(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 21/10 20060101AFI20240418BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20240418BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D17/06 C
C25D17/00 H
(21)【出願番号】P 2024505103
(86)(22)【出願日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2023017515
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7069442(JP,B1)
【文献】特開2014-185375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留するとともに、前記めっき液の内部にアノードが配置され、前記めっき液の内部において前記アノードに対向するように基板が配置されためっき槽と、
前記アノードと前記基板との間に配置されて、前記基板に平行な方向で第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで、前記めっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備え、
前記パドルは、前記パドルの往復移動方向とは垂直な方向に延在する複数の梁部材を有し、
前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが第1往復態様で往復移動することを含み、
前記第1往復態様において、前記パドルは、前記第1方向に移動するときのストロークとは
予め設定された一定値だけ異なるストロークで前記第2方向に移動することにより、前記パドルが前記第2方向から前記第1方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置及び前記第1方向から前記第2方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置を異ならせる、めっき装置。
【請求項2】
前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが前記第1往復態様で複数回往復移動した後に、第2往復態様で往復移動することを含み、
前記第1往復態様において、前記第2方向に移動するときの前記パドルのストロークは、前記第1方向に移動するときの前記パドルのストロークよりも
前記一定値だけ短く、
前記第2往復態様において、前記パドルは、前記第1方向に移動するときのストロークよりも
前記一定値だけ長いストロークで前記第2方向に移動することにより、前記パドルが前記第2方向から前記第1方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置及び前記第1方向から前記第2方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置を異ならせる、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが前記
第1往復態様で複数回往復移動した後に、第2往復態様で往復移動することを含み、
前記第1往復態様において、前記第2方向に移動するときの前記パドルのストロークは、前記第1方向に移動するときの前記パドルのストロークよりも
前記一定値だけ長く、
前記第2往復態様において、前記パドルは、前記第1方向に移動するときのストロークよりも
前記一定値だけ短いストロークで前記第2方向に移動することにより、前記パドルが前記第2方向から前記第1方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置及び前記第1方向から前記第2方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置を異ならせる、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記基板は前記アノードよりも上方に配置され、
前記めっき液の内部において、前記アノードよりも上方、且つ、前記パドルよりも下方には、複数の孔を有するイオン抵抗体が配置されている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが前記第1方向に、異なる速度で、複数回移動すること、又は、前記パドルが前記第2方向に、異なる速度で、複数回移動することを含む、請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが、前記第1方向に第1速度で移動した後に、前記第2方向に前記第1速度とは異なる第2速度で移動することを含む、請求項4に記載のめっき装置。
【請求項7】
めっき液を貯留するとともに、前記めっき液の内部にアノードが配置され、前記めっき液の内部において前記アノードに対向するように基板が配置されためっき槽と、
前記アノードと前記基板との間に配置されて、前記基板に平行な方向で第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで、前記めっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備え、
前記基板は前記アノードよりも上方に配置され、
前記めっき液の内部において、前記アノードよりも上方、且つ、前記パドルよりも下方には、複数の孔を有するイオン抵抗体が配置され、
前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが、前記第1方向に第1速度で移動した後に、前記第2方向に前記第1速度
よりも速い第2速度で移動することを含
み、
前記パドルが前記第1速度で移動することで、前記イオン抵抗体の前記孔に付着した所定のサイズの気泡を吸い上げて前記孔から除去し、前記パドルが前記第2速度で移動することで、前記イオン抵抗体の前記孔に付着した、前記所定のサイズよりも小さいサイズの気泡を吸い上げて前記孔から除去する、めっき装置。
【請求項8】
前記第2往復態様において、前記パドルは、前記第1往復態様における前記パドルの往復移動の回数と同じ回数だけ往復移動を行って、前記第2往復態様による前記パドルの往復移動を終了させる、請求項2に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記第2往復態様において、前記パドルは、前記第1往復態様における前記パドルの往復移動の回数と同じ回数だけ往復移動を行って、前記第2往復態様による前記パドルの往復移動を終了させる、請求項3に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっき処理を施すことが可能なめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともに、前記めっき液の内部にアノードが配置され、前記めっき液の内部において前記アノードに対向するように基板が配置された、めっき槽と、アノードと基板との間に配置されて、基板に平行な方向で第1方向及び第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで、めっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備えている。
【0003】
また、従来、パドルとして、パドルの往復移動方向とは垂直な方向に延在する複数の梁部材を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来のめっき槽において、パドルの往復移動時におけるパドルのストロークは一定である。この場合、パドルが第2方向から第1方向に移動方向を変えるときや、第1方向から第2方向に移動方向を変えるときに、パドルの梁部材が同じ箇所で停止する。この場合、めっき処理中におけるのパドルの梁部材の平均滞在時間が均一化しなくなってしまい、アノードと基板との間の電場の遮蔽度合いが、パドルの位置によって異なるおそれがある。この結果、基板のめっき品質が悪化するおそれがある。
【0006】
あるいは、従来のめっき装置の場合、めっき槽のめっき液に含まれる気泡が、アノードと基板との間に配置されたイオン抵抗体の孔に多量に付着するおそれがある。この状態で基板にめっき処理を施した場合、この気泡に起因して基板のめっき品質が悪化するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、パドルの梁部材による電場遮蔽の影響を小さくすることができる技術、又は、イオン抵抗体の孔に付着した気泡を除去することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を貯留するとともに、前記めっき液の内部にアノードが配置され、前記めっき液の内部において前記アノードに対向するように基板が配置されためっき槽と、前記アノードと前記基板との間に配置されて、前記基板に平行な方向で第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで、前記めっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備え、前記パドルは、前記パドルの往復移動方向とは垂直な方向に延在する複数の梁部材を有し、前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが第1往復態様で往復移動することを含み、前記第1往復態様において、前記パドルは、前記第1方向に移動するときのストロークとは異なるストロークで前記第2方向に移動することにより、前記パドルが前記第2方向から前記第1方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置及び前記第1方向から前記第2方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置を異ならせる。
【0009】
この態様によれば、パドルが第2方向から第1方向に移動方向を変えるときや、第1方向から第2方向に移動方向を変えるときに、パドルの梁部材が同じ箇所に位置しないようにすることができる。これにより、パドルの梁部材による電場遮蔽の影響を小さくすることができる。この結果、基板のめっき品質を向上させることができる。
【0010】
(態様2)
上記の態様1において、前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが前記第1往復態様で複数回往復移動した後に、第2往復態様で往復移動することを含み、前記第1往復態様において、前記第2方向に移動するときの前記パドルのストロークは、前記第1方向に移動するときの前記パドルのストロークよりも短く、前記第2往復態様において、前記パドルは、前記第1方向に移動するときのストロークよりも長いストロークで前記第2方向に移動することにより、前記パドルが前記第2方向から前記第1方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置及び前記第1方向から前記第2方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置を異ならせてもよい。
【0011】
(態様3)
上記の態様1において、前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが前記第1往復態様で複数回往復移動した後に、第2往復態様で往復移動することを含み、前記第1往復態様において、前記第2方向に移動するときの前記パドルのストロークは、前記第1方向に移動するときの前記パドルのストロークよりも長く、前記第2往復態様において、前記パドルは、前記第1方向に移動するときのストロークよりも短いストロークで前記第2方向に移動することにより、前記パドルが前記第2方向から前記第1方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置及び前記第1方向から前記第2方向に移動方向を変えるときの前記複数の梁部材の位置を異ならせてもよい。
【0012】
(態様4)
上記の態様1~3のいずれか1態様において、前記基板は前記アノードよりも上方に配置され、前記めっき液の内部において、前記アノードよりも上方、且つ、前記パドルよりも下方には、複数の孔を有するイオン抵抗体が配置されていてもよい。
【0013】
(態様5)
上記の態様4において、前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが前記第1方向に、異なる速度で、複数回移動すること、又は、前記パドルが前記第2方向に、異なる速度で、複数回移動することを含んでいてもよい。
【0014】
この態様によれば、イオン抵抗体の孔に付着した気泡を効果的に除去することができる。これにより、基板のめっき品質を向上させることができる。
【0015】
(態様6)
上記の態様4において、前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが、前記第1方向に第1速度で移動した後に、前記第2方向に前記第1速度とは異なる第2速度で移動することを含んでいてもよい。
【0016】
この態様によれば、イオン抵抗体の孔に付着した気泡を効果的に除去することができる。これにより、基板のめっき品質を向上させることができる。
【0017】
(態様7)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を貯留するとともに、前記めっき液の内部にアノードが配置され、前記めっき液の内部において前記アノードに対向するように基板が配置されためっき槽と、前記アノードと前記基板との間に配置されて、前記基板に平行な方向で第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に往復移動することで、前記めっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備え、前記基板は前記アノードよりも上方に配置され、前記めっき液の内部において、前記アノードよりも上方、且つ、前記パドルよりも下方には、複数の孔を有するイオン抵抗体が配置され、前記パドルが前記第1方向及び前記第2方向に往復移動することは、前記パドルが、前記第1方向に第1速度で移動した後に、前記第2方向に前記第1速度とは異なる第2速度で移動することを含む。
【0018】
この態様によれば、イオン抵抗体の孔に付着した気泡を効果的に除去することができる。これにより、基板のめっき品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係るめっき装置におけるめっきモジュールの構成を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る基板がめっき液に浸漬された状態を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係るパドルの模式的な平面図である。
【
図6】実施形態に係るめっき液の供給からめっき処理の開始までの一連の動作を説明するためのフロー図である。
【
図7】実施形態に係るパドルの動作の詳細を説明するためのフロー図の一例である。
【
図8】
図8(A)及び
図8(B)は、実施形態の変形例1に係るめっき装置を説明するための模式図である。
【
図9】
図9(A)及び
図9(B)は、実施形態の変形例2に係るめっき装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、構成要素の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0021】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図(上面図)である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0022】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0023】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0024】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0025】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0026】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0027】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0028】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0029】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0030】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0031】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000におけるめっきモジュール400の構成を示す模式図である。具体的には、
図3は、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の状態におけるめっきモジュール400を模式的に図示している。
図4は、基板Wfがめっき液Psに浸漬された状態を示す模式図である。
【0032】
図3及び
図4に例示するめっき装置1000は、一例として、カップ式のめっき装置である。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば、本実施形態に係るめっき装置1000は、基板Wfの面方向を上下方向にした状態でめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置(すなわち、縦型のめっき装置)であってもよい。
【0033】
図3及び
図4に例示するめっき装置1000のめっきモジュール400は、めっき槽10と、オーバーフロー槽20と、基板ホルダ30と、パドル70と、を備えている。また、めっきモジュール400は、
図3に例示するように、回転機構40と、傾斜機構45と、昇降機構50と、を備えていてもよい。
【0034】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底壁10aと、この底壁10aの外周縁から上方に延在する外周壁10bとを有しており、この外周壁10bの上部が開口している。なお、めっき槽10の外周壁10bの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周壁10bは、一例として円筒形状を有している。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。
【0035】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、めっき液Psには所定の添加剤が含まれていてもよい。
【0036】
めっき槽10のめっき液Psの内部には、アノード11が配置されている。また、少なくとも基板Wfのめっき処理時において、めっき槽10のめっき液Psの内部には、基板Wfもアノード11に対向するように配置される。アノード11の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード11の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0037】
めっき槽10のめっき液Psの内部において、アノード11よりも上方、且つ、基板Wfよりも下方(具体的には、本実施形態では、さらにパドル70よりも下方)には、イオン抵抗体12が配置されていてもよい。具体的には、
図4(B1部分の拡大図)に例示するように、イオン抵抗体12は、複数の孔12a(細孔)を有する多孔質の板部材によって構成されている。孔12aは、イオン抵抗体12の下面と上面とを連通するように設けられている。
【0038】
図3に例示するように、イオン抵抗体12における複数の孔12aが形成された領域を「孔形成エリアPA」と称する。本実施形態に係る孔形成エリアPAは、平面視で円形状を有している。また、本実施形態に係る孔形成エリアPAの面積は、基板Wfの被めっき面Wfaの面積と同じか、又は、この被めっき面Wfaの面積よりも大きい。但し、この構成に限定されるものではなく、孔形成エリアPAの面積は、基板Wfの被めっき面Wfaの面積よりも小さくてもよい。
【0039】
このイオン抵抗体12は、アノード11と基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている。本実施形態のように、めっき槽10にイオン抵抗体12が配置されることで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。
【0040】
図3や
図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方且つイオン抵抗体12よりも下方の箇所には、膜16が配置されていてもよい。この場合、めっき槽10の内部は、膜16によって、膜16よりも下方のアノード室17aと、膜16よりも上方のカソード室17bとに区画される。アノード11はアノード室17aに配置され、イオン抵抗体12や基板Wfはカソード室17bに配置される。膜16は、めっき液Psに含まれる金属イオンを含むイオン種が膜16を通過することを許容しつつ、めっき液Psに含まれる非イオン系のめっき添加剤が膜16を通過することを抑制するように構成されている。このような膜16として、例えばイオン交換膜を用いることができる。
【0041】
めっき槽10には、めっき槽10にめっき液Psを供給するための供給口が設けられている。具体的には、本実施形態に係るめっき槽10の外周壁10bには、アノード室17aにめっき液Psを供給するための第1供給口13aと、カソード室17bにめっき液Psを供給するための第2供給口13bと、が設けられている。
【0042】
また、めっき槽10には、アノード室17aのめっき液Psをめっき槽10の外部に排出するための第1排出口14aが設けられている。第1排出口14aから排出されためっき液Psは、ポンプ(図示せず)によって圧送されて、再び、第1供給口13aからアノード室17aに供給される。
【0043】
オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外側に配置された、有底の容器によって構成されている。オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外周壁10bの上端を超えためっき液Ps(すなわち、めっき槽10からオーバーフローしためっき液Ps)を一時的に貯留するために設けられている。オーバーフロー槽20に貯留されためっき液Psは、第2排出口14bから排出された後に、ポンプ(図示せず)によって圧送されて、再び、第2供給口13bからカソード室17bに供給される。
【0044】
基板ホルダ30は、カソードとしての基板Wfを、基板Wfの被めっき面Wfaがアノード11に対向するように保持している。本実施形態において、基板Wfの被めっき面Wfaは、具体的には、基板Wfの下方側を向いた面(下面)に設けられている。
【0045】
図3に例示するように、基板ホルダ30は基板Wfの被めっき面Wfaの外周縁よりも下方に突出するように設けられたリング31を有していてもよい。具体的には、本実施形態に係るリング31は、下面視で、リング形状を有している。
【0046】
基板ホルダ30は、回転機構40に接続されていている。回転機構40は、基板ホルダ30を回転させるための機構である。
図3に例示されている「R1」は、基板ホルダ30の回転方向の一例である。回転機構40としては、公知の回転モータ等を用いることができる。傾斜機構45は、回転機構40及び基板ホルダ30を傾斜させるための機構である。昇降機構50は、上下方向に延在する支軸51によって支持されている。昇降機構50は、基板ホルダ30、回転機構40及び傾斜機構45を上下方向に昇降させるための機構である。昇降機構50としては、直動式のアクチュエータ等の公知の昇降機構を用いることができる。
【0047】
制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサ801や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置802等を備えている。制御モジュール800は、記憶装置802に記憶されたプログラムの指令に基づいて、プロセッサ801が作動することで、めっきモジュール400の動作を制御する。
【0048】
図5は、パドル70の模式的な平面図である。
図3、
図4及び
図5を参照して、パドル70は、めっき槽10の内部におけるアノード11と基板Wfとの間の箇所に配置されている。具体的には、本実施形態に係るパドル70は、アノード11よりも上方に配置されたイオン抵抗体12と基板Wfとの間に配置されている。
【0049】
図5を参照して、パドル70は、駆動装置77によって駆動される。駆動装置77の動作は制御モジュール800が制御する。パドル70が駆動されることで、めっき槽10のめっき液Psは撹拌される。
【0050】
本実施形態に係る駆動装置77は、制御モジュール800の指示を受けて、パドル70を、基板Wf(又は、アノード11)に平行な方向で「第1方向(本実施形態では、一例として、X方向)」、及び、第1方向とは反対の「第2方向(本実施形態では、一例として、-X方向)」に交互に移動させる。すなわち、本実施形態に係るパドル70は、第1方向及び第2方向に往復移動する。
【0051】
また、本実施形態に係る駆動装置77は、パドル70を第1方向に移動させるときのストロークと第2方向に移動させるときのストロークとを変更できるように構成されている。このような駆動装置77のメカニカルな構造自体は特に限定されるものではなく、公知の駆動装置(例えば、特開2019-151874号公報等)を用いることができる。具体例を挙げると、本実施形態に係る駆動装置77は、パドル70に接続されたリニアモータ77aを備え、このリニアモータ77aによってパドル70を往復移動させるように構成されている(すなわち、本実施形態に係る駆動装置77は、一例として、リニアモータ式の駆動装置である)。
【0052】
本実施形態に係るパドル70は、一例として、第1方向及び第2方向に、一定の速度(mm/sec、又は、rpm)で移動する。また、一例として、本実施形態に係るパドル70が第1方向に移動する際の速度と第2方向に移動する際の速度とは同じ値である。なお、パドル70の往復移動時の速度の単位をrpmで表す場合、例えばパドル70の速度がN(rpm)とは、パドル70が1往復することを1分間にN回行うということを意味する。
【0053】
図5に例示するように、本実施形態に係るパドル70は、第1方向(及び第2方向)に対して垂直な方向(Y軸の方向)に延在する梁部材71を、複数有している。隣接する梁部材71の間には、隙間が設けられている。複数の梁部材71の一端は第1連結部材72aに連結され、他端は第2連結部材72bに連結されている。パドル70が駆動した場合、パドル70の具体的には梁部材71がめっき液Psを撹拌する。すなわち、梁部材71は「撹拌部位」としての機能を有している。
【0054】
なお、本実施形態に係るパドル70の往復移動方向の長さであるパドル幅(
図5で、パドル70のX方向の長さ)は、基板Wfの被めっき面Wfaの第1方向にある外縁と第2方向にある外縁との距離の最大値である「基板幅D1(符号は
図3に例示されている)」よりも小さいが、この構成に限定されるものではない。パドル70のパドル幅は、基板幅D1と同じか、基板幅D1よりも大きくてもよい。
【0055】
また、本実施形態に係るパドル70のパドル幅は、パドル70が後述する第1往復態様や第2往復態様で往復移動した際に、パドル70がめっき槽10の外周壁10bの内面に衝突しない大きさに設定されている。
【0056】
パドル70は、平面視で、めっき液Psの撹拌時におけるパドル70の移動領域MA(すなわち、パドル70が往復移動する範囲)がイオン抵抗体12の孔形成エリアPAの全面を覆うように構成されていることが好ましい。この構成によれば、イオン抵抗体12の孔形成エリアPAよりも上方のめっき液Psを、パドル70によって効果的に撹拌することができる。
【0057】
なお、パドル70は、少なくともめっき液Psを撹拌するときに、めっき槽10の内部に配置されていればよく、めっき槽10の内部に常に配置されている必要はない。例えば、パドル70の駆動が停止されてパドル70によるめっき液Psの撹拌が行われない場合には、パドル70はめっき槽10の外部に配置された構成とすることもできる。
【0058】
図6は、本実施形態に係るめっき液の供給からめっき処理の開始までの一連の動作を説明するためのフロー図である。まず、めっき槽10にめっき液Psを供給する(ステップS10)。具体的には、アノード11及びイオン抵抗体12がめっき液Psに浸漬するように、めっき槽10にめっき液Psを供給する。より具体的には、本実施形態では、第1供給口13a及び第2供給口13bからめっき液Psをめっき槽10に供給する。
【0059】
次いで、基板Wfをめっき液Psに浸漬させる(ステップS20)。具体的には、本実施形態では、昇降機構50が基板ホルダ30を下降させることで、基板Wfの少なくとも被めっき面Wfaをめっき液Psに浸漬させる。
【0060】
次いで、駆動装置77がパドル70の駆動を開始させることで、パドル70によるめっき液Psの撹拌を開始させる(ステップS30)。
【0061】
パドル70がめっき液Psを撹拌することで、めっき液Psの均質性を高めることができる。また、パドル70がめっき液Psを撹拌することで、以下に説明するような効果を奏することもできる。
【0062】
具体的には、めっき槽10のめっき液Psに気泡Buが生じることがある。例えば、めっき槽10にめっき液Psを供給する際に、空気がめっき液Psとともにめっき槽10に流入した場合に、この空気が気泡Buになるおそれがある。
【0063】
上述したように、めっき槽10のめっき液Psに気泡Buが生じた場合に、この気泡Buがイオン抵抗体12の孔12aに付着する場合がある(
図4参照)。仮にパドル70によるめっき液Psの撹拌が行われない場合、この気泡Buが孔12aに多量に付着するおそれがある。このような状態で、基板Wfにめっき処理を施した場合、この気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化するおそれがある。
【0064】
これに対して、本実施形態によれば、パドル70がめっき液Psを撹拌することで、イオン抵抗体12の孔12aに付着した気泡Buの上方への移動を促進させることができる。これにより、孔12aに付着した気泡Buを上方に吸い上げて、孔12aから除去することができる。この結果、孔12aに付着した気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0065】
図6を参照して、ステップS30の後に、通電装置(図示せず)によってアノード11と基板Wfとの間に電気を流すことで、基板Wfへのめっき処理を開始させる(ステップS40)。これにより、基板Wfの被めっき面Wfaへのめっき皮膜の形成が開始される。具体的には、本実施形態では、このステップS40に係る基板Wfへのめっき処理の実行中においても、ステップS30に係るパドル70によるめっき液Psの撹拌は行われている(すなわち、めっき液Psを撹拌しつつ、被めっき面Wfaへのめっき皮膜の形成が行われている)。
【0066】
なお、パドル70がめっき液Psを撹拌する時期は、上述した時期に限定されるものではない。例えば、ステップS10とステップS20との間の時期(すなわち、めっき槽10にめっき液Psが供給された後であって、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の時期)においても、パドル70によってめっき液Psを撹拌してもよい。
【0067】
図7は、パドル70の動作の詳細を説明するためのフロー図の一例である。具体的には、この
図7は、
図6のステップS30におけるパドル70の動作の詳細を示している。
図5及び
図7を主に参照しつつ、パドル70の動作の詳細を説明すると次のようになる。
【0068】
まず、
図5を参照して、各々の梁部材71の第1方向における配列ピッチを「d(mm)」とし、各々の梁部材71の第1方向の幅を「W(mm)」とし、パドル70の往復移動回数を「n(回)」とする。なお、往復移動回数は、例えば、パドル70が第1方向に移動した後に第2方向に移動した場合に「1回」とカウントする。
【0069】
図7を参照して、まず、パドル70は、制御モジュール800の指示を受けた駆動装置77によって駆動されることで、以下に説明する「第1往復態様」で往復移動する(ステップS31)。
【0070】
この第1往復態様において、パドル70は、第1方向に移動するときのストロークとは異なるストロークで第2方向に移動することにより、パドル70が第2方向から第1方向に移動方向を変えるときの梁部材71の位置(すなわち、パドル70が往復移動を1回するときの移動開始位置(すなわち、「始点」))、及び、パドル70が第1方向から第2方向に移動方向を変えるときの梁部材71の位置(すなわち、パドル70が往復移動を1回するときの折り返し位置(すなわち、「終点」))を異ならせる。これにより、めっき処理中における梁部材71の平均滞在時間を均一化させている。
【0071】
一例として、本実施形態では、この第1往復態様において、第2方向に移動するときのパドル70のストロークは第1方向に移動するときのパドル70のストロークよりも短い。具体的には、この第1往復態様の一例として、本実施形態に係るパドル70は、第1方向にストロークが「A(mm)」で移動し、次いで、第2方向にストロークが「A-W(mm)」で移動することを1回以上行う。
【0072】
すなわち、第1往復態様においてパドル70は第1方向に「A(mm)」移動した後に、第2方向に「A-W(mm)」移動する。このように、第1往復態様において、パドル70が第2方向に移動する距離は、パドル70が第1方向へ移動する距離よりも、「W(mm)」だけ短くなっている。この結果、第1往復態様において、パドル70が往復移動を開始する位置は、1往復する毎に「W(mm)」だけ第1方向にずれていく。
【0073】
但し、ステップS31は上記の構成に限定されるものではなく、例えば、ステップS31において、第2方向のストロークは、「A(mm)」よりも短く且つ「A-W(mm)」よりも大きい値であってもよい。
【0074】
次いで、制御モジュール800は、パドル70が複数回往復移動したか否かを判定する(ステップS32)。この一例として、本実施形態に係る制御モジュール800は、「W×n>d」の関係が満たされたか否かを判定する。すなわち、ステップS32において、制御モジュール800は、梁部材71の幅(W)に、パドル70の往復移動回数(n)を掛けた値が、梁部材71の配列ピッチ(d)よりも大きくなったか否かを判定する。
【0075】
通常、ステップS31に係る第1往復態様でのパドル70の往復移動は、ステップS32でYesと判定されるまで実行される。
【0076】
ステップS32でYesと判定された場合(すなわち、「W×n>d」の関係が満たされた場合)、制御モジュール800の指示を受けた駆動装置77によって駆動されることで、パドル70は以下に説明する「第2往復態様」で往復移動する(ステップS33)。すなわち、本実施形態に係るパドル70は、第1往復態様で複数回往復移動した後に、第2往復態様で往復移動する。
【0077】
この第2往復態様において、パドル70は、第1方向に移動するときのストロークよりも長いストロークで第2方向に移動することにより、パドル70が第2方向から第1方向に移動方向を変えるときの梁部材71の位置(始点)、及び、パドル70が第1方向から第2方向に移動方向を変えるときの梁部材71の位置(終点)を異ならせる。これにより、めっき処理中における梁部材71の平均滞在時間を均一化させている。
【0078】
具体的には、この第2往復態様の一例として、本実施形態に係るパドル70は、第1方向にストロークが「A-W(mm)」で移動し、次いで、第2方向にストロークが「A(mm)」で移動することを1回以上行う。
【0079】
すなわち、第2往復態様においてパドル70は第1方向に「A-W(mm)」移動した後に、第2方向に「A(mm)」移動する。すなわち、第2往復態様において、パドル70が第1方向に移動する距離は、パドル70が第2方向へ移動する距離よりも、「W(mm)」だけ短くなっている。この結果、第2往復態様において、パドル70が往復移動を開始する位置は、1往復する毎に「W(mm)」だけ第2方向にずれていく。
【0080】
但し、ステップS33は上記の構成に限定されるものではなく、例えば、ステップS33において、第1方向のストロークは、「A(mm)」よりも短く且つ「A-W(mm)」よりも大きい値であってもよい。
【0081】
第2往復態様によるパドル70の往復移動を終了させる時期は、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る制御モジュール800は、一例として、第2往復態様によるパドル70の往復移動が開始されてからのパドル70の往復移動回数が「n(回)(これは、ステップS32のnと同じ値である)」になった場合に、第2往復態様によるパドル70の往復移動を終了させる。
【0082】
第2往復態様によるパドル70の往復移動が終了した場合、制御モジュール800は、
図7のフローチャートをステップS31から再び実行してもよい(すなわち、
図7のフローチャートを繰り返し実行してもよい)。また、制御モジュール800は、
図7のフローチャートの任意の時期に、パドル70の駆動を強制的に停止させる旨の駆動停止要求を受けた場合には、
図7のフローチャートの実行を強制的に終了させて、パドル70の駆動を停止させてもよい。
【0083】
以上説明したような本実施形態によれば、パドル70の往復移動の態様が第1往復態様を含んでいるので、パドル70が第1方向から第2方向に移動方向を変えるときや第2方向から第1方向に移動方向を変えるときに(すなわち、パドル70の往復移動時の速度がゼロになるときに)、パドル70の梁部材71が同じ箇所に位置しないようにすることができる。これにより、パドル70の梁部材71による電場遮蔽の影響を小さくすることができる。この結果、基板Wfのめっき品質を向上させることができる。具体的には、例えば、基板Wfに形成されるめっき皮膜の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、パドル70の往復移動の態様が第2往復態様をさらに含んでいるので、パドル70の梁部材71による電場遮蔽の影響をより小さくすることができる。この結果、基板Wfのめっき品質をより向上させることができる。
【0085】
なお、本実施形態の構成は上記の構成に限定されるものではなく、例えば、第2往復態様において、パドル70の往復移動時のストロークは一定であってもよい。具体的には、この場合、第2往復態様において、パドル70は第1方向及び第2方向にストロークがA(mm)で移動してもよい。この場合においても、パドル70の往復移動が上述した第1往復態様を含んでいれば、パドル70の梁部材71による電場遮蔽の影響を小さくすることは可能である。
【0086】
また、第1往復態様において、パドル70が第2方向に移動するときのストロークは第1方向に移動するときのストロークよりも長くてもよい。例えば、この場合、第1往復態様において、パドル70は、第1方向にストロークが「A-W(mm)」で移動し、次いで、第2方向にストロークが「A(mm)」で移動してもよい。そして、この場合、第2往復態様において、パドル70が第2方向に移動するときのストロークは第1方向に移動するときのストロークよりも短いことが好ましい。例えば、この場合、第2往復態様において、パドル70は、第1方向にストロークが「A(mm)」で移動し、次いで、第2方向にストロークが「A-W(mm)」で移動すればよい。
【0087】
(変形例1)
図8(A)及び
図8(B)は、実施形態の変形例1に係るめっき装置1000を説明するための模式図である。具体的には、
図8(A)及び
図8(B)は、本変形例に係るめっき装置1000のイオン抵抗体12の周辺構成を模式的に拡大して断面図示している。なお、
図8(A)及び
図8(B)において、パドル70は、その1つの梁部材71が例示されている。
【0088】
本変形例は、第1往復態様及び第2往復態様のうち少なくとも1つにおいて、第1方向にパドル70が複数回移動する際に、又は、第2方向にパドル70が複数回移動する際に、パドル70が異なる速度で移動する点において、前述した実施形態と異なっている。
【0089】
この具体例として、本変形例では、第1往復態様及び第2往復態様の「両方」において、第1方向にパドル70が複数回移動する際、又は、第2方向にパドル70が複数回移動する際に、パドル70が異なる速度で移動している。
【0090】
この一例として、
図8(A)及び
図8(B)は、「第1方向」にパドル70が複数回移動する際にパドル70が異なる速度で移動する様子を例示している。具体的には、
図8(A)に例示するように、本変形例に係る第1往復態様及び第2往復態様は、第1方向にパドル70が「第1速度V1(mm/sec、又は、rpm)」で移動することと、
図8(B)に例示するように、第1方向にパドル70が第1速度V1よりも速い「第2速度V2(mm/sec、又は、rpm)」で移動することと、を含んでいる。
【0091】
具体的には、本変形例に係る制御モジュール800の指示を受けた駆動装置77は、第1往復態様及び第2往復態様において、パドル70を複数回、第1方向に移動させる際に、この第1方向への複数回の移動のうち、一部の回では、パドル70を第1速度V1で移動させ、残りの回ではパドル70を第2速度V2で移動させる。
【0092】
なお、上記の場合において、駆動装置77は、第2方向にパドル70を移動させる際には、パドル70を例えば第1速度V1及び第2速度V2の中から選択された1つの速度(すなわち、一定速度)で移動させればよい。
【0093】
あるいは、本変形例は、「第2方向」にパドル70が異なる速度で複数回移動する構成とすることもできる。具体的には、この場合、第1往復態様及び第2往復態様のうち少なくと1つは、第2方向にパドル70が第1速度V1で移動することと、第2方向にパドル70が第2速度V2で移動することと、を含んでいる。
【0094】
本変形例によれば、パドル70が第1方向に異なる速度で複数回移動する、又は、第2方向に異なる速度で複数回移動することで、イオン抵抗体12の孔12aに付着した気泡Buを効果的に除去することができる。これにより、イオン抵抗体12の孔12aに付着した気泡Buに起因して、基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制することができる(すなわち、基板Wfのめっき品質を向上させることができる)。
【0095】
具体的には、本変形例によれば、
図8(A)に例示するように、パドル70が相対的に低速で移動する場合には、イオン抵抗体12の孔12aに付着した相対的に大きいサイズの気泡Buを上方に吸い上げて、孔12aから効果的に除去することができる。
【0096】
一方、
図8(B)に例示するように、パドル70が相対的に高速で移動する場合には、イオン抵抗体12の孔12aに付着した相対的に小さいサイズの気泡Bu(すなわち、パドル70が低速で移動する場合には吸い上げられなかったサイズの気泡Bu)を吸い上げて、孔12aから効果的に除去することができる。
【0097】
具体的には、この場合、パドル70が第2速度V2で移動することで、パドル70の梁部材71とイオン抵抗体12の上面との間に、めっき液Psの渦流Swを効果的に形成させることができる。この渦流Swによって、孔12aに付着した気泡Buのサイズが小さい場合であっても、この気泡Buを効果的に吸い上げて、孔12aから除去することができる。このように、本変形例によれば、イオン抵抗体12の孔12aに付着した異なるサイズの気泡Buを効果的に除去することができる。
【0098】
なお、第1速度V1の具体的な値は、特に限定されるものではないが、例えば、サイズ(最大外形寸法)が基準値以上の気泡Buをイオン抵抗体12の孔12aから除去できるような速度を用いることができる。この第1速度V1は、例えば実験等によって好適な値を求めればよい。また、第2速度V2の具体的な値は、第1速度V1よりも速い速度であれば、特に限定されるものではないが、例えばサイズが基準値未満の気泡Buを孔12aから除去できるような速度を用いることができる。この第2速度V2も、例えば実験等によって好適な値を求めればよい。
【0099】
なお、第1速度V1と第2速度V2の好適な比率の一例を挙げると、第2速度V2として、第1速度V1の約1.5倍以上の速度を用いることができる。
【0100】
(変形例2)
図9(A)及び
図9(B)は、実施形態の変形例2に係るめっき装置1000を説明するための模式図である。具体的には、
図9(A)及び
図9(B)は、本変形例に係るめっき装置1000のイオン抵抗体12の周辺構成を模式的に拡大して断面図示している。なお、
図9(A)及び
図9(B)において、パドル70は、その1つの梁部材71が例示されている。
【0101】
本変形例は、第1往復態様及び第2往復態様のうち少なくとも1つにおいて、パドル70が第1方向に「第1速度V1」で移動した後に(
図9(A)参照)、第2方向に第1速度とは異なる「第2速度V2」で移動する(
図9(B)参照)点において、前述した実施形態や変形例1と異なっている。
【0102】
すなわち、本変形例に係る制御モジュール800の指示を受けた駆動装置77は、第1往復態様及び第2往復態様のうち少なくとも1つにおいて、パドル70を第1方向に第1速度V1で移動させた後に第2方向に第2速度V2で移動させることを複数回繰り返す。
【0103】
なお、本変形例において、第2速度V2は、一例として、第1速度V1よりも速い速度である。但し、この構成に限定されるものではなく、第2速度V2は第1速度V1よりも遅い速度であってもよい。
【0104】
本変形例によれば、パドル70が1往復する際に、第1速度V1及び第2速度V2でパドル70が移動することができる。これにより、イオン抵抗体12の孔12aに付着した気泡Buを効果的に除去することができる。この結果、基板Wfのめっき品質を向上させることができる。
【0105】
具体的には、パドル70が1往復する際に、パドル70が相対的に低速で移動する場合(
図9(A))には、イオン抵抗体12の孔12aに付着した相対的に大きいサイズの気泡Buを上方に吸い上げて、孔12aから効果的に除去することができる。一方、パドル70が相対的に高速で移動する場合(
図9(B))には、イオン抵抗体12の孔12aに付着した相対的に小さいサイズの気泡Buを上方に吸い上げて、孔12aから効果的に除去することができる。
【0106】
(他の変形例)
なお、上述した変形例1や変形例2において、パドル70が往復移動する際のストロークは一定であってもよい。すなわち、この場合、パドル70は、往復移動時に、第1方向及び第2方向にそれぞれA(mm)ずつ移動してもよい。この構成によれば、前述した実施形態に特有の作用効果を奏することは困難であるが、変形例1や変形例2に特有の作用効果(イオン抵抗体12の孔12aに付着した気泡Buを除去して、基板Wfのめっき品質を向上させるという作用効果)を奏することは可能である。
【0107】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
10 めっき槽
11 アノード
12 イオン抵抗体
12a 孔
30 基板ホルダ
70 パドル
71 梁部材
77 駆動装置
1000 めっき装置
Wf 基板
Ps めっき液
Bu 気泡
V1 第1速度
V2 第2速度
【要約】
パドルの梁部材による電場遮蔽の影響を小さくすることができる技術、又は、イオン抵抗体の孔に付着した気泡を除去することができる技術を提供する。
めっき装置1000は、アノード11と基板Wfとの間に配置されて、基板に平行な方向で第1方向及び第2方向に往復移動することで、めっき液Psを撹拌するように構成されたパドル70を備え、パドルは、パドルの往復移動方向とは垂直な方向に延在する複数の梁部材71を有し、パドルが第1方向及び第2方向に往復移動することは、パドルが第1往復態様で往復移動することを含み、第1往復態様において、パドルは、第1方向に移動するときのストロークとは異なるストロークで第2方向に移動することにより、パドルが第2方向から第1方向に移動方向を変えるときの複数の梁部材の位置及び第1方向から第2方向に移動方向を変えるときの複数の梁部材の位置を異ならせる。