(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、および半導体封止体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240418BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20240418BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240418BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/28 Z
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
H05K3/00 X
(21)【出願番号】P 2020039757
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】河野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 元帥
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533848(JP,A)
【文献】特開2019-140150(JP,A)
【文献】特開2007-158150(JP,A)
【文献】特開2019-031739(JP,A)
【文献】特開2000-040773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28-23/31
H01L 23/12
H05K 3/46
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面の第1領域に剥離層が形成された基板を用意すること、
前記基板の前記剥離層よりも上側に、配線層を形成すること、
主面の、前記第1領域を含み前記第1領域よりも広い第2領域に、前記配線層の少なくとも一部と接する保護膜を形成すること、
半導体素子を前記配線層に電気的に接続して配置すること、
前記配線層の少なくとも一部、および前記半導体素子を封止部材で封止すること、および、
前記剥離層を境界として前記基板を剥離すること、
前記基板として、前記主面の前記第1領域を含む第3領域に第1金属層が形成されており、前記剥離層は前記第1金属層よりも前記基板に近い側に形成されている基板を用意すること、
を備え
、
前記第1金属層は、前記基板から遠い側に配置され、貴金属を主成分とする第1層と、前記基板に近い側に配置された第2層とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記封止部材による前記封止の後であって前記基板の前記剥離の前に、
前記主面の前記第1領域内であって、前記半導体素子が配置されていない部分の少なくとも一部において、前記封止部材側から、前記剥離層が露出するまで前記封止部材および前記保護膜に切れ込みを形成すること、
をさらに備える半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記配線層を形成した後であって前記半導体素子を前記配線層に配置する前に、
前記主面の前記第1領域以外の部分の少なくとも一部において、前記保護膜および前記基板を切断すること、
をさらに備える半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項
1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3領域は、前記第1領域よりも広い、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項
1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2層の上側に形成した前記配線層の少なくとも一部を覆うレジストを形成すること、
形成した前記レジストをマスクとして前記第1層をエッチングすること、
をさらに備え、
前記第2層は、前記第1層へのエッチング処理に対する耐性を有する金属からなる、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2層の主成分がチタンであり、
前記剥離層を境界として前記基板を剥離した後に、前記第2層を四フッ化炭素を含むガスによるドライエッチングにより除去する、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、 前記基板として、前記主面の前記第1領域を含む第4領域に第2金属層が形成されており、前記剥離層は前記第2金属層よりも前記基板から遠い側に形成されている基板を用意する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板はガラスからなる、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2金属層は、前記基板から遠い側に配置され、銅を主成分とする第3層と、前記基板に接して配置されたニッケルまたはチタンを主成分とする第4層とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項3を直接または間接的に引用する請求項
8または請求項
9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記切断において、前記基板の切断面の前記主面の近傍にベベル部を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項
10までのいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、 前記保護膜として光を透過する保護膜を使用し、
前記配線層の少なくとも一部の形成と同時に位置検出マークを形成し、
前記基板を前記剥離した後に、前記保護膜を透過した光を用いて前記位置検出マークを検出する、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板と、
前記基板の主面の第1領域に形成された剥離層と、
前記主面の前記剥離層よりも上側に形成された配線層と、
前記剥離層と前記配線層との間に形成された第1金属層と、
前記主面の、前記第1領域を含み前記第1領域よりも広い第2領域に、前記配線層の少なくとも一部と接して形成された保護膜と、
前記配線層に電気的に接続して配置された半導体素子と、
前記配線層の少なくとも一部、および前記半導体素子を封止している封止部材と、
を備え
、
前記基板は、前記主面の前記第1領域を含む第3領域に前記第1金属層が形成されており、
前記剥離層は、前記第1金属層よりも前記基板に近い側に形成されており、
前記第1金属層は、前記基板から遠い側に配置され、貴金属を主成分とする第1層と、前記基板に近い側に配置された第2層とを含む、半導体封止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、および半導体封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配線層を形成し、配線層上に半導体チップを配置し、半導体チップと配線層とを封止した後に、基板を分離して半導体装置を製造する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、離型層および金属層が形成されたキャリア基板を用意し、離型層および金属層の上に配線等を形成し、その上に半導体チップを配置して封止材で半導体チップ等を封止し、その後、離型層を境界としてキャリア基板を分離することを開示する。
しかし、製造工程における離型層の保護が十分でないため、製造工程中の衝撃などにより、剥離を行う工程より前の段階で、離型層が破損し、半導体チップや配線がキャリア基板から剥離してしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によると、半導体装置の製造方法は、主面の第1領域に剥離層が形成された基板を用意すること、前記基板の前記剥離層よりも上側に、配線層を形成すること、主面の前記第1領域を含み前記第1領域よりも広い第2領域に、前記配線層の少なくとも一部と接する保護膜を形成すること、半導体素子を前記配線層に電気的に接続して配置すること、前記配線層の少なくとも一部、および前記半導体素子を封止部材で封止すること、および、前記剥離層を境界として前記基板を剥離すること、を備える。
第2の態様によると、半導体封止体は、基板と、前記基板の主面の第1領域に形成された剥離層と、前記主面の前記剥離層よりも上側に形成された配線層と、前記主面の、前記第1領域を含み前記第1領域よりも広い第2領域に、前記配線層の少なくとも一部と接して形成された保護膜と、前記配線層に電気的に接続して配置された半導体素子と、前記配線層の少なくとも一部、および前記半導体素子を封止している封止部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
製造工程中の、配線層および半導体素子の基板からの剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の製造方法において用意する基板を示す図。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明する図。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明する図であり、
図2に続く工程を示す図。
【
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明する図であり、
図3に続く工程を示す図。
【
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明する図であり、
図4に続く工程を示す図。
【
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明する図であり、
図5に続く工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図6を参照して、第1実施形態による半導体装置50の製造方法について説明する。
図1は、第1実施形態の半導体装置の製造方法において用意するべき、各種の膜が形成された膜付基板1を示す図である。
図2から
図6は、膜付基板1上に配線19、23等を形成し、半導体素子27を配置し、封止部材29により封止する等の製造工程を説明する図である。
【0009】
(工程1)
工程1においては、
図1に示した膜付基板1を用意する。
図1(a)は膜付基板1の上面図を示し、
図1(b)は、
図1(a)中のAA線における膜付基板1の断面図を示す。
膜付基板1は、一例としてガラスから成る基板10の一方の面(10m)の所定の領域に、所定の金属層(11~14)および剥離層15が形成されたものである。
基板10の面のうち、金属層(11~14)および剥離層15が形成されている面を、以下では「主面」10mと呼ぶ。
また、基板10の主面10mを基準として基板10から離れる側を、以下では「上側」と呼ぶ。
【0010】
金属層11~14は、基板10の主面10mから上側に最も離れた最上層から順に、第1層11、第2層12、第3層13、第4層14を含む多層構造となっている。以下では、第1層11と第2層12とを合わせて「第1金属層16」とも呼び、第3層13と第4層14とを合わせて「第2金属層17」とも呼ぶ。
【0011】
第1金属層16と第2金属層17との間の一部、すなわち、第2層12と第3層13との間の一部には、剥離層15が形成されている。剥離層15は、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)または二酸化珪素(SiO2)を主成分とする層である。
なお、第1金属層16により遮蔽されるため、本来ならば剥離層15は上面図には現れないが、
図1(a)においては理解を容易にするために剥離層15を示している。
また、
図1(b)および以降の各図においては、第1層11から第4層14、および剥離層15を明確に示すために、各層の厚さを誇張して描いている。また、基板10の厚さ方向も、厚さ方向と直交する大きさ方向に比べて誇張して描いている。
【0012】
第1金属層16を構成する第1層11は、一例として金、白金等の貴金属を主成分とする層であり、第2層12は、一例としてチタンを主成分とする層である。
第2金属層17を構成する第3層13は、一例として銅または銅合金を主成分とする層であり、第4層14は、一例としてニッケルやチタンなどのガラスとの密着性が良好な金属を主成分とする層である。
第1層11から第4層14までは、基板10の主面10mのみでなく、
図1(b)に示したように基板10の側面にも形成されていても良い。
【0013】
図1(a)および
図1(b)に示したように、剥離層15は、基板10の主面10mの全面よりも狭い範囲内の、一例として、2行2列の計4個の離散的な複数の領域に形成されている。剥離層15は、他の任意の数の複数の領域に離散的に形成されていても良い。
また、剥離層15は、基板10の主面10mの全面よりも狭い範囲内の、連続的な1つの領域に形成されていても良い。
以下では、主面10mにおいて剥離層15が形成されている領域を「第1領域」と呼ぶ。上述のように、剥離層15が離散的な複数の領域に形成されている場合には、第1領域も離散的な複数の領域となる。
【0014】
第1層11および第2層12を含む第1金属層16は、主面10mの剥離層15が形成されている第1領域を含む領域に形成されている。以下では、主面10mにおいて第1金属層16が形成されている領域を「第3領域」と呼ぶ。
図1(a)および
図1(b)に示した例では、第1金属層16が形成されている第3領域は、基板10の主面10mの全面である。ただし、第3領域は、主面10mの全面より狭くても良く、剥離層15が形成されている第1領域を含んでいれば良い。
図1(a)および
図1(b)に示した例のように、第1領域が離散的に複数配置されている場合には、第3領域も、各第1領域を含む離散的な複数の領域であっても良い。
【0015】
第3層13および第4層14を含む第2金属層17は、主面10mの剥離層15が形成されている第1領域を含む領域に形成されている。以下では、主面10mにおいて第2金属層17が形成されている領域を「第4領域」と呼ぶ。
図1(a)に示した例では、第2金属層17が形成されている第4領域は、基板10の主面10mの全面である。ただし、第4領域は、主面10mの全面より狭くても良く、剥離層15が形成されている第1領域を含んでいれば良い。
図1(a)および
図1(b)に示した例のように、第1領域が離散的に複数配置されている場合には、第4領域も、各第1領域を含む離散的な複数の領域であっても良い。
【0016】
一例として、基板10の大きさは300mm角であり、厚さは1mm程度である。ただし、基板10の大きさ、および厚さは、任意の値であって良い。
なお、
図1(a)に符号FC1~FC6で示した破線は、後述する工程8において基板10を切断する際の切断線であり、詳細については工程8を説明する際に説明する。
【0017】
上述した膜付基板1は、ガラス等の基板10の主面10mに、スパッタ等の成膜技術を使用して、第4層14、第3層13、剥離層15、第2層12、および第1層11を順次形成することにより、製造できる。
また、上記の条件に適した、剥離層15等の形成された膜付基板1が販売されていれば、それを購入して、すなわち用意して、使用してもよい。
【0018】
(工程2)
図2(a)に示したように、用意した膜付基板1の剥離層15よりも上側の第1層11の上に、配線層の一部を構成する下層配線19を形成する。なお、
図2(a)においては、
図1(b)に示した膜付基板1の断面図のうちの概ね右半分のみを示しているが、膜付基板1の左半分に対しても、同時に以下と同様の工程を行う。
【0019】
下層配線19の形成に際しては、まず第1層11上にレジスト18を形成し、このレジスト18に下層配線19の形状に対応する所望の形状の開口を形成し、開口を介して第1層11をレジスト18から露出させる。そして、膜付基板1をめっき液に浸し、銅めっき、またはニッケルめっき等の電解めっきを行うことで、第1層11が露出する部分(すなわちレジスト18で覆われていない部分)に、下層配線19を形成する。
図2(a)は、この状態の膜付基板1を示している。下層配線19の厚さは、一例として1~20μm程度である。
【0020】
その後、レジスト18を除去する。
なお、上記で形成した銅またはニッケルを含む下層配線19と、後述する保護膜21との間の密着性を向上させるために、下層配線19の表面を粗面化処理しても良く、下層配線19の表面にシランカップリング材を塗布しても良い。
【0021】
(工程3)
図2(b)に示したように、膜付基板1上に形成した下層配線19の上面および側面を覆うように、レジスト20を形成する。このために、まず下層配線19の形成された膜付基板1上にレジスト20を塗布またはラミネートし、所定のパターンを露光し現像することにより、レジスト20を下層配線19の上面および側面のみを覆うように残存させる。
【0022】
(工程4)
図2(c)に示したように、下層配線19の上面および側面を覆って形成されたレジスト20をエッチングマスクとして、第1層11をエッチングしてパターンニングする。以下では、パターンニングされて残存した部分の第1層11を、接触部11aと呼ぶ。
第1層11が金を主成分とする場合には、エッチング液としてヨウ素系のエッチング液を使用する。なお、第2層12がチタンを主成分とする場合には、第2層12はヨウ素系のエッチング液によりエッチングされないため、エッチング処理後も第2層12は残存する。
その後、レジスト20を除去する。
【0023】
上述のエッチング液、第1層11の主成分、および第2層12の主成分は例示であって、第1層11がエッチングされ、第2層12がエッチングされないような他の組み合わせを用いても良い。
なお、後述するように、第1層11のうちの残存した部分である接触部11aは、完成した半導体装置50の電気接点として機能する部材である。従って、第1層11として金や白金等の貴金属を使用すると、腐食性が高く、耐久性の高い半導体装置50を実現することができる。
【0024】
(工程5)
図3(a)に示したように、主面10mの上方の、剥離層15の形成されている第1領域を含み、第1領域よりも広い領域に、下層配線19および第2層12を覆う保護膜21を形成する。そして、保護膜21の下層配線19の少なくとも一部に対応する位置に開口21hを形成する。
【0025】
以下では、主面10mにおいて、保護膜21が形成されている領域(開口21hが形成されている部分を含む)を「第2領域」と呼ぶ。
保護膜21を形成する第2領域は、上述の第1金属層16が形成されている第3領域、または第2金属層17が形成されている第4領域に含まれるものであっても良い。逆に、第3領域、または第4領域は、第2領域に含まれるものであっても良い。
ただし、上述したとおり、第2領域は、剥離層15が形成されている第1領域を含み、第1領域よりも広い領域である。
【0026】
保護膜21は、例えばSiフィラーが80%以上含有されたエポキシ樹脂シート、プリグレフ、またはABF(味の素ファインテクノ社製)を、真空ラミネートして形成する。開口21hの形成は、保護膜21の所定位置にレーザー光を照射して保護膜21を局所的に蒸発させることにより行う。これにより、下層配線19の少なくとも一部は、開口21hを介して露出する。
【0027】
図3(a)に示した例では、保護膜21が形成されている第2領域は、基板10の主面10mの概ね全面である。ただし、第2領域は、主面10mの全面より狭くても良く、剥離層15が形成されている第1領域を含み、第1領域よりも広ければ良い。また、
図1(a)および
図1(b)に示した例のように、第1領域が離散的に複数配置されている場合には、保護膜21を形成する第2領域も、各第1領域を含む離散的な複数の領域であっても良い。
【0028】
(工程6)
工程5により保護膜21および開口21hを形成した後に、保護膜21の上面、開口21hの内側面、および下層配線19の露出部に、無電解めっき、またはスパッタにより、銅、または銅チタン合金等の導電体を不図示のシード層として形成する。
【0029】
その後、
図3(b)に示したように、保護膜21の上に形成された上記の不図示のシード層の上に、レジストパターン22を形成する。レジストパターン22の形成は、初めに保護膜21の上の不図示のシード層の上にレジストを塗布またはラミネートし、このレジストに対して露光および現像等を行うことで開口22h、および開口22aを形成して行う。
開口22hは、主に保護膜21に形成されている開口21hの上方に形成する。一方、開口22aは開口21hとは無関係の位置に形成しても良い。
【0030】
(工程7)
図3(c)に示したように、
図3(b)に示した開口21h、開口22h、および開口22aの内部に、上層配線23を形成する。上層配線23の形成は、
図3(b)に示した状態の基板10等をめっき液に浸し、上述の不図示のシード層を電極として、銅めっき、またはニッケルめっき等の電解めっきを行うことにより形成する。
【0031】
なお、上層配線23のうち、保護膜21に形成されている開口21hの内部に充填された銅またはニッケルを主成分とする金属は、完成した半導体装置50の中で、いわゆるビア層として機能する。
また、レジストパターン22の開口22aの内部に充填された金属は、後述するように位置検出マーク24として機能する。
【0032】
以下では、上層配線23および下層配線19を合わせて、または個々に、配線層とも呼ぶ。保護膜21は、配線層の少なくとも一部と接している。
その後、レジストパターン22を除去し、さらに保護膜21上の上層配線23が形成されなかった部分に形成されている不図示のシード層を除去する。
【0033】
(工程8)
図4(a)および
図4(b)に示したように、保護膜21および配線層(19、23)等が形成された基板10を、
図1(a)に示した切断線FC1~FC6に沿って切断する。
図4(a)は、保護膜21を切断し、かつ基板10に切れ込みを入れた状態を示しており、
図4(b)は、保護膜21および基板10を完全に切断した状態を示している。
【0034】
基板10の切断に際し、一例として、
図4(a)に示したように、まず、保護膜21が形成されている主面10mの側から、切断線FC1~FC6に沿ってダイシングソーにより溝25を形成することで、保護膜21を切断し、基板10に切れ込みを形成する。このとき、一例として、ダイシングブレードの厚さの中心における切削部(歯)が、厚さの両端における切削部よりも突出しているダイシングソーを使用する。これにより、
図4(a)に示したように、基板10に形成された溝25の下端部25aの断面形状を略V字型とすることができる。
【0035】
続いて、上述の溝25の形成で使用したダイシングソーよりもダイシングブレードの厚さが薄いダイシングソーを用いて、切断線FC1~FC6に沿って基板10を切断する。基板10の主面10mの近傍に形成されていた略V字型の下端部25aの一部は、
図4(b)に示した基板10の切断後には、ベベル部26となる。基板10の主面10mの側の端部の近傍にベベル部26を設けることにより、基板10の端部の割れ、または欠けを防止することができる。
【0036】
図4(a)、
図4(b)および
図1(a)に示したように、基板10を切断する切断線FC1~FC6は、いずれも、剥離層15が形成されている第1領域上を通らない。従って、工程8において基板10を切断しても、切断された基板10の切断面に剥離層15が露出することはなく、切断時の負荷が剥離層に影響を与えることもない。よって、基板10の切断後も、剥離層15は保護膜21等により保護されている。
【0037】
工程8における基板10の切断により、基板10の大きさを小さくすることができ、工程9以降の工程については、より小型の製造装置を用いても、半導体装置の製造を行うことができる。また、基板10の大きさを小さくすることにより、後述する工程11における基板10の剥離が容易になる。
【0038】
(工程9)
図4(c)に示したように、半導体集積回路やLED等の半導体素子27を、その電極端子28を基板10上に形成した配線層(19、23)の上層配線23に、一例としてC4工法(Controlled Collapse Chip Connection)により電気的に接続させて配置する。電極端子28の上層配線23への接続は、はんだ付けにより行っても良い。
【0039】
その後、配線層(19、23)の少なくとも一部、および半導体素子27を、トランファーモールド法またはコンプレッションモールド法のような封止方法により、封止部材29で封止する。半導体素子27がLEDである場合には、封止部材29として透光性を有するものを使用する。
【0040】
以下では、
図4(c)に示した状態のように、基板10上に、配線層(19、23)と、半導体素子27と、封止部材29とが形成されたものを「半導体封止体」と呼ぶ。
図4(c)に示した半導体封止体40は、上述のとおり、基板10の主面10mの第1領域に形成された剥離層15と、剥離層15よりも上側に形成された配線層(19、23)と、第1領域を含み第1領域よりも広い第2領域に配線層(19、23)の少なくとも一部と接して形成された保護膜21と、を有している。
【0041】
(工程10)
図5(a)および
図5(b)に示したように、
図4(c)に示した半導体封止体40に対して、切断線HC1~HC6に沿って、封止部材29および保護膜21に切れ込み30を形成する。
図5(a)は、
図4(c)に示した半導体封止体40の上面図を示し、
図5(b)は、
図5(a)におけるB-B線における断面図である。ただし、
図5(b)は、半導体封止体40に切れ込み30を形成した、半導体封止体41を示している。
【0042】
図5(a)および
図5(b)に示したように、切断線HC1~HC6は、主面10m内の剥離層15が形成されている第1領域の内部であって、半導体素子27が配置されていない部分を通る。従って、切断線HC1~HC6の位置に、封止部材29の側からダイシングソーにより切れ込み30を形成することにより、剥離層15は切れ込み30の内部に露出する。
【0043】
剥離層15を、切れ込み30の底面(最も基板10に近い側の面)に露出させても良く、切れ込み30の側面に露出させても良い。
図5(b)に示したように、切れ込み30の最深部が基板10の内部に届いていても良い。
なお、
図5(a)に示されている切断線DC1~DC4は、後述する工程13において、それぞれの半導体装置50を分離する際に使用する切断線である。
【0044】
(工程11)
図6(a)に示したように、工程10にて切れ込み30が形成された半導体封止体41を、封止部材29を真空チャックテーブル等の固定台31に向けて固定する。そして、基板10を剥離層15を境界として機械的に剥離する。機械的な剥離に際しては、半導体封止体41の側面の第2層12と第3層13との境界の近傍にニードルなどを押し込むことで剥離開始点を形成し、その後、基板10を機械的に引き剥がして剥離する。
【0045】
工程10にて切れ込み30が形成されているため、基板10を高い歩留まりで確実に剥離することができる。
なお、剥離開始点の形成後に、剥離開始点に水蒸気、アルコール蒸気、ドライアイスなどを吹き付けることにより剥離層15を化学的に劣化させ、機械的な剥離を促進しても良い。
図6(b)は、基板10が剥離された状態を示している。
【0046】
(工程12)
図6(b)に示した状態では、基板10および剥離層15は除去されているが、保護膜21および接触部11aに接して、表面に第2層12が残存している。そこで、工程12では、この第2層12を除去する。第2層12が上述のようにチタンを主成分とする層である場合には、一例として、四フッ化炭素(CF4)を含むガスによるドライエッチングにより除去する。四フッ化炭素ガスによるドライエッチングを用いると、第2層12の下に形成されている保護膜21、封止部材29への影響が小さいという効果がある。
なお、過酸化水素水、水酸化カリウム、および水を含む混合液を用いたウェットエッチングによりチタンを含む第2層12を除去しても良い。
【0047】
第2層12が他の金属を主成分とする層である場合には、その金属に応じた適当なエッチングを行って、第2層12を除去する。
図6(c)は、固定台31に固定され、第2層12が除去された状態の中間生成物(半導体素子27、保護膜21、封止部材29等)を示している。
【0048】
(工程13)
図6(c)および
図5(a)に示した切断線DC1~DC4に沿って、中間生成物(半導体素子27、保護膜21、封止部材29等)を構成する保護膜21および封止部材29を切断する。これにより、
図7に示すように、中間生成物は半導体装置50にそれぞれ分離される。
【0049】
工程13における切断に際しては、切断装置が備える位置検出機構により、それぞれの半導体装置50の配線層(上層配線23)の位置情報を示すマークとして、保護膜21を透過する光を用いて上述の位置検出マーク24を検出しても良い。上述のとおり、位置検出マーク24は、上層配線23の形成と同一の工程で形成されているので、上層配線23)の位置を正確に反映している。よって、位置検出マーク24の位置を検出することにより、配線層(上層配線23)の位置を正確に把握した上で、それぞれの半導体装置50を分離することができる。この場合には、保護膜21として透光性の膜を使用する。
【0050】
半導体装置50は、上述のように、半導体集積回路やLED等の半導体素子27と、配線層(19、23)を含んでいる。そして配線層(19、23)の少なくとも一部は保護膜21に接して、保護膜21により封止され、配線層(19、23)の少なくとも一部と半導体素子27は、封止部材29により封止されている。また、配線層のうちの下層配線19の先端部には、一例として金等の貴金属を主成分とする接触部11aが形成されている。一例として、半導体装置50は、接触部11aを介して回路基板等に接続される。
【0051】
第1実施形態の製造方法においては、上述のとおり、保護膜21は、第1領域を含み第1領域よりも広い第2領域に、形成されている。従って、
図4(c)、
図5(b)に示したように、剥離層15は、工程10において切れ込み30が形成されるまでは、周縁部も含めて全て第2層12および保護膜21に覆われ、化学的および機械的な劣化から保護されている。
このため、工程10よりも前に、基板10が剥離層15を境界として剥離してしまうことを防止できる。
【0052】
(変形例1)
変形例1の製造方法は、上述の第1実施形態の製造方法における上述の工程8の基板10および保護膜21の切断において、基板10の主面10mの近傍へのベベル部26の形成を行わない。
変形例1の製造方法においては、一例として、上述の工程8において、保護膜21の切断と基板10の切断とにおいて、同じ厚さのダイシングブレードを有するダイシングソーを使用しても良い。また、保護膜21の切断と基板10の切断とを一度に行っても良い。
【0053】
変形例1の製造方法は、工程8以外の各工程は上述の第1実施形態の製造方法と同一であるため、工程8以外の各工程の説明は省略する。
工程1で用意する基板10(膜付基板1)が、工程8における基板10の切断に際し、端部に、割れ、または欠けが発生する恐れが無い場合、あるいは、割れ、または欠けが発生しても問題が無い場合には、変形例1の製造方法を使用すると良い。
変形例1の製造方法においては、基板10および保護膜21の切断の工程を簡略化できる。
【0054】
(変形例2)
変形例2の製造方法は、上述の第1実施形態の製造方法において、上述の工程10における封止部材29および保護膜21に対する切れ込み30の形成を行わない。変形例2の製造方法は、工程10以外の各工程は、上述の第1実施形態の製造方法と同一であるため、工程10以外の各工程の説明は省略する。
【0055】
変形例2の製造方法においては、基板10および保護膜21への切れ込み30の形成を省略できるため、低コストで半導体装置を製造することができる。
第1層11から第4層14までの金属層、および剥離層15の材質等の選定により、工程10において基板10および保護膜21に切れ込み30を形成しなくても、工程11における基板10の剥離が十分に可能な場合には、変形例3の製造方法を使用すると良い。
【0056】
(変形例3)
変形例3の製造方法では、上述の第1実施形態の製造方法または各変形例の製造方法の工程6から工程7における上層配線23の形成を、上述の電解めっきに代えて、
図3(a)に示した保護膜21の開口21hの内部に、はんだボールを充填することにより行う。
【0057】
すなわち、変形例3の製造方法では、
図3(a)に示した保護膜21の開口21hのそれぞれに、はんだボールを挿入し、その後、はんだボールの上面に当て板等を当て、加熱しながらプレスする。このプレスにより、はんだボールの高さを揃え、はんだを開口21h内でリフローさせる。はんだボールの材質は、一例として、錫をベースに3%の銀および0.5%の銅を含有するSAC305や、錫と銀からなるはんだを使用する。
変形例3の製造方法においても、工程7および工程8以外の工程は、上述の第1実施形態の製造方法または各変形例の製造方法と同一であるので、説明は省略する。
【0058】
(変形例4)
変形例4の製造方法は、半導体素子27としてLEDを用いる場合の変形例である。変形例4の製造方法においては、上述の
図4(c)を参照して説明した工程9において、封止部材29として光反射性の高い樹脂を使用する。そして、封止部材29によりLEDである半導体素子27を封止した後、LEDの上面が封止部材29から露出するように、封止部材29の上面を研磨する。さらに、研磨により露出したLEDの上面に、蛍光体膜または透明保護膜の少なくとも一方を形成しても良い。
【0059】
なお、封止部材29による封止の前に、半導体素子27としてLEDの上面に予め蛍光体膜または透明保護膜の少なくとも一方を形成しておいても良い。この場合、封止部材29による封止の後に、封止部材29の上面を研磨することにより、LEDの上面に形成されている蛍光体膜または透明保護膜を露出させることができる。
【0060】
変形例4の製造方法においても、工程9以外の各工程は、上述の第1の実施形態および各変形例の製造方法と同様であるので、工程9以外の各工程の説明は省略する。
【0061】
上述の第1実施形態の製造方法または各変形例の製造方法においては、配線層(19、23)は、上層配線23と下層配線19の2層より成るものとしたが、配線層の総数は2層に限られるものではない。すなわち、上述の工程6から工程7を複数回繰り返すことにより、より多層の配線層を形成しても良い。
また、上述の第1実施形態の製造方法または各変形例の製造方法においては、基板10はガラスから成るものとしたが、基板10の主成分はガラスでなくても良い。例えば、ステンレス等の金属からなるものであっても良い。
【0062】
(第1の実施形態および各変形例の効果)
以上の第1の実施形態および各変形例によれば、以下の効果を得られる。
(1)半導体装置50の製造方法は、主面10mの第1領域に剥離層15が形成された基板10を用意すること、基板10の剥離層15よりも上側に、配線層(19、23)を形成すること、主面10mの第1領域を含み第1領域よりも広い第2領域に、配線層(19、23)の少なくとも一部と接する保護膜21を形成すること、半導体素子27を配線層(23)に電気的に接続して配置すること、配線層(19、23)の少なくとも一部、および半導体素子27を封止部材29で封止すること、および、剥離層15を境界として基板10を剥離すること、を備えている。
このような製造方法としたので、剥離層15を境界として基板10を剥離するまでの製造工程の多くにおいて、剥離層15は、周縁部も含めて全て保護膜21に覆われ、化学的および機械的な劣化から保護されている。これにより、基板10を剥離する工程(工程11)の前に、基板10が剥離してしまうことを防止できる。
【0063】
(2)さらに、封止部材29による封止の後であって基板10の剥離の前に、主面10mの第1領域内であって、半導体素子27が配置されていない部分の少なくとも一部(HC1~HC6)において、封止部材29側から、剥離層15が露出するまで封止部材29および保護膜21に切れ込み30を形成しても良い。
これにより、基板10を確実に剥離することができる。
【0064】
(3)さらに、基板10として、主面10mの第1領域を含む第4領域に第2金属層17が形成されており、剥離層15は第2金属層17よりも基板10から遠い側に形成されている基板を用意することにより、工程11で基板10を剥離するまでは、剥離層15を、第2金属層17を介して基板10に高い密着性を持って固定させておくことができる。
【0065】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1:膜付基板、10:基板、11:第1層、12:第2層、13:第3層、14:第4層、15:剥離層、16:第1金属層、17:第2金属層、18,20:レジスト、19:下層配線(配線層)、21:保護膜、22:レジストパターン、23:上層配線(配線層)、24:位置検出マーク、27:半導体素子、28:接続端子、29:封止部材、30:切れ込み、40,41:半導体封止体、50:半導体装置