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特許7475326連続長繊維不織布、積層体、並びに複合材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】連続長繊維不織布、積層体、並びに複合材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/009 20120101AFI20240419BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240419BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
D04H3/009
D04H3/16
B32B5/28 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504002
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007840
(87)【国際公開番号】W WO2020179584
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019041245
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】城谷 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】小畑 創一
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031683(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0140834(KR,A)
【文献】特開2008-307692(JP,A)
【文献】特開2012-127044(JP,A)
【文献】特開2009-235626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H、B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性の熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維を用いて形成された連続長繊維不織布であって、該熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000であり、ガラス転移温度が100℃以下である、連続長繊維不織布。
【請求項2】
メルトブローン不織布又はスパンボンド不織布である、請求項1に記載の連続長繊維不織布。
【請求項3】
前記繊維の平均繊維径が20μm以下である、請求項1又は2に記載の連続長繊維不織布。
【請求項4】
目付(A)が100g/m以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の連続長繊維不織布。
【請求項5】
通気度(B)と目付(A)との比率〔通気度(B)/目付(A)〕が100以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の連続長繊維不織布。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の連続長繊維不織布と、補強繊維及びマトリックス樹脂を含有するプリフォームとで構成された積層体。
【請求項7】
前記補強繊維がガラス繊維、炭素繊維、液晶性ポリエステル繊維、高強度ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、セラミック繊維、及び金属繊維からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の連続長繊維不織布の溶融物、補強繊維、及びマトリックス樹脂を含有する複合材の製造方法であって、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体を硬化処理することを特徴とする、複合材の製造方法。
【請求項10】
前記補強繊維が前記連続長繊維不織布の溶融物で固定される、請求項9に記載の複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2019年3月7日出願の特願2019-041245の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本出願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、連続長繊維不織布、およびそれを用いた複合材、並びに複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素繊維やガラス繊維等の補強繊維とマトリックス樹脂からなる複合材は、軽量であり、且つ比強度、比剛性に優れていることから、電気・電子分野、土木・建築、航空機・自動車・鉄道・船舶分野等において広く用いられている。こうした分野で用いられる複合材料としては、高い力学物性を発揮するために、一般的に補強繊維として炭素繊維等の連続繊維を用いることが知られている。このような複合材のマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂やフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂が用いられることが知られており、中でもエポキシ樹脂がよく用いられている。
【0004】
このような複合材においては、補強繊維及びマトリックス樹脂とは別の素材を積層して、加熱等により該素材を溶融して複合材中に均一に分散させる技術が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1(米国特許第8,409,486号明細書)には、特定の重量平均分子量及びガラス転移温度を有する熱可塑性フェノキシ樹脂からなる繊維材料を、補強繊維及びマトリックス樹脂からなるプリフォームと組み合わせて、さらに硬化処理を行って得られる複合材について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,409,486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には特定の熱可塑性フェノキシ樹脂からなる繊維材料として、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルのような繊維や、該繊維を加工して得られる織物のような二次元の繊維製品が記載されているが、このような繊維材料は連続長繊維不織布と比較して緻密性に劣る傾向がある。さらに、特許文献1には得られた繊維材料を補強繊維及びマトリックス樹脂と併用した複合材が記載されているが、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルのような繊維や、それを加工して得られる繊維製品は、繊維間に空隙が生じやすいため、得られる複合材はエアーの噛み込み等により外観が不良となる傾向がある。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、前記従来の問題を鑑みてなされたものであって、緻密性に優れる連続長繊維不織布、及び外観が良好である複合材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕非晶性の熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維を用いて形成された連続長繊維不織布であって、該熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000(好ましくは12,000~80,000、より好ましくは15,000~60,000)であり、ガラス転移温度が100℃以下である、連続長繊維不織布。
〔2〕メルトブローン不織布又はスパンボンド不織布である、前記〔1〕に記載の連続長繊維不織布。
〔3〕前記繊維の平均繊維径が20μm以下(好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下)である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の連続長繊維不織布。
〔4〕目付(A)が100g/m以下(好ましくは80g/m以下、より好ましくは50g/m以下、さらに好ましくは30g/m以下)である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の連続長繊維不織布。
〔5〕通気度(B)と目付(A)との比率〔通気度(B)/目付(A)〕が100以下(好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは85以下)である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の連続長繊維不織布。
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の連続長繊維不織布と、補強繊維及びマトリックス樹脂を含有するプリフォームとが積層した積層体。
〔7〕前記補強繊維がガラス繊維、炭素繊維、液晶性ポリエステル繊維、高強度ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、セラミック繊維、及び金属繊維からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔〕に記載の積層体。
〔8〕前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、前記〔6〕又は〔7〕に記載の積層体。
〔9〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の連続長繊維不織布の溶融物、補強繊維、及びマトリックス樹脂を含有する複合材。
〔10〕前記補強繊維が前記連続長繊維不織布の溶融物で固定されてなる、前記〔9〕に記載の複合材。
〔11〕前記〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の積層体を硬化処理することを特徴とする、前記〔9〕又は〔10〕に記載の複合材の製造方法。
【0010】
なお、請求の範囲および/または明細書に開示された少なくとも2つの構成要素のどのような組み合わせも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲に記載された請求項の2つ以上のどのような組み合わせも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緻密性に優れる連続長繊維不織布、及び該不織布を用いてなり、白濁やエアーの噛み込みが低減され外観が良好である複合材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は、本実施態様に限定されない。
【0013】
[連続長繊維不織布]
本発明は、非晶性の熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維を用いて形成された連続長繊維不織布であって、該熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000であり、ガラス転移温度が100℃以下である連続長繊維不織布に関する。特定の重量平均分子量及びガラス転移温度を有する熱可塑性フェノキシ樹脂を用いることで、得られる連続長繊維不織布は緻密性に優れ、さらに該不織布と、補強繊維及びマトリックス樹脂を併用して得られる複合材は白濁やエアーの噛み込みが低減され外観が良好である。
【0014】
本発明は、特定の熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維を用いて形成された連続長繊維不織布であることが重要である。熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維が短繊維である場合は、長繊維と比較して機械方向(流れ方向)の強度が不十分となったり、短繊維間の空隙により、得られる複合材においてエアーの噛み込みが生じやすく外観が不良となる傾向がある。ここで、短繊維とは、長さが20mm以下に切断された繊維のことであり、本発明における連続長繊維不織布は、このような意図的な切断が行われた短繊維を実質的に含んでいない。
【0015】
本発明の連続長繊維不織布の形態は特に限定されないが、後述する製造方法によって得られるメルトブローン不織布又はスパンボンド不織布であることが好ましく、中でも繊維の平均繊維径が細く、連続長繊維不織布の緻密性を高めやすい観点から、メルトブローン不織布が好ましい。
【0016】
(熱可塑性フェノキシ樹脂)
本発明で用いる熱可塑性フェノキシ樹脂は、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得ることができ、溶液中あるいは無溶媒下に従来公知の方法で得ることができる。
【0017】
熱可塑性フェノキシ樹脂の製造に用いる2価フェノール化合物としては、例えばヒドロキノン、レゾルシン、4,4-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,13,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等を挙げることができる。中でも物性、コスト面から特に4,4-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンが好ましい。
【0018】
熱可塑性フェノキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂類としては、上記の2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応で得られるエポキシオリゴマー、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、クロロハイドロキノンジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルオキシドジグリシジルエーテル、2,6-ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。中でも、物性、コスト面から特にビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールSタイプエポキシ樹脂、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、又は9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルが好ましい。
【0019】
熱可塑性フェノキシ樹脂の製造において、無溶媒下または反応溶媒の存在下に行うことができ、用いる反応溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホランなどを好適に用いることができる。また、溶媒反応で得られたフェノキシ樹脂は、蒸発器等を用いた脱溶媒処理をすることにより、溶媒を含まない固形状の樹脂とすることができる。
【0020】
熱可塑性フェノキシ樹脂の製造に用いることのできる反応触媒としては、従来公知の重合触媒として、アルカリ金属水酸化物、第三級アミン化合物、第四級アンモニウム化合物、第三級ホスフィン化合物、及び第四級ホスホニウム化合物が好適に使用される。
【0021】
本発明に用いられる熱可塑性フェノキシ樹脂は非晶性であることが重要である。本明細書において、「非晶性」であることは、得られた繊維を示差走査型熱量計(DSC)にかけ、窒素中、10℃/分の速度で昇温し、吸熱ピークの有無で確認することができる。吸熱ピークが非常にブロードであり明確に吸熱ピークを判断できない場合は、実使用においても問題ないレベルであるので、実質的に非晶性と判断しても差し支えない。
【0022】
本発明に用いられる熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000の範囲であることが重要であり、12,000~80,000が好ましく、15,000~60,000程度であってもよい。重量平均分子量が10,000を下回る場合、樹脂粘度が低すぎるため、ノズルから樹脂が安定して流れ出ず、繊維化することが困難となる。また、重量平均分子量が100,000を超える場合、樹脂粘度が高すぎるため、細い繊維径を有する不織布の製造が困難になり、所望の緻密性を有する連続長繊維不織布が得られない。なお、熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、後述の実施例に記載した方法により測定される値である。
【0023】
本発明に用いられる熱可塑性フェノキシ樹脂のガラス転移温度は、100℃以下であることが重要であり、98℃以下が好ましく、95℃以下程度であってもよい。熱可塑性フェノキシ樹脂のガラス転移温度が100℃を超える場合、複合材を作製する際に連続長繊維不織布に熱が十分に行き渡らなくなり、溶け残りによる白濁といった外観上の問題が発生する。熱可塑性フェノキシ樹脂のガラス転移温度の下限について特に制限はないが、得られる不織布の耐熱性の観点から、例えば30℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上程度であってもよい。なお、熱可塑性フェノキシ樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、後述の実施例に記載した方法により測定される値である。
【0024】
熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維は、熱可塑性フェノキシ樹脂を50質量%以上含んでいることが好ましく、80~100質量%含んでいることがより好ましく、90~100質量%含んでいることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の連続長繊維不織布を構成する繊維は、本発明の効果を阻害しない範囲で熱可塑性フェノキシ樹脂以外の成分を含んでいてもよく、このような熱可塑性フェノキシ樹脂以外の成分としては、たとえばポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリエステル、酸化防止剤、帯電防止剤、ラジカル抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機物などが挙げられる。
【0026】
前記無機物としては、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよび、黒鉛などが挙げられる。
【0027】
本発明の連続長繊維不織布は、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維以外の繊維を含んでいてもよく、このような熱可塑性フェノキシ樹脂を主成分とする繊維以外の繊維としては、たとえば、非導電性繊維、ガラス繊維などが挙げられる。非導電性繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、6-ナイロン繊維などが挙げられる。
【0028】
(連続長繊維不織布の製造方法)
本発明の連続長繊維不織布を製造する方法は特に限定されないが、好適な方法としてメルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法などが挙げられる。このような方法を採用することで、平均繊維径の小さい繊維を用いて形成され、緻密性に優れる連続長繊維不織布を容易に得ることができる。中でも、紡糸時に溶剤を必要とせず環境への影響を最小限にできる観点からメルトブローン法もしくはスパンボンド法が好ましい。
【0029】
メルトブローン法の場合、紡糸装置としては従来公知のメルトブローン装置を用いることができる。紡糸温度は特に限定されず、例えば250~380℃、好ましくは270~360℃、より好ましくは290~350℃程度であってもよい。また、ノズル孔からの吐出直後に当てる熱風の温度(一次エアー温度)も特に限定されず、例えば260~400℃、好ましくは270~380℃程度、より好ましくは290~360℃程度であってもよい。さらに、ノズル幅1mあたりの吹き付け量(エアー量)も特に限定されず、例えば5~50Nm、好ましくは6~40Nm、より好ましくは7~30Nm程度であってもよい。
【0030】
スパンボンド法の場合、紡糸装置は従来公知のスパンボンド装置を用いることができる。紡糸温度は特に限定されず、例えば250~350℃、好ましくは260~340℃、より好ましくは280~330℃程度であってもよい。また、紡糸直後に当てる熱風の温度(延伸エアー温度)も特に限定されず、例えば260~370℃、好ましくは270~350℃、より好ましくは290~340℃程度であってもよい。さらに、延伸エアーも特に限定されず、例えば500~5000m/分、好ましくは600~4000m/分、より好ましくは800~3000m/分程度であってもよい。
【0031】
前記製造方法により得られる連続長繊維不織布は、機械的強度をより一層向上する観点から、スパンレース、ニードルパンチ、スチームジェットなどにより三次元交絡処理を行ってもよい。
【0032】
(連続長繊維不織布の物性)
本発明の連続長繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径は特に限定されないが、20μm以下であることが好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下程度であってもよい。平均繊維径が20μmを超えると、得られる連続長繊維不織布の緻密性が低下する傾向や、得られる複合材の表面平滑性が低下する傾向がある。平均繊維径の下限は特に限定されないが、風綿の発生抑制、不織布の形成のしやすさ及び取扱い性の観点から、1μm以上であることが好ましい。
【0033】
本発明の連続長繊維不織布の目付(A)は特に限定されないが、100g/m以下であることが好ましく、80g/m以下がより好ましく、50g/m以下がさらに好ましく、30g/m以下程度であってもよい。目付(A)が100g/mを超える場合、繊維量が多すぎるため、熱をかけて硬化処理を行う複合材の製造過程において一部の繊維しか溶融せず、マトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォームへの溶融繊維の含浸が妨げられたり、白濁やエアーの噛み込みなどの外観不良が発生する傾向がある。目付(A)の下限は特に限定されないが、不織布の形成のしやすさの観点から、4g/m以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の連続長繊維不織布の通気度(B)の上限は特に限定されないが、1,000cm/cm・s以下であることが好ましく、900cm/cm・s以下がより好ましく、800cm/cm・s以下がより好ましく、500cm/cm・s以下程度であってもよい。通気度(B)が1,000cm/cm・sを超える場合、連続長繊維不織布の緻密性が確保できず、マトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォームへの溶融させた繊維の含浸が不均一となり、目的とする表面平滑性を達成できない傾向がある。また、通気度(B)の下限は特に限定されないが、50cm/cm・s以上が好ましく、70cm/cm・s以上程度であってもよい。通気度(B)が50cm/cm・s未満である場合、熱をかけて硬化処理を行う複合材の製造過程において一部の繊維しか溶融せず、マトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォームへの溶融繊維の含浸が妨げられたり、白濁やエアーの噛み込みなどの外観不良が発生する傾向がある。
【0035】
前記通気度(B)と前記目付(A)との比〔通気度(B)/目付(A)〕の上限は特に限定されないが、100以下であることが好ましく、95以下がより好ましく、90以下がさらに好ましく、85以下程度であってもよい。通気度(B)/目付(A)が100を超える場合、連続長繊維不織布の緻密性が低下したり、繊維量の斑によってマトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォームへの溶融繊維の含浸が妨げられる箇所が生じる傾向がある。通気度(B)/目付(A)の下限は特に限定されないが、マトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォームへの溶融繊維の含浸を均一にし、エアーの噛み込みなどの外観不良を防ぐ観点から、5以上であることが好ましい。
【0036】
本発明の連続長繊維不織布の1枚当たりの厚みは特に限定されないが、緻密性や取り扱い性の観点から、0.01~3mmであることが好ましく、0.05~2mmがより好ましく、0.10~1mmがさらに好ましく、0.10~0.50mm程度であってもよい。
【0037】
[積層体]
本発明の連続長繊維不織布は、緻密性に優れ、後述の複合を製造するための材料として有用であるため、複合の製造に用いる中間体として、補強繊維及びマトリックス樹脂を含有するプリフォームと連続長繊維不織布とを積層した積層体を用いてもよい。ここで、プリフォームとは、補強繊維で構成される繊維基材とマトリックス樹脂とを含む中間材料をいう。プリフォームの形態としては、繊維基材とマトリックス樹脂とを含んでいれば特に限定されず、例えば、繊維基材にマトリックス樹脂が含浸した形態、繊維基材にマトリックス樹脂からなる粒子や繊維等が分散している形態、繊維基材にマトリックス樹脂からなるフィルムやシート等が積層している形態等が挙げられる。繊維基材にマトリックス樹脂が含浸した形態としては、例えば、予備成形されて所定の成形品の形状を有していてもよく、プリプレグの形状(例えば、シート状)を有していてもよい。
【0038】
前記補強繊維の種類は特に限定されないが、得られる複合材の機械的強度の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、液晶性ポリエステル繊維、高強度ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、セラミック繊維、及び金属繊維からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの補強繊維は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの補強繊維は複合材を製造する際に溶融しない範囲で用いられる。中でも、力学物性を高める観点から、炭素繊維が好ましい。
【0039】
繊維基材の形状は、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、織物、ノンクリンプファブリック(NCF)、一方向引き揃え材(UD材)、編物、不織布等が挙げられる。
【0040】
前記マトリックス樹脂の種類は特に限定されないが、熱硬化性樹脂であればよく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、熱可塑性フェノキシ樹脂との相溶性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0041】
また、マトリックス樹脂は、各種樹脂の種類に応じて、公知の各種硬化剤を含んでいてもよい。例えば、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化剤としては、アミン類、アミド類、イミダゾール類、酸無水物類等が挙げられる。
【0042】
積層体において、プリフォームや連続長繊維不織布は、それぞれ少なくとも1層ずつあればよく、各々2層以上であってもよい。得られる複合材の機械的強度の観点から、積層体におけるプリフォームは5層以上であることが好ましく、連続長繊維不織布は5層以上であることが好ましい。表面平滑性を担保し外観をより一層向上する観点から、積層体において連続長繊維不織布をいずれか一方の最表層に配置することが好ましく、連続長繊維不織布を両方の最表層に配置することがより好ましい。
【0043】
プリフォームと連続長繊維不織布とを積層させる方法は特に限定されず、(i)連続長繊維不織布と、マトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォームとを、別々に作製してから積層する方法、(ii)マトリックス樹脂及び補強繊維からなるプリフォーム上に、メルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法又はエレクトロスピニング法などにより連続長繊維不織布を直接紡糸して積層する方法などが挙げられる。
【0044】
[複合材]
前記連続長繊維不織布の溶融物、補強繊維、及びマトリックス樹脂を含有する複合材も本発明の好適な実施態様である。本発明の連続長繊維不織布は緻密性にすぐれるため、そのような不織布を溶融させて、補強繊維及びマトリックス樹脂と一体化させた複合材は、白濁やエアーの噛み込みが生じにくく、外観が良好である。
【0045】
前記複合材の製造方法は特に限定されないが、前記積層体を硬化処理する工程を有することが好ましい。前記積層体は、上述したように、前記マトリックス樹脂及び前記補強繊維からなるプリフォーム上に、前記連続長繊維不織布を積層することにより得ることができる。このような方法で得られる複合材は、硬化処理時に連続長繊維不織布及びマトリックス樹脂が溶融することで、外観が良好で機械的強度に優れる複合材を得ることができる。具体的に、硬化処理時に緻密性の良好な連続長繊維不織布が溶融することで、連続長繊維不織布を構成する熱可塑性フェノキシ樹脂が複合材表面及び複合材中に均一に含浸して補強繊維を固定できるため、補強繊維の配向の乱れがなくなり、曲げ強度などを向上できる。また、硬化処理時にマトリックス樹脂が溶融することで、補強繊維の機械的強度が向上できる。
【0046】
前記複合材は、前記補強繊維が前記連続長繊維不織布の溶融物で固定されてなる形態が好ましい。なお、補強繊維が連続長繊維不織布の溶融物で固定されてなる形態とは、連続長繊維不織布を構成する熱可塑性フェノキシ樹脂が硬化処理時に溶融することで、マトリックス樹脂と混合され、複合材表面及び複合材中に均一に含浸した状態で硬化して、補強繊維が動かないように固定している形態を意味する。前記複合材における補強繊維の固定は、連続長繊維不織布の溶融物とマトリックス樹脂との混合物によりなされていてもよい。また、前記複合において、連続長繊維不織布を構成する熱可塑性フェノキシ樹脂とマトリックス樹脂とは、化学的に結合していてもよい。
【0047】
前記硬化処理の条件は特に限定されないが、連続長繊維不織布とプリフォームとを積層した後に、熱プレス等で熱及び圧力をかける方法が挙げられる。前記熱をかける際の温度は特に限定されず、例えば120~300℃、好ましくは130~250℃、より好ましくは140~200℃程度であってもよい。前記圧力は特に限定されず、例えば5~100MPa、好ましくは7~80MPa、より好ましくは10~50MPa程度であってもよい。前記熱及び圧力をかける時間は特に限定されないが、例えば10秒~30分間、好ましくは30秒~20分間、より好ましくは1~10分間程度であってもよい。
【0048】
本発明の複合材は、用途等に応じて所望の形状に賦形されていてもよい。その場合、硬化処理工程において、圧空成形法、真空成形法、プレス成形法等の各種熱成形法で加熱することにより、溶融、硬化させ、所望の形状に賦形してもよい。
【0049】
本発明の複合材は、補強繊維が水平方向に配向した層を厚み方向に複数有する層構造を有していてもよい。また、上述のような製造方法により複合材を製造する場合、得られる複合材において、補強繊維の含有量を高くすることができ、例えば、複合材中の補強繊維の目付は、100~5000g/mであってもよく、好ましくは500~4500g/m、より好ましくは800~4000g/mであってもよい。
【実施例
【0050】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、各物性値は以下の方法により測定したものである。
【0051】
[熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量]
熱可塑性フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI-8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
【0052】
[熱可塑性フェノキシ樹脂のガラス転移温度(℃)]
JIS K 7121に準拠し、熱可塑性フェノキシ樹脂10mgをアルミパンに採取し、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件においてサーモグラムを測定し、ガラス転移温度を決定した。
【0053】
[連続長繊維不織布の目付(A)(g/m)]
JIS L 1906に準じ、連続長繊維不織布幅1mあたりから、縦20cm×横20cmの試料片を3枚採取し、各試料片の質量を電子天秤にて測定し、3点の平均値を試験片面積400cmで除して、単位面積当たりの質量を算出し、不織布の目付(A)とした。
【0054】
[連続長繊維不織布の通気度(B)(cm/cm・s)]
JIS L 1096の6.27.1(A法:フラジール法)に準じ、目付測定と同試料片を用い、各試料片において、通気度測定器(TEXTEST製(スイス):FX3300)を使用し、測定面積38cm、測定圧力125Paの条件で測定し、3点の平均値を不織布の通気度(B)とした。
【0055】
[連続長繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径(μm)]
不織布中の任意の点に対し、走査型電子顕微鏡にて、1000倍で拡大撮影し、ランダムに選択した100本の繊維径を測定した値の平均値を繊維の平均繊維径とした。
【0056】
[連続長繊維不織布の緻密性]
連続長繊維不織布の緻密性を以下の式により算出した。値が低いほど緻密性が高いことを意味する。
緻密性=通気度(B)/目付(A)
【0057】
[複合材の外観]
複合材の外観(白濁、エアーの噛み込みの有無)を目視で観察し、以下の指標によって判断した。
〇:白濁、エアーの噛み込みがなく、外観良好であった。
△:白濁、エアーの噛み込みは少しあるが、実用には影響のない外観であった。
×:白濁、エアーの噛み込みが多く、外観不良であった。
【0058】
実施例1
(連続長繊維不織布の作製)
重量平均分子量が30,000、ガラス転移温度が90℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度340℃、熱風温度340℃、ノズル幅1mあたり10Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が7.6g/m、通気度(B)が637cm/cm・s、平均繊維径が8.6μm、厚みが0.18mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100以下であり、緻密性に優れていた。
【0059】
(複合材の作製)
炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W-3101」:3K織物、目付200g/m)にエポキシ樹脂を含浸したプリフォーム上に、前記連続長繊維不織布を重ね合わせたものを1セットとして積層体を得た。該積層体をプリフォームと連続長繊維不織布とが交互に配置されるように12セット積層させた後に、プリフォーム側の最表層に連続長繊維不織布を重ね合わせて、温度160℃、圧力20MPa下で3分間加熱圧縮成形して平板を成形し、複合材を得た。得られた複合材は外観が良好であった。
【0060】
実施例2
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
実施例1で使用した熱可塑性フェノキシ樹脂と同じ樹脂を使用し、紡糸温度340℃、熱風温度340℃、ノズル幅1mあたり10Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が12.2g/m、通気度(B)が243cm/cm・s、平均繊維径が7.9μm、厚みが0.26mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100以下であり、緻密性に優れていた。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合は外観が良好であった。
【0061】
実施例3
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
重量平均分子量が50,000、ガラス転移温度が95℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度340℃、熱風温度340℃、ノズル幅1mあたり20Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が12.3g/m、通気度(B)が496cm/cm・s、平均繊維径が8.8μm、厚みが0.31mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100以下であり、緻密性に優れていた。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材は外観が良好であった。
【0062】
実施例4
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
重量平均分子量が20,000、ガラス転移温度が70℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン及びエピクロロヒドリンの縮合反応物)を、紡糸温度300℃、熱風温度300℃、ノズル幅1mあたり22Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が12.3g/m、通気度(B)が87cm/cm・s、平均繊維径が7.2μm、厚みが0.13mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100以下であり、緻密性に優れていた。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材は外観が良好であった。
【0063】
実施例5
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
実施例1で使用した熱可塑性フェノキシ樹脂と同じ樹脂を使用し、紡糸温度300℃、熱風温度(延伸エアー温度)300℃、延伸エアー1200m/分の条件により、連続長繊維不織布として目付(A)が20.4g/m、通気度(B)が745cm/cm・s、平均繊維径が12.7μm、厚みが0.47mm/枚のスパンボンド不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100以下であり、緻密性に優れていた。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材は外観が良好であった。
【0064】
実施例6
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
重量平均分子量が90,000、ガラス転移温度が90℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度360℃、熱風温度360℃、ノズル幅1mあたり22Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が12.2g/m、通気度(B)が912cm/cm・s、平均繊維径が13.3μm、厚みが0.44mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100以下であり、緻密性に優れていた。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材には、白濁、エアーの噛み込みが少しあるが、実用には影響のない外観であった。
【0065】
実施例7
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
実施例1で使用した熱可塑性フェノキシ樹脂と同じ樹脂を使用し、紡糸温度300℃、熱風温度300℃、ノズル幅1mあたり18Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が12.0g/m、通気度(B)が1318cm/cm・s、平均繊維径が11.2μm、厚みが0.35mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、通気度(B)/目付(A)が100を超えていた。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材には、白濁、エアーの噛み込みが少しあるが、実用には影響のない外観であった。
【0066】
比較例1
(連続長繊維不織布の作製)
重量平均分子量が8,000、ガラス転移温度が90℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度300℃、熱風温度300℃、ノズル幅1mあたり18Nmで吹き付けたが、ノズル直下での糸切れが多発し、風綿飛散が多く、目的とする連続長繊維不織布が得られなかった。
【0067】
比較例2
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
重量平均分子量が200,000、ガラス転移温度が90℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度340℃、熱風温度340℃、ノズル幅1mあたり18Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が12.9g/mの、通気度(B)が2187cm/cm・s、平均繊維径が21.3μm、厚みが0.59mm/枚のメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は通気度(B)/目付(A)が100を超えており、緻密性が不十分であった。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材は外観が不良であった。
【0068】
比較例3
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
重量平均分子量が30,000、ガラス転移温度が140℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度340℃、熱風温度340℃、ノズル幅1mあたり18Nmで吹き付けることで、目付(A)が12.5g/m、通気度(B)が712cm/cm・s、平均繊維径が9.7μm、厚みが0.37mm/枚のメルトブローン不織布を得た。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材は溶け残りによる白濁が発生し、外観が不良であった。
【0069】
比較例4
(連続長繊維不織布及び複合材の作製)
重量平均分子量が120,000、ガラス転移温度が90℃である熱可塑性フェノキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロロヒドリンとの縮合反応物)を、紡糸温度360℃、熱風温度360℃、ノズル幅1mあたり22Nmで吹き付けることで、連続長繊維不織布として目付(A)が11.9g/m、通気度(B)が1512cm/cm・s、平均繊維径が17.1μm、厚みが0.49mm/枚のメルトブローン不織布を得た。上記方法で得られた不織布を用いた以外は実施例1と同様にして複合材を得た。得られた複合材は外観が不良であった。
【0070】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の連続長繊維不織布は緻密性に優れるため、このような連続長繊維不織布を、補強繊維及びマトリックス樹脂と組み合わせて複合材とすることで、得られる複合材の外観を良好にできる。このような複合材は、例えばボード状に成形され、断熱材、防護材、絶縁材などに好適に利用することができる。
【0072】
以上のとおり、本発明の好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。