(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】バッテリーチェック装置、バッテリーチェック方法、およびカメラ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20240417BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240417BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G01R31/392
G03B17/02
H02J7/00 302B
(21)【出願番号】P 2022503652
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006883
(87)【国際公開番号】W WO2021172362
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020029462
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】頓宮 輝行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝義
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-232533(JP,A)
【文献】特開昭63-193080(JP,A)
【文献】特開2003-169239(JP,A)
【文献】特開2006-153819(JP,A)
【文献】特開2016-090426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
G03B 17/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から昇圧回路を介して第1の負荷及び第2の負荷に電力を供給する電子機器に適用可能なバッテリーチェック装置であって、
前記電子機器の前記電源の電圧を測定する電圧測定部と、
前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって前記電子機器の前記第1の負荷及び前記第2の負荷を駆動する負荷駆動部と、
を有し、
前記負荷駆動部により前記第1の負荷を駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V1を測定し、測定された電圧V1が所定値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記第1の負荷よりも大きい電力を消費する前記第2の負荷を前記負荷駆動部により駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V2を測定し、測定された電圧V2が前記測定された電圧V1よりも小さいか否かを判定する第2判定ステップと、
を実行する、
バッテリーチェック装置。
【請求項2】
前記第2判定ステップにおいて、前記昇圧回路から前記第2の負荷に供給される電圧が、前記電子機器の通常動作時に前記第2の負荷に供給される電圧よりも大きい電圧に制御される、
請求項1に記載のバッテリーチェック装置。
【請求項3】
電源から昇圧回路を介して第1の負荷及び第2の負荷に電力を供給する電子機器に適用可能なバッテリーチェック方法であって、
前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって前記第1の負荷を駆動する期間に、前記電源の電圧V1を測定し、測定された電圧V1が所定値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって、前記第1の負荷よりも大きい電力を消費する前記第2の負荷を駆動する期間に、駆動時の前記電源の電圧V2を測定し、測定された電圧V2が前記測定された電圧V1よりも小さいか否かを判定する第2判定ステップと、
を含む、
バッテリーチェック方法。
【請求項4】
前記第2判定ステップにおいて、前記昇圧回路から前記第2の負荷に供給される電圧が、前記電子機器の通常動作時に前記第2の負荷に供給される電圧よりも大きい電圧に制御される、
請求項3に記載のバッテリーチェック方法。
【請求項5】
電源と、
前記電源に接続される昇圧回路と、
前記昇圧回路に接続される第1の負荷と、
前記昇圧回路に接続され、前記第1の負荷よりも大きい電力を消費する第2の負荷と、
前記電源の状態を判定するバッテリーチェック部と、
を備えるカメラであって、
前記バッテリーチェック部は、前記電源の電圧を測定する電圧測定部と、前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって前記第1の負荷及び前記第2の負荷を駆動する負荷駆動部と、を有し、
前記バッテリーチェック部は、
前記負荷駆動部により前記第1の負荷を駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V1を測定し、測定された電圧V1が所定値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記負荷駆動部により前記第2の負荷を駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V2を測定し、測定された電圧V2が前記測定された電圧V1よりも小さいか否かを判定する第2判定ステップと、
を実行することにより前記電源の状態を判定する、
カメラ。
【請求項6】
前記バッテリーチェック部は、
前記第2判定ステップにおいて、前記昇圧回路から前記第2の負荷に供給される電圧を、前記
カメラの通常動作時に前記第2の負荷に供給される電圧よりも大きい電圧に制御する、
請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
前記第1の負荷は、シャッターを駆動するシャッター駆動機構である、
請求項5または6に記載のカメラ。
【請求項8】
前記第2の負荷は、フィルムを搬送するフィルム搬送機構である、
請求項5から7のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項9】
前記バッテリーチェック部は、レリーズ動作時に前記第1判定ステップと前記第2判定ステップとを実行する、
請求項5から8のいずれか1項に記載のカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーチェック装置、バッテリーチェック方法、およびカメラに関する。
本願は、2020年2月25日に日本に出願された特願2020-029462号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池を電源として有する電子機器において、所定の負荷条件での電池の電圧降下を評価し、バッテリー残量を予測する方法が知られる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池を電源として有する電子機器では、電池は低いレベルの一次電圧を昇圧回路に供給し、昇圧回路によって昇圧された二次電圧が、マイコン、モータ、およびセンサなどの負荷に供給される。通常のバッテリーチェックでは、負荷によって降下した電圧レベルを測定し、上記電圧レベルが所定値を超えているか否かでバッテリーの状態を判定する。
しかし、昇圧回路から複数の負荷に対して異なる電圧を出力する場合、一部の負荷の駆動時に昇圧回路の保護回路が動作し、昇圧回路が停止する場合がある。バッテリーチェック時に昇圧回路が動作を停止すると、電池の電圧レベルがほとんど低下しないため、電圧レベルに基づいてバッテリー状態を判定することは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、電源から昇圧回路を介して複数の負荷に電力を供給する電子機器に適用可能なバッテリーチェック装置が提供される。前記バッテリーチェック装置は、電子機器の電源の電圧を測定する電圧測定部と、電源から昇圧回路を介して供給される電力によって電子機器の複数の負荷を駆動する負荷駆動部と、を有する。前記バッテリーチェック装置は、前記負荷駆動部により第1の前記負荷を駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V1を測定し、測定された電圧V1が所定値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、前記第1の負荷よりも大きい電力を消費する第2の前記負荷を前記負荷駆動部により駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V2を測定し、測定された電圧V2が電圧V1よりも小さいか否かを判定する第2判定ステップと、を実行する。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、電源から昇圧回路を介して複数の負荷に電力を供給する電子機器に適用可能なバッテリーチェック方法が提供される。前記バッテリーチェック方法は、前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって第1の前記負荷を駆動する期間に、前記電源の電圧V1を測定し、測定された電圧V1が所定値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって、前記第1の負荷よりも大きい電力を消費する第2の前記負荷を駆動する期間に、駆動時の前記電源の電圧V2を測定し、測定された電圧V2が電圧V1よりも小さいか否かを判定する第2判定ステップと、を含む。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、電源と、前記電源に接続される昇圧回路と、前記昇圧回路に接続される第1の負荷と、前記昇圧回路に接続され、前記第1の負荷よりも大きい電力を消費する第2の負荷と、前記電源の状態を判定するバッテリーチェック部と、を備えるカメラが提供される。前記バッテリーチェック部は、前記電源の電圧を測定する電圧測定部と、前記電源から前記昇圧回路を介して供給される電力によって前記負荷を駆動する負荷駆動部と、を有する。前記バッテリーチェック部は、前記負荷駆動部により前記第1の負荷を駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V1を測定し、測定された電圧V1が所定値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、前記負荷駆動部により前記第2の前記負荷を駆動する期間に、前記電圧測定部により前記電源の電圧V2を測定し、測定された電圧V2が電圧V1よりも小さいか否かを判定する第2判定ステップと、を実行することにより前記電源の状態を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、電池の劣化状態を正確に判定でき、電子機器において確実な動作を可能とするバッテリーチェック装置、バッテリーチェック方法、およびカメラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラの要部を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態におけるカメラの要部を示す回路構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態におけるバッテリーチェック方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態におけるバッテリーチェック動作に関する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1から
図4を用いて本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態は、電池2の状態を判定するバッテリーチェック機能がマイコン3に組み込まれたカメラ1の例である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のカメラ1は、電池2と、カメラ1の全体を制御するマイコン3と、シャッター駆動機構21(
図2参照)を構成するシャッター駆動モータ4と、フィルム搬送機構22(
図2参照)を構成するフィルム搬送モータ5と、ストロボ(図示略)に電力を供給する昇圧回路6と、マイコン3に電力を供給する昇圧回路7と、シャッター駆動機構およびフィルム搬送機構に電力を供給する昇圧回路8と、シャッター駆動モータ4を駆動するモータドライバ9と、フィルム搬送モータ5を駆動するモータドライバ10と、シャッタータイミングを与えるレリーズスイッチ11と、を備える。
【0012】
電池2は、カメラ1全体の駆動電源である。電池2は、3つの昇圧回路6~8に接続される。電池2は、カメラ1の各部に対して、直接または昇圧回路6~8を介して電力を供給する。電池2としては、アルカリ乾電池、単三形リチウム電池、CR-V3電池、またはNi-MH電池などが用いられる。
【0013】
電池2の電力は、昇圧回路7を介してマイコン3に供給される。電池2の電力は、昇圧回路8を介してモータドライバ9及び10に供給される。モータドライバ9は昇圧回路8から供給される電力によりシャッター駆動モータ4を駆動する。モータドライバ10は、昇圧回路8から供給される電力によりフィルム搬送モータ5を駆動する。
【0014】
マイコン3は、3つの昇圧回路6、7及び8と、2つのモータドライバ9及び10を制御する。マイコン3には、レリーズスイッチ11の入力と、電池2の一次電圧を監視する信号が入力される。本実施形態の場合、マイコン3には、昇圧回路7を介して電池2の電力が供給される。マイコン3は、カメラ1の動作時には、昇圧回路7により昇圧された電圧の供給を受け、昇圧回路6~8の制御と、モータドライバ9及び10の駆動制御とを実行する。マイコン3は、カメラ1の非動作時には、休止状態に移行し、消費電流を低減する。休止状態において、マイコン3には、昇圧されない電池2の一次電圧が供給される。
【0015】
図2には、カメラ1においてバッテリーチェック動作に必要な回路のみが示される。電池2の正極端子は電源ラインVBに接続され、電池2の負極端子は接地ラインGNDに接続される。電源ラインVBと接地ラインGNDとの間に、抵抗R11と抵抗R12とが直列に接続される。抵抗R11と抵抗R12とを接続する配線は、マイコン3の入力端子P0に接続される。
【0016】
電源ラインVBに、昇圧回路7を介してマイコン3が接続される。マイコン3の接地端子は接地ラインGNDに接続される。マイコン3は、ADコンバータ31を内蔵する。図示は省略するが、マイコン3は、内部バスを介して接続されるCPU(Central Processing Unit)、メモリ(RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory))、I/O、タイマーなどを備える。ADコンバータ31は、I/Oの一部であり、入力端子P0から入力されるアナログ信号を、デジタル値に変換して出力する。マイコン3は、カメラ1のシステムを制御する第1出力端子P1、第2出力端子P2、及び第3出力端子P3を有する。
【0017】
電源ラインVBに、コイルL1を介して昇圧回路8が接続される。本実施形態の昇圧回路8は、複数の電圧を出力可能な昇圧ICである。昇圧回路8の接地端子は接地ラインGNDに接続される。昇圧回路8は、コイルL1を駆動し、電源ラインVBの一次電圧を昇圧して電源ラインVDDに出力する。
【0018】
昇圧回路8の出力端子から延びる電源ラインVDDに、抵抗R21、コンデンサC1、シャッター駆動機構21、およびフィルム搬送機構22が接続される。抵抗R21の一方の端子が電源ラインVDDに接続され、抵抗R21の他方の端子が、抵抗R22の一方の端子、抵抗R23の一方の端子、および昇圧回路8の電圧帰還端子に接続される。抵抗R22の他方の端子は接地ラインGNDに接続される。抵抗R23の他方の端子は、トランジスタTR3のコレクタ端子に接続される。トランジスタTR3のエミッタ端子は接地ラインGNDに接続される。トランジスタTR3のベース端子はマイコン3の第3出力端子P3に接続される。抵抗R21、抵抗R22、抵抗R23およびトランジスタTR3は、昇圧回路8の出力電圧を制御する回路である。
【0019】
コンデンサC1は、電源ラインVDDと接地ラインGNDとの間に接続される。コンデンサC1は、昇圧回路8と、フィルム搬送機構22との間に配置される。コンデンサC1は、昇圧回路8から供給される電流を蓄積し、昇圧回路8で昇圧された二次電圧を安定に保持する。
【0020】
シャッター駆動機構21は、シャッター駆動モータ4と、モータドライバ9とを含む。シャッター駆動機構21の接地端子は、トランジスタTR1のコレクタ端子に接続される。トランジスタTR1のエミッタ端子は接地ラインGNDに接続される。トランジスタTR1のベース端子は、マイコン3の第1出力端子P1に接続される。
【0021】
フィルム搬送機構22は、フィルム搬送モータ5と、モータドライバ10とを含む。フィルム搬送機構22の接地端子は、トランジスタTR2のコレクタ端子に接続される。トランジスタTR2のエミッタ端子は接地ラインGNDに接続される。トランジスタTR2のベース端子は、マイコン3の第2出力端子P2に接続される。
【0022】
シャッター駆動機構21およびフィルム搬送機構22は、電池2の電力により駆動され、動作時に電池2の負荷となる。本実施形態の場合、シャッター駆動機構21が、比較的消費電力の小さい第1の負荷であり、フィルム搬送機構22がシャッター駆動機構21よりも消費電力が大きい第2の負荷である。
【0023】
マイコン3は、抵抗R11と抵抗R12により分圧される電池2の電源電圧を、入力端子P0を介して取得可能である。入力端子P0からマイコン3に入力される電圧、すなわち抵抗R12の端子間電圧は、ADコンバータ31によりデジタル値に変換される。ADコンバータ31から出力されるデジタル値は、マイコン3のメモリに保持される。すなわち、マイコン3は、電池2の電源電圧を測定する電圧測定部を有する。
【0024】
マイコン3は、第1出力端子P1および第2出力端子P2を介して、シャッター駆動機構21と、フィルム搬送機構22とを駆動制御する。
マイコン3は、シャッター駆動機構21を駆動する場合、第1出力端子P1および第2出力端子P2を介して、トランジスタTR1をオン状態に制御し、トランジスタTR2をオフ状態に制御する。マイコン3は、フィルム搬送機構22を駆動する場合、第1出力端子P1および第2出力端子P2を介して、トランジスタTR1をオフ状態に制御し、トランジスタTR2をオン状態に制御する。
【0025】
すなわち、マイコン3は、昇圧回路8を介して供給される電力によって、電池2に対する負荷であるシャッター駆動機構21およびフィルム搬送機構22を駆動する負荷駆動部を有する。したがって、カメラ1のマイコン3には、電圧測定部と負荷駆動部とを含むバッテリーチェック部が組み込まれている。
【0026】
マイコン3は、第3出力端子P3を介してトランジスタTR3を制御することにより、昇圧回路8から出力される二次電圧を制御する。トランジスタTR3を制御することにより、昇圧回路8の電圧帰還端子に入力される電圧を調整することができる。トランジスタTR3がオフ状態のとき、昇圧回路8の電圧帰還端子には、抵抗R21と抵抗R22とにより分圧される二次電圧が入力される。一方、トランジスタTR3がオン状態のとき、抵抗R22に対して抵抗R23が並列接続されるため、昇圧回路8の電圧帰還端子に入力される電圧が下降する。これにより、昇圧回路8から出力される二次電圧が上昇する。
【0027】
本実施形態のカメラ1の場合、通常の撮影動作では、シャッター駆動機構21を駆動する期間にはトランジスタTR3がオン状態に制御され、昇圧回路8から相対的に高い二次電圧が出力される。一方、通常の撮影動作においてフィルム搬送機構22を駆動する期間には、トランジスタTR3はオフ状態に制御され、昇圧回路8から相対的に低い二次電圧が出力される。
【0028】
次に、本実施形態のカメラ1におけるバッテリーチェック動作について、
図3および
図4を参照しながら説明する。
図3に示すように、本実施形態のカメラ1では、レリーズスイッチ11の入力によりバッテリーチェック動作が開始される。すなわち、操作者がカメラ1に対して撮影操作を実行したとき、カメラ1の内部で撮影処理が開始される前に、バッテリーチェックが実行される。
【0029】
カメラ1においてレリーズスイッチ11が入力されると、第1判定ステップS1と、第2判定ステップS2とを含むバッテリーチェック動作が実行される。
第1判定ステップS1は、シャッター駆動モータ4に逆通電するステップS11と、電池2の電圧V1を測定するステップS12と、電圧V1と規定値とを比較することで電池2の状態を判定するステップS13と、を有する。
第2判定ステップS2は、フィルム搬送モータ5に通電するステップS21と、電池2の電圧V2を測定するステップS22と、電圧V2と電圧V1とを比較することで電池2の状態を判定するステップS23と、を有する。
【0030】
図4に示すように、レリーズスイッチ11が入力されると、マイコン3は、トランジスタTR1をオン状態に制御し、シャッター駆動機構21を駆動する(ステップS11)。このとき、マイコン3は、モータドライバ9を介して、シャッター駆動モータ4に逆通電を行う。すなわち、シャッター駆動モータ4に対して、撮影動作時とは逆方向の電圧を印加する。逆通電されたシャッター駆動モータ4は、シャッターを閉じる方向に駆動する。そのため、バッテリーチェック動作時にシャッターが開いてフィルムが露光されてしまうことはない。また、シャッター駆動モータ4への通電期間はごく短い時間であり、その後のカメラ1の撮影動作には影響しない。
【0031】
マイコン3は、シャッター駆動機構21が駆動される期間に、電池2の電圧V1を測定する(ステップS12)。すなわち、マイコン3は、入力端子P0から入力される抵抗R12の端子間電圧を、ADコンバータ31を介してデジタル値として取得する。
図4に示すように、シャッター駆動モータ4に通電されると、昇圧回路8およびシャッター駆動機構21に流れる電流が上昇し、それに伴って電池2の電圧が低下する。マイコン3は、電流上昇によって低下した電池2の電圧V1を、電圧V1に相当するデジタル値D1として取得する。
【0032】
マイコン3は、取得した電圧V1相当のデジタル値D1と、予めメモリに保持される規定値とを比較する(ステップS13)。比較対象となる規定値は、カメラ1の動作に十分な容量を有する状態における電池2の電圧をデジタル値に変換した値である。
比較の結果、デジタル値D1が規定値を下回っている場合、マイコン3は、電池2が劣化して電圧が不足していると判定し、撮影動作を中止する。マイコン3は、ステップS4のバッテリーNG動作に移行する。バッテリーNG動作では、マイコン3は、例えば、カメラ1の筐体に設置されるLEDを点滅または点灯させる。これにより、操作者に電池2の交換を促すことができる。
【0033】
ステップS13において、電圧V1相当のデジタル値D1が規定値以上である場合、マイコン3は、第2判定ステップS2に移行する。
第2判定ステップS2において、マイコン3は、トランジスタTR2をオン状態に制御し、フィルム搬送機構22を駆動する(ステップS21)。このとき、マイコン3は、モータドライバ10を介して、フィルム搬送モータ5への通電を実行する。フィルム搬送モータ5への通電はごく短い時間であり、カメラ1内のフィルムが移動してしまうことはない。
このとき、マイコン3は、トランジスタTR3をオン状態に制御することにより、昇圧回路8から出力される電圧を高める。これにより、後述するステップS23において判定処理を精度よく実行可能である。
【0034】
マイコン3は、フィルム搬送機構22が駆動される期間に、電池2の電圧V2を測定する(ステップS22)。すなわち、マイコン3は、入力端子P0から入力される抵抗R12の端子間電圧を、ADコンバータ31を介してデジタル値として取得する。
図4に示すように、フィルム搬送モータ5に通電されると、昇圧回路8およびフィルム搬送機構22に流れる電流が上昇し、それに伴って電池2の電圧が低下する。マイコン3は、電流上昇により低下した電池2の電圧V2に相当するデジタル値D2を取得する。
【0035】
マイコン3は、取得した電圧V2相当のデジタル値D2と、ステップS12で取得した電圧V1相当のデジタル値D1とを比較する(ステップS23)。比較の結果、デジタル値D2が、デジタル値D1を下回っている場合、マイコン3は、電池2の電源電圧が、撮影動作可能なレベルであると判定し、ステップS3のバッテリーOK動作に移行する。ステップS3において、マイコン3は、撮影動作を実行する。すなわち、シャッター駆動機構21によりシャッターを動作させてフィルムへの露光を行い、露光後のフィルムをフィルム搬送機構22により搬送する。
【0036】
ここで、本実施形態の場合、ステップS21において、マイコン3は、トランジスタTR3をオン状態に制御することにより、フィルム搬送機構22に供給する電圧を高めている。これにより、フィルム搬送機構22への通電による電池2の電圧低下幅を比較的大きくできる。したがって、電池2の容量が十分にある場合であっても、電圧V2を低くすることができる。これにより、ステップS23において、デジタル値D1とデジタル値D2との差を比較的大きく確保できるため、デジタル値D1及びD2の大小判定を精度よく実行できる。
消費電流の上昇による電圧V2の低下幅は、負荷の構成および駆動条件などによって変化する。したがって、昇圧回路8からの出力電圧を高めなくとも電圧V2と電圧V1の差が十分に大きい場合には、ステップS21において、通常の撮影動作と同等の電圧をフィルム搬送機構22に供給してもよい。
【0037】
一方、ステップS23において、デジタル値D2がデジタル値D1以上である場合、
図4の右図に示すように、ステップS21のフィルム搬送機構22への通電において、電池2の電圧降下がほとんど生じなかったことを意味する。
電池2の残量が少なくなると、シャッター駆動機構21は駆動可能であっても、消費電力が大きいフィルム搬送機構22を駆動できないことがある。このようなケースでは、昇圧回路8が弱った電池2の一次電圧を上昇させようとするために、昇圧回路8に負荷が掛かる。昇圧回路8に一定以上の負荷が掛かると、昇圧回路8に内蔵された保護回路が動作し、昇圧回路8は昇圧動作を停止する。この結果、電池2の電圧がほとんど低下せず、測定される電圧V2の値が大きくなる。
また、昇圧回路8の保護回路が作動する条件は、電池2の劣化度合だけでなく、電池2の種類、電池2の銘柄、負荷の動作状態の変動、および環境温度の変動などにも影響される。そのため、保護回路が動作する電圧V2の値を精度よく推定することも困難である。
これに対して本実施形態では、電圧V1相当のデジタル値D1と電圧V2相当のデジタル値D2とを比較することで、上記した昇圧回路8の動作停止を精度よく検出できる。
【0038】
マイコン3は、デジタル値D2がデジタル値D1以上である場合に、撮影動作を中止し、ステップS4のバッテリーNG動作に移行する。バッテリーNG動作では、マイコン3は、例えば、カメラ1の筐体に設置されるLEDを点滅または点灯させる。これにより、操作者に電池2の交換を促すことができる。
【0039】
以上の構成を備える本実施形態のカメラ1によれば、第1判定ステップS1と第2判定ステップS2を実行することにより電池2の状態を判定することで、カメラ1の一部の機構が動作しない状態を避けることができる。これにより、シャッターが動作する一方、露光されたフィルムが搬送されないといった不具合が生じるのを抑制できる。したがって本実施形態のカメラ1によれば、電池2の劣化状態を正確に把握でき、確実に撮影動作を実行できる。
【0040】
上記実施形態のカメラ1では、レリーズ動作時にバッテリーチェックを実行する構成を採用したが、レリーズ入力以外の操作に連動してバッテリーチェックを開始してもよい。例えば、カメラ1のボディに設置されるバッテリーチェック用のスイッチを操作することにより、バッテリーチェックを開始してもよい。
【0041】
本実施形態では、カメラ1のマイコン3がバッテリーチェック部を有する構成について説明したが、上記実施形態のバッテリーチェック機能は、カメラ以外の電子機器にも搭載可能である。
また、上記実施形態のバッテリーチェック機能を備える装置を、電子機器に接続可能なバッテリーチェック装置として構成してもよい。すなわち、電子機器の電源の電圧を測定する電圧測定部と、電子機器の負荷を駆動する負荷駆動部とを備え、第1判定ステップS1と第2判定ステップS2とを実行可能な装置を、バッテリーチェック装置として構成してもよい。上記実施形態のバッテリーチェック機能を備える装置を、独立したバッテリーチェック装置として構成することで、種々の電子機器に適用しやすくなる。
また、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲において適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の態様によれば、電池の劣化状態を正確に判定でき、電子機器において確実な動作を可能とするバッテリーチェック装置、バッテリーチェック方法、およびカメラが提供される。従って、本発明は産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0043】
1 カメラ
6、7、8 昇圧回路
21 シャッター駆動機構
22 フィルム搬送機構
S1 第1判定ステップ
S2 第2判定ステップ
V1、V2 電圧