(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240419BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G01B11/00 Z
G01B11/26 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020037399
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】10 2019 206 278.4
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアプフェル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・マイスナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュテップタート
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル・シェーラー
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/075720(WO,A1)
【文献】特開2008-046037(JP,A)
【文献】国際公開第2005/019769(WO,A1)
【文献】特表2010-515070(JP,A)
【文献】特表2015-514982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0215435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-空間において移動可能な測定ヘッド(10;110;210)と、
-基準点(B)に対する前記測定ヘッド(10;110;210)の空間的な位置及び向きを決定する光学的な位置検出装置と
を有する測定装置であって、
-前記位置検出装置が、送信ユニット又は受信ユニットとして形成された少なくとも4つの位置決定モジュールを含んでおり、少なくとも1つの位置決定モジュールが前記測定ヘッド(10;110;210)に配置されており、少なくとも1つの位置決定モジュールが前記基準点(B)に配置されており、少なくとも3つの位置決定モジュールが受信ユニットとして形成されており、
-1つの送信ユニットが少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)を備えており、
-1つの受信ユニットが、少なくとも1つの光電式の検出器(23.1)と、該光電
式の検出器(23.1)に対する所定の空間的な関係において配置された少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1a~222.1c,222.2a~222.2c)とを含んでおり、
-前記位置決定モジュールの少なくとも一部の間の見通し線が存在し、及び
-前記測定ヘッド(10;110;210)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールと、前記基準点(B)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールとが、見通し線の少なくとも1つの関連するつながりによって接続されている、前記測定装置において、
少なくとも2つの受信ユニット(121.1~121.3)及び1つの送信ユニット(111)で閉じたネットワーク(190)が前記測定ヘッド(110)に形成されており、受信ユニット(121.1~121.3)及び/又は送信ユニット(111)への別の受信ユニット(121.4)の見通し線がブロックされる場合でも測定ヘッド姿勢の特定が可能であるように、受信ユニット(121.1~121.3)の互いの間の見通し線と、送信ユニット(111)と個々の受信ユニット(121.1~121.3)の間の見通し線とが存在することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定ヘッド(10;110;210)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールと前記基準点(B)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールの間に見通し線の少なくとも2つの関連するつながりが存在し、見通し線の該つながりが、それぞれ前記測定ヘッド(10;110;210)と前記基準点(B)の間に配置された位置決定モジュール間に存在する少なくとも1つの見通し線によって互いに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記受信ユニットの前記光電式の検出器(23.1)が、支持フレーム(25.1)を介して、熱的及び/又は機械的に不変に前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1a~222.1c,222.2a~222.2c)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記受信ユニット(21.1,21.2;122.1~121.4;221.1,221.2)における前記光電式の検出器の前方にそれぞれ少なくとも1つの走査格子(24.1)が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)及び/又は前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1c,222.2a~222.2c)が識別可能に形成されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)及び/又は前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1c,222.2a~222.2c)が光源として形成されていることを特徴とする請求項
5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記光源が、識別のために、制御・評価装置(85;285)を介して時間的かつ選択的に作動可能であることを特徴とする請求項
6に記載の測定装置。
【請求項8】
1つの受信ユニットの前記光電式の検出器(23.1)において得られるストライプパターンの位置に基づき、前記受信ユニットに対する測定される光源の相対的な角度位置を決定するよう
に制御・評価装置(85;285)が形成及び設置されており、その結果、前記少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)及び/又は前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1a~222.1c,222.2a~222.2c)の識別を介して、前記基準点(B)に対する相対的な、前記測定ヘッド(10;11;210)と少なくとも2つの位置決定モジュールの空間的な姿勢とを決定可能であることを特徴とする請求項6に記載の測定装置。
【請求項9】
-各送信ユニットが、少なくとも3つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)を含んでいること、及び
-各受信ユニットが、少なくとも3つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1c,222.2a~222.2c)を含んでいること
を特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の測定装置を有する工作機械において、
-前記測定ヘッド(10;110;210)が前記工作機械の工具収容部(80;280)に配置されており、前記工作機械のワークピーステーブル(60;260)上に配置されたワークピース(65;265)を前記測定ヘッド(10;110;210)によって測定可能であること、及び
-少なくとも1つの位置決定モジュールが前記工作機械
の機械フレーム(50)又は前記ワークピーステーブル(60;260)に配置されていること
を特徴とする工作機械。
【請求項11】
前記測定ヘッド(10;110;210)が走査部として形成されていることを特徴とする請求項
10に記載の工作機械。
【請求項12】
少なくとも3つの識別可能な送信ユニットマーカ要素(261.1~261.4)を有する送信ユニットとして形成された位置決定モジュールが前記ワークピーステーブル(260)に配置されていることを特徴とする請求項
10に記載の工作機械。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の測定装置を有する機械において、
-前記測定ヘッドが機械運動機構のエンドエフェクタに配置されており、設定された目標位置に対するエンドエフェクタの実際の位置の偏差を前記測定ヘッドによって測定可能であること、及び
-少なくとも1つの受信ユニットが、前記機械の機械フレーム又はワークピーステーブルに配置されていること
を特徴とする機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間において可動の測定ヘッドを有する測定装置に関するものである。測定ヘッドの空間的な位置及び向きは、光学的な位置検出装置を用いて決定される。
【背景技術】
【0002】
同種の測定装置は、例えば特許文献1から知られている。当該文献において提案された装置では、測定ヘッドが走査部として形成されているとともに、空間におけるロボットアームを用いて位置決めされ、三次元的に測定可能なワークピースが走査部によって走査される。測定ヘッドの空間的な位置及び向き、すなわちその姿勢は、マルチラテレーション方法を介して光学的な位置検出装置を用いて決定される。当該位置検出装置は、静止した支持部と測定ヘッドにおける基準点の間の距離を算出する複数のレーザ距離測定装置を含んでいる。静止した支持部に対する測定ヘッドの相対的な姿勢は、算出された距離に基づき、三角測量法を介して決定される。このようにして、走査部の既知の幾何形状に関連して、測定ヘッドの測定された姿勢に基づき、ワークピース表面における対応する走査点の空間的な位置を算出することが可能である。そして、このように決定された多数の走査点に基づき、走査されるワークピースの三次元的な形状を測定技術的に検出することが可能である。
【0003】
類似の装置は、特許文献2に開示されている。当該文献には座標測定機器が示されており、当該座標測定機器は、走査部として形成された測定ヘッドを備えており、当該測定ヘッドは、ワークピースを三次元的に走査するために、ブリッジ運動機構を介して空間において位置決めされる。測定ヘッドの空間的な位置及び向きを決定するために、ここでは、3つのレーザトラッカーを有する光学的な位置検出装置が用いられる。
【0004】
当該装置の場合には、それぞれ光学的な位置検出装置の静止して配置された構成要素が各機械座標系に対する空間における所定の不変の位置を占める場合にのみ測定ヘッドの姿勢の正確な決定が保証されている。当該構成要素の位置の変位が熱的及び/又は機械的に引き起こされる場合には、各位置検出装置を用いた空間的な測定ヘッド姿勢の決定時にエラーが生じ得る。そして、当該用途においては、当該エラーは、測定ヘッドによるワークピースの三次元的な測定時の測定エラーの形態で生じる。
【0005】
類似の問題は、測定ヘッドが走査部として形成されておらず、例えば機械を測定するキャリブレーション工具として形成されている場合にも生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第3629689号明細書
【文献】米国特許第4621926号明細書
【文献】国際公開第01/38828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎となる課題は、光学的な位置検出装置の推定上互いに静止した構成要素の位置の熱的及び/又は機械的に生じる変位によって引き起こされる測定ヘッド姿勢の決定時の測定エラーが低減されるように、冒頭に挙げた種類の測定装置を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する測定装置によって解決される。
【0009】
本発明による測定装置の有利な実施は、従属請求項に記載されている措置から明らかである。
【0010】
本発明による測定装置は、空間において可動な測定ヘッドと、基準点に対して測定ヘッドの空間的な位置及び向きを決定するための光学的な位置検出装置とを備えている。位置検出装置は、送信ユニット又は受信ユニットとして形成された少なくとも3つの位置決定モジュールを含んでおり、少なくとも1つの位置決定モジュールが測定ヘッドに配置されており、少なくとも1つの位置決定モジュールが基準点に配置されており、少なくとも1つの位置決定モジュールが受信ユニットとして形成されている。送信ユニットは、少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素を備えている。受信ユニットは、少なくとも1つの光電式の検出器と、当該光電式の検出器に対して所定の空間的な関係において配置された少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素とを含んでいる。位置決定モジュールの少なくとも一部の間の見通し線が存在する。測定ヘッドにおける少なくとも1つの位置決定モジュール及び基準点における少なくとも1つの位置決定モジュールは、見通し線の関連する少なくとも1つのつながり(チェーン)によって互いに接続されている。
【0011】
好ましくは、測定ヘッドにおける少なくとも1つの位置決定モジュールと基準点における少なくとも1つの位置決定モジュールの間の見通し線の少なくとも2つの関連するつながりが存在し、見通し線の該つながりが、それぞれ測定ヘッドと基準点の間に配置された位置決定モジュール間に存在する少なくとも1つの見通し線によって互いに接続されている。
【0012】
測定装置の測定範囲の第1の部分においてのみ、見通し線の2つより多くの関連するつながりが存在し、測定範囲の別の第2の部分には、見通し線のそれぞれ1つのみの関連するつながりが存在することが可能である。
【0013】
有利な一実施形態では、受信ユニットの光電式の検出器が、支持フレームを介して、熱的及び/又は機械的に不変に少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素に接続されるようになっている。
【0014】
さらに、受信ユニットにおける光電式の検出器の前方にそれぞれ少なくとも1つの走査格子を配置することが可能である。
【0015】
また、少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素及び/又は少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素が識別可能に形成されていることが可能である。
【0016】
このとき、少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素及び/又は少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素が光源として形成されているように構成することが可能である。
【0017】
加えて、光源が、識別のために、制御・評価装置を介して時間的かつ選択的に作動可能であることが可能である。
【0018】
さらに、1つの受信ユニットの光電式の検出器において得られるストライプパターンの位置に基づき、受信ユニットに対する測定される光源の相対的な角度位置を決定するように制御・評価装置を形成及び設置することが可能であり、その結果、少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素及び/又は少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素の識別を介して、基準点に対する、測定ヘッドの空間的な姿勢と、相対的な少なくとも2つの位置決定モジュールの空間的な姿勢とを決定可能である。
【0019】
また、測定ヘッドの空間的な姿勢も、また位置決定モジュールの空間的な姿勢も、互いに決定されるように、制御・評価装置が形成及び設置されていることが可能である。
【0020】
有利な実施形態では、
-各送信ユニットが、少なくとも3つの送信ユニットマーカ要素を含んでおり、及び
-各受信ユニットが、少なくとも3つの受信ユニットマーカ要素を含んでいる
ように構成されることが可能である。
【0021】
工作機械が本発明による測定装置を備えることができ、
-測定ヘッドが工作機械の工具収容部に配置されており、工作機械のワークピーステーブル上に配置されたワークピースを測定ヘッドによって測定可能であり、及び
-少なくとも1つの位置決定モジュールが工作機械の機械フレーム又はワークピーステーブルに配置されている。
【0022】
このとき、測定ヘッドを操作部として形成することが可能である。
【0023】
さらに、少なくとも3つの識別可能な送信ユニットマーカ要素を有する送信ユニットとして形成された位置決定モジュールがワークピーステーブルに配置されていることが可能である。
【0024】
工作機械が本発明による装置を備えることができ、
-測定ヘッドが機械運動機構のエンドエフェクタに配置されており、設定された目標位置に対するエンドエフェクタの実際の位置の偏差を測定ヘッドによって測定可能であり、及び
-少なくとも1つの受信ユニットが、機械の機械フレーム又はワークピーステーブルに配置されている。
【0025】
本発明による措置により、例えば受信ユニットのような光学的な位置検出装置の推定上静止した構成要素が、熱的及び/又は機械的により互いの姿勢が変位する場合にも、測定ヘッドの空間的な位置の正確な決定を保証することが可能である。このようにして、測定ヘッドによるワークピースの三次元の測定時、機械運動機構の一エラーの測定時又はその他の測定タスクにおいて場合によっては引き起こされる測定エラーを回避することが可能である。このような変位を測定技術的に検出するには、特に追加的なセンサは不要である。
【0026】
本発明の更なる詳細及び利点を、本発明による装置の図面に関連した実施例に基づいて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ロボット運動機構を有する工作機械に統合された本発明による測定装置の第1の実施例を大幅に図式化した図である。
【
図2a】
図1の実施例に基づく受信ユニットの平面図である。
【
図2b】
図2aに基づく受信ユニットの側方断面図である。
【
図2c】異なる光源発出角度を説明するための、
図2aに対応する図である。
【
図2d】異なる光源発出角度を説明するための、
図2bに対応する図である。
【
図3】本発明による動作を更に説明するための図式化された図である。
【
図4】本発明による測定装置の第2の実施例を大幅に図式化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明による測定装置の第1の実施例を
図1~
図3に基づいて説明する。
【0029】
本実施例において、本発明による測定装置は、
図1では大きく概略化されてのみ示唆されている工作機械に統合されている。ここでは、工作機械のうち、機械フレーム50と、上に配置されたワークピース65を有するワークピーステーブル60と、測定ヘッド10を有する工具収容部80を空間的に位置決めする運動機構70のみが加工空間において示唆されている。当該図において概略的に図示された運動機構70は、例えば、ロボット運動機構として、又は公知の多軸運動機構として形成されることができ、直交する3つの運動軸線に沿った、及び場合によっては1つ又は複数の追加的な回転軸線を中心とする、工具収容部80の位置決めを可能とするものである。さらに、基本的には、本発明による装置に関連してワークピース60に対して相対的に測定ヘッド10を空間的に位置決めする別の運動機構を用いることも可能である。
【0030】
本発明による測定装置には測定ヘッド10が含まれ、当該測定ヘッドは、本実施例では工作機械の工具収容部80に配置されているとともに、運動機構70を介して空間において移動可能である。ここでは、測定ヘッド10として、工作機械の加工空間において空間的に位置決め可能な、切り換え式のセンシング部が設けられており、当該センシング部により、ワークピーステーブル60に取り付けられたワークピース65を、センシングピン13を用いた触知式の走査によって測定することが可能である。これに代えて、当然、空間内において運動機構70を介して位置決め可能な測定ヘッド10を、測定センシング部として、光学的なセンシング部として、容量式の距離センサとして、キャリブレーション工具などとして、形成することも可能である。したがって、測定ヘッド10は、本発明による測定装置においては、必ずしもワークピース65の輪郭を検出するために用いられるのみならず、多くの他の測定課題に関連しても、例えば各運動機構70の位置決めエラーの測定にも用いられることが可能である。それゆえ、一般的に、測定ヘッド10は、機械運動機構を介して空間内で位置決め可能な部材である。測定ヘッド10には、具体的な構成及び測定課題に応じて様々なセンサを配置することが可能である。
【0031】
さらに、本発明による測定装置には光学的な位置検出装置が含まれ、当該位置検出装置は、基準点Bに対する測定ヘッド10の空間的な位置及び向きの決定に用いられ、これに関連して、以下では、測定ヘッド10の姿勢についても説明する。測定ヘッド姿勢を決定するための基準点Bあるいは基準系は、用途に依存して設定されることが可能である。これは、例えば、機械フレーム50における所定の点であってよいか、又は本実施例のように上にワークピース65が取り付けられたワークピーステーブル60における点であってもよい。
【0032】
本実施例では、位置検出装置は、特許文献3から基本的に知られているような複数の空間的な2D角度測定システムで構成されている。これにより、当該文献の開示内容及びこれに含まれる適切な2D角度測定システムの詳細についての情報が明示的に参照される。
【0033】
位置検出装置は少なくとも3つの位置決定モジュールを備えており、当該位置決定モジュールは、送信ユニット又は受信ユニットとして形成されている。このとき、少なくとも1つの位置決定モジュールは測定ヘッド10に配置されており、少なくとも1つの位置決定モジュールは基準点Bに配置されている。位置検出装置の少なくとも1つの位置決定モジュールは、受信ユニットとして形成されている。
【0034】
図1に図示された実施例では、1つの位置決定モジュールは、測定ヘッド10に配置された送信ユニット11として形成されている。当該送信ユニットは、ここでは複数の送信ユニットマーカ要素12.1,12.2,12.3を備えており、当該送信ユニットマーカ要素は、互いに対して所定の空間的な関係において配置されているとともに、識別可能に形成されている。これとは異なり、位置決定モジュールの測定課題、数及び配置に応じて、場合によっては1つの送信ユニットマーカ要素で十分でもあり得る。本実施例では、送信ユニットマーカ要素12.1,12.2,12.3として3つの光源が三角形の配置において設けられている。適切な光源は例えばLEDとして形成されることができ、本実施例では、個々の光源を識別するために、制御・評価装置85を用いて時間的に選択される光源の作動が設定されている。これに代えて、例えば異なる発光波長を有する光源を用いるなどして、光源として形成された送信ユニットマーカ要素12.1,12.2,12.3の識別を他の方法で行うことも可能である。
【0035】
また、本発明による装置の最小構成を表す図示の第1の実施例には、送信ユニット11のほかに、受信ユニット21.1,21.2として形成された、位置検出装置についての2つの位置決定モジュールが含まれている。受信ユニット21.1,21.2には、それぞれ少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素が割り当てられており、好ましくは、図示の例のように、3つの受信ユニットマーカ要素22.1a,22.1b,22.1c,22.2a,22.2b,22.2cが設けられている。ここで、第1の受信ユニット21.1は、ワークピーステーブル60に配置されているとともに、当該ワークピーステーブルに固結され、したがってワークピース65にも固結されている。したがって、この実施例では、第1の受信ユニット21.1は、基準点Bあるいは基準系に固定して配置された位置決定モジュールである。これに対して、第2の受信ユニット21.2は、位置検出装置の他の構成要素との必要な見通し線に関する、以下に説明される条件が満たされている限り、任意の位置に配置されることが可能である。このとき、基本的には、第2の受信ユニット21.2が機械フレーム50に配置されることも可能である。
【0036】
基本的には、2つの受信ユニットのみを用いる場合には、両受信ユニットのうち少なくとも1つが決定的な基準系に固定して配置されているか、又は各適用の基準点Bに固結されていることを保証することができる。ワークピース測定の場合には、通常、基準系は、上にワークピース65が固定して設けられたワークピーステーブル60である。各運動機構を上述の位置検出装置で測定する場合には、機械フレーム50又はワークピース65における適切に選択された機械座標系も基準系としての機能を果たすことができる。
【0037】
両受信ユニット21.1,21.2あるいは位置決定モジュールは、互いに対する直接的な見通し線あるいは視線において配置されており、
図1では様々な視線が破線で示唆されている。実際には、位置検出装置の2D角度測定システムの光学的な測定のためのそれぞれ複数の測定光路が、様々な視線に沿って、あるいは様々な視線に対して平行に延在している。より良好な明確性の理由から、
図1では、視線に沿った個々の測定光路の図示は省略されている。
【0038】
ここでは、両受信ユニット21.1,21.2のうち少なくとも1つから少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素へ、好ましくは他の受信ユニット21.1,21.2の少なくとも3つの受信ユニットマーカ要素22.1a,22.1b,22.1c,22.2a,22.2b,22.2cへ連続した視線が存在し、したがって有効な測定値を決定することができる場合に、2つの受信ユニット21.1,21.2の間に存在する見通し線と呼ばれる。これと同様に、少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素、好ましくは少なくとも3つの送信ユニットマーカ要素12.1,12.2,12.3から受信ユニット21.1,21.2へ連続した視線が存在するときに、受信ユニット21.1,21.2とセンサユニット11の間の見通し線が存在する。
【0039】
一般的に、本発明による測定装置においては、位置検出装置の位置決定モジュールの少なくとも一部の間に見通し線が存在する必要がある。このとき、測定ヘッド10における少なくとも1つの位置決定モジュール及び基準点Bにおける少なくとも1つの位置決定モジュールは、見通し線の関連する少なくとも1つのつながり(チェーン)によって互いに接続されている。
【0040】
図1の実施例では、このような関連するつながりは、第1の受信ユニット21.1と送信ユニット11の間の見通し線によって形成される。別の関連する見通し線のつながりは、第1の受信ユニット21.1と第2の受信ユニット21.2の間の見通し線及び第2の受信ユニット21.2と送信ユニットの間の見通し線を含んでいる。
【0041】
したがって、ここでは、測定ヘッド10における少なくとも1つの位置決定モジュールと基準点Bにおける少なくとも1つの位置決定モジュールの間の見通し線の2つの関連するつながりが存在する。
【0042】
特別な場合には、更に、本発明による測定装置の測定範囲の第1の部分においてのみ見通し線の2つ又はそれより多くの関連するつながりが存在し、測定範囲の別の第2の部分には見通し線のそれぞれ1つのみの関連するつながりが存在するように構成されることが可能である。このケースは、例えば、測定範囲の一部において、他の範囲に存在する見通し線が断絶されるときに生じることがあり、この原因は、例えば測定範囲の一部における遮光であり得る。
【0043】
図1に図示された例では、送信ユニット11と測定ヘッド10の間の見通し線の少なくとも2つの関連するつながりが、全ての受信ユニット21.1,21.2及び送信ユニット11を互いに接続する閉じたネットワークを形成するように、工作機械における受信ユニット21.1,21.2の配置が上述の最小要件を超えてなされ、当該ネットワークあるいは対応する見通し線は、測定動作においてできる限り中断されない。見通し線のこのような閉じたネットワークを介して、測定ヘッド姿勢の決定における更により高い精度を達成することが可能である。ここで、見通し線から成る閉じたネットワークは、送信ユニット11への見通し線を有する少なくとも2つの受信ユニット21.1,21.2がそれぞれ受信ユニット21.1,21.2への見通し線を有することで特徴付けられており、受信ユニットは、測定ヘッド10への見通し線を有している。これにより、測定ヘッド10への見通し線を有する各受信ユニット21.1,21.2は、少なくとも1つの他方の受信ユニット21.1,21.2への見通し線を有している。見通し線から成る対応するネットワークは、
図1において符号90を付されている。図示から明らかであるように、ネットワーク90は、ここでは両受信ユニット21.1,21.2間の視線あるいは見通し線と、受信ユニット10と両受信ユニット21.1,21.2間の視線とを含んでいる。当然、
図1に示された本発明による装置の最小構成に代えて、2つより多くの受信ユニット21.1,21.2も設けることも可能であり、これに対応して、より多くの視線は、描かれた(aufgespannte)ネットワークを含んでいる。
【0044】
受信ユニット21.1,21.2ごとに、それぞれ少なくとも1つの(
図1では認識できない)検出器及び少なくとも1つの識別可能な受信ユニットマーカ要素、好ましくは、図示の例のように、各受信ユニット21.1,21.2の検出器に対する所定の空間的な関係において配置された3つの受信ユニットマーカ要素22.1a,22.1b,22.1c,22.2a,22.2b,22.2cが設けられている。受信ユニットマーカ要素22.1a,22.1b,22.1c,22.2a,22.2b,22.2cは、この例では、送信ユニットマーカ要素12.1,12.2,12.3と同様に識別可能な光源あるいはLEDとして形成されている。個々の光源を識別するために、例えば、制御・評価装置85を用いて光源の時間的に選択的な作動が同様に設定されている。受信ユニットマーカ要素22.1a,22.1b,22.1c,22.2a,22.2b,22.2cに関しても、本発明による装置では、代替的な識別も当然設定されることができる。
【0045】
図2a及び
図2bには、
図1の例に基づく両受信ユニットのうち1つ21.1が、平面図で、及び他の受信ユニット21.2の受信ユニットマーカ要素22.2aと関連して側方の断面図で示されており、以下では、当該図示に基づき、とりわけ、位置検出装置の、受信ユニット21.1,21.2として形成された位置決定モジュールの基本的な構造を説明する。
図2a及び
図2bに示された受信ユニット21.1においては、いわゆる組織化(構造化)された光検出器の形態の光電式の検出器が検出器23.1として機能を果たす。当該検出器は、周期的に配置された、光感知式の多数の検出器要素を検出面において備えている。
図2bから明らかであるように、検出器23.1は、おけ状の支持フレーム25.1の内部における底部に配置されている。検出器23.1のビーム感知面は、上方へ、すなわち支持フレーム25.1の開口部の方向へ向けられている。検出器23.1あるいはそのビーム感知面の前方には走査格子24.1が配置されており、当該走査格子は、周期的な透過格子として形成されている。感知ユニットマーカ要素22.1a~22.1cは、支持フレーム25.1を介して検出器23.1に固結されている。
【0046】
光電式の検出器23.1を用いて、検出面において生じる周期的なストライプパターン(縞模様)が検出される。当該パターン(模様)は、マーカ要素から発出されるビーム束と走査格子24.1との相互作用に基づき生じる。このとき、適当なビーム束は、送信ユニット11の送信ユニットマーカ要素12.1,12.2,12.3のうち1つ、又は
図2a~
図2dに示された、他の受信ユニット21.2の受信ユニットマーカ要素の1つ22.2aに由来するものであり得る。
図2a~
図2dには、それぞれ1つのみの受信ユニットマーカ要素22.2aが例示的に示されており、当該受信ユニットマーカ要素は、第2の受信ユニット21.2に配置されている。検出器23.1におけるこのような態様で生成されるストライプパターンの位置は、各受信ユニット21.1に対する測定されるマーカ要素22.2aのビームの入射方向に依存している。好ましくは、受信ユニット21.1の走査格子24.1が二次元的な交差格子として構成され、光電式の検出器23.1が二次元的な検出器として構成されている。このようにして、検出器23.1において生じた二次元的なストライプパターンの位置に基づき、二次元的な走査格子24.1の主方向へ向き調整された2つの入射角度を決定することが可能である。すなわち、検出器23.1におけるストライプパターンを評価することで、対応する受信ユニット21.1について、各マーカ要素22.2aから来る光ビームの入射方向あるいは測定される光源の角度位置を測定技術的に検出することが可能である。この理由から、対応する位置検出装置と関連して、空間的な2D角度測定システムについても説明する。用いられる位置検出装置の光学的な作用原理についての更なる少佐に関して、再び上述の特許文献3が参照される。
【0047】
したがって、基本的には、位置検出装置の各2D角度測定システムによって、各入力ユニット21.1,21.2を測定ヘッド10又は他の受信ユニット21.1,21.2におけるアクティブなマーカ要素に接続させる光学的なビームの2つの受信角度α,βを決定することが可能である。ここで、受信角度α,βは、各受信ユニット21.1,21.2の走査格子24.1に対して決定され、受信ユニット21.1,21.2から各マーカ要素12.1~12.3,22.1a~22.1c,22.2a~22.2cへ示す視線の角度α,βにほぼ対応する。
【0048】
受信ユニット21.1,21.2の空間的に不変な配置の場合には、測定ヘッド姿勢を決定するためには、測定動作において、個々の送信ユニットマーカ要素12.1~12.3が識別のために制御・評価装置85を用いてシーケンシャルに作動され、それぞれ作動された送信ユニットマーカ要素12.1~12.3について、それぞれ2つの角度測定値が、アクティブなマーカ要素の光を受信(受光)することができる全ての受信ユニット21.1,21.2及びアクティブなマーカ要素について決定されれば、十分である。このようにして、測定ヘッド10における送信ユニット11あるいは送信ユニットマーカ要素12.1~12.3の公知の幾何学的な配置により、機械フレーム50に対する測定ヘッド10あるいはその姿勢の空間的な位置及び向きの決定が基本的には可能である。
【0049】
このような位置決定時にできる限り高い精度を確保するために、基本的に、ワークピース65がワークピーステーブル60に固結されており、更に受信ユニット21.1,21.2の互いに対する相対的な位置及び受信ユニット21.1,21.2のワークピーステーブル60に対する位置ができる限り正確に分かり、時間的に変化しなければ有利である。この場合、ワークピーステーブル60の移動の検出を省略することが可能である。
【0050】
しかし、このことは、各機械運動機構に依存して、全ての実状に対して保証されるものではない。したがって、例えば機械フレーム50の振動及び/又は熱的な影響により受信ユニット21.1,21.2の互いに対する不明瞭な相対運動、ひいてはワークピーステーブル60及びその上に配置されたワークピース65に対する受信ユニット21.1,21.2の不明瞭な相対運動が生じ得る。このことは、ここでも、ワークピーステーブル60あるいは基準点に対する相対的な測定ヘッド姿勢の決定時の不正確性が生じることとなってしまう。
【0051】
この理由から、本発明によれば、測定動作中の場合によってはあり得る受信ユニット21.1,21.2の空間的な変位を測定技術的に検出し、測定ヘッド姿勢の決定時に対応する変位を考慮するようになっている。この目的のために、推定上静止した、あるいは空間的に不変の樹脂ユニット21.1,21.2には、それぞれ対応する受信ユニット21.1,21.2の検出器に対して所定の相対位置にある、それぞれ少なくとも1つの、好ましくは3つの受信ユニットマーカ要素22.1a,22.1b,22.1c,22.2a,22.2b,22.2cが割り当てられている。図示の実施例では、受信ユニット21.1,21.2ごとに全部で3つの受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1c,22.2a~22.2cの配置が設定されており、これら受信ユニットマーカ要素は、検出器23.1の中心点を中心として心合わせして配置されている。これに対して、それぞれ少なくとも3つの受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1c,22.2a~22.2cの他の空間的な配置、例えばL字状の配置も当然可能である。受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1c,22.2a~22.2cの空間的な配置に関して、検出器23.1に対する所定の相対位置が存在することのみが重要である。検出器23.1に対する受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1c,22.2a~22.2cの当該所定の相対位置を保証するために、受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1c,22.2a~22.2cは支持フレーム25.1を介して検出器23.1に接続されており、支持フレーム25.1は、好ましくは熱的及び/又は機械的に不変に形成されている。このとき、支持フレーム25.1が要求される熱的及び/又は機械的な不変特性を保証する、インバー(不変鋼)(登録商標)、ゼロデュア(登録商標)又はカーボンのような材料で形成されていれば特に好ましい。
【0052】
当該措置により、測定動作において、制御・評価装置85を用いて空間的な測定ヘッド姿勢が検出されるのみならず、別の受信ユニット21.2の空間的な姿勢も検出することが可能である。このとき、アプリケーション、すなわち例えばワークピーステーブル60又は機械座標系の基準システムあるいは基準点Bに関して静止した、任意に選択された受信ユニット21.1の姿勢が既知であることが前提となっている。
【0053】
測定ヘッド姿勢の測定時の上述の過程と同様に、送信ユニットマーカ要素12.1~12.3に加えて、別の受信ユニット20.2に割り当てられた受信ユニットマーカ要素22.2a~22.2cが制御・評価装置85を用いてシーケンシャルに作動され、それぞれ受信される全ての受信ユニット及びそれぞれ作動される受信ユニットマーカ要素22.2a~22.2cについてのそれぞれ2つの角度測定値が別の受信ユニット20.2において決定される。加えて、同様に、第1の受信ユニット21.1の受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1cも第2の受信ユニット21.2を介して検出されることが可能である。十分に有効な測定が提供されれば、このようにして、別の受信ユニット20.2の各姿勢も、また測定ヘッド姿勢も決定されることが可能である。したがって、別の受信ユニット21.2の場合によってはあり得る空間的な変位は、空間的な測定ヘッド姿勢の決定時に補整されることができ、これにより、測定されるワークピース65に対する相対的な測定ヘッド姿勢の測定時の、ひいては測定ヘッド10を用いたワークピース65の測定時の高い精度が得られる。
【0054】
各受信ユニット姿勢の完全な決定を保証するために、異なる受信ユニット21.1,21.2の相互の姿勢検出のために、検出される受信ユニット21.1,21.2の少なくとも1つの、好ましくは3つの受信ユニットマーカ要素22.1a~22.1cあるいは22.2a~22.2cは、測定される受信ユニット21.1,21.2によって検出されることとなっている。
【0055】
受信ユニットの姿勢が既知であるか、あるいはこの受信ユニットがアプリケーション特有の基準系に関して、すなわち機械座標系に関して、又はワークピース65に関して静止しているか、あるいはワークピーステーブル60と共に移動する限り、受信ユニットの変位のこのような測定技術的な検出は、当然他の受信ユニットによっても行うことができる。
【0056】
したがって、上述の過程により、異なる受信ユニットの姿勢の相互の検出、ひいては測定ヘッド10を検出するための仮想的な計量フレームの生成が可能である。このとき、熱的及び/又は機械的に起因して生じ得る、測定時における、受信ユニット21.1,21.2の場合によってはあり得る変位も考慮されることが保証されている。
【0057】
測定ヘッドの姿勢を検出する2つより多くの受信ユニットを用いる場合が
図3において概略的に図示されている。このことは、例えば、測定動作において機械的な実状により個々の見通し線が中断され、したがって、利用可能な情報に基づいて2つの受信ユニットの最小構成により測定ヘッド姿勢の決定が不可能である場合に必要であり得る。このことは、揺動する機械構成要素による個々の見通し線の遮光によって引き起こされ得る。そして、
図3による態様では、受信ユニット121.1~121.4として形成された全部で4つの位置決定モジュールが設けられており、これら位置決定モジュールは、それぞれここでも3つの受信ユニットマーカ要素122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c,122.4a~122.4cを備えている。測定ヘッド110には、3つの送信ユニットマーカ要素112.1~112.3を有する送信ユニット111として形成された位置決定モジュールが配置されている。
図1と同様に、受信ユニット121.1~121.3と測定ヘッド110における送信ユニット111の間の見通し線あるいは視線が破線で示唆されている。したがって、図示の測定状況では、3つの受信ユニット121.1~121.3の間の互いの見通し線と、送信ユニット111と個々の受信ユニット121.1~121.3の間の見通し線とを有するネットワーク190が存在する。他の受信ユニット121.1~121.3への、及び/又は送信ユニット111への第4の受信ユニット121.4の見通し線は、現在の測定状況では障害物150によってブロックされている。したがって、この測定状況では、少なくとも2つの受信ユニット121.1~121.3と送信ユニット111を互いに接続する、位置検出に好ましくは必要な閉じたネットワーク190は、3つの受信ユニット121.1~121.3及び送信ユニット111によって形成されている。他の受信ユニット121.1~121.3及び/又は送信ユニット111への見通し線がブロックされている第4の受信ユニット121.4は、位置決定に考慮されない。
【0058】
上述のように姿勢の相互の検出を可能とするために、異なる受信ユニット間の必要な見通し線に関して、少なくとも1つの他の受信ユニットの少なくとも3つの受信ユニットマーカ要素の空間的な発出角度の範囲で、各受信ユニットの検出器が空間的な検出器-受信角度を考慮して配置されているように、受信ユニットが互いに対して配置されていることが基本的に保証されるべきである。
図2a~
図2dには、当該関係が二次元的な図示において原理的に示唆されており、これら図において検出器23.1に割り当てられた受信角度α,β及び受信ユニットマーカ要素22.2aに割り当てられた発出角度γ,δは、各平面における方位角度あるいは仰角を表している。したがって、受信角度α,βは、検出される受信ユニット12.1に対する受信ユニットマーカ要素22.2aの相対的な角度位置を規定し、同様に、発出角度γ,δは、測定される受信ユニットマーカ要素22.2aに対する、検出される受信ユニット21.1の相対的な角度位置を規定している。
【0059】
2つの受信ユニット21.1,21.2のみを有する上述の
図1の実施例では、ワークピーステーブル60あるいは基準点における第1の受信ユニット21.1の強固な配置が設定されている。これにより、同時に、ワークピーステーブル60上の、測定ヘッド10を用いて測定されるべきワークピース65に対する第1の受信ユニット21.1の強固な関連付けが得られる。これとは異なり、ワークピース座標系に対して相対的に任意に選択された第1の受信ユニットの姿勢が既知ではないものとなっていれば、当該受信ユニットとワークピースの間の空間的な関連付けが形成され得るように、追加的な措置が必要である。以下に、この場合を
図4に基づいて詳細に説明する。当該図には、
図1と同様に、ここでも、ワークピーステーブル260に取り付けられたワークピース265を測定するために工作機械の加工空間における運動機構270を介して位置決め可能な測定ヘッド210が示されており、符号250によって、機械フレームが概略的に示唆されている。上述の例では、位置検出装置には、3つの送信ユニットマーカ要素212.1~212.3を有する測定ヘッド210における送信ユニット211が含まれている。また、位置検出装置は2つの受信ユニット221.1,221.2を備えており、これら両受信ユニット221.1,221.2のうちいずれもが、第1の実施例とは異なり、ワークピーステーブル260あるいはその上に配置されたワークピースに固結されていない。これは、ワークピーステーブル260あるいはワークピース265に対する少なくとも1つの受信ユニット221.1,221.2の関連付けは、強固な機械的な結合がないため、異なるように形成される必要があることを意味している。図示の例では、これは、ワークピーステーブル260における、全部で4つの送信ユニットマーカ要素261.1~261.4を備えた送信ユニットの形態の別の位置決定モジュールを用いて行われる。これは全部で4つの識別可能な光源であり、当該光源は、ワークピーステーブル260に固定して配置されているとともに、その空間的な姿勢は、両受信ユニット221.1,221.2を用いて測定技術的に検出可能である。最小構成では、このようにしてワークピースに固結された少なくとも3つの送信ユニットマーカ要素を有する送信ユニットが必要である。光源の識別は、例えば、選択的な作動を介して、制御・評価装置285によって行うことができるが、ここでも、第1の例と同様に他の手法も考えられる。
【0060】
したがって、第1の例のように、
図4における図示の態様においても、測定ヘッド210における少なくとも1つの位置決定モジュールと基準点Bにおける少なくとも1つの位置決定モジュールの間の見通し線の2つの関連するつながりが存在する。さらに、見通し線の当該つながりは、それぞれ測定ヘッド210と基準点Bの間に配置された位置決定モジュール間に位置する少なくとも1つの見通し線によって互いに接続されている。この例では、最後に挙げた見通し線は、第1の受信ユニット221.1と第2の受信ユニット221.2の間の見通し線である。
【0061】
図1における例と同様に、見通し線の2つの接続されたつながりによって、互いに受信ユニット221.1,221.2の間の見通し線及び受信ユニット221.1,221.2と測定ヘッド210における送信ユニット211の間の見通し線から成る閉じたネットワーク290が生じ、当該ネットワーク290を以下では第1のネットワークという。さらに、ここでは、両受信ユニット221.1,221.2とワークピース260における送信ユニットマーカ要素261.1~261.4の間の見通し線から成る別のネットワーク295が存在し、当該別のネットワークを以下では第2のネットワークという。測定動作において、両ネットワーク290,295の見通し線に沿った、連続的に行われる識別可能な測定を介して、基準点としてのワークピーステーブル260ひいてはワークピース265に対する測定ヘッド210の空間的な姿勢が連続的に算出される。
【0062】
上述の実施例のほか、本発明の範囲では、別の構成可能性も存在する。
【0063】
したがって、例えば、選択的に作動可能な光源の代わりにパッシブなマーカ要素が用いられるように、
図4に示された実施例を追加的なワークピーステーブルマーカ要素によって変更することが可能である。このために、例えば、蛍光性のマーカ要素を用いることができ、当該マーカ要素は、適当な測定を受信ユニットによって行うために、1つ又は複数の光源を用いて選択的に作動される。この場合、ワークピーステーブルには、適当な電流供給を伴うアクティブな光源を配置する必要がない。
【0064】
さらに、本発明による測定装置は、工作機械においてのみ用いられるものではなく、他の運動機構を有する他の機械又は座標測定機器において用いられることも可能である。この場合、測定ヘッドを機械運動機構のエンドエフェクタに配置することができ、測定ヘッドによって、設定された目標位置に対するエンドエフェクタの実際の位置の偏差を測定することが可能である。そして、少なくとも1つの受信ユニットは、ここでも機械の機械フレーム又はワークピーステーブルに配置されている。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.-空間において移動可能な測定ヘッド(10;110;210)と、
-基準点(B)に対する前記測定ヘッド(10;110;210)の空間的な位置及び向きを決定する光学的な位置検出装置と
を有する測定装置において、
-前記位置検出装置が、送信ユニット又は受信ユニットとして形成された少なくとも3つの位置決定モジュールを含んでおり、少なくとも1つの位置決定モジュールが前記測定ヘッド(10;110;210)に配置されており、少なくとも1つの位置決定モジュールが前記基準点(B)に配置されており、少なくとも1つの位置決定モジュールが受信ユニットとして形成されていること、
-1つの送信ユニットが少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)を備えていること、
-1つの受信ユニットが、少なくとも1つの光電式の検出器(23.1)と、該光電的な検出器(23.1)に対する所定の空間的な関係において配置された少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1a~222.1c,222.2a~222.2c)とを含んでいること、
-前記位置決定モジュールの少なくとも一部の間の見通し線が存在すること、及び
-前記測定ヘッド(10;110;210)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールと、前記基準点(B)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールとが、見通し線の少なくとも1つの関連するつながりによって接続されていること
を特徴とする測定装置。
2.前記測定ヘッド(10;110;210)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールと前記基準点(B)における前記少なくとも1つの位置決定モジュールの間に見通し線の少なくとも2つの関連するつながりが存在し、見通し線の該つながりが、それぞれ前記測定ヘッド(10;110;210)と前記基準点(B)の間に配置された位置決定モジュール間に存在する少なくとも1つの見通し線によって互いに接続されていることを特徴とする上記1.に記載の測定装置。
3.前記測定装置の測定範囲の第1の部分においてのみ、見通し線の2つより多くの関連するつながりが存在し、測定範囲の別の複数の第2の部分には、見通し線のそれぞれ1つのみの関連するつながりが存在することを特徴とする上記1.又は2.に記載の測定装置。
4.前記受信ユニットの前記光電式の検出器(23.1)が、支持フレーム(25.1)を介して、熱的及び/又は機械的に不変に前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1a~222.1c,222.2a~222.2c)に接続されていることを特徴とする上記1.に記載の測定装置。
5.前記受信ユニット(21.1,21.2;122.1~121.4;221.1,221.2)における前記光電式の検出器の前方にそれぞれ少なくとも1つの走査格子(24.1)が配置されていることを特徴とする上記1.に記載の測定装置。
6.前記少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)及び/又は前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1c,222.2a~222.2c)が識別可能に形成されていることを特徴とする上記1.~5.のいずれか1つに記載の測定装置。
7.前記少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)及び/又は前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1c,222.2a~222.2c)が光源として形成されていることを特徴とする上記6.に記載の測定装置。
8.前記光源が、識別のために、制御・評価装置(85;285)を介して時間的かつ選択的に作動可能であることを特徴とする上記7.に記載の測定装置。
9.1つの受信ユニットの前記光電式の検出器(23.1)において得られるストライプパターンの位置に基づき、前記受信ユニットに対する測定される光源の相対的な角度位置を決定するように前記制御・評価装置(85;285)が形成及び設置されており、その結果、前記少なくとも1つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)及び/又は前記少なくとも1つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1a~222.1c,222.2a~222.2c)の識別を介して、前記基準点(B)に対する相対的な、前記測定ヘッド(10;11;210)と少なくとも2つの位置決定モジュールの空間的な姿勢とを決定可能であることを特徴とする上記7.に記載の測定装置。
10.前記測定ヘッド(10;110;210)の空間的な姿勢も、また前記位置決定モジュールの空間的な姿勢も、互いに決定されるように、制御・評価装置(85;285)が形成及び設置されていることを特徴とする上記6.に記載の測定装置。
11.-各送信ユニットが、少なくとも3つの送信ユニットマーカ要素(12.1~12.3;112.1~112.3;212.1~212.3)を含んでいること、及び
-各受信ユニットが、少なくとも3つの受信ユニットマーカ要素(22.1a~22.1c,22.2a~22.2c;122.1a~122.1c,122.2a~122.2c,122.3a~122.3c;222.1c,222.2a~222.2c)を含んでいること
を特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載の測定装置。
12.上記1.~11.のいずれか1つに記載の測定装置を有する工作機械において、
-前記測定ヘッド(10;110;210)が前記工作機械の工具収容部(80;280)に配置されており、前記工作機械のワークピーステーブル(60;260)上に配置されたワークピース(65;265)を前記測定ヘッド(10;110;210)によって測定可能であること、及び
-少なくとも1つの位置決定モジュールが前記工作機械の前記機械フレーム(50)又は前記ワークピーステーブル(60;260)に配置されていること
を特徴とする工作機械。
13.前記測定ヘッド(10;110;210)が走査部として形成されていることを特徴とする上記12.に記載の工作機械。
14.少なくとも3つの識別可能な送信ユニットマーカ要素(261.1~261.4)を有する送信ユニットとして形成された位置決定モジュールが前記ワークピーステーブル(260)に配置されていることを特徴とする上記12.に記載の工作機械。
15.上記1.~11.のいずれか1つに記載の測定装置を有する機械において、
-前記測定ヘッドが機械運動機構のエンドエフェクタに配置されており、設定された目標位置に対するエンドエフェクタの実際の位置の偏差を前記測定ヘッドによって測定可能であること、及び
-少なくとも1つの受信ユニットが、前記機械の機械フレーム又はワークピーステーブルに配置されていること
を特徴とする機械。