(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】クレープ用穀粉組成物、クレープ用生地及びクレープ
(51)【国際特許分類】
A21D 2/36 20060101AFI20240418BHJP
A21D 8/00 20060101ALI20240418BHJP
A23G 3/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D8/00
A23G3/00
(21)【出願番号】P 2020034987
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】杉森 麻衣
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062858(JP,A)
【文献】特開2019-097500(JP,A)
【文献】特開平09-149756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D、A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉原料の合計質量に対して、3~38質量%のコーンフラワー、0.5~18質量%のデュラムセモリナ又はデュラムフラワー及び50質量%以上の小麦粉を含むクレープ用穀粉組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の穀粉組成物を含むクレープ用生地。
【請求項3】
請求項2に記載のクレープ用生地を焼成してなるクレープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレープ用穀粉組成物、クレープ用生地及びクレープに関する。
【背景技術】
【0002】
クレープ生地は、従来薄力粉を主体とし、砂糖、卵、牛乳もしくは水で生地を調製する。このような生地を使用し、クレープを焼成すると、食感としてはしっとりもっちりとした製品になりやすい。近年の食感への多様性から、さっくりとして歯切れの良い製品が求められているが、小麦粉のみでは満足のいく食感にはなり難かった。
小麦粉を含む生地を焼成して得る食品にについて、さっくりとした食感を付与する方法として、特許文献1にはデュラムフラワー、熱処理小麦粉を併用し、サクみがあって軽く、歯切れの良い、食感に優れたピザを得る製造方法が開示されている。また特許文献2には小麦粉とコーンフラワーを用いた流動性を有する澱粉質種生地を焼成して柔軟なシートを得た後、乾燥、固化することによりサクサクした食感の焼成シート菓子を得る製造方法が開示されている。
しかしながら特許文献1における方法は主に強力粉を使用しイースト発酵する生地を用いたピザに関するものであり、クレープ生地において薄力粉の代わりにデュラムセモリナ又はデュラムフラワーを使用すると生地の繋がりが悪くなり、製品を焼成機から取り上げる際に破れやすいという問題があった。また特許文献2の方法により得られる焼成シート菓子は、クレープ状の柔軟なシートを乾燥固化した結果サクサクとした食感を得るものであり、さらに特許文献2の方法におけるコーンフラワーの使用量ではコーンの風味が強く、従来小麦粉を主体とするクレープの風味に影響があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-243847
【文献】特開昭59-109127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さっくりと歯切れ良く、かつ作業性が良いクレープの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、クレープの製造において穀粉原料の合計質量に対して、3~38質量%のコーンフラワー、0.5~18質量%のデュラムセモリナ又はデュラムフラワー及び50質量%以上の小麦粉を使用することでさっくりと歯切れ良く、かつ作業性が良いクレープを提供できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]穀粉原料の合計質量に対して、3~38質量%のコーンフラワー、0.5~18質量%のデュラムセモリナ又はデュラムフラワー及び50質量%以上の小麦粉を含むクレープ用穀粉組成物。
[2]前記[1]に記載の穀粉組成物を含むクレープ用生地。
[3]前記[2]に記載のクレープ類用生地を焼成してなるクレープ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、さっくりと歯切れ良く、かつ作業性が良いクレープを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明においてクレープは、穀粉として小麦粉を主に含み、任意に油脂、砂糖、鶏卵、牛乳など含む液状の生地を、薄く伸ばして焼成して得られるシート状の菓子をいう。一般的には、クレープ生地は穀粉として小麦粉を50質量%以上含み、30dPa・s以下の粘度を有し、焼き上がったクレープの厚さは5mm未満である。穀粉を使用した生地を焼成して得られる薄型の焼成食品には、トルティーヤ、ガレット、パンケーキなどがあるが、トルティーヤは穀粉としてコーンフラワーを主体として含み、ドウ状の生地を薄く伸ばして焼成するものである点、ガレットは穀粉としてそば粉を主体として含むという点、パンケーキは一般的にクレープより生地の粘度が高く、焼き上がったパンケーキは厚みがあるという点でクレープと相違する。
【0008】
本発明のクレープ用穀粉組成物は穀粉原料の合計質量に対して、3~38質量%のコーンフラワー、0.5~18質量%のデュラムセモリナ又はデュラムフラワー及び50質量%以上の小麦粉を含む。
【0009】
本発明において「コーンフラワー」は、トウモロコシを挽いて作られた穀粉である。
本発明において使用することができるコーンフラワーの灰分含有量、蛋白質含有量、粒度には特に限定はなく、市販のコーンフラワーも使用することができる。
本発明のクレープ用穀粉組成物において、コーンフラワーの配合割合は穀粉原料の合計質量に対して、3~38質量%、好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは20~25質量%である。
コーンフラワーの配合割合が穀粉原料の合計質量に対して、3~38質量%であれば、小麦の風味に影響を与えることなくサクみ、歯切れ向上の効果を得ることができる。
【0010】
本発明において「デュラムセモリナ」はデュラム小麦の製粉工程において得られる比較的粒度の粗い状態の胚乳の粉砕物を指し、一般に目開き約300μmの篩を抜けない程度の粗さのものをいう。
本発明において「デュラムフラワー」はデュラムセモリナよりも粒度が細かくデュラムセモリナとは区別される。CODEX STANDARD(食品の国際規格)のcxs 178-1991によれば、デュラムセモリナとはデュラム小麦を製粉した小麦粉のうち最大79%が目開き315μmの篩を通過するものであり、デュラムフラワーとは80%以上が目開き315μmの篩を通過するものと規定している。
本発明において使用することができるデュラムセモリナ又はデュラムフラワーの灰分含有量、蛋白質含有量、粒度には特に限定はなく、市販のデュラムセモリナも使用することができる。
本発明のクレープ用穀粉組成物において、デュラムセモリナ又はデュラムフラワーの配合割合は穀粉原料の合計質量に対して0.5~18質量%、好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは10~14質量%である。
デュラムセモリナ又はデュラムフラワーの配合割合が穀粉原料の合計質量に対して0.5~18質量%であれば、作業性に生地のつながりが悪い、製品が破れやすくなるなどの悪影響を与えることなくサクみ、歯切れ向上の効果を得ることができる。
【0011】
本発明において「小麦粉」は普通小麦を製粉して得られる穀粉をいう。
本発明において使用することができる小麦粉は特に限定はなく、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉及び全粒粉などを使用することができるが、歯切れのよい食感を得るという観点から薄力粉を使用することが好ましい。
本発明のクレープ用穀粉組成物において、小麦粉の配合割合は穀粉原料の合計質量に対して50質量%以上、好ましくは50~80質量%、さらに好ましくは50~70質量%である。
小麦粉の配合割合が穀粉原料の合計質量に対して50質量%以上であれば、小麦粉の風味に影響を与えることなくサクみ、歯切れ向上の効果を得ることができる。
【0012】
本発明のクレープ用穀粉組成物は、穀粉原料として上記コーンフラワー、デュラムセモリナ又はデュラムフラワー及び小麦粉以外に本発明の効果を損なわない範囲で米粉、大豆粉、大麦粉、ライ麦粉、ソバ粉等を使用することができる。
【0013】
本発明のクレープ用生地は、前記クレープ用穀粉組成物を含む。また本発明のクレープは本発明のクレープ用生地を焼成して成る。
本発明のクレープ用生地及びクレープの製造においては、本発明の穀粉組成物以外に、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分である卵成分;牛乳、粉乳、脱脂粉乳等の乳類;豆乳、ココナッツミルク、アーモンドミルク等の植物性ミルク;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;ベーキングパウダー、重曹、イスパタなどの膨張剤;乳化剤;食塩等の無機塩類;増粘剤;香料;保存料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常クレープの製造に用いる副原料を使用することができる。
【0014】
本発明のクレープ生地は、所定量の小麦粉、コーンフラワー、及びデュラムセモリナ又はデュラムフラワーを含む、前記穀粉組成物を含む以外は常法に従って製造することができる。
例えば穀粉組成物100質量部に対し、全卵40~60質量部、牛乳90~120質量部、砂糖5~15質量部、サラダ油10~17質量部、膨張剤0~1.5質量部を使用し、穀粉組成物以外の原料を混合した後、穀粉組成物を添加し、十分に混合することにより製造することができる。
【0015】
クレープ生地の粘度は25℃で30dPa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは25℃で10~20dPa・sである。
【0016】
クレープの厚さは5mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~2mm、より好ましくは0.5~1mmである。
【0017】
本発明のクレープは、所定量の小麦粉、コーンフラワー、及びデュラムセモリナ又はデュラムフラワーを含む、前記穀粉組成物を含むクレープ用生地を焼成する以外は常法に従って製造することが出来る。例えば得られたクレープ用生地を室温で15~60分寝かした後、クレープ用電熱焼成機に100~120グラムの生地を乗せてトンボで薄く広げ、片面30~60秒、反転後片面5~15秒焼成し、クレープを得る。
【実施例】
【0018】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0019】
製造例1 クレープの製造
穀粉組成物100質量部に対し、全卵50質量部、牛乳90質量部、砂糖10質量部、サラダ油15質量部配合し、以下の通り製造した。
(1)全卵、牛乳、砂糖、サラダ油をホイッパーで混合した。
(2)穀粉組成物を入れ、ホイッパーでよく混合した。
(3)(2)で得たバッターを30分間寝かせた。
(4)クレープ用電熱焼成機に生地を110グラム乗せ、トンボで薄く広げ、40秒間焼成した後反転し、10秒間焼成してクレープを得た。
【0020】
試験例1 クレープの食感、作業性に及ぼす影響
表1、表2、表3及び表4に記載の穀粉原料の配合で、製造例1に従ってクレープを製造した。製造後、熟練パネラー10名により、以下の評価基準表に従って評価し、食感の平均点3点以上且つ作業性が〇を合格とした。
なお、コーンフラワー、デュラムセモリナ、デュラムフラワーを使用せず薄力粉のみで製造したクレープの食感を1点とした(対照例)。
また生地の粘度は、ビスコテスターVF-04F(リオン株式会社製)を用い、No.2のローターを装着し、25℃、62.5rpmで15秒間回転させた後に測定した。結果を表1~4に示す。
またデータは示さないが、焼き上がったクレープの厚みは、おおむね0.5~2mmの範囲であった。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
表1より、穀粉原料の合計100質量部のうち、コーンフラワーを3~38質量部、及びデュラムセモリナを0.5~18質量部含む実施例1~6は、サクみ、作業性において良好であった。
表2より、デュラムセモリナの代わりにデュラムフラワーを使用した場合でも、サクみ、作業性のすべてにおいて良好な結果が得られた。
表3及び表4より、穀粉原料の合計100質量部のうち、コーンフラワー、デュラムセモリナをどちらか一方しか含んでいない比較例1~3、5は、サクみが乏しく不適であった。コーンフラワーを40質量部含む比較例6、7は、サクみがあり歯切れよくよい食感であったが、コーン特有の香りが強く風味がわるくなり好ましくなかった。デュラムセモリナもしくはデュラムフラワーを20質量部以上含む比較例4、8、9は、破れやすく作業性が悪いため不適であった。
【0027】
試験例2 膨張剤の効果
表5記載の穀粉原料の配合で、工程(1)の工程においてさらに膨張剤1質量部を添加した以外は製造例1に従ってクレープを製造した(実施例12)。製造後、熟練パネラー10名により、評価基準表に従って評価し、食感の平均点3点以上且つ作業性が〇を合格とした。
膨張剤を添加した実施例12は、添加しない実施例4に比べてさらに良好な結果が得られた。
【0028】