(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】連結装置、連結移動装置、自律移動装置及び誘導システム
(51)【国際特許分類】
B61G 1/02 20060101AFI20240418BHJP
B60D 1/34 20060101ALI20240418BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240418BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20240418BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240418BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240418BHJP
【FI】
B61G1/02
B60D1/34
B62B3/00 B
B62B5/00 C
B61B13/00 S
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020084494
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰史
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】古口 茂和
(72)【発明者】
【氏名】南木 晋
(72)【発明者】
【氏名】宮西 英司
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179171(JP,A)
【文献】特開平4-287758(JP,A)
【文献】特開2018-90084(JP,A)
【文献】特開2019-51915(JP,A)
【文献】特開2019-167027(JP,A)
【文献】特開平8-249063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 1/02
B61G 1/00
B61G 1/10
B60D 1/34
B60D 1/00
B60D 1/02- 1/04
B62B 3/00
B62B 5/00
B61B 13/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結対象に連結する連結手段と、前記連結手段を保持し、連結装置本体に対して可動な可動部材とを備える連結装置において、
前記連結装置本体に対する前記可動部材の動きは回動中心の回りでの回動であり、
前記可動部材の回動範囲の内の特定の角度を取るように前記可動部材を付勢する付勢手段を有し、
前記回動範囲は、前記回動中心の回りの60度以上
であり、
前記連結手段は、前記連結対象を機械的に連結する連結部材と、前記連結部材による連結にあたって前記連結対象に吸着する吸着部材とを備える
ことを特徴とする連結装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の連結装置において、
前記付勢手段として引っ張りスプリングを用いることを特徴とする連結装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の連結装置において、
前記回動範囲を規定する回動範囲規制手段を設けたことを特徴とする連結装置
。
【請求項4】
移動装置本体と、移動手段と、連結対象と連結する連結装置と、を備える連結移動装置において、
前記連結装置として、請求項1乃至
3の何れか一の連結装置を用いることを特徴とする連結移動装置。
【請求項5】
移動装置本体、移動手段、及び、連結対象と連結する連結装置を備える連結移動装置と、前記移動手段を制御する制御手段とを備える自律移動装置において、
前記連結移動装置として、請求項
4の連結移動装置を用いることを特徴とする自律移動装置
。
【請求項6】
自律移動装置の誘導システムであって、
自律移動装置として請求項
5の自律移動装置を用い、
前記回動範囲の角度を±θ
0としたとき、前記連結装置で連結した車庫入れすべき台車を搬送する自律移動装置の本線に対して
前記θ
0
より小さい所定の角度
φだけ傾いた車庫エリアに車庫入れを行うように誘導することを特徴とする自律移動装置の誘導システム。
【請求項7】
請求項
6の自律移動装置の誘導システムにおいて、
前記本線における前記角度φだけ傾いた車庫エリアに向かう地点において、前記台車を停止させた状態で前記回動中心の回りで前記所定の角度
φの旋回を行った後に前記
角度φだけ傾いた車庫エリアに向けて
の前進
を開始して車庫入れを行うことを特徴とする自律移動装置の誘導システム。
【請求項8】
請求項
6又は7の自律移動装置の誘導システムにおいて、
前記本線から旋回して進む方向に前記所定の角度φだけ傾いた車庫エリアを複数設定し、手前の車庫エリアに達したときに、その前方の車庫エリアの空き状況を検知することを特徴とする自律移動装置の誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結装置、連結移動装置、自律移動装置及び誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、連結対象に連結する連結手段と、連結手段を保持し、連結装置本体に対して可動な可動部材とを備える連結装置が知られている。例えば、特許文献1には、係る連結装置を備える連結移動装置として、連結対象であるカゴ台車に連結手段である二つの連結爪を引掛けて連結し、カゴ台車を搬送する自律移動装置が記載されている。二つの連結爪は連結装置の車輌への固定板材(連結装置本体)に対して回動可能な回動部材(可動部材)に保持されている。これにより、自律移動装置が、カゴ台車に対して傾いた状態で近接した場合にも、回動部材が回動し、二つの連結爪をカゴ台車の横フレームに対して平行で連結可能な位置関係にすることが容易になるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の連結装置を備えた自律移動装置のような連結移動装置では、四輪自在の台車と異なり、二輪が固定された台車、特に中央部の二輪を固定輪とする六輪カートとよばれる台車を連結して移動させようとする場合に、カーブを曲がることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、連結対象に連結する連結手段と、前記連結手段を保持し、連結装置本体に対して可動な可動部材とを備える連結装置において、前記連結装置本体に対する前記可動部材の動きは回動中心の回りでの回動であり、前記可動部材の回動範囲の内の特定の角度を取るように前記可動部材を付勢する付勢手段を有し、前記回動範囲は、前記回動中心の回りの60度以上であり、前記連結手段は、前記連結対象を機械的に連結する連結部材と、前記連結部材による連結にあたって前記連結対象に吸着する吸着部材とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、二輪が固定された台車を連結した状態で従来に比して良好にカーブを曲がることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本実施形態の搬送システムを模式的に示す説明図。
【
図3】自走ロボットの台車搬送動作のフローチャート。
【
図4】本実施形態の搬送システムに適した六輪カートと自走ロボットの斜視図。
【
図7】自走ロボットが六輪カートを接続した状態の模式図。
【
図8】自走ロボット本体と六輪カートに角度をつけた状態を示した図。
【
図10】自走ロボットの連結装置が取り付けられた側の斜視図。
【
図15】自走ロボットに対する六輪カートが追従動作の説明図。
【
図18】自走ロボットのコントローラの機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、実施形態の自律移動装置である自走ロボット1と、連結対象である台車2との説明図である。本実施形態は、台車2のような被牽引台車に自動で連結して、牽引することで所望の搬送先へ被牽引台車を自動搬送する自走ロボット1のような自律移動装置(連結移動装置)と、この自走ロボット1を用いた搬送システムに関する実施形態である。
【0008】
自走ロボット1は、搬送物を積載する台車2に自動で連結する機能を持った自律移動装置である。自走ロボット1には積載可能な構成を持たせることなく、簡易な移動装置によって台車2を牽引させることができ、台車2に積載された多数の搬送物を搬送させることができる。
【0009】
自走ロボット1は、自走装置本体(移動装置本体)であるロボット本体部100、磁気センサ3、コントローラ4、カメラ5、電力源であるバッテリー6、動力モータ7、モータドライバ8、測域センサ9、連結装置10、駆動車輪71及び従動車輪72等を備える。磁気センサ3及び測域センサ9は、自走ロボット1の周辺環境を認識する環境認識手段である。
【0010】
本実施形態の搬送システムでは、自走ロボット1の走行可能な経路の床面に磁気テープを設置し、磁気センサ3を用いて磁気テープを検出することにより自走ロボット1が走行可能な経路上に位置していることを認識することができる。床面にテープを設置する誘導方式としては、磁気テープを用いる構成に限らず、光学テープを用いる構成としてもよい。光学テープを用いる場合は、磁気センサ3の代わりに反射センサやイメージセンサなどが利用できる。このような磁気テープや光学テープを用いる場合にはこれらも搬送システムあるいは自走ロボット1の誘導システムの構成要素となる。
【0011】
また、本実施形態の搬送システムでは、二次元あるいは三次元地図と測域センサ9の検出結果との照合によって自己位置を認識する自律走行を行うことができる。測域センサ9は物体にレーザー光を照射してその反射光から物体までの距離を測定するレーザー測域センサである。検出結果と二次元あるいは三次元地図との照合によって自己位置の認識に用いるセンサとしては、ステレオカメラやデプスカメラなども利用できる。
【0012】
自走ロボット1は、磁気センサ3や測域センサ9の検出結果に基づいてコントローラ(制御手段)4がモータドライバ8を介して動力モータ7の駆動を制御し、動力モータ7が駆動車輪71を回動駆動することで自走ロボット1が自律走行を行う。図示の台車2は、搬送物を積載する底板を備えた下部フレーム22と、底板上に積載された搬送物の周囲を囲むカゴ部20を備えたカゴ台車である。カゴ部20の側面に配置され、認識用のマーカーが表示されたID表示パネル21を備える。カゴ部を備えない板台車を用いることもできる。ID表示パネル21を取り付けるとともに、板台車の底板上から積載物が落ちるのを防止するための底板上面から上方に延びる部分を設けた台車を用いることもできる。
【0013】
図1に図示の例の台車2は、四角形状の下部フレーム22の四隅の下方に、向き変更自在な車輪であるキャスター23が配置されている。一般的なカゴ台車では、四隅の車輪は向き変更自在なキャスター23になっている。本実施形態の搬送システムは、後述するように、カゴ台車が向き変更不能に固定された一対の車輪(以下、固定車輪という)を含むものである場合に適したものである。たとえば、四隅のキャスター23に加え、前後方向中央に固定車輪を備えた六輪カート(六輪台車)を連結して搬送するのに適したものである。
【0014】
自走ロボット1には、マーカー読取装置が設置されている。マーカー読取装置はID認識手段であるカメラ5と復号部とからなる。本実施形態ではコントローラ4が復号部としての機能を有する。カメラ5の撮影画像からマーカーの特徴の画像認識によってマーカーのコードを認識する。復号部では認識したマーカーのコード情報をデコードすることで、台車2の認識番号情報、搬送先情報、優先度情報を得る。
【0015】
台車2に設置されたマーカー(標識)としては、カラーコードを用い、カメラ5で読み取っている。IDを表示するマーカーがバーコードやQRコード(登録商標)の場合は、ID認識手段としてバーコードリーダが使用できる。マーカーが濃淡バーコードの場合はレーザー測域センサの反射強度情報をIDコードに用いることができる。
【0016】
自走ロボット1は、環境認識手段として、周辺環境との距離を取得するレーザーレンジファインダ(LRF)等の測域センサ9を備える。コントローラ4は、測域センサ9によって位置を認識したID表示パネル21と測域センサ9との距離情報からID表示パネル21の位置座標を算出する。算出したID表示パネル21の位置座標を用いて、コントローラ4が動力モータ7の駆動制御を行うことで、自走ロボット1を台車2におけるID表示パネル21正面の所定の位置に位置決めする。
【0017】
台車2との連結動作を制御するために、台車2に設置されたID表示パネル21の位置を認識するID表示パネル位置認識手段としては、ID認識手段でID表示パネル21の位置も読み取れる場合には兼用することが出来る。例えば、ID表示パネル21のマーカーのIDとして濃淡バーコードをID認識手段としてレーザー測域センサで読み取る場合は、レーザー測域センサによってID表示パネル21の位置を検出しながらID表示パネル21のIDを読み取ることができる。また、マーカーのIDとしてカラーコードを用いる場合もカメラ5で、ID表示パネル21の位置を検出しながらID表示パネル21のIDを読み取ることができる。
【0018】
自走ロボット1を用いた本実施形態の搬送システムは、物流倉庫などにおける、カゴ台車などのキャスター付き搬送対象を搬送する作業を自動化するものである。
自走ロボット1による搬送動作は、次の(1)~(3)の三つの作業に分割される。
(1)仮置きエリアでの搬送対象の探索および連結。
(2)走行エリアの走行。
(3)保管エリアでの保管場所探索と荷卸し。
【0019】
図2は、本実施形態の搬送システムを模式的に示す説明図である。この搬送システムは、走行エリア50と、仮置きエリアAと、第一保管エリアBと、第二保管エリアCとを備える。走行エリア50には自走ロボット1の誘導用の磁気テープまたは光学テープがライン状に設けられ、自走ロボット1が走行する本線51が設けられている。本線51上には自走ロボット1のスタート位置Sがある。また、走行エリア50における仮置きエリアA、第一保管エリアB及び第二保管エリアCの入り口には、本線51の近傍に番地マーク52が配置されている。
【0020】
図3は、自走ロボット1が仮置きエリアAから保管エリア(BまたはC)に台車2を搬送する動作の流れを示すフローチャートである。
まず、本線51上に移動体である自走ロボット1を配置してライン認識できている状態でスタートさせることで、自走ロボット1は本線51に沿った走行を開始する(S1)。本線51を走行中はラインの位置を見て指定速度で走行する。仮置きエリアAの番地マーク52を探索しながら走行し、仮置きエリアAの番地マーク52を検出したら(S2で「Yes」)停止する。
【0021】
仮置きエリアAの番地マーク52を検出して(S2で「Yes」)停止すると、仮置きエリアAへの進入動作を開始する(S3)。
自走ロボット1は、本線51が設けられた走行エリア50から仮置きエリアAに進入すると、走行しながら、仮置きされている台車2のID表示パネル21のマーカーを読み取り、台車2のリストを生成する。このとき、IDとX,Y座標、搬送先、および優先順位があれば一緒に記録する。そして、仮置きエリアAの終端の番地マークで走行停止し、生成した台車2のリストから搬送対象を選定し(S4)、選定した搬送対象の台車2との連結動作を開始する(S5)。
【0022】
連結動作では、リスト上のX,Y座標を元に指定された台車2の列まで移動する。ID表示パネル21との相対位置情報を使って、台車2の手前まで移動する。その後、台車2に近接したら連結装置10によって台車2と連結する。搬送対象の台車2との連結を検知すると(S6で「Yes」)、本線51に戻り(S7)、本線51を走行し(S8)、搬送中の台車2を保管する保管エリア(BまたはC)の番地マーク52を検出したら(S9で「Yes」)停止する。
【0023】
保管エリア(BまたはC)の番地マーク52を検出して(S9で「Yes」)停止すると、保管エリア(BまたはC)への進入動作を開始する(S10)。
自走ロボット1は、本線51が設けられた走行エリア50から保管エリア(BまたはC)に進入すると、走行しながら、保管されている台車2のID表示パネル21のマーカーを読み取り、台車2のリストを生成する。このとき、IDとX,Y座標、搬送先、および優先順位があれば一緒に記録する。次に、保管エリア(BまたはC)の終端の番地マークで走行停止し、生成した台車2のリストから空き番地を探す(S11)。そして、空き番地の中から搬送中の台車2を車庫入れする番地を選定し(S12)、選定した空き番地への車庫入れ動作を開始する(S13)。
【0024】
車庫入れ動作では、リスト上のX,Y座標を元に指定された空き番地の車庫の列まで移動する。その後、指定された空き番地に着いたら搬送中の台車2との連結を解除する。
連結を解除したら保管エリア(BまたはC)から本線51に戻り、再び仮置きエリアAの探索を開始する(S14)。
【0025】
図4は本実施形態の搬送システムに適した固定車輪を備えた台車である六輪カート102と、自走ロボット1との斜視図である。六輪カート102は平面形状が前後に長い長方形状の下部フレーム22を備える。下部フレーム22の下方の、四隅にキャスター23を備え、長手方向の中央に中央固定車輪123を備える。下部フレーム22の上には天板122が載置されている。長手方向の両端それぞれから上方に立ち上がる棚枠120も備えられている。このような六輪カート102は固定された二輪の外側に回転自在の四輪を配置することで、容易に人間が回転させることができるため、取り扱いに優れている。
【0026】
一方の棚枠120にはID表示パネル21が取り付けられている。下部フレーム22のID表示パネル21の側で自走ロボット1に連結される。以下、六輪カート102のID表示パネル21が設けられ、連結される側を六輪カート102の前側と呼ぶ。
図4の符号12が連結爪である。連結爪12は連結対象である台車に連結する連結手段を構成する機械的な連結用の連結部材に相当する。
【0027】
本実施形態の自走ロボット1は、少なくもと4つの車輪のうち対になる2つの車輪が向き固定の固定車輪である。具体的には駆動車輪71が固定車輪で、従動車輪72が向き変更自在になっている。駆動車輪71は個別に正逆回転制御可能になっている。このためには左右それぞれの駆動車輪71毎に正逆回転可能なモータを設けてもよいし、一つの正逆回転可能又は一方向回転可能なモータの駆動を正逆回転で切り替えたり、駆動の伝達の接続遮断を切り替えたりする駆動伝達系を介して各駆動車輪71に伝達するようにしてもよい。一対の駆動車輪71の回転速度や向きを制御することにより、操舵制御を行う。駆動車輪71、従動車輪72、モータなどが移動手段を構成している。
【0028】
図5は連結装置10の斜視図である。連結装置10は、連結爪12と、連結手段を保持し連結装置本体である固定部材30に対して可動な可動部材としての揺動部材11とを備えている。揺動部材11は固定部材30に設けられた上下方向の回動軸111に一端側が回動可能に取り付けられている。これにより、この回動軸111の中心回りの回動によって揺動可能である。自走ロボット1を水平な床面上で使用する場合、回動軸111は鉛直方向に延び、揺動部材11の揺動は回動軸111と直交する水平面内での揺動になる。
【0029】
連結爪12は幅方向に間隔を置いて一対設けられ、それぞれ共通の爪昇降用シャフト37に基端部が固定されている。揺動部材11には、連結爪12による連結に先立って前記連結対象に吸着する吸着部材としての磁石13、マイクロスイッチ14、昇降駆動用のフックモータ15、減速器16なども保持されている。
図5は爪先端が下方に下がる連結爪12が開いた状態を示す。
【0030】
図6は連結爪12が開いた状態の連結装置10の側面図である。
図6で符号31は爪昇降用シャフト37のベアリングホルダ、符号62は揺動部材11の下面に固定され、下端が固定部材30の上面に接触する下面支持部材、をそれぞれ示す。
図6では、六輪カート102の一部も図示している。六輪カート102の下部フレーム22の端は円Aで囲った部分の断面図に示すように下側に曲げられている。爪昇降用シャフト37の図中反時計回りの回転で、矢印Bで示すように上昇してきた連結爪12の上側に折り曲げられた先端部分12aが、下部フレーム22の下に延びる曲げ部22aの裏側入り込む連結用位置を取る。これにより、牽引が可能になる。モータ駆動による連結爪の回転運動で連結及び遮断の切り替えを行っているが、アクチュエータによる上下動や台車を挟み込む構成により連結及び遮断の切り替えを行ってもよい。
【0031】
磁石13は六輪カート102の前側の下部フレーム22に吸着させるためのものである。一般的に六輪カート102の下部フレーム22はスチール材でできており、磁石13が付くことができるものからなる。磁石13は、揺動部材11に複数個配置することが好ましい。磁石13としては永久磁石を用いても良いし、電磁石を用いてもよい。
【0032】
マイクロスイッチ14は、磁石13が前側の下部フレーム22に吸着した際に下部フレーム22と接触する磁石13の表面と同一平面に物体が接触したことを検知することが可能な接触式(機械接触式)スイッチである。このマイクロスイッチ14によって六輪カート102の下部フレーム22に対する磁石13の吸着を確認する。
【0033】
このような自走ロボット1が、六輪カート102のID表示パネル21正面の所定の位置への位置決めと連結動作は、次の三つのステップによって行う。自走ロボット1を六輪カート102に対して一定の距離でかつ略正対した姿勢になるように駆動する第一のステップと、略正対した姿勢のままで六輪カート102に向かって進む第二のステップと、磁石13と六輪カート102の下部フレーム22との吸着が確認された後に自走ロボット1を停止させると共に、連結爪12を動作させて固定する第三のステップである。
【0034】
第二のステップである六輪カート102に向かって進む際は、連結爪12を最も低い位置にし、磁石13とマイクロスイッチ14を進行方向の前側にした状態で連結対象である六輪カート102に接近する。この間に、六輪カート102との距離は前述した測域センサ9で測定を行う。
【0035】
図6は、自走ロボット1が六輪カート102に連結する位置に達する直前の状態を示す。この状態から自走ロボット1が図中の右に進み、磁石13が六輪カート102に吸着してマイクロスイッチ14が押されることで六輪カート102への連結位置に達したと判断し、フックモータ15を稼働させて連結爪12に連結用位置を取らせることで連結動作が完了する。
【0036】
自走ロボット1は六輪カート102に取り付けられたID表示パネル21の位置情報をもとに略正対した姿勢で接近を行うが、その位置情報の測定誤差や六輪カート102の置かれた状態により小さな角度θが生じることがある。θ=4度(deg)程度である。このように自走ロボット1が六輪カート102に対して傾きを持って近づいた場合でも、揺動部材11が回動することによって磁石13を六輪カート102の下部フレーム22に対して平行にすることができ、確実に吸着させることができる。このような構成によって、高精度な位置決めを必要とすることなく、自走ロボット1と六輪カート102とを確実に連結することが可能となる。
【0037】
特許文献1の連結装置では、固定部材30に設けられた回動範囲規制部材を設けて回動範囲を限定している。連結時やカゴ台車の牽引時に、(回動部材)揺動部材11とロボット本体部100、カゴ台車と自走ロボット1との接触を防止することが可能となり、接触に起因する損傷を防ぐためであるとしている。特許文献1の装置で上述の傾きをもって接近する場合の傾斜を吸収するための回動範囲は、揺動中央の位置に対して±4(deg)の範囲程度である。よって、特許文献1に記載の事項からは、回動範囲規制部材によって規制される回動範囲は±4(deg)の範囲になる。
【0038】
ところが、台車が六輪カート102のように固定車輪を備えたものである場合、特に、自走ロボット1も固定車輪を備えるものである場合に、カーブを良好に曲がることが困難であることが判明した。
図7~
図9は、回動範囲と回転半径について説明図である。
【0039】
図7は自走ロボット1が六輪カート102を接続した状態を模式的に示した図である。車輪についは自走ロボット1、六輪カート102それぞれの固定車輪である駆動車輪71、中央固定車輪123のみを描いている。自走ロボット1はこの固定された左右の駆動車輪の回転数や回転の向きで差をつけることでカーブの走行や旋回動作を行う。連結装置10の固定部材30に対して揺動部材11が全く回動できないと、固定車輪である固定中央車輪を有した六輪カート102を接続していた場合、六輪カート102の固定車輪が負荷となり、基本的に曲がることができない。
【0040】
図8は自走ロボット1の連結装置10の固定部材30に対する揺動部材11の回動により自走ロボット1本体と六輪カート102に角度をつけた状態を示した図である。この回動を利用してカーブ走行を行う場合、図中の2本の赤線で示す自走ロボット1の固定車輪である駆動車輪71の回転中心を結ぶ中心線CL1の延長線(図中下方への延長線)と六輪カート102の中央固定車輪の回転中心を結ぶ中心線CL2の延長線(図中下方への延長線)とが交わる点がカーブの回転中心となる。この回転中心と自走ロボット1の駆動車輪71の中央Cとの間の距離が回転半径となる。なお、図中に示した符号を付した寸法の一例は次のとおりである。値の単位はmmである。
W1:540、L1:715、
W2:424、L2:1200、
L3:183、L4:797.5
【0041】
図9は前述の寸法条件で回動の角度と回転半径の関係を示したグラフである。回動角度 4(deg)における回転半径が約14(m)と非常に大きい半径であり、倉庫などの物流現場で搬送を行うことができない。倉庫などの通路幅は一般に最小で1~2m程度であることから、回転半径は少なくとも1.5(m)で回動角度45(deg)、好ましくは回転半径1.0(m)で回動角度60(deg)である。通路幅が比較的広い場合にも、30(deg)の回動角度が好ましい。よって、左右のカーブを考慮すると回動範囲のこの倍である。つまり、回動範囲は60(deg)(中心から±30)以上である。好ましくは90(deg)以上、更に好ましくは、120(deg)以上である。なお、従来の装置のように例えば回動角度を±4(deg)の場合に、計算上の最小回転半径は約14(m)となり、現実的に通常のコースを走行することができない。
【0042】
図10は自走ロボット1の連結装置10が取り付けられた側の斜視図である。連結装置10は、±60(deg)で120(deg)の回動範囲を持つ。回動軸111は自走ロボット1の駆動車輪71に近いほど回転半径が小さくなるので、回動の範囲を妨げない範囲で自走ロボット1の内側に近づけている。図示の状態は揺動部材11が一方の回動範囲の限界である60(deg)まで回動した状態である。前述の寸法条件下で回転半径1mのカーブを走行できるようになった。この図の連結爪12の状態は先端部分12aが上昇して閉じた状態である。理解を容易にするため連結されている六輪カート102は表示していない。符号30aはロボット本体部100の下部フレーム22に対する固定部材30の固定ネジ30aを示す。
【0043】
図11は
図10の状態の連結装置10の底面図である。回動範囲の両方の限界を規制する一対の規制部材63が固定部材30に固定されている。揺動部材11側にも規制部材63と当接する当接部として爪昇降用シャフト37に一対の当接部材37bが取り付けられている。規制部材63と当接部材37aの少なくもと一方には弾性を持たせることが好ましい。例えば、規制部材63としてゴムクッションを用いる。
図8では図中左側(自走ロボット1に固定のX・Y・Z座標系で+X側)で規制部材63と当接部材37aとが当接している。規制部材63と当接部材37bとで回動範囲規制手段を構成している。
【0044】
連結装置10の揺動部材11が自由に回動できると、連結前の自走ロボット1単体では揺動部材11が安定しない。この状態では単体走行時に連結部が振動することになる。このような振動はモータやセンサなどの電装部品の故障につながる危険性や、ボルトの緩みを誘発する懸念がある。また、特許文献1の自走ロボット1と六輪カート102の角度を吸収するという観点から要求される回動範囲は例えば4(deg)程度と小さい。これに対し回動範囲が±45~60(deg)と大きい状態では、磁石13が六輪カート102のフレームを吸着することができない可能性がある。
【0045】
図12(a)は、固定部材30に対し揺動部材11が4(deg)回動した状態で六輪カート102に接近した状態を示している。この状態であれば磁石13は六輪カート102の下部フレーム22に吸着して、連結装置10は六輪カート102を接続することが可能である。
図12(b)は固定部材30に対し揺動部材11が60(deg)回動した状態で六輪カート102に接近した状態を示している。この状態では磁石13が六輪カート102の下部フレーム22に吸着できないため、連結装置10は六輪カート102を接続することができない。
【0046】
この問題を解決するためには自走ロボット1の連結装置10の回動は外部の力がかからない状態では回動範囲の内の特定の角度である回動範囲の中央方向付近を向く角度になるように外力を与える付勢手段を採用することが好ましい。外力を与える方法としては、ばねによる付勢、モータによる回転制御、回動軸111を傾けることで重力を利用するなどがある。重力を利用する場合には、揺動部材11の各種の保持している部品を含めた重心位置を考慮する。いずれの方法でも単体走行時に連結装置10の揺動部材11を概ね中央を向くようにできる。
【0047】
図13は、揺動部材11を回動範囲の中央方向に向けるため、部品の調達性、コスト、メンテナンスのしやすさなどから引っ張りスプリング200を用いた例を示す。揺動部材11を押さえるために2本の引っ張りスプリング200を組み込んでいる。引っ張りスプリング200は片側を固定されているロボット本体部100のフレームに係止部材200aを介して取り付けられている。反対側は揺動部材11のベースに係止ピン200bを介して取り付けている。
【0048】
このように引っ張りスプリング200による力で回動を抑制することで、六輪カート102の連結時には回動できる状態を維持しつつも、自走ロボット1が単体動作時に揺動部材11が不要に揺れ動くことを防止できる。回動の範囲が両側±にθ
0で合計2*θ
0とすると、θ
0は少なくとも30(deg)、
図5~
図13の例では60(deg)と大きいため、揺動部材11のスプリング取り付け位置は回動軸111の近傍が好ましい。付勢手段としての引っ張りスプリング200は低コストで信頼性の高い。
【0049】
図14(a)は本実施形態の搬送システムにおける車庫入れするための車庫レイアウトの一例を示した図である。左右の延びるA地点とB地点とを結ぶ経路が本線300を示す。磁気テープや光学テープを床面に設置してもよい。この本線300をA地点からB地点側を見て左側(図中上側)に所定の角度φだけ傾いた長方形が、六輪カート102を車庫入れする場所である車庫310を示す。車庫310の外縁を塗料あるいはテープで目視できるようにしてもよい。図示の例では本線300の方向に等間隔で4つの車庫310が設定されている。
【0050】
4つの車庫310の中央に置かれた六輪カート102の専有箇所である台車専有領域320を、車庫310の内側の斜線を付した長方形で示している。
図14(a)には4つの車庫310それぞれについて、車庫入れするときのルートを実線で示している。このルートは塗料又はテープで目視できるようにしてもよい。これらを光学センサや磁気センサ(磁気テープ利用)などで検出可能にしてもよい。
【0051】
図示の例の各部の幅や長さの寸法例は次のとおりである。数値の単位はcmである。
W2:42、L2:120、
W20:72、L20:140、
W21:80、
W22:113、
W23:685、L24:250
L21:108、
L22:50、
L23:50
【0052】
本実施形態の連結装置10は、揺動部材11が回動範囲内で固定部材30に対し回動し得る。つまり、回動範囲内では揺動部材11の回動が規制されていない。
図13の例のように引っ張りスプリング200で中央を向くように付勢されていても、付勢力以上の力で回動させ得る。よって、六輪カート102を車庫310に向け自走ロボット1を所謂バックさせながらの車庫入れは、揺動部材11の固定部材30に対する角度の把握が困難で、回転半径の制御も困難である。このため、牽引しながらの車庫入れが適している。
【0053】
図14(a)でA地点からB地点まで進む間に進行方向左側の車庫エリア(幅W23、長さL24のエリア)の4つの車庫310について環境認識手段である測域センサ9などを用いて空いている車庫310を探す。ここで3番目の車庫310が空き車庫310と検知した場合、図のC地点で自走ロボット1は左に所定の旋回角度θ(=<θ
0)だけ旋回動作を行う。この旋回は連結装置10の回動軸111を中心とすることで、可動な範囲内であれば六輪カート102は動かない。そして床のテープを検出、もしくは所定の旋回角度θに達したと判断した後に旋回を停止して、前進動作を始める。
【0054】
そして六輪カート102が車庫310の枠内に達したと判断した際に、一旦停止した後に自走ロボット1は六輪カート102の接続を解除して、車庫310に六輪カート102を置く。その後自走ロボット1は単体で前進を再開し、D地点で旋回もしくはカーブ走行により合流し、B地点に向かうことになる。
【0055】
図14(b)及び(c)はC地点での旋回を示した図である。回動軸111がC地点に達した際に六輪カート102を接続した自走ロボット1は一旦停止する。この状態で回動軸111を中心として自走ロボット1は左旋回を行うように左右の駆動モータを回転させる。床面との駆動車輪71のスリップがほとんどない場合に回動軸111がC地点にある状態で左旋回するためには、左右の駆動輪を逆向きに駆動する。なお、
図14(b)には測域センサ9の測域範囲を9aで示す。右側(図中下側)の90(deg)を除く270(deg)の範囲である。このように前後及び左側を測域範囲とすることから、本線300の進行方向左側に車庫エリアを設定している。
【0056】
図示の例ではC地点の旋回角度θを45(deg)として描いているが、前述のように連結装置10の回動可能な範囲であれば、この値は回動可能な範囲内で設定可能である。その後、自走ロボット1は直進で前進動作を行う。この動きに対して六輪カート102は追従しながら自走ロボット1と角度を近づける。この動きは自走ロボット1が微小距離ΔX進んだ際に、六輪カート102は現状の方向にΔZ進み、両者のなす角度θはΔθ小さくなる。ΔZおよびΔθをΔXで表すために以下のように計算する。
【0057】
図15は自走ロボット1が直進する時に六輪カート102が追従する動きを示した図である。自走ロボット1の回動軸111をP、六輪カート102の2つの中央固定車輪123の中点をQ、PQの距離をAとする。
図15(a)の状態から自走ロボット1が微小距離ΔXだけ図中右方向に進み、
図15(b)に示すように、六輪カート102が中央固定車輪123の向きにΔZだけ進み、PとQの位置がP’、Q’となったとする。
【0058】
このときP’Q’の図中の水平方向の距離はAcosθ+ΔX-ΔZcosθ、垂直方向の距離はAsinθ-ΔZsinθとなる。P’Q’=PQ=Aより
(Acosθ+ΔX-ΔZcosθ)2+(Asinθ-ΔZsinθ)2=A2
となり、二次の微小項を無視するとΔZ=ΔXcosθとなる。
【0059】
また自走ロボット1と六輪カート102のなす角度θはこの移動でθ-Δθになったとすると、
Asinθ-ΔZsinθ=Asin(θ-Δθ)
となり、これを解くとΔθ=(sinθ/A)・ΔXとなる。
ここでθ=45(deg)、A=0.9185(m)として六輪カート102の挙動を計算すると以下のようになる。
【0060】
図16は初期の角度θが45(deg)の状態から六輪カート102を牽引した際の軌跡を示した図である(単位はm)。六輪カート102の前側の下部フレーム22の幅中心点から回動軸111までの線分の軌跡である。自走ロボット1はx軸上を右に進んでいる。六輪カート102の幅W2:0.42mに対して0.1mを車庫310内での余裕とすると六輪カート102がy=-0.31からy=0.31で示す赤線の範囲内に収まれば駐車入れ可能となる。この範囲内に収まるために自走ロボット1が進む距離、すなわち回動軸111の位置を示す線分の先端が進む距離は約2.4mとなる。
【0061】
よって自走ロボット1が
図14(a)のC地点で旋回した後に3番目の車庫310までに進むべき距離の最小値は2.4mとなる。これを満足できるように、直線ABからなる本線300から車庫310までの距離を設定することが必要条件となり、
図14(a)のレイアウトについての実寸例はこれを満足するように設計されている。
【0062】
以上はC地点での角度θの旋回中に回動軸111が定位置を取り、六輪カート102を牽引しないようにしているので、
図16を用いて説明したように、角度θの旋回後に六輪カート102を車庫とほぼ平行(
図14での本線300に対し角度φ)にするまでの移動距離を比較的短くでき、車庫エリアの面積の有効利用ができる。書庫エリアの面積に余裕があるは場合には、C地点で牽引を停止せずにカーブしながら牽引を続けてもよい。
【0063】
図17は車庫310のレイアウトにおいて旋回後に進む方向に複数の車庫310を配置したレイアウトの一例である。図では同方向に対して六輪カート102の2台分の車庫310を配置した図であるが、この方向にさらに増やすことも可能である。
【0064】
この状態ではAB上の本線から見て奥側に優先的に車庫入れする必要がある。図の車庫a~hに対して車庫入れの優先度は車庫a→車庫b→車庫c→・・・→車庫g→車庫hとなる。
【0065】
図14の例と同様にA地点からB地点に移動しながら手前1列目の車庫の空き状況を確認.しながら走行し、空いていればその場所に入るように旋回を行う。例として車庫b、車庫dは満車状態で、車庫fが空きの場合は、A地点からC地点まで進んだのちにC地点で旋回動作を行う。
【0066】
さらに車庫fに六輪カート102が達した時点で、前方の車庫eの空き状況を検知する。車庫eが空きの場合、車庫fに六輪カート102を置くことなく、前進を続けてD地点を通過して車庫eに達する。ここで車庫入れとして六輪カート102の接続を解除し、自走ロボット1は単体でE地点にて右にカーブし、B地点に至る。
【0067】
一方、車庫eが満車の場合は、車庫fで六輪カート102の接続を解除し、D地点にて右にカーブし、B地点に至る。このパターンを重ねることで車庫エリアを升目状に並べ、効率的なレイアウトを得ることができるようになる。
【0068】
ここで升目状とは、本線300に近い手前の一列目の車庫b、d、f、hから、二列目の車庫a、c、e、gに進まずに本線300に戻るための、本線300と平行な経路311と、二列目の車庫a、c、e、gを通って本線300に戻るための本線300と平行な経路312とを、それぞれ図中の横線として捉えることができる。旋回後の同じ方向にある一例目の車庫と二列目の車庫、たとえば、車庫bとa、車庫dとc、車庫fとe、車庫hとgと進むそれぞれの経路を本線300に対してφだけ傾斜している縦線と捉えることができる。このよう複数の横線と複数の縦線とから升目を観念できるような配置である。
【0069】
図14や
図17の車庫310のレイアウトを例にして説明した誘導システムは、自走ロボット1を用い、必要に応じて自走ロボット1が走行する床面に設けた磁気テープや光学テープも併用して構成できる。
図18は自走ロボット1のコントローラ4の機能ブロックの一例を示すものである。自走ロボット1三に通信装置を搭載し、コントローラの機能の一部又は全部を通信相手の例えばサーバ側に持たせ、自走ロボット1に搭載されたセンサの情報、あるいは、これに基づいて生成した情報を送信し、また、制御情報を受信するといった通信を行いなが自走するようにしてもよい。
【0070】
図18において、コントローラ4は、自己位置推定部401と、障害物判定部402とを備える。自己位置推定部401は、磁気センサ3からの磁気テープ検出情報や測域センサ9から取得する測域情報に基づいて自己位置を推定する。自走ロボット1の車輪にエンコーダを設けてこれからの移動量を併用する等してもよい。障害物判定部252は、測域センサ9から取得する距離情報に基づいて障害物を検出する。車庫310については六輪カート102の有無もこの機能により検知する。
【0071】
コントローラ4は、ID表示パネル21を撮影したカメラ5からの情報から画像を認識する画像認識部403、画像認識部403の認識情報からID表示パネル21の情報を取得する情報取得部404も備えている。測域センサ9でカメラ5と同等の情報を取得できる場合にはカメラ5を省略できる。マップデータベースメモリ405、経路演算部406、連結動作演算部407、連結モータ制御部408、車輪のモータ制御部409も備えている。
【0072】
自走ロボット1は、目的地を設定されると、マップデータベースメモリ405に予め入力されているマップデータ(地図情報)に基づいて、経路演算部406が経路生成を行う。生成された走行経路に応じて、駆動モータ制御部409が車輪の動力モータ7を制御し、走行を行う。
【0073】
自走ロボット1は、制御システムにて予め決められているタイミングで、測域センサ9によって周囲の物体に対する測距を行う。測距データは、障害物判定部402で処理される。
【0074】
障害物判定部402では、測距データとマップデータベースメモリ405内のマップデータとを比較し、障害物の有無判定が行われる。また、比較結果は自己位置推定部233によって自走ロボット1の自己位置の推定にも使用される。
【0075】
自走ロボット1は、自己位置推定部401によって推定した位置情報と、マップデータベースメモリ405内に記憶された情報とに基づいて、経路演算部406で経路演算を行う。これにより、目的地までの効率の良い自律走行を実現することができる。この経路演算部406による経路演算のアルゴリズムとして、
図14や
図17の車庫310のレイアウトを例にして説明した車庫入れの誘導のアルゴリズムも含まれる。
【0076】
自走ロボット1は、経路演算部406の経路情報とマイクロスイッチ14から情報などに基づいて、連結動作演算部407により、連結モータ制御部408にフックモータ15を制御させる。これにより、連結及び連結解除を行う。
【0077】
以上本実施形態では、可動部材が回動中心の回りの60度以上の回動範囲で回動できるので、二輪が固定された台車を連結した状態で従来に比して良好にカーブを曲がることができる。物流倉庫や工場で用いるのに好適である。また、自走ロボット1と台車それぞれに固定車輪があるので、四輪自在の台車の搬送とは異なり、牽引しながらの直線走行時にふらつきが発生しにくい。また、回動範囲の内の特定の角度を取るように付勢手段で可動部材を付勢することにより、自動連結を行うことが可能となる。また、不要な回動による振動を抑制できるため、部品の故障やボルトの緩みを防止できる。
【0078】
以上の実施形態では、自走ロボット1として固定車輪を駆動車輪とし、従動輪を向き変更自在に設けたが、次のような自走ロボット1にも適用できる。固定車輪を駆動輪とし、従動輪を操舵駆動制御できるもの。従動輪を固定車輪又は向き変更自在車輪とし、駆動輪を操舵駆動制御できるもの。4輪駆動で、少なくもと一対の車輪を操舵駆動できるものなど。何れの場合にも、連結装置10の回動範囲を60度以上とすることから回転半径を十分に小さくできる。
【0079】
また、固定車輪を備えた台車として六輪カート102を挙げたが、固定車輪を備えたものであればこれに限られない。例えば、二輪を固定車輪とし、他の二輪を向き変更可能な車輪とする四輪の台車も存在し、このように二輪を固定した荷物搬送用の台車についても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 :自走ロボット
2 :台車
3 :磁気センサ
4 :コントローラ
5 :カメラ
6 :バッテリー
7 :動力モータ
8 :モータドライバ
9 :測域センサ
10 :連結装置
11 :揺動部材
12 :連結爪
12a :先端部分
13 :磁石
14 :マイクロスイッチ
15 :フックモータ
16 :減速器
20 :カゴ部
21 :ID表示パネル
22 :下部フレーム
22a :曲げ部
23 :キャスター
30 :固定部材
30a :固定ネジ
37 :爪昇降用シャフト
37a :当接部材
37b :当接部材
45 :回動角度
50 :走行エリア
51 :本線
52 :番地マーク
60 :回動角度
63 :規制部材
71 :駆動車輪
72 :従動車輪
100 :ロボット本体部
102 :六輪カート
111 :回動軸
120 :棚枠
122 :天板
123 :中央固定車輪
200 :引っ張りスプリング
200a :係止部材
200b :係止ピン
233 :自己位置推定部
252 :障害物判定部
300 :本線
310 :車庫
311 :経路
312 :経路
320 :台車専有領域
401 :自己位置推定部
402 :障害物判定部
403 :画像認識部
404 :情報取得部
405 :マップデータベースメモリ
406 :経路演算部
407 :連結動作演算部
408 :連結モータ制御部
409 :モータ制御部
A :仮置きエリア
B :第一保管エリア
C :第二保管エリア
CL1 :中心線
CL2 :中心線
S :スタート位置
a :車庫
b :車庫
c :車庫
d :車庫
e :車庫
f :車庫
g :車庫
h :車庫
ΔX :微小距離
θ :旋回角度
φ :角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】