(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】高分子化合物水素化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/04 20060101AFI20240418BHJP
C08G 61/06 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C08F8/04
C08G61/06
(21)【出願番号】P 2020052823
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】谷地 義秀
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 暢之
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-096132(JP,A)
【文献】特開2013-023460(JP,A)
【文献】特開2017-213519(JP,A)
【文献】特開2020-040022(JP,A)
【文献】特開平11-124429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00 - 8/50
C07B 35/00 - 35/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環型反応系で、水素ファインバブルを供給し、溶媒下で不飽和結合を有する高分子化合物を水素化する工程を含む、高分子化合物水素化物の製造方法
であって、反応液の循環流量が、0.1mL/min以上20mL/min以下である、高分子化合物水素化物の製造方法。
【請求項2】
前記高分子化合物が、環状オレフィン重合体である、請求項1に記載の高分子化合物水素化物の製造方法。
【請求項3】
前記高分子化合物の溶媒中での固形分濃度が、0.1wt%以上10wt%以下である、請求項1または2に記載の高分子化合物水素化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物水素化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化学的安定性の向上などを目的として、不飽和結合を有する高分子化合物を水素化(水素添加)し、高分子化合物水素化物を得る技術が用いられている。
【0003】
ここで、二重結合の水素化を用いた化合物の製造方法として、特許文献1には、溶剤と基質とからなる液相にマイクロバブル又はナノバブル(ウルトラファインバブル)を導入し、固体触媒の存在下での基質と水素との気液接触によって生成する反応生成物を製造する方法が開示されている。特許文献2には、高せん断装置を用いて形成したベンゼン及び水素ガス気泡のエマルションを固体触媒存在下において反応させることによるシクロヘキサンを製造するための方法が開示されている。特許文献3には、高せん断装置を用いて液相中に水素含有気泡の分散体を形成するように構成された、アルデヒド及び/又はケトンを水素化するための装置が開示されている。特許文献4には、非混和性液体媒質を含む液体中で原料化合物とマイクロバブルやナノバブル形態のガスとの化学反応を行わせることが開示されている。特許文献5には、芳香族ニトロ化合物を水素マイクロバブルと接触させることによる芳香族アミン化合物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-023460号公報
【文献】特表2010-531882号公報
【文献】特開2013-014595号公報
【文献】特開2017-019743号公報
【文献】特開2014-005217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高分子化合物水素化物の製造過程における水素化は、水素化前の高分子化合物を溶解させた溶媒に触媒を添加し、水素を強攪拌により溶剤へ巻き込ませ、高温・高圧下バッチ式で行われるのが一般的である。通常、水素添加工程の効率を上げるためには、触媒存在下バッチ式で高温・高圧で所望の転化率まで反応するのが一般的である。しかしながら、高温・高圧の反応は、設備費がかさみ、また、バッチ式では生産性に限りがあることが課題であった。また、強攪拌に伴う強い物理的刺激による、ポリマー分子の断片化や高温・高圧下による副反応等による品質低下を防ぐ観点から、温和な条件で反応できる製造方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、低圧条件下温和な条件で高分子化合物水素化物を得るために水素をファインバブル化して水素化反応を実施する方法を見出した。そして、本発明者らは、上述した新たな知見に基づき、本発明を完成させた。本発明では、常圧下でより効率的に反応が進行するため、温和な条件での反応、ポリマー分子の断片化等による品質低下防止に寄与できる。
【0007】
かくして本発明によれば、下記に示す高分子化合物水素化物の製造方法が提供される。
【0008】
〔1〕水素ファインバブルを供給し、溶媒下で不飽和結合を有する高分子化合物を水素化する工程を含む、高分子化合物水素化物の製造方法。
〔2〕前記高分子化合物が、環状オレフィン重合体である、前記〔1〕に記載の高分子化合物水素化物の製造方法。
〔3〕前記高分子化合物の溶媒中での固形分濃度が、0.1wt%以上10wt%以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載の高分子化合物水素化物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不飽和結合を有する高分子化合物を温和な条件で効率的に水素化することが可能な、高分子化合物水素化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明で用いる水素化反応系(循環型水素化反応系)の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、渦巻きポンプ型気泡発生装置等を用いた、従来型水素化反応系の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(高分子化合物水素化物の製造方法)
本発明の高分子化合物水素化物の製造方法は、水素ファインバブルを供給し、溶媒下で不飽和結合を有する高分子化合物を水素化する工程を含む。本発明の製造方法は、不飽和結合を有する高分子化合物を効率良く水素化することができる。したがって、水素化反応時の圧力の穏和化の効果が得られ、更に、水素化率の向上、水素化触媒の使用量の削減、水素化反応時間の短縮化、および水素化反応温度の低温化の少なくとも一つ以上の効果が得られる。
【0013】
<製造物:高分子化合物水素化物>
本発明の製造方法により得られる高分子化合物水素化物は、原料となる不飽和結合を有する高分子化合物の不飽和結合が水素化(水素添加)された高分子化合物である。高分子化合物水素化物は、高い水素化率を有することが好ましい。重合体水素化物の水素化率は、特に限定されることはないが、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。なお、高分子化合物水素化物の水素化率は、例えば、NMR、IR、またはクロマトグラフィ(例、GC-FID)を利用した方法(具体例として、本明細書の実施例に記載の方法)により測定することができる。
【0014】
また、高分子化合物水素化物の数平均分子量(Mn)は、特に限定されることはないが、1000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、20000以上であることが更に好ましく、200000以下であることが好ましく、150000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好ましい。高分子化合物水素化物の数平均分子量が200000以下であれば、流体の粘度が上昇することによる、ファインバブル化した水素化の分離性を維持しつつ、ファインバブル水素化の効率向上効果をより得やすくなる。なお、高分子化合物水素化物の数平均分子量は、例えば、特開2019-65161号公報の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
<原料:不飽和結合を有する高分子化合物>
本発明の製造方法において原料となる不飽和結合を有する高分子化合物は、分子構造中に不飽和結合を有する高分子化合物であれば、特に限定されることはない。また、不飽和結合を有する高分子化合物及びその水素化物は、いずれも、溶媒に可溶であることが好ましい。不飽和結合を有する高分子化合物は、好ましくは不飽和結合を有する重合体である。用語「重合体」には、共重合体も含まれる。
不飽和結合としては、二重結合及び三重結合が挙げられ、二重結合が好ましい。また、不飽和結合としては、炭素-炭素不飽和結合、炭素-窒素不飽和結合、炭素-酸素不飽和結合、窒素-窒素不飽和結合などが挙げられるが、好ましくは炭素-炭素不飽和結合、より好ましくは炭素-炭素二重結合である。なお、炭素-炭素不飽和結合には芳香環を構成する不飽和結合も含まれる。
不飽和結合を有する高分子化合物としては、例えば、環状オレフィン重合体、鎖状オレフィン重合体、芳香族オレフィン重合体が挙げられ、環状オレフィン重合体が好ましい。本発明の重合体水素化物の製造方法によれば、温和な条件下での効率的な水素化が可能であるため、水素化反応時に高分子化合物の分解が抑制され、高分子量の高分子化合物水素化物を得ることができる。
【0016】
―環状オレフィン重合体―
環状オレフィン重合体とは、環状オレフィン単量体単位を含む重合体である。環状オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン系単量体を含む重合体が挙げられる。ノルボルネン系単量体を含む重合体は、ノルボルネン系単量体が単独で、または必要に応じてノルボルネン系単量体以外の他の単量体と開環重合または付加重合された重合体である。なお、ノルボルネン系単量体とはノルボルネン環を含む単量体を指す。
【0017】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう。)およびその誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体などが挙げられる。
なお、誘導体とは、環構造中に置換基を有するものを指す。
【0018】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが挙げられる。
置換基を有するノルボルネン系単量体としては、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
重合体がノルボルネン系単量体と他の単量体との開環共重合体である場合、他の単量体としては、ノルボルネン系単量体と開環共重合可能であれば特に限定されることはなく、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、およびこれらの誘導体などの単環の脂環式オレフィン単量体などが挙げられる。
これらの置換基としては、ノルボルネン系単量体の置換基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0020】
重合体がノルボルネン系単量体と他の単量体との付加共重合体である場合、他の単量体としては、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能であれば、特に限定されることはなく、上述した芳香族オレフィン単量体と付加共重合可能な他の単量体と同様のものが挙げられる。
【0021】
ノルボルネン系単量体単位を含む重合体はブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0022】
重合体中のノルボルネン系単量体単位の含有割合は、特に限定されることはないが、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下であることが好ましい。
【0023】
なお、ジシクロペンタジエンには、エンド体及びエキソ体の2つの立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能である。環状オレフィン開環重合体の調製にあたり、エンド体及びエキソ体のうちの一方を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で混在する異性体混合物を用いることもできる。環状オレフィン開環重合体の結晶性を高め、得られる開環重合体水素化物の機械強度を特に高める観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。なお、環状オレフィン開環重合体の調製時に、ジシクロペンタジエンとして、エンド体及びエキソ体のうちの一方のみを用いても、双方を含む異性体混合物を用いても良い。異性体混合物の場合には、異性体混合物全体を100質量%として、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上がエンド体であることが好ましい。エンド体の方が、エキソ体よりも容易に合成可能だからである。
【0024】
ノルボルネン系単量体単位を含む重合体の調製方法としては、特に限定されることはなく、上述したノルボルネン系単量体を単独で、または必要に応じて他の単量体と開環重合または付加重合させるための既知の方法などを用いることができる。
具体的に、ノルボルネン系単量体の開環重合体の重合様式は、特に限定はされず、例えば、溶液重合法、塊状重合法などの方法を用いることができる。開環重合反応としては、メタセシス重合などの開環重合を用いることができる。そして、重合に使用される開環重合触媒、助触媒、分子量調節剤、重合活性調整剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とする。開環重合反応としては、例えば、特開2019-167395号公報に記載されるような方法を用いることができる。
また、ノルボルネン系単量体の付加重合体の重合様式は、特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。そして、重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、重合助剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とする。
【0025】
―鎖状オレフィン重合体―
鎖状オレフィン重合体とは、鎖状オレフィン単量体単位を含む重合体である。鎖状オレフィン単量体としては、得られる重合体が不飽和結合を有するものであれば、特に限定されることはなく、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン単量体;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなどの非共役ジエン単量体などを用いることができる。鎖状オレフィン重合体は、これらの単量体と他の単量体と共重合した鎖状オレフィン共重合体であってもよい。
【0026】
―芳香族オレフィン重合体―
芳香族オレフィン重合体とは、芳香族環を有するオレフィン単量体単位を含む重合体である。芳香族オレフィン重合体は、特に限定されることはないが、通常は、芳香族オレフィン単量体が単独で、または必要に応じて芳香族オレフィン単量体以外の他の単量体と付加(共)重合された重合体である。
なお、本明細書中において、「(共)重合」とは、「重合または共重合」を指す。
【0027】
芳香族オレフィン単量体としては、特に限定されることはなく、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、4-モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン、4-フェニルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体などを用いることができる。中でも、スチレンを用いることが好ましい。
これらの芳香族オレフィン単量体は、それぞれ単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
他の単量体としては、芳香族オレフィン単量体と付加共重合可能であれば、特に限定されることはなく、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン(α-ブチレン)、2-メチルプロピレン(イソブチレン)、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20のα-オレフィン単量体;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン単量体;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなどの非共役ジエン単量体;(メタ)アクリロニトリル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等の酸性基含有単量体などが挙げられる。中でも、共役ジエン単量体を用いることが好ましく、イソプレンを用いることがより好ましい。
これらの他の単量体は、それぞれ単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリロニトリル」とは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0029】
上述した芳香族オレフィン単量体と他の単量体との付加共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0030】
重合体中の芳香族オレフィン単量体単位の含有割合は、特に限定されることはないが、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
芳香族オレフィン単量体単位を含む重合体の調製方法としては、特に限定されることはなく、例えば、上述した芳香族オレフィン単量体を単独で、または必要に応じて他の単量体と付加(共)重合させるための既知の方法を用いることができる。
具体的に、芳香族オレフィン単量体の付加(共)重合体の重合様式は、特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。そして、重合に使用される乳化剤、分散剤、重合開始剤、重合助剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とする。
【0032】
高分子化合物の溶媒中の濃度は、固形分濃度として、生産性向上の観点から、0.1wt%以上であることが好ましく、0.5wt%以上であることがより好ましく、1wt%以上であることが更に好ましく、粘度の抑制の観点から、10wt%以下であることが好ましく、5wt%以下であることがより好ましく、3wt%以下であることが更に好ましい。
【0033】
<溶媒>
溶媒としては、原料及び製造物の溶解性により適宜選択することができ、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素系炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類などを用いることができる。また、原料(高分子化合物)または製造物(含アミン化合物)が溶媒に溶解した溶液を、便宜上「反応液」と包括的に呼ぶ。
【0034】
<水素ファインバブル>
「ファインバブル」とは、直径100μm以下の気泡をいう。ファインバブルの形成は、単位体積の液体中に含まれる気泡数を指標として定義することもできる。例えば、液体1mL当たりの気泡数が1.0×107個以上であれば、反応に供されるに有利なファインバブルが形成されていると見なすことができる。液体1mLの当たりの気泡数は、1.0×107個以上であればよく、好ましくは2.0×107個以上、より好ましくは3.0×107個以上であればよい。気泡数は、例えば、カンタムデザイン社製ナノサイトを用いて測定することができる。
【0035】
水素ガスをファインバブルの形態にすることは、直径が100μmより大きい気泡(非ファインバブル)の形態にすることに比べて以下の点で有利である。ファインバブルは、非ファインバブルに比して同体積の水素ガスの気液界面の表面積が大きいため、気液接触の面積が増大する。また、非ファインバブルは、液体中で上昇して液体外に放出したり、容器等の壁面に付着する等により、液体から分離しやすい挙動を示すのに対して、ファインバブルは、Stokesの式で説明されるように液体中での上昇速度が極めて遅く、液体中で長時間滞留する挙動を示すため、気液接触の時間が増大する。これらの効果により、水素ガスの反応への消費率が増大するため、反応効率が向上し、未反応水素ガスの発生による圧力増大が抑制される。さらに、ファインバブルは自己圧潰してエネルギーを放出するため、反応を局所的に促進するエネルギーが得られると言われている。さらにまた、水素ガスをファインバブルの形態にすることにより、反応系に高圧力を付与する必要がなく、また気泡の放出による反応系の圧力上昇も抑制されることから、高圧力による反応装置の劣化、高圧力に起因する剪断力による高分子化合物の分解も抑制することができる。
【0036】
<水素ファインバブルの供給>
水素ファインバブルは、連続流動型ファインバブル発生装置を用いて発生させることができる。連続流動型ファインバブル発生装置とは、加圧減圧発生法/気液二相流剪断法を利用して、反応液と水素ガスを連続的に流入させて、水素ファインバブルを含有する反応液を連続的に排出させる装置である。連続流動型ファインバブル発生装置は、外部からの機械的動力を用いずに、流体の流速を利用した剪断力によりファインバブルを発生させる装置であることが好ましい。連続流動型ファインバブル発生装置としては、例えば、マイクロミキサーが挙げられる。
マイクロミキサーは、液体と気体が均等に混合できるように、2流路以上が均等に衝突できる形状を有するものが好ましい。
反応液のマイクロミキサーへの流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1.0mL/min以上であってもよく、例えば20mL/min以下、好ましくは15mL/min以下、より好ましくは10mL/min以下であってもよい。
水素ガスのマイクロミキサーへの流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.2mL/min以上、より好ましくは0.5mL/min以上であってもよく、例えば10mL/min以下、好ましくは5mL/min以下、より好ましくは3mL/min以下であってもよい。
反応液流量に対する水素ガス流量の体積比は、例えば0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であってもよく、例えば以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であってもよい。
ファインバブル発生圧は、例えば0.1MPa以上、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上であってもよく、例えばMPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは3MPa以下であってもよい。
マイクロミキサーを用いたファインバブル生成は、例えば、渦巻きポンプ型気泡発生装置(特開2006-159187号公報)を用いた気泡生成に比して、高圧力等の過酷な条件を要しない点、循環型反応系への適用性が高い点等で有利である。また、循環型反応系は、一度の水素供給量に限界があるバッチ式反応系に比して多量の水素を逐次供給することが可能である点、水素化率をモニタリングしながらの操作が可能である点等の利点を有する。
【0037】
<水素化反応>
水素化反応は、水素ファインバブルを含有する反応液を水素化反応に適した条件下におくことにより行われる。好ましくは、水素化反応は、水素ファインバブルを含有する反応液を、水素化反応に適した条件下にある水素化反応容器に移送することにより行われる。水素化反応とは、原料である不飽和結合を有する高分子化合物中の不飽和結合(例、炭素-炭素二重結合)を水素化(水添)して、製造物である高分子化合物水素化物に変換する反応である。水素化反応は、水素化触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0038】
<水素化触媒>
水素化触媒は、均一系触媒、不均一系触媒等、特に限定されることはなく、不飽和結合を有する高分子化合物の水素化反応に用いられる既知のものを使用することができる。水素化触媒は、固体触媒が好ましい。
【0039】
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn-ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec-ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウム等の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ルテニウムカルベン錯体触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);特開平7-2929号公報、特開平7-149823号公報、特開平11-158256号公報、特開平11-193323号公報等に記載されているルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などが挙げられる。
不均一系触媒としては、活性成分のみを含む触媒、および、活性成分と該活性成分を担持させる担体とを含む触媒のいずれも用いることができる。
活性成分としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属が挙げられる。
担体としては、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどが挙げられる。
活性成分のみを含む触媒の具体例としては、ラネーニッケル、ラネーパラジウム、ラネー白金等のラネー触媒などが挙げられる。
活性成分と担体とを含む触媒の具体例としては、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどが挙げられる。
これらの水素化触媒は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
水素化触媒としては、ラネーニッケルおよび金属ニッケル担持触媒(例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ)等の金属ニッケルを含む触媒を用いることが好ましく、金属ニッケル担持触媒を用いることがより好ましい。金属ニッケルを含む触媒を水素化触媒として使用すれば、不飽和結合を有する重合体を更に効率良く水素化することができる。
【0041】
バッチ式での反応において、水素化反応工程における水素化触媒の使用量は、原料高分子化合物100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
なお、触媒の使用量は、担体も含めた触媒の乾燥状態での使用量を指す。
【0042】
水素化触媒の装填量(体積)は、水素化反応容器の容積に対して、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることが更に好ましく、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
【0043】
<水素化反応の条件>
水素化反応は、水素ファインバブルを含有する反応液を所定の条件下におくこと、好ましくは、水素ファインバブルを含有する反応液を水素化反応容器に移送することにより行われる。水素化反応容器は、連続式水素化反応容器及びバッチ式水素化反応容器のいずれであってもよいが、効率性の観点から連続式反応器が好ましい。連続式反応器としては、水素化触媒が固定された管(触媒固定管)が挙げられる。
【0044】
水素化反応を行う温度(すなわち、水素化反応容器の温度)は、水素化反応に適した温度、溶媒の融点及び沸点等を考慮して適宜設定することができる。水素化反応を行う温度は、溶媒の融点以上が好ましい。水素化反応を行う温度は、例えば10℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であってもよい。水素化反応を行う温度は、溶媒の沸点以下が好ましい。水素化反応を行う温度は、例えば150℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下であってもよい。
【0045】
水素化反応を行う時間(連続式反応器の場合は、反応液が反応器を通過する時間)は、例えば0.1h以上、好ましくは1h以上、より好ましくは3h以上であってもよく、例えば24h以下、好ましくは12h以下、より好ましくはh以下であってもよい。
【0046】
水素化反応容器として連続式反応器を用いる場合、水素ファインバブルを含有する反応液の流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1mL/min以上であってもよく、例えば20mL/min以下、好ましくは18mL/min以下、より好ましくは15mL/min以下であってもよい。
【0047】
水素化反応容器には、水素化触媒が装填されていてもよい。水素化触媒は、水素化反応容器に充填されていてもよく、水素化反応容器内に固定されていてもよい。水素化反応容器は、水素化触媒の流出を防止するためにフィルターを有していてもよい。
【0048】
触媒の体積当たりの水素ファインバブルを含有する反応液の時間あたりの流量比(液空間線速度hr-1)は、例えば0.1hr-1以上、好ましくは0.2hr-1以上、より好ましくは0.5hr-1以上であってもよく、例えば300hr-1以下、好ましくは200hr-1以下、より好ましくは150hr-1であってもよい。
【0049】
<水素化反応系>
本発明の製造方法は、例えば、循環型反応系、バッチ型反応系、及びセミバッチ型反応系等のいずれの反応系を用いて行ってもよい。ファインバブルを用いた水素化は、水素化効率が高いために望ましくない水素化が過度に進行してしまう場合がある。望ましくない水素化を抑制するためには、水素化率を監視して水素化率から水素化を制御することができることが好ましい。この観点から、反応系は、循環型反応系が好ましい。循環型反応系としては、例えば、反応液が流れる循環流路上に、ファインバブル発生装置、及び水素化反応容器(例、触媒固定管)が配置された反応系が挙げられる。循環型反応系の具体例としては、例えば、
図1の模式図に示す構成を有する反応系が挙げられる。
図1の模式図では、容器1に保持された反応液が、反応液排出部2から排出され、ポンプ3、水素ガス合流部4、加熱オーブン5、ファインバブル発生装置6(例、マイクロミキサー)、反応液背圧調整器7、水素化反応容器8(例、触媒固定管)の順に循環し、反応液回収部9にて容器1に回収される。
図1の模式図ではさらに、水素ガス供給部10から供給された水素ガスが、水素ガス流量調整器11を経て、水素ガス合流部4にて反応液と合流する。循環型反応系は、任意の箇所に流量計、圧力計、水素化率監視手段をさらに含んでもよい。以下、
図1に示される循環型反応系の各構成要素について説明する。
【0050】
容器1は、反応液を保持するための容器である。容器1の形状としては、閉鎖系容器及び開放系容器が挙げられる。好ましくは、不純物混入防止及び反応制御の観点から、容器1は、閉鎖系容器であってもよい。容器1の材質としては、例えば、金属、ガラス、樹脂が挙げられる。容器1が閉鎖系容器である場合、耐圧性の観点から、容器1は、金属製が好ましい。容器1が閉鎖系容器である場合、反応液は、容器1に満充填されていてもよく、空隙を有して充填されていてもよいが、未反応の水素ガスの蓄積の観点から、空隙を有して充填されることが好ましい。意図せぬ反応を抑制する観点から、容器1は、充分に乾燥していることが好ましい。また、同観点から、容器1は、不活性ガス(例、窒素;ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス)で置換されていることが好ましい。
【0051】
反応液排出部2は、反応液を容器1から排出するための部分である。反応液排出部2は、固体不純物の混入を抑制するために、フィルターを含んでいてもよい。
【0052】
ポンプ3は、反応液の循環流れを発生させるための装置である。機械的刺激による反応液からの水素ファインバブルの損失を抑制する観点から、ポンプ3は、水素ガス合流部4よりも上流側に接続されていることが好ましい。
【0053】
反応液背圧調整器7は、反応液の背圧を一定化させる装置である。反応液背圧調整器7は、反応液の背圧を一定化させることにより、反応液の流量を一定化させ、反応条件を一定に保持する役割を担う。反応液背圧調整器7としては、例えば、背圧弁、圧力調節弁等の一般的な液体用背圧調整器を用いることができる。
【0054】
反応液回収部9は、循環した反応液を容器1に回収するための部分である。
【0055】
水素ガス供給部10は、循環型水素化反応装置への水素ガスの供給源である。水素ガス供給部10としては、例えば、水素ガスボンベが挙げられる。
【0056】
水素ガス流量調整器11は、水素ガス供給部10から供給される水素ガスの背圧を一定化させる装置である。水素ガス流量調整器11は、水素ガスの背圧を一定化させることにより、水素ガスの供給量を一定化させ、反応条件を一定に保持する役割を担う。水素ガス流量調整器11としては、例えば、背圧弁、圧力調節弁等の一般的なガス用背圧調整器を用いることができる。
【0057】
反応液の循環流量は、ポンプ3及び反応液背圧調整器7によって調節することができる。反応液の循環流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1.0mL/min以上であってもよく、例えば20mL/min以下、好ましくは18mL/min以下、より好ましくは15mL/min以下であってもよい。
【0058】
反応液の循環回数は、例えば1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上であってもよく、例えば10000回以下、好ましくは5000回以下、より好ましくは3000回以下であってもよい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量(重量)基準である。
【0060】
(不飽和結合を有する高分子化合物の合成例)
水素化反応に用いられる不飽和結合を有する高分子化合物として、シクロオレフィンポリマー(COP)の一種であるジシクロペンタジエン開環重合体を用いた。ジシクロペンタジエン開環重合体を、下記の手順により合成した。以下、水素化反応前のジシクロペンタジエン開環重合体及びジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(高分子化合物水素化物)を一括して「COP」と呼ぶことがある。
【0061】
充分に乾燥させ窒素置換した金属製耐圧反応容器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌し、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を反応容器に加えて開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら、4時間反応させ、ジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。
【0062】
得られた重合体溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌し重合反応を停止させた。その後、ハイドロタルサイト様化合物を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤としてラヂオライトを0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルターを用いて、吸着剤と溶液を濾別した。
【0063】
(水素化による高分子化合物水素化物の生成)
(実施例1)
合成例で得られた溶液を、シクロヘキサンにて1.0wt%のジシクロペンタジエン開環重合体溶液となるように希釈し、液流量30mL/minを流し、そこに水素供給量1.0mL/minで導入し、マイクロミキサーを取り付け、発生圧4.0MPaとしてファインバブルを発生・混合させ、Pd/Al
2O
3 0.5wt%ペレット(4.6g、0.22mmol)を充填した触媒管へ送液した。反応装置系は、
図1に示すように構成された循環型反応装置系であった。ジシクロペンタジエン開環重合体の調製に用いた金属製耐圧反応容器を、そのまま反応液保持容器1として用いた。適宜時間毎に、COP溶液を採取し、
1H-NMRを測定した。水添率は、
1H-NMRから、水素化前及び水素化後のCOPのビニル基とその他のピークの積分比率を反応前と後でそれぞれ求め、反応後の比率を反応前の比率で除して求めた。また、ファインバブルは5.8×10
7個であった。
【0064】
(比較例1)
実施例1の試験機から、FB発生機を外し、水素を直接反応液保持容器にバブリングした以外は、実施例1と同様に実験を行った。バブリング型水素化反応装置の模式図を
図2に示す。ファインバブルは0.2×10
7個であった。
【0065】
(実施例2)
Pd/Al2O3 0.5wt%ペレットに代えて粉末のPd/Cを200mg触媒管に充填した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0066】
(比較例2)
実施例2の試験機から、ミキサー、圧力調節弁を外し、触媒管に粉末のPd/Cを200mg充填し、水素を直接反応液保持容器にバブリングした以外は、実施例2と同様に実験を行った。バブリング方法は、比較例1と同じである。ファインバブルは0.2×107個であった。
【0067】
(結果)
実施例及び比較例の結果を表1に示す。これらの結果から、本発明の製造方法を用いることにより、高分子化合物水素化物を高反応収率で製造できることが示された。
【0068】
【0069】
表1中の略称は以下を意味する。
COP:シクロオレフィンポリマー(ジシクロペンタジエン開環重合体)
F.B.:ファインバブル循環法
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、不飽和結合を有する高分子化合物を温和な条件で効率的に水素化することが可能な、高分子化合物水素化物の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 容器
2 反応液排出部
3 ポンプ
4 水素ガス合流部
5 加熱オーブン
6 ファインバブル発生装置(マイクロミキサー)
7 反応液背圧調整器
8 水素化反応容器(触媒固定管)
9 反応液回収部
10 水素ガス供給部
11 水素ガス流量調整器