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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ワーク加工システム及びワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/22 20060101AFI20240419BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240419BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20240419BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240419BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20240419BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20240419BHJP
   B23Q 15/24 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B23Q17/22 A
G01B21/00 A
B23Q7/04 A
B23Q7/04 B
B23Q17/20 A
B25J9/22 Z
G05B19/404 H
B23Q15/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020057923
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154447
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健人
(72)【発明者】
【氏名】田村 仁
(72)【発明者】
【氏名】山形 智生
(72)【発明者】
【氏名】外川 陽一
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q15/00-15/28
B23Q17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを測定する測定機と、前記ワークを加工する加工機と、前記測定機と前記加工機との間で前記ワークを搬送する搬送装置と、制御部と、を備えたワーク加工システムであって、
前記搬送装置は、ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられて前記ワークを保持するハンドと、を備えるロボットであり、
前記ハンドは、ハンド基準点を有し、
前記測定機は、前記ハンドを位置決めする第1位置決め部材と、前記第1位置決め部材で位置決めされた前記ハンドの前記ハンド基準点を測定用基準点として、前記ハンドに保持された前記ワークのワーク基準点を測定する測定部と、を有し、
前記制御部は、前記ハンド基準点と前記ワーク基準点との相対位置を算出する演算部を有し、
前記加工機は、前記ハンドを位置決めする第2位置決め部材と、前記第2位置決め部材で位置決めされた前記ハンドの前記ハンド基準点を加工用基準点として、前記ハンドに保持された前記ワークを前記相対位置に基づき加工する加工部とを有する、
ワーク加工システム。
【請求項2】
前記ハンドは、前記ロボットアームの軸線を中心に回転自在である、
請求項1に記載のワーク加工システム。
【請求項3】
前記ハンドは、一対の把持部を有する
請求項1又は2に記載のワーク加工システム。
【請求項4】
前記ハンドは、前記ロボットアームに着脱自在に取り付けられ、前記ロボットアームから取り外された状態で前記測定機及び前記加工機に位置決めされる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のワーク加工システム。
【請求項5】
ワークを測定する測定機と、前記ワークを加工する加工機と、前記測定機と前記加工機との間で前記ワークを搬送する搬送装置と、制御部と、を備え、
前記搬送装置は、ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられて前記ワークを保持するハンドと、を備えるロボットであり、
前記ハンドは、ハンド基準点を有し、
前記測定機は、前記ハンドを位置決めする第1位置決め部材と測定部とを有し、
前記加工機は、前記ハンドを位置決めする第2位置決め部材と加工部とを有し、
制御部は、演算部を有する、
ワーク加工システムによるワーク加工方法であって、
前記第1位置決め部材で位置決めされた前記ハンドの前記ハンド基準点を測定基準点として、前記ハンドに保持された前記ワークのワーク基準点を前記測定部によって測定するワーク基準点測定工程と、
前記ハンド基準点と前記ワーク基準点との相対位置を前記演算部によって算出する相対位置算出工程と、
前記第2位置決め部材で位置決めされた前記ハンドの前記ハンド基準点を加工基準点として、前記ハンドに保持された前記ワークを前記相対位置に基づき前記加工部によって加工するワーク加工工程と、
を備える、ワーク加工方法。
【請求項6】
前記ハンドは、前記ロボットアームの軸線を中心に回転自在である、
請求項5に記載のワーク加工方法。
【請求項7】
前記ハンドは、一対の把持部を有する
請求項5又は6に記載のワーク加工方法。
【請求項8】
前記ワーク加工工程の終了後、前記ハンドを前記第1位置決め部材で位置決めし、前記ハンド基準点を測定基準点として前記ハンドに保持された前記ワークを前記測定部によって測定するワーク測定工程を備える、
請求項5から7のいずれか1項に記載のワーク加工方法。
【請求項9】
記ワーク基準点測定工程、前記ワーク加工工程及び前記ワーク測定工程は、それぞれ前記ハンドを前記ロボットアームから取り外した状態で行われる、
請求項に記載のワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工システム及びワーク加工方法に係り、特に測定機と加工機との間でワークを搬送する搬送装置を備えたワーク加工システム及びワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを測定する測定機と、ワークを加工する加工機と、測定機と加工機との間でワークを搬送する搬送装置と、を備えたワーク加工システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたワーク加工システムは、ワークの寸法を測定する寸法測定機構と、ワークに機械加工を施す工作機械と、寸法測定機構と工作機械との間でワークを搬送するロボットと、備えている。
【0004】
上記のワーク加工システムによれば、ワークは、ロボットによって寸法測定機構に搬送され、寸法測定機構によって加工前の寸法が測定された後、ロボットによって加工機に移載され、加工機によって機械加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-13191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1に開示されたワーク加工システムのように、ロボットによってワークを測定機と加工機との間で搬送し、測定と加工とを行うシステムでは、以下の問題がある。
【0007】
すなわち、測定機と加工機とにワークをセットする度に、ワークをそれぞれ適切な位置にアライメントしなければならないので、ワークの測定から加工に至るワーク処理時間が長くなるとともに、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、上記のようなワーク加工システムでは、ワークは、測定機において測定機が有する測定用基準点を基準に測定され、加工機においても加工機が有する加工用基準点を基準に加工が行われる。このため、加工機では、測定用基準点を加工用基準点に一致させて加工を行う必要があるが、測定用基準点を加工用基準点に一致させることは難しいため、加工機による加工精度が悪くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークの測定から加工に至るワーク処理時間を短縮することができるとともに加工精度を向上させることができるワーク加工システム及びワーク加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために、本発明のワーク加工システムは、ワークを測定する測定機と、ワークを加工する加工機と、測定機と加工機との間でワークを搬送する搬送装置と、制御部と、を備えたワーク加工システムであって、搬送装置は、ワークを保持するハンドを有し、ハンドは、ハンド基準点を有し、測定機は、ハンドを位置決めする第1位置決め部材と、第1位置決め部材で位置決めされたハンドのハンド基準点を測定用基準点として、ハンドに保持されたワークのワーク基準点を測定する測定部と、を有し、制御部は、ハンド基準点とワーク基準点との相対位置を算出する演算部を有し、加工機は、ハンドを位置決めする第2位置決め部材と、第2位置決め部材で位置決めされたハンドのハンド基準点を加工用基準点として、ハンドに保持されたワークを相対位置に基づき加工する加工部とを有する。
【0011】
本発明のワーク加工システムの一形態は、搬送装置は、ロボットアームを有するロボットであり、ロボットアームにハンドが取り付けられることが好ましい。
【0012】
本発明のワーク加工システムの一形態は、ハンドは、ロボットアームに着脱自在に取り付けられ、ロボットアームから取り外された状態で測定機及び加工機に位置決めされることが好ましい。
【0013】
本発明の目的を達成するために、本発明のワーク加工方法は、ワークを測定する測定機と、ワークを加工する加工機と、測定機と加工機との間でワークを搬送する搬送装置と、制御部と、を備え、搬送装置は、ワークを保持するハンドを有し、ハンドは、ハンド基準点を有し、測定機は、ハンドを位置決めする第1位置決め部材と測定部とを有し、加工機は、ハンドを位置決めする第2位置決め部材と加工部とを有し、制御部は、演算部を有する、ワーク加工システムによるワーク加工方法であって、第1位置決め部材で位置決めされたハンドのハンド基準点を測定基準点として、ハンドに保持されたワークのワーク基準点を測定部によって測定するワーク基準点測定工程と、ハンド基準点とワーク基準点との相対位置を演算部によって算出する相対位置算出工程と、第2位置決め部材で位置決めされたハンドのハンド基準点を加工基準点として、ハンドに保持されたワークを相対位置に基づき加工部によって加工するワーク加工工程と、を備える。
【0014】
本発明のワーク加工方法の一形態は、搬送装置は、ロボットアームを有するロボットであり、ロボットアームにハンドが着脱自在に取り付けられ、ワーク基準点測定工程、ワーク加工工程及びワーク測定工程は、それぞれハンドをロボットアームから取り外した状態で行われることが好ましい。
【0015】
本発明のワーク加工方法の一形態は、ワーク加工工程の終了後、ハンドを第1位置決め部材で位置決めし、ハンド基準点を測定基準点としてハンドに保持されたワークを測定部によって測定するワーク測定工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークの測定から加工に至るワーク処理時間を短縮することができるとともに加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るワーク加工システムの構成を示した概略平面図
図2図1のワーク加工システムの制御系を示した機能ブロック図
図3】ワークの測定から加工に至る工程を説明したフローチャート
図4】ワークとハンドの相対位置の補正方法を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係るワーク加工システム及びワーク加工方法の実施形態について説明する。なお、図面において基本的に同じ構成要素には同じ参照符号を付す。
【0019】
図1は、実施形態に係るワーク加工システム10の構成を示した概略平面図である。
【0020】
図1に示すように、ワーク加工システム10は、ワークWを測定する測定機12と、ワークWを加工する加工機14と、測定機12と加工機14との間でワークWを搬送するロボット16と、制御装置28(図2)と、を備えている。
【0021】
測定機12は、例えば、ワークWの座標(形状、寸法)を測定する三次元座標測定機である。測定機12は、ワークWがセットされるテーブル30と、測定部を構成するプローブ32と、プローブ32をXYZの3軸方向に移動させる移動装置34と、を備えている。
【0022】
上記の測定機12によれば、テーブル30にセットされたワークWに向けてプローブ32を移動装置34によって移動させ、プローブ32をワークWに向かって移動させる。そして、プローブ32をワークWの各測定位置に移動させながら、プローブ32によって各測定位置の三次元座標(XYZ座標)を測定する。
【0023】
更に、テーブル30上には、ロボット16のハンド36を位置決めするための第1の位置決め部材38が設けられる(後述)。また、測定機12によってワークWを測定する際に、第1の位置決め部材38を、ワークWを保持した状態のハンド36を固定する治具(ハンド固定治具)としても用いることができる。
【0024】
なお、三次元座標測定機については、例えば、特開2018-84488号公報等により公知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0025】
加工機14は、測定機12の近傍、例えば、測定機12に隣接して配置される。加工機14は、例えば、フライス又はエンドミル等の工具によってワークWを切削加工する切削装置である。加工機14は、ワークWがセットされるテーブル40と、加工部を構成する工具42と、工具42をXYZの3軸方向に移動させる移動装置44と、を備えている。
【0026】
更に、テーブル40上には、ロボット16のハンド36を位置決めするための第2の位置決め部材46が設けられる(後述)。また、加工機14によってワークWを加工する際に、第2の位置決め部材46を、ワークWを保持した状態のハンド36を固定する治具(ハンド固定治具)としても用いることができる。
【0027】
上記の加工機14によれば、テーブル40にセットされたワークWに向けて工具42を移動装置44によって移動させ、工具42をワークWに接触させる。そして、工具42を移動装置44によって所定の方向に移動させることにより、ワークWを工具42によって加工する。
【0028】
ロボット16は、ロボットアーム50と、ハンド36と、を備える。
【0029】
図1では、ロボット16の一例として、複数の回転関節部(不図示)と、複数の回転関節部をそれぞれ回転駆動する複数のモータ(不図示)と、を備えた多関節型のロボットを示す。しかし、図1のロボット16は例示にすぎず、ロボット16を多関節ロボットアームに限定する趣旨ではない。
【0030】
ロボットアーム50は、X、Y及びZ方向にテーブル30及び40に対して相対的に移動可能に構成されている。ロボットアーム50の先端には、ワークWを保持するハンド36が取り付けられている。ロボットアーム50を駆動することにより、ハンド36により保持されるワークWを測定機12と加工機14との間で搬送することができる。
【0031】
ハンド36は、ロボットアーム50の軸線を中心に回転自在である。例えば、ハンド36は、Y-Z平面と平行に回転したり、X-Y平面と平行に回転したりすることにより、ワークWの姿勢を変更することができる。
【0032】
また、ハンド36は、例えば、クランプ部材又は吸着部材等の着脱部材(ハンドチェンジャ)52を介してロボットアーム50の先端に着脱自在に取り付けられている。これにより、ワークWの種類に応じた他の複数のハンドをロボットアーム50に接続可能となる。なお、ロボット16は、本発明の搬送装置の一例である。
【0033】
図2は、ワーク加工システム10の制御系を示した機能ブロック図である。
【0034】
ワーク加工システム10の制御装置28は、例えば、フィールドネットワーク(不図示)を介して、測定機12、加工機14及びロボット16と接続されており、これらとの間でデータ及び信号を通信することによりこれらを統括して制御する。
【0035】
図2に示すように、制御装置28は、制御部18、測定機コントローラ20、データ処理装置22、加工機コントローラ24、ロボットアームコントローラ26及び入出力インターフェースと(不図示)、を備える。
【0036】
制御部18は、測定機コントローラ20、データ処理装置22、加工機コントローラ24、ロボットアームコントローラ26を介して、あるいは、不図示の入出力インターフェースから入力されたユーザの指示に基づいて直接に、システム全体を統括制御する。
【0037】
測定機コントローラ20は、制御部18からの信号に基づいて測定機12の動作を制御する。また、測定機コントローラ20のメモリには、プローブ32を動かすための測定プログラムが記憶されており、この測定プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、測定機12を自動で制御することができる。あるいは、測定機コントローラ20は、不図示の入出力インターフェースを介して入力されたユーザの指示に従って測定機12を制御することもできる。
【0038】
データ処理装置22は、プローブ32によって測定された測定値データを、演算処理して座標データ等に変換した後、制御部18に出力する。
【0039】
加工機コントローラ24は、制御部18からの信号に基づいて加工機14を制御する。また、加工機コントローラ24のメモリには、工具42を動かすための加工プログラムが記憶されており、この加工プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、ワークWの加工を自動で行うことができる。あるいは、加工機コントローラ24は、不図示の入出力インターフェースを介して入力されたユーザの指示に従って加工機14を制御することもできる。
【0040】
ロボットアームコントローラ26は、ロボットアーム50に備えられているモータ等を制御することにより、ロボットアーム50を作動させる。ロボットアームコントローラ26のメモリには、ロボットアーム50を動かすためのプログラムが記憶されており、このプログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、ワークWの搬送及び姿勢の変更を自動で行うこともできる。
【0041】
制御部18、測定機コントローラ20、データ処理装置22、加工機コントローラ24及びロボットアームコントローラ26は、1以上のプロセッサを備える1以上のコンピュータを用いて実現することができる。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を挙げることができる。
【0042】
また、上記のコンピュータとしては、例えば、パソコン、マイクロコンピュータ又はPLC(Programmable Logic Controller)等を挙げることができる。コンピュータは、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、ハードディスク等の外部記録装置、入力装置、出力装置、ネットワーク接続装置等を備えていてもよい。メモリには、各装置を制御するためのプログラムが記憶されており、このプログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0043】
次に、本実施形態におけるワークの位置決めについて説明する。
【0044】
測定機12によってワークWを測定する場合には、測定機12が有する測定用基準点を基準として行われる。本実施形態に係るワーク加工システム10では、ロボット16のハンド36に設定されたハンド基準点R1を測定用基準点に設定するものである。そのため、測定機12には、ハンド基準点R1を測定用基準点に設定する第1位置決め部材38が設けられている。
【0045】
第1位置決め部材38は、一例として、テーブル30にZ方向に立設された3本のピン38A、38B、38Cを有しており、ピン38A、38Bにハンド36のY辺部36Aを当接させ、且つピン38Cにハンド36のX辺部36Bを当接させる。これにより、ハンド36が第1位置決め部材38によってテーブル32に位置決めされ、このときのハンド基準点R1が測定用基準点に設定される。
【0046】
なお、ハンド36の位置決めができれば、第1位置決め部材38の構成は特に限定されない。例えば、第1位置決め部材38は4本以上のピンを備えてもよい。また、例えば、第1位置決め部材38は3つ以上の半球又は球形の部材を備えてもよい。また、例えば、第1位置決め部材38はZ方向に立設された2以上の板を備えてもよい。
【0047】
測定機12では、ハンド36がワークWを保持した状態で、且つハンド36が第1位置決め部材38で位置決めされた状態でワークWの形状を測定する。このため、既述した測定プログラムは、ハンド基準点R1に基づいて作成される。
【0048】
加工機14によってワークWを加工する場合には、加工機14が有する加工用基準点を基準として行われる。本例の加工機14では、ハンド36に設定されたハンド基準点R1を加工用基準点に設定するものである。そのため、加工機14には、ハンド基準点R1を加工用基準点に設定する第2位置決め部材46が設けられている。
【0049】
第2位置決め部材46は、一例としてテーブル40にZ方向に立設された3本のピン46A、46B、46Cを有しており、ピン46A、46Bにハンド36のY辺部36Aを当接させ、且つピン46Cにハンド36のX辺部36Bを当接させる。これにより、ハンド36が第2位置決め部材46によってテーブル40に位置決めされ、このときのハンド基準点R1が加工用基準点に設定される。
【0050】
なお、ハンド36の位置決めができれば、第2位置決め部材46の構成は特に限定されない。第1位置決め部材38と同様に、第2位置決め部材46として様々な構成の位置決め部材を用いることができる。
【0051】
このように実施形態のワーク加工システム10では、測定機12の測定用基準点と加工機14の加工用基準点とがハンド基準点R1に設定されるため、ハンド36を第2位置決め部材46によって加工機14に位置決めするだけで、測定用基準点を加工用基準点に一致させることができる。なお、本例の加工機14では、ハンド36がワークWを保持した状態で、且つハンド36が第2位置決め部材46で位置決めされた状態でワークWを加工する。このため、既述した加工プログラムは、ハンド基準点R1の位置に基づいて作成される。
【0052】
次に、上記の如く構成されたワーク加工システム10によるワーク加工方法の一例について説明する。図3は、測定機12によるワークWの測定から、加工機14によるワークWの加工に至る工程を説明したフローチャートである。図3において、左側に加工機14側で制御される工程を示し、右側に測定機12側で制御される工程を示す。
【0053】
まず、測定機12の測定空間の外にあるワークWを、ロボット16のハンド36で保持し、この状態で測定機12の測定空間内にワークWをロボット16によって搬入する(ステップS10)。次に、ワークWをハンド36で保持した状態で、ハンド36を位置決め部材36に当接させてハンド基準点R1を測定用基準点に設定する。この後、ハンド36をロボットアーム50の先端から分離する。これにより、ワークWがハンド36に保持された状態で測定機12に設置される(ステップS20)。
【0054】
次に、測定機12のプローブ32によって、測定用基準点に設定されたハンド基準点R1のXYZ座標値を求めることにより基準取りを行う(ステップS30)。
【0055】
次に、プローブ32によって、ハンド36に保持されたワークWのワーク基準点R2(図1参照)のXYZ座標値を求める(ステップS40:ワーク基準点測定工程)。本例のワーク基準点R2は、一例として、ワークWの表面のうち未加工の粗材部分に設定されている。
【0056】
次に、データ処理装置22は、上記のハンド基準点R1のXYZ座標値及びワーク基準点R2のXYZ座標値に基づいて、ハンド基準点R1とワーク基準点R2との相対位置を算出する(ステップS50:相対位置算出工程)。そして、制御部18は、相対位置を示す情報(以下、「相対位置」と略称する。)を制御部18のメモリ(不図示)に記憶する。
【0057】
上記の相対位置は、加工機14による加工時にプロセッサによって読み出され、加工機コントローラ24のメモリに記憶され、加工機14の加工時に工具42を動かすための情報として使用される。
【0058】
加工機コントローラ24のメモリには、理想の相対位置(プログラム上の相対位置)が記憶されており、理想の相対位置とステップS50において算出した相対位置とにズレがある場合には、そのズレ量を補正値として加工機コントローラ24のメモリに記憶される。
【0059】
以下、上記した相対位置のズレについて、図4を参照して説明する。図4は、ワークWとハンド36の相対位置の補正方法を示した説明図である。
【0060】
ハンド36によってワークWを保持する場合、ハンド36に対してワークWが常に同じ位置で保持されるとは限らないため、ハンド36のハンド基準点R1とワーク基準点R2の相対位置は、ハンド36でワークWを保持する度に変化することが想定される。
【0061】
本例のように、測定機12として三次元座標測定機を採用した場合、ハンド36に対するワークWのズレ量が、大きくて数ミリ程度であれば測定可能である。しかし、加工機14はハンド基準点R1を加工用基準点として加工するので、そのズレ量分だけ加工精度が悪化してしまう。そこで、加工機14によるワークWの加工前に、ステップS50において測定機12によってハンド基準点R1とワーク基準点R2との相対位置を算出する。そして、下記の(1)式に基づき、算出した実際の相対位置から理想の相対位置(プログラム上の相対位置)を減算してズレ量を求め、このズレ量を補正値として使用して加工機14によるワークWの加工を実施する。これにより、加工機14においてより精度の高い加工が可能となる。
【0062】
(XR, YR, ZR) = (Xw´, Yw´, Zw´) - (Xw, Yw, Zw) …(1)
(XR, YR, ZR):X方向、Y方向及びZ方向のズレ量
(Xw´, Yw´, Zw´):実際のワークのXYZ座標値
(Xw, Yw, Zw):理想のワークのXYZ座標値
次に、測定終了したワークWを加工機14に移送するために、ロボットアーム50の先端をハンド36に接続し、ハンド36でワークWを保持した状態で測定機12から搬出する(ステップS60)。そして、ワークWをロボット16によって加工機14に搬入する(ステップS70)。次に、ワークWをハンド36で保持した状態で、ハンド36を位置決め部材46に当接させてハンド基準点R1を加工用基準点に設定する。この後、ハンド36をロボットアーム50の先端から分離する。これにより、ワークWがハンド36に保持された状態で加工機14に設置される(ステップS80)。
【0063】
次に、上記のズレがある場合には、そのズレ量分だけ理想の相対位置を補正する(ステップS90)。そして、補正した相対位置に基づき、ハンド基準点R1を加工用基準点として、ハンド36に保持されたワークWを工具52によって加工する(ステップS100:ワーク加工工程)。なお、上記のズレがない場合には、理想の相対位置に基づき、ハンド基準点R1を加工用基準点として、ハンド36に保持されたワークWを工具52によって加工する。
【0064】
次に、加工終了したワークWを測定機12に移送するために、ロボットアーム50の先端をハンド36に接続し、ハンド36でワークWを保持した状態で加工機14から搬出する(ステップS110)。そして、ワークWをロボット16によって測定機12に搬入する。次に、ワークWをハンド36で保持した状態で、ハンド36を位置決め部材36に当接させてハンド基準点R1を測定用基準点に設定する。次に、ハンド36をロボットアーム50の先端から分離する。この後、プローブ32を用いて加工機14で加工されたワークWの加工箇所の形状を測定する(ステップS120:ワーク測定工程)。
【0065】
この後、測定終了したワークWを測定機12から払い出しするために、ロボットアーム50の先端をハンド36に接続し、ハンド36でワークWを保持した状態で測定機12から払い出しする(ステップS130)。以上がワーク加工システム10によるワーク加工方法の一例である。
【0066】
<効果>
このように、本実施形態によれば、測定機12の測定用基準点と加工機14の加工用基準点とを共通のハンド基準点R1に設定することができるので、ハンド36を第2位置決め部材46によって加工機14に位置決めするだけで、測定用基準点を加工用基準点に一致させることができる。これによって、ワークWの測定から加工に至るワーク処理時間を短縮することができ、また、測定用基準点を加工用基準点に一致させた加工が可能となるので、加工精度を向上させることができる。
【0067】
なお、本実施形態によれば、ステップS120で示した加工箇所の形状の測定後に、ステップS130で示したようにワークWを測定機12から払い出すとしたが、例えば、加工箇所の形状に基づき、加工機14にワークWを再搬入してワークWを再加工するようにしてもよい。加工箇所の形状が許容値よりも外れていた場合には、このようにワークWの再加工を行うことが好ましい。
【0068】
また、本実施形態においては、測定機12と加工機14との間でワークWを搬送する場合には、ハンド36がロボットアーム50に接続され、測定機12でワークWを測定する場合、及び加工機14でワークWを加工する場合には、ハンド36がワークWを保持した状態でロボットアーム50からハンド36が取り外される。このように、ロボットアーム50からハンド36を取り外した状態で上記の測定及び加工を行うことにより、ロボット16からの振動の影響を受けることなく、精度の高い測定と加工とを行うことが可能となる。
【0069】
また、ハンド36を第1位置決め部材36及び第2位置決め部材46に固定するクランプ部材又は吸着部材等の固定部を測定機12と加工機14のそれぞれに設けてもよい。これにより、位置決めされたハンド36を第1位置決め部材36及び第2位置決め部材46に安定して固定できるので、ハンド36に保持されているワークWの測定精度及び加工精度を向上させることができる。
【0070】
なお、本実施形態ではハンド36をロボットアーム50から取り外した状態で測定と加工とを実施する場合について説明したが、ハンド36をロボットアーム50に取り付けた状態で上記の測定と加工とを実施してもよい。但し、振動の影響を抑えて測定と加工とを行う観点からみれば、ハンド36をロボットアーム50から取り外した状態で測定と加工とを行うことが好ましい。
【0071】
<その他>
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0072】
例えば、本実施形態では測定機12に適用されるプローブ32として、接触式のものを例示したが、これに限定されず、非接触式のプローブを適用してもよい。また、本実施形態では測定機12として三次元座標測定機を用いる場合について説明したが、測定機12は三次元測定機に限定されず、表面形状測定機等の他の測定機を用いてもよい。
【0073】
また、例えば、本実施形態では、加工機14として切削装置を用いる場合について説明したが、加工機14は切削装置に限定されず、研削装置等の他の加工機を用いてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、搬送装置として複数の回転関節部を有する多関節型のロボット16を例示したが、これに限定されず、直動関節を有するロボットでもよく、2軸又は3軸によって直交方向に駆動される直交ロボットでもよい。また、搬送装置は、ロボットに限定されるものではなく、ワークを保持するハンドを有し、このハンドを測定機と加工機との間で搬送可能な搬送装置、例えば、直動式の搬送装置であっても適用できる。
【符号の説明】
【0075】
10…ワーク加工システム、12…測定機、14…加工機、16…ロボット、18…制御部、20…測定機コントローラ、22…データ処理装置、24…加工機コントローラ、26…ロボットアームコントローラ、28…制御装置、30…テーブル、32…プローブ、34…移動装置、36…ハンド、38…第1位置決め部材、40…テーブル、42…工具、44…移動装置、46…第2位置決め部材、50…ロボットアーム、52…着脱部材
図1
図2
図3
図4