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特許7473905ハイパーブランチポリマー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ハイパーブランチポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/10 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
C08G61/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019164981
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021042304
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 環
(72)【発明者】
【氏名】宋 志毅
(72)【発明者】
【氏名】王 宇挺
(72)【発明者】
【氏名】佐野 夏博
(72)【発明者】
【氏名】古井 恵里
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/128449(WO,A1)
【文献】特表2018-504466(JP,A)
【文献】特開2011-001462(JP,A)
【文献】特開2018-024866(JP,A)
【文献】特開2007-015993(JP,A)
【文献】特開2012-144523(JP,A)
【文献】特開2017-178919(JP,A)
【文献】Novel fluorescent porous hyperbranched aromatic polyamide containing 1,3,5-triphenylbenzene moieties: Synthesis and characterization,Journal of Applied Polymer Science,2017年,134(8),44505
【文献】Mechanochemical Suzuki polycondensation - from linear to hyperbranched polyphenylenes,Green Chemistry,2017年,19,2973-2979
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位を含み、全体がTHFに不溶であるハイパーブランチポリマー。
【化1】
(式中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよく、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示し、複数あるnは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。zは0~4の整数を示し、複数あるzは互いに異なっていてもよい。波線は他の構造単位との結合部位を示す。)
【請求項2】
多孔質である請求項1記載のハイパーブランチポリマー。
【請求項3】
比表面積が1m/g以上である請求項2記載のハイパーブランチポリマー。
【請求項4】
細孔容積が0.005cc/g以上である請求項2記載のハイパーブランチポリマー。
【請求項5】
下記一般式(2)で表されるハロゲン化アリールと、下記一般式(3)又は下記一般式(3’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う工程を有する下記一般(1)で表される構造単位を含むハイパーブランチポリマーの製造方法。
【化2】
{式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Xはハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示し、3つのXは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。}
【化3】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Raは、水素原子又はアルキル基を示し、2つのRaは互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。)
【化4】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Ra’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、2つのRa’は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。)
【化5】
(式中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよく、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示し、複数あるnは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。zは0~4の整数を示し、複数あるzは互いに異なっていてもよい。波線は他の構造単位との結合部位を示す。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表されるハロゲン化アリールと、下記一般式(5)又は下記一般式(5’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う工程を有する下記一般(1)で表される構造単位を含むハイパーブランチポリマーの製造方法。
【化6】
{式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Xはハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示し、2つのXは互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。}
【化7】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Raは、水素原子又はアルキル基を示し、6つのRaは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。)
【化8】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Ra’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、3つのRa’は互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。)
【化9】
(式中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよく、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示し、複数あるnは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。zは0~4の整数を示し、複数あるzは互いに異なっていてもよい。波線は他の構造単位との結合部位を示す。)
【請求項7】
光学活性構造を有する下記一般(1)で表される構造単位を含むハイパーブランチポリマー。
【化10】
(式中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよく、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示し、複数あるnは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。zは0~4の整数を示し、複数あるzは互いに異なっていてもよい。波線は他の構造単位との結合部位を示す。)
【請求項8】
円偏光発光性を有する請求項7記載のハイパーブランチポリマー。
【請求項9】
不斉誘導を行う工程を有する、請求項7に記載のハイパーブランチポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なハイパーブランチポリマー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類されるハイパーブランチポリマーは、積極的に枝分かれを導入している特異な構造を有している。ハイパーブランチポリマーは、多くの官能基を保持する表面を形成することができる点、線状ポリマーに比べると低粘度化できる点、分子間の絡み合いが少ない点、非晶性になり溶媒溶解性を制御できる点等、種々の特性を有することが知られている。
【0003】
ハイパーブランチポリマーの種々の特徴に鑑み、例えば、金属回収剤、無電解めっき下地剤、レジスト材料、金属もしくは金属酸化物の分散剤等として用いることが提案されている(例えば、特許文献1~4等参照)。
【0004】
またハイパーブランチポリマーは、分子鎖が非常に多岐に分岐した構造のため、全体が網目構造を有している。そのため、分子の内部及び/又は表面に有効成分を担持することが可能になる。このため、分子カプセルとしての応用の面でも期待されている(例えば、特許文献5等参照)。
【0005】
また、本発明者らも、新規な高効率な円偏光発光を示すキラルハイパーブランチポリマー等を提案している(例えば、非特許文献1等参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2010/021386号パンフレット
【文献】特開2011-137167号公報
【文献】特開2017-20118号公報
【文献】国際公開第2018/131492号パンフレット
【文献】特開2011-84601号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chemical Communications,2011,47(13),3799-3801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハイパーブランチポリマーは、他のデンドリマーに比べて、一般的に合成が容易であるという利点があり、特に工業生産において非常に有利である。しかしながら、合成されたハイパーブランチポリマーの種類はまだ少なく、ハイパーブランチポリマーの一層の応用や機能化に向けて、新規なハイパーブランチポリマーの開発が要望されている。
【0009】
従って、本発明の目的は、新規なハイパーブランチポリマーを提供することにある。また、本発明の目的は、工業的に有利な方法で該ハイパーブランチポリマーを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
主鎖に長い共役系を有する共役ポリマーは、様々な光電子特性を示す重要な材料の一つである。その機能は、多くの場合、長い共役系に基づく電子伝導により発現する。ポリフェニレン(ポリ(ベンゼン-1,4-ジイル))は、ベンゼン環が直接つながった構造を有する最もシンプルな共役ポリマーである。本発明者らは、該ポリフェニレン(ポリ(ベンゼン-1,4-ジイル))を用いた新規な機能性材料の開発を進めるなかで、新規なハイパーブランチポリマーを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
即ち、第1の発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とするハイパーブランチポリマーである。
【0012】
【化1】
(式中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよく、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示し、複数あるnは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。zは0~4の整数を示し、複数あるzは互いに異なっていてもよい。波線は他の構造単位との結合部位を示す。)
【0013】
また、第2の発明は、下記一般式(2)で表されるハロゲン化アリールと、下記一般式(3)又は下記一般式(3’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う工程を有する前記第1の発明のハイパーブランチポリマーの製造方法である。
【0014】
【化2】
{式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Xはハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示し、3つのXは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。}
【0015】
【化3】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Raは、水素原子又はアルキル基を示し、2つのRaは互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。)
【0016】
【化4】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Ra’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、2つのRa’は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。)
【0017】
また、第3の発明は、下記一般式(4)で表されるハロゲン化アリールと、下記一般式(5)又は下記一般式(5’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う工程を有する前記第1の発明のハイパーブランチポリマーの製造方法である。
【化5】
{式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Xはハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示し、2つのXは互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。}
【化6】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Raは、水素原子又はアルキル基を示し、6つのRaは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。)
【化7】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Ra’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、3つのRa’は互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。)
【0018】
また、第4の発明は、光学活性構造を有する前記第1の発明のハイパーブランチポリマーであり、第5の発明は前記第1の発明のハイパーブランチポリマーに不斉誘導を行う工程を有する、前記第4の発明のハイパーブランチポリマーの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリフェニレン構造を有する新規なハイパーブランチポリマーを提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、該ハイパーブランチポリマーを工業的に有利な方法で提供することができる。
本発明のハイパーブランチポリマーの中で有機溶媒に不溶なものは、多孔質であり、触媒担体等として有用なものである。さらに、本発明のハイパーブランチポリマーは、光学活性化合物等を用いて不斉誘導を行うことにより光学活性構造を有するものとなり、円偏光発光材料、円偏光電界発光材料等として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例2~4で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF可溶部のUVスペクトル図(フィルム)である。
図2図2は、実施例2~4で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF可溶部の蛍光スペクトル図(フィルム)である(励起波長270nm)。
図3図3は、実施例6~8で得られたハイパーブランチポリマー(1b)のTHF可溶部のUVスペクトル図(フィルム)である。
図4図4は、実施例6~8で得られたハイパーブランチポリマー(1b)のTHF可溶部の蛍光スペクトル図(フィルム)である(励起波長270nm)。
図5図5は、実施例3で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF不溶部の表面状態を示すSEM写真である。
図6図6は、実施例3で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF可溶部について不斉誘導を行った後のCDスペクトル(UVスペクトルも併記)図(フィルム)である。
図7図7は、実施例12で得られたハイパーブランチポリマー(1c)のTHF可溶部について不斉誘導を行った後のCDスペクトル(UVスペクトルも併記)図(フィルム)である。
図8図8は、実施例7で得られたハイパーブランチポリマー(1b)のTHF不溶部について不斉誘導を行った後のCDスペクトル及びUVスペクトル図(フィルム)である。上:CDスペクトル図、下:UVスペクトル図
図9図9は、実施例3で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF不溶部について不斉誘導を行った後のCDスペクトル及びUVスペクトル図(フィルム)である。上:CDスペクトル図、下:UVスペクトル図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明のハイパーブランチポリマーは、下記一般式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする。
【0022】
【化8】
(式中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよく、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示し、複数あるnは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。zは0~4の整数を示し、複数あるzは互いに異なっていてもよい。波線は他の構造単位との結合部位を示す。)
【0023】
一般式(1)の式中のnは1~5、好ましくは、nは1~3である。
【0024】
一般式(1)の式中のR及びRはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示す。前記R及びRは、ポリマーの溶解性向上、吸収及び発光波長の制御等を目的として必要により導入される基である。そのため、mは0~3の整数を示し、zは0~4の整数を示す。
【0025】
前記Rで示されるアルキル基は、好ましくは炭素数1~18であり、特に炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。
前記Rで示されるアルコキシ基は、好ましくは炭素数1~18であり、特に炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基であることが好ましい。
前記Rで示されるエステル基は、好ましくは炭素数1~18であり、特に炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のエステル基であることが好ましい。
前記Rで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0026】
本発明のハイパーブランチポリマーは、THF及びクロロホルム等の有機溶媒に溶解する成分と不溶な成分とを含むことができる。以下、THFに溶解する成分を「可溶部」、THFに不溶な成分を「不溶部」という。
【0027】
本発明のハイパーブランチポリマーの可溶部の数平均分子量(Mn)は、好ましくは400~20000、さらに好ましくは400~10000である。分子量が大きいほど共役系が長くなり、導電性材料としての利用が期待できるため好ましいが、分子量が大きすぎると有機溶媒への溶解性が低下する。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された、標準ポリスチレン換算分子量である。
【0028】
本発明のハイパーブランチポリマーの不溶部は、多孔質であることが特徴の一つである。多孔質であることで触媒担体としての利用が期待できる。本発明のハイパーブランチポリマーの比表面積は、特に制限されるものではないが、通常は1m/g以上、好ましくは20~100m/g、さらに好ましくは30~100m/gである。また、細孔容積は、特に制限されるものではないが、通常は0.005cc/g以上、好ましくは0.01~0.1cc/g、さらに好ましくは0.02~0.1cc/gである。
【0029】
本発明のハイパーブランチポリマーは、発光性を有し、発光波長が400nm付近あるいはそれ以下であり比較的短波長で発光することも、特徴の一つである。本発明のハイパーブランチポリマーは、例えば、励起波長270nmの場合、ピーク波長390~420nmで発光する(図2及び図4)。
【0030】
また、本発明のハイパーブランチポリマーは、340~380nmに吸収ピークを有する(図1及び図3)。
【0031】
本発明に係るハイパーブランチポリマーは、例えば、以下に示す2つの方法により製造することができる。
【0032】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は、下記一般式(2)で表されるハロゲン化アリールと、下記一般式(3)又は下記一般式(3’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う方法である。
【0033】
【化9】
{式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Xはハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示し、3つのXは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。}
【0034】
【化10】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Raは、水素原子又はアルキル基を示し、2つのRaは互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。)
【0035】
【化11】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Ra’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、2つのRa’は互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。)
【0036】
一般式(2)の式中のRは、一般式(1)のRに相当する基であり、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示す。また、nは1~5、好ましくは1~3の整数を示し、mは0~3の整数を示す。
【0037】
一般式(2)の式中のXは、ハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示す。ハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、これらのうち、臭素が好ましい。
【0038】
前記-SOWの式中のWは、アルキル基又はアリール基を示す。Wのアルキル基としては、例えば、炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。Wのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0039】
一般式(3)及び一般式(3’)の式中のRは、一般式(1)のRに相当する基であり、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示す。また、nは1~5、好ましくは1~3の整数を示し、zは0~4の整数を示す。
【0040】
一般式(3)の式中のRaは、水素原子又はアルキル基を示す。Raで示されるアルキル基としては、炭素数1~18、好ましくは1~12の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。また、該アルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。
【0041】
一般式(3’)の式中のRa’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又はアルキレン基を示す。Ra’で示されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等の炭素数6~10のアリレーン基が挙げられる。また、該アリーレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。Ra’で示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、iso-プロピレン基、n-ブチレン基、iso-ブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基等の炭素数1~18のアルキレン基が挙げられる。また、該アルキレン基は分岐していても、置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。好ましいRa’は1,1,2,2-テトラメチルエチレン基である。
【0042】
第1の製造方法では、前記一般式(2)で表されるハロゲン化アリールと、前記一般式(3)又は前記一般式(3’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う。
【0043】
具体的には、前記一般式(2)で表されるハロゲン化アリールと、前記一般式(3)又は前記一般式(3’)で表される有機ホウ素化合物とを、塩基及びパラジウム触媒の存在下に溶媒中で反応させる。
【0044】
前記一般式(3)及び一般式(3’)で表されるホウ素化合物の使用量は、前記一般式(2)で表されるハロゲン化アリールに対して1~6モル倍、好ましくは2~4モル倍とすることが、化学量論に従い高分子量のポリマーを得る観点から好ましい。
【0045】
反応に用いることができる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸アルカリ、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシドなどの塩基性アルコラート、トリエチルアミン類、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、アニリン類、テトラnブチルアンモニウムアセテートなどのアンモニウム塩などの有機塩などが挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。塩基の量に特に制限は無いが、塩基の添加量は一般式(3)又は一般式(3’)で表されるホウ素化合物に対して0.01~2モル倍、好ましくは0.05~1モル倍である。
【0046】
反応に用いることができるパラジウム触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩を例示することができる。さらに、π-アリルパラジウムクロリドダイマ-、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等の錯化合物、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、あるいはBuchwaldリガンド等の第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体を例示することができ、これらはパラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。パラジウム触媒の量に制限はないが、パラジウム触媒の添加量は一般式(3)又は一般式(3)で表されるホウ素化合物に対して0.1~30モル%、好ましくは1~20モル%である。
【0047】
反応に用いることができる溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア又はジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。
【0048】
反応温度は、室温~140℃、好ましくは60~120℃とすることが収率の観点から好ましい。また、反応時間は、特に制限されず、目的物が得られるまで十分な時間反応を行う。反応時間は、通常は1時間以上、好ましくは12~24時間である。
【0049】
必要な時間反応を行った後、塩酸等の酸を添加することにより反応を停止させ、析出した粗生成物を水とメタノールで洗浄することにより本発明のハイパーブランチポリマーが得られる。
【0050】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、下記一般式(4)で表されるハロゲン化アリールと、下記一般式(5)又は下記一般式(5’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う方法である。
【0051】
【化12】
{式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Xはハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示し、2つのXは互いに異なっていてもよい。nは1~5の整数を示す。zは0~4の整数を示す。}
【0052】
【化13】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Raは、水素原子又はアルキル基を示し、6つのRaは互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。)
【0053】
【化14】
(式中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示し、Rが複数の場合は互いに異なっていてもよい。Ra’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、3つのRa’は互いに異なっていてもよい。mは0~3の整数を示す。)
【0054】
一般式(4)の式中のRは、一般式(1)のRに相当する基であり、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示す。また、nは1~5、好ましくは1~3の整数を示し、zは0~3の整数を示す。
【0055】
一般式(4)の式中のXは、ハロゲン原子、又はSOW(Wは、アルキル基又はアリール基を示す。)を示す。ハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、これらのうち、臭素が好ましい。
【0056】
前記-SOWの式中のWは、アルキル基又はアリール基を示す。Wのアルキル基としては、例えば、炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。Wのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0057】
一般式(5)及び一般式(5’)の式中のRは、一般式(1)のRに相当する基であり、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はエステル基を示す。また、nは1~5、好ましくは1~3の整数を示し、zは0~4の整数を示す。
【0058】
一般式(5)の式中のRaは、水素原子又はアルキル基を示す。Raで示されるアルキル基としては、炭素数1~18、好ましくは1~12の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。また、該アルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。
【0059】
一般式(5’)の式中のRa’は、置換基を有していてもよいアリーレン基又はアルキレン基を示す。Ra’で示されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等の炭素数6~10のアリレーン基が挙げられる。また、該アリーレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。Ra’で示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、iso-プロピレン基、n-ブチレン基、iso-ブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基等の炭素数1~18のアルキレン基が挙げられる。また、該アルキレン基は分岐していても、置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基等が挙げられる。好ましいRa’は1,1,2,2-テトラメチルエチレン基である。
【0060】
第2の製造方法では、前記一般式(4)で表されるハロゲン化アリールと、前記一般式(5)又は前記一般式(5’)で表される有機ホウ素化合物との鈴木-宮浦カップリング反応を行う。前記一般式(4)で表されるアリールハロゲン化合物の使用量は、前記一般式(5)または(5’)で表されるホウ素化物に対して1~6モル倍、好ましくは2~4モル倍とすることが、化学量論に従い高分子量のポリマーを得る観点から好ましい。
【0061】
具体的には、前記一般式(4)で表されるハロゲン化アリールと、前記一般式(5)又は前記一般式(5’)で表される有機ホウ素化合物とを、塩基及びパラジウム触媒の存在下に溶媒中で反応させる。
【0062】
反応に用いることができる塩基、パラジウム触媒及び溶媒は、第1の製造方法と同様であり、第1の製造方法と同様にして本発明のハイパーブランチポリマーが得られる。
【0063】
このようにして得られたハイパーブランチポリマーは、必要に応じて可溶部と不溶部とに分別することができる。例えば、得られたハイパーブランチポリマーをTHF中に投入し、十分攪拌した後、遠心分離機により、THF可溶部とTHF不溶部に分け、それぞれを減圧下で乾燥させる。
【0064】
本発明のハイパーブランチポリマーは、不斉誘導を行うことよって分子中に光学活性構造を導入することができる。
【0065】
不斉誘導の方法としては、例えば、可溶部について、以下の方法が挙げられる。
ハイパーブランチポリマーの可溶部を、THF等の有機溶媒に溶解して溶液を調製する。これをガラス基板などにキャストして乾燥させることで薄膜を形成し、この薄膜に円偏光を1~10分照射して不斉誘導を行う。このようにして本発明のハイパーブランチポリマーの可溶部に光学活性構造を導入することができる。
【0066】
また、不溶部について、以下の方法が挙げられる。
ハイパーブランチポリマーの不溶部を、ピネンなどの光学活性化合物中に懸濁させるか、又は光学活性化合物の溶液に懸濁させ、加熱することにより不斉誘導を行う。このようにして本発明のハイパーブランチポリマーの不溶部に光学活性構造を導入することができる。
【0067】
光学活性構造を有するハイパーブランチポリマーは、円偏光発光を示し、円偏光発光材料及び円偏光電界発光材料として用いることができる。また、発明のハイパーブランチポリマーは、長い共役結合を有するので導電性材料としての利用も期待できる。
さらに、本発明のハイパーブランチポリマーの不溶部は、多孔質であることから、特に触媒担体等として利用することができる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1~4]
【0070】
【化15】
【0071】
反応容器に1,2-ジメトキシエタン2mLを入れ、1,3,5-トリブロモベンゼン(2a)と、4,4’-ビフェニルジボロン酸(3a)とを表1に示す割合で添加し、さらに炭酸カリウム水溶液(2N、0.325ml)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを4,4’-ビフェニルジボロン酸(3a)に対して10mol%となるように添加した。次に窒素雰囲気下に80℃で24時間反応を行った後、反応混合物に塩酸水溶液(2N、0.65ml)を添加してクエンチした。得られた粗生成物を水とメタノールで洗浄し、ハイパーブランチポリマー(1a)を得た。
得られたハイパーブランチポリマー(1a)のIRスペクトル分析(装置:日本分光製 JASCO FT/IR-6100)を行った結果、原料に由来する「B-O」結合の吸収と「C-Br」結合の吸収が消失しているのを確認した。
また、反応混合物中の1,3,5-トリブロモベンゼン(2a)の残存量をH-NMR分析(装置:日本電子製 JEOL JNM-ECX400)により求め、仕込み量に対する転化率を算出した。結果を表1に示す。
次いで、得られたハイパーブランチポリマー(1a)をTHFに投入し、遠心分離を行ってTHF可溶部とTHF不溶部に分離した。THF可溶部及びTHF不溶部の収率及び分子量測定結果を表2に示す。
なお、表2中、Mnは数平均分子量を示し、Mwは重量平均分子量を示す(以下に示すすべての表について同じである)。Mn及びMwの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行い、各分子量は標準ポリスチレン換算分子量として算出した。測定条件は以下のとおりである。
【0072】
(分子量測定)
装置:Hitachi L-7100クロマトポンプ、L-7420UV検出器(254nm)、L-7490RI検出器
溶媒:THF、流速1.0mL/min
カラム:TOSOH TSKgel G6000HHR及びG3000HHR(いずれも30cm×7.8mmID)を直列に接続したものを使用
【0073】
(ハイパーブランチポリマー(1a)の同定データ)
(THF可溶部)
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.): 8.0-6.9 ppm (aromatic area). 13C NMR (100 MHz, CDCl3, r.t.):; FT- IR (KBr) υ/cm-1: 3033, 1724, 1596, 1511, 1437, 1386, 1234, 1176, 1118, 1074, 1036, 968, 922, 883, 825, 791, 765, 724, 697, 540.
【0074】
(THF不溶部)
FT- IR (KBr) υ/cm-1: 3029, 1772, 1594, 1514, 1478, 1437, 1383, 1265, 1227, 1173, 1118, 1103, 1033, 1016, 886, 825, 791, 765, 743, 724, 697, 567, 540.
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
[実施例5~8]
【0078】
【化16】
【0079】
反応容器に1,2-ジメトキシエタン2mLを入れ、1,3,5-トリブロモベンゼン(2a)と、1,4-フェニレンジボロン酸(3b)とを表3に示す割合で添加し、さらに炭酸カリウム水溶液(2N、0.325ml)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを1,4-フェニレンジボロン酸(3b)に対して10mol%となるように添加した。次に窒素雰囲気下に80℃で24時間反応を行った後、反応混合物に塩酸水溶液(2N、0.65ml)を添加してクエンチした。得られた粗生成物を水とメタノールで洗浄し、ハイパーブランチポリマー(1b)を得た。
得られたハイパーブランチポリマー(1b)のIRスペクトル分析を行った結果、原料に由来する「B-O」結合の吸収と「C-Br」結合の吸収が消失しているのを確認した。
また、反応混合物中の1,3,5-トリブロモベンゼン(2a)の残存量をH-NMR分析により求め、仕込み量に対する転化率を算出した。結果を表3に示す。
次いで、得られたハイパーブランチポリマー(1b)をTHFに投入し、遠心分離を行ってTHF可溶部とTHF不溶部に分離した。THF可溶部及びTHF不溶部の収率及び分子量測定結果を表4に示す。
【0080】
(ハイパーブランチポリマー(1b)の同定データ)
(THF可溶部)
1H NMR (400 MHz, CDCl3, r.t.): 8.0-6.9 ppm (aromatic area). 13C NMR (100 MHz, CDCl3, r.t.):; FT- IR (KBr) υ/cm-1: 3029, 1608, 1591, 1523, 1499, 1437, 1389, 1364, 1260, 1224, 1190, 1171, 1112, 1067, 1038, 1004, 958, 922, 816, 765, 741, 726, 698, 639, 613, 579, 518.
【0081】
(THF不溶部)
FT- IR (KBr) υ/cm-1: 3029, 1591, 1499, 1434, 1388, 1340, 1260, 1171, 1118, 1038, 1002, 813, 765, 748, 726, 694.
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
[実施例9~13]
【0085】
【化17】
【0086】
反応容器に1,2-ジメトキシエタン2mLを入れ、1,3,5-トリス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(4a)と、4,4’’-ジブロモ-p-ターフェニル(5a)とを表5に示す割合で添加し、さらに炭酸カリウム水溶液(2N、0.325ml)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを1,3,5-トリス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(4a)に対して10mol%となるように添加した。次に窒素雰囲気下に80℃で24時間反応を行った後、反応混合物に塩酸水溶液(2N、0.65ml)を添加してクエンチした。得られた粗生成物を水とメタノールで洗浄し、ハイパーブランチポリマー(1c)を得た。
得られたハイパーブランチポリマー(1c)のIRスペクトル分析を行った結果、原料に由来する「B-O」結合の吸収と「C-Br」結合の吸収が消失しているのを確認した。
また、反応混合物中の1,3,5-トリス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(4a)の残存量をH-NMR分析により求め、仕込み量に対する転化率を算出した。結果を表5に示す。
次いで、得られたハイパーブランチポリマー(1c)をTHFに投入し、遠心分離を行ってTHF可溶部とTHF不溶部に分離した。THF可溶部及びTHF不溶部の収率及びTHF可溶部の分子量測定結果を表6に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
<物性評価>
実施例2~4及び実施例6~8で得られたハイパーブランチポリマー(1a)及び(1b)のTHF可溶部について、UVスペクトル(装置 日本分光製、JASCO V-550)及び蛍光スペクトル(装置:日本分光製、JASCO FP-8500)を測定した。測定は、ハイパーブランチポリマーのTHF可溶部1mgをクロロホルム2mLに懸濁し、この懸濁液を1cm×2cm、1mm厚の石英ガラスにドロップキャストして室温で12時間乾燥させて得られた薄膜を用いて行った。
【0090】
図1に、実施例2~4で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF可溶部のUVスペクトル図を示す。実施例3及び4で得られたハイパーブランチポリマー(1a)の吸収ピークは、実施例2で得られたハイパーブランチポリマー(1a)の吸収ピークより長波長側にシフト(レッドシフト)しており、より共役系が長くなっていることが分かる。
図2に、実施例2~4で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF可溶部の励起波長270nmでの蛍光スペクトル図を示す。
図3に、実施例6~8で得られたハイパーブランチポリマー(1b)のTHF可溶部のUVスペクトル図を示す。実施例7及び8で得られたハイパーブランチポリマー(1a)の吸収ピークは、実施例6で得られたハイパーブランチポリマー(1a)の吸収ピークより長波長側にシフトしており、より共役系が長くなっていることが分かる。
図4に、実施例6~8で得られたハイパーブランチポリマー(1b)のTHF可溶部の励起波長270nmでの蛍光スペクトル図を示す。
【0091】
図2及び4に示したように、本発明のハイパーブランチポリマーは、発光性を有し、発光波長は400nm付近あるいはそれ以下であり比較的短波長であった。
【0092】
実施例2~4及び実施例6~8で得られたハイパーブランチポリマー(1a)及び(1b)のTHF不溶部について、比表面積及び細孔容積を測定した。結果を表7に示す。なお、比表面積と細孔容積は、ユアサアイオニクス製 Autosorb 6AGにより測定した。
【0093】
【表7】
【0094】
また、実施例3で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF不溶部の表面状態をSEM(日本電子製、JSM-7400F)で観察した。図5にSEM写真を示す。
【0095】
表7及び図5に示したように、本発明のハイパーブランチポリマーは、比表面積が大きく、多孔質であった。
【0096】
<不斉誘導>
(THF可溶部)
実施例3で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF可溶部1mgをクロロホルム2mLに溶解し、この溶液を1cm×2cm、1mm厚の石英ガラスにドロップキャストした。その後、室温で12時間乾燥させ薄膜を形成した。この薄膜に、左旋性円偏光、又は右旋性円偏光を2分間照射して(装置:ウシオ電機製、Optical Modulex SX-UID500MAMQQ)不斉誘導を行った。不斉誘導を行った後の薄膜のCDスペクトル(UVスペクトルも併記)を図6に示す。CDスペクトルは、日本分光製、J-820を用いて測定した。
実施例12で得られたハイパーブランチポリマー(1c)のTHF可溶部についても同様にして薄膜を形成し、左旋性円偏光、又は右旋性円偏光を7分間照射して不斉誘導を行った。不斉誘導を行った後の薄膜のCDスペクトル(UVスペクトルも併記)を図7に示す。
【0097】
(THF不溶部)
実施例7で得られたハイパーブランチポリマー(1b)のTHF不溶部5mgを(+)-α-ピネン、又は(-)-α-ピネン1mLに懸濁し、24時間120℃で加熱して不斉誘導を行った。室温まで冷却の後、この懸濁液を1cm×2cm、1mm厚の石英ガラスにドロップキャストした。その後、室温で12時間乾燥させ薄膜を形成した。得られた薄膜のCDスペクトル及びUVスペクトルを図8(上:CDスペクトル、下:UVスペクトル)に示す。
実施例3で得られたハイパーブランチポリマー(1a)のTHF不溶部についても同様にして不斉誘導を行った。不斉誘導を行った後の薄膜のCDスペクトル及びUVスペクトルを図9(上:CDスペクトル、下:UVスペクトル)に示す。
【0098】
図6及び図7に示したように、ハイパーブランチポリマーのTHF可溶部について、左旋性円偏光により不斉誘導した場合は正のコットン効果を示し、右旋性円偏光により不斉誘導した場合は負のコットン効果を示した。
また、図8及び図9に示したように、ハイパーブランチポリマーのTHF不溶部について、(+)-α-ピネンにより不斉誘導した場合は正のコットン効果を示し、(-)-α-ピネンにより不斉誘導した場合は負のコットン効果を示した。
このように、本発明のハイパーブランチポリマーは不斉誘導が可能であった。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9