(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】冷凍機用組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 107/24 20060101AFI20240417BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20240417BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20240417BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240417BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
C10M107/24
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C10N20:00 Z
C10N30:00 Z
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2020572134
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001421
(87)【国際公開番号】W WO2020166272
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019024848
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 知也
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/147048(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/181910(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/062058(WO,A1)
【文献】特開2017-071690(JP,A)
【文献】特開2011-202032(JP,A)
【文献】国際公開第2008/117657(WO,A1)
【文献】特開2016-056340(JP,A)
【文献】特開2018-071512(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
F25B 1/00- 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合冷媒と、基油(P)を含有する冷凍機油とを含む冷凍機用組成物であって、
前記混合冷媒が、R1234yf、R1234ze及びR1336mzz(Z)からなる群より選ばれる1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を前記混合冷媒全量基準で52質量%以上66質量%以下と、飽和フッ化炭化水素(HFC)
として1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)のみとを含み、
前記基油(P)が、ポリビニルエーテル類(PVE)を含む、冷凍機用組成物。
【請求項2】
60℃、1.5MPaGにおける前記冷凍機用組成物の溶解粘度が0.6mm
2/s以上8mm
2/s以下である、請求項1に記載の冷凍機用組成物。
【請求項3】
前記基油(P)の40℃動粘度が20mm
2/s以上150mm
2/s以下である、請求項1又は2に記載の冷凍機用組成物。
【請求項4】
前記基油(P)の水酸基価が15mgKOH/g以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項5】
前記不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項6】
前記混合冷媒中、前記飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)の含有量が、前記混合冷媒全量基準で10質量%以上50質量%以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項7】
前記基油(P)中、前記ポリビニルエーテル類(PVE)の含有量が、90質量%以上100質量%以下である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項8】
前記基油(P)中、前記ポリビニルエーテル類(PVE)の含有量が、100質量%である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項9】
前記冷凍機用組成物中、前記混合冷媒と前記冷凍機油との合計含有量が、90質量%以上100質量%以下である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項10】
前記冷凍機用組成物中、60℃、1.5MPaGにおける前記冷凍機油と前記混合冷媒との含有量比(冷凍機油/混合冷媒)が、質量比で、30/70以上85/15以下である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【請求項11】
前記冷凍機用組成物を冷凍機内部に充填して使用する場合、前記冷凍機油と前記混合冷媒との使用量比(冷凍機油/混合冷媒)が、質量比で、1/99以上99/1以下である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の冷凍機用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合冷媒及び冷凍機油を含む冷凍機用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機、例えば、圧縮型冷凍機は、一般に、少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構(膨張弁等)、蒸発器等で構成されると共に、密閉された系内を、冷媒と冷凍機油との混合物(以下、「冷凍機用組成物」ともいう。)が循環する構造となっている。
圧縮型冷凍機に用いられる冷媒としては、従来多く使用されていたハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代わり、環境負荷が低いフッ化炭化水素化合物が使用されるようになってきている。フッ化炭化水素化合物としては、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、ジフルオロメタン(R32)、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物(R410A)等の飽和フッ化炭化水素化合物(Hydro-Fluoro-Carbon;以下、「HFC」ともいう。)が多く使用されている。
また、地球温暖化係数が低い1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)等の不飽和フッ化炭化水素化合物(Hydro-Fluoro-Olefin;以下、「HFO」ともいう。)の使用も検討されている。
このように、より地球温暖化係数が低い冷媒が求められる中、近年、特に、前述のHFOを含む冷媒の実用化が検討されている。
例えば、特許文献1には、特定の構造を有するポリビニルエーテルと、フルオロプロペン冷媒と、を含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したとおり、冷凍機用組成物は、例えば、前述した構造を有する圧縮型冷凍機において用いられるが、冷凍機用組成物の特性が、圧縮型冷凍機の寿命及び冷凍効率に影響を及ぼす。
例えば、冷凍機用組成物中で、冷媒の冷凍機油に対する溶解性が十分でない場合、冷媒の効果を十分に利用できず、冷凍機の冷凍効率が低下してしまう。一方、冷媒の冷凍機油に対する溶解性が高すぎる場合には、冷凍機用組成物の溶解粘度が低下してしまい、冷凍機用組成物の潤滑性が低下してしまうため、潤滑する部材の摩耗が進行してしまう等、結果として圧縮型冷凍機の寿命が低下してしまう虞がある。また、当該冷凍機用組成物を使用する際に冷媒が気化し難くなり、冷媒使用量に見合った効果が得られなくなる。
また、例えば、冷凍機用組成物には、前述のとおり、良好な潤滑性を有することが求められている。用いられる装置の種類にもよるが、冷凍機用組成物として良好な潤滑性を得るためには、適切な溶解粘度を有することが必要とされる。当該溶解粘度が低すぎる場合、冷凍機用組成物の使用時に油膜が薄くなり、耐摩耗性が低下してしまう、すなわち、潤滑性が低下してしまい、圧縮型冷凍機の寿命低下に繋がる虞がある。一方で、当該溶解粘度が高すぎる場合、粘性抵抗が増加し、例えば、冷凍機用組成物により潤滑される摺動部材の摺動時にかかる負荷が向上し、結果として、装置のエネルギー消費量が増加してしまう虞がある。
このような観点から、冷凍機用組成物には、使用される冷媒の冷凍機油への溶解性(以下、「冷媒溶解性」ともいう。)が適切であること(以下、「冷媒溶解性が良好」又は「良好な冷媒溶解性」ともいう。)と、適切な溶解粘度(以下、「溶解粘度が良好」又は「良好な溶解粘度」ともいう。)が求められている。
ここで、前述のとおり、近年、HFOを含有する冷媒として、HFOとHFCとを混合した混合冷媒の実用化が検討されており、実際にいくつかの混合冷媒が用いられるようになってきている。しかし、これらの混合冷媒を含む冷凍機用組成物を用いる場合、混合冷媒の組成と用いる冷凍機油により、前述の冷媒溶解性や溶解粘度が変化してしまうことが確認された。
したがって、HFOとHFCとを混合した混合冷媒を用いる冷凍機用組成物には、前述の良好な冷媒溶解性と溶解粘度との両立が要求されている。
【0005】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、混合冷媒を用いる冷凍機用組成物において、冷媒溶解性が良好であり、かつ、良好な溶解粘度を有する冷凍機用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の組成を満たす混合冷媒と、ポリビニルエーテル類(PVE)を含む基油(P)とを含有する冷凍機油とを含む冷凍機用組成物が、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明の各実施形態によれば、以下の[1]~[13]が提供される。
[1]混合冷媒と、基油(P)を含有する冷凍機油とを含む冷凍機用組成物であって、
前記混合冷媒が、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)とを含み、
前記基油(P)が、ポリビニルエーテル類(PVE)を含む、冷凍機用組成物。
[2]60℃、1.5MPaGにおける冷凍機用組成物の溶解粘度が0.6mm2/s以上8mm2/s以下である、前記[1]に記載の冷凍機用組成物。
[3]前記基油(P)の40℃動粘度が20mm2/s以上150mm2/s以下である、前記[1]又は[2]に記載の冷凍機用組成物。
[4]前記基油(P)の水酸基価が15mgKOH/g以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[5]前記不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[6]前記飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)が、ジフルオロメタン(R32)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)からなる群より選ばれる1種以上を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[7]前記混合冷媒中、前記飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)の含有量が、前記混合冷媒全量基準で10質量%以上50質量%以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[8]前記基油(P)中、前記ポリビニルエーテル類(PVE)の含有量が、90質量%以上100質量%以下である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[9]前記冷凍機用組成物中、前記混合冷媒と前記冷凍機油との合計含有量が、90質量%以上100質量%以下である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[10]前記冷凍機用組成物中、60℃、1.5MPaGにおける前記冷凍機油と前記混合冷媒との含有量比(冷凍機油/混合冷媒)が、質量比で、30/70以上85/15以下である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[11]前記冷凍機用組成物を冷凍機内部に充填して使用する場合、前記冷凍機油と前記混合冷媒との使用量比(冷凍機油/混合冷媒)が、質量比で、1/99以上99/1以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の冷凍機用組成物。
[12]ポリビニルエーテル類(PVE)を含む基油(P)を含有する冷凍機油と、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)とを含む混合冷媒とを混合する工程を有する、前記[1]~[11]のいずれかに記載の冷凍機用組成物の製造方法。
[13]前記[1]~[11]のいずれかに記載の冷凍機用組成物を充填した冷凍機。
[14]前記[1]~[11]のいずれかに記載の冷凍機用組成物を充填した空調機。
[15]前記[1]~[11]のいずれかに記載の冷凍機用組成物を、冷凍機若しくは空調機に充填して用いる冷凍機用組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、混合冷媒を用いる冷凍機用組成物において、冷媒溶解性が良好であり、かつ、良好な溶解粘度を有する冷凍機用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[冷凍機用組成物]
前記冷凍機用組成物の一態様としては、混合冷媒と、基油(P)を含有する冷凍機油とを含む冷凍機用組成物であって、前記混合冷媒が、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)とを含み、前記基油(P)が、ポリビニルエーテル類(以下、「PVE」ともいう。)を含む。
【0009】
なお、本明細書中、「溶解粘度」とは、60℃、1.5MPaG条件下における冷凍機用組成物の溶解粘度を指し、当該溶解粘度の値は、後述する実施例に記載の方法と同様の方法により測定される値を意味する。
また、本明細書中、「炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子のみから構成されている基を意味する。「炭化水素基」には、直鎖又は分岐鎖から構成される「脂肪族基」、芳香性を有しない飽和又は不飽和の炭素環を1以上有する「脂環式基」、ベンゼン環等の芳香性を示す芳香環を1以上有する「芳香族基」が含まれる。
また、本明細書中、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。
また、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。
【0010】
また、「置換若しくは無置換」との記載における置換基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、更に好ましくは1以上3以下)のアルキル基;環形成炭素数3以上10以下(好ましくは3以上8以下、より好ましくは4以上6以下、更に好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環形成炭素数6以上18以下(好ましくは6以上12以下)のアリール基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アミノ基等が挙げられる。
これらの置換基は、更に前述の任意の置換基により置換されていてもよい。
また、「置換若しくは無置換」との記載における「無置換」とは、これらの置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
【0011】
また、本明細書中、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上であり、そして、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である」という記載から、好適範囲として、例えば、「10以上70以下」、「30以上70以下」、「40以上80以下」といったそれぞれ独立に選択した下限値と上限値とを組み合わせた範囲を選択することもできる。また、同様の記載から、例えば、単に、「40以上」又は「70以下」といった下限値又は上限値の一方を規定した範囲を選択することもできる。また、例えば、「好ましくは10以上90以下、より好ましくは30以上80以下、更に好ましくは40以上70以下である」、「好ましくは10~90、より好ましくは30~80、更に好ましくは40~70である」といった記載から選択可能な好適範囲についても同様である。なお、本明細書中、数値範囲の記載において、例えば、「10~90」という記載は「10以上90以下」と同義である。
以下、当該冷凍機用組成物中に含有される各成分について説明する。
【0012】
<混合冷媒>
前記混合冷媒は、HFOを混合冷媒全量(100質量%)基準で50質量%超70質量%以下含有する。当該HFOの含有量を満たさない場合、良好な冷媒溶解性及び良好な溶解粘度の両立が可能な冷凍機用組成物を提供することが困難である。
そのため、より良好な冷媒溶解性とより良好な溶解粘度とを両立する観点から、当該混合冷媒中のHFO含有量は、混合冷媒全量(100質量%)基準で、好ましくは52質量%以上、より好ましくは54質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは69質量%以下、より好ましくは68質量%以下、更に好ましくは66質量%以下である。
以下、当該混合冷媒について説明する。
【0013】
(不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO))
不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)としては、例えば、直鎖状又は分岐状の炭素数2以上6以下の鎖状オレフィン;炭素数4以上6以下の環状オレフィンのフッ素化物等、炭素-炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。
より具体的には、1個以上3個以下(好ましくは3個)のフッ素原子が導入されたエチレン、1個以上5個以下のフッ素原子が導入されたプロペン、1個以上7個以下のフッ素原子が導入されたブテン、1個以上9個以下のフッ素原子が導入されたペンテン、1個以上11個以下のフッ素原子が導入されたヘキセン、1個以上5個以下のフッ素原子が導入されたシクロブテン、1個以上7個以下のフッ素原子が導入されたシクロペンテン、1個以上9個以下のフッ素原子が導入されたシクロヘキセン等が挙げられる。
これらのHFOの中では、好ましくはプロペンのフッ化物、より好ましくは3個以上5個以下のフッ素原子が導入されたプロペン、更に好ましくは4個のフッ素原子が導入されたプロペンである。
【0014】
HFOの好適な例としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(R1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yz)、1,1,2-トリフルオロエチレン(R1123)、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(R1336mzz(Z))等が挙げられる。これらのHFOの中では好ましくはR1234yf、R1234ze、R1123及びR1336mzz(Z)からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくはR1234yf、R1234ze及びR1336mzz(Z)からなる群より選ばれる1種以上、更に好ましくはR1234yf及びR1234zeからなる群より選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはR1234yfである。
これらのHFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、HFOを2種以上組み合わせて用いる場合としては、例えば、R1234yf及びR1234zeの組み合わせが挙げられる。
【0015】
前記混合冷媒が含有するHFO中、前記プロペンのフッ化物の含有量は、HFO全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より更に好ましくは100質量%である。
また、前記混合冷媒が含有するHFOとしては、R1234yfを含むことが好ましい。前記混合冷媒が含有するHFO中、R1234yfの含有量は、HFO全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より更に好ましくは100質量%である。
【0016】
(飽和フッ化炭化水素化合物(HFC))
飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)としては、好ましくは炭素数1以上4以下のアルカンのフッ化物、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルカンのフッ化物、更に好ましくは炭素数1又は2のアルカン(メタン又はエタン)のフッ化物である。該メタン又はエタンのフッ化物としては、例えば、トリフルオロメタン(R23)、ジフルオロメタン(R32)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1,2-トリフルオロエタン(R143)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)が挙げられる。これらのHFCの中では好ましくはR32、R134a、及びR125からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくはR32及びR134aからなる群より選ばれる1種以上である。
これらのHFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記混合冷媒が含有するHFC中、前記メタン又はエタンのフッ化物の合計含有量は、HFC全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より更に好ましくは100質量%である。
また、前記混合冷媒が含有するHFCとしては、R32及びR134aからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。前記混合冷媒が含有するHFC中、R32及びR134aからなる群より選ばれる1種以上の含有量は、HFC全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より更に好ましくは100質量%である。
【0018】
前記混合冷媒中、HFCの含有量は、前述の良好な冷媒溶解性と良好な溶解粘度とを両立し易くする観点から、前記混合冷媒全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上48質量%以下、更に好ましくは30質量%以上46質量%以下、より更に好ましくは33質量%以上45質量%以下である。
【0019】
前記混合冷媒は、前述のHFO及びHFCに加えて、更にその他の冷媒を含有するものであってもよい。当該その他の冷媒としては、好ましくは自然系冷媒が挙げられる。
【0020】
(自然系冷媒)
自然系冷媒としては、炭化水素系冷媒(HC)、二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)、及びアンモニアからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの自然系冷媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記炭化水素系冷媒としては、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素、より好ましくは炭素数1以上5以下の炭化水素、更に好ましくは炭素数3以上5以下の炭化水素である。炭素数が8以下であると、冷媒の沸点が高くなり過ぎず冷媒として好ましい。該炭化水素系冷媒としては、メタン、エタン、エチレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン(R600a)、2-メチルブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンイソブタン、及びノルマルブタンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、前記混合冷媒の一態様としては、好ましくは前記HFOとしてR1234yfを前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、前記HFCとして、R134a及びR32からなる群より選ばれる1種以上とを含有する混合冷媒;より更に好ましくは前記HFOとしてR1234yfを前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、前記HFCとして、R32又はR134aを含有する混合冷媒;更に好ましくは前記HFOとしてR1234yfを前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、前記HFCとして、R32又はR134aのいずれか一方のみを含有する混合冷媒が挙げられる。
前記混合冷媒が、前記HFOとしてR1234yfを前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下含み、前記HFCとしてR32のみを含有する混合冷媒の態様である場合、前述の良好な冷媒溶解性と良好な溶解粘度とを両立する観点から、前記R1234yfの含有量及びR134aの含有量は、それぞれ次に示す範囲であることが好ましい。当該態様の場合、前記観点から、前記R1234yfの含有量は、混合冷媒全量(100質量%)基準で、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは64質量%以上であり、そして、好ましくは69質量%以下、より好ましくは68質量%以下、更に好ましくは67質量%以下である。
また、当該態様の場合、前記と同様の観点から、前記R32の含有量は、混合冷媒全量(100質量%)基準で、好ましくは30質量%以上50質量%以下、より好ましくは31質量%以上45質量%以下、更に好ましくは32質量%以上40質量%以下、より更に好ましくは33質量%以上36質量%以下である。
【0022】
また、前記混合冷媒が、前記HFOとしてR1234yfを前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下含み、前記HFCとしてR134aのみを含有する混合冷媒の態様である場合、前述の良好な冷媒溶解性と良好な溶解粘度とを両立し易くする観点から、前記R1234yfの含有量及びR134aの含有量は、それぞれ次に示す範囲であることが好ましい。当該態様の場合、前記観点から、前記R1234yfの含有量は、混合冷媒全量(100質量%)基準で、好ましくは52質量%以上、より好ましくは54質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは66質量%以下、より好ましくは62質量%以下、更に好ましくは58質量%以下である。
また、当該態様の場合、前記と同様の観点から、前記R134aの含有量は、混合冷媒全量(100質量%)基準で、好ましくは30質量%以上50質量%以下、より好ましくは34質量%以上48質量%以下、更に好ましくは38質量%以上46質量%以下、より更に好ましくは42質量%以上45質量%以下である。
【0023】
また、前記混合冷媒の一態様としては、より好ましくは前記HFOを前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、前記HFCを前記混合冷媒全量基準で10質量%以上50質量%以下とからなる混合冷媒が挙げられる。
なお、当該態様における各冷媒の組み合わせとして記載される前記HFO及びHFCについて、当該HFO及びHFCの好適な態様及び好適な含有量については、前述した混合冷媒中のHFO及びHFCの、それぞれの好適な態様及び好適な含有量と同様である。
【0024】
[冷凍機油]
前記冷凍機油は、PVEを含む基油(P)を含有する。
冷媒溶解性をより良好にする観点から、当該冷凍機油の全量100質量%中、基油(P)の含有量は、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、更に好ましくは97質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは98質量%以上100質量%以下である。
【0025】
<基油(P)>
前記冷凍機油が含有する基油(P)は、PVEを含む基油である。
冷媒溶解性をより良好にする観点から、当該基油(P)の全量100質量%中、PVEの含有量は、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、更に好ましくは98質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは100質量%である。
【0026】
(ポリビニルエーテル類(PVE))
前記ポリビニルエーテル類(PVE)としては、ビニルエーテルに由来する構成単位を1種以上有する重合体が挙げられる。前記基油(P)は、当該PVEを、単独で含有してもよく又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。
当該PVEの中でも、冷媒溶解性の観点から、ビニルエーテルに由来する構成単位を1種以上有し、側鎖に炭素数1以上4以下のアルキル基を有する重合体が好ましい。
【0027】
当該PVEの中でも、次の一般式(A-1)で表される構成単位を1種以上有する重合体(A1)であることが好ましい。
【0028】
【0029】
一般式(A-1)中、R1a、R2a、及びR3aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上8以下の炭化水素基を示す。R4aは、炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基を示す。R5aは、炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。
一般式(A-1)中、rは、OR4aで表される単位の数の平均値であって、0以上10以下の数を示すが、好ましくは0以上5以下の数、より好ましくは0以上3以下の数、更に好ましくは0である。
なお、一般式(A-1)中にOR4aが複数存在する場合(すなわち、rが2以上の数の場合)、複数のOR4aは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
また、rが0である場合、一般式(A-1)中の炭素原子(C)と-OR5aとの結合は単結合であり、当該炭素原子(C)と-OR5aとは直接結合する。
【0030】
R1a、R2a、及びR3aとして選択し得る炭素数1以上8以下の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
なお、本明細書において、「各種XXX基」との表現にて、XXX基として考えられるすべての異性体を包含している。例えば、「各種アルキル基」とは「直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基」を表し、例えば、「各種プロピル基」であれば、「n-プロピル基、イソプロピル基」等の各種プロピル基を表し、また、「各種ブチル基」であれば、「n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基」等の各種ブチル基を表す。
R1a、R2a、及びR3aとして選択し得る当該炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、更に好ましくは1以上3以下である。
【0031】
R1a、R2a、及びR3aとしては、それぞれ独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1以上8以下のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基、より更に好ましくは水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。
なお、R1a、R2a、及びR3aは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0032】
R4aとして選択し得る炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等の2価の脂肪族基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン等の脂環式化合物の2価の残基である脂環式基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン等の2価の芳香族基;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分とにそれぞれ1価の結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;キシレン、ジエチルベンゼン等のポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;等が挙げられる。
R4aとして選択し得る当該炭化水素基の炭素数としては、好ましくは2以上8以下、より好ましくは2以上6以下、更に好ましくは2以上4以下である。
R4aとしては、好ましくは炭素数2以上10以下の2価の脂肪族基、好ましくは炭素数2以上6以下の2価の脂肪族基、更に好ましくは炭素数2以上4以下の2価の脂肪族基である。
【0033】
R5aとして選択し得る炭素数1以上10以下の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
R5aとして選択し得る前記炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1以上8以下、より好ましくは1以上6以下である。
【0034】
R5aとしては、冷媒溶解性をより向上させる観点から、好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基、より好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基、更に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0035】
本発明の一態様において、重合体(A1)は、R5aがエチル基である構成単位(α1)を有することが好ましい。
構成単位(α1)の含有量としては、冷媒溶解性をより向上させる観点から、重合体(A1)が有する末端構成単位以外の構成単位の全量(100質量%)基準で、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは95質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは99質量%以上100質量%以下である。
【0036】
重合体(A1)中、一般式(A-1)で表される構成単位の単位数(重合度数)としては、後述する数平均分子量範囲に属するように適宜設定することが好ましい。
また、重合体(A1)は、一般式(A-1)で表される構成単位を1種のみ有する単独重合体であってもよく、当該構成単位を2種以上有する共重合体であってもよい。
なお、当該共重合体の共重合の態様としては、特に制限はなく、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又はグラフト共重合体であってもよい。
【0037】
重合体(A1)の末端部分には、飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリル等に由来する1価の基を導入してもよい。
本発明の一態様において、重合体(A1)の一方の末端が次の一般式(A-1-i)で表される基であることが好ましい。
【0038】
【0039】
一般式(A-1-i)中、*は一般式(A-1)で表される構成単位中の炭素原子との結合位置を示す。
一般式(A-1-i)中、R6a、R7a、及びR8aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上8以下の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基、より好ましくは水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。
なお、R6a、R7a、及びR8aは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
R6a、R7a、及びR8aとして選択し得る炭素数1~8の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR1a、R2a、及びR3aとして選択し得る炭素数1以上8以下の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0040】
一般式(A-1-i)中、R9aは、炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数2以上8以下の2価の炭化水素基、より好ましくは炭素数2以上6以下の2価の炭化水素基、更に好ましくは炭素数2以上4以下の2価の脂肪族基である。
一般式(A-1-i)中、r1は、OR9aで表される単位の数の平均値であって、0以上10以下の数を示すが、好ましくは0以上5以下の数、より好ましくは0以上3以下の数、更に好ましくは0である。
なお、一般式(A-1-i)中にOR9aが複数存在する場合(すなわち、r1が2以上の数の場合)、複数のOR9aは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、r1が0である場合、一般式(A-1-i)中の炭素原子(C)と-OR10aとの結合は単結合であり、当該炭素原子(C)と-OR10aとは直接結合する。
【0041】
R9aとして選択し得る炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR4aとして選択し得る炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0042】
一般式(A-1-i)中、R10aは、炭素数1以上10以下の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基である。
なお、R10aとしては、一般式(A-1-i)中のr1が0である場合には、更に好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基であり、r1が1以上である場合には、更に好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基である。
R10aとして選択し得る炭素数1以上10以下の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR5aとして選択し得る炭素数1以上10以下の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0043】
また、重合体(A1)において、一方の末端が一般式(A-1-i)で表される基であり、他方の末端が、一般式(A-1-i)で表される基、下記一般式(A-1-ii)で表される基、下記一般式(A-1-iii)で表される基、及びオレフィン性不飽和結合を有する基からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0044】
【0045】
一般式(A-1-ii)及び(A-1-iii)中、R11a、R12a、R13a、R18a、R19a、及びR20aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上8以下の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基、より好ましくは水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R11a、R12a、R13a、R18a、R19a、及びR20aは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
R11a、R12a、R13a、R18a、R19a、及びR20aとして選択し得る炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR1a、R2a、及びR3aとして選択し得る炭素数1以上8以下の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0046】
一般式(A-1-ii)中、R14a及びR16aは、それぞれ独立に、炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数2以上6以下の2価の炭化水素基、より好ましくは炭素数2以上4以下の2価の脂肪族基である。R14a及びR16aとして選択し得る2価の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR4aとして選択し得る2価の炭化水素基と同じものが挙げられる。
【0047】
一般式(A-1-ii)中、r2及びr3は、それぞれOR14a及びOR16aで表される単位の数の平均値であって、それぞれ独立に、0以上10以下の数を示し、好ましくは0以上5以下の数、より好ましくは0以上3以下の数、更に好ましくは0である。
一般式(A-1-ii)中にOR14a及びOR16aが複数存在する場合、複数のOR14a及び複数のOR16aは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
また、r2が0である場合、一般式(A-1-ii)中の炭素原子(C)と-OR15aとの結合は単結合であり、当該炭素原子(C)と-OR15aとは直接結合する。同様に、r3が0である場合、一般式(A-1-ii)中の炭素原子(C)と-OR17aとの結合は単結合であり、当該炭素原子(C)と-OR17aとは直接結合する。
【0048】
一般式(A-1-ii)中、R15a及びR17aは、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基である。
なお、R15aとしては、r2が0である場合には、更に好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基であり、r2が1以上である場合には、更に好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基である。同様に、R17aとしては、r3が0である場合には、更に好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基であり、r3が1以上である場合には、更に好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基である。
【0049】
PVEの数平均分子量(Mn)は、好ましくは300以上3,000以下である。
当該数平均分子量(Mn)が300以上であると、潤滑性及びシール性が良好となる。一方、当該数平均分子量(Mn)が3,000以下であると、混合冷媒との相溶性が良好となる。
このような観点から、PVEの数平均分子量(Mn)は、より好ましくは350以上、更に好ましくは400以上であり、そして、より好ましくは2,800以下、更に好ましくは2,500以下である。
なお、当該数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0050】
(その他の基油)
前記基油(P)は、本発明の効果を損なわない範囲において、PVEに加えて、更にその他の基油を含有してもよい。
当該その他の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール類(以下、「PAG」ともいう。)、ポリオールエステル類(以下、「POE」ともいう。)からなる群より選ばれる1種以上の合成油;ポリエステル類、ポリカーボネート類、α-オレフィンオリゴマーの水素化物、脂環式炭化水素化合物、及びアルキル化芳香族炭化水素化合物等の合成油(前記PVE、PAG、POEを除く。);又は鉱油;などが挙げられる。
【0051】
PAGとしては、例えば、一般式(B-1)で表される化合物(B1)が挙げられる。
R1b-[(OR2b)m-OR3b]n (B-1)
一般式(B-1)中、R1bは、水素原子、炭素数1以上10以下の1価の炭化水素基、炭素数2以上10以下のアシル基、炭素数1以上10以下の2価以上6価以下の炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数3以上10以下の複素環基を示す。
R2bは、炭素数2以上4以下のアルキレン基を示す。
R3bは、水素原子、炭素数1以上10以下の1価の炭化水素基、炭素数2以上10以下のアシル基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数3以上10以下の複素環基を示す。
nは、1以上6以下の整数であって、一般式(B-1)中のR1bの結合部位の数に応じて定められる。例えば、R1bがアルキル基やアシル基の場合、nは1となり、R1bが炭化水素基又は複素環基であり、当該基の価数が2、3、4、5、及び6である場合、nはそれぞれ2、3、4、5及び6となる。
mは、OR2bで表される単位の数の平均値であって、1以上の数を示し、好ましくはm×nの平均値が6以上80以下となる数である。なお、当該mの値は、適宜設定される値であり、本発明の効果が奏される限り、特に制限はなく、好ましくはm×nの平均値が前述した範囲を満たす数である。
OR2bが複数存在する場合、複数のOR2bは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、1分子中の複数のR3bは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0052】
POEとしては、例えば、ジオール又はポリオールと脂肪酸とのエステルが挙げられる。
当該POEの中でも、例えば、ジオール又は水酸基の数が3以上20以下のポリオールと炭素数3以上20以下の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
なお、当該脂肪酸の炭素数には、前記脂肪酸が有するカルボキシ基(-COOH)の炭素原子も含まれる。また、前記脂肪酸としては、直鎖状脂肪酸であってもよく、分岐状脂肪酸であってもよい。前記脂肪酸としては、更に、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。
また、POEとしては、ポリオールの全ての水酸基がエステル化されずに残った部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、又は、当該部分エステルと当該完全エステルとの混合物であってもよい。
また、POEの一態様としては、ポリオールと2種以上の混合脂肪酸とのエステルであってもよい。
当該2種以上の混合脂肪酸の例としては、好ましくは炭素数4以上9以下の脂肪酸からなる群より選ばれる2種以上の脂肪酸を組み合わせた混合脂肪酸が挙げられる。
なお、2種以上の脂肪酸とのエステルである場合、当該エステルは1種の脂肪酸とポリオールとのエステルを2種以上混合したものであってもよい。
【0053】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、若しくはナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき;溶剤抽出又は水素化分解;溶剤脱ろう又は接触脱ろう;水素化精製;等のうちの1つ以上の処理を行って精製した油、鉱油系ワックスを異性化することによって製造される油、又はフィシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化することによって製造される油等が挙げられる。
前述のその他の基油として用いることができる合成油及び鉱油は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記基油(P)が前記その他の基油を含有する場合、前述の冷媒溶解性の観点から、当該その他の基油の含有量は、前記基油(P)の全量100質量%中、好ましくは0質量%超10質量%以下、より好ましくは0質量%超5質量%以下、更に好ましくは0質量%超2質量%以下である。
【0055】
前記冷凍機油中、前記基油(P)の含有量は、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、更に好ましくは97質量%以上100質量%以下である。
【0056】
(基油(P)の性状)
前記基油(P)の40℃における動粘度(以下、「40℃動粘度」ともいう。)は、好ましくは20mm2/s以上150mm2/s以下である。
当該動粘度が20mm2/s以上であると、潤滑性及びシール性が良好となる。一方、当該動粘度が150mm2/s以下であると、得られる冷凍機用組成物の省エネルギー性が良好となる。
このような観点から、当該基油(P)の40℃動粘度は、より好ましくは25mm2/s以上、更に好ましくは30mm2/s以上であり、そして、より好ましくは100mm2/s以下、更に好ましくは80mm2/s以下である。
なお、当該基油(P)の40℃動粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0057】
前記基油(P)の水酸基価は、好ましくは15mgKOH/g以下である。
当該基油(P)の水酸基価が15mgKOH/g以下であると、前述の冷媒溶解性が良好となるため好ましい。
このような観点から、当該基油(P)の水酸基価は、より好ましくは10mgKOH/g以下、更に好ましくは5mgKOH/g以下、より更に好ましくは3mgKOH/g以下である。
なお、当該基油(P)の水酸基価は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
また、基油(P)の水酸基価は、各種基油を合成するに際し、例えば、原料の仕込み量及び/又は重合後の水素添加処理の条件を調整することにより調整できる。
【0058】
前記基油(P)の引火点は、安全性の観点から、好ましくは160℃以上である。同様の観点から、当該基油(P)の引火点は、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは175℃以上である。
また、当該基油(P)の引火点について、その上限は特に制限はないが、例えば、300℃以下である。
なお、当該基油(P)の引火点は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0059】
前記基油(P)の酸価は、好ましくは0.05mgKOH/g以下であり、より好ましくは0.03mgKOH/g以下である。
また、前記基油(P)の水分量としては、熱安定性、加水分解安定性、及び電気絶縁性の向上の観点から、好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは400質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下である。
なお、当該基油(P)の酸価及び水分量は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0060】
<その他添加剤>
前記冷凍機油は、前記基油(P)に加えて、冷凍機油が含有していてもよい各種の添加剤(以下、「その他添加剤」ともいう。)を含有していてもよく、当該その他添加剤としては、例えば、酸化防止剤、油性向上剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、金属不活性化剤、防錆剤、及び消泡剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤が挙げられる。
前記冷凍機油が当該その他添加剤を含有する場合、効果及び経済性等の点から、当該その他の添加剤の合計含有量は、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
ただし、前記冷凍機油は当該その他添加剤を含有しなくてもよい。
【0061】
前記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
前記モノフェノール系酸化防止剤としては、n-オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6-メチルヘプチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のアルキル-3-(3,5-ジ-tert―ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(アルキル基としては、炭素数4以上20以下のもの、好ましくは炭素数8以上18以下のものが挙げられる。);2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等の2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノール(アルキル基の炭素数1以上4以下);2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-p-クレゾール等が挙げられる。
【0062】
前記ポリフェノール系酸化防止剤としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0063】
前記アミン系酸化防止剤としては、4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン;アルキルフェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン等のフェニル-α-ナフチルアミン類;N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0064】
前記冷凍機油は当該酸化防止剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
前記冷凍機油が当該酸化防止剤を含有する場合、当該酸化防止剤の含有量は、得られる冷凍機油の酸価の上昇が抑制され、高温での酸化安定性がより向上しやすくなる観点から、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。そして、当該含有量は、含有量に見合った効果を発揮しやすくする観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0065】
前記油性向上剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族飽和若しくは不飽和モノカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸;リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール;ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族飽和若しくは不飽和モノアミン;ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族飽和若しくは不飽和モノカルボン酸アミド;グリセリン、ソルビトール等の多価アルコールと脂肪族飽和若しくは不飽和モノカルボン酸との部分エステル;等が挙げられる。
【0066】
前記冷凍機油は当該油性向上剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
前記冷凍機油が当該油性向上剤を含有する場合、当該油性向上剤の含有量は、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0067】
前記極圧剤としては、例えば、リン系極圧剤が挙げられる。リン系極圧剤としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル又はこれらのアミン塩等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、モノアルキルジアリールホスフェート、ジアルキルモノアリールホスフェート、トリアルケニルホスフェート等が挙げられる。なお、当該極圧剤について述べる「アリール」は、芳香族環のみからなる官能基に限らず、アルキルアリール、及びアリールアルキルを含む概念である。
【0068】
前記リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェート;トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート等のアルキルホスフェート;エチルジフェニルホスフェート、トリオレイルホスフェート等が挙げられる。
【0069】
前記酸性リン酸エステルとしては、各種のアルキルアシッドホスフェート、ジアルキルアシッドホスフェート等が挙げられる。
前記亜リン酸エステルとしては、各種のトリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイト、モノアルキルジアリールホスファイト、ジアルキルモノアリールホスファイト、トリアルケニルホスファイト等が挙げられる。
前記酸性亜リン酸エステルとしては、各種のジアルキルハイドロゲンホスファイト、ジアルケニルハイドロゲンホスファイト、ジアリールハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
また、前記リン系極圧剤としては、トリチオフェニルホスフェート等の硫黄原子を含有するリン酸エステル等であってもよい。なお、アミン塩としては、酸性リン酸エステル又は酸性亜リン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミン塩を形成するアミンは、1級、2級、又は3級アミンのいずれでもよい。
【0070】
前記冷凍機油は当該極圧剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
前記冷凍機油が当該極圧剤を含有する場合、当該極圧剤の含有量は、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0071】
前記酸捕捉剤としては、例えば、エポキシ化合物が挙げられる。エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油等が挙げられるが、これらの中では、グリシジルエーテル化合物が好ましい。
前記グリシジルエーテル化合物としては、好ましくは炭素数3以上30以下、より好ましくは炭素数4以上24以下、更に好ましくは炭素数6以上16以下である脂肪族モノアルコール;炭素数3以上30以下、より好ましくは4以上24以下、更に好ましくは炭素数6以上16以下である脂肪族多価アルコール;又は水酸基を1個以上含有する芳香族化合物由来のグリシジルエーテルが挙げられる。脂肪族モノアルコール又は脂肪族多価アルコールは、直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれでのものでもよく、また、飽和若しくは不飽和のいずれのものでもよい。
なお、脂肪族多価アルコールの場合又は水酸基を2個以上含有する芳香族化合物の場合、冷凍機油の安定性及び水酸基価の上昇を抑える観点から、水酸基の全てがグリシジルエーテル化されていることが好ましい。
【0072】
前記グリシジルエーテル化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル等が挙げられる。当該グリシジルエーテル化合物としては、例えば、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数6以上16以下の飽和脂肪族モノアルコール由来のグリシジルエーテル(すなわち、アルキル基の炭素数が6以上16以下のアルキルグリシジルエーテル)が挙げられ、例えば、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、イソノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0073】
前記冷凍機油は当該酸捕捉剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
前記冷凍機油が当該酸捕捉剤を含有する場合、当該酸捕捉剤の含有量は、高温での酸化安定性がより向上しやすくなる観点から、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上である。そして、当該含有量は、含有量に見合った効果を発揮しやすくする観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0074】
前記酸素捕捉剤としては、例えば、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ジフェニルスルフィド、ジオクチルジフェニルスルフィド、ジアルキルジフェニレンスルフィド、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、ベンゾチアピラン、チアピラン、チアントレン、ジベンゾチアピラン、ジフェニレンジスルフィド等の含硫黄芳香族化合物、各種オレフィン、ジエン、トリエン等の脂肪族不飽和化合物、二重結合を持ったテルペン類等が挙げられる。
【0075】
前記冷凍機油は当該酸素捕捉剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
前記冷凍機油が当該酸素捕捉剤を含有する場合、当該酸素捕捉剤の含有量は、前記冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0076】
前記金属不活性化剤としては、例えば、N-[N,N’-ジアルキル(炭素数3以上12以下のアルキル基)アミノメチル]トリアゾール等の銅不活性化剤を挙げることができる。
前記防錆剤としては、例えば、金属スルホネート、脂肪族アミン類、有機亜リン酸エステル、有機リン酸エステル、有機スルフォン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等を挙げることができる。
前記消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル、ポリメタクリレート類等が挙げられる。
前記冷凍機油は、前記金属不活性化剤、前記防錆剤又は前記消泡剤を、それぞれ、1種単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
前記冷凍機油が、前記金属不活性化剤、前記防錆剤又は前記消泡剤を含有する場合、各々の含有量は、冷凍機油全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0077】
[冷凍機油の製造方法]
前記冷凍機油の製造方法は、前記混合冷媒用の冷凍機油であって、基油(P)を含有する、冷凍機油の製造方法である。
当該製造方法は、基油(P)を配合して冷凍機油を得る製造方法であり、当該製造方法では、基油(P)に加えて、前記その他添加剤を配合してもよい。
基油(P)及びその他添加剤の詳細な説明は、前述したものと同様であるため、その説明は省略する。また、混合冷媒についても、前述したとおりである。
【0078】
前記冷凍機用組成物中、60℃、1.5MPaGにおける前記冷凍機油と前記混合冷媒との含有量比(冷凍機油/混合冷媒)は、質量比で、好ましくは30/70以上85/15以下、より好ましくは31/69以上82/18以下、更に好ましくは32/68以上80/20以下である。前記冷凍機油と前記混合冷媒との当該質量比を該範囲内とすると、潤滑性及び冷凍機における好適な冷凍能力を得ることができる。
当該冷凍機用組成物中、前記混合冷媒と前記冷凍機油との合計含有量は、当該冷凍機用組成物全量(100質量%)基準で、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、更に好ましくは98質量%以上100質量%以下であり、そして、より更に好ましくは100質量%である。
【0079】
<冷凍機用組成物の特性>
前記冷凍機用組成物は、前述の冷媒溶解性が良好であり、60℃、1.5MPaGにおける冷媒溶解度が、好ましくは15質量%以上70質量%以下である。
本明細書中、当該冷媒溶解度の値は、前記条件下において、混合冷媒が前記冷凍機油に溶解する割合(質量%)を指し、具体的には、後述する実施例に記載の方法と同様の方法により測定される値を意味する。そして、当該冷媒溶解度の値は、前述の冷媒溶解性を評価する指標となる。
当該冷媒溶解度の値が15質量%以上であると、当該冷凍機用組成物を使用する際、冷媒の機能が十分に発揮される観点から好ましい。一方、当該冷媒溶解度の値が70質量%以下であると、冷媒が溶解し過ぎることで生じる溶解粘度の低下による潤滑性の低下を抑制できる観点から好ましく、また、当該冷凍機用組成物を使用する際に冷媒が気化し難くなり、冷媒使用量に見合った効果が得られなくなることを抑制できる観点からも好ましい。同様の観点から、当該冷媒溶解度は、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、より好ましくは69質量%以下、より好ましくは68質量%以下である。
【0080】
また、前記冷凍機用組成物は、潤滑性も良好であり、前記冷凍機用組成物の60℃、1.5MPaGにおける溶解粘度は、好ましくは0.6mm2/s以上8mm2/s以下である。
前記溶解粘度の値が0.6mm2/s以上であると、良好な潤滑性が得られる観点から好ましい。一方、当該溶解粘度の値が8mm2/s以下であると、省エネルギー性の観点から好ましく、また、例えば、圧縮型冷凍機中のキャピラリ等膨張機構を通過する時の流動性が優れる観点からも好ましい。同様の観点から、当該溶解粘度は、より好ましくは0.8mm2/s以上、更に好ましくは1.0mm2/s以上であり、そして、より好ましくは8.0mm2/s以下、更に好ましくは7.0mm2/s以下、より更に好ましくは6.0mm2/s以下である。
【0081】
また、前記冷凍機用組成物は、前記冷媒溶解度及び溶解粘度の値をどちらも満たすことが好ましい。すなわち、前記冷凍機用組成物の60℃、1.5MPaGにおける冷媒溶解度が15質量%以上70質量%以下であり、かつ、60℃、1.5MPaGにおける溶解粘度が0.6mm2/s以上8mm2/s以下であることが好ましい。
この場合、冷媒溶解度及び溶解粘度の好適範囲は、それぞれ独立して、前述した好適範囲と同様である。例えば、前述した冷媒溶解度及び溶解粘度の好適範囲のうち、一方の好ましい範囲と他方のより好ましい範囲との組み合わせ若しくはその逆の組み合わせでもよく、一方の好ましい範囲と他方の更に好ましい範囲との組み合わせ若しくはその逆の組み合わせでもよく、又は、一方のより好ましい範囲と他方の更に好ましい範囲との組み合わせ若しくはその逆の組み合わせでもよい。ただし、当然に、どちらの特性も好ましい範囲を満たすがより好ましい範囲は満たさない態様と比べて、どちらの特性もより好ましい範囲を満たす態様の方がより好ましく、同様にどちらの特性も更に好ましい範囲を満たすものが更に好ましい。
【0082】
[冷凍機用組成物の製造方法]
前記冷凍機用組成物は、前記混合冷媒と、前記冷凍機油とを混合して得られる。すなわち、本発明の一態様に係る冷凍機用組成物の製造方法は、前記混合冷媒と、前記冷凍機油とを混合する工程を有する、冷凍機用組成物の製造方法である。
当該混合冷媒及び当該冷凍機油の詳細な説明は、前述したものと同様であるため、その説明は省略する。
【0083】
[冷凍機]
前記冷凍機用組成物は、冷凍機内部に充填して使用されるものである。
当該冷凍機としては、前記混合冷媒を用いる圧縮型冷凍機が好ましく、圧縮機、凝縮器、膨張機構(膨張弁等)及び蒸発器を備える冷凍サイクル、又は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、乾燥器及び蒸発器を備える冷凍サイクルを有するものであることがより好ましい。
前記冷凍機用組成物は、例えば、圧縮機等に設けられる摺動部分を潤滑するために使用される。なお、当該摺動部分は、特に限定されない。
冷凍機としては、いずれも前記混合冷媒を用いるものであって、例えば、開放型カーエアコン、電動カーエアコン等のカーエアコン、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の空調機、ガスヒートポンプ(GHP)、冷凍庫、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース等の冷凍システム、給湯機、床暖房等の給湯システム、暖房システム等に適用されるものであるが、空調用途に適用されることが好ましく、ルームエアコン、パッケージエアコンに適用されることがより好ましい。
【0084】
また、前記冷凍機用組成物を冷凍機内部に充填して使用する場合、前記冷凍機油と前記混合冷媒との使用量比(冷凍機油/混合冷媒)は、質量比で、好ましくは1/99以上99/1以下、より好ましくは1/99以上90/10以下、更に好ましくは5/95以上88/12以下である。
当該使用量の比は、装置内部に導入される混合冷媒及び冷凍機油の使用量の比であり、前記混合冷媒と前記冷凍機油とが完全に又は部分的に相溶している状態であるか否かは問わず、あくまで、各々が系内に導入される際の、それぞれの使用量に基づくものである。すなわち、前記冷凍機用組成物中の各成分量の比を指すものではない。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明を、実施例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各成分及び各冷凍機用組成物の各物性は、以下に示す要領に従って求めた。
【0086】
[40℃動粘度]
JIS K2283:2000に準拠して測定した。
[数平均分子量(Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置を用いて測定した。GPCは、カラムとして東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-M」2本を順次連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶離液として、検出器に屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定を行い、ポリスチレンを標準試料として数平均分子量(Mn)を求めた。
[水酸基価]
JIS K0070:1992に準拠して、中和滴定法により測定した。
[引火点]
JIS K2265-4:2007(クリーブランド開放法)に準拠して測定した。
[酸価]
JIS K2501に準じ、指示薬光度滴定法(左記JIS規格における付属書1参照)により測定した。
[水分量]
JIS K 2275に準じ、カールフィッシャー式滴定法により測定した。
【0087】
[冷媒溶解度]
ガラス製耐圧容器に所定量の冷凍機油及び混合冷媒を封入し、容器の温度を室温(23℃)から60℃まで昇温した。混合冷媒を溶解した冷凍機油(冷凍機用組成物)の体積及びその時の圧力から、計算により温度/圧力/溶解度曲線を作成した。作成した溶解度曲線から、60℃、1.5MPaGでの冷凍機油に対する混合冷媒の溶解度(質量%)を算出した。
【0088】
[溶解粘度]
冷凍機用組成物の60℃、1.5MPaGにおける溶解粘度は、特開2007-108045号公報の
図1~3に示される粘度測定装置を用い、同公報中、段落〔0020〕に記載の測定手順に準じて測定を行った。ただし、以下の点は変更して測定を行った。
・サファイア管からなる容器に導入する「潤滑油の液体」として、下記表2に示す各冷凍機油を用いた。
・サファイア管からなる容器に導入する「冷媒」として、下記表2に示す組成の各混合冷媒を用いた。そして、前記容器中に、当該混合冷媒を、測定時の圧力が1.5MPaGとなるように混合冷媒を導入した。
・前記冷凍機油と前記混合冷媒を導入した後の前記容器を、目的の溶解粘度を測定するために予め準備した恒温槽中の熱媒体の設定温度は60℃に設定した。
【0089】
各実施例及び各比較例で評価した表2に示す冷凍機用組成物が含有する基油(P)の物性を、下記表1に示す。
【0090】
【0091】
[実施例1~4及び比較例1~3]
前記表1に示す基油(P)を100質量%含有する冷凍機油及び下記表2に示す組成の混合冷媒を、下記表2に示す組み合わせで混合した冷凍機用組成物を調製し、前記評価方法に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0092】
【0093】
表2に示すとおり、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を前記混合冷媒全量基準で50質量%超70質量%以下と、飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)とを含む混合冷媒、及び、ポリビニルエーテル類(PVE)を含む基油(P)を含有する冷凍機油を含む実施例1~4の冷凍機用組成物は、混合冷媒の冷凍機油への冷媒溶解度が冷凍機用組成物として良好な範囲であり、その溶解粘度も良好な範囲を示していることが確認された。
一方で、比較例1~3の冷凍機用組成物は、混合冷媒中のHFO含有量が50質量%以下又は70質量%超であることから、各実施例の冷凍機用組成物と比べて、混合冷媒の冷媒溶解度が低い、又は、冷媒溶解度が高くなることが確認された。
また、比較例1の冷凍機用組成物は、溶解粘度が各実施例の冷凍機用組成物よりも高いため、省エネルギー性に劣り、一方、比較例2及び3の冷凍機用組成物は、溶解粘度が低いため、潤滑性に劣ることが予想される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
前記本発明の一態様である冷凍機用組成物は、良好な冷媒溶解性と良好な溶解粘度とを両立しているため、冷凍機用途として好適であり、例えば、混合冷媒を用いる密閉型の圧縮型冷凍装置に用いる冷凍機用組成物としてより好適に使用できる。また、前記混合冷媒を含む冷凍機用組成物であるため、例えば、開放型カーエアコン、電動カーエアコン等のカーエアコン、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の空調機、ガスヒートポンプ(GHP)、冷凍庫、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース等の冷凍システム、給湯機、床暖房等の給湯システム、暖房システム等にも好適に使用することができる。