(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】積層基板、積層基板の製造方法及び自立基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/04 20060101AFI20240419BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C30B29/04 M
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2022067491
(22)【出願日】2022-04-15
(62)【分割の表示】P 2018227436の分割
【原出願日】2018-12-04
【審査請求日】2022-04-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127367(JP,A)
【文献】特開平11-106290(JP,A)
【文献】特開2008-031503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0143022(US,A1)
【文献】国際公開第2018/012529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/04
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ダイヤモンド(111)層を含む積層基板であって、
下地基板と、該下地基板上の中間層と、該中間層上の前記単結晶ダイヤモンド(111)層を含み、
前記下地基板は、主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有するものであり、
前記下地基板は、単一
のSi
3N
4又はSiCからなる基板、又は
、Si
3N
4
及びSiCから
なる積層体であり、
前記単結晶ダイヤモンド(111)層が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有するものであり、
前記中間層の最表面が、Ir(111)膜、Rh(111)膜、Pd(111)膜及びPt(111)膜から選択される金属膜であり、
前記中間層の厚さが1.0μm以上、5.0μm以下のものであることを特徴とする積層基板。
【請求項2】
前記下地基板と中間層との間にMgO(111)層をさらに含むものであることを特徴とする請求項1に記載の積層基板。
【請求項3】
前記単結晶ダイヤモンド(111)層の成膜面である前記中間層の最表面の前記金属膜表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層基板。
【請求項4】
前記単結晶ダイヤモンド(111)層の結晶性が、波長λ=1.54ÅのX線回折法で分析した、ダイヤモンド(111)帰属の2θ=43.9°における回折強度ピークの半値幅(FWHM)が1°以下、かつ、ロッキングカーブピークのFWHMが4°以下のものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層基板。
【請求項5】
前記単結晶ダイヤモンド(111)層が、SIMS法で分析した不純物濃度のうち、酸素濃度が1×10
17atoms/cm
3以下、窒素濃度が5×10
16atoms/cm
3以下のものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層基板。
【請求項6】
前記単結晶ダイヤモンド(111)層の厚さが100μm以上のものであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の積層基板。
【請求項7】
前記積層基板の直径が10mm以上のものであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の積層基板。
【請求項8】
前記単結晶ダイヤモンド(111)層の表面の算術平均粗さ(Ra)が2nm以下のものであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の積層基板。
【請求項9】
単結晶ダイヤモンド(111)層を含む積層基板の製造方法であって、
主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有する下地基板上に、中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程と、
該中間層の表面にダイヤモンドの核を形成する核形成工程と、
前記核を形成した前記中間層表面に、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有する単結晶ダイヤモンド(111)層をヘテロエピタキシャル成長させる工程とを含み、
前記下地基板として、単一
のSi
3N
4又はSiCからなる基板、又は
、Si
3N
4
及びSiCから
なる積層体を用い、
前記中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、中間層を、厚さが1.0μm以上、5.0μm以下の、Ir(111)膜、Rh(111)膜、Pd(111)膜及びPt(111)膜から選択される金属膜とすることを特徴とする積層基板の製造方法。
【請求項10】
前記単結晶ダイヤモンド(111)層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、ヘテロエピタキシャル成長するダイヤモンド層の厚さを100μm以上とすることを特徴とする請求項9に記載の積層基板の製造方法。
【請求項11】
前記中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、前記下地基板として少なくとも最表面がMgO(111)結晶である基板を用い、
前記中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、R.F.マグネトロンスパッター法を用い、基板温度が600~1200℃、圧力が1.1×10
-1Torr(14.7Pa)~9.0×10
-1Torr(120.0Pa)の条件で、前記中間層のヘテロエピタキシャル成長を行うことを特徴とする請求項9又は10に記載の積層基板の製造方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の積層基板の製造方法により得られた積層基板から、少なくとも前記中間層と前記下地基板を除去して、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板を得ることを特徴とする単結晶ダイヤモンド自立基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶ダイヤモンド(111)を有する積層基板、自立基板、積層基板の製造方法及び自立基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、室温で5.47eVという広いバンドギャップを持ち、ワイドバンドギャップ半導体として知られている。
【0003】
半導体の中でも、ダイヤモンドは、絶縁破壊電界強度が10MV/cmと非常に高く、高電圧動作が可能である。また、既知の物質として最高の熱伝導率を有していることから放熱性にも優れている。さらに、キャリア移動度や飽和ドリフト速度が非常に大きいため、高速デバイスとして適している。
【0004】
そのため、ダイヤモンドは、高周波・大電力デバイスとしての性能を示すJohnson性能指数を、炭化ケイ素や窒化ガリウムといった半導体と比較しても最も高い値を示し、究極の半導体と言われている。
【0005】
さらにダイヤモンドには、結晶中に存在する窒素-空孔センター(NVC)の現象があり、室温で単一スピンを操作及び検出することが可能で、その状態を光検出磁気共鳴でイメージングできる特徴がある。この特徴を活かして、磁場、電場、温度、圧力などの高感度センサーとして幅広い分野での応用が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】M.Hatano et al., OYOBUTURI 85, 311 (2016)
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、ダイヤモンドは、半導体材料や電子・磁気デバイス用材料としての実用化が期待されており、大面積かつ高品質なダイヤモンド基板の供給が望まれている。特に、重要度の高いNVCデバイス用途では、NV軸が高配向であることが必要で、そのためダイヤモンド表面はNV軸が[111]方向に揃う(111)結晶面であることが望ましい(非特許文献1)。また、例えば医療用のMRI分野への適用を考えると、磁気センサー部となるダイヤモンド基板が大口径であれば、より広い領域を効率良く測定できる装置が実現できる。また、製造コスト的にも有利である。
【0009】
しかしながら、現状では、大面積かつ高品質なダイヤモンド(111)結晶は得られていない。現在、ダイヤモンド基板として用いられているものに、高温高圧合成(HPHT)法によって合成されたIb型及びIIa型のダイヤモンドが知られているが、Ib型のダイヤモンドは窒素不純物を多く含む。IIa型のダイヤモンドは、窒素不純物量に関しては体積内平均としては比較的低く抑えられているが、結晶内の場所によって大きな不均一性がある。また、(111)面のものは最大で直径8mmほどの大きさしか得られていないため、実用性は高くない。
【0010】
特許文献1には、化学気相成長(CVD)法によるヘテロエピタキシャル成長で、ダイヤモンド(111)結晶を形成する技術について報告されている。しかしながら、仕上がったサイズや特性が充分なレベルにあるのか不明である。また、特許文献1に記載の技術も含めて他にも実用化されたとの情報もない。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、電子・磁気デバイスに適用可能な、大面積(大口径)であり、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の、高品質な単結晶ダイヤモンド(111)を有する積層基板、大口径単結晶ダイヤモンド(111)自立基板、前記積層基板の製造方法及び自立基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、単結晶ダイヤモンド(111)層を含む積層基板であって、下地基板と、該下地基板上の中間層と、該中間層上の前記単結晶ダイヤモンド(111)層を含み、前記下地基板は、主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有するものであり、
前記単結晶ダイヤモンド(111)層が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有するものであることを特徴とする積層基板を提供する。
【0013】
このような積層基板によれば、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有するものとなる。
【0014】
このとき、前記中間層の最表面が、Ir(111)膜、Rh(111)膜、Pd(111)膜及びPt(111)膜から選択される金属膜である積層基板とすることができる。
【0015】
このとき、前記下地基板が、単一のSi、MgO、Al2O3、SiO2、Si3N4又はSiCからなる基板、又は、Si、MgO、Al2O3、SiO2、Si3N4又はSiCから選択される積層体である積層基板とすることができる。
【0016】
これにより、製造コストの低い積層基板となる。
【0017】
このとき、前記下地基板がMgO(111)であるか、又は、前記下地基板と中間層との間にMgO(111)層をさらに含む積層基板とすることができる。
【0018】
これにより、さらに高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有するものとなる。
【0019】
このとき、前記中間層の最表面が、ヘテロエピタキシャル成長したIr(111)膜であって、該Ir(111)膜の結晶性が、波長λ=1.54ÅのX線回折法で分析した、Ir(111)帰属の2θ=40.7°における回折強度ピークの半値幅(FWHM)が0.30°以下のものである積層基板とすることができる。
【0020】
これにより、さらに高結晶性の単結晶ダイヤモンド(111)層を有するものとなる。
【0021】
このとき、前記中間層の厚さが、5.0μm以下のものである積層基板とすることができる。
【0022】
これにより、応力がより小さくなり、反りや割れの発生の懸念がより小さいものとなる。
【0023】
このとき、前記単結晶ダイヤモンド(111)層の成膜面である前記中間層の最表面の前記金属膜表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有するものである積層基板とすることができる。
【0024】
これにより、単結晶ダイヤモンド(111)層がさらに高結晶性のものとなる。
【0025】
このとき、前記単結晶ダイヤモンド(111)層の結晶性が、波長λ=1.54ÅのX線回折法で分析した、ダイヤモンド(111)帰属の2θ=43.9°における回折強度ピークの半値幅(FWHM)が1°以下、かつ、ロッキングカーブピークのFWHMが4°以下のものである積層基板とすることができる。
【0026】
これにより、より高品質なものであり、電子・磁気デバイス用基板としてより好適なものとなる。
【0027】
このとき、前記単結晶ダイヤモンド(111)層が、SIMS法で分析した不純物濃度のうち、酸素濃度が1×1017atoms/cm3以下、窒素濃度が5×1016atoms/cm3以下のものである積層基板とすることができる。
【0028】
これにより、電子・磁気デバイス用基板としてより好適なものとなる。
【0029】
このとき、前記単結晶ダイヤモンド(111)層の厚さが100μm以上のものである積層基板とすることができる。
【0030】
これにより、単結晶ダイヤモンド(111)層がより強度の高いものとなり、下地基板や中間層を除去して、自立基板とすることが、より容易なものとなる。
【0031】
このとき、前記積層基板の直径が10mm以上のものである積層基板とすることができる。
【0032】
これにより、1チップ上に多数の素子を形成することが可能となり、コストダウンや、計測装置の小型化が可能なものとなる。
【0033】
このとき、前記単結晶ダイヤモンド(111)層の表面の算術平均粗さ(Ra)が2nm以下のものである積層基板とすることができる。
【0034】
これにより、素子形成がより容易なものとなり、電子・磁気デバイス用基板としてより好適なものとなる。
【0035】
また本発明は、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板であって、前記自立基板の主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有し、前記自立基板の厚さが100μm以上のものである単結晶ダイヤモンド(111)自立基板を提供する。
【0036】
これにより、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)自立基板であり、かつ、磁場、電場、温度、圧力等の高感度センサーなど、適用範囲が広いものとなる
【0037】
また本発明は、単結晶ダイヤモンド(111)層を含む積層基板の製造方法であって、主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有する下地基板上に、中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程と、該中間層の表面にダイヤモンドの核を形成する核形成工程と、前記核を形成した前記中間層表面に、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有する単結晶ダイヤモンド(111)層をヘテロエピタキシャル成長させる工程とを含む積層基板の製造方法を提供する。
【0038】
これにより、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板を提供することができる。
【0039】
このとき、前記中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、中間層を、Ir(111)膜、Rh(111)膜、Pd(111)膜及びPt(111)膜から選択される金属膜とする積層基板の製造方法とすることができる。
【0040】
このとき、前記単結晶ダイヤモンド(111)層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、ヘテロエピタキシャル成長するダイヤモンド層の厚さを100μm以上とする積層基板の製造方法とすることができる。
【0041】
これにより、より強度の高い単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板を製造することができる。
【0042】
このとき、前記中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、前記下地基板として少なくとも最表面がMgO(111)結晶である基板を用い、前記中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程において、R.F.マグネトロンスパッター法を用い、基板温度が600~1200℃、圧力が1.1×10-1Torr(14.7Pa)~9.0×10-1Torr(120.0Pa)の条件で、前記中間層のヘテロエピタキシャル成長を行う積層基板の製造方法とすることができる。
【0043】
これにより、さらに高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板を製造することができる。
【0044】
このとき、上記積層基板の製造方法により得られた積層基板から、少なくとも前記中間層と前記下地基板を除去して、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板を得る単結晶ダイヤモンド自立基板の製造方法とすることができる。
【0045】
これにより、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)自立基板であり、かつ、磁場、電場、温度、圧力等の高感度センサーなど、適用範囲が広い単結晶ダイヤモンド(111)自立基板を提供することができる。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明の積層基板によれば、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板となる。本発明の自立基板によれば、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する自立基板となる。また、本発明の積層基板の製造方法によれば、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
上述のように、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を得ることが求められていた。
【0050】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、単結晶ダイヤモンド(111)層を含む積層基板であって、下地基板と、該下地基板上の中間層と、該中間層上の前記単結晶ダイヤモンド(111)層を含み、前記下地基板は、主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有するものであり、前記単結晶ダイヤモンド(111)層が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有するものである積層基板により、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板となることを見出し、本発明を完成した。
【0051】
また、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板であって、前記自立基板の主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有し、前記自立基板の厚さが100μm以上のものである単結晶ダイヤモンド(111)自立基板により、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)自立基板となることを見出し、本発明を完成した。
【0052】
また、単結晶ダイヤモンド(111)層を含む積層基板の製造方法であって、主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有する下地基板上に、中間層をヘテロエピタキシャル成長させる工程と、該中間層の表面にダイヤモンドの核を形成する核形成工程と、前記核を形成した前記中間層表面に、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有する単結晶ダイヤモンド(111)層をヘテロエピタキシャル成長させる工程とを含む積層基板の製造方法により、電子・磁気デバイス用に好適な、大口径、高結晶性でヒロック、異常成長粒子、転位欠陥等が少なく、高純度かつ低応力の高品質な単結晶ダイヤモンド(111)層を有する積層基板を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0053】
以下、図面を参照して説明する。
【0054】
まず、本明細書で使用する用語について定義する。
本明細書では、主表面が(111)面である結晶層、結晶膜を、単に「(111)層」、「(111)膜」という。例えば、主表面が(111)面である単結晶ダイヤモンド層は「単結晶ダイヤモンド(111)層」という。
【0055】
また、オフ角の関係を
図1に示す。
図1には、主面が(111)面である基板の、[_1_1 2]方向とその三回対象方向である、[_1 2_1]、[ 2_1_1]方向とオフ角の概念図を示した。なお、本明細書では、
【数1】
【0056】
(積層基板)
本発明に係る積層基板100は、
図2に示すように、下地基板1と、該下地基板1上の中間層2と、該中間層2上の前記単結晶ダイヤモンド(111)層3を含むものである。
図2では、下地基板1、中間層2のそれぞれが1層からなるものとして記載しているが、それぞれが複数層からなるものであってもよい。
【0057】
下地基板1は、主表面が、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-0.5°以下又は+0.5°以上+8.0°以下の範囲でオフ角を有するものである。オフ角がこのような範囲にあれば、単結晶ダイヤモンド(111)結晶のステップの方向(結晶軸[_1_1 2]方向及びその三回対象な方向)に成長が進み、良好な結晶が得られる。オフ角が-0.5°より大きく+0.5°より小さい範囲では、上記のようなステップの方向への成長が行われ難いため、良好な結晶が得られない。また、オフ角が-8.0°より小さい範囲及び+8.0°より大きい範囲では、長時間成長を行うと多結晶化してしまうため、良質な単結晶が得られない。
【0058】
下地基板1は、単一のSi、MgO、Al2O3、SiO2、Si3N4又はSiCからなる基板、又は、Si、MgO、Al2O3、SiO2、Si3N4又はSiCから選択される積層体であることが好ましい。これらの材料は、下地基板1の主表面の結晶面方位(オフ角を含む)の設定が容易である。しかも、比較的安価であり、容易に入手できるものである。
【0059】
下地基板1は、MgO(111)であるか、又は、下地基板1と中間層2との間にMgO(111)層をさらに含むものであることがより好ましい。MgO(111)の上には、中間層2及び単結晶ダイヤモンド(111)層3を形成することができる。
【0060】
中間層2は、一層でもよいし、複数層の積層体でもよい。中間層2の最表面は、Ir(111)膜、Rh(111)膜、Pd(111)膜及びPt(111)膜から選択される金属膜であることが好ましい。このような金属膜を用いると、核形成処理(バイアス処理)した際にダイヤモンド核が高密度になりやすく、その上に単結晶ダイヤモンド(111)層3が形成されやすくなるので好ましい。
【0061】
中間層2は、ヘテロエピタキシャル成長したIr(111)膜とすることが、さらに好ましい。このとき、該Ir(111)膜の結晶性が、波長λ=1.54ÅのX線回折法で分析した、Ir(111)帰属の2θ=40.7°における回折強度ピークの半値幅(FWHM)が0.30°以下のものとすると、単結晶ダイヤモンド(111)層3がさらに高結晶性のものとなる。
【0062】
中間層2は結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、±0.5~±8.0°の範囲でオフ角が付けられていることが好ましい。このようなオフ角が付けられていると、単結晶ダイヤモンド(111)層3のステップの方向([_1_1 2]方向及びその三回対象な方向)に成長がより進み易く、良好な結晶成長が得られる。すなわち、平滑で異常成長のない単結晶ダイヤモンド(111)層3となる。
【0063】
中間層2の厚さは、5.0μm以下とすることが好ましい。このような範囲であれば、応力がより小さくなり、反りや割れの発生の懸念がより小さくなる。
【0064】
下地基板1と中間層2の好ましい例としては、例えば、下地基板1にMgO(111)基板を用い、該MgO(111)基板上にIr(111)膜をヘテロエピタキシャル成長させても良いし、下地基板1としてSi(111)基板を用い、該Si(111)基板上にMgO(111)層をヘテロエピタキシャル成長させた後、更にIr(111)膜をヘテロエピタキシャル成長させても良い。
【0065】
単結晶ダイヤモンド(111)層3は、結晶面方位(111)に対して、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-10.5°より大きく-2.0°未満又は+2.0°より大きく+10.5°未満の範囲でオフ角を有するものである。本発明者が鋭意調査した結果、単結晶ダイヤモンド(111)層3のオフ角は、下地基板1のオフ角よりも1.5°より大きく2.5°未満の範囲で、大きなオフ角となることを見出した。このため、上述のようなオフ角を有する下地基板1上にヘテロエピタキシャル成長された単結晶ダイヤモンド(111)層3のオフ角は、下地基板1のオフ角よりも、1.5°より大きく2.5°未満の範囲で、大きなものとなる。このことを逆に考えれば、良質な膜が得られる範囲のオフ角を有する下地基板1であり、かつ、目的とする単結晶ダイヤモンド(111)層3のオフ角に対して、1.5°より大きく2.5°未満の範囲で、小さいオフ角を有する下地基板1を用いればよいことになる。
【0066】
単結晶ダイヤモンド(111)層3のオフ角は、結晶軸[_1_1 2]方向又はその三回対象方向に、-8.0°以上-3.0°以下又は+3.0°以上+8.0°以下の範囲とすることがさらに好ましい。このような範囲のオフ角を有する単結晶ダイヤモンド(111)層3は、より高品質のものであり、電子・磁気デバイス用基板としてより好適なものとなる。
【0067】
単結晶ダイヤモンド(111)層3の不純物濃度は、SIMS法で分析した場合に、酸素濃度が1×1017atoms/cm3以下、窒素濃度が5×1016atoms/cm3以下のものであることが好ましい。このような不純物濃度のものであれば、電子・磁気デバイス用基板として好適である。
【0068】
単結晶ダイヤモンド(111)層3の厚さは、100μm以上とすることが好ましい。このような厚さの単結晶ダイヤモンド(111)層3は、より強度の高いものとなり、下地基板1や中間層2を除去して、
図3のような自立基板4とすることがより容易になる。
【0069】
積層基板100の直径は、10mm以上とすることが好ましい。このような直径の大きな、すなわち、大面積の基板であれば、1チップ上に多数の素子を形成することが可能となり、コストダウンや、計測装置の小型化が可能になる。
【0070】
単結晶ダイヤモンド(111)層3の表面の算術平均粗さ(Ra)は、2nm以下とすることが好ましい。このような表面の算術平均粗さ(Ra)を有する単結晶ダイヤモンド(111)層3を備えた積層基板100であれば、素子形成が容易となり、電子・磁気デバイス用基板として好適である。
【0071】
(自立基板)
上述のように、下地基板1や中間層2を除去することにより自立基板4を得ることができる(
図3)。下地基板1や中間層2などがない自立基板4であれば、ノイズの原因となるヘテロ界面が存在しないため、電子デバイス用途のみならず、磁場、電場、温度、圧力等の高感度センサーなど、適用範囲が広いものとなる。
【0072】
(積層基板の製造方法)
次に、本発明に係る積層基板100の製造方法について述べる。
まず、上述の下地基板1を準備する。次に、前記下地基板1上に、中間層2をヘテロエピタキシャル成長させる。ヘテロエピタキシャル成長させる方法は特に限定されない。例えば、上述の中間層2を金属膜とする場合には、電子線ビーム蒸着法、スパッター法などが挙げられる。比較的成長速度が高くて良好な結晶性のものが得られる点で、R.F.マグネトロンスパッター法を用いることが好ましい。成長条件は膜の種類に応じて適宜設定することができるが、代表的な条件としては、基板温度600~1200℃、圧力1.1×10-1Torr(14.7Pa)~9.0×10-1Torr(120.0Pa)で、高品質な金属膜をヘテロエピタキシャル成長することができる。
【0073】
中間層2として例えば金属膜を形成した後は、中間層2の表面にダイヤモンドの核を形成する核形成処理を行う。核形成処理を行うことで、ダイヤモンドの形成が促進される。この核形成処理は、例えば、基板にバイアスをかけながら炭素含有ガス雰囲気でプラズマ処理することで行う。
【0074】
中間層2の表面に核を形成した後、単結晶ダイヤモンド(111)層3をヘテロエピタキシャル成長させる。この成長は、化学気相成長法(CVD)法が好適であり、例えば、マイクロ波プラズマCVD法、直流プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、アーク放電プラズマジェットCVD法等が挙げられる。これらの成長方法で得られるダイヤモンドは、高結晶性で、ヒロック、異常成長粒子、転位欠陥が少なく、かつ高純度、低応力な高品質単結晶ダイヤモンドである。この中でも、直流プラズマCVD法は、高速に、高純度かつ高結晶性な成長を行えるため好適である。これにより、下地基板1と、中間層2と、単結晶ダイヤモンド(111)層3が積層された積層基板100を製造することができる。
【0075】
単結晶ダイヤモンド(111)層3を各種デバイス等に適用する上で、薄くても良い場合には、単結晶ダイヤモンド(111)層3を安定して保持するために、単結晶ダイヤモンド(111)層3/中間層2/下地基板1のままで用いることができる。
【0076】
(自立基板の製造方法)
磁気センサー用途などで、中間層2以下の材料の存在がノイズの原因となる場合には、単結晶ダイヤモンド(111)層3のみを取り出して、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板4とすれば良い。上述のようにして得た積層基板100から、下地基板1と中間層2を除去することで、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板4を得ることができる。下地基板1と中間層2の除去は、特に限定されない。研磨等の機械的処理、ウェット又はドライエッチング処理など、下地基板1や中間層2の材料に合わせて適宜選択すればよい。また、上記の各処理を組み合わせることもできる。
【0077】
また、上記単結晶ダイヤモンド(111)層3が形成された積層基板100や、上記自立基板4の表面を平滑化することも、電子・磁気デバイス等への適用に有効である。これにより、素子の形成がより容易になる。表面の平滑化は、機械的な研磨、CMP、プラズマエッチング等のドライエッチングなどが挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0079】
(実施例)
下地基板として、直径20.0mm、厚さ1.0mm、主表面が(111)面で、結晶軸[_1_1 2]方向に2°のオフ角を有する、片面研磨された単結晶MgO基板(以下、「単結晶MgO(111)基板」という)を用意した。
【0080】
次に、用意した単結晶MgO(111)基板の表面に、R.F.マグネトロンスパッター法によって単結晶Ir膜の中間層を形成した。単結晶Ir膜の形成には、直径6インチ(150mm)、厚さ5.0mm、純度99.9%以上のIrをターゲットとした、高周波(RF)マグネトリンスパッタ法(13.56MHz)を用いた。
【0081】
下地基板である単結晶MgO(111)基板を800℃に加熱し、ベースプレッシャーが6×10-7Torr(約8.0×10-5Pa)以下になったのを確認した後、Arガスを50sccmで導入した。次に、排気系に通じるバルブの開口度を調節して圧力を3×10-1Torr(約39.9Pa)とした後、RF電力1000Wを入力して15分間成膜を行った。これにより、厚さ1.0μmの単結晶Ir膜が得られた。
【0082】
上述のようにして得られた、単結晶MgO(111)基板上に単結晶Ir膜を積層させたものは、単結晶MgO基板に付けられたオフ角にならって、ヘテロエピタキシャル成長する。この単結晶Ir膜を、波長λ=1.54ÅのX線回折法で分析したところ、表面が(111)面で結晶軸[_1_1 2]方向に2°のオフ角が付いていた。また、Ir(111)帰属の2θ=40.7°における回折ピークの半値幅(FWHM)が0.187°であった。この単結晶Ir膜を、以下、「Ir(111)膜」という。
【0083】
次に、ダイヤモンドの核形成を行うための前処理として、核形成処理(バイアス処理)を行った。処理室内の直径25mmの平板型電極上に、Ir(111)膜側を上にして基板をセットした。ベースプレッシャーが1×10-6Torr(約1.3×10-4Pa)以下になったのを確認した後、水素希釈メタンガス(CH4/(CH4+H2)=5.0vol.%)を、処理室内に500sccmの流量で導入した。排気系に通じるバルブの開口度を調整して、圧力を100Torr(約1.3×104Pa)とした後、基板側電極に負電圧を印加して90秒間プラズマにさらして、基板(Ir(111)膜)表面をバイアス処理した。
【0084】
上述のようにして作製したIr(111)膜/単結晶MgO(111)基板上に、直流プラズマCVD法によってダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させた。バイアス処理を行ったIr(111)膜/単結晶MgO(111)基板を、直流プラズマCVD装置のチャンバー内にセットし、ロータリーポンプで10-3Torr(約1.3×10-1Pa)以下のベースプレッシャーまで排気した後、原料ガスである水素希釈メタンガス(CH4/(CH4+H2)=5.0vol.%)を、チャンバー内に1000sccmの流量で導入した。排気系に通じるバルブの開口度を調節して、チャンバー内のプレッシャーを110Torr(約1.5×104Pa)にした後、6.0Aの直流電流を流して30時間成膜を行うことで、厚さが約200μmに達するまで成膜を行った。成膜中の基板の温度をパイロメーターで測定したところ、950℃であった。このようにして、Ir(111)膜/単結晶MgO(111)基板上に、ダイヤモンド層をヘテロエピタキシャル成長して、積層基板を得た。
【0085】
得られたダイヤモンド層について、入射波長1.54ÅのX線回折分析をしたところ、ダイヤモンド(111)帰属の2θ=43.9°における回折強度ピークのFWHMが0.212°、ロッキングカーブピークのFWHMが0.583°であった。ダイヤモンド層は、Ir(111)膜のオフ角にならって、ヘテロエピタキシャル成長した。以下、このダイヤモンド層を「単結晶ダイヤモンド(111)層」という。
【0086】
単結晶ダイヤモンド(111)層の不純物濃度の分析をSIMS法で行ったところ、酸素濃度が[O]≦1×1017atoms/cm3、窒素濃度が[N]≦5×1016atoms/cm3であった。なお、どちらの元素についても装置の測定下限界以下であった。また、光学顕微鏡及びSEM観察を行ったところ、ヒロック、異常成長粒子などの結晶欠陥はみられなかった。単結晶ダイヤモンド(111)層/Ir(111)膜/単結晶MgO(111)基板の状態でも、クラックや反りが無いものが得られた。
【0087】
この後、Ir(111)膜/単結晶MgO(111)基板を除去して自立基板化を行った。まず、単結晶MgO(111)基板をエッチング除去した後、Ir(111)膜を研磨で除去した。その結果、直径20mm、厚さ約200μmの単結晶ダイヤモンド(111)自立基板が得られた。
【0088】
最後に、単結晶ダイヤモンド(111)自立基板の表面側を研磨加工した。触針式表面粗さ計(Bruker社Dektak)で500μmスキャンの測定を行ったところ、算術平均粗さ(Ra)値が0.5nmであった。
【0089】
ここで、得られた研磨済みの直径20mm、厚さ180μmの単結晶ダイヤモンド(111)自立基板表面に、マイクロ波CVD法で、水素希釈メタン原料ガスに窒素ガスを混入させて、窒素ドープダイヤモンド層を厚さ3μmで形成した。該窒素ドープダイヤモンド層をSIMS分析したところ、窒素ドープダイヤモンド層における窒素濃度は[N]=1×1019atoms/cm3であった。
【0090】
この後、NVC現象を評価するために、ホトルミネッセンス(PL)分析、光検出磁気共鳴分析、NVセンターからの検出光の共焦点顕微鏡観察を行ったところ、磁気センサーデバイス用途に充分な実用性を有することを確認した。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0092】
100…積層基板、 1…下地基板、 2…中間層、
3…単結晶ダイヤモンド(111)層、 4…自立基板。