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特許7473953連結DNAの製造方法及びそれに用いるためのベクターの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】連結DNAの製造方法及びそれに用いるためのベクターの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/64 20060101AFI20240417BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
C12N15/64 Z ZNA
C12N1/21
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020053077
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151200
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和1年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/植物の生産性制御に係る共通基盤技術開発ゲノム編集の国産技術基盤プラットフォームの確立」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内江 望
(72)【発明者】
【氏名】森 秀人
(72)【発明者】
【氏名】山口 七海
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0312850(US,A1)
【文献】特表2012-509084(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203056(WO,A1)
【文献】Scientific Rep.,2018年,doi:10.1038/srep19278,pp.1-14,doi:10.1038/srep19278
【文献】STORCH, M.et al.,BASIC: A NEW BIOPART ASSEMBLY STANDARD FOR IDEMPOTENT CLONING PROVIDES ACCURATE, SINGLE-TIER DNA AS,ACS SYNTHETIC BIOLOGY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2015年07月17日,Vol.4,p.781-787,DOI:10.1021/sb500356d
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12Q 1/00-3/00
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA断片を連結した連結DNAを製造する方法であり、
(a1)下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iv)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を準備する工程a1と、
(b1)第一のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’からなる第一のベクター断片を得る工程b1と、
(c1)第二のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’が除去された第二のベクター断片を得る工程c1と、
(d1)ライゲーション反応により、工程b1で得られた第一のベクター断片と工程c1で得られた第二のベクター断片とを連結し、下記(3)の構造を含む第三のベクター:
(3)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
[ここで、D(i)は、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片を示し、D(ii)は、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d1と、
を含み、
工程d1で生成させた第三のベクターを、工程a1の第一のベクターとして用い、工程a1~d1をさらにnサイクル(合計1+nサイクル)繰り返して、下記(3’)の構造を含む第三’のベクター:
(3’)5’-R1-D(i) 1+n -R2-M1-R2’-D(ii) 1+n -R1’-3’
[ここで、D(i) 1+n は、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(iii)-D(i) -3’を含むDNA断片を示し;D(ii) 1+n は、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(ii) -D(iv)-3’を含むDNA断片を示し;nは自然数を示し;各サイクル間で、第二のベクターのD(iii)は、互いに同一であっても異なっていてもよく;各サイクル間で、第二のベクターのD(iv)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
を生成させることを特徴とする、連結DNAの製造方法。
【請求項2】
工程d1の後に、ライゲーション反応産物を宿主に形質転換する工程、及び、第一の選択マーカー遺伝子の発現を指標として第三のベクターが導入された宿主を選抜する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項3】
工程d1の後に、第三のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’を除去し、次の構造:5’-R1-D(i)+n -D(ii)+n -R1’-3’を含む第五のベクターを生成させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項4】
DNA断片を連結した連結DNAを製造する方法であり、
(a2)下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iV)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を準備する工程a2と、
(b2)第二のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-3’からなる第二のベクター断片を得る工程b2と、
(c2)第一のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’が除去された第一のベクター断片を得る工程c2と、
(d2)ライゲーション反応により、工程b2で得られた第二のベクター断片と工程c2で得られた第一のベクター断片とを連結し、下記(4)の構造を含む第四のベクター:
(4)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、D(iii)は、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片を示し、D(iv)は、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d2と、
を含み、
工程d2で生成させた第四のベクターを、工程a2の第二のベクターとして用い、工程a2~d2をさらにnサイクル(合計1+nサイクル)繰り返して、下記(4’)の構造を含む第四’のベクター:
(4’)5’-R1-D(iii) 1+n -R2-M2-R2’-D(iv) 1+n -R1’-3’
[ここで、D(iii) 1+n は、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(i)-D(iii) -3’を含むDNA断片を示し;D(iv) 1+n は、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(iv) -D(ii)-3’を含むDNA断片を示し;nは自然数を示し;各サイクル間で、第一のベクターのD(i)は、互いに同一であっても異なっていてもよく;各サイクル間で、第一のベクターのD(ii)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
を生成させることを特徴とする、連結DNAの製造方法。
【請求項5】
工程d2の後に、ライゲーション反応産物を宿主に形質転換する工程、及び、第二の選択マーカー遺伝子の発現を指標として第四のベクターが導入された宿主を選抜する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項6】
工程d2の後に、第四のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’を除去し、次の構造:5’-R1-D(iii)+n -D(iv)+n -R1’-3’を含む第六のベクターを生成させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項又はに記載の連結DNAの製造方法。
【請求項7】
(b2)第二のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-3’からなる第二のベクター断片を得る工程b2と、
(c2)第一のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’が除去された第一のベクター断片を得る工程c2と、
(d2)ライゲーション反応により、工程b2で得られた第二のベクター断片と工程c2で得られた第一のベクター断片とを連結し、下記(4)の構造を含む第四のベクター:
(4)5’-R1-D(iii) -R2-M2-R2’-D(iv) -R1’-3’
[ここで、D(iii) は、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片を示し、D(iv) は、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d2と、を含む方法で生成させた第四のベクター又は請求項で生成させた第四’のベクターを、工程a1の第二のベクターとして用いることを特徴とする、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項8】
(b1)第一のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’からなる第一のベクター断片を得る工程b1と、
(c1)第二のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’が除去された第二のベクター断片を得る工程c1と、
(d1)ライゲーション反応により、工程b1で得られた第一のベクター断片と工程c1で得られた第二のベクター断片とを連結し、下記(3)の構造を含む第三のベクター:
(3)5’-R1-D(i) -R2-M1-R2’-D(ii) -R1’-3’
[ここで、D(i) は、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片を示し、D(ii) は、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d1と、を含む方法で生成させた第三のベクター又は請求項で生成させた第三’のベクターを、工程a2の第一のベクターとして用いることを特徴とする、請求項のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項9】
第一の制限酵素がR1の3’側を切断するタイプIIS制限酵素であり、かつ、第二の制限酵素がR1’の5’側を切断するタイプIIS制限酵素である、及び/又は、
第三の制限酵素がR2の5’側を切断するタイプIIS制限酵素であり、かつ、第四の制限酵素がR2’の3’側を切断するタイプIIS制限酵素である、
ことを特徴とする、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項10】
第一の選択マーカー遺伝子と逆の作用を有する選択マーカー遺伝子である第三の選択マーカー遺伝子が第一のベクターのR2とR2’との間にさらに挿入されている、及び/又は、
第二の選択マーカー遺伝子と逆の作用を有する選択マーカー遺伝子であり、第三の選択マーカー遺伝子と同一でも異なっていてもよい、第四の選択マーカー遺伝子が第二のベクターのR2とR2’との間にさらに挿入されている、
ことを特徴とする、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項11】
R1、R1’、R2、及びR2’とは異なる第五の制限酵素の認識配列が第一のベクターにおける前記構造(1)以外の部位にさらに設定されている、並びに、
R1、R1’、R2、R2’及び第五の制限酵素の認識配列とは異なる第六の制限酵素の認識配列が第二のベクターにおける前記構造(2)以外の部位にさらに設定されている、
ことを特徴とする、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法に用いるためのベクターの組み合わせであり、
下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iv)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を含む組み合わせ。
【請求項13】
請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法に用いるためのベクターの組み合わせであり、
下記(1’)の構造を含む第一のベクター及び下記(2’)の構造を含む第二のベクター:
(1’)5’-R1-E1-R2-M1-R2’-E2-R1’-3’
(2’)5’-R1-E3-R2-M2-R2’-E4-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;E1、E2、E3、及びE4は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片の挿入用部位を示し、E1及びE2はいずれか一方であってよく、E3及びE4はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を含む組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結DNAの製造方法及びそれに用いるためのベクターの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療、産業、生物学などの遺伝子合成が関わるあらゆる分野において、全ゲノム合成をはじめとする長鎖DNA合成の需要が高まっている。一般的に、長鎖DNAは化学合成された200bp程度の短鎖DNA群を連結することによって作製される。しかしながら、このプロセスは完全ではなく、より長鎖のDNAの合成を行う場合においては、多くの短鎖DNAの連結が必要となり、目的産物を得ることが困難になる。現在までに開発されたDNAアセンブリ技術は、大きく二つに大別される。
【0003】
<タイプIIS制限酵素を用いたDNAアセンブリ技術>
一つは、Golden Gate法などに代表される制限酵素で処理された短鎖DNAをリガーゼによって連結する手法である(Engler C.,Kandzia R.,Marillonnet S.,A one pot,one step,precision cloning method with high throughput capability.PLoS One.2008;3(11):e3647.doi:10.1371/journal.pone.0003647(非特許文献1)等)。この様な手法には他にBioBrick法(Knight T.,Idempotent Vector Design for Standard Assembly of Biobricks.hdl:1721.1/21168(非特許文献2)等)、OGAB法(Tsuge K.ら,Method of preparing an equimolar DNA mixture for one-step DNA assembly of over 50 fragments.Sci Rep.2015 May 20;5:10655.doi:10.1038/srep10655.(非特許文献3)等)などが挙げられる。これらの手法の利点は、連結したい短鎖DNAを持つベクターを用意することで、PCR等によるDNA断片の増幅を経ずにライゲーション反応によって短鎖DNA群を一気に連結することにあり、また、実験の処理が簡便で処理時間が短いという特徴がある。Golden Gate法では、認識配列と離れた部位を切断することができるタイプIISの制限酵素をプラスミドベクターからのDNA断片の切り出しに用いる。このため、連結したいDNA断片の両端がそれらの外側に認識配列を持つタイプIIS制限酵素によって切断されると、認識配列を持たない任意の突出末端を持った短鎖DNAをベクターから切り出すことができる。したがってGolden Gate法を用いると、合成された目的産物に余計な認識配列が含まれないシームレスなアセンブリを行うことができる。
【0004】
一方で、標準的に利用されるタイプIIS制限酵素がつくる突出末端の長さは4bpであり、デザインできる突出末端の多様性には限りがある。そのため一度に連結できる断片数は10断片程度までに限られている。また、目的配列によっては、特異的な突出末端をデザインすること自体が難しい場合もある。特に、リピート配列をアセンブリする場合には、同じ配列が何度も出現するため、連結されるDNA断片間での突出末端配列の特異性を担保するのが難しい。また、Golden Gate法で連結される短鎖DNAは、目的の配列のみに特化して突出末端が特異的になるように設計、合成されるため、あるアセンブリに利用した短鎖DNAを、他のアセンブリに利用できるとは限らず、資源としての再利用性が低い。さらに、連結するDNA断片の数が多いほど、非特異的なライゲーション等によって目的とは異なる産物が生成される確率が高くなり、PCR法やサンガーシークエンシング法による品質検査に要する手間や時間が大きくなる。
【0005】
<組換配列を用いたDNAアセンブリ技術>
もう一つは、Gibson Assembly法などに代表される、末端に数十bp程度の共通配列を有する短鎖DNAを連結する手法である(Gibson D.G.ら,Enzymatic assembly of DNA molecules up to several hundred kilobases.Nat Methods.2009 May;6(5):343-5.(非特許文献4)等)。こうした手法には、In Fusion Assembly(Zhu B.ら,In-fusion assembly:seamless engineering of multidomain fusion proteins,modular vectors, and mutations.Biotechniques.2007 Sep;43(3):354-9.(非特許文献5)等)、オーバーラップPCR法等がある。これらは、制限酵素を用いる手法と異なり、アセンブリに制限酵素を利用するデザインを必要とせず両端に持つ共通配列を介した組換え反応によって連結することができる。そのため、配列設計における制約が極めて小さい。
【0006】
一方で、一度に効率的な連結が可能なDNA断片の数は10個以内程度である。したがって、長鎖のDNA合成を行う際には、数個のDNA断片によるアセンブリを繰り返す必要がある。このとき、アセンブリのたびに目的の産物が正しく合成されているかPCR法やサンガーシークエンシング法による品質検査に要する手間や時間が大きくなる。また、合成した短鎖DNAやアセンブリ過程で生成された中間産物は、隣に共通配列を有する断片としか連結できないため、これらを目的以外のアセンブリに利用したりすることは難しく、資源としての再利用性は非常に小さい。さらに、タイプIIS制限酵素を用いた手法以上に、リピート配列のアセンブリには適していない。リピート配列をアセンブリする場合、隣接するDNA断片同士ででしか結合しない特異的な数十bpの共通配列を設計しようとしても、その配列が他のDNA断片配列にも現れてしまい、あらゆる断片間で部分的な結合が生じうる。したがって、リピート配列について、その繰り返し回数や順序を制御した合成を行うことはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Engler C.,Kandzia R.,Marillonnet S.,A one pot,one step,precision cloning method with high throughput capability.PLoS One.2008;3(11):e3647.doi:10.1371/journal.pone.0003647
【文献】Knight T.,Idempotent Vector Design for Standard Assembly of Biobricks.hdl:1721.1/21168
【文献】Tsuge K.ら,Method of preparing an equimolar DNA mixture for one-step DNA assembly of over 50 fragments.Sci Rep.2015 May 20;5:10655.doi:10.1038/srep10655.
【文献】Gibson D.G.ら,Enzymatic assembly of DNA molecules up to several hundred kilobases.Nat Methods.2009 May;6(5):343-5.
【文献】Zhu B.ら,In-fusion assembly:seamless engineering of multidomain fusion proteins,modular vectors, and mutations.Biotechniques.2007 Sep;43(3):354-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、正確かつ効率的に容易に数十以上のDNA断片を連結することが可能な連結DNAの製造方法及びそれに用いるためのベクターの組み合わせを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、互いに異なる選択マーカー遺伝子を有する特定の構造を含む二つのベクター(ツールキットベクター)を用い、これら2種類の異なる選択マーカーの切り換えを逐次的なDNA断片の連結プロセスに組み込むことで、正確、かつ、効率的に、短時間で容易に、リピート配列等の同じ配列が何度も出現する断片であっても、数十以上のDNA断片を連結して集積できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0010】
[1]
DNA断片を連結した連結DNAを製造する方法であり、
(a1)下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iv)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を準備する工程a1と、
(b1)第一のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’からなる第一のベクター断片を得る工程b1と、
(c1)第二のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’が除去された第二のベクター断片を得る工程c1と、
(d1)ライゲーション反応により、工程b1で得られた第一のベクター断片と工程c1で得られた第二のベクター断片とを連結し、下記(3)の構造を含む第三のベクター:
(3)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
[ここで、D(i)は、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片を示し、D(ii)は、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d1と、
を含むことを特徴とする、連結DNAの製造方法。
【0011】
[2]
工程d1の後に、ライゲーション反応産物を宿主に形質転換する工程、及び、第一の選択マーカー遺伝子の発現を指標として第三のベクターが導入された宿主を選抜する工程をさらに含むことを特徴とする、[1]に記載の連結DNAの製造方法。
【0012】
[3]
工程d1の後に、第三のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’を除去し、次の構造:5’-R1-D(i)-D(ii)-R1’-3’を含む第五のベクターを生成させる工程をさらに含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の連結DNAの製造方法。
【0013】
[4]
工程d1で生成させた第三のベクターを、工程a1の第一のベクターとして用い、工程a1~d1をさらにnサイクル(合計1+nサイクル)繰り返して、下記(3’)の構造を含む第三’のベクター:
(3’)5’-R1-D(i)1+n-R2-M1-R2’-D(ii)1+n-R1’-3’
[ここで、D(i)1+nは、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片を示し;D(ii)1+nは、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片を示し;nは自然数を示し;各サイクル間で、第二のベクターのD(iii)は、互いに同一であっても異なっていてもよく;各サイクル間で、第二のベクターのD(iv)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
を生成させることを特徴とする、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0014】
[5]
DNA断片を連結した連結DNAを製造する方法であり、
(a2)下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iV)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を準備する工程a2と、
(b2)第二のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-3’からなる第二のベクター断片を得る工程b2と、
(c2)第一のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’が除去された第一のベクター断片を得る工程c2と、
(d2)ライゲーション反応により、工程b2で得られた第二のベクター断片と工程c2で得られた第一のベクター断片とを連結し、下記(4)の構造を含む第四のベクター:
(4)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、D(iii)は、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片を示し、D(iv)は、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d2と、
を含むことを特徴とする、連結DNAの製造方法。
【0015】
[6]
工程d2の後に、ライゲーション反応産物を宿主に形質転換する工程、及び、第二の選択マーカー遺伝子の発現を指標として第四のベクターが導入された宿主を選抜する工程をさらに含むことを特徴とする、[5]に記載の連結DNAの製造方法。
【0016】
[7]
工程d2の後に、第四のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’を除去し、次の構造:5’-R1-D(iii)-D(iv)-R1’-3’を含む第六のベクターを生成させる工程をさらに含むことを特徴とする、[5]又は[6]に記載の連結DNAの製造方法。
【0017】
[8]
工程d2で生成させた第四のベクターを、工程a2の第二のベクターとして用い、工程a2~d2をさらにnサイクル(合計1+nサイクル)繰り返して、下記(4’)の構造を含む第四’のベクター:
(4’)5’-R1-D(iii)1+n-R2-M2-R2’-D(iv)1+n-R1’-3’
[ここで、D(iii)1+nは、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片を示し;D(iv)1+nは、1+nサイクル目で得られる、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片を示し;nは自然数を示し;各サイクル間で、第一のベクターのD(i)は、互いに同一であっても異なっていてもよく;各サイクル間で、第一のベクターのD(ii)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
を生成させることを特徴とする、[5]~[7]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0018】
[9]
[5]の工程d2で生成させた第四のベクター又は[8]で生成させた第四’のベクターを、工程a1の第二のベクターとして用いることを特徴とする、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0019】
[10]
[1]の工程d1で生成させた第三のベクター又は[4]で生成させた第三’のベクターを、工程a2の第一のベクターとして用いることを特徴とする、[5]~[8]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0020】
[11]
第一の制限酵素がR1の3’側を切断するタイプIIS制限酵素であり、かつ、第二の制限酵素がR1’の5’側を切断するタイプIIS制限酵素である、及び/又は、
第三の制限酵素がR2の5’側を切断するタイプIIS制限酵素であり、かつ、第四の制限酵素がR2’の3’側を切断するタイプIIS制限酵素である、
ことを特徴とする、[1]~[10]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0021】
[12]
第一の選択マーカー遺伝子と逆の作用を有する選択マーカー遺伝子である第三の選択マーカー遺伝子が第一のベクターのR2とR2’との間にさらに挿入されている、及び/又は、
第二の選択マーカー遺伝子と逆の作用を有する選択マーカー遺伝子であり、第三の選択マーカー遺伝子と同一でも異なっていてもよい、第四の選択マーカー遺伝子が第二のベクターのR2とR2’との間にさらに挿入されている、
ことを特徴とする、[1]~[11]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0022】
[13]
R1、R1’、R2、及びR2’とは異なる第五の制限酵素の認識配列が第一のベクターにおける前記構造(1)以外の部位にさらに設定されている、並びに、
R1、R1’、R2、R2’及び第五の制限酵素の認識配列とは異なる第六の制限酵素の認識配列が第二のベクターにおける前記構造(2)以外の部位にさらに設定されている、
ことを特徴とする、[1]~[12]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法。
【0023】
[14]
[1]~[13]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法に用いるためのベクターの組み合わせであり、
下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iv)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を含む組み合わせ。
【0024】
[15]
[1]~[13]のうちのいずれか一項に記載の連結DNAの製造方法に用いるためのベクターの組み合わせであり、
下記(1’)の構造を含む第一のベクター及び下記(2’)の構造を含む第二のベクター:
(1’)5’-R1-E1-R2-M1-R2’-E2-R1’-3’
(2’)5’-R1-E3-R2-M2-R2’-E4-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;E1、E2、E3、及びE4は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片の挿入用部位を示し、E1及びE2はいずれか一方であってよく、E3及びE4はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を含む組み合わせ。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、正確かつ効率的に容易に数十以上のDNA断片を連結することが可能な連結DNAの製造方法及びそれに用いるためのベクターの組み合わせを提供することが可能となる。
【0026】
また、本発明によれば、リピート配列等の同じ配列が何度も出現する断片であっても、連続して連結することが可能であり、別のアセンブリにそのまま利用できるため、再利用性も高い。さらに、非特異的なライゲーション等によって目的とは異なる産物が生成される確率が低いため、品質検査に要する手間や時間を短縮することも可能である。このような本発明によれば、効率的な多重ゲノム編集のためのベクターライブリラリー、任意のクローンをPCR法によって単離することのできるプールライブラリの作製も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】D(iii)(3)とD(i)(1)との連結、及び、D(iv)(4)とD(ii)(2)との連結の態様を示す模式図である。
図2】D(iii)(3)とD(ii)(2)との連結の態様を示す模式図である。
図3】選択マーカー遺伝子及び制限酵素による目的産物の選抜の態様を示す模式図である。
図4】本発明の第一の方法の一態様を示す模式図である。
図5】本発明の第二の方法の一態様を示す模式図である。
図6】本発明の第一の方法と第二の方法との組み合わせの一態様を示す模式図である。
図7】本発明の第一の方法及び第二の方法の各サイクルで得られる目的産物、中間産物の再利用の一態様を示す模式図である。
図8】TALEリピートユニットアレイの作製の一態様を示す模式図である。
図9】TALEリピートユニットアレイのライブラリープールの作製の一態様を示す模式図である。
図10】gRNA-BCベクターの作製で得られたツールキットベクター1(n)を示す模式図である。
図11】gRNA-BCベクターの作製で得られたツールキットベクター2(n)を示す模式図である。
図12】gRNA-BCベクターの作製の各工程で得られたツールキットベクターにおけるgRNA-BCユニットを示す模式図である。
図13】gRNA-BCベクターの作製の各工程で得られたツールキットベクターの断片の電気泳動写真である。
図14】gRNA-BCベクターの作製においてライゲーション産物を形質転換して得られたクローン1~6から単離されたベクター断片の電気泳動写真である。
図15】Array vector lib、Single vector lib、及びSingle liner DNA libをそれぞれトランスフェクションして塩基編集率の高かった上位26箇所の編集効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0029】
本発明は、DNA断片を連結した連結DNAを製造する方法として、先ず、下記の第一の方法及び第二の方法を提供する。
【0030】
<連結DNAを製造する第一の方法>
本発明の連結DNAを製造する第一の方法は、
(a1)下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iv)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を準備する工程a1と、
(b1)第一のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’からなる第一のベクター断片を得る工程b1と、
(c1)第二のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’が除去された第二のベクター断片を得る工程c1と、
(d1)ライゲーション反応により、工程b1で得られた第一のベクター断片と工程c1で得られた第二のベクター断片とを連結し、下記(3)の構造を含む第三のベクター:
(3)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
[ここで、D(i)は、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片を示し、D(ii)は、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d1と、
を含む。
【0031】
(工程a1)
本発明の第一の方法においては、先ず、下記(1)の構造:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
を含む第一のベクター、及び、下記(2)の構造:
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
を含む第二のベクターを準備する(工程a1)。
【0032】
-連結用DNA断片-
本発明において、D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示す。本発明の第一の方法は、後述の工程b1~d1を通じて、D(iii)の3’側にD(i)が連結され、D(iv)の5’側にD(ii)が連結される。これにより、最終的に、第一の選択マーカー遺伝子の5’側において、D(iii)とD(i)とが連結され、3’側において、D(iv)とD(ii)とが連結される(図1)。
【0033】
本発明の方法において、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iv)はいずれか一方であってよい。この態様においては、例えば、D(i)及びD(iv)が存在しない場合、最終的に、第一の選択マーカー遺伝子の5’側にD(iii)が配置され、3’側にD(ii)が配置されることになる(図2)。この場合、第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理することにより、最終的に、D(iii)とD(ii)とを連結することができる。
【0034】
このようなD(i)~D(iv)としては、本発明に係る制限酵素の認識配列や選択マーカー遺伝子を含んでいなければ何ら制限されず、任意のDNAであってよく、互いに同一であっても異なっていても、互いに共通する配列を含む等の規則制を有するものであってもよい。D(i)~D(iv)のサイズとしても特に制限されず、数bp~数十kbpまで連結可能である。
【0035】
-制限酵素及びその認識配列-
本発明において、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し、R1’は第二の制限酵素の認識配列を示し、R2は第三の制限酵素の認識配列を示し、R2’は、第四の制限酵素の認識配列を示す。第一の制限酵素と第二の制限酵素とは、互いに同一であっても異なっていてもよく、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、第一の制限酵素及び第二の制限酵素と第三の制限酵素と、並びに、第一の制限酵素及び第二の制限酵素と第四の制限酵素と、では異なる制限酵素であり、かつ、認識配列も異なる制限酵素である必要がある。
【0036】
後述の工程b1においては、第一のベクターから「5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’」の構造のDNA断片を切り出すが、この工程において、第一の制限酵素又は第二の制限酵素がR2又はR2’を認識すると、D(i)及びD(ii)が切除されてしまい、目的のDNA断片は得ることができなくなる。また、後述の工程c1においては、第三の制限酵素及び第四の制限酵素の処理により、第2のベクターにおける「5’-R2-M2-R2’-3’」の構造を除去するが、これら制限酵素が第二のベクターに残されたR1又はR1’をも認識すると、第二のベクターからD(iii)及びD(iv)が切除されてしまい、第二のベクターから連結用DNAが消失してしまう。したがって、このような不適切な切断を回避する観点から、第一の制限酵素及び第二の制限酵素と、第三の制限酵素及び第四の制限酵素とは、異なる制限酵素である必要がある(すなわち、認識配列R1及びR1’は、R2及びR2’と異なる認識配列である必要がある)。
【0037】
一方、第一の制限酵素と第二の制限酵素とが同一である場合(すなわち、認識配列R1とR1’とが同一の場合)には、単一の制限酵素の処理により、後述の工程b1において、目的のDNA断片を得ることができ、操作が簡便である観点から好ましい。また、第三の制限酵素と第四の制限酵素とが同一である場合(すなわち、R2とR2’とが同一の場合)にも、単一の制限酵素の処理により、後述の工程c1において、目的の構造を除去することができ、操作が簡便である観点から好ましい。
【0038】
本発明の第一の方法において、第一の制限酵素は、R1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一のベクター及び第二のベクター(並びに、下記の第三、第三’、第四、第四’のベクター)内の他の箇所は切断しない。また、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、それぞれ、第一のベクター及び第二のベクター(並びに、下記の第三、第三’、第四、第四’のベクター)内の他の箇所は切断しない。
【0039】
制限酵素により、その認識配列内に切断箇所がある場合には認識配列内(R1内、R1’内、R1’内、R2内、R2’内)で切断する。他方、認識配列と切断箇所とが離れている場合には、例えば、第一の制限酵素がR1の5’側で切断を行うと、後述の工程d1で連結されたD(iii)とD(i)との間にR1が存在することになり、また、D(ii)とD(iv)との間にR1’が存在することになる。この場合、第三のベクターを、さらなるDNA断片の連結に使用しようとしても、工程b1における第一の制限酵素及び第二の制限酵素による処理で、D(iii)とD(i)との間及びD(ii)とD(iv)との間が切断され、DNAの連結が解消されてしまう。したがってこの場合、第一の制限酵素は、R1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’の5’側を切断する必要があり、第三の制限酵素はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’の3’側を切断する必要がある。
【0040】
本発明の第一の方法においては、第一の制限酵素で切断されたR1の突出末端と第三の制限酵素で切断されたR2の突出末端、及び第二の制限酵素で切断されたR1’の突出末端と第四の制限酵素で切断されたR2’の突出末端とが、工程d1におけるライゲーション反応により連結可能である必要がある。この観点から、第一の制限酵素と第三の制限酵素、及び第二の制限酵素と第四の制限酵素としては、それぞれ2種のタイプIIS制限酵素、又はDNA切断により相同の突出末端を生じる2種の制限酵素を用いることが好ましい。
【0041】
「タイプIIS制限酵素」は、認識配列と切断部位とが離れている制限酵素であり、切断部位の配列は通常任意である。本発明の第一の方法において、タイプIIS制限酵素を用いる場合には、一方のタイプIIS制限酵素がR1を認識してその3’側を切断するように、R1の塩基配列を設定し、他方のタイプIIS制限酵素がR2を認識してその5’側を切断するようにR2の塩基配列を設定する。同様に、一方のタイプIIS制限酵素がR1’を認識してその5’側を切断するように、R1’の塩基配列を設定し、他方のタイプIIS制限酵素がR2’を認識してその3’側を切断するように、R2’の塩基配列を設定する。さらに、2種のタイプIIS制限酵素の切断部位の突出末端が連結可能となるように、当該切断部位に相同の塩基配列を設定する。本発明の第一の方法に用いるタイプIIS制限酵素としては、第一の制限酵素と第三の制限酵素との組み合わせ、及び第二の制限酵素と第四の制限酵素との組み合わせにおいて、それぞれ、DNA切断により突出末端のサイズが同じとなるものであれば特に制限されず、例えば、BsaI、BbsI、BsmBI、BsmAI、が挙げられる。
【0042】
本発明の第一の方法において、DNA切断により相同の突出末端を生じる2種の制限酵素を用いる場合には、一方の制限酵素がR1を認識してその内部を切断し、他方の制限酵素がR2を認識してその内部を切断するが、R1及びR2の切断により生じる突出末端が相同であるため、互いに連結可能となる。本発明の第一の方法に用いる、DNA切断により相同の突出末端を生じる2種の制限酵素としては、例えば、NheIとSpeIとの組み合わせ、AgeIとXmaIとの組み合わせ、SalIとXhoIとの組み合わせが挙げられるが、本発明の目的に適合する限り、これらに制限されない。
【0043】
-選択マーカー遺伝子-
本発明において、M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し、M2は、第二の選択マーカー遺伝子を示す。本発明の第一の方法において、第一の選択マーカー遺伝子は、工程d1の後に、第二の選択マーカー遺伝子を持つ目的外のベクター(副産物)を排除して、第一の選択マーカー遺伝子を持つ目的のベクター(第三のベクター)を選抜する目的で使用される(図3)。この観点から、第一の選択マーカー遺伝子は、第二の選択マーカー遺伝子と異なる選択マーカー遺伝子である必要がある。
【0044】
選択マーカー遺伝子としては、検出が可能である限り特に制限はなく、例えば、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子、逆選択マーカー遺伝子が挙げられるが、これらに制限されない。
【0045】
前記薬剤耐性遺伝子としては、例えば、スペクチノマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子が挙げられる。また、前記レポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、DsRed、mCherry、mOrange、mBanana、mStrawberry、mRaspberry、mPlumが挙げられる。前記逆選択マーカー遺伝子とは、形質転換体に当該遺伝子を持つベクターが存在すると当該形質転換体が死滅する作用をもたらす遺伝子であり、例えば、ccdB遺伝子(大腸菌DNAgyrase阻害タンパク質(control of cell death)遺伝子)などの毒素遺伝子が挙げられる。
【0046】
このような第一の選択マーカー遺伝子と第二の選択マーカー遺伝子との組み合わせとしては、形質転換体の生存を指標として効率的に目的のベクターを選抜することが可能であるという観点から、第一の選択マーカー遺伝子及び第二の選択マーカー遺伝子が、前記薬剤耐性遺伝子であることが好ましい。
【0047】
(工程b1、工程c1)
本発明の第一の方法においては、次いで、第一のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’からなる第一のベクター断片を得る(工程b1)。一方、第二のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’が除去された第二のベクター断片を得る(工程c1)。工程b1と工程c1とは、いずれを先に行っても、同時並行で行ってもよい。
【0048】
工程b1における制限酵素処理は、緩衝液中で、制限酵素(第一の制限酵素及び第二の制限酵素)を第一のベクターに作用させることにより行うことができる。工程b1における第一の制限酵素と第二の制限酵素とが異なる場合には、いずれの制限酵素の処理を先に行っても、反応系に両制限酵素をいずれも添加して同時に処理を行ってもよい。
【0049】
同様に、工程c1における制限酵素処理は、緩衝液中で、制限酵素(第三の制限酵素及び第四の制限酵素)を第二のベクターに作用させることにより行うことができる。工程c1における第三の制限酵素と第四の制限酵素とが異なる場合には、いずれの制限酵素の処理を先に行っても、反応系に両制限酵素をいずれも添加して同時に処理を行ってもよい。
【0050】
工程b1及びc1の反応系に用いる緩衝液としては、従来制限酵素の反応溶媒として公知のものを適宜用いてよく、CutSmart Buffer(NEB)等の市販のものを適宜用いてもよい。また、前記反応系としては、制限酵素の種類等に応じて適宜条件を調整することができるが、例えば、5~10μg/50μLのベクターに対して、反応系に添加する各制限酵素の濃度としては、0.1~0.2units/μLであることが好ましく、各ベクターの濃度としては、100~200ng/μLであることが好ましい。さらに、前記反応系の反応温度としては、37℃程度であることが好ましく、反応時間としては、1~2時間であることが好ましい。
【0051】
工程b1においては、制限酵素処理の後に、セルフライゲーションを防ぐために、アルカリホスファターゼ(CIP等)による脱リン酸化処理を行ってもよい。
【0052】
また、工程b1においては、反応産物から、生成された第一のベクター断片を回収する操作を含むことができ、また、工程c1においては、反応産物から、生成された第二のベクター断片を回収する操作を含むことができる。このようなベクター断片の回収は、例えば、アガロースゲル電気泳動などの電気泳動によるサイズ分画により行うことができる。
【0053】
(工程d1)
本発明の第一の方法においては、次いで、ライゲーション反応により、工程b1で得られた第一のベクター断片と工程c1で得られた第二のベクター断片とを連結し、下記(3)の構造:
(3)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
を含む第三のベクターを生成させる(工程d1)。
【0054】
ここで、D(i)は、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片を示し、D(ii)は、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片を示す。以下、特にことわりのない場合、D(i)~D(iv)に付す下付き文字は、DNA断片が連結された回数を示す。
【0055】
工程d1におけるライゲーション反応は、第一のベクター断片と第二のベクター断片とを連結させる反応であり、緩衝液中で、DNAリガーゼを作用させることにより行うことができる。工程d1の反応系に用いる緩衝液としては、上記と同様のものが挙げられる。前記反応系に添加するDNAリガーゼとしては、例えば、T4リガーゼを用いることができるが、これらに制限されない。また、前記反応系としては、DNAリガーゼの種類等に応じて適宜条件を調整することができるが、例えば、反応系に添加するDNAリガーゼの濃度としては、20~40units/μLであることが好ましく、各ベクター断片の濃度としては、100~200ng/μLであることが好ましい。さらに、前記反応系の反応温度としては、16~25℃であることが好ましく、反応時間としては、1~12時間であることが好ましい。
【0056】
<連結DNAを製造する第二の方法>
本発明の連結DNAを製造する第二の方法は、
(a2)下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、R1は、第一の制限酵素の認識配列を示し;R1’は、第二の制限酵素の認識配列を示し;R2は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第三の制限酵素の認識配列を示し;R2’は、第一の制限酵素及び第二の制限酵素とは異なる第四の制限酵素の認識配列を示し;M1は、第一の選択マーカー遺伝子を示し;M2は、第一の選択マーカー遺伝子とは異なる第二の選択マーカー遺伝子を示し;D(i)~D(iv)は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片を示し、D(i)及びD(ii)はいずれか一方であってよく、D(iii)及びD(iV)はいずれか一方であってよい。第一の制限酵素はR1内又はR1の3’側を切断し、第二の制限酵素はR1’内又はR1’の5’側を切断し、第一の制限酵素と第二の制限酵素とは同一でも異なっていてもよく;第三の制限酵素はR2内又はR2の5’側を切断し、第四の制限酵素はR2’内又はR2’の3’側を切断し、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同一でも異なっていてもよい。]
を準備する工程a2と、
(b2)第二のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-3’からなる第二のベクター断片を得る工程b2と、
(c2)第一のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’が除去された第一のベクター断片を得る工程c2と、
(d2)ライゲーション反応により、工程b2で得られた第二のベクター断片と工程c2で得られた第一のベクター断片とを連結し、下記(4)の構造を含む第四のベクター:
(4)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
[ここで、D(iii)は、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片を示し、D(iv)は、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片を示す。]
を生成させる工程d2と、
を含む。
【0057】
上記の本発明の第一の方法においては、上述のとおり、第一のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理することにより、得られたDNA断片「5’-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-3’」を、第二のベクターにおける「5’-R2-M2-R2’-3’」と入れ替える工程を含むが、同様の原理で、本発明の第二の方法においては、第二のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理することにより、得られたDNA断片「5’-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-3’」を、第一のベクターにおける「5’-R2-M1-R2’-3’」と入れ替える。よって、本発明の第二の方法では、本発明の第一の方法と異なり、第二の選択マーカー遺伝子を含むベクターが生成される。
【0058】
(工程a2)
本発明の第二の方法における工程a2は、第一の方法における工程a1と同様である。また、連結用DNA断片、制限酵素及びその認識配列、選択マーカー遺伝子、及びこれらの好ましい態様も、第一の方法における工程a1において述べたとおりである。
【0059】
(工程b2、工程c2)
本発明の第二の方法においては、次いで、第一の方法とは逆に、第二のベクターを第一の制限酵素及び第二の制限酵素で処理して、次の構造:5’-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-3’からなる第二のベクター断片を得る(工程b2)。一方、第一のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’が除去された第一のベクター断片を得る(工程c2)。工程b2と工程c2とは、いずれを先に行っても、同時並行で行ってもよい。
【0060】
工程b2における制限酵素処理及び工程c2における制限酵素処理としては、その好ましい態様も含めて、それぞれ、工程b1における制限酵素処理及び工程c1における制限酵素処理と同様である。また、前記アルカリホスファターゼ処理やベクター断片を回収する工程をさらに含んでいてもよい。
【0061】
(工程d2)
本発明の第二の方法においては、次いで、ライゲーション反応により、工程b2で得られた第二のベクター断片と工程c2で得られた第一のベクター断片とを連結し、下記(4)の構造:
(4)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
を含む第四のベクターを生成させる(工程d2)。
【0062】
ここで、D(iii)は、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片を示し、D(iv)は、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片を示す。工程d2におけるライゲーション反応としては、その好ましい態様も含めて、それぞれ、工程d1におけるライゲーション反応と同様である。
【0063】
(形質転換)
本発明の第一の方法においては、工程d1の後に、ライゲーション反応産物を宿主に形質転換する工程、及び、第一の選択マーカー遺伝子の発現を指標として第三のベクターが導入された宿主を選抜する工程をさらに含むことができる。同様に、本発明の第二の方法においては、工程d2の後に、ライゲーション反応産物を宿主に形質転換する工程、及び、第二の選択マーカー遺伝子の発現を指標として第四のベクターが導入された宿主を選抜する工程をさらに含むことができる。
【0064】
ライゲーション反応産物の宿主への形質転換は、当業者に公知の方法、例えば、ヒートショック法、エレクトロポレーション法により行うことができる。第三のベクター又は第四のベクターが導入された宿主の選抜の方法は、それぞれ第一の選択マーカー遺伝子又は第二の選択マーカー遺伝子の種類に応じて異なるが、例えば、当該選択マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子である場合には、その薬剤を含む環境下での生存を指標に選抜することができ、当該選択マーカー遺伝子がレポーター遺伝子である場合には、レポーター活性(例えば、蛍光など)を指標に選抜することができる。
【0065】
(第五の制限酵素、第六の制限酵素)
本発明の第一の方法及び第二の方法においては、R1、R1’、R2、及びR2’のいずれとも異なる第五の制限酵素の認識配列(図3では、その認識配列を「R5」で示した)を、第一のベクターにおける前記構造(1)以外の部位にさらに設定することができ、また、R1、R1’、R2、R2’及び第五の制限酵素の認識配列のいずれとも異なる第六の制限酵素の認識配列(図3では、その認識配列を「R6」で示した)を、第二のベクターにおける前記構造(2)以外の部位にさらに設定することができる。
【0066】
このような第五の制限酵素及び第六の制限酵素としては、特に制限はないが、例えば、認識配列が長く非特異的な切断が生じにくい、I-CeuI、I-SceIが好ましい。
【0067】
この場合、本発明の第一の方法における工程b1において、反応産物から、生成された第一のベクター断片を回収する操作を省略することができ、また、工程c1において、反応産物から、生成された第二のベクター断片を回収する操作を省略することができる。すなわち、工程b1の反応産物及び工程c1の反応産物に対して、そのままライゲーション反応を行うと、制限酵素処理で切り出された断片が元のベクターに戻るセルフライゲーションが副反応として生じ、元のベクターが副産物として生じてしまう(図3)。この場合でも、本発明の第一の方法における工程b1と同時若しくは工程b1の後、或いは工程d1の後に、第五の制限酵素で処理を行うことにより、元の第一のベクターは切断して除去することができ、一方、元の第二のベクターは、第一の選択マーカー遺伝子を持たないため、当該第一の選択マーカーによる選抜処理により、除去することができる。
【0068】
同様に、本発明の第二の方法における工程b2と同時若しくは工程b2の後、或いは工程d2の後に、第六の制限酵素で処理を行うことにより、元の第二のベクターは切断して除去することができ、元の第一のベクターは、第二の選択マーカー遺伝子を持たないため、当該第二の選択マーカーによる選抜処理により、除去することができる。
【0069】
(選択マーカー遺伝子の除去)
また、本発明の第一の方法においては、工程d1の後に、第三のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M1-R2’-3’を除去し、セルフライゲーション反応を行うことにより、次の構造:5’-R1-D(i)-D(ii)-R1’-3’を含む第五のベクターを生成させる工程をさらに含むことができる。これにより、第一の選択マーカー遺伝子の両側にある連結用DNA断片を連結することができる。この場合、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同じ制限酵素であるか、相同の突出末端を生じる制限酵素であることが必要である。
【0070】
同様に、本発明の第二の方法においては、工程d2の後に、第四のベクターを第三の制限酵素及び第四の制限酵素で処理して、次の構造:5’-R2-M2-R2’-3’を除去し、セルフライゲーション反応を行うことにより、次の構造:5’-R1-D(iii)-D(iv)-R1’-3’を含む第六のベクターを生成させる工程をさらに含むことができる。これにより、第二の選択マーカー遺伝子の両側にある連結用DNA断片を連結することができる。この場合にも、第三の制限酵素と第四の制限酵素とは同じ制限酵素であるか、相同の突出末端を生じる制限酵素であることが必要である。
【0071】
本工程における制限酵素による処理及びライゲーション反応(セルフライゲーション反応)の方法及び条件は、上記と同様である。
【0072】
(第三の選択マーカー遺伝子、第四の選択マーカー遺伝子)
また、本発明の第一の方法においては、第一の選択マーカー遺伝子の除去とセルフライゲーションにより生成された第五のベクターの選抜とを容易にするために、第一の選択マーカー遺伝子とは逆の作用を有する選択マーカー遺伝子である第三の選択マーカー遺伝子が第一のベクターのR2とR2’との間にさらに挿入されていることが好ましい。同様に、本発明の第二の方法においては、第二の選択マーカー遺伝子の除去とセルフライゲーションにより生成された第六のベクターの選抜とを容易にするために、第二の選択マーカー遺伝子とは逆の作用を有する選択マーカー遺伝子である第四の選択マーカー遺伝子が第二のベクターのR2とR2’との間にさらに挿入されていることが好ましい。第三の選択マーカー遺伝子及び第四の選択マーカー遺伝子をいずれも用いる場合、第三の選択マーカー遺伝子と第四の選択マーカー遺伝子とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
これにより、上記の選択マーカー遺伝子の除去をした場合に、前記セルフライゲーションの反応産物で形質転換体を作製すると、第三の選択マーカー遺伝子又は第四の選択マーカー遺伝子も除去されるため、第三の選択マーカー遺伝子又は第四の選択マーカー遺伝子の発現を指標として、第五のベクター又は第六のベクターを選択することができる。
【0074】
ここで、ある選択マーカーとは逆の作用を有する選択マーカー遺伝子とは、例えば、ある選択マーカー遺伝子の発現によって形質転換体の生存が可能となる場合、その発現によって形質転換体が生存できなくなる遺伝子のことをいう。例えば、第一の選択マーカー遺伝子が前記薬剤耐性遺伝子である場合、第三の選択マーカー遺伝子としては、前記逆選択マーカー遺伝子を選択することができる。この場合、例えば、本発明の第一の方法における工程a1~d1、及び/又は、本発明の第二の方法における工程a2~d2において、形質転換体を利用する際に、当該形質転換体が死滅しないよう、前記逆選択マーカー耐性の宿主を用いる。
【0075】
<連結の繰り返し>
本発明の第一の方法によれば、上記工程a1~d1のサイクルを繰り返すことにより、連結用DNA断片を順次連結することができる。すなわち、本発明は、本発明の第一の方法を1サイクル行った後に、工程d1で生成させた第三のベクターを、工程a1の第一のベクターとして用い、工程a1~d1をさらにnサイクル(合計1+nサイクル)繰り返して、下記(3’)の構造:
(3’)5’-R1-D(i)1+n-R2-M1-R2’-D(ii)1+n-R1’-3’
を含む第三’のベクターを生成させる、連結DNAの製造方法を提供する。
【0076】
ここで、D(i)1+nは、1+nサイクル目で得られる、第一の選択マーカー遺伝子の5’側の連結されたDNA断片である。当該連結されたDNA断片においては、サイクルを繰り返す毎に、5’側に第二のベクター由来のD(iii)が連結されることになる。したがって、D(i)1+nは、次の構造:5’-D(iii)-D(i)-3’を含むDNA断片となる。D(i)は、nサイクル目で得られた、次の構造:5’-D(iii)-D(i)n-1-3’を含むDNA断片であり、以降同様に続く。
【0077】
同様に、D(ii)1+nは、1+nサイクル目で得られる、第一の選択マーカー遺伝子の3’側の連結されたDNA断片である。当該連結されたDNA断片においては、サイクルを繰り返す毎に、3’側に第二のベクター由来のD(iv)が連結されることになる。したがって、D(ii)1+nは、次の構造:5’-D(ii)-D(iv)-3’を含むDNA断片となる。D(ii)は、nサイクル目で得られた、次の構造:5’-D(ii)n-1-D(iv)-3’を含むDNA断片であり、以降同様に続く。
【0078】
なお、上述したように、D(i)~D(iv)に付す下付き文字は、DNA断片が連結された回数(サイクル数)を示し、例えば、いずれか又は全てのサイクルにおいて、D(i)及びD(ii)がいずれか一方である場合、及び/又は、D(iii)及びD(iv)がいずれか一方である場合、当該下付き文字で示される数字は、連結されたDNA断片の個数に一致しない。
【0079】
また、各サイクル間で、第二のベクターのD(iii)は、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、各サイクル間で、第二のベクターのD(iv)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。したがって、サイクルを繰り返す毎に、第一の選択マーカー遺伝子の両側に、新たなDNA断片D(iii)及びD(iv)を連結することが可能である。
【0080】
同様に、本発明の第二の方法によれば、上記工程a2~d2のサイクルを繰り返すことにより、連結用DNA断片を順次連結することができる。すなわち、本発明は、本発明の第二の方法を1サイクル行った後に、工程d2で生成させた第四のベクターを、工程a2の第二のベクターとして用い、工程a2~d2をさらにnサイクル(合計1+nサイクル)繰り返して、下記(4’)の構造:
(4’)5’-R1-D(iii)1+n-R2-M2-R2’-D(iv)1+n-R1’-3’
を含む第四’のベクターを生成させる、連結DNAの製造方法を提供する。
【0081】
ここで、D(iii)1+nは、1+nサイクル目で得られる、第二の選択マーカー遺伝子の5’側の連結されたDNA断片である。当該連結されたDNA断片においては、サイクルを繰り返す毎に、5’側に第一のベクター由来のD(i)が連結されることになる。したがって、D(iii)1+nは、次の構造:5’-D(i)-D(iii)-3’を含むDNA断片となる。D(iii)は、nサイクル目で得られた、次の構造:5’-D(i)-D(iii)n-1-3’を含むDNA断片であり、以降同様に続く。
【0082】
同様に、D(iv)1+nは、1+nサイクル目で得られる、第二の選択マーカー遺伝子の3’側の連結されたDNA断片である。当該連結されたDNA断片においては、サイクルを繰り返す毎に、3’側に第一のベクター由来のD(ii)が連結されることになる。したがって、D(iv)1+nは、次の構造:5’-D(iv)-D(ii)-3’を含むDNA断片となる。D(iv)は、nサイクル目で得られた、次の構造:5’-D(iv)n-1-D(ii)-3’を含むDNA断片であり、以降同様に続く。
【0083】
また、各サイクル間で、第一のベクターのD(i)は、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、各サイクル間で、第一のベクターのD(ii)は、互いに同一であっても異なっていてもよい。したがって、このサイクルを繰り返す毎に、第二の選択マーカー遺伝子の両側に、新たなDNA断片D(i)及びD(ii)を連結することが可能である。第一の方法及び第二の方法において、nは自然数であって1以上の数であり、上限としては、連結DNAのサイズがベクターや宿主細胞に許容される限り特に制限されない。
【0084】
以下、図4を参照して、本発明の第一の方法の一態様を具体的に説明する。本発明の第一の方法では、選択マーカー遺伝子が異なる二つのベクターを用いる(工程a1)。図4の例では、第一の選択マーカー遺伝子は、スペクチノマイシン耐性遺伝子(Spec)であり、第二の選択マーカー遺伝子は、クロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)であり、第三の選択マーカー遺伝子は、ccdB遺伝子(逆選択マーカー遺伝子)である。また、第一の制限酵素及び第二の制限酵素としてBsaIを、第三の制限酵素及び第四の制限酵素としてBbsIを、それぞれ使用している。第一のベクター及び第二のベクターにおいては、第一の制限酵素としてのBsaIが、その認識配列R1の3’側を、第二の制限酵素としてのBsaIが、その認識配列R1’の5’側を、それぞれ切断するように各認識配列が配置されており、第三の制限酵素としてのBbsIが、その認識配列R2の5’側を、第四の制限酵素としてのBbsIが、その認識配列R2’の3’側を、それぞれ切断するように各認識配列が配置されている。
【0085】
本例では、第一のベクターの第一の選択マーカー遺伝子SpecをBsaIによって連結用DNA1及び連結用DNA2と共に切り出し(工程b1)、一方、第二のベクターにおいて第二の選択マーカー遺伝子(及び第三の選択マーカー遺伝子)ccdB+CmをBbsIによって切り出し除去し(工程c1)、第一のベクターから切り出されたDNA断片(第一の選択マーカー遺伝子カセット)が、第二のベクターから切り出されたDNA断片(第二の選択マーカー遺伝子カセット)と入れ替わるように、ライゲーション反応を行う(工程d1)。こうして、第一の選択マーカー遺伝子の5’側に、連結されたDNA断片(連結用DNA3+連結用DNA1)が形成され、3’側に、連結されたDNA断片(連結用DNA2+連結用DNA4)が形成される。
【0086】
このとき、第一のベクターにおいて切断に利用したBsaIの認識配列R1及びR1’並びに第二のベクターにおいて切断に利用したBbsIの認識配列R2及びR2’は、連結されたDNA断片(連結用DNA3と連結用DNA1の間、及び連結用DNA2と連結用DNA4の間)には残らない。こうして、次のサイクルにおける制限酵素処理でDNA断片の連結を解消してしまうことになる余計な認識配列を残さずに、DNA断片同士を連結することができる。一方、切断に利用しなかった第二のベクター由来のBsaIの認識配列及び第一のベクター由来のBbsIの認識配列は残されているため、ライゲーション反応により生成される第三のベクターにおいて、第一の選択マーカー遺伝子Specの両端に、BbsIの認識配列R2及びBsaIの認識配列R2’が元の第一のベクターと同様の位置で復元される。したがって、このサイクル(工程a1~d1)は、何度も繰り返し行うことが可能である。
【0087】
第二の方法においても、同様の原理で、サイクル(工程a2~d2)は、何度も繰り返し行うことが可能である(図5)。
【0088】
<第一の方法と第二の方法との組み合わせ>
本発明においては、第一の方法で生成された第三のベクター又は第三’のベクターと、第二の方法で生成された第四のベクター又は第四’のベクターとを組み合わせて、同様のDNA断片の連結サイクルを行うことができる。
【0089】
したがって、本発明は、第一の方法における工程d1で生成させた第三のベクター又は第三’のベクターを、第二の方法における工程a2の第一のベクターとして用いることを特徴とする、連結DNAの製造方法を提供する。また、本発明は、第二の方法における工程d2で生成させた第四のベクター又は第四’のベクターを、第一の方法における工程a1の第二のベクターとして用いることを特徴とする、連結DNAの製造方法を提供する。
【0090】
以下、図6を参照して、本発明の組み合わせの一態様を説明する。すなわち、図6では、先ず、連結用DNA断片を1つずつ含む第一のベクター(Specを含むベクター)及び第二のベクター(Cmを含むベクター)から、本発明の第一の方法を1サイクル行って(1段階目)、連結用DNA断片を2つ含む第三のベクター(Specを含むベクター)を生成させる。また、同様に、連結用DNA断片を1つずつ含む第一のベクター(Specを含むベクター)及び第二のベクター(Cmを含むベクター)から、本発明の第二の方法を1サイクル行って(1段階目)、連結用DNA断片を2つ含む第四のベクター(Cmを含むベクター)を生成させる。これらを、それぞれ、第二の方法の工程a2の第一のベクター及び第二のベクターとして用いる(2段階目)。これを繰り返すことにより、繰り返しのたびに集積されるDNA断片の数は、1、2、4、8、16、32と、指数関数的に増やすことができる。また、DNA断片の連結時には、選択マーカー遺伝子を、Spec(第一の選択マーカー遺伝子)→Cm(第二の選択マーカー遺伝子)→Spec→Cm→・・・と切り替えることができるため、サイクル毎に、薬剤(スペクチノマイシン又はクロラムフェニコール)による選択を行うだけで、生成されたDNA産物の品質検査を経ずとも、高確率で目的の連結DNAが挿入されたベクターを保持する形質転換体のみを効率的に選択することができる。
【0091】
目的の連結DNAを保持するベクター(目的産物)としては、第三の選択マーカー遺伝子又は第四の選択マーカー遺伝子を含むベクターであることが好ましい。図6では、第二のベクターの第四の選択マーカー遺伝子として、逆選択マーカー遺伝子であるccdB遺伝子を有している。NEB5α等の一般的に形質転換に用いられる大腸菌株は、ccdB遺伝子を保有していると生育できずに死滅する。したがって、第三の制限酵素及び第四の制限酵素による切断後、セルフライゲーション反応を行い、ccdB耐性ではない宿主に形質転換すれば、第二のベクターにおいてccdB遺伝子を持たないDNA産物、すなわち、選択マーカー遺伝子が除去されて、1つに連結されたDNA産物を選択することができる。なお、ccdB遺伝子を逆選択マーカー遺伝子として利用する場合には、ccdB耐性株を繰り返しサイクルに用いる。
【0092】
さらに、第五の制限酵素の認識配列(例えば、I-CeuI)を第一のベクターにおける前記構造(1)以外の部位にさらに設定し、かつ、第五の制限酵素の認識配列とは異なる第六の制限酵素の認識配列(例えば、I-SceI)を第二のベクターにおける前記構造(2)以外の部位にさらに設定した場合には、各サイクルで、生成されるベクターにおける選択マーカー遺伝子が、Spec(第一の選択マーカー遺伝子)→Cm(第二の選択マーカー遺伝子)→Spec→Cm→・・・と切り替わるのに応じて、目的のベクターに含まれる制限酵素の認識配列が、I-CeuI→I-SeuI→I-CeuI→I-SceI→・・・と切り替わる。したがって、この場合、生成物を、I-SeuI→I-CeuI→I-SceI→I-CeuI→・・・という順に制限酵素(ホーミングヌクレアーゼ)で処理することにより、目的外のベクター(セルフライゲーションした副産物)を切断して、除去することができる(図3を参照のこと)。
【0093】
また、本発明の第一の方法及び第二の方法の各サイクルで得られる目的産物や中間産物としての各ベクターは、別の組み合せの目的産物や中間産物としての各ベクターと組み合わせて、さらに様々な連結DNAの製造に再利用することができる。このように再利用可能な様々な産物のストックが増加すれば、新たな目的産物の製造に必要な工程数が減少するため、製造時間を短縮したり、製造工程を効率化したりすることができる(図7)。
【0094】
<ベクターの組み合わせ>
本発明は、上記本発明の第一の方法及び/又は第二の方法に用いるための、以下のベクターの組み合わせ(ベクターの第一の組み合わせ)、すなわち、
下記(1)の構造を含む第一のベクター及び下記(2)の構造を含む第二のベクター:
(1)5’-R1-D(i)-R2-M1-R2’-D(ii)-R1’-3’
(2)5’-R1-D(iii)-R2-M2-R2’-D(iv)-R1’-3’
を提供する。ここで、D(i)~D(iv)、R1、R1’、R2、R2’、M1、M2は、それぞれ、その好ましい態様も含めて、上記の本発明に係る第一ベクター及び第二のベクターとして述べたとおりである。
【0095】
また、本発明は、第一のベクターの組み合わせを調製するために、連結用DNAの挿入部位を有する、以下のベクターの組み合わせ(ベクターの第二の組み合わせ)、すなわち、
下記(1’)の構造を含む第一のベクター及び下記(2’)の構造を含む第二のベクター:
(1’)5’-R1-E1-R2-M1-R2’-E2-R1’-3’
(2’)5’-R1-E3-R2-M2-R2’-E4-R1’-3’
も提供する。ここで、R1、R1’、R2、R2’、M1、M2は、それぞれ、その好ましい態様も含めて、上記の本発明に係る第一ベクター及び第二のベクターにおいて述べたとおりである。E1、E2、E3、及びE4は、それぞれ独立に、任意の連結用DNA断片の挿入用部位を示し、E1及びE2はいずれか一方であってよく、E3及びE4はいずれか一方であってよい。前記挿入用部位としては、例えば、マルチクローニングサイトが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0096】
これらベクターの組み合わせは、それぞれ、ベクターの組み合わせ物としても、前記ベクターの組み合わせを含むキットとしてもよい。キットとする場合には、各制限酵素反応やライゲーション反応に必要な酵素、緩衝液、希釈緩衝液等をさらに含んでいてもよいが、これらに制限されない。
【0097】
<応用例(ゲノム編集系の調製)>
本発明の方法は、第一の方法と第二の方法との組み合わせ、さらに各繰り返しのパターンやサイクル数をランダムに組み合わせることにより、いくつもの組み合わせパターンでDNA断片を連結することができる方法(FRACTALアセンブリ法)である。そのため、DNA断片の種類や数によらず、様々な技術に用いることができる。
【0098】
例えば、本発明をゲノム編集系の調製に用いる場合、連結用DNA断片D(i)~D(iii)としては、それぞれ例えば、ZF(Zinc Finger)、TALE(Transcription Activator Like Effectors)、PPR(Pentatricopeptide Repeat)などのゲノム編集酵素の繰り返しユニットをコードするDNA;CRISPR-Cas(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats CRISPR-Associated Proteins)のガイドRNAをコードするDNAを採用することができる。また、例えば、D(i)及びD(iii)として、ゲノム編集酵素の繰り返しユニット、又はガイドRNAをコードするDNAを採用し、D(ii)及びD(iv)として、それぞれD(i)及びD(iii)に特異的な短いバーコード配列(識別用配列)を採用すれば、各繰り返しユニットや各ガイドRNAをコードするDNAがどのような順序で連結されたのかを、これらの配列を全て確認しなくとも、連結されたバーコード配列を指標に判別することができる。以下、具体的な態様を例に挙げて説明する。
【0099】
-gRNAの連結-
CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集技術は、その簡便さと編集効率の高さから急速に利用が広まり、今や遺伝子工学における標準的な技術の1つとなっている。数塩基のPAM認識配列に隣接する20塩基程度の任意の標的配列と相補的なガイドRNAさえ合成すれば、ガイドRNAがCas9を標的配列まで誘導する役割を果たし、Cas9によるDNA二重鎖切断によって標的配列を含む遺伝子の機能を破壊することができる。これまでに、ヒトをはじめとする哺乳細胞や酵母等を対象に、CRISPR-Cas9を利用した様々な遺伝子ノックアウトライブラリが作製されてきたが、数十以上の遺伝子を同時に欠損した多重遺伝子欠損細胞を作製するような技術はこれまで存在しなかった。これは複数のガイドRNAをコードする配列(gRNA)を単一のベクターに搭載するのが難しいことに起因する。これまでにもGolden Gate法等を用いて複数のgRNAをシングルベクターに集積する手法はあったが、集積できる数は最大で10個程度であった。一方、本発明の連結DNAの製造方法によれば、数十以上のgRNAを連結することが可能である。ただし、単に数十個のgRNAが一つのアレイとして連結されたベクターライブラリを作製しても、単一のガイドNA発現ユニットの長さはプロモータ配列も含めると350bp程度であるため、gRNAがタンデムに連結されたアレイ領域をDNAシークエンシングによって直接同定することは難しい。
【0100】
そこで、本例では、本発明の連結DNAの製造方法を用いて、選択マーカー遺伝子の一端にgRNAを、もう一端にはそのgRNAに対応するバーコード配列(BC)を、それぞれ連結したベクターライブラリ(gRNA-BCベクター)を作製した(実施例の1)。作製したベクターライブラリをヒト細胞にトランスフェクションすれば、多様な多重遺伝子欠損細胞を得ることができる。さらに、同一のDNA分子上にgRNAのアレイとそれに対応する短いDNAバーコードのアレイとが対応して集積することになるため、このDNAバーコードアレイの塩基配列を読むことでgRNAの組合せを同定することができる。本例では、選択マーカー遺伝子の一端がBbsI、BsaIではなく、NheI、SpeIの制限酵素サイトであるツールキットベクターを用いた。この場合、NheI、SpeIで処理されたDNA断片の突出末端が相同になるため、ライゲーションによって連結可能である。連結後には、いずれの制限酵素も認識できない配列が形成される。
【0101】
実際に、本発明の連結DNAの製造方法を用いて、32個のgRNA及び、それぞれのgRNAに対応する32個のバーコード配列を単一のベクターに集積できることが示された(図13~14)。さらに、本発明の方法によって複数のgRNAが一つに集積されたベクター、個別のgRNAを含むベクターを混合したプール、個別のgRNA配列を持つ二本鎖DNAの混合プールをそれぞれヒト培養細胞にトランスフェクションによって導入した場合、gRNAが集積されたベクターが最も高いゲノム編集効率を持つことが示された(図15)。また、本ツールキットベクターのように、選択マーカー遺伝子の3’側にあるBsaI認識配列の外側にPoly-A配列を挿入することにより、gRNA及びバーコード配列を集積後、ccdB+Cmの領域を転写プロモータ配列と置き換えて細胞に導入すると、DNAバーコードアレイがpoly-A配列が付加されたRNAとして転写される。したがって、1細胞RNAトランスクリプトーム技術を用いて、各細胞の状態とそれらが持つgRNAの組合せ情報を同時に読みとることが可能である。
【0102】
これにより、複数のgRNAを発現できるベクターが得られれば、Casタンパク質と組み合わせてCRISPR-Casシステムを構築することにより、同時に、ゲノム上の複数の領域のDNAを編集することが可能となる。組み合わせるCasタンパク質は、完全なヌクレアーゼ活性を持つCasタンパク質であっても、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性の一部又は全部を消失させたCasタンパク質(nCas、dCas)であっても、これらCasタンパク質と他の酵素との融合タンパク質であってもよい。融合する他の酵素の活性としては、例えば、デアミナーゼ活性(例えば、シスチジンデアミナーゼ活性、アデノシンデアミナーゼ活性)、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、光回復酵素活性、又はグリコシラーゼ活性が含まれるが、これらに制限されない。Casタンパク質は転写調節タンパク質との融合タンパク質であってもよい。転写調節タンパク質としては、例えば、光誘導性転写制御因子、小分子/薬剤反応性転写制御因子、転写因子、転写抑制因子などが挙げられるが、これらに制限されない。融合タンパク質を調製する場合には、必要に応じて、リンカー配列を介在させてもよい。
【0103】
-TALEリピートユニットの連結-
TALE、Zinc fingerなどのゲノム編集に利用されているタンパク質配列は、部分的に異なる配列を含む数種のリピートユニット配列がタンデムに繰り返した構造を持つ。例えば、TALEでは部分的にアミノ酸残基が異なる4~5種類のリピートユニット配列それぞれが特異的に塩基を認識する。これまで、TALEのリピートユニットアレイの合成には、Golden Gate法を用いた方法が一般的な手法として用いられてきた。しかし、目的のTALEリピートユニットアレイに応じて異なる断片配列を用意する必要があった。一方で、本発明の方法によれば、あらゆる組み合わせのTALEリピートユニットアレイを製造することができ、特に、TALEリピートユニットを分割し、アミノ酸残基の可変領域(RVD:Repeat Variable Diresidure)を含む断片のみにバリエーションを持たせることで、他の断片は数種類さえ準備すれば、様々なTALEリピートユニットが含まれたプールライブラリ(TALEリピートユニットアレイ)を作製することもできる(図8)。
【0104】
実際に、本発明の連結DNAの製造方法を用いて、3断片に分割したTALEリピートユニットを連結していき、最終的に48断片16リピートからなるTALEリピートユニットアレイを合成した(実施例の2)。本手法は、TALEだけではなく、Zinc fingerやPPR(Pentatricopeptide Repeat)タンパク質等、部分的に異なる数種のリピートユニットから構成されるリピートタンパク質に汎用的に適用することができる。
【0105】
また、上記のgRNAとgRNAに対応するバーコード配列とを同時に集積していくというアイデアは、効率的にタンパク質リピートを得たいときに適用することができる。例えば、TALEリピートユニットの連結であれば、はじめに、ツールキットベクターの選択マーカー遺伝子の一端にTALEリピートユニットが1つ、もう一端に対応するバーコード配列が挿入されたベクターを、各TALEリピートユニットのそれぞれについて準備する。その後、これらのベクターの混合物を本発明の方法で連結していくと、対応するDNAバーコードアレイを持つ様々なTALEリピートユニットアレイのライブラリープールができる(図9)。
【0106】
その後、バーコードアレイの3’末端側に30塩基程度のランダムDNA配列を挿入すると、各バーコードアレイを持つそれぞれのDNA 1分子に特異的な30塩基のDNA配列が付加されることになる。バーコードアレイの3’末端から、ランダムバーコードの5’末端までを含む短い領域はPCR法で増幅し、超並列DNAシークエンサーによって一斉に読み出すことができるため、ライブラリープール内で、目的のTALEリピートユニットアレイを、対応するDNAバーコードアレイを指標に同定するとともに、それに紐付いたランダムバーコード配列も同定することができる。したがって、特定のTALEリピートユニットアレイをライブラリープールから取り出す際に、TALEリピートユニットアレイに対応するランダムバーコード配列に特異的に結合するPCRプライマーを用いることで、目的のTALEリピートユニットアレイのみをライブラリープールから増幅して抽出することが可能になる。TALEを用いたゲノム編集は、目的のTALEリピートユニットを生成することがgRNAを生成することに比べて、煩雑であることが欠点であったが、このように予め準備したライブラリープールから特定のプライマーを利用するだけで、目的の産物を取り出すことが可能になる。
【実施例
【0107】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。以下において、各プラスミドは、それぞれ下記のものを用いた。
【0108】
<プラスミドpNM1088(Spec)>
pUC19(New England Biolabs Japan(NEB))を鋳型として、フォワードプライマーDG012(配列番号:1)及びリバースプライマーDG011(配列番号:2)で増幅したPCR産物;pUC19(NEB)を鋳型として、フォワードプライマーDG009(配列番号:3)及びリバースプライマーDG010(配列番号:4)で増幅したPCR産物;pLVSIN-CMV Pur Vector(Takara)を鋳型として、フォワードプライマーDG007(配列番号:5)及びリバースプライマーDG008(配列番号:6)で増幅したPCR産物;pUC19(NEB)を鋳型として、フォワードプライマーDG001(配列番号:7)及びリバースプライマーDG002(配列番号:8)で増幅したPCR産物;並びに、pINDUCER20(addgene)を鋳型として、フォワードプライマーDG003(配列番号:9)及びリバースプライマーDG004(配列番号:10)で増幅したPCR産物を、Gibson Assemblyによって連結することで作製した。プラスミドpNM1088(Spec)は、スペクチノマイシン耐性遺伝子(Spec)を有する。
【0109】
<プラスミドpNM1089(ccdB+Cm)>
pUC19(NEB)を鋳型として、フォワードプライマーDG012及びリバースプライマーDG011で増幅したPCR産物;pUC19(NEB)を鋳型として、フォワードプライマーDG009及びリバースプライマーDG010で増幅したPCR産物;pLVSIN-CMV Pur Vector(Takara)を鋳型として、フォワードプライマーDG007及びリバースプライマーDG008で増幅したPCR産物;pUC19(NEB)を鋳型として、フォワードプライマーDG001及びリバースプライマーDG002で増幅したPCR産物;並びに、pDONR223(addgene)を鋳型として、フォワードプライマーDG013(配列番号:11)及びリバースプライマーDG015(配列番号:12)で増幅したPCR産物を、Gibson Assemblyによって連結することで作製した。プラスミドpNM1089(ccdB+Cm)は、クロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)と大腸菌DNAgyrase阻害タンパク質(control of cell death)遺伝子(ccdB)との組み合わせ(ccdB+Cm)を有する。
【0110】
<プラスミドpKK1010(Amp)>
pDONR223(addgene)を鋳型として、フォワードプライマーDG021(配列番号:13)及びリバースプライマーDG015で増幅したPCR産物;並びに、pNM1088を鋳型として、フォワードプライマーM13-Fw(配列番号:14)及びリバースプライマーDG008で増幅したPCR産物を、Gibson Assemblyによって連結することで作製した。プラスミドpKK1010(Amp)は、アンピシリン耐性遺伝子(Amp)を有する。
【0111】
<プラスミドpKK1009(Amp)>
pDONR223(addgene)を鋳型として、フォワードプライマーDG020(配列番号:15)及びリバースプライマーDG006(配列番号:16)で増幅したPCR産物;並びに、pNM1089を鋳型として、フォワードプライマーDG012及びリバースプライマーDG009で増幅したPCR産物を、Gibson Assemblyによって連結することで作製した。プラスミドpKK1009(Amp)は、アンピシリン耐性遺伝子(Amp)を有する。
【0112】
1. gRNA-BCベクターの作製(FRACTALアセンブリ法)
ガイドRNAをコードする配列(gRNA)とそれに対応するバーコードをコードする配列(BC)とを、本発明の連結DNAの製造方法(FRACTALアセンブリ法)により、1つのベクターに集積したgRNA-BCベクターを作製した。
【0113】
1.1 gRNA、BC、及び選択マーカー遺伝子を含むDNA断片(gRNA-BCユニット)の増幅
ヒトABCトランスポーターの96個の遺伝子領域を標的とするガイドRNA1~96をそれぞれコードする配列(gRNA1~96)をそれぞれ含むフォワードプライマー1~96(ガイドRNA1をコードする配列(gRNA1)を含むフォワードプライマーNM_ABC001Fwの配列を例として配列番号:17に示す)と、各gRNAに対応するバーコードをそれぞれコードする配列(BC1~96)をそれぞれ含むリバースプライマ―(gRNA1に対応するバーコードをコードする配列(BC1)を含むリバースプライマ―NM_ABC001Rvの配列を例として配列番号:18に示す)と、をそれぞれ用いて、プラスミドpNM1088(Spec)及びプラスミドpNM1089(ccdB+Cm)をそれぞれ鋳型として、PCR法で増幅した。これにより、「5’-gRNA1-Spec-BC1-3’」~「5’-gRNA96-Spec-BC96-3’」をそれぞれ含むDNA断片(計96種)、及び、「5’-gRNA1-ccdB+Cm-BC1-3’」~「5’-gRNA96-ccdB+Cm-BC96-3’」をそれぞれ含むDNA断片(計96種)(以下、場合によりこれら192種のDNA断片を「gRNA-BCユニット」と総称する)をそれぞれ得た。各DNA断片の5’側にはNheI認識配列を、3’側にはBsaI認識配列を、上記プライマーによりそれぞれ挿入し、また、gRNAと各マーカー遺伝子との間にはSpeI認識配列を、BCと各マーカー遺伝子との間にはBbsI認識配列を、上記プライマーによりそれぞれ挿入した。PCR条件を下記に示す。
【0114】
[PCR条件]
・反応溶液(Total:20μL):
5×GC buffer 4.0μL
2.5μM dNTPs 0.4μL
Phusion DNA polymerase 0.4μL
2μM フォワードプライマー 5.0μL
2μM リバースプライマー 5.0μL
DMSO 1.0μL
50pg/μL 鋳型プラスミド 1.0μL
ddHO 3.2μL
・反応条件:
1. 95℃ 30秒
2~5. 95℃ 10秒、53℃ 10秒、72℃ 1分:30サイクル
6. 72℃ 5分
7. 4℃ ∞。
【0115】
1.2 ツールキットベクターの作製(gRNA-BCユニットのベクターへの挿入)
上記1.1のPCR産物(gRNA-BCユニット)を制限酵素NheI(NheI-HF、NEB)及びBsaI(BsaI-HF v2、NEB)で切断処理してDonor DNAとした。また、Host DNAとして、プラスミドpKK1010(Amp)及びプラスミドpKK1009(Amp)を、それぞれ、制限酵素SpeI(SpeI-HF、NEB)及びBbsI(BbsI-HF、NEB)で切断処理した。なお、BsalIの切断末端には、上記プライマーにより、BbsIの切断末端に連結可能な相同配列を挿入しておいた。「5’-gRNA1-Spec-BC1-3’」~「5’-gRNA96-Spec-BC96-3’」をそれぞれ含むDNA断片をプラスミドpKK1010(Amp)にライゲーションにより連結して、各DNA断片を1つずつ含むツールキットベクター1(n)(n:1~96)を作製した。また、「5’-gRNA1-ccdB+Cm-BC1-3’」~「5’-gRNA96-ccdB+Cm-BC96-3’」をそれぞれ含むDNA断片をプラスミドpKK1009(Amp)にライゲーションにより連結して、各DNA断片を1つずつ含むツールキットベクター2(n)(n:1~96)を作製した。制限酵素処理条件及びライゲーション条件をそれぞれ下記に示す。
【0116】
[制限酵素処理条件]
〔NheI/BsaI for Donor DNA〕
・反応溶液(Total:50μL):
10×CutSmart Buffer 5μL
NheI(20,000units/mL) 1μL
BsaI(20,000units/ml) 1μL
PCR産物(1.4以降ではドナーベクター) 5μg
ddHO 残部
・反応条件
1. 37℃ 2時間
2. 1μL CIPを反応溶液50μLに添加
3. 37℃ 30分
〔SpeI/BbsI for Host DNA〕
・反応溶液(Total:50μL):
10×CutSmart Buffer 5μL
SpeI(20,000units/mL) 1μL
BbsI(20,000units/ml) 1μL
プラスミド(1.4以降ではホストベクター) 5μg
ddHO 残部
・反応条件
1. 37℃ 2時間。
【0117】
[ライゲーション条件]
・反応溶液(Total:20μL):
10×ligation buffer 2μL
Donor DNA 100ng
Host DNA 100ng
T4 DNA Ligase(350U/μL) 1μL
ddHO 残部
・反応条件
1. 16℃ 2時間
2. 4℃ ∞。
【0118】
1.3 ツールキットベクターの形質転換
上記1.2のライゲーション産物を大腸菌に形質転換し、Donor DNAのgRNA-BCユニットに含まれる各選択マーカー遺伝子に対応した抗生物質を含む薬剤選択培地を用いて、目的のツールキットベクターを含む大腸菌を選択した。先ず、選択マーカー遺伝子がSpecの場合、2.5μLライゲーション産物を30μL NEB 5-alpha Competent E.coli(NEB)に加えた。また、選択マーカー遺伝子がccdB+Cmの場合、2.5μLライゲーション反応液を30μL One ShotTM ccdB SurvivalTM 2 T1 Competent Cells(Invitrogn)に加えた。次いで、これらを氷上で30分間静置し、その後、42℃ウォーターバスで30秒間インキュベーション(ヒートショック)した後、氷上で2分間静置した。次いで、これらにそれぞれ250μL Soc培地を添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、インキュベートした培養液全てを前記選択マーカー遺伝子に対応した抗生物質を含むLB寒天培地に播種した。前記gRNA-BCユニットに含まれる選択マーカー遺伝子がSpecの場合、抗生物質はアンピシリン(Amp)及びスペクチノマイシン(Spec)であり、前記gRNA-BCユニットに含まれる選択マーカー遺伝子がccdB+Cmの場合、抗生物質はアンピシリン(Amp)及びクロラムフェニコール(Cm)である。次いで、16℃で3~4日間インキュベーションをし、生育が確認された大腸菌から目的のツールキットベクター、すなわち、前記ツールキットベクター1(n)と前記ツールキットベクター2(n)とをそれぞれ単離した。これらのツールキットベクターは、それぞれ、gRNA-BCユニットを1セット含むgRNA-BCベクターである。
【0119】
得られたツールキットベクター1(n)及びツールキットベクター1(n)のうち、nが任意のnであるgRNAn-BCnユニットを含むツールキットベクター1(n)の模式図を図10に、nが任意のnであるgRNAn-BCnユニットを含むツールキットベクター2(n)の模式図を図11に、それぞれ示す。各DNA断片に挿入した5’側のNheI認識配列は上記ライゲーションにより消滅するが、ツールキットベクター1(n)及びツールキットベクター2(n)は、それぞれ、Host DNA由来のNheI認識配列及びU6プロモーター配列をgRNAの5’側に含み、ポリA配列をBsaI認識配列の3’側に含む。なお、各DNA断片に挿入した3’側のBsaI認識配列は上記ライゲーションでは消滅しない(Host DNA由来のBbsI認識配列は上記ライゲーションで除去される)。
【0120】
1.4.1 ツールキットベクターの切断処理1
追加するgRNA-BCユニットを含むドナーベクターとして、96種類のツールキットベクター2(1~96)(「gRNA1-ccdB+Cm-BC1」を含むベクター~「gRNA96-ccdB+Cm-BC96」を含むベクター)を混合し、これを制限酵素NheI及びBsaIで切断した。他方、前記セットを受け取るホストベクターとして、96種類のツールキットベクター1(1~96)(「gRNA1-Spec-BC1」を含むベクター~「gRNA96-Spec-BC96」を含むベクター)を混合し、これを制限酵素SpeI及びBbsIで切断した。制限酵素処理条件は上記の1.2に示したとおりである。
【0121】
1.4.2 ライゲーションによるDNA断片の連結1(gRNAn-gRNAn、BCn-BCn
上記の1.4.1でドナーベクターから切り出された、gRNA-BCユニットを1セット含む断片(「5’-gRNAn-ccdB+Cm-BCn-3’」、n:1~96のうちのいずれか)の混合物と、ホストベクターから選択マーカー遺伝子(Spec)を除去した、gRNA-BCユニットを1セット含む断片(「gRNAn-3’/5’-BCn」、n:1~96のうちのいずれか)の混合物と、をそれぞれ回収し、ライゲーションによって連結した。ライゲーション条件は上記の1.2に示したとおりである。
【0122】
1.4.3 目的ベクターの形質転換1
上記1.4.2のライゲーション産物2.5μLを、One ShotTM ccdB SurvivalTM 2 T1 Competent Cells(Invitrogn)30μLに加えた。次いで、これを氷上で30分間静置し、その後、42℃ウォーターバスで30秒間インキュベーション(ヒートショック)した後、氷上で2分間静置した。次いで、250μL Soc培地を添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、インキュベートした培養液全てをアンピシリン(Amp)及びクロラムフェニコール(Cm)を含むLB寒天培地に播種した。16℃で3~4日間インキュベーションをし、生育が確認された大腸菌から目的ベクター、すなわち、「5’-gRNAn-gRNAn-ccdB+Cm-BCn-BCn-3’、n、n:互いに独立にそれぞれ1~96のうちのいずれか」を含むベクター(ツールキットベクター2(n、n))を単離した。得られたツールキットベクター2(n、n)のgRNA-BCユニットの模式図を図12の(a)に示す。
【0123】
1.5.1 ツールキットベクターの切断処理2
追加するgRNA-BCユニットを含むドナーベクターとして、ツールキットベクター1(1~96)(「gRNA1-Spec-BC1」を含むベクター~「gRNA96-Spec-BC96」を含むベクター)を混合し、これを制限酵素NheI及びBsaIで切断した。他方、前記セットを受け取るホストベクターとして、ツールキットベクター2(1~96)(「gRNA1-ccdB+Cm-BC1」を含むベクター~「gRNA96-ccdB+Cm-BC96」を含むベクター)を混合し、これを制限酵素SpeI及びBbsIで切断した。制限酵素処理条件は上記の1.2に示したとおりである。
【0124】
1.5.2 ライゲーションによるDNA断片の連結2(gRNAn-gRNAn、BCn-BCn
上記の1.5.1でドナーベクターから切り出された、gRNA-BCユニットを含む断片(「5’-gRNAn-Spec-BCn-3’」、n:1~96のうちのいずれか)の混合物と、ホストベクターから選択マーカー遺伝子(ccdB+Cm)を除去した、gRNA-BCユニットを1セット含む断片(「gRNAn-3’/5’-BCn」、n:1~96のうちのいずれか)の混合物と、をそれぞれ回収し、ライゲーションによって連結した。ライゲーション条件は上記の1.2に示したとおりである。
【0125】
1.5.3 目的ベクターの形質転換2
上記1.5.2のライゲーション産物2.5μLを、NEB 5-alpha Competent E.coli(NEB)30μLに加えた。次いで、これを氷上で30分間静置し、その後、42℃ウォーターバスで30秒間インキュベーション(ヒートショック)した後、氷上で2分間静置した。次いで、250μL Soc培地を添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、インキュベートした培養液全てをアンピシリン(Amp)及びスペクチノマイシン(Spec)を含むLB寒天培地に播種した。16℃で3~4日間インキュベーションをし、生育が確認された大腸菌から目的ベクター、すなわち、「5’-gRNAn-gRNAn-Spec-BCn-BCn-3’」(n、n:互いに独立にそれぞれ1~96のうちのいずれか)を含むベクター(ツールキットベクター1(n、n))を単離した。得られたツールキットベクター1(n、n)のgRNA-BCユニットの模式図を図12の(b)に示す。得られたツールキットベクターは、gRNA-BCユニットを2セット含むgRNA-BCベクターである。
【0126】
1.6 DNA断片の連結3(gRNAn~n、BCn~n
追加するgRNA-BCユニットを含むドナーベクターとして、ツールキットベクター1(1~96)の混合物に代えて、1.5.3で得られた、gRNA-BCユニットを2セット含むツールキットベクター1(n、n)の混合物(n、n:互いに及びベクター間でそれぞれ独立に、1~96のいずれか)を用い、前記セットを受け取るホストベクターとして、ツールキットベクター2(1~96)の混合物に代えて、上記の1.4.3で得られた、gRNA-BCユニットを2セット含むツールキットベクター2(n、n)の混合物(n、n:互いに及びベクター間でそれぞれ独立に、1~96のいずれか)を用いたこと以外は1.5.1~1.5.3と同様にして、目的ベクター、すなわち、「5’-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-Spec-BCn-BCn-BCn-BCn-3’」を含むベクター(ツールキットベクター1(n~n))を得た。得られたツールキットベクター1(n~n)のgRNA-BCユニットの模式図を図12の(d)に示す。得られたツールキットベクターは、gRNA-BCユニットを4セット含むgRNA-BCベクターである。
【0127】
1.7 DNA断片の連結4(gRNAn~n、BCn~n
追加するgRNA-BCユニットを含むドナーベクターとして、ツールキットベクター2(1~96)の混合物に代えて、1.4.3で得られた、gRNA-BCユニットを2セット含むツールキットベクター2(n、n)の混合物(n、n:互いに及びベクター間でそれぞれ独立に、1~96のいずれか)をツールキットベクター2(n、n)の混合物として用い、前記セットを受け取るホストベクターとして、ツールキットベクター1(1~96)の混合物に代えて、1.5.3で得られたツールキットベクター1(n、n)の混合物(n、n:互いに及びベクター間でそれぞれ独立に、1~96のいずれか)をツールキットベクター1(n、n)の混合物として用いたこと以外は1.4.1~1.4.3と同様にして、目的ベクター、すなわち、「5’-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-ccdB+Cm-BCn-BCn-BCn-BCn-3’」を含むベクター(ツールキットベクター2(n~n))を得た。得られたツールキットベクター2(n~n)のgRNA-BCユニットの模式図を図12の(c)に示す。得られたツールキットベクターは、gRNA-BCユニットを4セット含むgRNA-BCベクターである。
【0128】
1.8 DNA断片の連結5(gRNAn~n、BCn~n、及びそれ以降)
上記1.6及び1.7で得られたツールキットベクターを用いて1.4.1~1.4.3を繰り返し、gRNA-BCユニットを8セット含むツールキットベクター(gRNA-BCベクター)、すなわち、「5’-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-gRNAn-ccdB+Cm-BCn-BCn-BCn-BCn-BCn-BCn-BCn-BCn-3’」を含むベクター(ツールキットベクター2(n~n))を得た。得られたツールキットベクター2(n~n)のgRNA-BCユニットの模式図を図12の(e)に示す。また、上記1.6及び1.7で得られたツールキットベクターを用いて1.5.1~1.5.3を繰り返し、gRNA-BCユニットに含まれる選択マーカー遺伝子がSpecのものも同様に作製した。
【0129】
さらに、同様に、上記1.4.1以降を繰り返して、gRNA-BCユニットを16セット含む各ツールキットベクター1(n~n16)及びツールキットベクター2(n~n16)(gRNA-BCベクター)、並びに、gRNA-BCユニットを32セット含む各ツールキットベクター1(n~n32)及びツールキットベクター2(n~n32)(gRNA-BCベクター)もそれぞれ作製した。
【0130】
上記の1.2で用いたプラスミドpKK1009(lane 1)、1.3で得られたgRNA-BCユニットを1セット含むツールキットベクター2(n)(lane 2)、1.4.3で得られたgRNA-BCユニットを2セット含むツールキットベクター2(n、n)(lane 3)、1.7で得られたgRNA-BCユニットを4セット含むツールキットベクター2(n~n)(lane 4)、1.8で得られたgRNA-BCユニットを8セット含むツールキットベクター2(n~n)(lane 5)、gRNA-BCユニットを16セット含むツールキットベクター2(n~n16)(lane 6)、gRNA-BCユニットを32セット含むツールキットベクター2(n~n32)(lane 7)を、それぞれ制限酵素SpeIで切断した断片の電気泳動写真を図13に示す。図13に示したように、上記連結を繰り返す毎に分子量が大きくなり、gRNA及びBCがいずれも段階的に(0、1、2、4、8、16、32個)集積されていることが確認された。
【0131】
また、含まれるgRNA-BCユニットが32セットとなるように上記1.4.1~1.8を繰り返して得られたライゲーション産物を大腸菌に形質転換して得られたクローン1~6から単離されたベクターを、それぞれ制限酵素SpeIで切断した断片の電気泳動写真を図14に示す。図14に示したように、上記の本発明の連結DNAの製造方法(FRACTALアセンブリ法)により、32個のgRNAと32個のBCとを単一のベクターに集積できたことが確認された(クローン2、6)。
【0132】
1.9. gRNA-BCベクターのHEK293Ta細胞へのトランスフェクション
本発明の連結DNAの製造方法によって得られた、gRNA-BCユニットを含むgRNA-BCベクターを用いて、ゲノム編集アッセイの評価を行った。
【0133】
すなわち、先ず、pLVSIN-CMV Pur Vector(Takara)から、ピューロマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片をPCRで増幅し、増幅したPCR産物と、上記の1.8で得られたgRNA-BCユニットを32セット含むツールキットベクター2(n~n32)の混合物(n~n32:互いに及びベクター間でそれぞれ独立に、1~96のいずれか)とを、それぞれ制限酵素SpeI(SpeI-HF、NEB)及びBamHI(BamHI-HF、NEB)で切断して互いにライゲーションし、gRNA-BCユニットに含まれる選択マーカー遺伝子をccdB+Cmからピューロマイシン耐性遺伝子に置き換えたベクター(Array vector)の混合物を作製した。また、1.3で得られたgRNA-BCユニットを1セット含む96種類のツールキットベクター2についてもそれぞれ同様にして、選択マーカー遺伝子をccdB+Cmからピューロマイシン耐性遺伝子に置き換えたベクター(Single vector)を作製した。制限酵素処理条件及びライゲーション条件をそれぞれ下記に示す。
【0134】
[制限酵素処理条件]
〔SpeI/BamHI〕
・反応溶液(Total:50μL):
10×CutSmart Buffer 5μL
SpeI(20,000units/mL) 1μL
BamHI(20,000units/ml) 1μL
PCR産物又はツールキットベクター 5μg
ddHO 残部
・反応条件 for PCR産物
1. 37℃ 2時間
2. 1μL CIPを反応溶液50μLに添加
3. 37℃ 30分
・反応条件 for ツールキットベクター
1. 37℃ 2時間。
【0135】
[ライゲーション条件]
・反応溶液(Total:20μL):
10×ligation buffer 2μL
PCR産物 100ng
ツールキットベクター 100ng
T4 DNA Ligase(350U/μL) 1μL
ddHO 残部
・反応条件
1. 16℃ 2時間
2. 4℃ ∞。
【0136】
得られた各ライゲーション産物をそれぞれ大腸菌(NEB 5-alpha Competent E.coli(NEB))に形質転換し、抗生物質をピューロマイシンにしたこと以外は上記の1.3と同様にして、各ベクターを含む大腸菌を選択し、Array vector又はSingle vectorのそれぞれを単離した。以下のHEK293Ta細胞へのトランスフェクションにおいては、Array vector libとして、複数の大腸菌から単離されたArray vectorの混合物を用い、Single vector libとしては、96種類のツールキットベクター2(n)から作製した96種類のSingle vectorの混合物を用いた。また、対照として、96種類のツールキットベクター2(n)をそれぞれ制限酵素NheI及びBsaIによって処理した、各gRNA-BCユニットのみを含む96種類のDNA断片の混合物をSingle liner DNA libとして用いた。
【0137】
トランスフェクション前日にHEK293Ta細胞を0.1×10個/wellずつ12-well plateに継代した。また、1wellあたり0.25μg(2.5μL)のArray vector lib、Single vector lib、又はSingle liner DNA lib、0.25μg(2.5μL)のTarget-AIDベクター(Addgene社製)、1.5μLのPEIを、93.5μLのPBSと混合し、20分室温に放置した。Target-AIDでは、ガイドRNAによってDNAが1本鎖に解離されると、シトシンデアミナーゼが解離状態の1本鎖DNAの塩基を、シトシン(C)からチミン(T)に、化学的に置換することでゲノムが編集される。継代から24時間後に培地を交換した細胞に、前記放置後の各混合物をそれぞれ添加し、トランスフェクションを行った。トランスフェクションから18時間後に培地を交換し、さらに48時間後に2μg/mLのピューロマイシンを培地中に添加し、細胞の選択を行った。その後、48時間おきに培地を交換し、トランスフェクションから10日後にゲノムDNAを抽出した。
【0138】
次いで、各ゲノムDNAを鋳型として、96種類のガイドRNAそれぞれの標的領域(96箇所)を、それぞれPCR法で増幅した。PCRに用いたフォワードプライマーのうち、ガイドRNA1の標的配列に対するフォワードプライマーNM_ABC_gt_1_Fwの配列を例として配列番号:19に示し、ガイドRNA1の標的配列に対するリバースプライマーNM_ABC_gt_1_Rvの配列を例として配列番号:20に示す。また、PCR条件を下記に示す。
【0139】
[PCR条件]
・反応溶液(Total:30μL):
5×HF buffer 6.0μL
25μM dNTPs 2.4μL
Phusion DNA polymerase 0.3μL
10μM フォワードプライマー 3.0μL
10μM リバースプライマー 3.0μL
250ng/μL ゲノムDNA 1.0μL
ddHO 14.3μL
・反応条件:
1. 98℃ 10分
2~5. 98℃ 10秒、58.4℃ 10秒、72℃ 15秒:25サイクル
6. 72℃ 5分
7. 4℃ ∞。
【0140】
次いで、Illuminaライブラリーの準備のために、PCR産物を鋳型として、フォワードプライマーBC_0074(配列番号:21)と、リバースプライマ―BC_0075(配列番号:22)と、を用いて以下のPCRを行った。
【0141】
[PCR条件]
・反応溶液(Total:30μL):
5×GC buffer 6.0μL
25μM dNTPs 0.6μL
Phusion DNA polymerase 0.6μL
10μM フォワードプライマー 1.5μL
10μM リバースプライマー 1.5μL
DMSO 0.9μL
20ng/μL PCR産物 1.0μL
ddHO 17.9μL
・反応条件:
1. 98℃ 10分
2~5. 98℃ 10秒、58.4℃ 10秒、72℃ 15秒:19サイクル
6. 72℃ 5分
7. 4℃ ∞。
【0142】
次いで、PCR産物(Illuminaライブラリー)について、Illumina HiSeq(Illumina)でペアエンドシーケンスを行うことで、ガイドRNAによるゲノム編集の有無を確認した。Array vector lib及びSingle vector libをトランスフェクションしたHEK293Ta細胞において、96箇所のガイドRNAの標的領域の塩基配列中のシトシン(C)がチミン(T)に置換されていることが確認された。
【0143】
また、各シークエンス結果より、96箇所のガイドRNAの標的領域の塩基配列中のシトシン(C)がチミン(T)に置換されている確率を塩基編集率(Base editing rate)とした。Array vector lib、Single vector lib、及びSingle liner DNA libをそれぞれトランスフェクションしたものについて、96箇所のガイドRNAの標的領域のうち、塩基編集率の高かった上位26箇所の編集効率をソートして図15に示す。
【0144】
図15に示したように、複数のgRNAがアレイとして挿入されているベクター(Array vector)を用いてトランスフェクションした方が、個別のgRNAを含むベクター又は個別のgRNAを含む断片を混合して用いてトランスフェクションするよりも高い編集効率を示した。本発明の連結DNAの製造方法(FRACTALアセンブリ法)によれば、このように編集効率の高いベクター、及びかかるベクターの作製に用いることができるベクターを容易に作製することもできる。
【0145】
2. TALEリピートユニットアレイベクターの作製(FRACTALアセンブリ法)
TALEリピートユニットをコードする配列を3つの断片a、b、及びcに分け、本発明の連結DNAの製造方法(FRACTALアセンブリ法)により、複数のTALEリピートユニット1つのベクターに集積したTALEリピートユニットアレイベクターを作製した。下記の例において、断片a、b、cはそれぞれ1種ずつであるが、例えば、断片aとしてアミノ酸が部分的に異なる複数種の断片を混合することで、多様なTALEリピートユニットをコードする配列を集積することが可能となる。
【0146】
2.1 TALEリピートユニット断片及び選択マーカー配列を含むDNA断片の増幅
制限酵素SacI、BsaI、BbsI、AgeIの認識配列(SacI、BsaI、BbsI、AgeI)とTALEリピートユニット断片a、b、cのそれぞれとを含むフォワードプライマー(TALE_rptuinit1L(配列番号:23、TALE リピートユニット断片aを含む);TALE_rptuinit2L(配列番号:24、TALE リピートユニット断片bを含む);TALE_rptuinit3L(配列番号:25、TALE リピートユニット断片cを含む))と、制限酵素SalI、BsaI、BbsI、NheIの認識サイト(SalI、BsaI、BbsI、NheI)を含むリバースプライマーSpecR_CmR_common_RV(配列番号:26)と、をそれぞれ用いて、プラスミドpNM1088(Spec)を鋳型として、PCR法で増幅した。これにより、「5’-SacI-BsaI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BbsI-AgeI-Spec-NheI-BbsI-BsaI-SalI-3’」を含む第一のDNA断片を得た。
【0147】
また、制限酵素SacI、BsaI、BbsI、AgeIの認識配列(SacI、BsaI、BbsI、AgeI)を含むフォワードプライマーccdBCmR_Fw(配列番号:27)と、制限酵素SalI、BsaI、BbsI、NheIの認識サイト(SalI、BsaI、BbsI、NheI)とTALEリピートユニット断片a、b、cのそれぞれとを含むリバースプライマー(TALE_rptuinit1R(配列番号:28、TALE リピートユニット断片aを含む);TALE_rptuinit2R(配列番号:29、TALE リピートユニット断片bを含む;TALE_rptuinit3R(配列番号:30、TALE リピートユニット断片cを含む)と、をそれぞれ用いて、プラスミドpNM1089(ccdB+Cm)を鋳型として、PCR法で増幅した。これにより、「5’-SacI-BsaI-BbsI-AgeI-ccdB+Cm-NheI-BbsI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BsaI-SalI-3’」を含む第二のDNA断片をそれぞれ得た。なお、TALEリピートユニット断片aの3’側と断片bの5’側;TALEリピートユニット断片bの5’側と断片cの3’側は、それぞれ、制限酵素BsaI又はBbsIの切断による突出末端が相同となる配列にしている(図8)。PCR条件を下記に示す。
【0148】
[PCR条件]
・反応溶液(Total:20μL):
5×GC buffer 4.0μL
2.5μM dNTPs 0.4μL
Phusion DNA polymerase 0.4μL
10μM フォワードプライマー 1.0μL
10μM リバースプライマー 1.0μL
100pg/μL プラスミド 1.0μL
ddHO 12.2μL
・反応条件:
1. 95℃ 30秒
2~5. 95℃ 10秒、58℃ 15秒、72℃ 1.5分:30サイクル
6. 72℃ 10分
7. 4℃ ∞。
【0149】
2.2 ツールキットベクターの作製
<ツールキットベクター1、2>
(制限酵素処理及びライゲーション)
上記2.1のPCR産物を制限酵素SacI(SacI-HF、NEB)及びSalI(SalI-HF、NEB)でそれぞれ切断処理してDonor DNAとした。また、Host DNAとして、pUC19を制限酵素SacI及びSalIで切断処理した。第一のDNA断片をpUC19にライゲーションにより連結して、ツールキットベクター1とした。また、第二のDNA断片をpUC19にライゲーションにより連結して、ツールキットベクター2とした。制限酵素処理条件及びライゲーション条件をそれぞれ下記に示す。
【0150】
[制限酵素処理条件]
〔SacI/SalI〕
・反応溶液(Total:50μL):
10×CutSmart Buffer 5μL
SacI(20,000units/mL) 1μL
SalI(20,000units/ml) 1μL
PCR産物又はpUC19 5μg
ddHO 残部
・反応条件 for Donor DNA
1. 37℃ 2時間
2. 1μL CIPを反応溶液50μLに添加
3. 37℃ 30分
・反応条件 for Host DNA
1. 37℃ 2時間。
【0151】
[ライゲーション条件]
・反応溶液(Total:20μL):
Donor DNAに含まれる選択マーカー遺伝子がSpecの場合
10×ligation buffer 1μL
Donor DNA 500ng
Host DNA 50ng
T4 DNA Ligase(500U/μL) 1μL
ddHO 残部
Donor DNAに含まれる選択マーカー遺伝子がccdB+Cmの場合
10×ligation buffer 1μL
Donor DNA 250ng
Host DNA 50ng
T4 DNA Ligase(500U/μL) 0.1μL
ddHO 残部
・反応条件
1. 16℃ 1時間
2. 4℃ ∞。
【0152】
(形質転換)
上記のライゲーション産物を大腸菌に形質転換し、Donor DNAに含まれる各選択マーカー遺伝子に対応した抗生物質を含む薬剤選択培地を用いて、目的のツールキットベクターを含む大腸菌を選択した。先ず、選択マーカー遺伝子がSpecの場合、1.5μLライゲーション産物を20μL NEB 5-alpha Competent E.coli(NEB)に加えた。また、選択マーカー遺伝子がccdB+Cmの場合、1.5μLライゲーション反応液を20μL One ShotTM ccdB SurvivalTM 2 T1 Competent Cells(Invitrogn)に加えた。次いで、これらを氷上で30分間静置し、その後、42℃ウォーターバスで30秒間インキュベーション(ヒートショック)した後、氷上で2分間静置した。次いで、これらにそれぞれ250μL Soc培地を添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、インキュベートした培養液全てを前記選択マーカー遺伝子に対応した抗生物質を含むLB寒天培地に播種した。前記Donor DNAに含まれる選択マーカー遺伝子がSpecの場合、抗生物質はアンピシリン(Amp)及びスペクチノマイシン(Spec)であり、前記Donor DNAに含まれる選択マーカー遺伝子がccdB+Cmの場合、抗生物質はアンピシリン(Amp)及びクロラムフェニコール(Cm)である。次いで、37℃で一晩インキュベーションをし、生育が確認された大腸菌から目的のツールキットベクター、すなわち、前記ツールキットベクター1と前記ツールキットベクター2とをそれぞれ単離した。
【0153】
<ツールキットベクター3、4>
上記ツールキットベクター1を制限酵素SacI(SacI-HF、NEB)及びNheI(NheI-HF、NEB)で切断処理してDonor DNAとし、上記ツールキットベクター2から制限酵素SacI及びNheIで切断処理によりccdB+Cmを除去してHost DNAとし、これらをライゲーションにより連結して、「5’-BsaI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BbsI-Spec-BbsI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BsaI-3’」を含むツールキットベクター3とした(SacI、AgeI、NheI、SalIは以降使用しないので記載せず)。
【0154】
また、上記ツールキットベクター2を制限酵素AgeI(AgeI-HF、NEB)及びSalI(SalI-HF、NEB)で切断処理してDonor DNAとし、上記ツールキットベクター1から制限酵素AgeI及びSalIで切断処理によりSpecを除去してHost DNAとし、これらをライゲーションにより連結して、「5’-BsaI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BbsI-ccdB+Cm-BbsI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BsaI-3’」を含むツールキットベクター4とした(SacI、AgeI、NheI、SalIは以降使用しないので記載せず)。
【0155】
各ツールキットベクターにおいて、連結後の選択マーカー遺伝子(Spec、ccdB+Cm)の3’側のTALEリピートユニット断片と5’側のTALEリピートユニット断片との組み合わせが、a-c、b-b、又はc-aになるようにした(1段階目の連結)。限酵素処理条件をそれぞれ下記に示す。制限酵素処理の反応条件及びライゲーション条件は<ツールキットベクター1、2>に示したとおりである。
【0156】
[制限酵素処理条件]
・反応溶液(Total:50μL):
〔SacI/NheI〕
10×CutSmart Buffer 5μL
SacI(20,000units/mL) 1μL
NheI(20,000units/ml) 1μL
ツールキットベクター1、2 各5μg
ddHO 残部
〔AgeI/SalI〕
10×CutSmart Buffer 5μL
AgeI(20,000units/mL) 1μL
SalI(20,000units/ml) 1μL
ツールキットベクター1、2 各5μg
ddHO 残部
また、上記のライゲーション産物を大腸菌に形質転換し、Donor DNAに含まれる各選択マーカー遺伝子に対応した抗生物質を含む薬剤選択培地を用いて、目的のツールキットベクターを含む大腸菌を選択した。形質転換の条件は<ツールキットベクター1、2>と同様である。
【0157】
2.3 ツールキットベクターの切断処理
追加するTALEリピートユニット断片を含むドナーベクターとして、ツールキットベクター4を制限酵素BsaI(BsaI-HF v2、NEB)で、前記TALEリピートユニット断片を受け取るホストベクターとして、ツールキットベクター3を制限酵素BbsI(BbsI-HF、NEB)で、それぞれ切断した。制限酵素処理条件をそれぞれ下記に示す。
【0158】
[制限酵素処理条件]
〔BsaI for Donor DNA〕
・反応溶液(Total:50μL):
10×CutSmart Buffer 5μL
BsaI(20,000units/ml) 1μL
ドナーベクター 5μg
ddHO 残部
・反応条件
1. 37℃ 2時間
2. 1μL CIPを反応溶液50μLに添加
3. 37℃ 30分
〔BbsI for Host DNA〕
・反応溶液(Total:50μL):
10×CutSmart Buffer 5μL
BbsI(20,000units/ml) 1μL
ホストベクター 5μg
ddHO 残部
・反応条件
1. 37℃ 2時間。
【0159】
2.4 ライゲーションによるTALEリピートユニット断片の連結
上記の2.3でドナーベクターから切り出された、TALEリピートユニット断片を2つ有する断片(「5’-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-BbsI-ccdB+Cm-BbsI-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-3’」)と、ホストベクターから選択マーカー遺伝子(Spec)を除去した断片(「TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)-3’/5’-TALEリピートユニット断片(a又はb又はc)」)と、をそれぞれ回収し、ライゲーションにより、連結後のccdB+Cmの3’側のTALEリピートユニット断片と5’側のTALEリピートユニット断片との組み合わせが、ab-bcとなるように連結し、目的のベクターを得た(2段階目の連結)。ライゲーション条件は上記の2.2に示したとおりである。ライゲーション産物を大腸菌へ形質転換し、適切な薬剤選択培地を用いて、目的産物を含む大腸菌を選択し、目的のベクターを得た。形質転換方法は2.2と同様である。
【0160】
2.5 ライゲーションによるTALEリピートユニット断片の連結の連続
上記の2.2~2.4を繰り返し、連結後のccdB+Cmの3’側のTALEリピートユニット断片と5’側のTALEリピートユニット断片との組み合わせが、abc-abcとなるように連結し、目的のベクターを得た(3段階目の連結)。さらに上記を繰り返し、連結後のccdB+Cmの3’側のTALEリピートユニット断片abcと5’側のTALEリピートユニット断片abcとが、それぞれ順に繋がるように連結し、ccdB+Cmの5’側及び3’側に、それぞれ24断片(abcの繰り返し8回)ずつ、合計48のTALEリピートユニット断片が連結されたベクターを得た。
【0161】
2.6 サンガーシークエンシング法による配列の確認
上記2.5で得られたccdB+Cmの5’側及び3’側にそれぞれ24断片(abcの繰り返し8回)ずつ、合計48のTALEリピートユニット断片が連結されたベクターについて、ccdB+Cmの5’側の24断片(abcの繰り返し8回)、及び、3’側の24断片(abcの繰り返し8回)の配列を、それぞれサンガーシークエンシング法によって確認し、確かに目的のTALEリピートユニット断片が連結されたベクター(「5’-BsaI-TALEリピートユニット断片×24(abc-abc-abc-abc-abc-abc-abc-abc)-BbsI-ccdB+Cm-BbsI-TALEリピートユニット断片×24(abc-abc-abc-abc-abc-abc-abc-abc)-BsaI-3’」を含むベクター)が得られたことを確認した。
【0162】
2.7 ccdB+Cmの除去
上記2.6で配列が確認されたベクターを制限酵素BbsIで切断処理し、セルフライゲーションさせることで、ccdB+Cmを除去し、48のTALEリピートユニット断片がひとつなぎ(abcが16連続で連結)になったTALEリピートユニットアレイベクターを得た。制限酵素処理条件は上記の2.3に示したとおりである。本発明の連結DNAの製造方法(FRACTALアセンブリ法)によれば、このようにTALEリピートユニットが連続して連結されたTALEリピートユニットアレイも容易に作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
以上説明したように、本発明によれば、正確かつ効率的に容易に数十以上のDNA断片を連結することが可能な連結DNAの製造方法及びそれに用いるためのベクターの組み合わせを提供することが可能となる。
また、本発明によれば、リピート配列等の同じ配列が何度も出現する断片であっても、連続して連結することが可能であり、別のアセンブリにそのまま利用できるため、再利用性も高い。さらに、非特異的なライゲーション等によって目的とは異なる産物が生成される確率が低いため、品質検査に要する手間や時間を短縮することも可能である。このような本発明によれば、効率的な多重ゲノム編集のためのベクターライブリラリー、任意のクローンをPCR法によって単離することのできるプールライブラリの作製も可能となる。
【配列表フリーテキスト】
【0164】
配列番号:1
<223> プライマー 「DG012」
配列番号:2
<223> プライマー 「DG011」
配列番号:3
<223> プライマー 「DG009」
配列番号:4
<223> プライマー 「DG010」
配列番号:5
<223> プライマー 「DG007」
配列番号:6
<223> プライマー 「DG008」
配列番号:7
<223> プライマー 「DG001」
配列番号:8
<223> プライマー 「DG002」
配列番号:9
<223> プライマー 「DG003」
配列番号:10
<223> プライマー 「DG004」
配列番号:11
<223> プライマー 「DG013」
配列番号:12
<223> プライマー 「DG015」
配列番号:13
<223> プライマー 「DG021」
配列番号:14
<223> プライマー 「M13-Fw」
配列番号:15
<223> プライマー 「DG020」
配列番号:16
<223> プライマー 「DG006」
配列番号:17
<223> プライマー 「NM_ABC001Fw」
配列番号:18
<223> プライマー 「NM_ABC001Rv」
配列番号:19
<223> プライマー 「NM_ABC_gt_1_Fw」
配列番号:20
<223> プライマー 「NM_ABC_gt_1_Rv」
配列番号:21
<223> プライマー 「BC_0074」
<223> nはa、c、g、又はt
配列番号:22
<223> プライマー 「BC_0075」
<223> nはa、c、g、又はt
配列番号:23
<223> プライマー 「TALE_rptuinit1L」
配列番号:24
<223> プライマー 「TALE_rptuinit2L」
配列番号:25
<223> プライマー 「TALE_rptuinit3L」
配列番号:26
<223> プライマー 「SpecR_CmR_common_RV」
配列番号:27
<223> プライマー 「ccdBCmR_Fw」
配列番号:28
<223> プライマー 「TALE_rptuinit1R」
配列番号:29
<223> プライマー 「TALE_rptuinit2R」
配列番号:30
<223> プライマー 「TALE_rptuinit3R」
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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