(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法および送信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0413 20170101AFI20240419BHJP
H04L 27/36 20060101ALI20240419BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240419BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20240419BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20240419BHJP
【FI】
H04B7/0413 100
H04L27/36
H04W16/28 130
H04W28/18 110
H04W28/06 110
(21)【出願番号】P 2021036458
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正文
(72)【発明者】
【氏名】宮城 利文
(72)【発明者】
【氏名】前原 文明
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-259140(JP,A)
【文献】特表2019-517179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0245718(US,A1)
【文献】白井 基ほか,スペクトラム圧縮伝送を用いたリソース制御のためのPAPR特性評価,電子情報通信学会2017年総合大会講演論文集 通信1,2017年03月07日,p.265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02 - 7/12
H04L 27/00 - 27/38
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置から構成される無線通信システムにおいて、
前記送信装置から前記受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、
前記情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、
前記データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、
前記FTN処理部によって処理されたデータ信号を前記受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、
MIMO多重化時に、前記データ信号変調部による変調方式と前記FTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数に応じた許容値以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が
最良となる組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいて前記データ信号変調部と前記FTN処理部とを制御する制御部と、
を備える無線通信システム。
【請求項2】
MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置が行う無線通信方法において、
前記送信装置から前記受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成工程と、
前記情報ビット生成工程によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調工程と、
前記データ信号変調工程によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理工程と、
前記FTN処理工程によって処理されたデータ信号を前記受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換工程と、
MIMO多重化時に、前記データ信号変調工程による変調方式と前記FTN処理工程によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数に応じた許容値以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が
最良となる組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいて前記データ信号変調工程と前記FTN処理工程とを制御する制御工程と、
を備える無線通信方法。
【請求項3】
MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えた送信装置において、
受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、
前記情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、
前記データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、
前記FTN処理部によって処理されたデータ信号を前記受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、
MIMO多重化時に、前記データ信号変調部による変調方式と前記FTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数に応じた許容値以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が
最良となる組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいて前記データ信号変調部と前記FTN処理部とを制御する制御部と、
を備える送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システム、無線通信方法および送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、FTN(faster than nyquist)伝送に関する技術が開示されている。FTN伝送は、クロック周波数を超えるシンボルレートで変調シンボルを送出する手法である。FTN伝送によれば、同伝送ビット数の高次QAM変調と比較して、PAPRの低減が期待できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】J.A.Lucciardi, et al., "Trade-off between spectral efficiency increase and PAPR reduction when using FTN signaling: Impact of non linearities," IEEE ICC 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のFTNと低次変調方式との組み合わせによれば、PAPRを上げずに高伝送ビット数を表現できる。ただし、シンボル間干渉(ISI)が大きくなり、伝送品質が劣化する懸念がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本開示の目的は、伝送品質を向上させることができる無線通信システム、無線通信方法および送信装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る無線通信システムは、MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置から構成される無線通信システムである。無線通信システムは、送信装置から受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、FTN処理部によって処理されたデータ信号を受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、MIMO多重化時に、データ信号変調部による変調方式とFTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数に応じた許容値以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が最良となる組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいてデータ信号変調部とFTN処理部とを制御する制御部と、を備える。
本開示に係る無線通信方法は、MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えた送信装置および当該送信装置から信号を受信する受信装置が行う無線通信方法である。無線通信方法は、送信装置から受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成工程と、情報ビット生成工程によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調工程と、データ信号変調工程によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理工程と、FTN処理工程によって処理されたデータ信号を受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換工程と、MIMO多重化時に、データ信号変調工程による変調方式とFTN処理工程によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数に応じた許容値以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が最良となる組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいてデータ信号変調工程とFTN処理工程とを制御する制御工程と、を備える。
本開示に係る送信装置は、MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えた送信装置である。送信装置は、受信装置に伝送する情報ビットを生成する情報ビット生成部と、情報ビット生成部によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するデータ信号変調部と、データ信号変調部によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すFTN処理部と、FTN処理部によって処理されたデータ信号を受信装置に対して伝送するための変換を行う送信信号変換部と、MIMO多重化時に、データ信号変調部による変調方式とFTN処理部によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数に応じた許容値以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が最良となる組み合わせを選択し、当該選択結果に基づいてデータ信号変調部とFTN処理部とを制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、伝送品質を向上させることができる無線通信システム、無線通信方法および送信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る無線通信システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】無線通信システムにおけるPAPRの許容値を説明する図である。
【
図3】FTN効率と変調方式との組み合わせによるISIおよびPAPRの例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して、実施の形態について説明する。本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本開示は、以下の各実施の形態に限定されるものではない。本開示には、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の各実施の形態によって開示される構成の種々の変形および組み合わせが含まれ得る。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成を模式的に示すブロック図である。本実施の形態に係る無線通信システムは、MIMO多重化機能と適応変調機能とを備えるシステムである。無線通信システムは、信号を送信する送信装置10と、当該送信装置10から信号を受信する受信装置20と、から構成される。
【0011】
MIMO多重化機能を備える送信装置10は、MIMO多重化時に、複数の送信アンテナ11から信号を送信する。受信装置20は、複数の受信アンテナ21から信号を受信可能に構成される。
【0012】
図2は、無線通信システムにおけるPAPRの許容値を説明する図である。
図2(a)は、MIMO多重数が1である場合、すなわち、1つの送信アンテナ11で信号の送信を行う場合のPAPRの許容値Aを説明するものである。PAPRの許容値Aは、送信アンテナ11からの送信出力Pと増幅器のバックオフとの関係から得られる。従来のFTN伝送においては、PAPRがこの許容値Aを超えることとなってしまう高次の変調方式を用いることができなかった。
【0013】
図2(b)は、MIMO多重化時における、すなわち、複数の送信アンテナ11で信号の送信を行う場合のPAPRの許容値A
tを説明するものである。MIMO多重化時には、各送信アンテナ11に送信出力が等分配される。MIMO多重化時における各送信アンテナ11からの平均送信出力P
tは、MIMO多重数をN
tとして、次式(1)となる。
P
t=P/N
t (1)
【0014】
上述したように、MIMO多重化時は、各送信アンテナ11からの送信出力が小さくなるため、許容されるPAPRは大きくなる。MIMO多重化時におけるPAPRの許容値Atは、次式(2)となる。
At=A+10log10(Nt) (2)
【0015】
本開示に係る無線通信システムは、MIMO多重化時に許容されるPAPRが大きくなることに着目したものである。本開示に係る無線通信システムによれば、従来、MIMO多重化を行わない場合に使用することができなかった高次変調を使用可能とすることができる。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る送信装置10は、情報ビット生成部12と、データ信号変調部13と、FTN処理部14と、送信信号変換部15と、制御部16と、を備える。
【0017】
情報ビット生成部12は、送信装置10から受信装置20に伝送する情報ビットを生成するものである。情報ビット生成部12は、例えば、誤り訂正符号化機能およびインターリーブ機能等を有していてもよい。
【0018】
データ信号変調部13は、情報ビット生成部12によって生成された情報ビットをデータ信号に変調するものである。変調方式としては、例えば、直交振幅変調(QAM)等が挙げられる。MIMO多重化時において、データ信号変調部13は、各ストリームに対して変調を施す。
【0019】
FTN処理部14は、データ信号変調部13によって変調されたデータ信号にFTN処理を施すものである。送信信号変換部15は、FTN処理部14によって処理されたデータ信号を送信アンテナ11から受信装置20に伝送するための変換を行うものである。
【0020】
制御部16は、MIMO多重化、FTN処理部14によるFTN処理、データ信号変調部13による適応変調、等の各動作を制御するものである、制御部16は、MIMO多重化時に、データ信号変調部13による変調方式とFTN処理部14によるFTN効率との組み合わせのうち、PAPRがMIMO多重数Ntに応じた許容値At以下で且つ伝送ビット数が等しい組み合わせから通信品質が最適となる組み合わせを選択する。制御部16は、当該選択結果に基づいて、データ信号変調部13とFTN処理部14とを制御する。
【0021】
また、本実施の形態に係る受信装置20は、
図1に示すように、受信信号変換部22と、データ信号復調部23と、情報ビット検出部24と、を備える。受信信号変換部22は、受信アンテナ21で受信されたデータ信号を、受信装置20で処理するための変換を行う。データ信号復調部23は、データ信号を情報ビットとして検出するための復調を行う。情報ビット検出部24は、情報ビットを検出する。情報ビット検出部24は、情報ビット生成部12に合わせて、誤り訂正復号機能およびデインターリーブ機能等を必要に応じて有していてもよい。
【0022】
図3は、FTN効率と変調方式との組み合わせによるISIおよびPAPRの例を示すテーブルである。
図3(a)は、MIMO多重化を行わない場合、すなわち、従来例を示すものである。
図3(a)の例においては、PAPRが許容値Aを超えてしまう高次の変調方式である256QAMを用いることができない。
図3(a)の例においては、FTN効率を2として、変調方式を16QAMとすることで、伝送ビット数8を実現できる。ただし、ISIが大きくなってしまうという課題がある。
【0023】
図3(b)は、MIMO多重化を行う場合として、MIMO多重数が2である場合の一例を示すものである。
図3(b)の例においては、PAPRの許容値A
tが許容値Aよりも大きくなるため、高次の変調方式である256QAMを用いることが可能となる。FTN処理をなしとすることで、ISIを小さく抑えつつ、伝送ビット数16を実現できる。また、
図3(b)の例においては、FTN効率を2として、変調方式を16QAMとすることによっても、伝送ビット数16を実現できる。
【0024】
多値数が大きい高次元の変調方式を用いた場合には、誤り率が大きくなりやすいという課題がある。一方、FTN効率を挙げた場合には、ISIが大きくなってしまうという課題がある。本開示に係る無線通信システムにおいては、多値数を大きくすることに起因する誤り率とFTN処理によって生じるISIとのトレードオフを評価して、伝送品質が最適となる組み合わせを選択して適用する。
【0025】
例えば、
図3に示す例においては、256QAMとFTNなしとの組み合わせ、および、16QAMとFTN効率2との組み合わせ、のそれぞれにおける誤り率を、事前に調べてデータとして保持しておく。保持しているデータに基づいて、伝送品質が最適となる組み合わせを選択して適用する。なお、FTN効率と変調方式との関係の情報は、例えば、予めシグナルフィールド等に収納しておき、送信装置10から受信装置20へ通知される。
【0026】
以上の実施の形態に示したように構成された送信装置10およびこの送信装置10を備える無線通信システムであれば、伝送品質を向上させることができる。なお、
図1に示される無線通信システムおよび送信装置10の各機能は、無線通信方法としても実現することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 送信装置
11 送信アンテナ
12 情報ビット生成部
13 データ信号変調部
14 FTN処理部
15 送信信号変換部
16 制御部
20 受信装置
21 受信アンテナ
22 受信信号変換部
23 データ信号復調部
24 情報ビット検出部