(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】含窒素化合物およびその製造方法、ならびに該含窒素化合物を含む光機能性材料
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20240422BHJP
C07D 207/16 20060101ALI20240422BHJP
C07D 241/04 20060101ALN20240422BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20240422BHJP
C07D 241/08 20060101ALN20240422BHJP
C07D 403/08 20060101ALN20240422BHJP
C07D 403/14 20060101ALN20240422BHJP
C07D 471/04 20060101ALN20240422BHJP
C07D 217/26 20060101ALN20240422BHJP
C07D 401/08 20060101ALN20240422BHJP
C07D 487/14 20060101ALN20240422BHJP
C07D 471/14 20060101ALN20240422BHJP
C07D 471/22 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
C09K11/06 640
C09K11/06 650
C07D207/16
C07D241/04
C07D487/04 140
C07D241/08
C07D403/08
C07D403/14
C07D471/04 103A
C07D217/26
C07D401/08
C07D471/04 107Z
C07D487/14
C07D471/14 102
C07D471/22
(21)【出願番号】P 2020014005
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舘 祥光
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-327575(JP,A)
【文献】国際公開第2019/154613(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03062793(FR,A1)
【文献】特表2002-532465(JP,A)
【文献】特開平08-092172(JP,A)
【文献】特開平01-172383(JP,A)
【文献】特開昭59-013779(JP,A)
【文献】国際公開第2017/042805(WO,A1)
【文献】特表2018-515512(JP,A)
【文献】国際公開第1991/012266(WO,A1)
【文献】Chemische Berichte,1961年,Vol.94,p.2271-2277
【文献】Organic Letters,2014年,Vol.16(3),p.872-875
【文献】Z. physiol. Chem.,1924年,Vol.139,p.169-180
【文献】Helvetica Chimica Acta,1951年,Vol.34,p.1544-1576
【文献】Tetrahedron Letters,2000年,Vol.41(21),p.4139-4142
【文献】RN:1211514-50-9,DATABASE REGISTRY [ONLINE], Retrieved from STN,2010年03月18日
【文献】Chemical Communications,2011年,Vol.47(8),p.2405-2407, Supporting Information
【文献】Chemistry Select,2016年,Vol.1(6),p.1287-1291
【文献】Chemical Communications,2014年,Vol.50(63),p.8685-8688
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式
【化1】
から選択され
る含窒素化合物
を含有する、光機能性材料。
【請求項2】
請求項
1に記載の含窒素化合物、および2価の金属塩を含む錯体
を含有する、光機能性材料。
【請求項3】
前記2価の金属塩が、銅塩または亜鉛塩である請求項
2に記載の
光機能性材料。
【請求項4】
前記2価の金属塩が、ZnCl
2、ZnBr
2、Zn(CH
3COO)
2およびZn(ClO
4)
2からなる群より選択される少なくとも1種の亜鉛塩である、請求項
2または
3に記載の
光機能性材料。
【請求項5】
請求項
1に記載され
た含窒素化合物の製造方法であって、
含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を環化する工程、および
環化工程で得られた1種または2種の環化アミノ酸を二量化する工程
を含む、含窒素化合物の製造方法
であり、
前記アミノ酸が、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンおよびプロリンからなる群より選択される少なくとも1種である、含窒素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素化合物およびその製造方法、ならびに該含窒素化合物を含む光機能性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な発光材料が、それらが有する特異的な性質を利用して、試薬、材料などとして多くの分野で使用され、その用途によって、発光効率、輝度、発光寿命および耐久性のような発光特性がより高いレベルで求められるようになっている。
【0003】
これまでに多環式芳香族炭化水素および含窒素芳香族複素環誘導体など、様々な発光材料が開発されている。しかし、多くの発光材料は固体状態で発光特性が著しく低下する(特許文献1)。また多環式芳香族炭化水素、および含窒素芳香族複素環誘導体は、多くの場合、多段階かつ複雑な反応経路で合成されるため、収率が低く、工業的に製造する場合には量産が困難でコスト高になるといった問題がある。
【0004】
また、固体状態で効率よく発光する材料として、イリジウムなどのレアメタルを用いたもの(特許文献2)があるが、加熱により発光効率が低下する欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-026851号公報
【文献】特開2007-161673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
資源的制約の多いレアメタルを用いた発光材料が多く、またレアメタルを用いない発光材料ではデバイスに搭載される固体状態では充分な発光特性を示さないものが多い。
【0007】
また、多環式芳香族炭化水素および含窒素芳香族複素環誘導体の合成では、含窒素芳香族複素環誘導体のヘテロ原子の導入が困難で低収率であるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、イリジウムのような高価なレアメタルを用いずとも充分な発光特性を有する含窒素化合物およびその製造方法、ならびに含窒素化合物等を含む光機能性材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、1種または2種のアミノ酸を二量化した構造を有する新規な含窒素化合物を合成することに成功し、しかも該含窒素化合物が、優れた発光特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
項1.
下記一般式(I)で表される、含窒素化合物。
【化1】
[式中、R
A、R
B、R
1、R
2、R
3、R
4、およびXは、下記(1)および(2)のいずれかである。
(1)R
Aは、アミノ基の保護基、
R
Bは、保護されたカルボキシル基、
Xは、CH
2またはC=Oを示し、
R
1が結合している炭素原子と該炭素原子に隣接するXとの間の結合は、一重結合である。
(i)R
2およびR
3は、それぞれ水素原子を示し、R
1およびR
4は、それぞれ独立して芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基を示す。
(ii)R
1は、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基を示し、R
2は水素原子を示す。R
3およびR
4は、これらが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよい。
(iii)R
4は、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基を示し、R
3は水素原子を示す。R
1およびR
2は、これらが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよい。又は、
(iv)R
1とR
2とが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよく、
該5員環または6員環は、更に芳香環または窒素含有複素環を縮合していてもよい。
該縮合している芳香環は置換基を有していてもよく、また、前記窒素含有複素環には置換基を有していてもよい芳香環が更に縮合していてもよい。
R
3とR
4とが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよく、
該5員環または6員環は、更に芳香環または窒素含有複素環を縮合していてもよい。
該縮合している芳香環は置換基を有していてもよく、また、前記窒素含有複素環には置換基を有していてもよい芳香環が更に縮合していてもよい。
(2)R
AとR
Bとは互いに結合して
【化2】
R
1が結合している炭素原子と該炭素原子に隣接するXとの間の結合が、一重結合である場合、XはCH
2またはC=Oを示し、
R
1が結合している炭素原子と該炭素原子に隣接するXとの間の結合が、二重結合である場合、XはCHまたはC-OHを示す。
R
1、R
2、R
3およびR
4は、前記(1)で定義される(i)~(iv)におけるR
1、R
2、R
3およびR
4と同じ。]
項2.
前記(i)~(iii)において、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基における芳香環または窒素含有複素環が、単環または二環である、項1に記載の含窒素化合物。
項3.
前記(i)~(iii)において、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基が、下記化学式から選択される基である、項1または2に記載の含窒素化合物。
【化3】
(式中、Rは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を示し、nは1~4の整数を示す)
項4.
前記(iv)において、R
1およびR
2、並びにR
3およびR
4が、互いに結合して形成される環が、単環、二環、または三環である、項1に記載の含窒素化合物。
項5
前記(iv)において、R
1およびR
2、並びにR
3およびR
4が、互いに結合して形成される環の残基が、下記化学式から選択される基である、項1または4に記載の含窒素化合物。
【化4】
(式中、Rは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を示し、nは1~4の整数を示す)
項6.
下記化学式
【化5】
から選択される、項1に記載の含窒素化合物。
項7.
項1~6のいずれかに記載の含窒素化合物、および2価の金属塩を含む錯体。
項8.
前記2価の金属塩が、銅塩または亜鉛塩である項7に記載の錯体。
項9.
前記2価の金属塩が、ZnCl
2、ZnBr
2、Zn(CH
3COO)
2およびZn(ClO
4)
2からなる群より選択される少なくとも1種の亜鉛塩である、項7または8に記載の錯体。
項10.
項1~6のいずれかに記載の含窒素化合物、または項7~9のいずれかに記載の錯体を含有する、光機能性材料。
項11.
項1~6に記載された一般式(I)で表される含窒素化合物の製造方法であって、
含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を環化する工程、および
環化工程で得られた1種または2種の環化アミノ酸を二量化する工程
を含む、含窒素化合物の製造方法。
項12.
前記アミノ酸が、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンおよびプロリンからなる群より選択される少なくとも1種である、項11に記載の含窒素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
発光特性に優れた新規な含窒素化合物が提供される。また、当該含窒素化合物および2価の金属塩を含む錯体が提供される。また、当該含窒素化合物を含む、光機能性材料が提供される。さらに、当該含窒素化合物の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、イリジウムのような高価なレアメタルや金属塩を用いずとも充分な発光特性を有する含窒素化合物およびその製造方法、ならびに含窒素化合物を含む、光機能性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】含窒素化合物(化合物9、10、11、17、21)の吸収スペクトルを示す。
【
図2】含窒素化合物(化合物9、10、17、21)の蛍光スペクトルを示す。
【
図3】含窒素化合物(化合物4)の吸収スペクトルを示す。
【
図4】含窒素化合物(化合物4)の蛍光スペクトルを示す。
【
図5】含窒素化合物(化合物11)の蛍光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、アルキル基とは、炭素数が1~4、好ましくは1~3の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0015】
本明細書において、アルコキシ基とは、炭素数は1~4、好ましくは1~3の直鎖状または分枝鎖状のアルコキシ基であって、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0016】
本明細書において、ハロゲン基としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられる。
【0017】
本発明の、含窒素化合物は下記一般式(I)で表される化合物である。
【化6】
[式中、R
A、R
B、R
1、R
2、R
3、R
4、およびXは、下記(1)および(2)のいずれかである。
(1)R
Aは、アミノ基の保護基、
R
Bは、保護されたカルボキシル基、
Xは、CH
2またはC=Oを示し、
R
1が結合している炭素原子と該炭素原子に隣接するXとの間の結合は、一重結合である。
(i)R
2およびR
3は、それぞれ水素原子を示し、R
1およびR
4は、それぞれ独立して芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基を示す。
(ii)R
1は、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基を示し、R
2は水素原子を示す。R
3およびR
4は、これらが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよい。
(iii)R
4は、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基を示し、R
3は水素原子を示す。R
1およびR
2は、これらが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよい。又は、
(iv)R
1とR
2とが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよく、
該5員環または6員環は、更に芳香環または窒素含有複素環を縮合していてもよい。
該縮合している芳香環は置換基を有していてもよく、また、前記窒素含有複素環には置換基を有していてもよい芳香環が更に縮合していてもよい。
R
3とR
4とが互いに結合して、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環を形成していてもよく、
該5員環または6員環は、更に芳香環または窒素含有複素環を縮合していてもよい。
該縮合している芳香環は置換基を有していてもよく、また、前記窒素含有複素環には置換基を有していてもよい芳香環が更に縮合していてもよい。
(2)R
AとR
Bとは互いに結合して
【化7】
R
1が結合している炭素原子と該炭素原子に隣接するXとの間の結合が、一重結合である場合、XはCH
2またはC=Oを示し、
R
1が結合している炭素原子と該炭素原子に隣接するXとの間の結合が、二重結合である場合、XはCHまたはC-OHを示す。
R
1、R
2、R
3およびR
4は、前記(1)で定義される(i)~(iv)におけるR
1、R
2、R
3およびR
4と同じ。]
【0018】
一般式(I)中の(i)~(iii)において、芳香環-アルキル基は、芳香環基が置換したアルキル基であり、窒素含有複素環-アルキル基は、窒素含有複素環基が置換したアルキル基である。
芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基中、アルキル部分の炭素数は、1~4が例示され、1~3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
芳香環-アルキル基中、芳香環部分は、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環が例示され、不飽和の6員環が好ましい。芳香環に含まれる不飽和結合の数は、1、2個または3個が例示され、3個であることが好ましい。芳香環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。置換基の数は、0、1、2、3、または4個が例示され、0、1、または2個が好ましい。
窒素含有複素環-アルキル基中、窒素含有複素環部分は、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環が例示され、不飽和の5員環が好ましい。窒素含有複素環に含まれる窒素原子の数は、1個または2個が例示される。窒素含有複素環-アルキル基中、窒素含有複素環には、芳香環が縮合していてもよい。芳香環としては、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環が例示され、不飽和の6員環が好ましい。窒素含有複素環(芳香環が縮合している場合には、芳香環も含む)に含まれる不飽和結合の数は、1、2、3、または4個が例示され、2、または4個であることが好ましい。窒素含有複素環(芳香環が縮合している場合には、芳香環も含む)は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。置換基の数は、0、1、2、3、または4個が例示され、0、1、または2個が好ましい。
【0019】
一般式(I)中の(i)において、R1、またはR4で表される芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
一般式(I)中の(i)~(iii)において、芳香環-アルキル基または窒素含有複素環-アルキル基としては、例えば、単環または二環が挙げられ、下記に示す構造式が例示される。
【0021】
【化8】
(式中、Rは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を示し、nは1~4の整数を示す)
【0022】
一般式(I)中の(ii)において、R3とR4とが互いに結合して形成される環は、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環であり、飽和の5員環または6員環であることが好ましく、飽和の5員環であることがより好ましい。
【0023】
一般式(I)中の(iii)において、R1とR2とが互いに結合して形成される環は、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環であり、飽和の5員環または6員環であることが好ましく、飽和の5員環であることがより好ましい。
【0024】
一般式(I)中の(iv)においてR1とR2とが互いに結合して形成される環は、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環である。5員環または6員環に含まれる不飽和結合の数は、1個または2個が例示され、2個であることが好ましい。5員環または6員環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。置換基の数は、0、1、2、3、または4個が例示され、0、1、または2個が好ましい。
【0025】
前記5員環または6員環には、芳香環が縮合していてもよい。芳香環としては、5員環、6員環などが例示され、6員環が好ましい。芳香環に含まれる不飽和結合の数は、1、2、または3個が例示され、2、または3個が好ましい。芳香環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。置換基の数は、0、1、2、3、または4個が例示され、0、1、または2個が好ましい。
【0026】
前記5員環または6員環には、窒素含有複素環が縮合していてもよい。窒素含有複素環としては、5員環、6員環などが例示され、5員環が好ましい。窒素含有複素環に含まれる窒素原子の数は、1個または2個が例示される。また、窒素含有複素環は、飽和または不飽和の窒素含有複素環であり得る。窒素含有複素環に含まれる不飽和結合の数は、1、2、または3個が例示され、1、または2個が好ましい。窒素含有複素環は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。置換基の数は、0、1、2、3、または4個が例示され、0、1、または2個が好ましい。窒素含有複素環には、更に芳香環が縮合していてもよい。芳香環としては、5員環、6員環などが例示され、6員環が好ましい。芳香環に含まれる不飽和結合の数は、1、2、または3個が例示され、2、または3個が好ましい。芳香環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。置換基の数は、0、1、2、3、または4個が例示され、0、1、または2個が好ましい。
【0027】
換言すれば、一般式(I)中の(iv)において、R1およびR2が、互いに結合して形成される環は、単環、二環、または三環である。
【0028】
一般式(I)中の(iv)において、R1およびR2が、互いに結合して形成される環が単環である場合、該単環は、飽和もしくは不飽和の5員環または6員環などが例示され、飽和または不飽和の5員環であることが好ましい。5員環に含まれる不飽和結合の数は、1、または2個が例示され、2個が好ましい。
【0029】
一般式(I)中の(iv)において、R1およびR2が、互いに結合して形成される環が二環である場合、該二環は、6員環および5員環からなる二環、2個の6員環からなる二環、または2個の5員環からなる二環が例示され、6員環および5員環からなる二環、または2個の6員環からなる二環が好ましい。該二環を構成する6員環および5員環は、飽和または不飽和であり得、該二環を構成する少なくとも1個の環は不飽和であることが好ましい。該二環上の不飽和結合の数は、1、2、3、または4個が例示され、2、3、または4個が好ましい。該二環を構成する少なくとも1個の環は、窒素含有複素環であってもよく、該二環に含まれる窒素原子の数は、1、または2個が例示され、2個が好ましい。
【0030】
一般式(I)中の(iv)において、R1およびR2が、互いに結合して形成される環が三環である場合、該三環は、3個の6員環からなる三環、3個の5員環からなる三環、2個の6員環および1個の5員環からなる三環、または1個の6員環および2個の5員環からなる三環が例示され、2個の6員環および1個の5員環からなる三環であることが好ましい。該三環を構成する6員環および5員環は、飽和または不飽和であり得、該三環を構成する1、2、または3個の環が不飽和であることが例示され、2個または3個の環が不飽和であることが好ましい。該三環上の不飽和結合の数は、1、2、3、4、5、または6個が例示され、4、5、または6個が好ましい。該三環を構成する少なくとも1個の環は、窒素含有複素環であってもよく、該三環に含まれる窒素原子の数は、1、2、3、または4個が例示され、1個であることが好ましい。
【0031】
R3とR4とが互いに結合して、上記R1とR2とが互いに結合して形成される環と同様の環を形成しうる。R1とR2とが互いに結合して形成される環とR3とR4とが互いに結合して形成される環とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。R1とR2とが互いに結合して形成される環、またはR3とR4とが互いに結合して形成される環の残基としては、下記に示す基が例示される。
【0032】
【化9】
(式中、Rは、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を示し、nは1~4の整数を示す)
【0033】
アミノ基の保護基としては、アミノ基を保護できるものであれば特に限定されず、例えば置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられる。好ましいアミノ基の保護基は、アルコキシカルボニル基である。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、iso-プロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0034】
保護されたカルボキシル基としては、カルボキシル基が保護されていれば特に限定されず、例えばアルキル基、アリルアルキル基、アリル基、シリル基などで置換されたカルボキシル基が挙げられる。好ましい保護されたカルボキシル基は、アルキル基で置換されたカルボキシル基ある。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0035】
本発明の含窒素化合物としては、下記に示す化合物が例示される。
【0036】
【0037】
本発明は、上記含窒素化合物および2価の金属塩を含む錯体をも包含する。以下、当該錯体を「本発明の錯体」と表記することがある。
【0038】
2価の金属塩は、本発明の含窒素化合物と組み合わせて所望の発光特性を得ることができる限り、特に限定されない。具体的には、亜鉛塩または銅塩であることが好ましく、亜鉛塩が特に好ましい。亜鉛塩とは、亜鉛イオンをカチオンとして含む塩を意味する。金属源として豊富な埋蔵量の亜鉛塩を使用することで、レアメタルを使用した場合と比べて、光機能性材料を安価に、かつ大量に製造することができる。
【0039】
2価の金属塩に含まれるアニオンとしては、所望の発光特性を得ることができる限り、特に限定されない。具体的には、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、CN-、NO3
-、NO2
-、ClO-、ClO2
-、ClO3
-、ClO4
-、MnO4
-、CH3COO-、HCO3
-、CO3
2-、H2PO4-、HPO4
2-、PO4
3-、SO4
2-、HSO4
-、HS-、SCN-、O2
-、S2
-、S2O3
2-
、CF3SO3
-などを挙げることができ、Cl-、Br-、CH3COO-、またはClO4
-が好ましい。
【0040】
2価の金属塩としては、ZnCl2、ZnBr2、Zn(CH3COO)2およびZn(ClO4)2からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、本発明に用いられる金属塩は、所望の発光特性を得ることができる限り、少量の他の金属塩を含んでいてもよい。
【0041】
含窒素化合物と2価の金属塩との含有割合は、特に限定されず、金属塩1モルに対して、含窒素化合物0.5~3モルなどが例示され、1.0~2.0モルであることが好ましい。
【0042】
本発明の錯体は、本発明の含窒素化合物および2価の金属塩を含有し、さらに他の成分を含むことができる。例えば、メタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテルなどの有機溶媒;水などが挙げられる。
【0043】
本発明の錯体は、本発明の含窒素化合物および2価の金属塩を用いて、公知の方法により製造することができる。本発明の錯体は、例えば、特開2010-174052、特開2014-19664に記載の方法により、製造することができる。
【0044】
本発明は、本発明の含窒素化合物、または本発明の錯体を含有する光機能性材料をも包含する。以下、当該光機能性材料を「本発明の光機能性材料」と表記することがある。
【0045】
本発明において、光機能性材料とは、紫外線のような光線の照射に応答して発光性を示す材料を意味する。具体的には、溶媒の非存在下またはその存在下で紫外線のような光線を照射した際に、それに応答して発光性を示すような化合物を意味する。
【0046】
本発明の光機能性材料における、本発明の含窒素化合物、または本発明の錯体の含有量は特に限定されず、例えば、0.000001質量%~99質量%の範囲において、適宜設定することができ、0.0000033質量%以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の光機能性材料は、本発明の含窒素化合物、または本発明の錯体を含有し、さらに公知の添加剤など他の成分を含むことができる。例えば、メタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテルなどの有機溶媒;水などが挙げられる。
【0048】
本発明の含窒素化合物、錯体、および光機能性材料は、優れた発光特性を有し、また一般的な溶媒に溶解するので、塗布などによる膜成形が可能であり、LED用および有機EL用のみならず、様々な光機能性材料としての応用が期待できる。例えば、本発明の含窒素化合物、または本発明の錯体を含む光機能性材料を、必要に応じて、当該技術分野において公知の添加剤と共に溶媒に溶解させ、得られた溶液を公知の方法により基材上に塗布、乾燥することにより、発光板や蛍光板などを得ることができる。
【0049】
本発明は、本発明の含窒素化合物の製造方法をも包含する。以下、当該製造方法を「本発明の製造方法」と表記することがある。
【0050】
本発明の含窒素化合物の製造方法は、含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を環化する工程、および環化工程で得られた1種または2種の環化アミノ酸を二量化する工程を含む。
【0051】
本発明の含窒素化合物の製造方法における各工程を実施するに当たっては、当業者に広く知られている各種の方法を適用できる。原料比率、温度、圧力、雰囲気、時間、混合(撹拌)などの反応条件は、原料の種類や量などにより適宜設定することができる。また、各工程により得られる目的物は、通常の単離、精製手段により容易に単離することができる。該単離および精製手段としては、一般に慣用される各種の手段、例えば、沈殿、再結晶、蒸留、乾燥、遠心分離、クロマトグラフィー等を採用することができる。また、本発明の含窒素化合物の製造方法における各工程は、下記に例示する順番で実施してもよく、下記に例示する順番に限定されず実施してもよい。
【0052】
本発明の含窒素化合物の代表的な製造方法を以下に示す。
一般式(I)において、RAがアミノ基の保護基を示し、RBが保護されたカルボキシル基を示す化合物(一般式(Ia)および一般式(Ib)の化合物)は、例えば、以下の反応式-1に示す方法により、製造される。
【0053】
【化11】
(式中、R
A’はアミノ基の保護基を示し、R
B’は保護されたカルボキシル基を示す。R
1、R
2、R
3、およびR
4は、前記に同じ。)
【0054】
反応式-1において、出発原料として用いられる一般式(II)および一般式(III)で表されるアミノ酸化合物は、いずれも公知の化合物であるか、公知の化合物から、当業者が容易に製造できる化合物である。具体的には、後記実施例に記載の反応条件および該反応条件を参照して対応する公知のアミノ酸、またはアミノ酸に類似する構造を有する化合物などから容易に製造できる。当該アミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸であってもよい。例えば、芳香環および/または窒素含有複素環を有するアミノ酸などを用いることができる。天然の芳香環および/または窒素含有複素環を有するアミノ酸としては、例えば、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン等が挙げられる。非天然のアミノ酸としては、合成物や商業的に入手可能なものなど、特に限定されず用いることができる。アミノ酸に類似する構造を有する化合物としては、カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物が挙げられ、ピペコリン酸などが例示される。
【0055】
反応式-1において、アミド結合生成反応は、一般式(II)の化合物と一般式(III)の化合物とを、通常のアミド結合生成反応にて反応させる方法である。アミド結合生成反応には公知のアミド結合生成反応の条件を容易に適用できる。例えば(イ)混合酸無水物法、即ちカルボン酸(II)にアルキルハロ炭酸エステルを反応させて混合酸無水物とし、これにアミン(III)を反応させる方法、(ロ)活性エステル法、即ちカルボン酸(II)をp-ニトロフェニルエステル、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル等の活性エステルとし、これにアミン(III)を反応させる方法、(ハ)カルボジイミド法、即ちカルボン酸(II)にアミン(III)をジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール等の活性化剤の存在下に縮合反応させる方法、(ニ)その他の方法、例えばカルボン酸(II)を無水酢酸等の脱水剤によりカルボン酸無水物とし、これにアミン(III)を反応させる方法、カルボン酸(II)と低級アルコールとのエステルにアミン(III)を高圧高温下に反応させる方法、カルボン酸(II)の酸ハロゲン化物、即ちカルボン酸ハライドにアミン(III)を反応させる方法等を挙げることができる。
【0056】
換言すれば、本発明の含窒素化合物の製造方法は、一般式(II)および一般式(III)で表されるアミノ酸化合物、すなわち本発明の含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を二量化する工程を含む。
【0057】
前記活性化剤の存在下に縮合反応させる方法(ハ)においては、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下又は非存在下に行われる。ここで使用される溶媒としては、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、N,N-ジメチルアセタミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチル燐酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等のアルコール類、アセトニトリル、ピリジン、アセトン、水、又はこれらの混合溶媒等を挙げることができる。活性化剤の使用量は、化合物(III)に対して少なくとも等モル量、好ましくは等モル~5倍モル量使用するのがよい。該反応は、通常-20~180℃程度、好ましくは0~150℃程度にて行われ、一般に5分~90時間程度で反応は完結する。
【0058】
反応式-1において、還元反応には、水素化還元剤を用いる還元法が好適に利用される。用いられる水素化還元剤としては、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化硼素リチウム、水素化硼素ナトリウム、ジボラン等が挙げられ、その使用量は、一般式(Ia)の化合物に対して少なくとも等モル、好ましくは等モル~15倍モルの範囲である。この還元反応は、通常適当な溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム等のエーテル類やこれらの混合溶媒等を用い、通常約-60~150℃、好ましくは-30~100℃にて、約10分間~15時間程度で行われる。
【0059】
一般式(I)において、R
AおよびR
Bが互いに結合して
【化12】
を示す化合物は、上記反応式-1に従って製造される一般式(Ia)または一般式(Ib)の化合物を環化することにより製造される。
【0060】
環化反応は、例えば、一般式(Ia)の化合物、または一般式(Ib)の化合物において、アミド結合を生成させることにより行われる。アミド結合生成反応としては、例えば、前記と同様の反応、保護基の脱保護反応などを適用することができる。
【0061】
また、本発明の含窒素化合物の製造方法は、含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を環化する工程を含むことができる。含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を環化する方法としては、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0062】
本発明の含窒素化合物の製造方法は、含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基を保護する工程を含むことができる。特に限定されないが、アミノ酸1個あたり、1個のアミノ基またはカルボキシル基を保護することが好ましい。アミノ基またはカルボキシル基を保護する方法としては、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0063】
本発明の含窒素化合物の製造方法は、保護されたアミノ基またはカルボキシル基の保護基を脱保護する工程を含むことができる。保護されたアミノ基の保護基を脱保護する方法としては、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0064】
本発明の含窒素化合物の製造方法は、二量化により得られた二量体をヒドロキシ化する工程を含むことができる。ヒドロキシ化によって導入される水酸基の数は、1個、または2個が例示される。ヒドロキシ化する方法としては、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0065】
本発明の含窒素化合物の製造方法としては、以下の工程を含む製造方法が例示される。
含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸のカルボキシル基を保護する工程、
カルボキシル基が保護されたアミノ酸を環化する工程、
環化されたアミノ酸の保護されたカルボキシル基の保護基を脱保護する工程、および
脱保護された環化されたアミノ酸を二量化する工程
【0066】
本発明の含窒素化合物の製造方法としては、例えば、前記脱保護された環化されたアミノ酸を二量化する工程の後に、得られた二量体を還元する工程を含んでいてもよい。
【0067】
前記の例示した本発明の含窒素化合物の製造方法について、より具体的な方法の一例を、以下の化学式を用いて示す。
【0068】
【0069】
また、本発明の含窒素化合物の製造方法は、以下の工程を含む製造方法が例示される。
含窒素化合物を構成する1種または2種のアミノ酸を環化する工程、
環化されたアミノ酸のカルボキシル基またはアミノ基をそれぞれ保護する工程、および
保護された環化されたアミノ酸を二量化する工程
【0070】
本発明の含窒素化合物の製造方法は、例えば、前記保護された環化されたアミノ酸を二量化する工程の後に、二量体を環化する工程を含んでいてもよい。
【0071】
さらに、本発明の含窒素化合物の製造方法は、例えば、二量体を還元する工程を含んでいてもよい。
【0072】
さらに、本発明の含窒素化合物の製造方法は、例えば、前記二量体を還元する工程の後に、二量体をヒドロキシ化する工程を含んでいてもよい。
【0073】
前記の例示した本発明の含窒素化合物の製造方法について、より具体的な方法の一例を、以下の化学式を用いて示す。
【0074】
【0075】
本発明の含窒素化合物を、反応式-2および反応式-3にそって、原料のアミノ酸毎に以下の表に例示する。なお、表中の化合物I~IV、1~3は、本発明の含窒素化合物を合成する際の中間体である。
【0076】
【0077】
本発明の含窒素化合物の製造方法によれば、アミノ酸の組み合わせ(選択)により、HOMOおよびLUMOのエネルギー準位およびそれらのエネルギーギャップを制御することができ、所望の発光によって光機能性材料を設計することができる。また、本発明の含窒素化合物の製造方法によれば、複雑な含窒素芳香族複素環を数段階という短工程で構築することができる。さらに、アミノ酸の種類や組み合わせを変えるだけで、様々な発光材料を系統的に合成することができる。
【実施例】
【0078】
本発明の内容を以下の合成例(製造例)により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。また特に言及する場合を除いて、「%」は「モル%」を意味する。
【0079】
各合成例において得られた化合物および金属錯体を、以下の機器および条件で分析して同定し、またそれらの物性を評価した。
【0080】
[1H-NMRおよび13C-NMR]
核磁気共鳴分光分析装置(400MHz、日本電子株式会社製、型式:JNM-Lambda400)を用いて、室温条件で化合物の1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルを測定した。テトラメチルシランを0.05質量%含む重ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)に化合物を溶解して測定試料を調製した。
【0081】
[IR]
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製、型式:FT/IR-4600)を用いて、化合物のIRスペクトルを測定した。化合物が油状である場合には、化合物をそのまま塩化ナトリウム板に挟持し、化合物が粉末である場合には、化合物を臭化カリウムと混合してペレットを作成し、測定試料とした。
【0082】
[FAB-MS]
【0083】
高性能二重収束質量分析計(日本電子株式会社製、型式:AccuTOFF LC-plus 4G, MS:JMS-700/700S MStation)を用いて、化合物のMSスペクトルを測定した。試料を3-ニトロベンジルアルコール(NBA)と混合して、FABイオン化法により正イオンモードで測定した。
【0084】
[融点]
微量融点測定装置(株式会社ヤナコ機器開発研究所製、型式:MP-500P)を用いて、金属錯体の融点を測定した。3回測定の平均幅の中心点を融点とした。
【0085】
化合物1の合成
【0086】
【化15】
30-mLナスフラスコにL-ヒスチジン (1.0 g, 6.5 mmol, 0.25 eq.)、およびメタノール (20 mL) を加えて攪拌した。この溶液に氷浴中で塩化チオニル (2.0 mL, 28 mmol, 1.0 eq.) をゆっくりと滴下し、60℃で 6 時間加熱還流をした。この反応溶液を減圧濃縮し、得られた固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで化合物1を白色固体として得た (1.5 g, 97%)。
化合物1: white solid;
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 9.05 (s, 1H), 7.50 (s, 1H), 4.43 (t, J=8 Hz, 1H), 3.74(s, 3 H).
【0087】
化合物2の合成
【0088】
【0089】
200-mLナスフラスコに化合物1(2.7 g, 11 mmol, 1.0 eq.)、N,N-ジメチルホルムアミド (80 mL)、およびカルボニルジイミダゾール (1.8 g, 11 mmol, 1.0 eq.) を加え 70℃で 6 時間加熱還流をした。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため、この溶液に1 M 炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、不溶物を吸引ろ過により取り除いた。得られたろ液をジクロロメタン (100 mL × 3) で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮することで茶色固体を得た。この茶色固体をアルミナカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル) により精製することで化合物2を白色固体として得た(1.3 g, 58%, 文献収率 61%)。
化合物2: white solid; 1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ(ppm) 8.17 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 5.96 (brs, 1H), 4.41-4.32 (m, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.39-3.36 (m, 2H).
IR (KBr): 1755 cm-1 (-NHCO), 1719 cm-1 (-COOH).
【0090】
化合物3の合成
【0091】
【0092】
200-mL ナスフラスコに化合物2(0.13 g, 0.67 mmol, 1.0 eq.)、および水 (100 mL) を入れて攪拌し、1 M 塩酸をゆっくりと加えて 50℃で 6 時間攪拌した。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認しため、反応溶液を減圧濃縮することで化合物3を茶色固体として得た(97 mg, 80%)。
化合物3: brown solid; 1H NMR (400 MHz, D2O):δ(ppm)9.18 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 4.77 (t, J = 5.5 Hz, 1H),4.43 (d, J = 5.5 Hz, 1H); 13C NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ(ppm) 170.6, 152.1, 134.5, 127.9, 118.0, 56.9, 26.9.
IR (KBr) :3388-2901 cm-1 (-OH), 1768 cm-1 (-COOH), 1623 cm-1 (-NRCO).
【0093】
化合物4の合成
【0094】
【0095】
200-mL ナスフラスコに化合物3(0.17 g, 0.94 mmol, 1.0 eq.)、および水 (50 mL) を加え 90℃で24 時間加熱還流した。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため、この溶液を減圧濃縮することで化合物4を含む茶色固体を得た (97 mg, 74%). MS (DART+) より化合物4に由来する[ M + H ]+ の分子イオンピーク(m/z= 275.19) が観測された。
化合物4: brown solid; 1H NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 8.61 (d, J = 1.1, 2H), 7.36 (s, 2H), 4.01 (t, J = 6.5Hz,2H), 3.34 (dd, J = 15.9 Hz, 6.5 Hz, 4H) 3.31 (dd, J = 15.9 Hz, 6.5Hz, 4H); 13C NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 175.28, 136.80, 130.34, 120.34, 56.31, 28.56.
IR (KBr): 1633 cm-1 (-NRCO).
【0096】
化合物5の合成
【0097】
【0098】
減圧下、加熱乾燥した100-mL 二口フラスコに水素化リチウムアルミニウム (0.14 g, 3.6 mmol, 10 eq)、および化合物4(0.10 g, 0.36mmol, 1 eq)を入れて窒素置換し、脱水テトラヒドロフラン (20 mL) を加え、1 日加熱還流を行った。TLC (メタノール) より原料の消失を確認したため氷浴中で飽和硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。不溶物をセライトろ過により取り除き、セライトをメタノールで洗浄した。ろ液を減圧濃縮することで得られた黄色個体 (0.17 g,crude y. 191 %) をアルミナカラムクロマトグラフィー (メタノール) で精製し化合物5を白色固体として得た(0.11 g, crude y. 124 %)。
化合物5: white solid; 1H NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 7.55 (s, 2H), 6.80 (s, 2H), 3.37 (m, 4H), 2.77 (m, 4H), 4.46 (quin, J = 2.83 Hz, 2H).
【0099】
化合物6の合成
【0100】
【0101】
100 mL ナス型フラスコに L-ヒスチジン(1.0 g, 6.5 mmol)、水 (3.0 mL)、濃硫酸 (0.2 mL)、およびホルムアルデヒド(1.0 mL) を加え65℃で5 時間加熱還流を行った。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。反応溶液にアンモニア水溶液を加えてpH 7 に調整し、沈殿物を吸引ろ過によって回収することによって化合物6を白色固体として得た(0.76 g, 70%)。MS (ESI+) より化合物6由来とみられる[ M+H ]+の分子イオンピーク (m/z = 168.1)が観測された。
化合物6: white solid; 1H NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 7.76 (s, 1H), 4.30 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 4.21 (d, J = 14.7 Hz, 1H), 4.04 (dd, J = 5.48 Hz, J = 5.30 Hz, 1H), 3.25 (dd, J = 11.5 Hz, J = 5.10 Hz, 1H), 2.95 (dd, J = 10.6 Hz, J = 5.85 Hz,1H).
IR (KBr): 1651 cm-1 (-COOH)
【0102】
化合物7の合成
【0103】
【0104】
100 mL ナス型フラスコに化合物6(5.0 g, 30 mmol)、メタノール (73 mL)、および塩化チオニル (7.3 mL) を加え 60℃ で 3 日間で加熱還流を行った。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため、この反応溶液を減圧濃縮し、得られた固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで化合物7を白色固体として得た (4.8 g, 88%)。MS (ESI+) より化合物7由来とみられる [ M+H ]+ の分子イオンピーク (m/z = 182.14)が観測された。
化合物7: white solid; 1H NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 8.53 (s, 1H), 4.52 (dd, J= 5.48 Hz, J = 5.30 Hz, 1H), 4.46 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 4.33 (d, J= 15.5 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.39 (dd, J = 10.8 Hz, J = 5.30 Hz, 1H), 3.14 (dd, J = 10.8 Hz, J = 5.10 Hz,1H).
【0105】
化合物7-THPの合成
【0106】
【0107】
100-mL ナス型フラスコに化合物7(1.5 g, 8.5 mmol, 1.0 eq.)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン (40 mL)、およびp-トルエンスルホン酸 (32 mg, 0.17 mmol, 0.02 eq.) を加え、130℃ overnightで攪拌を行った。TLC (メタノール) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。反応溶液に水 (50 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL × 3) で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た(1.03 g, 47%)。得られた黄色オイルをアルミナカラムクロマトグラフィー (ジクロロメタン-n-ヘキサン 1 : 1 (v/v))で精製することによって化合物7-THPを黄色オイルとして得た(1.0 g, 47%)。
化合物7-THP: yellow oil; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 6.55 (s, 1H), 5.91 (d, J= 16 Hz,1H), 5.32 (d, J = 16 Hz, 1H), 4.52(m, 1H), 3.88 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.61 (dd, J = 9.7 Hz, J = 6.6 Hz, 1H), 3.43 (m,1H), 3.34 (s,3H), 3.32 (dd, J = 6.4 Hz, J = 3.4 Hz 1H), 2.08 (m, 4H), 1.61 (m, 2H).
【0108】
化合物8の合成
【0109】
【0110】
100-mL ナス型フラスコに化合物6(5.0 g, 30 mmol,1.0 eq.)、および水 (79 mL) を加えて攪拌し、5 M 水酸化ナトリウム水溶液 (12 mL, 60 mmol, 2.0 eq.)、1,4-ジオキサン(92 mL)、および二炭酸ジ-t-ブチル (13 g, 60 mmol, 2.0 eq.) を加えて室温で 24 時間攪拌した。反応溶液を飽和硫酸水素カリウム水溶液でpH = 4 とした後、生じた白色沈殿をろ過によって取り除き、ろ液を減圧濃縮することによって化合物8を白色固体として得た (8.0 g, 100%)。MS (ESI+) より化合物8由来とみられる [ M+H ]+ の分子イオンピーク (m/z = 268.1)が観測された。
化合物8: white solid; 1H NMR(400 MHz, D2O):δ(ppm) 8.50 (s, 1H), 4.50(d, J = 16.1 Hz, 1H), 4.35 (d, J = 15.7 Hz,1H), 4.18 (dd, J = 5.48 Hz, J = 4.72 Hz, 1H), 3.36 (dd, J = 11.0 Hz, J = 5.85 Hz, 1H), 3.06 (dd, J= 10.4 Hz, J = 6.99 Hz, 1H), 1.13 (s,9H).
【0111】
化合物9の合成
【0112】
【0113】
200-mL ナス型フラスコに化合物7(3.4 g, 19 mmol, 1.0 eq.)、化合物8(5.0 g, 19 mmol, 1.0 eq.)、クロロホルム (250 mL)、トリエチルアミン (3.4 mL, 19 mmol, 1.0 eq.)、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (3.6 g, 19 mmol, 1.0 eq.) を加え、室温で24 時間攪拌を行った。TLC (メタノール) よりこれ以上反応が進行しないと判断したため、攪拌を終了した。反応溶液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。水 (50 mL × 3) で洗浄することによって、化合物9を白色固体として得た (1.7 g, 21%)。MS (ESI+) より化合物9由来とみられる [ M+H ]+ の分子イオンピーク (m/z = 431.10)が観測された。
化合物9: white solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.32 (s, 1H), 7.62 (s, 1H), 5.13 (d, J = 5.85 Hz, 1H), 5.12 (d, J = 5.67 Hz, 1H), 4.51 (dd, J = 7.93 Hz, J = 7.37 Hz, 1H), 4.19 (d, J = 6.42 Hz, 1H), 4.14 (d, J = 6.23 Hz, 1H,), 4.06 (dd, J = 6.99 Hz, J = 6.61 Hz, 1H), 3.60 (s,3H), 2.96-2.86 (m, 4H), 1.42 (s, 9H).
【0114】
化合物9-THPの合成
【0115】
【0116】
200-mL ナス型フラスコに化合物7-THP(1.0 g, 3.8 mmol, 1.0 eq.)、化合物 8 (1.0 g, 3.8 mmol, 1.0 eq.)、クロロホルム(50 mL)、トリエチルアミン (0.67 mL, 19 mmol, 1.0 eq.)、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (0.72 g, 19 mmol, 1.0 eq.) を加え、室温で24 時間攪拌を行った。TLC (メタノール) より原料の消失を確認したため、攪拌を終了した。反応溶液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。水 (50 mL × 3) で洗浄することによって、化合物9-THPを黄色オイルとして得た (40 mg, 22%)。
化合物9-THP: yellow oil; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.32 (s, 1H), 7.62 (s, 1H), 6.10 (d, J = 16 Hz, 1H), 5.73(m, 1H), 5.34 (d, J = 16 Hz, 1H), 5.16 (m, 1H), 4.19 (d, J = 6.42 Hz, 1H), 4.16 (m, 1H), 4.05 (m, 1H), 3.60 (s,3H), 2.80 (m, 4H), 2.25 (m, 4H), 1.53 (m, 2H), 1.42 (s, 9H).
IR (KBr): 1656 cm-1 (-CONH).
【0117】
化合物10の合成
【0118】
【0119】
200 mLナス型フラスコに化合物9(0.40 g, 0.93 mmol.)、およびギ酸(5 ml) を入れ、室温で1 日間攪拌を行った。トルエン (10 mL ×2) で共沸させることによって黄色個体を得た。得られた黄色個体にs-ブタノール (40 mL)、およびトルエン(10 mL) を加え、5 時間加熱還流を行った。反応溶液を減圧濃縮することによって茶色固体を得た。得られた茶色固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで、化合物10を茶色固体として得た(0.18 g, 66%)。MS (ESI+) より化合物10由来とみられる [ M+H ]+ の分子イオンピーク(m/z = 299.10)が観測された。
化合物10 (Major): white solid; 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.22 (s, 1H), 7.52 (s, 1H), 4.93 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.73 (d, J= 15.6 Hz, 1H), 3.95 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.14 (1H), 2.93 (dd, J = 15.2 Hz, J = 5.8 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 15.7 Hz, J = 6.61 Hz, 1H), 13C NMR 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 172.2, 134.9, 55.1, 37.5, 24.0
化合物10 (Minor): white solid; 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.32 (s, 1H), 7.53 (s, 1H), 5.35 (d, J = 6.1 Hz, 1H), 4.57 (d, J= 14.3 Hz, 1H), 4.37 (d, J = 14.9 Hz, 1H), 3.10 (1H), 2.83 (dd, J = 15.2 Hz, J = 5.7 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 15.7 Hz, J = 6.61 Hz, 1H), 13C NMR 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 171.5, 134.9, 48.6, 42.0, 23.5
IR (KBr): 1656 cm-1 (-CONH).
【0120】
化合物10の合成
【0121】
【0122】
200 mLナス型フラスコに化合物9-THP(0.40 g, 0.78 mmol.)、およびギ酸(5 ml) を入れ、室温で1 日間攪拌を行った。トルエン (10 mL ×2) で共沸させることによって黄色固体を得た。得られた黄色固体にs-ブタノール (40 mL)、およびトルエン(10 mL) を加え、5 時間加熱還流を行った。反応溶液を減圧濃縮することによって茶色固体を得た。得られた茶色固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで、化合物10を茶色固体として得た(0.15 g, 66%)。
化合物10: brown solid; 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.22 (s, 1H), 7.52 (s, 1H), 4.93 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.73 (d, J= 15.6 Hz, 1H), 3.95 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.14 (1H), 2.93 (dd, J = 15.2 Hz, J = 5.8 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 15.7 Hz, J = 6.61 Hz, 1H)
【0123】
化合物12の合成
【0124】
【0125】
減圧下、加熱乾燥した 100-mL 二口フラスコに水素化リチウムアルミニウム (0.10 g, 2.7 mmol, 10 eq)、および化合物10(0.14 g, 0.27mmol, 1 eq)を入れて窒素置換し、脱水テトラヒドロフラン (15 mL) を加え、24 時間加熱還流を行った。TLC (メタノール) より原料の消失を確認したため氷浴中で飽和硫酸ナトリウム水溶液 (15 mL) を加えて反応を停止した。不溶物をセライトろ過により取り除き、セライトをエタノールで洗浄した。ろ液を減圧濃縮することで黄色固体を得た。得られた黄色固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで化合物12を茶色固体として得た(70 mg, 55%)。
化合物12: brown solid; 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 11.8 (s, 2H), 7.41 (s, 2H), 4.59 (d, J = 14 Hz, 2H), 4.18 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 4.00 (d, J = 14 Hz, 2H), 3.37 (m, 4H), 3.00 (m, 4H), 13C NMR (600 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 134.0, 130.3, 121.7, 62.3, 57.3, 38.3, 24.6
【0126】
化合物11の合成
【0127】
【0128】
200-mL ナス型フラスコに化合物10(0.20 g, 0.67 mmol, 1.0 eq.)、およびアセトニトリル (100 mL) を入れ、塩氷浴中でヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム水溶液 (0.92 g, 1.7 mmol, 2.5 eq.) を加え、室温で3 時間攪拌を行った。TLC (メタノール) よりこれ以上反応が進行しないと判断したため攪拌を終了した。生じた白色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液に 5% 炭酸水素ナトリウム水溶液 (60 mL) を加えた。生じた黄色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液を、ジエチルエーテル (60 mL × 3) で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することによって黄色固体を得た (0.10 g, crude y. 51%)。得られた黄色固体をクロロホルム(10 mL × 5) で洗浄することによって化合物11を得た(64 mg, 31%)。
化合物11: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 8.48 (s, 2H), 8.09 (s, 2H), 7.43 (s, 2H), 13C NMR (400 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 166.8, 161.7, 156.1, 137.1, 135.3, 134.0, 130.0
【0129】
化合物13の合成
【0130】
【0131】
200-mL ナス型フラスコに化合物12(0.20 g, 0.37 mmol, 1.0 eq.)、およびアセトニトリル (57 mL) を入れ、塩氷浴中でヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム水溶液 (0.51 g, 0.94 mmol, 2.5 eq.) を加え、室温で3 時間攪拌を行った。TLC (メタノール) よりこれ以上反応が進行しないと判断したため攪拌を終了した。生じた白色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液に 5% 炭酸水素ナトリウム水溶液 (60 mL) を加えた。生じた黄色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液を減圧濃縮し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をメタノールで洗浄し、生じた白色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液を減圧濃縮することによって黄色固体を得た(0.5 g)。得られた黄色固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液を減圧濃縮することで黄色固体を得た。得られた黄色固体をクロロホルム(10 mL × 5) で洗浄することによって化合物13を得た(70 mg, 73%)。
化合物13: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 8.52 (s, 2H), 8.47 (s, 2H), 7.93 (s, 2H), 7.38(s, 2H), 7.36 (d, J = 6.0 Hz, 2H).
【0132】
化合物10-THPの合成
【0133】
【0134】
100-mL ナス型フラスコに化合物10(60 mg, 0.20 mmol, 1.0 eq.)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン (40 mL)、およびp-トルエンスルホン酸 (32 mg, 0.17 mmol, 1.0 eq.) を加え、130℃ overnightで攪拌を行った。TLC (メタノール) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。反応溶液に水 (50 mL) を加え、酢酸エチル(100 mL × 3) で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。得られた黄色オイルをアルミナカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン-n-ヘキサン 1 : 1 (v/v))で精製することによって化合物10-THP-anti, 10-THP-synを黄色オイルとして得た(0.30 g)。
化合物10-THP-anti : yellow oil; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 6.55 (s, 2H), 5.91 (d, J = 16 Hz, 2H), 5.32 (d, J = 16 Hz, 2H), 3.80 (m, 2H), 3.61 (dd, J = 9.4 Hz, J = 6.7 Hz, 2H), 3.54 (m, 2H), 3.43 (m,2H), 3.33 (m, 4H), 2.07 (m, 8H), 1.59 (m, 4H).
化合物10-THP-syn :yellow oil; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 6.41 (s, 2H), 3.80 (m, 6H), 3.75 (m, 4H), 3.54 (m, 2H), 3.43 (m,4H), 2.07 (m, 8H), 1.95 (m, 4H).
【0135】
化合物11-THPの合成
【0136】
【0137】
200-mL ナスフラスコに化合物10-THP(0.20 g, 0.43 mmol, 1.0 eq.)、および2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン (0.98 g, 4.3 mmol, 10 eq.) をジクロロメタン(50 mL) に溶解させ、室温で24 時間攪拌を行った。TLC (ジクロロメタン) よりこれ以上反応が進行しないと判断したため、攪拌を終了した。得られた反応溶液を減圧濃縮することによって、黄色固体を得た。得られた黄色固体をアルミナカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン) で精製することによって化合物11-THPを黄色オイルとして得た(10 mg, 5.0%)。
化合物11-THP: yellow oil; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) : δ(ppm) 7.59 (s, 2H), 5.30 (s, 2H), 4.17-4.14 (m, 4H), 4.10 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.90-3.75 (m, 2H), 3.55-3.38 (m, 2H),1.90-1.78 (m, 8H), 1.77-1.65 (m, 4H)
【0138】
化合物11-THPの合成
【0139】
【0140】
100-mL ナス型フラスコに化合物11 (66 mg, 0.23 mmol, 1.0 eq.)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン (40 mL)、およびp-トルエンスルホン酸 (32 mg, 0.23 mmol, 1.0 eq.) を加え、130℃overnightで攪拌を行った。TLC (ジクロロメタン-n-ヘキサン 1 : 1 (v/v)) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。反応溶液に水 (50 mL) を加え、酢酸エチル(100 mL × 3) で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮することによって橙色オイルを得た。得られた橙色オイルをアルミナカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン-n-ヘキサン 1 : 1 (v/v))で精製することによって、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン (Rf = 0.72)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、化合物11-THP(Rf = 0.44) を含む混合物と考えられる黄色オイルを得た(60 mg, crude y. 56%)。
化合物11-THP: yellow oil; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) : δ(ppm) 6.62 (s, 2H), 6.54 (s, 2H), 6.43 (s, 2H), 4.39 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.87-3.76 (m, 2H), 3.39-3.31 (m, 2H), 2.22-2.16 (m, 8H), 2.14-2.06 (m, 4H)
【0141】
化合物11の合成
【0142】
【0143】
50 mLナス型フラスコに化合物11-THP(26 mg, 0.056 mmol.)、ジクロロメタン (2 mL)、およびトリフルオロ酢酸(1 ml) を入れ、室温で1 日間攪拌を行った。TLC (ジクロロメタン-n-ヘキサン 1 : 1 (v/v)) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。得られた反応溶液を減圧濃縮することによって黒色固体を得た。得られた黒色固体をジクロロメタンで洗浄することによって、薄黄色固体を得た(40 mg)。MS (ESI+) より化合物11由来とみられる [ M+H ]+ の分子イオンピーク(m/z = 291.18)が観測された。
化合物11: yellow oil; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) : δ(ppm) 8.22 (s, 2H), 7.48 (s, 2H), 5.76 (s, 2H)
【0144】
【0145】
100 mL ナス型フラスコに 化合物 L-トリプトファン(2.0 g, 9.8 mmol)、水 (4.6 mL)、濃硫酸 (0.3 mL)、およびホルムアルデヒド(1.5 mL) を加え65℃で5 時間加熱還流を行った。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。反応溶液にアンモニア水溶液を加えてpH 7 に調整し、沈殿物を吸引ろ過によって回収することによって化合物14を黄色固体として得た(1.8 g, 83%)。
化合物14: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 7.49 (m, 2H), 7.16 (m, 2H), 7.06 (m, 1H), 4.43 (d, J = 15 Hz, J = 5.30 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 15 Hz, J = 5.3 Hz, 1H), 3.16 (dd, J= 11 Hz, J = 4.9 Hz, 1H), 2.95 (dd, J = 11 Hz, J = 5.9 Hz,1H).
【0146】
【0147】
100 mL ナス型フラスコに化合物14(1.8 g, 30 mmol)、メタノール (25 mL)、および塩化チオニル (1.0 mL) を加え 60℃ で 24 時間加熱還流を行った。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため、この溶液に1 M 炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、不溶物を吸引ろ過により取り除いた。得られたろ液を酢酸エチル (100 mL × 3) で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮することで化合物15を黄色固体として得た(1.1 g, 55%)。
化合物15: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 7.44 (m, 2H), 7.02 (m, 2H),4.13 (d, J = 17 Hz, 1H), 3.92 (d, J= 17 Hz, 1H), 3.76 (dd, J = 4.53 Hz, J = 3.78 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 2.93 (dd, J = 11.0 Hz, J = 3.78 Hz, 1H), 2.85 (dd, J= 8.69 Hz, J = 6.23 Hz,1H).
【0148】
【0149】
100-mL ナス型フラスコに化合物15(1.1 g, 4.9 mmol, 1.0 eq.)、化合物4(1.3 g, 4.9 mmol, 1.0 eq.)、クロロホルム(65 mL)、トリエチルアミン (0.67 mL, 4.9 mmol, 1.0 eq.)、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (0.94 g, 4.9 mmol, 1.0 eq.) を加え、室温で24 時間攪拌を行った。TLC (酢酸エチル) よりこれ以上反応が進行しないと判断したため、攪拌を終了した。反応溶液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。得られた黄色オイルに水 (50 mL) を加え、酢酸エチル (50 mL × 3) で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。得られた黄色オイルを 水 (50 mL × 3) で洗浄することによって、化合物16を黄色固体として得た (1.7 g, 43%)。
化合物16: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 7.21 (m, 7H), 3.97 (m, 6H), 3.68 (s, 3H), 2.96 (m, 4H), 2.76 (m, 4H),1.39 (s, 9H).
【0150】
【0151】
200 mLナス型フラスコに化合物16(0.50 g, 0.93 mmol.)、およびギ酸(5 ml) を入れ、室温で1 日間攪拌を行った。トルエン (10 mL ×2) で共沸させることによって黄色個体を得た。得られた黄色個体にs-ブタノール (6 mL)、トルエン(2 mL) を加え、5 時間加熱還流を行った。反応溶液を減圧濃縮することによって茶色固体を得た。得られた茶色固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで、化合物 17を茶色固体として得た(0.22 g, 61%)。
化合物17: brown solid; 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.20 (s, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.21 (m, J = 4.4 Hz, 5H), 4.65 (d, J = 15 Hz, 1H), 4.38 (dd, J = 5.6 Hz, J = 5,3 Hz, 1H), 4.14 (d, J = 15 Hz, 1H), 3.47 (m, 3H), 3.01 (m, 4H), 2.72 (m, 4H)
【0152】
【0153】
100 mL ナス型フラスコに L-フェニルアラニン(2.0 g, 12 mmol)、水 (6.0 mL)、濃硫酸 (0.40 mL)、およびホルムアルデヒド(2.0 mL) を加え65℃で5 時間加熱還流を行った。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため攪拌を終了した。反応溶液にアンモニア水溶液を加えてpH 7 に調整し、沈殿物を吸引ろ過によって回収することによって化合物18を黄色固体として得た(1.6 g, 75%)。
化合物18: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 7.45 (m, 5H), 5.08 (dd, J = 6.11 Hz, J = 5.01 Hz, 1H), 4.43 (d, J= 4.9 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 3.31 (dd, J = 12 Hz, J= 5.0 Hz, 1H), 3.12 (dd, J = 12 Hz, J = 5.6 Hz,1H).
【0154】
【0155】
100 mL ナス型フラスコに化合物18(1.2 g, 6.8 mmol)、メタノール (41 mL)、および塩化チオニル (2.5 mL) を加え 60℃ で 6 時間加熱還流を行った。TLC (酢酸エチル) より原料の消失を確認したため、この溶液に1 M 炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、不溶物を吸引ろ過により取り除いた。得られたろ液を酢酸エチル (100 mL × 3) で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮することで化合物19を黄色固体として得た(1.0 g, 77%)。
化合物19: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ(ppm) 7.54 (m, 5H), 4.28 (d, J = 17 Hz, 1H), 4.13 (d, J = 17 Hz, 1H), 4.04 (dd, J = 7.21 Hz, J = 7.09 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 3.25 (dd, J = 11 Hz, J = 3.06 Hz, 1H), 2.78 (dd, J = 7.09 Hz, J= 6.11 Hz,1H).
【0156】
【0157】
100-mL ナス型フラスコに化合物19(0.85 g, 4.5 mmol, 1.0 eq.)、化合物4(1.2 g, 4.5 mmol, 1.0 eq.)、クロロホルム(43 mL)、トリエチルアミン (0.62 mL, 4.5 mmol, 1.0 eq.)、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 (0.86 g, 4.5 mmol, 1.0 eq.) を加え、室温で24 時間攪拌を行った。TLC (酢酸エチル) よりこれ以上反応が進行しないと判断したため、攪拌を終了した。反応溶液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。得られた黄色オイルに水 (50 mL) を加え、酢酸エチル (50 mL × 3) で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することによって黄色オイルを得た。得られた黄色オイルを 水 (50 mL × 3) で洗浄することによって、化合物20を黄色固体として得た (1.3 g, 66%)。
化合物20: yellow solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 7.44 (m, 7H), 5.07 (dd, J = 5.99 Hz, J = 5.01 Hz, 1H), 4.51 (m, 3H), 4.28 (d, J = 17 Hz, 1H), 4.12 (d, J = 17 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 3.19 (m, 4H), 2.89 (m, 4H),1.43 (s, 9H).
【0158】
【0159】
200 mLナス型フラスコに化合物20(0.64 g, 1.45 mmol.)、およびギ酸(5 ml) を入れ、室温で1 日間攪拌を行った。トルエン (10 mL ×2) で共沸させることによって黄色個体を得た。得られた黄色個体にs-ブタノール (6 mL)、トルエン(2 mL) を加え、5 時間加熱還流を行った。反応溶液を減圧濃縮することによって茶色固体を得た。得られた茶色固体を少量のメタノールに溶解させ、ジエチルエーテルを加えて生じた固体をろ取することで、化合物21を茶色固体として得た(0.40 g, 90%)。
化合物21: brown solid; 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 8.25 (s, 1H), 7.55 (m, J = 4.4 Hz, 4H), 7.28 (s, 1H), 5.08 (dd, J = 5.99 Hz, J = 5,01 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 17 Hz, 1H), 4.39(m, 1H), 4.28 (d, J = 17 Hz, 1H), 4.12 (d, J = 17 Hz, 1H), 4.00(d, J = 17 Hz, 1H), 3.10 (m, 4H).
【0160】
【0161】
200-mL ナス型フラスコに化合物17(0.20 g, 0.58 mmol, 1.0 eq.)、およびアセトニトリル(87 mL)を入れ、塩氷浴中でヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム水溶液(0.79 g, 1.4 mmol, 2.5 eq.)を加え、室温で3時間攪拌を行った。TLC(メタノール)よりこれ以上反応が進行しないと判断したため攪拌を終了した。生じた白色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液に5% 炭酸水素ナトリウム水溶液(60 mL)を加えた。生じた黄色沈殿を桐山ろ過によって取り除き、得られたろ液を、ジエチルエーテル(60 mL × 3)で抽出し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することによって茶色固体を得た。得られた茶色固体をクロロホルム(10 mL × 5)で洗浄することによって化合物22を得た(60 mg, 29%)。
化合物22: brown solid; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) : δ(ppm) 8.98 (s, 1H), 8.31 (s, 1H), 8.22 (s, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.50 (m, 4H), 4.65 (d, J= 15 Hz, 1H), 4.39 (dd, J = 5.6, 1H), 4,14 (d, J = 15 Hz, 1H), 3.01 (dd, J = 8.7 Hz, 5.6 Hz, 1H), 2.72 (m, 1H).
【0162】
上記により得られた化合物4、5、9、10、11、12、13、16、17、20、21、22について、下記の方法に従って、目視により、発光することを確認した。
405nmのレーザーを化合物4、5、9、10、11、12、13、16、17、20、21、22のDMSO-d6溶液または、水:メタノール-1:1混合溶媒に照射して発光を確認した。
【0163】
亜鉛二価錯体(Zn(CH
3
COO)
2
)9の合成
【化44】
【0164】
サンプル管 (No 2) に化合物9 (10 mg, 0.023 mmol, 1eq)、および水 (2 ml) を入れて攪拌を行った。この水溶液にメタノールに溶解させた酢酸亜鉛 (4 mg, 0.023 mmol, 1eq) をゆっくり滴下し、室温で 24時間攪拌を行った。反応溶液を濃縮することによって白色固体を得た。得られた白色固体をメタノールで洗浄することによって、亜鉛二価錯体(ZnCl2)9(10 mg) を白色結晶固体として得た。
【0165】
亜鉛二価錯体(Zn(CH
3
COO)
2
)10の合成
【化45】
【0166】
サンプル管 (No 2) に化合物9(10 mg, 0.034 mmol, 1eq)、および水 (2 ml) を入れて攪拌を行った。この水溶液にメタノールに溶解させた酢酸亜鉛 (4 mg, 0.034 mmol, 1eq) をゆっくり滴下し、室温で 24時間攪拌を行った。反応溶液を濃縮することによって白色固体を得た。得られた白色固体をメタノールで洗浄することによって、亜鉛二価錯体(ZnCl2)10(2 mg) をクリーム色固体として得た。
【0167】
亜鉛二価錯体(ZnCl
2
)9の合成
【化46】
【0168】
サンプル管 (No 2) に化合物9(10 mg, 0.023 mmol, 1eq)、および水 (2 ml) を入れて攪拌を行った。この水溶液にメタノールに溶解させた塩化亜鉛 (3 mg, 0.023 mmol, 1eq) をゆっくり滴下し、室温で 24時間攪拌を行った。反応溶液を濃縮することによって白色固体を得た。得られた白色固体をメタノールで洗浄することによって、亜鉛二価錯体(Zn(CH3COO)2)9(1 mg) を白色固体として得た。
【0169】
亜鉛二価錯体(ZnCl
2
)10の合成
【化47】
【0170】
サンプル管 (No 2) に化合物10(10 mg, 0.034 mmol, 1eq)、および水 (2 ml) を入れて攪拌を行った。この水溶液にメタノールに溶解させた塩化亜鉛 (5 mg, 0.034 mmol, 1eq) をゆっくり滴下し、室温で 24時間攪拌を行った。反応溶液を濃縮することによって白色固体を得た。得られた白色固体をメタノールで洗浄することによって、亜鉛二価錯体(Zn(CH3COO)2)10(2 mg) をクリーム色固体として得た。
【0171】
[吸収スペクトル測定]
紫外可視吸収スペクトル(Hitachi UH4150)を用い、化合物および金属錯体の発光波長(吸収スペクトル)を測定した。
【0172】
[蛍光スペクトル測定]
蛍光・燐光分光光度計(Hitachi社製 型式:F7000)、励起光源として波長270nmのLED光源を用い、化合物および金属錯体の発光波長(蛍光スペクトル)を測定した。なお蛍光量子収率の測定においては、蛍光量子収率測定装置(Photal Otsuka Electronics QE-2000)、励起光源として波長300nmのLED光源を用いて測定した。
【0173】
[発光量子収率]
サンプルステージに厚さ2mmに化合物および金属錯体の固体粉末を敷き詰め、積分球を被せてスペクトルを測定した。得られた発光波長の測定結果に基づいて、サリチル酸ナトリウムを基準物質として発光領域の面積比より量子収率を求めた。
【0174】
含窒素化合物および含窒素化合物を含む錯体の蛍光スペクトルを上記の手順に従って測定した。
【0175】
化合物9、10、11、17、21の吸収スペクトルを
図1に、化合物9、10、17、21の蛍光スペクトルを
図2に示す。なお、メタノールおよび水が1:1(v/v)の水溶液を溶媒として、化合物の濃度が0.8×10
-4mol/Lとなるように試料を調製した。
【0176】
化合物4の吸収スペクトル測定および蛍光スペクトル測定の結果を
図3および4に示す。なお、メタノールおよび水が1:1(v/v)の水溶液を溶媒として、化合物の濃度が1.0×10
-3mol/Lとなるように試料を調製した。
【0177】
化合物11の蛍光スペクトル測定の結果を
図5に示す。なお、メタノールおよび水が1:1(v/v)の水溶液を溶媒として、化合物の濃度が0.8×10
-4mol/Lとなるように試料を調製した。また、励起光源を波長345nmとして同様に測定した結果を
図5にあわせて示す。
【0178】
表2に記載の化合物について、発光量子収率を算出した。結果を表2に示す。
【0179】
【0180】
亜鉛二価錯体9、10の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトル測定の結果を
図6~9に示す。また、算出した発光量子収率を表3に示す。なお、メタノールおよび水が1:1(v/v)の水溶液を溶媒として、当該溶媒に溶ける量(飽和)なるように試料を調製した。
【0181】