(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】顆粒状インスタント食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/10 20160101AFI20240418BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
A23L23/10
A23D9/00 518
A23D9/00 514
(21)【出願番号】P 2021507224
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020010074
(87)【国際公開番号】W WO2020189383
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019052600
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】須田 悠二
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 理良
(72)【発明者】
【氏名】池之上 雅弘
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-19515(JP,A)
【文献】特許第5184722(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/061671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スープ又はソース用の粉末原料、及び、油脂を含有する顆粒状インスタント食品であって、前記油脂は、ラウリン酸18質量%以上33質量%以下、パルミチン酸10質量%以上23質量%以下、ステアリン酸17質量%以上27質量%以下、リノール酸8質量%以上20質量%以下の脂肪酸組成を有するエステル交換油である油脂Aと、パーム油及びパーム分別油から選ばれた1種以上の油脂Bとを含み、前記油脂における前記油脂Aの含有量が70質量%以上83質量%以下であり、前記油脂における前記油脂Bの含有量が17質量%以上30質量%以下であり、前記顆粒状インスタント食品中の前記油脂の含有量が2質量%以上12質量%以下であることを特徴とする顆粒状インスタント食品。
【請求項2】
前記油脂Aは、パーム核極度硬化油と、パーム極度硬化油と、コーン油とのエステル交換油である、請求項1記載の顆粒状インスタント食品。
【請求項3】
前記油脂は、33.3℃におけるSFCが5%以上20%以下である、請求項1又は2に記載の顆粒状インスタント食品。
【請求項4】
前記油脂は、21.1℃におけるSFCが25%以上50%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の顆粒状インスタント食品。
【請求項5】
前記油脂Bは、パーム軟質部及びパーム中融点部から選ばれた1種以上からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の顆粒状インスタント食品。
【請求項6】
スープ又はソース用の粉末原料に、油脂を加熱溶解して添加混合し、造粒する顆粒状インスタント食品の製造方法において、前記油脂として、ラウリン酸18質量%以上33質量%以下、パルミチン酸10質量%以上23質量%以下、ステアリン酸17質量%以上27質量%以下、リノール酸8質量%以上20質量%以下の脂肪酸組成を有するエステル交換油である油脂Aと、パーム油及びパーム分別油から選ばれた1種以上の油脂Bとを含み、前記油脂における前記油脂Aの含有量が70質量%以上83質量%以下であり、前記油脂における前記油脂Bの含有量が17質量%以上30質量%以下であるものを用い、前記顆粒状インスタント食品中の前記油脂の含有量を2質量%以上12質量%以下とすることを特徴とする顆粒状インスタント食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や牛乳等の溶媒に溶解させてスープ又はソースとして用いられる顆粒状インスタント食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スープ又はソース用に用いられる顆粒状インスタント食品は、例えば、油脂、澱粉及び調味料等を含む原料を、押出造粒などによって造粒することにより製造されている。
【0003】
このような顆粒状インスタント食品として、下記特許文献1には、25℃におけるSFC(Solid Fat Content)が70%以上であり、45℃におけるSFCと25℃におけるSFCとの差が60%以下である植物性油脂を含む即席調理食品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、(A)ヨウ素価18以下のパーム分別油を100℃未満の温度で1回以上、あるいは100℃以上の温度で2回以上脱色することにより得られるパーム分別油、パームステアリンを分別したオレイン部、パームダブルステアリンを分別したオレイン部、及びパームトリプルステアリンを分別したオレイン部からなる群から選ばれる少なくとも一種の油脂を50~65重量%、並びに、(B)飽和脂肪酸含量が90重量%以上、かつ炭素数12以下の飽和脂肪酸含量が20~35重量%であるエステル交換油を30重量%以上、含む油脂組成物を、即席調理食品に配合される油脂として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-204774号公報
【文献】WO2013/061671
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、顆粒状インスタント食品の原料を顆粒状に成型する工程において、原料が含有する油脂の成分によっては、原料を顆粒状に成型する工程における造粒性が悪化することが課題の一例として挙げられる。
【0007】
顆粒状インスタント食品の原料が含有する油脂の成分によって、顆粒状インスタント食品の保管中において、例えば顆粒同士がくっつくなど、品質が劣化することが課題の一例として挙げられる。
【0008】
顆粒状インスタント食品の原料が含有する油脂の成分によって、顆粒状インスタント食品の溶媒への分散性及び、溶媒分散後の呈味が悪化することが課題の一例として挙げられる。
【0009】
顆粒状インスタント食品の原料が含有する油脂の成分によって、顆粒状インスタント食品の溶媒分散後の口中での食感、例えばザラツキ感が生じることが課題の一例として挙げられる。
【0010】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、顆粒状インスタント食品の原料を顆粒状にする工程における造粒性の向上を図った顆粒状インスタント食品を提供することを課題の1つとする。
【0011】
また、顆粒状インスタント食品の保管中の品質維持を図った顆粒状インスタント食品を提供することを課題の1つとする。
【0012】
さらに、顆粒状インスタント食品の溶媒への分散性及び、溶媒分散後の呈味の向上を図った顆粒状インスタント食品を提供することを課題の1つとする。
【0013】
さらにまた、顆粒状インスタント食品の溶媒分散後の口中での食感の向上を図った顆粒状インスタント食品を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の顆粒状インスタント食品は、スープ又はソース用の粉末原料、及び、油脂を含有する顆粒状インスタント食品であって、前記油脂は、ラウリン酸18質量%以上33質量%以下、パルミチン酸10質量%以上23質量%以下、ステアリン酸17質量%以上27質量%以下、リノール酸8質量%以上20質量%以下の脂肪酸組成を有するエステル交換油である油脂Aと、パーム油及びパーム分別油から選ばれた1種以上の油脂Bとを含み、前記油脂における前記油脂Aの含有量が70質量%以上83質量%以下であり、前記油脂における前記油脂Bの含有量が17質量%以上30質量%以下であり、前記顆粒状インスタント食品中の前記油脂の含有量が2質量%以上12質量%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の顆粒状インスタント食品によれば、含有油脂が油脂A及び油脂Bを含むことにより、顆粒状インスタント食品の原料を顆粒状にする工程における造粒性の向上を図ることが可能となる。また、顆粒状インスタント食品の保管中の品質維持を図ることが可能となる。さらに、顆粒状インスタント食品の溶媒への分散性及び、溶媒分散後の呈味の向上を図ることが可能となる。さらにまた、顆粒状インスタント食品の溶媒分散後の食感の向上を図ることが可能となる。
【0016】
本発明の顆粒状インスタント食品において、前記油脂Aは、パーム核極度硬化油と、パーム極度硬化油と、コーン油とのエステル交換油であることが好ましい。
【0017】
また、前記油脂は、33.3℃におけるSFCが5%以上20%以下であることが好ましい。
【0018】
さらに、前記油脂は、21.1℃におけるSFCが25%以上50%以下であることが好ましい。
【0019】
また、前記油脂Bは、パーム軟質部及びパーム中融点部から選ばれた1種以上からなることが好ましい。
【0020】
本発明の顆粒状インスタント食品の製造方法は、スープ又はソース用の粉末原料に、油脂を加熱溶解して添加混合し、造粒する顆粒状インスタント食品の製造方法において、前記油脂は、ラウリン酸18質量%以上33質量%以下、パルミチン酸10質量%以上23質量%以下、ステアリン酸17質量%以上27質量%以下、リノール酸8質量%以上20質量%以下の脂肪酸組成を有するエステル交換油である油脂Aと、パーム油及びパーム分別油から選ばれた1種以上の油脂Bとを含み、前記油脂における前記油脂Aの含有量が70質量%以上83質量%以下であり、前記油脂における前記油脂Bの含有量が17質量%以上30質量%以下であり、前記顆粒状インスタント食品中の前記油脂の含有量が2質量%以上12質量%以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の顆粒状インスタント食品の製造方法によれば、含有油脂が油脂A及び油脂Bを含むことにより、顆粒状インスタント食品の原料を顆粒状にする工程の造粒性の向上を図ることが可能となる。また、顆粒状インスタント食品の保管中の品質維持を図ることが可能となる。さらに、顆粒状インスタント食品の溶媒への分散性及び、溶媒分散後の呈味の向上を図ることが可能となる。さらにまた、顆粒状インスタント食品の溶媒分散後の食感の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、顆粒状インスタント食品の原料を顆粒状にする工程の造粒性の向上を図ることが可能となる。また、顆粒状インスタント食品の保管中の品質維持を図ることが可能となる。さらに、顆粒状インスタント食品の溶媒への分散性及び、溶媒分散後の呈味の向上を図ることが可能となる。さらにまた、顆粒状インスタント食品の溶媒分散後の食感の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る顆粒状インスタント食品の実施形態についてさらに説明する。
【0024】
本発明に係る顆粒状インスタント食品は、スープ又はソース用の粉末原料を含有する。そして、粉末原料を溶媒に溶かしてスープ又はソースとして使用される。溶媒としては、例えば、水、牛乳などを用いることができる。
【0025】
ここで、顆粒状インスタント食品がスープ用の場合は、粉末原料をスープ用の配合にして顆粒化した食品をいう。また、顆粒状インスタント食品がソース用の場合は、粉末原料をソース用の配合にして顆粒化した食品であって、例えば、お湯で溶かす又は加水して加熱後に食品に添えられる調理に用いられる食品をいう。ソースとしては、例えば、ホワイトソース、ブラウンソース、ベシャメル系ソース、トマトソースが挙げられる。
【0026】
粉末原料としては、食品に用いることができ且つ粉末状に加工できるものであれば特段限定されないが、例えば、食塩、糖類(砂糖、グルコース、マルトース、トレハロース、乳糖、麦芽糖、オリゴ糖、デキストリンなど)、澱粉類、穀類、調味料(アミノ酸、有機酸、核酸など)、蛋白加水分解物、多糖類(食物繊維など)、野菜粉末(野菜パウダー)、野菜エキス、肉類粉末、肉エキス、魚介類粉末、魚介エキス、香辛料、粉末油脂、乳製品(クリーミングパウダー、チーズパウダー)、酵母エキス、ビタミン類、ミネラル類(カルシウム、鉄など)、着香料、着色料、甘味料、などを用いることができる。
【0027】
顆粒状インスタント食品は、油脂を含有する。顆粒状インスタント食品中の油脂の含有量は、2質量%以上12質量%以下であり、4質量%以上12質量%以下が好ましく、6質量%以上12質量%以下が更に好ましい。油脂の含有量が2質量%未満では、造粒時の流動性が低下するばかりではなく、顆粒形成が悪化し、12質量%を超えると、造粒時の流動性が低下、またインスタントスープをお湯に溶いた時に表面に油浮きが目立つようになる。
【0028】
また、本発明の顆粒状インスタント食品で用いる油脂は、33.3℃におけるSFC(solid fat content:固体脂含量)が5%以上20%以下であることが好ましく、5%以上17%以下であることがより好ましい。また、上記油脂は、21.1℃におけるSFCが25%以上50%以下であることが好ましく、30%以上45%以下であることがより好ましい。
【0029】
前記油脂のSFCが上記範囲にあることで、保管安定性に優れ、溶媒分散後の口中での食感が良好な顆粒状インスタント食品を得ることができる。
【0030】
尚、本明細書のSFCは、AOCS(American Oil Chemists' Society) Official Method Cd16-81に記載の方法で、油脂組成物の各温度の固体脂含量を測定した値である。
【0031】
上記のような好ましい性状とするため、本発明の顆粒状インスタント食品で用いる油脂は、互いに成分が異なる油脂A及び油脂Bを含む。
【0032】
上記油脂Aは、ラウリン酸18質量%以上33質量%以下、パルミチン酸10質量%以上23質量%以下、ステアリン酸17質量%以上27質量%以下、リノール酸8質量%以上20質量%以下の脂肪酸組成を有するエステル交換油である。油脂Aの脂肪酸組成は、ラウリン酸20質量%以上30質量%以下、パルミチン酸13質量%以上20質量%以下、ステアリン酸20質量%以上25質量%以下、リノール酸10質量%以上18質量%以下がより好ましい。尚、本明細書の油脂の脂肪酸組成は、基準油脂分析試験法の2.4.2.3-2013に従って測定した値である。
【0033】
油脂Aが上記のような脂肪酸組成を有することにより、例えば33.3℃におけるSFCや、21.1℃におけるSFCが、前述したような性状の油脂を得ることができ、保管安定性に優れ、溶媒分散後の口中での食感が良好な顆粒状インスタント食品を得ることができる。
【0034】
また、油脂Aの脂肪酸としてリノール酸が含まれていることによって、顆粒状インスタント食品を溶媒に溶かした際の風味をよくすることできる。
【0035】
上記のような脂肪酸組成を有する油脂Aは、例えば、パーム核極度硬化油と、パーム極度硬化油と、コーン油とを、上記のような脂肪酸組成となるように配合して、エステル交換することによって製造することができ、前記配合した油脂全体中に、パーム核極度硬化油を40質量%以上68質量%以下、パーム極度硬化油を13質量%以上33質量%以下、コーン油を17質量%以上33質量%以下、それぞれ配合することを例示できる。
【0036】
エステル交換はランダムエステル交換できるものであれば公知の方法によって行ってもよく、例えば、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属触媒を用いる化学的エステル交換反応や位置特異性を有しないリパーゼ等を用いる酵素的エステル交換反応等が挙げられる。尚、エステル交換に用いられる油脂は、上記のような脂肪酸組成となるように配合できる油脂の組合せであればよく、上記油脂の組合せに限定されるものではない。例えばコーン油の代わりに、大豆油を用いてもよい。
【0037】
本発明の顆粒状インスタント食品で用いる油脂における油脂Aの含有量は、70質量%以上83質量%以下であり、73質量%以上83質量%以下であることが好ましく、76質量%以上82質量%以下であることが更に好ましい。油脂Aが83質量%を超えて含有されていると、食感におけるザラツキ感や、溶媒への溶け残り等が生じやすくなる。油脂における油脂Aの含有量が70質量%未満であると、造粒性等が悪化する傾向がある。
【0038】
すなわち、油脂が所定量の油脂Aを含むことにより、顆粒状インスタント食品の造粒時において、固まったときに適度な硬さを持つため、顆粒状インスタント食品の製造適性を高めることができる。
【0039】
一方、油脂Bは、パーム油及びパーム分別油から選ばれた1種以上の油脂である。油脂Bは、例えば、パーム分別油であるパーム軟質部及びパーム中融点部から選ばれた1種以上からなる油脂が好ましい。
【0040】
尚、本発明において、パーム分別油とは、精製および未精製のパーム油を一回以上分別して得られた油脂を意味する。分別方法は、公知の方法、例えばヘキサン、アセトン等の溶剤を用いた溶剤分別法、又は溶剤を用いないドライ分別法を特に制限なく使用することができる。上記パーム分別油をさらに白土処理、活性炭処理等の脱色操作にかけて用いることができる。
【0041】
パーム軟質部とは、パームオレインとも呼ばれ、パーム油から硬質部を除去する分別処理を1回または2回以上行うことにより得られた画分を意味する。前記パーム軟質部はパーム油から硬質部を除去する分別処理を1回行うことにより得られた画分であることが好ましい。前記パーム軟質部のヨウ素価は、50以上60以下であることが好ましい。また、パーム中融点部とは、パーム油から硬質部を除去する分別処理を少なくとも1回以上、かつ、軟質部を除去する分別処理を少なくとも1回以上行うことにより得られた画分を意味する。硬質部を除去する前記分別処理と軟質部を除去する前記分別処理の順序は問わない。前記パーム中融点部のヨウ素価は、30以上48以下であることが好ましい。
【0042】
また、本発明の顆粒状インスタント食品で用いる油脂における油脂Bの含有量は、17質量%以上30質量%以下であり、17質量%以上27質量%以下であることが好ましく、18質量%以上24質量%以下であることが更に好ましい。油脂が所定量の油脂Bを含むことにより、溶媒分散後の顆粒状インスタント食品の口中でのザラツキ感を抑制することができ、食感を良好にすることができる。
【0043】
このように、本発明の顆粒状インスタント食品によれば、顆粒状インスタント食品に含有される油脂が、油脂A及び油脂Bを含むことにより、顆粒状インスタント食品の原料を顆粒状にする工程における造粒性の向上を図ることが可能となる。また、顆粒状インスタント食品の保管中の品質維持を図ることが可能となる。さらに、顆粒状インスタント食品の溶媒への分散性及び、溶媒分散後の呈味の向上を図ることが可能となる。さらにまた、顆粒状インスタント食品の溶媒分散後のザラツキ感を抑制して、食感の向上を図ることが可能となる。
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(粉末原料の混合工程)
表1に示す原材料のうち、油脂以外の粉末原料を株式会社ダルトン製混合攪拌機(25AM-02)で事前に混合し、混合粉末原料を調製した。
【0046】
【0047】
(混合粉末原料と油脂の混合工程)
表2に示した油脂を80℃で加熱して液状にしてから、表1に示す配合比の混合粉末原料に添加し混合した。
【0048】
【0049】
表2において示されている油脂Bの各原料油脂は、以下のものを用いた。
【0050】
パーム中融点部1 :ヨウ素価33、株式会社J-オイルミルズ製
パーム中融点部2 :ヨウ素価43、株式会社J-オイルミルズ製
パーム軟質部 :ヨウ素価56、株式会社J-オイルミルズ製
【0051】
表2において示されているエステル交換油1乃至3は、原料油脂の含有量及び脂肪酸組成が互いに異なる。表3に、エステル交換油1乃至3の原料油脂の含有量及び脂肪酸の組成を示す。
【0052】
【0053】
表3において示されている各原料油脂は、以下のものを用いた。
【0054】
パーム核極度硬化油:株式会社J-オイルミルズの社内調製品
パーム極度硬化油 :横関油脂工業株式会社製
コーン油 :株式会社J-オイルミルズ製
【0055】
(エステル交換油1乃至3の製造方法)
エステル交換油1乃至3は、次の方法によって製造した。80℃に加熱した原料油脂の混合油脂100質量部に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色処理をおこない、さらに脱臭処理をおこない、エステル交換油を得た。
【0056】
(造粒工程)
次に、表1に示した混合粉末原料と油脂組成物の混合物を下記の条件で流動層にて造粒、乾燥、冷却し顆粒状インスタントスープを得た。
【0057】
[造粒・乾燥・冷却条件]
・流動層造粒機;フローコーターマルチ5型(フロイント産業株式会社製)
・バインダー噴霧率;6.0%(原材料の全質量に対して)
・バインダー噴霧空気圧;0.3MPa
・バインダー噴霧速度;90ml/min
・バインダー溶液;水
・造粒時の吸気温度;60℃
・乾燥終了排気温度;60℃
・冷却終了排気温度;40℃
【0058】
<製造適性の評価>
上記の造粒、乾燥及び冷却条件で流動層造粒機を用いて顆粒状インスタントスープを製造したときの製造適性を以下の基準により評価した。尚、製造適性の評価は、(1)流動層造粒機内での試料の流動状態及び(2)流動層造粒機内の試料の付着状態について行った。
【0059】
その結果を表4に示す。流動層造粒機内での試料の流動状態は実施例1~3の何れも比較例1よりも良好な流動状態であった。流動層造粒機内における試料の付着状態も実施例2、3はほとんど試料の付着はなく、実施例1については、少量の試料の付着が認められたものの許容範囲内であることが判明した。
【0060】
[製造適性の評価基準]
(1)流動層造粒機内での試料の流動状態
○;かなり良好な流動状態
△;良好な流動状態
×;流動状態が悪い
(2)流動層造粒機内の試料の付着状態
○;ほとんど試料の付着はなかった
△;少量の試料の付着は認められるも許容範囲内
×;多量の試料の付着が認められ許容範囲外
【0061】
【0062】
<味覚・官能評価>
上記記載の造粒・乾燥・冷却条件で得られた顆粒状インスタントスープをカップに各12g測り取り、カップに95℃に加熱した熱湯150mlを注ぎ15秒間撹拌した後、インスタントスープの味覚・官能を、3名のパネラーにより、以下の基準に基づき、合議の上、評価した。
【0063】
その結果を表5に示す。実施例1~3について、呈味の評価において比較例1、2より良好な結果を得た。比較例2については、スープ嚥下後に口中に好ましくないザラツキ感が残ることが判明した。
【0064】
[味覚・官能の評価基準]
(1)呈味
○;良好な呈味を有している
△;やや良好な呈味を有している
×;呈味が良好ではない
(2)口中でのザラツキ感
○;なめらかな食感
△;ややザラツいた食感が認められるものの許容範囲内
×;ザラツいた食感が認められ許容範囲外
【0065】
【0066】
<お湯溶け性評価>
上記記載の造粒・乾燥・冷却条件で得られた顆粒状インスタントスープをカップに各12g測り取り、カップに95℃に加熱した熱湯150mlを注ぎ15秒間撹拌した後、10メッシュ(目開1.7mm)の網にインスタントスープを通して、網の上に残った溶け残り量を測定した。
【0067】
結果を表6に示す。実施例1~3は、比較例1、2に比べて、溶け残り量が少なく、お湯溶け性が良好であることが判明した。
【0068】
【0069】
<保管中の品質劣化評価>
上記記載の造粒・乾燥・冷却条件で得られた顆粒状インスタントスープを各12g測り取った試料をアルミ袋に充填し封をした後、34℃に設定された保管庫に3ヶ月間保管した後、同じく5℃に設定された保管庫に3ヶ月保管した試料を比較対照(コントロールサンプル)とした。保管庫から取出した顆粒状インスタントスープをカップに移し、カップに95℃に加熱した熱湯150mlを注ぎ15秒間撹拌した後、味覚・官能を以下の基準によりこれらを評価した。
【0070】
表7に示すように、試料の保管中の品質劣化は実施例1~3の何れも同じ傾向を示しており、比較例1より良好であることが判明した。
【0071】
[味覚・官能の評価基準]
○;コントロールサンプルと同等
△;コントロールサンプルよりやや劣化が進行しているが許容範囲内
×;コントロールサンプルよりかなり劣化が進行しており許容範囲外
【0072】