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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】表面処理液、及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240417BHJP
   C09D 157/00 20060101ALI20240417BHJP
   C08F 226/04 20060101ALI20240417BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C09D157/00
C08F226/04
B05D7/24 302G
B05D7/24 303A
B05D7/24 302Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022545572
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027979
(87)【国際公開番号】W WO2022044678
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020143884
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】先崎 尊博
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿人
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110461(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018425(WO,A1)
【文献】特表2016-511288(JP,A)
【文献】特開2006-003827(JP,A)
【文献】特開2009-235128(JP,A)
【文献】特開2018-135312(JP,A)
【文献】特開2015-140407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09D 1/00-201/10
C08F 6/00-246/00
B05D 1/00-7/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と、溶媒(S)とを含み、
前記樹脂(A)が、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物に由来する構成単位(a1)と、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(a2)とを含み、
前記構成単位(a1)が、カチオン性基と、アニオン性基と、エチレン性不飽和二重結合を有する基とを有するベタインモノマーに由来する、表面処理液。
(RA3-RA2-X-RA1・・・(a-2)
(式(a-2)中、RA1は、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基であり、RA2は、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、RA3 はアミノ基であり、nは2であり、Xは、n+1価のトリアジン環基である。)
【請求項2】
前記カチオン性基が、第四級窒素カチオン基である、請求項1に記載の表面処理液。
【請求項3】
前記アニオン性基が、スルホン酸アニオン基、ホスホン酸アニオン基、又はカルボン酸アニオン基である、請求項1又は2に記載の表面処理液。
【請求項4】
A1が、N,N-ジアリルアミノ基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項5】
Xが、1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル基又は1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイル基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項6】
前記樹脂(A)の全構成単位に対する、前記構成単位(a2)の比率が0.1モル%以上70モル%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項7】
前記表面処理液中の、前記樹脂(A)の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項8】
さらに、電解質(B)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項9】
前記溶媒(S)が、水を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理液。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の表面処理液を塗布して、被処理体の表面に被膜を形成することを含む、被処理体の表面に対する表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の物品の表面の性質を改質するために、様々な表面処理液を用いて表面処理が行われている。表面改質の中でも、物品の表面の親水性の調整についての要求は大きく、親水化用や疎水化用の薬剤や表面処理液について多数提案されている。親水化用や疎水化用の薬剤や表面処理液を用いて対象物を表面処理することにより、対象物の表面に被膜が形成され、対象物の表面が親水化又は疎水化される。
【0003】
かかる薬剤や表面処理液としては、例えば、アクリルアミドモノマーとモノ(メタ)アクリレートモノマーとを少なくとも含むモノマーの共重合物を、親水性を発現させるための成分として含む表面処理剤(特許文献1)や、メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと、ポリアニオン樹脂ブロックとを含むブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含む表面処理剤(特許文献2)が提案されている。特許文献2におけるポリアニオン樹脂ブロックは、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなるブロックである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5437523号公報
【文献】特開2009-126948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2等に記載される従来の表面処理剤に含まれる樹脂は、被処理体の表面への密着性が必ずしも十分ではない。その結果、特許文献1や特許文献2等に記載される従来の表面処理剤には、所望する表面処理効果を得にくい場合があったり、被処理体の表面からの樹脂の剥離によって表面処理効果が損なわれやすかったりする問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、表面処理対象物である被処理体に対する表面処理効果をもたらす成分の密着性が良好であり、所望する表面処理効果を得やすい表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、樹脂(A)と、溶媒(S)とを含み、樹脂(A)が、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物に由来する構成単位(a1)と、含窒素複素環基と、エチレン性不飽和二重結合と、特定の種類の極性基とを有する化合物に由来する構成単位(a2)とを含む表面処理液によって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より詳細には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、樹脂(A)と、溶媒(S)とを含み、
樹脂(A)が、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物に由来する構成単位(a1)と、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(a2)とを含む、表面処理液である。
(RA3-RA2-X-RA1・・・(a-2)
(式(a-2)中、RA1は、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基であり、RA2は、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、RA3は、水素原子であるか、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、水酸基、及びシアノ基から選択される極性基であり、nは1又は2であり、Xは、n+1価の含窒素複素環基であり、nが1である場合、RA3は前記極性基であり、nが2である場合、少なくとも一方のRA3が前記極性基である。)
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる表面処理液を塗布して、被処理体の表面に被膜を形成することを含む、被処理体の表面に対する表面処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面処理対象物に対する表面処理効果をもたらす成分の密着性が良好であり、所望する表面処理効果を得やすい表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪表面処理液≫
表面処理液は、樹脂(A)と、溶媒(S)とを含む。かかる表面処理液は、表面処理の対象物である被処理体の表面の親水性を調整することができる。
以下、表面処理液に関して、任意の成分、必須の成分等について説明する。
【0012】
<樹脂(A)>
樹脂(A)は、表面処理により被処理体の表面の親水性を調整する目的で、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物に由来する構成単位(a1)を含む。
なお、絶対的には樹脂(A)は、親水的な性質を示す。しかし、樹脂(A)の親水性と、被処理体の表面の親水性との相対的な関係によっては、表面処理後の被処理体の表面の親水性が、表面処理前の被処理体の表面の親水性よりも低下する場合がある。
樹脂(A)は、被処理体の表面に樹脂(A)を良好に密着させる目的で、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(a2)を含む。
樹脂(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の構成単位(a3)を含んでいてもよい。
(RA3-RA2-X-RA1・・・(a-2)
(式(a-2)中、RA1は、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基であり、RA2は、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、RA3は、水素原子、又はアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、水酸基、及びシアノ基から選択される極性基であり、nは1又は2であり、Xは、n+1価の含窒素複素環基であり、nが2である場合、少なくとも一方のRA3が前記極性基である。)
【0013】
なお、アミノ基、カルボキシ基、及び水酸基は親水性基に該当する。このため、構成単位(a2)が、式(a-2)で表される化合物であって、RA1としての1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基と、RA3としてのアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、又は水酸基とを有する化合物に由来する基である場合、構成単位(a2)は、構成単位(a1)であるとも言える。
この場合、式(a-2)で表される化合物であって、RA1としての1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基と、RA3としてのアミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、又は水酸基とを有する化合物の1種の単独重合体、又は前述の化合物の2種以上の共重合体についても、便宜上、構成単位(a1)と構成単位(a2)とを含む樹脂(A)であるとする。
上記の表面処理液を用いることによる所望する効果を得やすい点からは、樹脂(A)は、互いに異なる構成単位として、構成単位(a1)及び構成単位(a2)を含むのが好ましい。より具体的には、樹脂(A)が、構成単位(a2)に該当しない構成単位(a1)と、構成単位(a2)とを含むのが好ましい。
【0014】
〔構成単位(a1)〕
構成単位(a1)は、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物に由来する構成単位である。
【0015】
親水性基は、従来から、当業者に親水性基であると認識されている官能基であれば特に限定されず、その中から適宜選択できる。
親水性基の具体例としては、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基等)、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、水酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びスルホン酸基等が挙げられる。また、これらの基を含む有機基も親水性基として好ましい。
【0016】
親水化効果が優れる点で、親水性基としては、下記式(ai):
-NH-R・・・(ai)
(式(ai)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は水素原子である。)
で表される基が好ましい。
について、アミノ基は、カチオン性基に該当し、スルホン酸基、及びホスホン酸基はアニオン性基に該当する。水酸基のうちフェノール性水酸基はアニオン性基に該当する。
【0017】
式(ai)で表される親水性基の具体例としては、アミノ基と、下記式で表される基と、が挙げられる。
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】
上記の式(ai)で表される親水性基の具体例のうち、より好ましい基としては、以下の基が挙げられる。
【化5】
【0022】
上記の式(ai)で表される親水性基の具体例のうち、特に好ましい基としては、以下の基が挙げられる。
【化6】
【0023】
前述の通り、構成単位(a1)を与える化合物は、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する。このため、構成単位(a1)を与える化合物は、エチレン性不飽和二重結合を有する基を有する。エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、3-n-ブテニル基等のアルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、及びメタクリロイルアミノ基が挙げられる。
【0024】
重合性や、合成又は入手の容易性等の点から、構成単位(a1)を与える化合物としては、下記式(a1-a)で表される(メタ)アクリルアミド化合物が好ましい。
CH=CR-CO-NH-R・・・(a1-a)
(式(a1-a)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は水素原子であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0025】
式(a1-a)中、Rについては、前述した通りである。
【0026】
式(a1-a)で表される単量体に由来する構成単位(a1)の好ましい具体例としては、下記a1-a-1~a1-a-5の単位が挙げられる。下記の単位の中では、a1-a-1~a1-a-4の単位がより好ましい。
【化7】
【0027】
また、樹脂(A)は、カチオン性基と、アニオン性基と、エチレン性不飽和二重結合を有する基とを有するベタインモノマーに由来する構成単位を構成単位(a1)として含むのが好ましい。カチオン性基、及びアニオン性基のいずれも親水性基として作用する。
表面処理された被処理体の表面は、疎水性基を有するアニオンや疎水性基を有するカチオンを多量に含む洗浄液に接触する場合がある。表面処理液中の樹脂が、親水性基としてカルボキシ基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基等のアニオン性基のみを有する場合、これらの親水性基が疎水性基を有するカチオンとの相互作用により、親水性基として作用しなくなる場合がある。また、表面処理液中の樹脂(A)が、親水性基として第四級アンモニウム基のようなカチオン性基のみを有する場合、カチオン性基が疎水性基を有するアニオンとの相互作用により親水性基として作用しなくなる場合がある。
しかし、樹脂(A)が、親水性基としてカチオン性基及びアニオン性基の双方を有すると、表面処理された被処理体の表面が、疎水性基を有するカチオンを豊富に含む洗浄剤と接触しても、疎水性基を有するアニオンを豊富に含む洗浄剤と接触しても、カチオン性基及びアニオン性基のいずれか一方は親水性基としての作用を維持でき、被処理体の表面の親水性が低下しにくい。
【0028】
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーにおける、カチオン性基の数とアニオン性基の数とは、特に限定されない。
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーにおいて、カチオン性基の数とアニオン性基の数とが同一であるのが好ましい。
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーの合成や入手が容易であることから、構成単位(a1)を与えるベタインモノマーにおける、カチオン性基の数とアニオン性基の数とは、それぞれ1であるのが好ましい。
【0029】
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーにおいて、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する基とカチオン性基とアニオン性基が、必要に応じて連結基を介して、この順に結合していることが好ましい。
【0030】
カチオン性基は、第四級窒素カチオンであるカチオン性基であることが好ましい。
アニオン性基は、スルホン酸アニオン基、ホスホン酸アニオン基又はカルボン酸アニオン基であることが好ましい。
【0031】
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーにおける、エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの基の中では、ビニル基、及び2-n-プロペニル基(アリル基)が好ましい。
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーにおける、エチレン性不飽和二重結合の数は限定されないが、1つ又は2つが好ましい。
【0032】
構成単位(a1)を与えるベタインモノマーとしては、例えば、下記式(a1-i)又は式(a1-ii)で表される化合物が好ましい。下記式(a1-i)又は式(a1-ii)で表されるベタインモノマーは、Nを含むカチオン性基と、Rとしてのアニオン性基とを含む。カチオン性基、及びアニオン性基のいずれも親水性基として作用する。
【化8】
(式(a1-i)中、
a1は、エチレン性不飽和二重結合を含む炭化水素基であり、
a2は、炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基であり、
Rは、アニオン性基であり、
環Aは、複素環である。)
【化9】
(式(a1-ii)中、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立に、エチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基、又は炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、
a3、Ra4、及びRa5のうちの少なくとも1つは、エチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基であり、
a6は、炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基であり、
Rは、アニオン性基である。)
【0033】
式(a1-i)において、Ra1としてのエチレン性不飽和二重結合を含む炭化水素基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、3-n-ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0034】
式(a1-i)において、Ra2としての2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
a2としてのアルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
【0035】
式(a1-i)において、環Aとしての複素環は、芳香族複素環でもあっても脂肪族複素環であってもよい。
芳香族複素環としては、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環及びピラジン環等の含窒素芳香族複素環において、当該含窒素芳香族複素環中の任意の1つの窒素原子が四級化された環が挙げられる。
脂肪族複素環としては、ピロリジン環、ピペリジン環及びピペラジン環等の含窒素複素環において、当該含窒素複素環中の任意の1つの窒素原子が四級化された環が挙げられる。
【0036】
式(a1-ii)において、Ra3~Ra5としてのエチレン性不飽和二重結合を含む炭化水素基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、3-n-ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0037】
式(a1-ii)において、Ra3~Ra5としての炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
a3~Ra5としての炭化水素基は置換基を有していてもよい。Ra3~Ra5としての炭化水素基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上4以下のアシル基、炭素原子数2以上4以下のアシルオキシ基、アミノ基、及び1つ又は2つの炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されたアルキルアミノ基等が挙げられる。
a3~Ra5としてのアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0038】
式(a1-ii)において、Ra6としての2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
a6としてのアルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
【0039】
アニオン性基がスルホン酸アニオン基であるベタインモノマーとしては、合成や入手が容易であることから、下記式(a1-iii)又は式(a1-iv)で表されるモノマーが好ましい。
【化10】
(式(a1-iii)中、Ra1、Ra2、及び環Aは、式(a1-i)におけるRa1、Ra2、及び環Aと同様である。)
【化11】
(式(a1-iv)中、Ra3、Ra4、Ra5、及びRa6は、式(a1-ii)におけるRa3、Ra4、Ra5、及びRa6と同様である。)
【0040】
上記式(a1-iii)又は式(a1-iv)で表されるモノマーとしては、下記式(a1-v)、(a1-vi)又は(a1-vii)で表されるモノマーが挙げられる。
【化12】
(式(a1-v)、(a1-vi)、及び(a1-vii)中、Ra2は、式(a1-iii)におけるRa2と同様であり、Ra5及びRa6は、式(a1-iv)におけるRa5及びRa6と同様であり、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、Ra13及びRa14は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基である。)
【0041】
式(a1-v)、(a1-vi)、及び(a1-vii)において、Ra13及びRa14としての炭素原子数1以上4以下のアルキレン基としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、及びブタン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0042】
アニオン性基がホスホン酸アニオン基やカルボン酸アニオン基であるベタインモノマーとしては、上記式(a1-iii)又は式(a1-iv)で表されるモノマーや、上記式(a1-v)、(a1-vi)、又は(a1-vii)で表されるモノマーにおける、スルホン酸アニオン基(-SO )が、ホスホン酸アニオン基(-(PO2-)やカルボン酸アニオン基(-COO)に置き換わったモノマーが挙げられる。
【0043】
式(a1-i)又は式(a1-ii)で表されるベタインモノマーの具体例としては、下記式の化合物や、下記式の化合物における、スルホン酸アニオン基(-SO )が、ホスホン酸アニオン基(-(PO2-)やカルボン酸アニオン基(-COO)に置き換わったモノマーが挙げられる。
【化13】
【0044】
式(a1-i)又は式(a1-ii)で表されるベタインモノマーは、公知の反応により合成することができる。例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する基とカチオン性基となる基とを有する化合物に、アニオン性基を有する化合物を反応させることにより得られる。具体例としては、例えば式(a1-iii)で表される化合物は、下記化合物とスルトンとを、溶媒中で反応させることにより得られる。スルトンとしては、4員環以上10員環以下のスルトンが挙げられ、1,3-プロパンスルトン、及び1,4-ブタンスルトンが好ましい。
【化14】
(式中、Ra1は、上記(a1-i)におけるRa1と同様であり、環Aは、複素環である。)
【0045】
また、下記式(a1-viii)で表される化合物も、構成単位(a1)を与えるベタインモノマーとして好ましい。下記式(a1-viii)で表されるベタインモノマーは、Nを含むカチオン性基と、Ra20としてのアニオン性基とを含む。カチオン性基、及びアニオン性基のいずれも親水性基として作用する。
CH=CRa15-CO-NH-Ra16-N(Ra17)(Ra18)-Ra19-Ra20・・・(a1-viii)
(式(a1-viii)中、Ra15は水素原子又はメチル基であり、Ra16及びRa19は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基であり、Ra17及びRa18は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、Ra20は、スルホン酸アニオン基(-SO )、ホスホン酸アニオン基(-(PO2-)、又はカルボン酸アニオン基(-COO)である。)
【0046】
式(a1-viii)において、Ra16及びRa19としての2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
a16及びRa19としてのアルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
【0047】
式(a1-viii)において、Ra17及びRa18としての炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
a17及びRa18としての炭化水素基は置換基を有していてもよい。Ra17及びRa18としての炭化水素基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上4以下のアシル基、炭素原子数2以上4以下のアシルオキシ基、アミノ基、及び1つ又は2つの炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されたアルキルアミノ基等が挙げられる。
a17及びRa18としてのアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0048】
式(a1-viii)において、Ra20は、スルホン酸アニオン基(-SO )、ホスホン酸アニオン基(-PO 2-)、又はカルボン酸アニオン基(-COO)であり、スルホン酸アニオン基(-SO )が好ましい。
【0049】
式(a1-viii)で表されるN置換(メタ)アクリルアミドの好適な例としては、下記式の化合物が挙げられる。下記式において、Ra15は水素原子又はメチル基である。
【0050】
【化15】
【0051】
構成単位(a1)は、アニオン性基、アニオン化され得る官能基、カチオン性基、又はカチオン化され得る官能基を有する非ベタインモノマーに由来する構成単位であってもよい。樹脂(A)中のこれらの官能基は、被処理体に対して親水性をもたらす。
【0052】
カチオン性基に由来するカチオンは、例えば、N、C、B、及びP等を含むカチオンであるのが好ましく、Nを含むカチオンであるのがより好ましい。
カチオン性基としては、樹脂(A)の入手の容易性や、良好な表面処理効果を得やすいことから、環式、又は非環式のアミノ基や、4級アンモニウム塩基が好ましい。
【0053】
上記のカチオン性基、又はカチオン化され得る官能基を有する非ベタインモノマーとしては、例えば、下記式(a1-ix)で表される化合物が好ましい。
CH=CRa21-(CO)-Ra22・・・(a1-ix)
(式(a1-ix)中、Ra21は水素原子又はメチル基であり、Ra22は-Y-Ra23-Ra24で表される基、又はアミノ基であり、Yは、-O-、又は-NH-であり、Ra23は置換基を有してもよい2価の有機基であり、Ra24は炭素原子数1以上6以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、又は-Na25a26a27・Zで表される第四級アンモニウム塩基であり、Ra25、Ra26、及びRa27は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1以上6以下の炭化水素基であり、Zは対アニオンであり、pは0又は1である。)
【0054】
上記式(a1-ix)中、Ra22が-Y-Ra23-Ra24で表される基である場合、Ra23は置換基を有してもよい2価の有機基である。2価の有機基としては特に限定されないが、2価の炭化水素基が好ましい。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂(A)の入手や調製が容易である事から、Ra23が2価の炭化水素基である場合、2価の炭化水素基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましく、1以上6以下が最も好ましい。
【0055】
a23としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0056】
a23の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基等が挙げられる。
【0057】
a23としての2価の炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、水酸基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0058】
a24が炭素原子数1以上6以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基である場合、その好適な具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-n-ペンチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ、及びジフェニルアミノ基が挙げられる。
【0059】
a24が-Na25a26a27・Zで表される4級アンモニウム塩基である場合、Ra25、Ra26、及びRa27は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1以上6以下の炭化水素基であり、Zは対アニオンである。
炭素原子数1以上6以下の炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、及びフェニル基が挙げられる。
としての対アニオンは、1価のアニオンであれば特に限定されずハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンの好適な例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられる。
【0060】
以上説明した式(a1-ix)で表される化合物に由来する構成単位の好適な具体例としては、下記の構成単位a1-ix-1~a1-ix-24が挙げられる。これらの構成単位の中では、単量体化合物の入手が容易である点や、良好な表面処理効果を得やすいことから、構成単位a1-ix-1~a1-ix-4、a1-ix-17、及びa1-ix-18が好ましい。
【0061】
【化16】
【0062】
アニオン化され得る官能基は、典型的には、ブレンステッド酸性を示す官能基、及びブレンステッド酸性を示す官能基の塩である。ブレンステッド酸性を示す官能基の好適な例としては、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びフェノール性水酸基が挙げられる。
【0063】
これらのブレンステッド酸性基は、対カチオンとともに塩を形成してもよい。対カチオンは、特に限定されず、有機カチオンであっても、金属イオンのような無機カチオンであってもよく、金属イオンが好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましく、例えば、Li、Na、K、及びSrが好ましい。
【0064】
アニオン化され得る官能基としてブレンステッド酸性基を有する非ベタインモノマーとしては、下記式(a1-x)で表される化合物が好ましい。
CH=CRa31-(CO)-Ra32・・・(a1-x)
(式(a1-x)中、Ra31は水素原子又はメチル基であり、Ra32は、水酸基、又は-A-Ra33-Ra34で表される基であり、Aは単結合、-O-、又は-NH-であり、Ra33は置換基を有してもよい2価の有機基であり、Ra34はブレンステッド酸性基であり、bは0又は1である。ただし、bが0である場合、Ra32は水酸基でなく、且つAは単結合である。)
【0065】
上記式(a1-x)中、Ra32が-A-Ra33-Ra34で表される基である場合、Ra33は置換基を有してもよい2価の有機基である。2価の有機基としては特に限定されないが、2価の炭化水素基が好ましい。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂(A)の入手や調製が容易である事から、Ra33が2価の炭化水素基である場合、2価の炭化水素基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましく、1以上6以下が最も好ましい。
【0066】
a33としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0067】
a33の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基等が挙げられる。
【0068】
a33としての2価の炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、水酸基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0069】
a34としてのブレンステッド酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びフェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びフェノール性水酸基がより好ましい。
【0070】
a34がフェノール性水酸基でない場合、-Ra33-Ra34で表される基としては、以下の基が好ましい。下記構造式において、Ra34はフェノール性水酸基以外のブレンステッド酸性基である。
【化17】
【0071】
以上説明した式(a1-x)で表される化合物に由来する構成単位の好適な具体例としては、下記の構成単位a1-x-1~a1-x-20が挙げられる。これらの構成単位の中では、単量体化合物の入手が容易である点や、良好な表面処理効果を得やすいことから、構成単位a1-x-1~a1-x-10、a1-x-19、及びa1-x-20が好ましい。
【0072】
【化18】
【0073】
樹脂(A)の全構成単位に対する構成単位(a1)の比率は、樹脂(A)の被処理体の表面への密着性と、良好な表面処理効果の両立の点で、30モル%以上99.9モル%以下が好ましく、40モル%以上99モル%以下がより好ましく、50モル%以上95モル%以下がより好ましい。
【0074】
〔構成単位(a2)〕
樹脂(A)は、被処理体の表面に樹脂(A)を良好に密着させる目的で、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(a2)を含む。
(RA3-RA2-X-RA1・・・(a-2)
(式(a-2)中、RA1は、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基であり、RA2は、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、RA3は、水素原子であるか、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、水酸基、及びシアノ基から選択される極性基であり、nは1又は2であり、Xは、n+1価の含窒素複素環基であり、nが1である場合、RA3は前述の極性基であり、nが2である場合、少なくとも一方のRA3が前述の極性基である。)
【0075】
構成単位(a2)は、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、水酸基、及びシアノ基から選択される極性基を必須に有する。このため、樹脂(A)が、かかる極性基を有する構成単位(a2)を含む場合、樹脂(A)の被処理体表面への密着性が良好である傾向がある。
なお、ブレンステッド酸性基としてカルボキシ基を有する前述の構成単位は、当然、カルボキシ基を有する構成単位に該当する。
【0076】
式(a-2)中、RA1は、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基である。1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基の好適な例としては、下記式(a-2i)~式(a-2vii)で表される基が挙げられる。下記式(a-2i)~式(a-2vii)において、RA01は炭素原子数1以上10以下のアルケニル基であり、RA02は炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である。
-RA01・・・(a-2i)
-NH-RA01・・・(a-2ii)
-N(RA01)(RA02)・・・(a-2iii)
-N(RA01・・・(a-2iv)
-O-RA01・・・(a-2v)
-CO-NH-RA01・・・(a-2vi)
-CO-O-RA01・・・(a-2vii)
【0077】
A01としてのアルケニル基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。RA01としてのアルケニル基は、直鎖アルケニル基でもよく、分岐鎖アルケニル基でもよい。
A02としての炭化水素基は、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、脂肪族基と芳香族基との組み合わせであってもよい。RA02としての炭化水素基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。
【0078】
A1としての、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基の好適な具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等のアルケニル基;N-ビニルアミノ基、N-1-プロペニルアミノ基、N-アリルアミノ基、N-1-n-ブテニルアミノ基、N-2-n-ブテニルアミノ基、及びN-3-n-ブテニルアミノ基等のモノアルケニルアミノ基;N,N-ジビニルアミノ基、N,N-ジ(1-プロペニル)アミノ基、N,N-ジアリルアミノ基、N,N-ジ(1-n-ブテニル)アミノ基、N,N-ジ(2-n-ブテニル)アミノ基、N,N-ジ(3-n-ブテニル)アミノ基等のジアルケニルアミノ基;アリルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、3-n-ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ビニルアミノカルボニル基、1-プロペニルアミノカルボニル基、アリルアミノカルボニル基、1-n-ブテニルアミノカルボニル基、2-n-ブテニルアミノカルボニル基、3-n-ブテニルアミノカルボニル基等のアルケニルアミノカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基、1-プロペニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1-n-ブテニルオキシカルボニル基、2-n-ブテニルオキシカルボニル基、3-n-ブテニルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、及びメタクリロイルアミノ基等の(メタ)アクリロイル基含有基が挙げられる。
これらの基の中では、ビニル基、アリル基、N,N-ジアリルアミノ基、アリルオキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基が好ましく、N,N-ジアリルアミノ基がより好ましい。
【0079】
式(a-2)中、RA2は、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である。アルキレン基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。炭素原子数1以上10以下のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、及びn-デカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
これらのアルキレン基の中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、及びプロパン-1,3-ジイル基が好ましく、メチレン基、及びエタン-1,2-ジイル基がより好ましい。
【0080】
式(a-2)中、RA2は、Xは、n+1価の含窒素複素環基である。nは1又は2である。含窒素複素環は、芳香族基であっても脂肪族基であってもよい。
含窒素複素環は、単環であっても、単環式の含窒素複素環が、単環式の芳香族炭化水素環、及び単環式の含窒素複素環から選択される1以上の単環と縮合した縮合多環であってもよい。
また、含窒素複素環は、単環式含窒素複素環、及び縮合多環式の含窒素複素環から選択される2以上の環が単結合を介して結合した環であってもよい。
【0081】
式(a-2)において、RA1で表される基、及びRA3-RA2-で表される基は、Xで表される含窒素複素環基の環構成原子としての炭素原子上に結合してもよく、環構成原子としての窒素原子上に結合してもよい。
【0082】
Xを与える含窒素複素環の具体例としては、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、トリアゾリジン環、テトラゾリジン環、ピロリン環、ピラゾリン環、イミダゾリン環、トリアゾリン環、テトリゾリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、及びテトラゾール環等の含窒素5員環;ピペリジン環、ピペリデイン環、ピペラジン環、トリアジナン環、テトラジナン環、ペンタジナン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、テトラジン環、及びペンタジン環等の含窒素6員環;アゼパン環、ジアゼパン環、トリアゼパン環、テトラゼパン環、アゼピン環、ジアゼピン環、及びトリアゼピン環等の含窒素7員環;インドール環、インドレニン環、インドリン環、イソインドール環、イソインドレニン環、イソインドリン環、ベンゾイミダゾール環、インドリジン環、プリン環、インドリジジン環、ベンゾジアゼピン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジジン環、キノキサリン環、シンノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、及びプテリジン環等の含窒素縮合多環;これらの含窒素複素環から選択される2つ以上の環が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
これらの含窒素複素環に由来するXとしては、樹脂(A)の被処理体表面への密着性が良好である点等から、含窒素6員環を含む2価又は3価の基が好ましく、トリアジン環を含む2価又は3価の基がより好ましく、1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル基、及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイル基がさらに好ましい。
【0083】
Xとしての2価、又は3価の含窒素複素環の好適な具体例としては以下の基が挙げられる。
【化19】
【0084】
式(a-2)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
以上の化合物の中では、下記の化合物が好ましい。
【化22】
【0087】
樹脂(A)の全構成単位に対する構成単位(a2)の比率は、樹脂(A)の被処理体の表面への密着性と、良好な表面処理効果の両立の点で、0.1モル%以上70モル%以下が好ましく、1モル%以上60モル%以下がより好ましく、5モル%以上50モル%以下がさらに好ましい。
【0088】
〔構成単位(a3)〕
樹脂(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の構成単位(a3)を含んでいてもよい。
樹脂(A)における構成単位(a3)を与える化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、N-イソペンチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びクロルスチレン、メチルジアリルアミン、エチルジアリルアミン、トリアリルアミン等が挙げられる。
【0089】
(樹脂(A)の合成方法)
樹脂(A)は、構成単位(a1)を与える化合物と、構成単位(a2)を与える式(a-2)で表される化合物とを、周知の方法に従って重合させることにより調製できる。好ましい方法としては、樹脂(A)を構成する構成単位を与えるモノマーを、重合開始剤の存在下に、ラジカル重合させる方法が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、アゾ重合開始剤が挙げられる。このような重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(ジヒドロクロリド)、2,2’-アゾビス[2-(フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の使用量は、重合反応を良好に行うことができれば特に限定されない。重合開始剤の使用量は、モノマー全体のモル数に対して、0.1モル%以上20モル%以下が好ましく、0.1モル%以上15モル%以下がより好ましい。
【0090】
表面処理液の質量に対する、樹脂(A)の質量の比率は、特に限定されないが、0.1質量%5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
【0091】
<電解質(B)>
表面処理液は電解質(B)を含んでいてもよい。表面処理液が電解質(B)を含む場合、表面処理液に、樹脂(A)を均一且つ安定して溶解させやすい。
なお、電解質(B)は、樹脂(A)以外の物質である。例えば、樹脂(A)に該当し、表面処理液中で電離し得る高分子化合物については、電解質(B)ではなく樹脂(A)として定義される。
【0092】
電解質(B)の種類は、樹脂(A)を分解させたりしない物質であれば特に限定されない。
電解質(B)の種類は、特に限定されない。電解質(B)は、塩酸、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の一般的に強電解質とされる物質であっても、アニオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等)やカチオン性界面活性剤(例えば、塩化ベンザルコニウム等)等の一般的に弱電解質とされる物質であってもよい。
【0093】
入手が容易で安価であること等から、電解質(B)の好適な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、過塩素酸、塩酸、及び硫酸等が挙げられる。
【0094】
電解質(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、表面処理液に対する溶解性等を勘案して適宜定められる。
電解質(B)の含有量は、例えば、樹脂(A)100質量部に対して、0質量部以上700質量部以下が好ましく、0質量部以上600質量部以下がより好ましく、0質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
【0095】
〔溶媒(S)〕
表面処理液は、溶媒(S)を含む。溶媒(S)は、水であっても、有機溶剤であっても、有機溶剤の水溶液であってもよい。溶媒(S)としては、樹脂(A)の溶解性、表面処理の作業の安全性、及び低コストである点等から、水が好ましい。
溶媒(S)として使用される有機溶剤の好適な例としては、アルコールが挙げられる。該アルコールとしては、脂肪族アルコールが挙げられ、炭素原子数1以上3以下のアルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。該アルコールは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
溶媒(S)における水の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0097】
〔その他の成分〕
表面処理液は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の例としては、熱重合禁止剤、光重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、及び粘度調整剤等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、これらの添加剤の通常使用される量を勘案して、適宜決定される。
【0098】
≪表面処理方法≫
表面処理方法は、被処理体の表面の水に対する親和性を所望する程度に調整できるように、被処理体の表面に樹脂(A)を結合又は付着させることができる方法であれば特に限定されない。
典型的には、表面処理方法は、前述の表面処理液を塗布して、被処理体の表面に被膜を形成することを含む。ただし、被処理体の表面の水に対する親和性が所望する程度に調整される限りにおいて、被処理体の表面処理される表面の全面に均一な被膜が形成される必要はない。
表面処理方法は、さらに、表面処理液の塗布後に、被処理体の表面をリンス液によりリンスすることを含むのが好ましい。
【0099】
以下、表面処理液を塗布して、被処理体の表面に被膜を形成することを「塗布工程」とも記す。また、表面処理液の塗布後に、被処理体の表面をリンス液によりリンスすることを「リンス工程」とも記す。
以下、塗布工程、リンス工程、及び表面処理液について詳細に説明する。
【0100】
<塗布工程>
塗布工程では、前述の表面処理液を被処理体の表面に塗布して被膜を形成する。
塗布方法は特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられる。被処理体が基板である場合、基板の表面に、均一な膜厚の被膜をむらなく形成しやすいことから、塗布方法としてスピンコート法が好ましい。
【0101】
被処理体の表面処理液が塗布される面の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
有機材料としては、PET樹脂やPBT樹脂等のポリエステル樹脂、各種ナイロン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、及びシリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のポリオルガノシロキサン等)等、種々の樹脂材料が挙げられる。
また、種々のレジスト材料に含まれる感光性の樹脂成分や、アルカリ可溶性の樹脂成分も有機材料として好ましい。
無機材料としては、ガラス、シリコンや、銅、アルミニウム、鉄、タングステン等の種々の金属が挙げられる。金属は、合金であってもよい。
【0102】
被処理体の形状は特に限定されない。被処理体の形状は平坦な形状であってもよく、例えば、球状や、柱状等の立体形状であってもよい。
【0103】
被処理体は、洗浄剤等の薬品に曝露される場合がある。被処理体の表面に付着する被膜が種々の薬品に曝露されると、薬品の種類によっては、被膜によりもたらされた表面処理効果が大きく損なわれることが懸念される。しかしながら、上述の表面処理液を用いることにより、表面処理された表面が種々の薬品に接触した場合の表面処理効果の低下を抑制できる。そのため、洗浄液等の薬品に曝露されることが多い被処理体、例えば、窓、鏡、家具、光学装置(例えば、レンズを有する装置)が備えるガラス部材や、透光性樹脂部材を、被処理体とすることで、表面処理効果についての薬品耐性を特に発揮することができる。
【0104】
表面処理液を被処理体の表面に塗布した後は、周知の乾燥方法により、必要に応じて、表面処理液からなる被膜から溶媒(S)の少なくとも一部を除去してもよい。
【0105】
塗布工程において形成される被膜の膜厚は、特に限定されない。塗布工程において形成される被膜の厚さは、例えば、1μm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。
【0106】
塗布工程によって形成される被膜の厚さは、表面処理液の固形分濃度、塗布条件等を調整することにより調整可能である。
【0107】
<リンス工程>
リンス工程では、表面処理液の塗布後に、被処理体の表面をリンス液によりリンスする。リンスによって、被処理体の表面に形成される被膜を薄膜化できる。
リンス液としては、所望の膜厚の被膜を形成できる限り特に限定されない。リンス液としては、水、有機溶剤、及び有機溶剤の水溶液を用いることがでる。リンス液としては水が好ましい。
被膜をリンスする方法としては、特に限定されない。典型的には、前述の塗布方法と同様の方法によって、リンス液を被膜に接触させることにより、リンスが行われる。
【0108】
なお、リンスを行う前に、被膜を加熱し、被膜に含まれる溶媒(S)の一部又は全部を除去してもよい。加熱温度は、被処理体や樹脂(A)の劣化や分解が生じない温度であれば特に限定されない。典型的な加熱温度としては、50℃以上300℃以下程度の温度が挙げられる。加熱時間は特に制限されず、例えば、5秒以上24時間以下であり、10秒以上6時間以下が好ましい。
【0109】
リンス後に得られる被膜の膜厚は、例えば、10nm以下が好ましく、0.1nm以上10nm以下がより好ましく、0.1nm以上8nm以下がさらに好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらにより好ましく、0.5nm以上3nm以下が特に好ましい。
【0110】
被膜の厚さは、表面処理液の固形分濃度、塗布条件、リンス液の使用量、リンス液の種類、及びリンス液の温度等を調整することにより調整可能である。
【0111】
リンス後、必要に応じて被処理体を乾燥させた後、被処理体は種々の用途に好適に使用される。
【実施例
【0112】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
〔実施例1~8、及び比較例1~4〕
実施例及び比較例において、前述の構成単位(a1)を与える単量体化合物として下記A1-1~A1-5を用いた。構成単位(a2)を与える単量体化合物として下記A2-1を用いた。構成単位(a3)を与える単量体化合物として下記A3-1を用いた。
【化23】
【0114】
実施例1~8、及び比較例1~4において、表1に記載の組成の単量体を単独重合又は共重合して樹脂を得た。
具体的には、表1に記載の種類及び量(mmol)の単量体化合物及び重合開始剤を、モノマー濃度が40質量%の水溶液とし、80℃で4時間、窒素雰囲気下でラジカル重合を行い、樹脂の水溶液、又は懸濁液を得た。重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を用いた。
【0115】
各実施例、比較例で得られた樹脂の水溶液、又は懸濁液に対して、樹脂の質量の4倍の塩化ナトリウムを加えて表面処理液を得た。塩化ナトリウムを添加することにより、表面処理液が清澄になった。得られた表面処理液を用いて、以下の評価を行った。
【0116】
<水接触角>
シリコンウエハー上に表面処理液を1000rpm、60秒の条件でスピンコートした後、ウエハーを80℃で60秒間加熱した。次いで、ウエハー表面を水洗して、上記の樹脂からなる単分子膜レベルの膜厚の被膜をウエハー上に形成した。
Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い、シリコンウエハーの表面処理された表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下10秒後における接触角として、水の接触角を測定した。シリコンウエハー上の3点の水の接触角の平均値を、表1に記す。
なお、未処理のシリコンウエハーの水の接触角は13.8°である。
【0117】
<薬液耐性>
水接触角の測定と同様の方法で表面処理されたシリコンウエハーを、アニオン性の薬液である濃度1質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬した。その後、シリコンウエハーの表面を純水で1分間シャワー洗浄した。洗浄後のシリコンウエハーの表面処理された表面の水接触角を上記の方法に従って測定した。測定された水の接触角を表1に記す。
また、実施例4の表面処理液で表面処理されたシリコンウエハーと、実施例6の表面処理液で表面処理されたシリコンウエハーと、実施例7の表面処理液で表面処理されたシリコンウエハーと、比較例2の表面処理液で表面処理されたシリコンウエハーとについて、濃度1質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、カチオン性の薬液である濃度1質量%のドデシルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液に変えることの他は、上記の方法と同様にして、カチオン性の薬液に対する薬液耐性の試験を行った。カチオン性の薬液への浸漬、及び純水洗浄後のシリコンウエハーの水接触角を表1に記す。
なお、表面処理されていないシリコンウエハーについても、上記のカチオン性の薬液に対する試験を行った。その結果、カチオン性の薬液への浸漬、及び純水洗浄後のシリコンウエハーの水接触角は71.2°であった。未処理のシリコンウエハーの表面には、活性なSi-OH基が存在するため、シリコンウエハーの表面にドデシルトリメチルアンモニウムクロリドが吸着又は結合され、その結果として水接触角の値が大きくなったと考えられる。
【0118】
<N1s強度>
水接触角の測定と同様の方法で表面処理されたシリコンウエハーの表面について、X線光電子分光法(XPS)により測定して、樹脂が有する窒素原子に由来する、N1sピークの強度を測定した。N1sピーク強度の値が大きいほど、樹脂が良好に基板に結合していると言える。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例1~8によれば、N1s強度の測定結果から、前述の構成単位(a1)と、構成単位(a2)とを含む樹脂(A)を含有する表面処理液を用いて表面処理すると、表面処理液中の樹脂が良好に被処理体表面に結合することが分かる。
また、実施例1~6と実施例7との比較によれば、樹脂(A)が構成単位(a1)としてベタインモノマーに由来する構成単位を含む場合、被処理体の表面処理された面がアニオン性やカチオン性の不純物に接触しても水接触角の値が変化せず、表面処理効果が低下しにくいことが分かる。
比較例1及び比較例2によれば、N1s強度の測定結果から、樹脂(A)が、被処理体の表面への結合性を有すると一般的に考えられている加水分解性シリル基を有する構成単位を含んでいても、樹脂(A)の被処理体の表面への密着性は、前述の構成単位(a1)と、構成単位(a2)とを含む樹脂(A)よりも著しく劣ることが分かる。