される領域においてのみ、粉末を焼結するためにレーザが用いられる。金属粉末の残部が残存して、粉体層を形成する。レーザプロセスが完了した後、金属粉末の別の薄層が、既存の粉体層の上に付加される。特定の位置を焼結するために、レーザが再び使用される。このプロセスは、任意の回数繰り返してもよい。
【0032】
DMLSは1つの技術であるが、他にも多くの技術がある。例えば、金属バインダ噴射(metal binder jetting)は、粉末を焼結するためにレーザを使用するのではなく、構成要素が形成される領域に液体バインダを塗布する点を除いて、DMLSと似ている。付加製造の別の例としては、電子ビームプリンティング(electron beam printing)が挙げられる。この実施形態では、金属の薄いフィラメントがノズルから押し出され、押し出されるにつれて金属を溶解するためにレーザ又は電子ビームが使用される。この実施形態では、金属は、構成要素の一部となるべき領域にのみ付加される。当然ながら、他の種類の付加製造、例えば、融解フィラメント製造に向けられたエネルギー堆積、シート積層、粉体層溶融結合、材料押出、及び液槽光重合(Vat photopolymerization)も利用することができる。
【0033】
電極ステム210が電極質量体200の内部に完全に捕捉され、いかなる組み立ても必要としないように、付加製造を使用して、一度に電極250をプリンティングするか成長させることができる。製造プロセスに応じて、電極質量体200と電極ステム210との間の小さな間隙内に捕捉された粉末を除去するために、電極250を洗浄することができる。
【0034】
図4Aは、一実施形態に係る電極ステム210の斜視図を示す。この実施形態では、フレア状ヘッド212は、ディスク213の形状をとる。このディスク213の外径は開口202の直径よりも大きく、これにより電極ステム210を捕捉状態に保つ。特定の実施形態では、ディスク213は凹状であってもよく、この場合、ディスク213は外向きに電極ステム210から離れる方向に延在する。他の実施形態では、ディスク213は、電極ステム210から外向きにのみ延在するように平面であってもよい。さらに、特定の実施形態では、ディスク213は、外周上に拡大リム214を有してもよい。
【0035】
図4Bは、第2の実施形態に係る電極ステム210の斜視図を示す。この実施形態では、フレア状ヘッド212は、複数のスポーク215を含む。
図4Bは4つのスポーク215を示しているが、スポーク215の数は本開示によって限定されない。特定の実施形態では、スポーク215は、外向きに電極ステム210から離れる方向に延在する。他の実施形態では、スポークは、平面であってもよく、電極ステム210から外向きにのみ延在してもよい。各スポークは0.1インチの幅を有し得るが、他の寸法も可能である。
【0036】
図5Aから
図5Eは、電極質量体200の内部空洞201に捕捉された状態に留まるように、電極ステム210がフレア状ヘッド212を有する他の構成を示す。
【0037】
図5Aは、フレア状ヘッド212がドーム形状である電極ステム210を示す。
【0038】
図5Bは、フレア状ヘッド212が逆ドーム形状である電極ステム210を示す。
【0039】
図5Cは、フレア状ヘッド212が円錐形状にテーパしている電極ステム210を示す。
【0040】
図5Dは、フレア状ヘッド212がボールである電極ステム210を示す。
【0041】
図5Eは、フレア状ヘッド212が正方形ブロックである電極ステム210を示す。これは、電極質量体200と電極ステム210とが互いに対して回転できないという利点を有する。
【0042】
しかしながら、電極ステム210と電極質量体200との間の相対的回転を阻止するように、他の実施形態をすべて変更することができる。例えば、キーイングフィーチャ(keying feature)216が、内部空洞201及び/又はフレア状ヘッド212に追加されてもよい。
図6は、内部空洞201の一部が切断されている実施形態を示す。これらの構成要素が互いに対して回転することができないように、フレア状ヘッド212も同様に切断される。
【0043】
これらの実施形態のすべてにおいて、電極ステム210は、真空条件においてチャンバ100内で組み立てられたときに、電極質量体200と最小限の物理的接触しかない。例えば、重力が電極質量体200を下方に押しやる場合、物理的接触は、フレア状ヘッド212の外縁の一部分のみに沿った位置に限定される場合がある。このため、電極質量体200と電極ステム210との間の熱伝導は非常に少なくなる。したがって、電極質量体200と電極ステム210との間に大きな温度差が存在する場合がある。
【0044】
電極ステム210の断面面積を減少させることによって電極ステム210の熱伝導をさらに減少させることができる。例えば、
図4Cに示すように、
図4Aと似たような電極ステム210が示されている。しかしながら、この実施形態では、電極ステム210の一部が中空であり得る。他の実施形態では、電極ステム210の断面面積を1つ又は複数の位置で低減させることができる。
【0045】
図3から
図6は、電極質量体200及び捕捉電極ステム210を例示していることに留意されたい。この構造は、リペラ120及び側部電極130a、130bに適用することができる。これらの実施形態では、側部電極質量体の形状は、リペラ質量体の形状と異なってもよい。しかしながら、内部空洞201、開口202、及びフレア状ヘッド212の構造及び機能は、上記で説明した通りである。
【0046】
特定の実施形態では、電極ステム210は、異なる機構を使用して捕捉状態が保持される。例えば、
図7Aに示されるように、電極質量体300は、フレア状の突起301を有する。この実施形態における電極ステム310は、フレア状の突起301を係留状態に保持する内部空洞311を有する。この実施形態では、フレア状の突起301は、
図4Aから
図4B及び
図5Aから
図5Eに示されるもののような任意の所望の形状であってもよい。
【0047】
図7Bは、電極質量体320が内部空洞321を有し、その内部空洞321内フレア状の突起322が配置されている実施形態を示す。電極ステム330は、フレア状の突起322を捕捉状態に保持する内部空洞331を有し、内部空洞321内に捕捉的に保持されたフレア状頭部332も有する。
【0048】
特定の実施形態では、電極ステムの全体が捕捉されていない。例えば、
図8Aに示すように、電極質量体340は、上述したものと似たような内部空洞341を有する。しかしながら、電極ステム全体が捕捉状態に保持されるのではなく、ナット350が内部空洞341内で捕捉的に保持される。次いで、ねじ付き端部を有する電極ステム360がナット350内にねじ込まれる。この実施形態が電極質量体340の設計を単純化させることができる。
【0049】
図8Bは、電極ステム全体が係留状態に保持されていない別の実施形態を示す。電極質量体370は、上述したものと似たような内部空洞371を有する。しかしながら、電極ステム全体を係留状態に保持するのではなく、ねじ付きスタッド380が内部空洞371内に捕捉状態に保持される。次いで、ねじ付き開口を有する電極ステム390が、ねじ付きスタッド380内にねじ込まれる。
【0050】
したがって、幾つかの実施形態では、電極質量体が捕捉フィーチャを有するように製造される。係留フィーチャは、フレア状ヘッドが開口を通過できないため、電極質量体から取り外すことができないものである。しかしながら、捕捉フィーチャは、熱伝導が低減又は排除されるように、電極質量体から分離される。
図4Aから
図4C、
図5Aから
図5E、及び
図6Aから
図7Bに示される多くの実施形態では、捕捉フィーチャが電極ステムの全体を構成する。
図8Aから8Bに示されるような他の実施形態では、捕捉フィーチャは、電極ステムを取り付けることができる構成要素である。
【0051】
多くの用途において、電極は、高真空環境において利用される。この環境では、電極質量体と電極ステムとの間に対流は存在しない。したがって、いかなる熱伝達も、放射及び伝導の結果でしかない。
【0052】
熱的に絶縁された捕捉フィーチャの概念は、イオン注入システム内の他の領域において利用することができる。例えば、
図9Aは、ベース410上に配置されたプラテン400を備えたワークピースホルダを示す。プラテン400は、所定の間隔「d」だけベース410から分離され得る。特定の実施形態では、プラテン400を高温に維持することが有利であり得る。しかしながら、ベース410は、典型的には、アルミニウムなどの金属から製作され、したがって、ヒートシンクとして作用する。しかしながら、プラテン400をベース410に取り付けるために、機械的取り付け機構が使用される。この機械的取り付け機構は、プラテン400とベース410との間の熱伝導源であり得る。
【0053】
この実施形態では、機械的取り付け機構は、プラテン400から熱的に絶縁された係留ファスナ450である。
図9Bに最もよく見られるように、係留ファスナ450は、プラテン400の内部空洞401内に配置され得る。内部空洞401は、開口402を介して、プラテン400の外部と連通している。係留ファスナ450及び開口402は、係留ファスナ450をプラテン400から分離することができないようにサイズ形成される。特定の実施形態では、捕捉ファスナ450と内部空洞401との間の間隙は、0.001インチの範囲内であり得るが、この間隙は実装形態に応じてより大きくても又はより小さくてもよい。プラテン400は、セラミック材料で構成されてもよい。
【0054】
係留ファスナ450をプラテン400から分離することができないので、プラテン400及び係留ファスナ450は1つのアセンブリとして製造される。具体的には、付加製造を用いて、セラミック粉末と結合剤との混合物が堆積される。ほとんどの領域において、この混合物は、焼結後に一体型セラミックプラテンを形成する。内部空洞401の空洞部分のように、空隙を残すべき又は空にすべき領域では、セラミック粉末及び結合剤の一方のみが堆積される。付加製造プロセス中にプラテン400の一体性を維持するために材料の堆積が用いられる。しかしながら、セラミック粉末及び結合剤のうちの一方のみが堆積されるので、この領域は焼結後に硬化されない。このようにして、係留ファスナ450が、物理的に取り付けられることなく、プラテン400の内部空洞401に収容され得る。プラテン400及び係留ファスナ450全体がプリンティングされるまで、堆積プロセスが各層に対して繰り返される。プラテン400及び係留ファスナ450の形成に必要な材料が全て堆積された後、アセンブリが炉内に配置され、そこでアセンブリが焼結される。焼結後、プラテン400及び係留ファスナ450は、硬化されたセラミックになる。しかしながら、空隙領域は硬化されない。セラミック粉末のみが空隙領域内に堆積される実施形態では、焼結後にセラミック粉末が粉末で残る場合がある。この実施形態では、内部空洞401を洗浄する必要があり得る。これは、内部空洞401内に加圧空気又は別の流体を導入することによって達成することができる。別の実施形態では、粉末を引き出すために内部空洞401に真空を適用してもよい。結合剤のみが空隙領域内に堆積される実施形態では、焼結プロセス中に結合剤が蒸発し、プラテン400内にエアギャップを残すことがある。本実施形態では、洗浄処理は行われない場合がある。
【0055】
バインダ噴射は、セラミックを製作するための1つの方法にすぎない。しかしながら、他の方法も可能である。材料噴射又はステレオリソグラフィも、付加製造されたセラミック部品を製作するために使用される方法である。これらの場合、感光性樹脂はUV光によって硬化される。依然として部品間に間隙が維持されるが、未硬化樹脂(SLA)又は支持材料(材料噴射)で充填されることになる。これらの場合、支持材料/未硬化材料の除去が行われる。
【0056】
係留ファスナ450は、シャフト460を備え得る。シャフト460は、その長さの少なくとも一部に沿ってねじ切りされる。シャフト460は、フレア状ヘッド470において終端する。フレア状ヘッドは、
図4Aから
図4B又は
図5Aから
図5Eに示されたものと似たように構成され得る。フレア状ヘッド470は、プラテン400の内部空洞401内に配置される。係留ファスナ450は、プラテン400と同じ材料で作られる。突出リング461は、シャフト460に沿って配置され得る。プラテン400とベース410との間に所定の間隔「d」を形成するために突出リング461の位置が用いられる。
【0057】
係留ファスナ450が、ベース410の開口411内に挿入され得る。一実施形態では、開口411は貫通孔であってもよく、保持ナット420は、係留ファスナ450をベースに410に固定するために使用されてもよい。
【0058】
図9Aは2つの係留ファスナ450を示すが、係留ファスナ450の数は本開示によって限定されない。
【0059】
さらに、
図10に示されるように、他の実施形態では、プラテン400とベース410との間に所望の分離を維持するために、突出リング461を用いるのではなく、熱スペーサ462が静止ファスナ450の周りに配置されてもよい。熱スペーサ462は、係留ファスナ450を取り囲むワッシャであってもよい。
【0060】
さらに、
図9Aから
図9B及び
図10は、ベース410の表面に対して垂直に配向された係留ファスナ450を示すが、他の実施形態も可能である。
【0061】
図11Aから
図11Dでは、係留ファスナ550を利用してプラテン500をベース510に取り付ける別の実施形態を示す。この実施形態では、係留ファスナ550は、シャフト560を備える。シャフト560は、その長さの少なくとも一部に沿ってねじ切りされる。シャフトは、フレア状ヘッド570において終端する。この実施形態では、フレア状ヘッド570は円筒形状であるが、
図3から
図6に示すような他の形状を使用してもよい。上述のように、プラテン500は、開口502を介して外部と連通する内部空洞501を有する。フレア状ヘッド570及び開口502は、係留ファスナ550をプラテン500から分離することができないようにサイズ形成される。この実施形態では、捕捉ファスナ550をプラテン500内で回転可能にするために開口502が伸長される。同様に、ベース510の開口511も伸張される。
【0062】
図11Bに示されるように、係留ファスナ550は、ベース510の対応する開口511内に挿入される。これは、プラテン500とベース510とを位置合わせして、係留ファスナ550が、ベース510の表面に対して直角をなして開口502から延びるようにすることによって実行することができる。次いで、係留ファスナ550は、ベース510の開口511を通過する。
【0063】
係留ファスナ550がベース510の開口511内に挿入されると、
図11Cに示されるように、係留ファスナ550が、プラテン500の表面に対してある角度で回転され得る。この角度は、直角とは異なり、25から65度の間であってもよいが、他の角度も可能である。この角度により、プラテン500を2つの方向でベース510に対して保持することが可能となり、より堅牢な接続が生じ得る。
図11Dに示されるように、係留ファスナ550は、保持ナット515を使用してベース510に取り付けられ得る。さらに、突出リング553を使用して、係留ファスナ550の動きを制限することができる。
【0064】
したがって、本開示は、捕捉ファスナを含む、電極質量体又はプラテンなどの本体を説明しており、捕捉ファスナと本体との間の物理的接触が最小限に抑えられる。これにより、質量体がその所望の温度に留まることが可能となり、本体と係留ファスナとの間の熱伝導の量が制限される。上記の開示は、これを電極及びプラテンに関連して説明しているが、半導体処理システム内には、この構成から利益を得ることができる他の構成要素がある。これらの構成要素には、イオン源内に配置されたライナが含まれる。係留ファスナを使用して、ライナとイオン源チャンバ壁との間の熱伝導を最小限に抑えながら、ライナを適所に保持することができる。
【0065】
図12Aから
図12Cは、チャンバ壁又は取り付け壁などの壁にライナを取り付けるために使用され得る様々な実施形態を示す。壁は、イオン源チャンバの内壁、質量分析器の内壁、スキャナの内面、コリメータ磁石の内面、又は別の適切な位置であってもよい。
【0066】
図12A及び
図12Bでは、壁1200は、係留ファスナ1210を含む。壁1200は、金属又は別の適切な材料などの導電性材料であってもよい。これらの実施形態では、ライナ1230は、例えば、イオンの衝突から壁1200を保護するために、壁1200に近接するように配置される。しかしながら、壁1200とライナ1230との間の熱伝導率の制限が有益であり得る。上述のように、壁1200は、係留ファスナを保持する内部空洞1201を含み、内部空洞1201は、開口1202を介して壁の外部と連通する。係留ファスナは、フレア状ヘッドが開口1202を通して抜き出されないようにサイズ形成されたフレア状ヘッドを有する。
【0067】
嵌合ファスナ1220は、壁1200とは反対側のライナ1230の側部に配置される。特定の実施形態では、ライナ1230は、貫通孔1231を含む。係留ファスナ1210又は嵌合ファスナ1220は、貫通孔1231を通過する。係留ファスナ1210及び嵌合ファスナ1220が取り付けられると、壁1200とライナ1230との間に隙間が残る。さらに、上述のように、壁1200と係留ファスナ1210との間の熱伝導率は最小限である。
【0068】
図12Aでは、係留ファスナ1210はナットであるが、嵌合ファスナ1220はねじ又はねじ式ボルトである。
図12Bでは、係留ファスナ1210はねじ又はねじ式ボルトであり、嵌合ファスナ1220はナットである。
【0069】
図12A及び
図12Bでは、壁1200とライナ1230とが物理的に接触しないことを確実なものとするように、捕捉ファスナはスペーサフィーチャを有し得る。
【0070】
図12Cは、別の実施形態を示す。この実施形態では、ライナ1330は、内部空洞1331内に保持された係留ファスナ1320を含む。この実施形態では、内部空洞は、ライナ1330の両側の開口1332、1333を介して、ライナ1330の外部と連通している。係留ファスナ1320は、フレア状ヘッド及びねじ式シャフト1321を有するねじを備える。フレア状ヘッドは、いずれの開口も通過することができない。ねじ式シャフト1321は、開口1332を通過する。壁1300は、ねじ孔1310を含む。係留ファスナ1320は、ねじ孔1310内にねじ込まれ得る。特定の実施形態では、ライナ1330及び壁1300を組み立てるために、開口1333は、ねじ回しなどのツールを内部空洞1331内に挿入することを可能にする。ねじ式シャフト1321の長さは、ねじ式シャフト1321がねじ孔1310内に完全に挿入されたときに、ライナ1330が壁1300から分離されたままに留まるような長さである。
【0071】
当然ながら、半導体処理システム内の他の構成要素も、係留ファスナを有するように製作されてもよい。これには、加速/減速段階の電極、抽出光学系の電極、又は他の適切な位置が含まれる。
【0072】
本出願において上述した実施形態は、多くの利点を有し得る。電極設計に関しては、電極ステムと電極質量体との間の物理的接触が限られているため、非常に限られた熱伝導しかない。むしろ、ほとんどの熱伝達は放射を通じて生じる。この放射は、電極が典型的に真空条件で作動するという事実のために、典型的には、非常に低い。したがって、電極質量体は、従来の電極で達成される温度よりもはるかに高い温度に留まる場合がある。これは、約800℃未満の温度のアークチャンバ内の任意の構成要素に堆積される傾向がある炭素を含むプロセスにとって有益であり得る。さらに、本明細書に開示される電極は、依然として所望の高温を達成するので、抵抗ヒータや放射線遮蔽などによってアークチャンバに熱を加えるように従来使用されてきた他の方法を排除することが可能である。
【0073】
さらに、この電極のアセンブリは、他の解決策よりも単純であり得る。例えば、幾つかの従来型のシステムでは、2部式リペラを使用することができる。この場合、ステムが、リペラディスクよりも低い導電性材料で製作される。しかしながら、これらのリペラは組み立てられなければならない。本明細書の記載には、電極のアセンブリはない。
【0074】
ワークピースホルダに関しては、本明細書に記載されたワークピースホルダは、ばね、断熱材、可動スタッド、及び緩い取り付け点を利用する従来のシステムよりも遙かに容易に組み立てることができる。
【0075】
さらに、係留フィーチャを使用することにより、限られた応力で熱膨張を起こすことが可能になる。言い換えれば、捕捉フィーチャの周りの内部空洞に間隙があるので、捕捉フィーチャは、内部空洞に接触することなく拡張することができる。これにより、高温の構成要素と低温の構成要素が共に接続されたときに典型的に生じる熱応力が低減される。
【0076】
本開示の範囲は、本明細書に記載した具体的な実施形態に限定されるものではない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び修正例が、当業者には、以上の記載及び添付図面から明らかであろう。したがって、このような他の実施形態及び修正例は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本明細書では、本開示が、特定の目的の特定の環境における特定の実装形態に関連して説明されたが、当業者であれば、本開示の有用性がそれに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施され得ることを認識するであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の完全な範囲及び思想の観点から、解釈されるべきである。