(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】即席フライ麺の製造方法。
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240419BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 J
(21)【出願番号】P 2020056976
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池上 香織
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】三宅 愛
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 俊男
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-018826(JP,A)
【文献】特開2005-168604(JP,A)
【文献】特開2016-093153(JP,A)
【文献】国際公開第2008/081931(WO,A1)
【文献】特開2015-167517(JP,A)
【文献】特開昭63-313554(JP,A)
【文献】日本機械学会誌,2003年,106(1021),936-938
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化した麺線をリテーナに入れる型詰め工程と、
前記型詰め工程の後、油中に前記リテーナを浸漬し、前記麺線をフライ乾燥する一次フライ乾燥工程と、
前記一次フライ乾燥工程の後、油中より前記リテーナを引き上げた後、前記リテーナの上または下から前記リテーナ内の容積を圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程の後、
リテーナ内の容積が圧縮された状態で再びリテーナを油中に浸漬し、前記麺線をフライ乾燥し、水分が1~5重量%のフライ麺塊を作製する二次フライ乾燥工程と、を含み、
前記一次フライ乾燥工程のフライ乾燥時間が30~150秒であり、
前記圧縮工程において、圧縮前のリテーナ内の容積が、圧縮後のリテーナ内の容積の1.5倍以上であることを特徴とする即席フライ麺の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程において、圧縮前のリテーナ内の容積が、圧縮後のリテーナ内の容積の
2~5倍であることを特徴とする請求項1記載の即席フライ麺の製造方法。
【請求項3】
前記一次フライ乾燥工程のフライ乾燥時間が
60~150秒であることを特徴とする請求項1または2記載の即席フライ麺の製造方法。
【請求項4】
前記型詰め工程において、リテーナに入れる麺線の水分が40~70重量%であり、前記フライ麺塊の麺塊密度が、0.25~0.42g/cm
3
であることを特徴とする請求項1~3何れか一項記載の即席フライ麺の製造方法。
【請求項5】
前記型詰め工程において、リテーナに入れる麺線の水分が50~70重量%であり、前記フライ麺塊の麺塊密度が、0.25~0.38g/cm
3
であることを特徴とする請求項1~4何れか一項記載の即席フライ麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席フライ麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、即席麺の製造方法としては、フライ(油揚げ)麺とノンフライ麺に大別することができる。フライ麺は、α化した麺を150℃前後の油でフライ処理して乾燥させた麺である。一方、ノンフライ麺とは、α化した麺を、油で揚げる以外の乾燥方法により乾燥させた麺であり、幾つか方法があるが、70~100℃程度で風速5m/s以下程度の熱風を当てて30分から90分程度乾燥させる熱風乾燥方法が一般的である。
【0003】
従来、フライ麺の製造方法としては、リテーナと呼ばれる金属製の容器と蓋とからなるフライ乾燥用器具に蒸煮等によりα化された麺を封入し、フライヤーと呼ばれる150℃前後に加温した食用油を入れた金属製の槽内を移動させ麺を油中に浸漬させることにより、麺中の水分を蒸発させ乾燥させる方法が一般的である。(例えば特許文献1)
【0004】
このようなリテーナの容器底面と蓋には小孔が空いており、蓋と容器とが一体化した状態で油中に浸漬させられる際に容器の底面の小孔より油が容器内部に流入する。この時、流入した油が麺と接触することにより麺の水分が蒸発し、蒸発した蒸気は蓋の小孔よりリテーナ外に排出される。この蒸気の流れにより容器底面から蓋方向へむけた上方に向かう油の流れが生まれ、麺の水分が連続して蒸発、乾燥していく。しかしながら、リテーナ内に多くの麺線を投入したり、高水分の麺線を投入すると、リテーナ内の油の流れが悪化し、乾燥しにくくなる。よって、フライ麺において高密度の麺塊を作製することや高水分の麺をフライ乾燥することに課題があった。
【0005】
高密度の麺塊を作製する方法としては、特許文献2及び3の技術が開示されている。特許文献2は、リテーナの下部より加圧気体を上部に向けて噴射し、麺塊中に油の通り道を作ることで油の流れを改善し、高密度の麺塊を作製する技術が記載されている。しかしながら、麺線の水分が高い場合には、特許文献2の方法だけでは、高密度の麺塊を作製することは困難であった。
【0006】
特許文献3は、一度乾燥した即席麺塊を過熱水蒸気中に投入し軟化させた後に圧縮し、コンパクトな圧縮麺塊を作製する技術について記載されている。しかしながら、乾燥後に処理を行うため、連続生産するための製造ラインが長くなるといった課題があった。
【0007】
また、2回以上フライを行う多段階フライ乾燥技術について、特許文献4及び5の技術が開示されている。特許文献4の技術は、麺の食感を良好にし、湯伸びを抑制する方法として、α化した麺線を、1~30秒間油で揚げる第1油揚げ工程、前記工程後に油揚げから引き上げる工程、及び 、前記工程後に再度油で揚げる第2油揚げ工程、を含み、前記第1油揚げ工程、及び、第2油揚げ工程のフライ温度が120~160℃であることを特徴とする、油揚げ麺の製造方法が記載されている。
【0008】
また、特許文献5は、油揚げ麺の製造ラインを長大化させることなく麺塊をむらなく均一に油揚げ処理することのできる油揚げ装置として、麺塊を油の流通が可能なバスケットに収容して搬送するコンベヤと、このコンベヤの搬送途中で前記麺塊を油揚げ処理する油揚げ処理手段とを備えた油揚げ装置において、前記油揚げ処理手段を複数の油槽で構成し、これらの油槽を上下に多段配置したことを特徴とする油揚げ装置が記載されている。
【0009】
しかしながら、何れの特許文献にも複数回フライすることについて記載されているが、高密度の麺塊を作製できることや高水分の麺線をフライ乾燥できることについて記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-290219号公報
【文献】特許第6239408号公報
【文献】特許第4733472号公報
【文献】特許第6419541号公報
【文献】特開2004-229906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高密度のフライ麺塊を作製する方法及び高水分の麺線をフライ乾燥する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、高密度のフライ麺塊を簡便に作製する方法や高水分の麺線をフライする方法について鋭意研究した結果、フライ初期の油の流れが重要であることに気づいた。そして鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0013】
すなわち、α化した麺線をリテーナに入れる型詰め工程と、前記型詰め工程の後、油中に前記リテーナを浸漬し、前記麺線をフライ乾燥する一次フライ乾燥工程と、前記一次フライ乾燥工程の後、油中より前記リテーナを引き上げた後、前記リテーナの上または下から前記リテーナ内の容積を圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程の後、再びリテーナを油中に浸漬し、前記麺線をフライ乾燥し、水分が1~5重量%のフライ麺塊を作製する二次フライ乾燥工程と、を含むことを特徴とする即席フライ麺の製造方法である。
【0014】
また、本発明の圧縮工程においては、圧縮前のリテーナ内の容積が、圧縮後のリテーナ内の容積の1.5倍以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の一次フライ乾燥工程の乾燥時間は、30~150秒であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の型詰め工程においては、リテーナに入れる麺線の水分が40~70重量%であり、乾燥後のフライ麺塊の麺塊密度が、0.25~0.42g/cm3であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の型詰め工程においては、リテーナに入れる麺線の水分が50~70重量%であり、乾燥後のフライ麺塊の麺塊密度が、0.25~0.38g/cm3であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の方法よりも、高密度のフライ麺塊を作製する方法及び高水分の麺線をフライ乾燥する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に使用するリテーナの1例であるリテーナAの断面図である。
【
図2】本発明に使用するリテーナの1例であるリテーナBの断面図である。
【
図3】本発明に使用するリテーナの1例であるリテーナCの断面図である。
【
図4】リテーナAを使用した場合の、本発明の説明図である。
【
図5】リテーナBを使用した場合の、本発明の説明図である。
【
図6】リテーナCを使用した場合の、本発明の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
なお、本発明において製造する即席フライ麺の種類は、特に限定されず、通常、当技術分野で知られるいかなるものであってもよい。例えば、うどん、そば、中華麺、パスタ等が挙げられる。
【0021】
1.原料配合
本発明に係る即席フライ麺には、通常の即席麺の原料が使用できる。すなわち、原料粉としては、小麦粉、そば粉、及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉及びリン酸架橋澱粉等の加工澱粉等を使用することもできる。また、本発明では、これら原料粉に対して即席麺の製造において一般に使用されている食塩やアルカリ剤、各種増粘剤、麺質改良剤、食用油脂、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0022】
2.混捏、圧延、及び切り出し
即席麺を製造する常法に従って、前記原料を混練することによって麺生地を製造する。より具体的には、前記原料粉に練り水を加え、ついでミキサーを用いて各種材料が均一に混ざるように良く混練して麺生地を製造する。上述のようにして麺生地を製造した後に、前記麺生地を複合機で圧延して麺帯を製造し、前記麺帯を圧延して、切刃を用いて切り出す事によって生麺線を製造する。
【0023】
3.α化工程
次いで得られた生麺線を、常法により蒸煮及び/又はボイルによってα化させる。α化工程においては、通常の飽和蒸気だけでなく、過熱蒸気も使用でき、蒸煮中または蒸煮間にシャワーや浸漬などの水分を補給することもできる。麺線の水分が高い程、一般にフライ乾燥は困難となるが、復元性がよくなり、α化も進むため、太い麺を復元できたり、良く煮込んだような食感を有する麺を得ることができる。
【0024】
4.着味工程
本発明においては、このようにしてα化した麺線にスプレーや浸漬等により調味液(着味液)を付着させ味付けを行うこともできる。また、麺線同士の結着防止のため、乳化剤や増粘多糖類などを麺線に付着させることもできる。着味工程は必ずしも行う必要はなく、省略しても構わない。
【0025】
5.カット及び型詰め
次いで、麺線を1食分20~50cmにカットする。カットした麺線は、
図4~6(1)で示すように即席フライ麺用リテーナに投入する。
【0026】
(麺線の水分)
型詰め時の麺線の水分としては、通常40~50重量%であるが、本発明においては、40~70重量%とかなり高水分な麺線までフライすることができる。また、通常の水分程度であったとしても、本発明を用いることにより、通常のフライ乾燥では乾燥できない高密度のフライ麺塊を作製できるだけでなく、通常のフライ乾燥で乾燥できる麺塊密度であったとしてもフライ時間を短縮することができる。
【0027】
本発明に係るリテーナとしては、例えば、
図1や
図2で示したようにリテーナの蓋体2(または2b)を押し下げることでリテーナ容器内の容積を圧縮するタイプや
図3で示すようにリテーナの容器底面体5を押し上げることでリテーナ容器内の容積を圧縮するタイプが挙げられる。
【0028】
リテーナは120~160℃程度の油中で使用されるため、好ましい素材としては金属、特に鉄製であることが好ましい。
【0029】
リテーナの形状は特に限定はなく、円柱形や直方体でもよい。リテーナの蓋体2(2a、2bを含む)及び容器底面3または容器底面体5には、0.2~30mm2程度の小孔が規則的に設けられており、油が流入するようになっている。容器側面1または容器側面体4にも小孔を設けてもよく、乾燥効率はよくなるが麺塊の形状が不均質になりやすい。蓋体2(2a、2bを含む)及び容器底面3または容器底面体5の単位面積当たりの小孔の面積は、30~58%が好ましい。
【0030】
リテーナ内の圧縮前の容積は、圧縮後の容積の1.5倍以上の容積とすることが好ましい。1.5倍未満でも、通常のフライ乾燥よりフライ時間が短縮するなどの効果があるが、リテーナ内の容積が大きい程、より多くの麺線や高水分の麺線の水分を飛ばすことが容易となり、本件技術の効果が得られやすい。ただし、圧縮前の容積がある程度以上となると本件技術の効果は変わらなくなり、圧縮やフライ麺塊の取り出しに労力がかかるため、圧縮前の容積は、圧縮後の容積の5倍程度までが好ましい。より好ましくは3倍程度までが好ましい。
【0031】
6.一次フライ乾燥工程
図4~6(2)、(3)で示すようにカットした麺線6を封入したリテーナをフライヤーと呼ばれる120~160℃に加温した食用油を入れた金属製の槽内を移動させ、麺を油中に浸漬させることにより、麺中の水分を蒸発させ、麺を乾燥する。使用する食用油としてはパーム油やラードなどが挙げられる。
【0032】
一次フライ乾燥においては、後述する圧縮工程でリテーナ容器内の容積が圧縮される際に麺線が硬化せずに圧縮できる程度で出来るだけ水分を飛ばすことが好ましい。型詰めする麺線の重量、水分や圧縮前のリテーナ容積、フライ温度、最終のフライ麺塊の麺塊密度などによって好ましい時間は異なるが、一次フライ乾燥は30~150秒が好ましい。フライ乾燥は、水分の蒸発、麺線の膨化と共に油脂が内部に混入するといった複雑な乾燥を経るため、一次乾燥終了の好ましい水分量を測定することは困難であるが、概ね6~10重量%以上の水分であれば麺線が硬化せずに圧縮可能と考える。
【0033】
7.圧縮工程
次いで、
図4~6の(4)、(5)で示すようにリテーナを油中から引き上げた後、リテーナ内の容積を所定の容積まで圧縮し、目的の麺塊形状、密度となるようにする。圧縮方法は、
図1のリテーナAのようなリテーナであれば、
図4(4)、(5)で示すように蓋体2を下方向に動かすことで圧縮し、
図2のリテーナBのようなリテーナであれば、
図5(4)、(5)で示すように蓋体2aを2bに変えて圧縮し、
図3のリテーナCのようなリテーナであれば、
図6(4)、(5)のように容器底面体5を上に持ち上げることで圧縮すればよい。
【0034】
圧縮工程中も麺線の水分が蒸発し、麺が硬化していくため、引き上げ後はできるだけ早く圧縮を開始することが好ましい。圧縮前の水分が高ければ問題ないが、一次フライ乾燥工程において、十分に水分を落とした場合は、好ましくは50秒以内、より好ましくは40秒以内に圧縮を開始することが好ましい。
【0035】
また、圧縮工程中は、リテーナを油中から引き上げるため、麺の食感も変化しやすく、できるかぎり短期間で終了することが好ましい。より好ましくは60秒以内が好ましい。
【0036】
8.二次フライ乾燥工程
次いで、
図4~6の(6)で示すように所定の容積までリテーナ内の容積を圧縮したリテーナを再び120~160℃程度の油中に浸漬させてフライ乾燥する。二次フライ乾燥工程では、麺線の水分を更に乾燥し、麺線を硬化させて、フライ麺塊8を作製する。二次フライ乾燥工程後のフライ麺塊の水分としては、1~5重量%とする。二次フライ乾燥工程の時間は、特に限定はないが、30~150秒程度が好ましい。また、一次フライ乾燥工程、二次フライ乾燥工程のトータルとして180秒以内が好ましい。
【0037】
次いで、
図4~6の(7)、(8)で示すように二次フライ乾燥後、リテーナを油中から引き出し、蓋体2、蓋体2bまたは蓋体2及び容器底面体5を外し、リテーナからフライ麺塊8を取り出す。取り出したフライ麺塊8は所定時間冷却して使用する。
【0038】
(麺塊密度)
本発明に係る麺塊密度は、フライ麺塊の重量(g)を圧縮後のリテーナ内の容積(cm3)で割ったものを示す。リテーナに投入する麺線の重量が多くなるほど、麺塊密度は高くなる。本発明においては、通常のフライ乾燥では乾燥できない高密度のフライ麺塊を作製することができる。麺塊密度としては、フライする麺線の水分含量にもよるが0.42g/cm3までフライ可能である。また、麺塊密度が0.25g/cm3よりも高い場合は、通常のフライ乾燥でも乾燥可能な場合であっても、本件発明を用いることでフライ乾燥時間が短くなる効果がある。しかしながら、麺塊密度が0.25g/cm3より低くなるとフライする麺線が高水分の場合を除き、本発明の効果が弱くなる。
【0039】
9.その他工程
冷却したフライ麺塊は、包装工程に移りスープや具材とともにカップまたは袋に包装され即席フライ麺として販売される。
【0040】
以上のように、α化した麺線をリテーナに型詰めし、油中で一次フライ乾燥した後、油中から取り出し、リテーナ内の容積を圧縮し、再び油中で二次フライ乾燥することで、従来の方法よりも、高密度のフライ麺塊を作製することや高水分の麺線をフライ乾燥することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
<実験1 圧縮前のリテーナ内の容積と圧縮後のリテーナ内の容積との関係>
(試験例1-1)
中力粉1000gに食塩15g、かんすい3g、重合リン酸塩1gを溶解した練水350mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練して麺生地(ドウ)を得た。
【0042】
得られた麺生地を整形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.22mmとした後、切刃20番丸刃で麺線を切り出した。
【0043】
切り出された麺線をただちに2分15秒にわたって蒸煮処理した後、約40cmとなるようにカットし、95℃で120秒間ボイルした後、1L当り食塩50g、グルタミン酸ナトリウム15gを溶解した着味液に4秒間浸漬し、水分62重量%のα化した麺線を作製した。
【0044】
次いで、
図1で示したリテーナAのようなリテーナを用いた。リテーナの形状は、容器内の内径が112mmで、容器内側の高さが92mmの円筒形状で、容器側面1は非開孔であり、容器底面3と蓋体2には、穴径が2.9mmの小孔が、開孔率50%となるように60°千鳥状に略均一に空いている。蓋体2は、
図4(5)のように蓋体2をリテーナ容器内に全部押し込んだ時にリテーナ容器底面3から蓋体2までの高さが30mmとなるように設計されている。
【0045】
リテーナの容器内にα化した麺線を230g入れ、蓋体2の位置を容器底面3から30mmとなるように全部押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(リテーナ内の容積296cm3)
【0046】
150℃のパーム油を入れたフライヤーにリテーナを浸漬させてから30秒後、60秒後、75秒後、90秒後、120秒後、150秒後にリテーナから麺を取り出し、予め重量を測定したアルミパウチを用意し、そこに麺を入れ、各秒数後の麺の重量を測定した。また、取り出した各秒数後の麺塊の硬さを評価した。評価は、上から麺塊を押して圧縮できるものを○、圧縮が可能だが一部麺が割れるものを△、圧縮できない硬さのものを×とした。
【0047】
(試験例1-2)
蓋体2の位置を容器底面3から45mmの位置まで押し込んだ状態でフライする以外は、試験例1-1の方法に従って試験を行った。(リテーナ内の容積443cm3)
【0048】
(試験例1-3)
蓋体2の位置を容器底面3から60mmの位置まで押し込んだ状態でフライする以外は、試験例1-1の方法に従って試験を行った。(リテーナ内の容積591cm3)
【0049】
(試験例1-4)
蓋体2の位置を容器底面3から90mmの位置まで押し込んだ状態でフライする以外は、試験例1-1の方法に従って試験を行った。(リテーナ内の容積887cm3)
【0050】
実験1の重量の測定結果を下記表1及び
図7に記載する。また、麺塊の硬さの評価結果を表2に記載する。
【0051】
【0052】
【0053】
表1及び
図7で示すように試験例1-1のリテーナ容積では、麺重量の減少が少なく十分にフライ乾燥ができていないことがわかる。それに対し、リテーナの容積を増やした試験例1-2~1-4では、麺重量が十分に減少し、フライ乾燥できていることがわかる。リテーナの容積が大きい程、乾燥後に急激に麺重が減少していくが、試験例1-3、1-4で示すように試験例1-1の容量の2倍でも、3倍でも途中から水分の減少量はほとんど変わらない結果となった。
【0054】
麺塊の圧縮の評価については、表2の試験例1-2~1-4で示すようにかなり乾燥した後でも圧縮できることがわかる。参考までに実施例1-4の75秒乾燥時の水分を測定したが、油脂の付着量により、値がぶれるが6~10重量%程度であった。
【0055】
試験例1-1の結果から高水分の麺や高密度の麺を揚げる場合、リテーナの容積を圧縮した後は、水分の乾燥が上手くいかないことが想定されるため、出来る限り水分を落としてからリテーナの圧縮を開始することが好ましいことが示唆された。試験例1-2であれば、120秒程度、試験例1-3、1-4では75秒程度が圧縮開始に好ましいことが示唆された。
【0056】
<実験2 圧縮工程開始の時間>
【0057】
(試験例2)
試験例1-4の方法で75秒間フライ乾燥した後、油中からリテーナを取り出し、10秒後、20秒後、30秒後、40秒後、50秒後、60秒後に蓋体2の位置を容器底面3から30mmとなるように押し込みリテーナ内の容積を圧縮し、評価を行った。評価は、容易に圧縮できるものを○、抵抗はあるが麺が割れずに最後まで圧縮できるものを△、麺が割れるか、最後まで圧縮できないものを×とした。評価結果を下記表3に示す。
【0058】
【0059】
実験2で示すようにリテーナを油中から引き上げてから時間が経つと、リテーナの持つ熱によってリテーナと接する麺が乾燥し、硬化していく。40秒までは容易に圧縮できたが、50秒となると圧縮に抵抗を感じ、60秒となると麺を力づくで割らなければ圧縮できなかった。以上のことから、リテーナを油中から引き上げてから圧縮工程を開始するまでの時間は、50秒以内が好ましく、より好ましくは40秒以内であることが示唆された。
【0060】
<実験3 麺線水分と麺塊密度との関係>
【0061】
(試験例3-1)
中力粉1000gに食塩15g、かんすい3g、重合リン酸塩1gを溶解した練水350mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練して麺生地(ドウ)を得た。
【0062】
得られた麺生地を整形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.22mmとした後、切刃20番丸刃で麺線を切り出した。
【0063】
切り出された麺線をただちに2分15秒にわたって蒸煮処理した後、約40cmとなるようにカットし、蒸煮麺100gに対して1L当り食塩50g、グルタミン酸ナトリウム15gを溶解した着味液を10ml付着させ、水分40重量%のα化した麺線を作製した。
【0064】
次いで、実験1で使用したリテーナの容器内にα化した麺線を103g入れ、蓋体2の位置を容器底面3から30mmとなるように全部押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(リテーナ内の容積296cm3)
【0065】
次いで、リテーナを150℃の油中に浸漬し、180秒間フライした後、リテーナより麺塊を取り出し、冷却し、74gのフライ麺塊を得た。(麺塊密度0.25g/cm3)
このとき、フライ中の大きな泡が消え、小さな泡となる時間(乾燥が終了したと考えれる時間)を測定したところ乾燥開始から60秒であった。
【0066】
(試験例3-2)
【0067】
α化した麺線をリテーナに124g入れる以外は、試験例3-1の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、89gであった。(麺塊密度0.30g/cm3)
【0068】
(試験例3-3)
α化した麺線をリテーナに157g入れる以外は、試験例3-1の方法に従って、フライ麺塊の作製を試みたが、十分フライできていないため、フライ時間を300秒まで延ばしフライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、112gであった。(麺塊密度0.38g/cm3)
【0069】
(試験例3-4)
α化した麺線をリテーナに173g入れる以外は、試験例3-1の方法に従って、フライ麺塊の作製を試みたが、十分フライできていないため、フライ時間を300秒まで延ばしたが乾燥せずフライ麺塊は作製できなかった。
【0070】
(試験例3-5)
実験1で使用したリテーナの容器内に 試験例3-1同様に作製したα化した麺線103gを入れ、蓋体2の位置を容器底面3から90mmとなるように押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(一次フライ時のリテーナ内の容積887cm3)
【0071】
次いで、リテーナを150℃の油中に浸漬し、30秒間フライした後、リテーナを油中から引き上げ、引き上げてから10秒後に、蓋体2の位置が麺塊底面3から30mmとなるように完全に押し込み、引き上げてから20秒後に再びリテーナを150℃の油中に浸漬して150秒フライ乾燥を行い、リテーナより麺塊を取り出し、冷却し、74gのフライ麺塊を得た。(二次フライ時のリテーナ内の容積296cm3、麺塊密度0.25g/cm3)
このとき、フライ中の大きな泡が消え、小さな泡となる時間(乾燥が終了したと考えれる時間)を測定したところ乾燥開始から55秒であった。
【0072】
(試験例3-6)
【0073】
α化した麺線をリテーナに124g入れる以外は、試験例3-5の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、89gであった。(麺塊密度0.30g/cm3)
【0074】
(試験例3-7)
α化した麺線をリテーナに157g入れる以外は、試験例3-5の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、112gであった。(麺塊密度0.38g/cm3)
【0075】
(試験例3-8)
α化した麺線をリテーナに173g入れる以外は、試験例3-5の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、124gであった。(麺塊密度0.42g/cm3)
【0076】
(試験例3-9)
中力粉1000gに食塩15g、かんすい3g、重合リン酸塩1gを溶解した練水350mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練して麺生地(ドウ)を得た。
【0077】
得られた麺生地を整形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.22mmとした後、切刃20番丸刃で麺線を切り出した。
【0078】
切り出された麺線をただちに2分15秒にわたって蒸煮処理した後、約40cmとなるようにカットし、95℃で25秒間ボイルした後、1L当り食塩50g、グルタミン酸ナトリウム15gを溶解した着味液に4秒間浸漬し、水分55重量%のα化した麺線を作製した。
【0079】
次いで、実験1で使用したリテーナの容器内にα化した麺線を144g入れ、蓋体2の位置を容器底面3から30mmとなるように全部押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(リテーナ内の容積296cm3)
【0080】
次いで、リテーナを150℃の油中に浸漬し、180秒間フライした後、リテーナより麺塊を取り出し、冷却し、74gのフライ麺塊を得た。(麺塊密度0.25g/cm3)
このとき、フライ中の大きな泡が消え、小さな泡となる時間(乾燥が終了したと考えれる時間)を測定したところ乾燥開始から90秒であった。
【0081】
(試験例3-10)
【0082】
α化した麺線をリテーナに173g入れる以外は、試験例3-9の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、89gであった。(麺塊密度0.30g/cm3)
【0083】
(試験例3-11)
α化した麺線をリテーナに219g入れる以外は、試験例3-9の方法に従って、フライ麺塊の作製を試みたが、十分フライできていないため、フライ時間を300秒まで延ばしたが乾燥せずフライ麺塊は作製できなかった。
【0084】
(試験例3-12)
実験1で使用したリテーナの容器内に 試験例3-9同様に作製したα化した麺線144gを入れ、蓋体2の位置を容器底面3から90mmとなるように押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(一次フライ時のリテーナ内の容積887cm3)
【0085】
次いで、リテーナを150℃の油中に浸漬し、55秒間フライした後、リテーナを油中から引き上げ、引き上げてから10秒後に、蓋体2の位置が麺塊底面3から30mmとなるように完全に押し込み、引き上げてから20秒後に再びリテーナを150℃の油中に浸漬して125秒フライ乾燥を行い、リテーナより麺塊を取り出し、冷却し、74gのフライ麺塊を得た。(二次フライ時のリテーナ内の容積296cm3、麺塊密度0.25g/cm3)
このとき、フライ中の大きな泡が消え、小さな泡となる時間(乾燥が終了したと考えれる時間)を測定したところ乾燥開始から85秒であった。
【0086】
(試験例3-13)
【0087】
α化した麺線をリテーナに173g入れる以外は、試験例3-12の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、89gであった。(麺塊密度0.30g/cm3)
【0088】
(試験例3-14)
α化した麺線をリテーナに219g入れる以外は、試験例3-12の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、112gであった。(麺塊密度0.38g/cm3)
【0089】
(試験例3-15)
α化した麺線をリテーナに242g入れる以外は、試験例3-12の方法に従って、フライ麺塊の作製を試みたが、十分フライできていないため、二次フライ時間を245秒まで延ばしたが乾燥せずフライ麺塊は作製できなかった。
【0090】
(試験例3-16)
中力粉1000gに食塩15g、かんすい3g、重合リン酸塩1gを溶解した練水350mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練して麺生地(ドウ)を得た。
【0091】
得られた麺生地を整形、複合して麺帯化し、圧延を繰り返して最終麺厚1.22mmとした後、切刃20番丸刃で麺線を切り出した。
【0092】
切り出された麺線をただちに2分15秒にわたって蒸煮処理した後、約40cmとなるようにカットし、95℃で300秒間ボイルした後、1L当り食塩50g、グルタミン酸ナトリウム15gを溶解した着味液に4秒間浸漬し、水分70重量%のα化した麺線を作製した。
【0093】
次いで、実験1で使用したリテーナの容器内にα化した麺線を208g入れ、蓋体2の位置を容器底面3から30mmとなるように全部押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(リテーナ内の容積296cm3)
【0094】
次いで、リテーナを150℃の油中に浸漬し、180秒間フライしたが十分フライできていないため、フライ時間を300秒まで延ばしたが乾燥せずフライ麺塊は作製できなかった。
【0095】
(試験例3-17)
実験1で使用したリテーナの容器内に 試験例3-16同様に作製したα化した麺線208gを入れ、蓋体2の位置を容器底面3から90mmとなるように押し込んだ状態でα化した麺線を封入した。(一次フライ時のリテーナ内の容積887cm3)
【0096】
次いで、リテーナを150℃の油中に浸漬し、150秒間フライした後、リテーナを油中から引き上げ、引き上げてから10秒後に、蓋体2の位置が麺塊底面3から30mmとなるように完全に押し込み、引き上げてから20秒後に再びリテーナを150℃の油中に浸漬して30秒フライ乾燥を行い、リテーナより麺塊を取り出し、冷却し、74gのフライ麺塊を得た。(二次フライ時のリテーナ内の容積296cm3、麺塊密度0.25g/cm3)
【0097】
(試験例3-18)
【0098】
α化した麺線をリテーナに250g入れる以外は、試験例3-17の方法に従って、フライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、89gであった。(麺塊密度0.30g/cm3)
【0099】
(試験例3-19)
α化した麺線をリテーナに316g入れる以外は、試験例3-17の方法に従って、フライ麺塊の作製を試みたが、十分フライできていないため、二次フライ時間を150秒まで延ばしフライ麺塊を作製した。なお、フライ麺塊の重量は、112gであった。(麺塊密度0.38g/cm3)
【0100】
(試験例3-20)
α化した麺線をリテーナに350g入れる以外は、試験例3-12の方法に従って、フライ麺塊の作製を試みたが、十分フライできていないため、二次フライ時間を245秒まで延ばしたが乾燥せずフライ麺塊は作製できなかった。
【0101】
実験3について、型詰めのα化麺の水分とフライ乾燥可能な麺塊密度との関係について下記表4及び5にまとめた。なお、トータルフライ時間が180秒でフライ可能なものを○、300秒でフライ可能なものを△、300秒でもフライできないものを×とした。
【0102】
【0103】
【0104】
表4及び5で示すように圧縮工程を有するものの方が同一の型詰め水分の場合、高密度のフライ麺塊を作製できることがわかる。また、同一の麺塊密度のフライ麺塊を作製する場合においても、圧縮工程を有する方が高水分の麺線をフライすることができることがわかる。また、麺密度が一般的な0.25g/cm3において、圧縮工程が無くてもフライ乾燥可能な場合であっても、試験例3-1、3-5及び試験例3-9、3-12で示すように圧縮工程の時間を含んだとしても、圧縮工程を有する方が圧縮工程が無いものと比べて若干ではあるが乾燥時間が短くなることがわかる。
【符号の説明】
【0105】
A、B、C リテーナ
1 容器側面
2(2a、2b)蓋体
3 容器底面
4 容器側面体
5 容器底面体
6 麺線
7 油面
8 フライ麺塊