(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】テープ研削の後ウェーハ研削する研削方法及び研削装置。
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020138719
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛修
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-043931(JP,A)
【文献】特開2009-125915(JP,A)
【文献】特開2018-49913(JP,A)
【文献】特開2005-303214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面にウェーハを吸引保持させる保持手段と、スピンドルの先端に配置され環状の第1研削砥石と該第1研削砥石の外径より大きい内径で同心円環状の第2研削砥石とを選択的に該保持面に接近可能にスピンドルの軸方向に進退させる進退機構を有する研削手段と、を少なくとも備える研削装置を用いてウェーハを研削するウェーハの研削方法であって、
一方の面に保護テープが貼着されたウェーハの他方の面を該保持面に吸引保持する第1保持工程と、
該第1研削砥石または該第2研削砥石のどちらか一方の研削砥石を用いて該保護テープの上面を研削する第1研削工程と、
該第1研削工程の後、該第1保持工程で該保持面に吸引保持されていたウェーハを離間させる離間工程と、
該ウェーハの上下面を反転させる反転工程と、
該保護テープの上面を該保持面に吸引保持させる第2保持工程と、
該第1研削砥石または該第2研削砥石のうち該第1研削工程にて用いられなかった研削砥石を用いて該ウェーハを所定の厚みに研削する第2研削工程と、
を備えたウェーハの研削方法。
【請求項2】
請求項1記載のウェーハの研削方法を可能とする研削装置であって、
ウェーハの一方の面に保護テープが貼着された被加工物を保持面に保持する保持手段と、
環状の第1研削砥石と該第1研削砥石を囲繞する第2研削砥石とを選択的に該保持面に接近可能な進退機構を有し第1スピンドルの先端に配置した第1研削手段と、
第2スピンドルの先端に第3研削砥石が配置された第2研削手段と、
中心を回転軸として有し、該保持手段が複数配置されたターンテーブルと、
被加工物が複数収容されたカセットが載置されるカセットステージと、
該カセットと該保持面との間で被加工物の該保護テープが貼着された面とウェーハの他方の面とを反転可能に該カセットまたは該保持面に搬送する搬送手段とを備え、
該第2研削手段の該第3研削砥石は、ウェーハを研削するウェーハ研削砥石であり、
該第1研削手段の該第1研削砥石または該第2研削砥石のうちどちらか一方は、該保護テープを研削するテープ研削砥石であり、他方は、ウェーハを研削するウェーハ研削砥石である研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ研削の後ウェーハ研削する研削方法及び研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置を用いたウェーハの研削加工では、デバイスが形成されたウェーハを研削して、デバイスを含んだウェーハを例えば厚みが50μmになるように薄化している。また、研削加工では、特許文献1に示すようにデバイスに傷を付けないようにデバイスに保護テープを貼着して、研削装置のチャックテーブルの保持面に保護テープを吸引保持させ、研削砥石を用いて、保護テープを介して保持面に保持されたウェーハの表面を研削している。
【0003】
ウェーハの表面には、デバイスによる数μmの凹凸が形成されている。そのため保護テープは、20μmから30μmの糊層を備えているが、糊層は均一な厚みに形成されていないことがあるため、研削砥石を用いて研削したウェーハが均一な厚みにならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、保護テープを貼着してウェーハを研削する研削方法には、ウェーハを均一な厚みに研削するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面にウェーハを吸引保持させる保持手段と、スピンドルの先端に配置され環状の第1研削砥石と該第1研削砥石の外径より大きい内径で同心円環状の第2研削砥石とを選択的に該保持面に接近可能にスピンドルの軸方向に進退させる進退機構を有する研削手段と、を少なくとも備える研削装置を用いてウェーハを研削するウェーハの研削方法であって、一方の面に保護テープが貼着されたウェーハの他方の面を該保持面に吸引保持する第1保持工程と、該第1研削砥石または該第2研削砥石のどちらか一方の研削砥石を用いて該保護テープの上面を研削する第1研削工程と、該第1研削工程の後、該第1保持工程で該保持面に吸引保持されていたウェーハを離間させる離間工程と、該ウェーハの上下面を反転させる反転工程と、該保護テープの上面を該保持面に吸引保持させる第2保持工程と、該第1研削砥石または該第2研削砥石のうち該第1研削工程にて用いられなかった研削砥石を用いて該ウェーハを所定の厚みに研削する第2研削工程と、を備えたウェーハの研削方法である。
本発明は上記のウェーハの研削方法を可能とする研削装置であって、ウェーハの一方の面に保護テープが貼着された被加工物を保持面に保持する保持手段と、環状の第1研削砥石と該第1研削砥石を囲繞する第2研削砥石とを選択的に該保持面に接近可能な進退機構を有し第1スピンドルの先端に配置した第1研削手段と、第2スピンドルの先端に第3研削砥石が配置された第2研削手段と、中心を回転軸として有し、該保持手段が複数配置されたターンテーブルと、被加工物が複数収容されたカセットが載置されるカセットステージと、該カセットと該保持面との間で被加工物の該保護テープが貼着された面とウェーハの他方の面とを反転可能に該カセットまたは該保持面に搬送する搬送手段とを備え、該第2研削手段の該第3研削砥石は、ウェーハを研削するウェーハ研削砥石であり、該第1研削手段の該第1研削砥石または該第2研削砥石のうちどちらか一方は、該保護テープを研削するテープ研削砥石であり、他方は、ウェーハを研削するウェーハ研削砥石である研削装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、研削装置に備えるテープ研削砥石を用いてウェーハに貼着された保護テープを研削して保護テープの厚みを均一にした後、反転手段を用いて保護テープを貼着したウェーハを反転させてからウェーハの研削を行うため、ウェーハを均一な厚みに研削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 研削装置
図1に示す研削装置1は、第1研削手段3及び第2研削手段5を用いてウェーハ18を研削する研削装置である。ウェーハ18の一方の面である下面181には保護テープ19が貼着されており、ウェーハ18と保護テープ19とが一体となって被加工物17が形成されている。以下、研削装置1の構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、研削装置1は、Y軸方向に延設されたベース10を備えている。ベース10の+Y方向側かつ+X方向側には第1コラム11が立設されており、第1コラム11の-X方向側には第2コラム12が立設されている。
【0011】
ベース10の-Y方向側には、第1カセットステージ7010及び第2カセットステージ7020が配設されている。
第1カセットステージ7010には、第1カセット701が載置される。第1カセット701には、例えば研削加工前の複数の被加工物17が収容されている。
第2カセットステージ7020には第2カセット702が載置される。第2カセット702には、例えば研削加工後の被加工物17を収容することができる。
【0012】
第1カセット701の+Y方向側には、ロボット71が配設されている。ロボット71は、ロボットハンド710とロボットハンド710を旋回可能に支持する軸部712とを備えている。ロボットハンド710の保持面711には図示しない吸引源が接続されており、ロボットハンド710の保持面711に被加工物17を吸引保持できる。
第1カセット701に収容されている被加工物17をロボットハンド710の保持面711に吸引保持し、軸部712を駆動してロボットハンド710を旋回させることにより、被加工物17を第1カセット701から取り出して仮置き領域720に搬送することができる。
【0013】
また、軸部712とロボットハンド710との間には反転手段713が設けられている。反転手段713は、例えば図示しないモータ等を備えており、該モータ等を用いてロボットハンド710を180度回転させてロボットハンド710の上下を反転させることができる。例えば、ロボットハンド710の保持面711に被加工物17が吸引保持されている状態で反転手段713を用いてロボットハンド710の上下を反転させることにより、被加工物17の上下を反転させて保護テープ19の上面190が+Z方向側に向けられている状態とウェーハ18の上面180が+Z方向側に向けられている状態とを切り替えることができる。
【0014】
ロボット71の可動域における+X方向側には、研削加工前の被加工物17が仮置きされる仮置き領域720が設けられており、ロボット71の可動域における-X方向側には、研削加工後の被加工物17を洗浄する洗浄領域732が設けられている。
【0015】
仮置き領域720には、位置合わせ手段72が配設されている。カセット70から搬出されて仮置き領域720に載置された被加工物17は、位置合わせ手段72によって所定の位置に位置合わせされることとなる。
【0016】
洗浄領域732には、スピンナ洗浄手段73が配設されている。スピンナ洗浄手段73は、被加工物17が保持されるスピンナテーブル730と、スピンナテーブル730に保持された被加工物17に向けて洗浄水を噴出する洗浄水供給ノズル731とを備えている。
例えば、スピンナテーブル730の上面に研削加工後の被加工物17が保持されている状態で、洗浄水供給ノズル731から洗浄水を供給することにより被加工物17を洗浄することができる。
【0017】
仮置き領域720に隣接する位置には、仮置き領域720にて位置合わせ手段72を用いて位置合わせされた被加工物17を3つの保持手段2のうちのいずれかに搬入する搬入手段741が配設されている。
搬入手段741は、円板状のプレート75及びプレート75を吊持するアーム76を備えている。プレート75は図示しない吸引源に接続されており、プレート75の保持面750に被加工物17を吸引保持できる。また、アーム76の端部には軸部77が連結されており、軸部77には軸部77を回転させる図示しない回転手段及び軸部77を昇降させる昇降手段が接続されている。図示しない回転手段等を用いてZ軸方向の軸心を軸にして軸部77を回転させることにより、軸部77に連結されているアーム76が旋回する構成となっている。
【0018】
例えば、アーム76を旋回させて仮置き領域720に仮置きされた被加工物17の真上にプレート75を位置づけてから該吸引源を作動することより、プレート75に被加工物17を吸引保持できる。そして、プレート75に被加工物17が吸引保持された状態で、アーム76を旋回させてプレート75に吸引保持された被加工物17を保持面200の上方に位置づけプレート75を下降させ、プレート75に作用している吸引力を解くことにより、被加工物17を保持面200に搬入することができる。
【0019】
搬入手段741の-X方向側には、研削加工後の被加工物17を保持面200から洗浄領域732に搬出する搬出手段742が配設されている。搬出手段742は、搬入手段741と同様に構成されているため、搬入手段741と同様の符号を付する。
【0020】
例えば、研削加工後の被加工物17をプレート75に吸引保持し、アーム76を旋回させて、プレート75に吸引保持された被加工物17をスピンナテーブル730の上面に位置づけ下降させてから、プレート75に作用している吸引力を解くことにより、被加工物17を保持面200から洗浄領域732に搬出することができる。
【0021】
ロボット71、搬入手段741、及び搬出手段742は第1カセット701と保持面200と第2カセット702との間で被加工物17を反転可能に搬送する搬送手段7を構成している。
【0022】
ベース10の上における+Y方向側には、円板形状のターンテーブル23が配設されている。ターンテーブル23の上面230には、3つの保持手段2が周方向に等しい間隔を空けて配設されている。ターンテーブル23は、図示しない回転手段に接続されており、該回転手段を用いてターンテーブル23の中心2300を通るZ軸方向の軸心を軸にして回転可能である。ターンテーブル23が回転することによって、ターンテーブル23の上に配設されている3つの保持手段2がターンテーブル23の中心2300を軸にして公転することとなる。
【0023】
3つの保持手段2は円板形状を有している。3つの保持手段2は、その各々が吸引部20と吸引部20を支持する枠体21とを備えている。吸引部20の上面は被加工物17が保持される保持面200であり、枠体21の上面210は保持面200に面一に形成されている。
吸引部20は、図示しない吸引源に接続されている。例えば被加工物17が保持面200に載置されている状態で該吸引源により生み出される吸引力を吸引部20に伝達することによって、保持面200に被加工物17を吸引保持することができる。
また、各々の保持手段2は図示しない回転手段に接続されている。該回転手段を用いることにより、保持面200の中心を通るZ軸方向の軸心を軸にして保持手段2を自転させることができる。
【0024】
第1コラム11の-Y方向側の側面には、第1研削手段3をX軸方向に水平移動可能に支持する水平移動手段42が配設されている。水平移動手段42は、X軸方向の回転軸425を有するボールネジ420と、ボールネジ420に対して平行に配設された一対のガイドレール421と、回転軸425を軸にしてボールネジ420を回転させるX軸モータ422と、内部のナットがボールネジ420に螺合して側部がガイドレール421に摺接する可動板423とを備えている。
【0025】
可動板423の-Y方向側の側面には、第1研削手段3を昇降可能に支持する第1研削送り手段41が配設されている。第1研削送り手段41は、Z軸方向の回転軸415を有するボールネジ410と、ボールネジ410に対して平行に配設された一対のガイドレール411と、回転軸415を軸にしてボールネジ410を回転させるZ軸モータ412と、内部のナットがボールネジ410に螺合して側部がガイドレール411に摺接する昇降板413と、昇降板413に連結され第1研削手段3を支持するホルダ414とを備えている。
【0026】
X軸モータ422を用いて回転軸415を軸にしてボールネジ410を回転させることにより、可動板423がガイドレール421に案内されながらX軸方向に水平移動するとともに、可動板423に支持されている第1研削手段3がZ軸方向に移動する構成となっている。
【0027】
また、Z軸モータ412によってボールネジ410が駆動されて、ボールネジ410が回転軸415を軸にして回転すると、これに伴って昇降板413がガイドレール411に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、第1研削手段3がZ軸方向に移動する構成となっている。
【0028】
第1研削手段3は、Z軸方向の回転軸35を有する第1スピンドル38と、第1スピンドル38を回転可能に支持するハウジング39と、回転軸35を軸にして第1スピンドル38を回転駆動するスピンドルモータ30とを備えている。
【0029】
第1スピンドル38には、
図2に示すように大径部830が連結され大径部830の下端に形成された小径部831を備えている。小径部831の下端には第1マウント331が連結されている。また、大径部830の内部には、シリンダ83が形成され、ロッド820とロッド820の上端に連結された円板ピストン821とが収容されており、ロッド820の下端には第2マウント332が連結されている。さらに、大径部830の下面と第1マウント331との間には、両者を連結するガイド部89が配設されており、第2マウント332には、ガイド部89に貫通する貫通孔が形成されている。
第1マウント331には第1研削ホイール31が装着されている。また、第2マウント332には第2研削ホイール32が装着されている。
なお、シリンダ83とガイド部89は、大径部830の中心を中心に等角度で少なくとも3つ配置されている。
【0030】
第1研削ホイール31は、
図1に示すように第1ホイール基台311と第1ホイール基台311の下面に円環状に配列された略直方体状の複数の第1研削砥石310とを備えている。第1研削砥石310は、例えば保護テープ19を研削するテープ研削砥石である。テープ研削砥石は、ウェーハ18を粗研削する粗研削砥石よりも粒が細かく、ウェーハ18を仕上げ研削する仕上げ研削砥石よりも粒が粗い砥粒によって形成されており、粒度の番手は例えば♯1000である。
【0031】
第2研削ホイール32は、第2ホイール基台321と、第2ホイール基台321の下面に円環状に配列された略直方体状の複数の第2研削砥石320とを備えている。複数の第2研削砥石320が成す円環は、複数の第1研削砥石310が成す円環を囲繞しており、第2研削砥石320が成す円環は第1研削砥石310と同心の円環である。第2研削砥石320は、例えばウェーハ18を粗研削する粗研削砥石である。
スピンドルモータ30を用いて第1スピンドル38を回転させることにより、第1研削ホイール31及び第2研削ホイール32が回転することとなる。
【0032】
第1研削手段3は、
図2に示すように第1研削砥石310と第2研削砥石320とを選択的に保持面200に接近可能な進退機構8を有している。進退機構8は、ロッド820と円板ピストン821とからなる上下手段82を備えている。上下手段82は、大径部830に形成されたシリンダ83の内部をZ軸方向に上下動可能である。また、進退機構8は、シリンダ83に接続されたエア供給源80と、シリンダ83とエア供給源80との間に配設された切り替え制御部81とを備えている。切り替え制御部81は例えば制御弁であり、エア供給源80から供給されるエアをシリンダ83の上方から噴出させるか、シリンダ83の下方から噴出させるかを切り替える機能の切替弁を有している。
【0033】
例えば、切り替え制御部81を用いてエア供給源80から供給されるエアがシリンダ83の下方から+Z方向に円板ピストン821の下面に噴射されるように切り替えてシリンダ83内にエアを噴射すると、円板ピストン821がエアによって+Z方向に付勢されて円板ピストン821、ロッド820、及び第2マウント332がガイド部449にガイドされながら一体的に+Z方向に上昇する。これにより、第2マウント332が+Z方向に上昇していき、第1研削砥石310が第2研削砥石320よりも保持面211に近づけられることとなる。
また、切り替え制御部81を用いてエア供給源80から供給されるエアがシリンダ83の上方から-Z方向に円板ピストン821の上面に噴射されるように切り替えてシリンダ83内にエアを噴射すると、円板ピストン821がエアによって-Z方向に付勢されて円板ピストン821、ロッド820、及び第2マウント332がガイド部449にガイドされながら一体的に-Z方向に下降する。これにより、第2マウント332が-Z方向に下降していき、第2研削砥石320が第1研削砥石310よりも保持面211に近づけられることとなる。
【0034】
図1に示すように、第2コラム12の-Y方向側の側面には、第2研削手段5を昇降可能に支持する第2研削送り手段6が配設されている。第2研削送り手段6は、Z軸方向の回転軸65を有するボールネジ60と、ボールネジ60に対して平行に配設された一対のガイドレール61と、回転軸65を軸にしてボールネジ60を回転させるZ軸モータ62と、内部のナットがボールネジ60に螺合して側部がガイドレール61に摺接する昇降板63と、昇降板63に連結され第2研削手段5を支持するホルダ64とを備えている。
【0035】
Z軸モータ62によってボールネジ60が駆動されて、ボールネジ60が回転軸65を軸にして回転すると、これに伴って昇降板63がガイドレール61に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ64に保持されている第2研削手段5がZ軸方向に移動する構成となっている。
【0036】
第2研削手段5は、Z軸方向の回転軸55を有する第2スピンドル50と、第2スピンドル50を回転可能に支持するハウジング51と、回転軸55を軸にして第2スピンドル50を回転駆動するスピンドルモータ52と、第2スピンドル50の下端に接続されたマウント53と、マウント53の下面に着脱可能に装着された第3研削ホイール54とを備えている。
【0037】
第3研削ホイール54は、第3ホイール基台541と第3ホイール基台541の下面に環状に配列された略直方体状の複数の第3研削砥石540とを備えている。第3研削砥石540は、例えばウェーハ18を仕上げ研削する仕上げ研削砥石である。第3研削砥石540の下面542はウェーハ18に接触する研削面である。
【0038】
スピンドルモータ52を用いて第2スピンドル50を回転させることにより、第2スピンドル50に接続されたマウント53及びマウント53の下面に装着された第3研削ホイール54が一体的に回転することとなる。
【0039】
2 研削方法
(第1保持工程)
研削装置1を用いた被加工物17の研削方法について説明する。まず、
図1に示したウェーハ18の一方の面である下面181に保護テープ19を貼着し、第1カセット701に収容しておく。
【0040】
そして、保護テープ19がウェーハ18の下面181に貼着されて一体となった被加工物17をロボット71を用いて第1カセット701から引き出して保護テープ19を上に向けて仮置き領域720に仮置きした後、位置合わせ手段72を用いて位置合わせする。
【0041】
次いで、搬入手段741を用いて、仮置き領域720に仮置きされた被加工物17を保持手段2の保持面200に搬入する。保持面200に搬入された被加工物17は、ウェーハ18の他方の面(保護テープ19に貼着されていない側の面)である上面180が保持面200に接触するように保持面200に載置され、ウェーハ18に貼着された保護テープ19の上面190が+Z方向側に向けられて露出する。
被加工物17が保持面200に載置されている状態で、保持面200に接続されている図示しない吸引源を作動させて生み出された吸引力を保持面200に伝達させることにより、保持面200にウェーハ18の上面180が吸引されて保持面200にウェーハ18が吸引保持される。
【0042】
(第1研削工程)
保持面200にウェーハ18が吸引保持されている状態で、ターンテーブル23をその中心2300を軸にして、例えば反時計回りに120度回転させる。これにより保持面200に保持されたウェーハ18が第1研削手段3の下方に位置づけられる。
【0043】
ここで、予め進退機構8を用いて
図2に示すように第1研削砥石310を第2研削砥石320よりも保持面200に接近させておく。
【0044】
また、図示しない回転手段等を用いて保持面200に保持されているウェーハ18を回転させるとともに、スピンドルモータ30を用いて第1研削砥石310を回転させておく。
【0045】
そして、保持面200に保持されているウェーハ18と第1研削砥石310とが回転している状態で、第1研削送り手段41を用いて第1研削砥石310を-Z方向に下降させる。これにより、第1研削砥石310の下面312が保護テープ19の上面190に接触して保護テープ19が研削される。ここで、保護テープ19の研削加工中には、図示しない厚み算出手段等によって保護テープ19の厚みが測定されており、保護テープ19はその厚みが均一になるように研削される。保護テープ19が所定の厚みに研削されたら第1研削送り手段41を用いて第1研削砥石310を+Z方向に上昇させて、保護テープ19の上面190から第1研削砥石310を+Z方向に退避させる。
【0046】
(離間工程)
次に、ターンテーブル23を例えば反時計回りに240度回転させて、ウェーハ18が吸引保持されている保持面200を搬出手段742に接近させる。そして、搬出手段742のプレート75の保持面750に保護テープ19の上面190を吸引保持し、保持面200に作用している吸引力を取り除き、ウェーハ18を保持面200から搬出する。これにより、保持手段2の保持面200に吸引保持されていたウェーハ18が保持面200から離間される。
【0047】
次に、搬出手段742の軸部77を回転させてアーム76を旋回させることにより、プレート75に吸引保持されているウェーハ18を洗浄領域732に位置づけて下降させ、ウェーハ18に貼着された保護テープ19の上面190が+Z方向に向けられている状態で、スピンナテーブル730の上面にウェーハ18を保持させる。そして、スピンナーテーブル730を回転させながら洗浄水供給ノズル731から保護テープ19の上面190に洗浄水を供給することにより保護テープ19の上面190に付着している研削屑等を流水洗浄する。
【0048】
(反転工程)
保護テープ19の上面190の流水洗浄後、スピンナテーブル730に保持されているウェーハ18をロボット71のロボットハンド710の保持面711に吸引保持してスピンナテーブル730から離間させる。その後、反転手段713を用いてロボットハンド710に保持されたウェーハ18の上下面を反転させる。これにより、保護テープ19の上面190が-Z方向側に向けられ、ウェーハ18の上面180が+Z方向側に向けられた状態となる。
【0049】
(第2保持工程)
その後、再び仮置き領域720にウェーハ18を仮置きし、位置合わせ手段72を用いて位置合わせを行う。
そして、搬入手段741を用いて仮置き領域720に仮置きされているウェーハ18を保持面200に搬入する。このとき、保護テープ19の上面190が保持面200に接触するように保持面200に載置され、ウェーハ18の上面180が+Z方向側に向けられて露出される。保護テープ19の上面190が保持面200に載置されている状態で保持面200に接続されている該吸引源を作動させることにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて保護テープ19の上面190が保持面200に吸引され、被加工物17が保持面200に吸引保持される。
【0050】
(第2研削工程)
そして、ターンテーブル23をその中心2300を軸にして例えば反時計回りに120度回転させて第1研削手段3の下方に保持面200に保持された被加工物17が位置づけられる。
【0051】
ここで、予め進退機構8を用いて
図3に示すように第2研削砥石320を第1研削砥石310よりも保持面200に接近させておく。
【0052】
また、水平移動手段42を用いて第2研削砥石320をX軸方向にやや移動させておく。これにより、第2研削砥石320を用いてウェーハ18の上面180を研削する際に、第2研削砥石320がウェーハ18の中心を通るようにしておき、第1研削砥石310を用いた保護テープ19の上面190の研削時とは異なる水平位置にて、第2研削砥石320とウェーハ18の上面180とが接触することとなる。
【0053】
さらに、図示しない回転手段等を用いて保持面200に保持されているウェーハ18を回転させるとともに、スピンドルモータ30を用いて第2研削砥石320を回転させておく。
【0054】
そして、保持面200に保持されているウェーハ18と第2研削砥石320とが回転している状態で、第1研削送り手段41を用いて第2研削砥石320を-Z方向に下降させる。これにより、第2研削砥石320の下面322がウェーハ18の上面180に接触する。第2研削砥石320の下面322がウェーハ18の上面180に接触している状態で、さらに第2研削砥石320を-Z方向に下降させていくことにより、ウェーハ18の上面180が粗研削される。
ウェーハ18が所定の厚みに粗研削されたら第1研削送り手段41を用いて第2研削砥石320を+Z方向に上昇させて第2研削砥石320をウェーハ18の上面180から離間させる。
【0055】
次に、ターンテーブル23をその中心2300を軸にして例えば反時計回りに120度回転させ、保持面200に保持されているウェーハ18を第2研削手段5の下方に位置づける。
また、スピンドルモータ52を用いて第3研削砥石540を回転させておく。そして、保持面200に保持されているウェーハ18と第3研削砥石540とがともに回転している状態で、第2研削送り手段6を用いて第3研削砥石540を-Z方向に下降させる。これにより第3研削砥石540の下面542がウェーハ18の上面180に接触する。第3研削砥石540の下面542がウェーハ18の上面180に接触している状態で、さらに第3研削砥石540を-Z方向に下降させることによりウェーハ18の上面180が仕上げ研削される。
ウェーハ18が所定の厚みに仕上げ研削されたら第2研削送り手段6を用いて第3研削砥石540を+Z方向に上昇させて、ウェーハ18の上面180から第3研削砥石540を離間させる。
【0056】
その後、ターンテーブル23を例えば反時計回りに120度回転させて、ウェーハ18が吸引保持されている保持面200を搬出手段742に接近させる。そして、保持面200に作用している吸引力を取り除き、搬出手段742のプレート75の保持面750にウェーハ18の上面180を吸引保持してウェーハ18を保持面200から搬出する。
【0057】
そして、搬出手段742の軸部77を回転させてアーム76を旋回させることにより、プレート75に吸引保持されているウェーハ18を洗浄領域732に位置づけ、ウェーハ18の上面180が+Z方向に向けられている状態で、スピンナテーブル730の上面にウェーハ18を保持させる。そして、スピンナーテーブル730を回転させながら洗浄水供給ノズル731からウェーハ18の上面180に洗浄水を供給することによりウェーハ18の上面180に付着している研削屑等を流水洗浄する。
【0058】
その後、流水洗浄されたウェーハ18をロボットハンド710の保持面711に保持して軸部712を駆動させ、ロボットハンド710を旋回させることによりロボットハンド710に保持されているウェーハ18を第2カセット702に収容する。
【0059】
上記の研削方法では、保護テープ19を均一な厚みに研削した後、ウェーハ18の研削加工を行うため、ウェーハ18を均一な厚みに仕上げることができる。
【0060】
また、従来から保護テープ19の研削をするために粗研削砥石のような粒が粗い研削砥石を用いると研削された保護テープ19に形成されている凹凸がウェーハ18の上面180に転写されるという問題があった。一方、保護テープ19の研削の際に仕上げ研削砥石のような粒が細かい研削砥石を用いると研削されたテープ屑が該研削砥石に付着するため連続的に研削できなくなるという問題もあった。
これに対して、研削装置1はテープ研削砥石(第1研削砥石310)を備えておりテープ研削砥石を用いて保護テープ19の研削を行うため、保護テープ19の研削後に保護テープ19の凹凸がウェーハ18の上面180に転写されず、またテープ屑が研削砥石に付着しないため複数の保護テープ19を連続的に研削できる。
つまり、テープ研削砥石は、仕上げ研削砥石(第3研削砥石540)より砥粒径が大きく研削面の凹凸が大きい砥石で、粗研削砥石(第2研削砥石320)より砥粒径が小さく研削面の凹凸が小さい、例えば、#800~#1200の砥石である。
また、研削装置1は、図示していないが、テープ研削砥石の研削面を洗浄する洗浄ノズルを備える。洗浄ノズルはテープ研削砥石の研削面に高圧水を噴射する高圧水ノズル、または、水とエアとを混合させ噴射する混合ノズルを用いる。なお、混合ノズルは、内部で水とエアとを混合させ、水とエアとの混合液を噴射口から噴射させるタイプでもよいし、水を噴射する水噴射口とエアを噴射させるエア噴射口とを備え、水噴射口から噴射した水とエア噴射孔から噴射してエアとが研削面に到達する直前に混合させるタイプでもよい。
また、粗研削砥石でウェーハを粗研削している際に、このような洗浄ノズルでテープ研削砥石の研削面を洗浄するので、テープ研削砥石の研削面に付着しているテープ屑を取り除くことが充分行われるので保護テープ19を連続的に研削することができる。
また、テープ研削砥石と仕上げ研削砥石とは同じ直径で形成されていると、テープに接触したテープ研削砥石の円弧の軌跡の半径と、ウェーハに接触した仕上げ研削砥石の円弧の軌跡の半径とが、同一になるので、面内の厚みを均一にすることが容易となる。
【0061】
なお、研削装置1は、上記の構成にかえて第1研削砥石310が粗研削砥石であり、第2研削砥石320がテープ研削砥石であってもよい。
そして、この場合も仕上げ研削砥石とテープ研削砥石とは、同じ直径で形成するとよい。
また、第1研削砥石310が仕上げ研削砥石であり、第2研削砥石320がテープ研削砥石であり、第3研削砥石540が粗研削砥石であってもよい。
あるいは、第1研削砥石310がテープ研削砥石であり、第2研削砥石320が仕上げ研削砥石であり、第3研削砥石540が粗研削砥石であってもよい。
【0062】
上記の研削方法は、以下のような構成であってもよい。予め、第1カセット701に複数の被加工物17を収容しておく。そして、ロボット71を用いて第1カセット701から被加工物17を引き出してウェーハ18に貼着された保護テープ19の研削加工を行い、保護テープ19の研削加工後に被加工物17を第2カセット702に収容するという動作を繰り返す。次に、第1カセット701に収容されていた全ての被加工物17の保護テープ19の研削加工が終了し第2カセット702に収容されたら、第2カセット792に収容された被加工物17をロボット71を用いて引き出し、反転手段713を用いてその上下面を反転させた後、今度はウェーハ18の上面180の粗研削、及び仕上げ研削を行っていく。
この構成では、例えば作業者が第1カセットステージ7010に複数の被加工物17が収容された第1カセット701を載置して研削装置1を作動させると、研削装置1による保護テープ19の研削とウェーハ18の研削とが連続的に行われる。これにより、作業工数を削減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:研削装置 10:ベース 11:第1コラム 12:第2コラム
17:被加工物 18:ウェーハ 180:上面 181:下面
19:保護テープ 190:保護テープの上面
2:保持手段 20:吸引部 200:保持面 21:枠体 210:枠体の上面
23:ターンテーブル 230:ターンテーブルの上面
2300:ターンテーブルの中心 3:第1研削手段 30:スピンドルモータ
38:第1スピンドル39:ハウジング 31:第1研削ホイール
310:第1研削砥石 311:第1ホイール基台 312:下面
32:第2研削ホイール 320:第2研削砥石 321:第2ホイール基台
322:下面 331:第1マウント 332:第2マウント 35:回転軸
41:第1研削送り手段 410:ボールネジ 411:ガイドレール
412:Z軸モータ 413:昇降板 414:ホルダ 415:回転軸
42:水平移動手段 420:ボールネジ 421:ガイドレール
422:X軸モータ 423:可動板 425:回転軸
5:第2研削手段 50:第2スピンドル 51:ハウジング
52:スピンドルモータ 53:マウント
54:研削ホイール 540:第3研削砥石 541:第3研削ホイール
542:下面 55:回転軸
6:第2研削送り手段 60:ボールネジ 61:ガイドレール
62:スピンドルモータ 63:昇降板 65:回転軸
7:搬送手段 701:第1カセット 702:第2カセット
7010:第1カセットステージ 7020:第2カセットステージ
71:ロボット 710:ロボットハンド 711:保持面 712:軸部
713:反転手段 72:位置合わせ手段 720:仮置き領域
73:スピンナ洗浄手段 732:洗浄領域 730:スピンナテーブル
731:スピンナ洗浄ノズル
741:搬入手段 742:搬出手段 75:プレート 76:アーム
77:軸部
8:進退機構 80:エア供給源 81:切り替え制御部 82:上下手段
820:ロッド 821:円板ピストン 83:シリンダ 830:大径部
831:小径部 89:ガイド部