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特許7474434バリウム及びストロンチウムを含む珪化物薄膜及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】バリウム及びストロンチウムを含む珪化物薄膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/06 20060101AFI20240418BHJP
   C22C 24/00 20060101ALI20240418BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240418BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20240418BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20240418BHJP
【FI】
C23C14/06 E
C22C24/00
C23C14/34 A
H10N10/01
H10N10/851
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019160314
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021038433
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】召田 雅実
(72)【発明者】
【氏名】秋池 良
(72)【発明者】
【氏名】舟窪 浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 荘雄
(72)【発明者】
【氏名】青山 航大
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045754(JP,A)
【文献】特開2019-021774(JP,A)
【文献】特開2016-044326(JP,A)
【文献】特開2000-119096(JP,A)
【文献】米国特許第06022410(US,A)
【文献】特開2019-149523(JP,A)
【文献】青山 航大、清水 荘雄、倉持 豪人、召田 雅実、秋池 良、井出 啓介、片瀬 貴義、神谷 利夫、木村 好里、舟窪 浩 〇(M1C)Kodai Aoyama, Takao Shimizu, Hideto Kuramochi, Masami Mesuda, Ryo Akiike, Keisuke Ide, Takayoshi Katase, Toshio Kamiya, Yoshisato Kimura, Hiroshi Funakubo,[10a-W351-6]共スパッタ法で作製したBaxSr1-xSi2膜の熱電特性,2019年 第66回応用物理学会春季学術講演会[講演予稿集] Extended Abstracts of The 66th JSAP Spring Meeting 2019 ,公益社団法人応用物理学会 The Japan Society of Applied Physics
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/06
C22C 24/00
C23C 14/34
H10N 10/01
H10N 10/851
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム及びストロンチウムを含有する珪化物の多結晶体を含み、該多結晶体が立方晶SrSi 相を含有する薄膜であり、前記バリウム及びストロンチウムの含有量が、0.15≦Ba/(Ba+Sr)≦0.20の関係を満たし、なおかつ、前記立方晶SrSi 相の(210)面のX線回折ピーク強度に対する、正方晶相の(112)面のX線回折ピーク強度の比が0.5以下であることを特徴とするバリウム及びストロンチウムを含有する珪化物薄膜の製造方法であり、アルゴン雰囲気下、珪化ストロンチウムスパッタリングターゲット及び珪化バリウムスパッタリングターゲットを使用し、珪化ストロンチウムスパッタリングターゲットのスパッタリング時の電力密度を0.1W/cm 以上10W/cm 以下、珪化バリウムスパッタリングターゲットのスパッタリング時の電力密度を1.0W/cm 以上1.1W/cm 以下としたスパッタ法により基板上に成膜する珪化物薄膜の製造方法。
【請求項2】
珪化ストロンチウムスパッタリングターゲットと珪化バリウムスパッタリングターゲットは、いずれも含有酸素量が1.5wt%以下のバルク多結晶体である請求項に記載の珪化物薄膜の製造方法。
【請求項3】
基板温度を650℃~750℃とし、成膜におけるガス圧を10mtorr以上とする請求項又はに記載の珪化物薄膜の製造方法。
【請求項4】
基板としてサファイア、無機ガラス、又はシリコンからなる基板を用いる請求項のいずれか一項に記載の珪化物薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換特性に優れた新規なバリウム及びストロンチウムを含む珪化物薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な素子として熱電変換素子が知られている。この熱電変換素子は、p型及びn型の二種類の熱電変換材料(熱電材料)を用いて構成されており、この二種類の熱電材料を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされている。この熱電変換素子は、両端子間に電圧を印加すれば、正孔の移動及び電子の移動が起こり、両面間に温度差が発生する(ペルチェ効果)。また、この熱電変換素子は、両面間に温度差を与えれば、やはり正孔の移動及び電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する(ゼーベック効果)。
【0003】
このため、ペルチェ効果を利用したパーソナルコンピュータのCPU、冷蔵庫、カーエアコン等の冷却用の素子としての検討、ゼーベック効果を利用したごみ焼却炉等から生ずる廃熱を利用した発電装置用の素子としての検討が進められている。特に、自動車のエンジンの廃熱量は無視できないほど多量であるため、エンジンの廃熱を利用して発電することも考えられており、その温度域は数百度と言われている。
【0004】
従来、熱電変換素子を構成する熱電材料として、BiTeが主に実用化されており、Bi-Te系の材料でn型の熱電材料を形成する際には一般にSeが添加される。しかし、これらの熱電材料を構成する元素のBi、Te及びSeは毒性が強いため、環境汚染のおそれがある。そのため、環境負荷の少ない、即ち毒性を有しない熱電材料が望まれている。また、Bi-Te系の材料は100℃程度での利用が主であり、自動車の排熱利用に対しては適していない。さらには、自動車の廃熱回収に使用するには軽量で資源的に豊富な材料が望まれている。
【0005】
珪化物系の熱電材料としてMgSiが知られている(例えば、特許文献1参照)。同族元素を用いた薄膜の作製方法としてBaSi系(例えば、特許文献2参照)並びにBaSi系のBaの部分をSrに置換したもの(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、SrSi系の一部をBaに置換したものに関する検討はこれまで知られておらず、どのような膜結晶性、並びに熱電特性を持つか不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-368291号公報
【文献】特開2016-008316号公報
【文献】特開2005-294810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱電変換特性の高い熱電素子に適したバリウム及びストロンチウムを含む珪化物薄膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような背景に鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、バリウムを含有する珪化ストロンチウムの結晶相を制御し、バリウム、ストロンチウム及びシリコンを含む特定の多結晶体を含む薄膜が優れた熱電変換特性を有することを見出するとともに、該薄膜を得る製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の態様は以下の通りである。
(1)バリウム及びストロンチウムを含有する珪化物の多結晶体を含み、該多結晶体が立方晶SrSi相を含有する薄膜であり、上記バリウム及びストロンチウムの含有量が、0.08≦Ba/(Ba+Sr)≦0.25の関係を満たすことを特徴とするバリウム及びストロンチウムを含有する珪化物薄膜。
(2)上記バリウム、ストロンチウム及びケイ素の含有量が、1.8≦Si/(Ba+Sr)≦2.8の関係を満たす上記(1)に記載の薄膜。
(3)前記立方晶SrSi相の(210)面のX線回折ピーク強度に対する、正方晶相の(112)面のX線回折ピーク強度の比が0.5以下である上記(1)又は(2)に記載の薄膜。
(4)電気抵抗率が10Ω・cm以下であるり、ゼーベック係数が20μV/K以上である上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の薄膜。
(5)薄膜の表面粗さ(Ra)が20nm以下である上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の薄膜。
(6)サファイア、無機ガラス、又はシリコンからなる基板上に成膜されている上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の薄膜。
(7)上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の薄膜の製造方法であり、珪化ストロンチウムスパッタリングターゲット及び珪化バリウムスパッタリングターゲットを使用するスパッタ法により基板上に成膜する薄膜の製造方法。
(8)珪化ストロンチウムスパッタリングターゲットと珪化バリウムスパッタリングターゲットは、いずれも含有酸素量が1.5wt%以下のバルク多結晶体である上記(7)に記載の薄膜の製造方法。
(9)基板温度を650℃~750℃とし、成膜におけるガス圧を10mtorr以上とする上記(7)又は(8)に記載の薄膜の製造方法。
(10)基板としてサファイア、無機ガラス、又はシリコンからなる基板を用いる上記(7)~(9)のいずれか一項に記載の薄膜の製造方法。
(11)上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の薄膜を使用する熱電変換素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、10mΩ・cm以下の低い電気抵抗率、50μV/K以上の高いゼーベック係数、及び0.20×10-3W/mK以上の高いパワーファクターという優れた熱電変換特性を有するバリウム及びストロンチウムを含む珪化物薄膜が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、バリウム、ストロンチウムを含有する珪化物多結晶体を含み、該多結晶体が立方晶相SrSi相を含有する薄膜である。熱電特性が良好な立方晶相SrSi相を含むことにより、熱電特性を向上させることが可能となる。また、本発明では、珪化物多結晶体が立方晶相SrSi相を含有するが、立方晶相SrSi相以外の結晶相含有量が可能な限り少ないことが好ましい。
立方晶相SrSi相以外の結晶相としては正方晶SrSiが存在する場合がある。本発明の薄膜は、そのとき、結晶多形である正方晶相の112ピーク強度は、立方晶SrSi相の210ピークの強度に対して0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.1以下であり、最も好ましくは0.05以下である。
【0012】
本発明の薄膜の組成としては、0.08≦Ba/(Ba+Sr)≦0.25であり、また、好ましくは0.08≦Ba/(Ba+Sr)≦0.1である。
一方、Ba+Srの合計をMとしたとき、1.8≦Si/M≦2.8であることが好ましく、さらに好ましくは、1.8≦Si/M≦2.2であり、最も好ましくは1.9≦Si/M≦2.1である。これにより、SrSi相が主相として存在しやすくなり、熱電特性が向上する。
【0013】
本発明の薄膜は、バリウムが立方晶SrSi相に固溶した構造を取っており、該構造を取ることにより、室温において、熱伝導率を低くすることができ、結果として高い熱電変換性能を有する多結晶膜を得ることができる。
本発明の薄膜の厚みは50nm以上が好ましく500nm以上が更に好ましい。薄膜の厚みが50nm以上であることにより、十分な結晶性、伝導性を示し、より良好な熱電特性を得ることができる。薄膜の厚みの上限は、特に制限されないが、薄膜の厚みは、通常、100nm以下である。
本発明の薄膜の表面粗さ(Ra)は好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下である。表面が平坦であることで表層の面積が減少し、表層酸化を抑制することが可能となる。表面粗さ(Ra)は、JIS R 1683により測定される。
【0014】
本発明の薄膜は、基板を含むことが好ましい。この基板材料としては、例えばサファイア、無機ガラス、シリコン、等が例示できる。なかでも、結晶性の良い膜を作製するためには、サファイア基板が好ましく、その方位は(0001)面に配向した基板が好ましい。これにより、基板の結晶性に合わせて薄膜の結晶性も向上するため、その熱電特性がより向上する。
【0015】
熱電変換材料の性能を評価する指数として、パワーファクターPF=Sσや、無次元性能指数:ZT=(S/(ρ・κ))Tが用いられている。ここで、S:ゼーベック係数、ρ:抵抗率、κ:熱伝導率、T:絶対温度である。すなわち、熱電変換材料において、良好な熱電特性を得るには、ゼーベック係数S及び電気抵抗率ρが低く、熱伝導率κが低いことが必要である。
【0016】
本発明の薄膜は、原子量の大きいバリウムを含有することで、珪化ストロンチウム単相の場合より、熱伝導率を低下させることが可能となる。これにより、熱電変換材料としての性能指数がより大きくなり、良好な熱電変換特性を示す。
本発明の薄膜は、好ましくは10Ω・cm以下、特に好ましくは、1.0×10-2Ω・cm以下の電気抵抗率を有することができる。これにより、熱電変換材料としての指数がより大きくなり、良好な熱電変換特性を示す。また、好ましくは20μV/K以上、特に好ましくは、50μV/K以上のゼーベック係数を有することができる。これにより、熱電変換材料としての指数がより大きくなり、良好な熱電変換特性を示す。更に、0.10×10-3W/mK以上、特には、0.20×10-3W/mK以上のパワーファクターを有することができる。これにより、良好な熱電変換特性を示す。
【0017】
次に、本発明の薄膜の製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
本発明の薄膜の製造方法は、スパッタ法により基板上に成膜する製造方法が好ましい。スパッタ法において、安定した放電特性や、不純物の混入を低減するため、本発明では、珪化ストロンチウムスパッタリングターゲット、珪化バリウムスパッタリングターゲットをそれぞれ用いることが好ましい。
アルカリ土類金属は表面が酸化されやすく、酸素が不純物として混入しやすく、また、空気中で発火する恐れがあるため取り扱いが煩雑である。それに対し、スパッタリングターゲットとして用いる珪化ストロンチウム、珪化バリウムは空気との反応性も小さく、酸素量を抑制することが可能である。また、スパッタリングターゲットの組成は目的とする薄膜の組成に近いものが好ましい。
【0018】
また、本発明では、含有酸素量を低減したスパッタリングターゲットを使用することが好ましい。本発明で好ましくは使用される珪化ストロンチウムスパッタリングターゲット及び珪化バリウムスパッタリングターゲットは、いずれも、含有酸素量が、好ましくは1.5wt%以下、より好ましくは1.0wt%以下、より好ましくは0.8wt%以下、より好ましくは0.7wt%以下のバルク多結晶体であることが好ましい。
【0019】
薄膜の組成を調整する方法は、特に限定はなく、各元素を別のスパッタリングターゲットとして準備し、共にスパッタする方法が挙げられる。また、ベースとなるスパッタリングターゲット、例えば、シリコンターゲットの上にストロンチウム元素源の破片、及びバリウム元素源の破片を設置し、スパッタすることでもよい。ストロンチウム元素、バリウム元素量、及びシリコン元素量の調整は、各元素を別のスパッタリングターゲットとして準備する場合は、例えば、スパッタ時の放電電力、スパッタ時のガス圧、ガス組成を調整することなどにより可能となる。各元素ターゲットの破片を使用する場合、破片の大きさ、数、設置位置などを選択することで調整することができる。
【0020】
本発明の薄膜の製造方法では、基板温度を650℃~750℃とし、成膜におけるガス圧を10mtorr以上とすることが好ましい。
本発明者によると、スパッタ法による成膜後の膜の結晶性が、成膜時の基板の温度により変化することから、結晶相である立方晶SrSi相が得られ、熱電特性が低下する立方晶から正方晶へ変化を抑制できることから、基板温度は650℃~750℃が好ましく、680℃~740℃がより好ましい。前記範囲とすることで熱電特性の高い立方晶と電気伝導性の高い三方晶の混合した良好な熱電特性を有する結晶相を有する薄膜となる。
【0021】
本発明の製造方法では、成膜におけるガス圧は、10mtorr以上であることが好ましく、更に好ましくは20mtorr以上である。成膜ガス圧は、500mtorr以下が好ましく、更に好ましくは400mtorr以下である。この範囲とすることで、成膜時に安定的に放電を維持することが可能であり、粒子が基板に到達する際のエネルギーを適切に調整し、結晶性の良い膜を得ることが可能となる。
【0022】
本発明の製造方法では、放電電力は、ターゲットに与える電力密度として、10W/cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1W/cm以下である。これにより、粒子に与えるエネルギーが抑制でき、より歪の少ない膜を得ることができる。電力密度は0.1W/cm以上が好ましく、さらに好ましくは0.5W/cm以上である。そうすることで安定した放電が可能となる。
【0023】
成膜に用いるガスはア、ルゴン、窒素などのガスを使用可能であるが、酸素の影響を抑制するために、水素を含有することが好ましい。水素を含有させることでスパッタリングターゲット中の酸素と反応させ、膜中の酸素を低減することが可能となる。
【実施例
【0024】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
(結晶性の確認方法)
XRD装置(装置名:ブルカーAXS社 D8 Discover)を用いて20°~50°まで走査し、あおり角0°~90°の範囲で測定したデータを積分して得た回折図形についてピーク位置から含有される結晶相を同定した。
参考とした結晶相のJCPDSカードは、立方晶は00―020―1215であり、正方晶は00―031―1363である。
【0025】
(膜中の添加元素量の確認方法)
波長分散型蛍光X線分析装置(装置名:PANalytical社 PW2404)を用いて、元素分析を実施し、添加元素の含有率を計算した。
(膜の電気抵抗率の測定方法)
ゼーベック係数測定装置(装置名:アルバック社 ZEM-3)により室温から400℃まで加熱し各温度の膜抵抗率を測定した。
【0026】
(半導体型の判別方法)
ゼーベック係数測定装置(装置名:アルバック社 ZEM-3)を用いて室温から400℃まで加熱した際のゼーベック係数の絶対値より判断した。正の値:p型 負の値:n型である。
(ゼーベック係数の測定方法)
ゼーベック係数測定装置(装置名:アルバック社 ZEM-3)を用いて室温から400℃まで加熱し各温度のゼーベック係数を算出した。
【0027】
(膜の熱伝導率の測定方法)
レーザーフラッシュ熱定数測定装置(装置名:アドバンス理工社、TC-1200RH)を用いて室温から400℃まで加熱し各温度の熱伝導率を算出した。
(結晶相の割合の測定方法)
EBSD(後方散乱電子回折)分析を用いて膜表面における結晶化している部分の各結晶相の面積比から算出した。
【0028】
[実施例1]
表1に示されるスパッタリングターゲットの組成を用いて、以下のスパッタリング条件及びターゲット1の放電パワー:50W(3.8W/cm)、ターゲット2の放電パワー:10W(0.8W/cm)の条件にて、(0001)サファイア基板(京セラ社製5mm角、0.5mm厚み)上に、基板加熱温度650℃にてスパッタ成膜試験を実施した。
(スパッタ条件)
放電方式 :RFスパッタ
成膜装置 :マグネトロンスパッタ装置
ターゲット1 :2inchφ珪化ストロンチウムターゲット(酸素含有量:0.7wt%)
ターゲット2 :2inchφ珪化バリウムターゲット(酸素含有量:0.4wt%)
ターゲット―基板間距離:60mm
成膜圧力 :20mTorr
導入ガス :アルゴン100sccm
【0029】
[実施例2]
表1に示されるスパッタリングターゲットの組成を用い、ターゲット1の放電パワー:50W(3.8W/cm)、ターゲット2の放電パワー:14W(1.1W/cm)、及び基板加熱温度700℃とした以外は実施例1と同様にして、(0001)サファイア基板上に、スパッタ成膜試験を実施した。
【0030】
[実施例3]
表1に示されるスパッタリングターゲットの組成を用い、ターゲット1の放電パワー:50W(3.8W/cm)、ターゲット2の放電パワー:12W(1.0W/cm)、及び基板加熱温度700℃とした以外は実施例1と同様にして、(0001)サファイア基板上に、スパッタ成膜試験を実施した。
【0031】
[比較例1]
表1に示されるスパッタリングターゲットの組成を用い、ターゲット1の放電パワー:50W(3.8W/cm)、ターゲット2の放電パワー:20W(1.5W/cm)、及び基板加熱温度700℃とした以外は実施例1と同様にして、(0001)サファイア基板上に、スパッタ成膜試験を実施した。
【0032】
上記実施例1~3及び比較例1において、それぞれ得られた薄膜についての物性を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のストロンチウム・シリコン薄膜は、優れた熱電変換特性、具体的には、低い電気抵抗率、高いゼーベック係数、及び高いパワーファクターを有するので、広範な分野における熱電変換素子を構成する熱電材料として有用である。
【0034】
【表1】