(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】鎮圧装置
(51)【国際特許分類】
A01C 5/06 20060101AFI20240422BHJP
A01C 7/12 20060101ALI20240422BHJP
A01C 13/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A01C5/06 L
A01C7/12 Z
A01C13/00
(21)【出願番号】P 2020086960
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】森 伸介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁康
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-125009(JP,U)
【文献】特開平09-215409(JP,A)
【文献】特開昭53-038506(JP,A)
【文献】実公昭45-007049(JP,Y1)
【文献】実公昭38-018927(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3149373(JP,U)
【文献】実開平05-076208(JP,U)
【文献】米国特許第04552079(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 5/06
A01C 7/12
A01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湛水土壌の上を移動しながら播種を行う湛水直播装置の後部に取り付けられて、前記湛水直播装置に追従して湛水土壌の上を移動することにより播種後の種子を埋没させる鎮圧装置であって、
前記湛水直播装置の移動方向に回転自在に支持されて前記湛水直播装置の移動によって前記湛水土壌の上を転がって移動可能な円筒体を有し、
該円筒体は、
前記湛水土壌の前記種子が播種された部分の上を転がる位置に配置され播種後の種子を埋没させる埋没領域部と、
該埋没領域部の軸方向に隣接して配置され複数の第1貫通孔が設けられた排水領域部と、
を有し、
前記円筒体は、
前記湛水直播装置の左右方向に一定径で延在する長軸円筒状の本体と、
該本体の外周面もしくは内周面の少なくとも一方に取り付けられる短軸円環状の輪体と、を有し、
前記本体には前記複数の第1貫通孔が設けられており、
前記本体と前記輪体とが径方向に重なる部分に前記埋没領域部が形成され、
軸方向に前記本体のみとなる部分に前記排水領域部が形成されることを特徴
とする鎮圧装置。
【請求項2】
前記第1貫通孔は、前記種子よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の鎮圧装置。
【請求項3】
前記埋没領域部には、前記種子よりも大きさが小さい第2貫通孔が複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鎮圧装置。
【請求項4】
前記輪体は、前記本体に対して前記本体の軸方向に所定間隔を開けて複数配置されていることを特徴とする
請求項1に記載の鎮圧装置。
【請求項5】
前記本体が第1網体によって形成されていることを特徴とする
請求項1または請求項4に記載の鎮圧装置。
【請求項6】
前記輪体が前記種子よりも大きさが小さい網目を有する第2網体によって形成されていることを特徴とする
請求項1または請求項4に記載の鎮圧装置。
【請求項7】
前記本体が前記第1貫通孔を有する第1パンチングメタルによって形成されていることを特徴とする
請求項1または請求項4に記載の鎮圧装置。
【請求項8】
前記輪体が前記第2貫通孔を有する第2パンチングメタルによって形成されていることを特徴とする
請求項3に記載の鎮圧装置。
【請求項9】
前記本体が支持部材を介して合成樹脂管に支持されていることを特徴とする
請求項1、4、5、6のいずれか一項に記載の鎮圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湛水土壌を鎮圧・均平化するとともに、播種された種子を埋没させる鎮圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の鎮圧装置として、フレームに回動自在に支持された鎮圧ローラと、表面が平滑で播種跡に対して所定深さに押圧していくリングであって鎮圧ローラの表面に突出して着脱可能に設けられたリングとを備えたものが開示されている。また、フレームに回動自在に支持され鎮圧ローラの表面の全体に網体が設けられたものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鎮圧ローラは、複数の鎮圧ローラが軸方向に所定間隔をおいて分割して配置された構成を有している。この構成の場合、鎮圧ローラが走行する際に、鎮圧ローラの前方では、鎮圧ローラの正面から両側に分かれるように湛水土壌の表面水の流れが発生するが、鎮圧ローラの軸方向の長さが短いので、水の流れの勢いは小さく、湛水土壌に播種された種子が水流によって押し流されてしまうことは比較的に少ないと考えられる。
【0005】
しかしながら、複数の鎮圧ローラによって湛水土壌の表面に筋状の畝が形成されてしまい、湛水土壌の均平性が悪化することが予想される。湛水土壌の均平性が悪化すると、排水不良による苗立ちの低下や、除草剤の効果が低減されるという問題がある。
【0006】
一方、網体を用いて長軸状の鎮圧ローラを形成した場合、網体の網目が大き過ぎると、種子が網目を通過してしまい、埋没させることができないおそれがある。また、網体の網目が細か過ぎると、湛水土壌の表面水が鎮圧ローラによって押されて、鎮圧ローラの前方に鎮圧ローラの軸方向中央から両端側に向かって流れる長く大きな水の流れが発生し、直前に播種された種子がその水流によって押し流されてしまうおそれがある。したがって、湛水土壌に播種された種子を埋没させることが困難となり、種子の発芽や苗立ちが悪化し、生育が良好に行われないということが懸念される。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、湛水土壌に播種された種子を埋没させる際に、湛水土壌の表面に水流が発生するのを抑制し、かつ、湛水土壌の表面の高い均平性を得ることができる鎮圧装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る鎮圧装置は、湛水土壌の上を移動しながら播種を行う湛水直播装置の後部に取り付けられて、前記湛水直播装置に追従して湛水土壌の上を移動することにより播種後の種子を埋没させる鎮圧装置であって、前記湛水直播装置の移動方向に回転自在に支持されて前記湛水直播装置の移動によって前記湛水土壌の上を転がって移動可能な円筒体を有し、該円筒体は、前記湛水土壌の前記種子が播種された部分の上を転がる位置に配置され播種後の種子を埋没させる埋没領域部と、該埋没領域部の軸方向に隣接して配置され複数の第1貫通孔が設けられた排水領域部と、を有することを特徴とする。
【0009】
(2)前記第1貫通孔は、前記種子よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
(3)前記埋没領域部には、前記種子よりも大きさが小さい第2貫通孔が複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
(4)前記円筒体は、前記湛水直播装置の左右方向に一定径で延在する長軸円筒状の本体と、該本体の外周面もしくは内周面の少なくとも一方に取り付けられる短軸円環状の輪体と、を有し、前記本体には前記複数の第1貫通孔が設けられており、前記本体と前記輪体とが径方向に重なる部分に前記埋没領域部が形成され、径方向に前記本体のみとなる部分に前記排水領域部が形成されることを特徴とする。
【0012】
(5)前記輪体は、前記本体に対して前記本体の軸方向に所定間隔を開けて複数配置されていることを特徴とする。
【0013】
(6)前記本体が第1網体によって形成されていることを特徴とする。
【0014】
(7)前記輪体が前記種子よりも大きさが小さい網目を有する第2網体によって形成されていることを特徴とする。
【0015】
(8)前記本体が前記第1貫通孔を有する第1パンチングメタルによって形成されていることを特徴とする。
【0016】
(9)前記輪体が前記第2貫通孔を有する第2パンチングメタルによって形成されていることを特徴とする。
【0017】
(10)前記本体が支持部材を介して合成樹脂管に支持されていることを特徴とする。
【0018】
(1)本発明に係る鎮圧装置は、湛水直播装置の後部に取り付けられて、湛水直播装置に追従して湛水土壌の上を移動することにより播種後の種子を埋没させる鎮圧装置であって、湛水直播装置の移動方向に回転自在に支持されて湛水直播装置の移動によって湛水土壌の上を転がって移動可能な円筒体を有し、円筒体は、湛水土壌の種子が播種された部分の上を転がる位置に配置され播種後の種子を埋没させる埋没領域部と、埋没領域部の軸方向に隣接して配置され複数の第1貫通孔が設けられた排水領域部とを有する。
【0019】
この構成により、円筒体が湛水土壌の上を転がる際に、湛水土壌の表面の水を排水領域部の複数の第1貫通孔に通過させることができる。したがって、円筒体の移動方向前方において円筒体によって湛水土壌の表面の水が押されて水流が発生するのを抑制でき、播種後でかつ埋没前の種子が水流によって押し流されてしまうのを防止できる。したがって、湛水土壌に播種された種子の上に埋没領域部を転がして通過させることができ、埋没領域部によって種子を湛水土壌に確実に埋没させることができる。また、互いに軸方向に隣接する埋没領域部と排水領域部の両方で湛水土壌の上を転がって移動するので、湛水土壌を鎮圧する際に、湛水土壌の表面に凹凸が形成されるのを防ぎ、高い均平性を得ることができる。
【0020】
(2)本発明に係る鎮圧装置においては、第1貫通孔が、種子よりも大きく形成されているので、湛水土壌の表面の水を容易に通過させることができる。したがって、円筒体の移動方向前方において湛水土壌の表面の水が押されて水流が発生するのを確実に抑制することができる。
【0021】
(3)本発明に係る鎮圧装置においては、埋没領域部には、種子よりも大きさが小さい第2貫通孔が複数設けられているので、種子を湛水土壌に埋没させると共に、湛水土壌の表面の水を第2貫通孔に通過させて排水することができる。したがって、円筒体の移動に起因した水流の発生がさらに抑制される。
【0022】
(4)本発明に係る鎮圧装置においては、円筒体が、長軸円筒状の本体と、本体の外周面もしくは内周面の少なくとも一方に取り付けられる短軸円環状の輪体とを有し、本体には複数の第1貫通孔が設けられ、本体と輪体とが径方向に重なる部分に埋没領域部が形成され、径方向に本体のみとなる部分に排水領域部が形成されている。この構成により、本体と輪体とが径方向に重なる部分で種子の埋没が行われ、本体のみとなる部分で湛水土壌の表面の水が複数の第1貫通孔に通過されて水流の発生が抑制される。そして、長軸円筒状の本体を湛水土壌の上に転がして移動させるので、湛水土壌の表面に凹凸が形成されるのを防ぎ、高い均平性を得ることができる。
【0023】
(5)本発明に係る鎮圧装置においては、輪体が、本体に対して本体の軸方向に所定間隔を開けて複数配置されているので、例えば圃場において移動方向に対して左右方向に所定間隔をおいて複数の条をなすように播種を行う場合に、種子が播種された部分の上を転がる位置に各輪体を配置することにより、湛水土壌に播種された種子を確実に埋没させることができる。そして、複数の輪体の間に配置されている本体のみとなる部分、つまり、排水領域部において湛水土壌の表面の水が複数の第1貫通孔に通過されて水流の発生が抑制される。
【0024】
(6)本発明に係る鎮圧装置においては、本体が第1網体によって形成されているので、湛水土壌の表面の水を第1網体の網目に通過させることができる。したがって、円筒体の移動方向前方において円筒体によって湛水土壌の表面の水が押されて水流が発生するのを抑制でき、播種後でかつ埋没前の種子が水流によって押し流されてしまうのを防止できる。したがって、湛水土壌の上に播種された種子の上に埋没領域部を転がして通過させることができ、埋没領域部によって種子を湛水土壌に確実に埋没させることができる。
【0025】
(7)本発明に係る鎮圧装置においては、輪体が種子よりも大きさが小さい網目を有する第2網体によって形成されているので、第2網体によって種子を湛水土壌に埋没させるとともに、第2網体の網目に湛水土壌の表面の水を通過させて排水することもできる。したがって、水流の発生がさらに抑制される。
【0026】
(8)本発明に係る鎮圧装置においては、本体が第1貫通孔を有する第1パンチングメタルで形成されているので、第1貫通孔の孔径や開口率を適宜選択することができる。第1パンチングメタルは、平坦な表面を有しているので湛水土壌の表面の高い均平性を得ることができる。また、第1パンチングメタルは、網体と比較して剛性が高いので、耐摩耗等の耐久性が高く、目崩れも発生し難い。
【0027】
(9)本発明に係る鎮圧装置においては、輪体が第2貫通孔を有する第2パンチングメタルで形成されているので、第2パンチングメタルによって種子を湛水土壌に埋没させるとともに、第2パンチングメタルの第2貫通孔に湛水土壌の表面の水を通過させて排水することができる。したがって、水流の発生がさらに抑制される。また、第2パンチングメタルは、網体と比較して孔径や開口率を適宜選択することができる。そして、平坦な表面を有しているので湛水土壌の表面の高い均平性を得ることができる。また、網体と比較して剛性が高いので、耐摩耗等の耐久性が高く、目崩れも発生し難い。
【0028】
(10)本発明に係る鎮圧装置においては、本体が支持部材を介して合成樹脂管に支持されているので、本体の剛性が高められるとともに、耐久性が高められる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、湛水土壌に播種された種子を埋没させる際に、湛水土壌の表面に水流が発生するのを抑制することができ、かつ、湛水土壌の表面の高い均平性を得ることができる鎮圧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鎮圧装置を備えた湛水直播装置の側面図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る鎮圧装置を備えた湛水直播装置の平面図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図4(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図4(b)は、種子鎮圧装置の正面図を示し、
図4(c)は、
図4(b)に示すA-Aで切断した断面図を示す。
【
図5】
図5(a)は、埋没される種子の側面図および正面図を示し、
図5(b)は、第2パンチングメタルの第2貫通孔の大きさと種子の大きさとの関係を示し、
図5(c)は、第2網体の網目の大きさと種子の大きさとの関係を示す。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図7(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図7(b)は、鎮圧装置の正面図を示し、
図7(c)は、
図7(b)に示すB-Bで切断した断面図を示す。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図9(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図9(b)は、鎮圧装置の正面図を示し、
図9(c)は、
図9(b)に示すC-Cで切断した断面図を示す。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図11(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図11(b)は、鎮圧装置の正面図を示し、
図11(c)は、
図11(b)に示すD-Dで切断した断面図を示す。
【
図12】本発明の第5実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図13】本発明の第5実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図13(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図13(b)は、鎮圧装置の正面図を示し、
図13(c)は、
図13(b)に示すE-Eで切断した断面図を示す。
【
図14】本発明の第6実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図15】本発明の第6実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図15(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図15(b)は、鎮圧装置の正面図を示し、
図15(c)は、
図15(b)に示すF-Fで切断した断面図を示す。
【
図16】本発明の第7実施形態に係る鎮圧装置の分解斜視図。
【
図17】本発明の第7実施形態に係る鎮圧装置の図であり、
図17(a)は、鎮圧装置の側面図を示し、
図17(b)は、鎮圧装置の正面図を示し、
図17(c)は、
図17(b)に示すG-Gで切断した断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る鎮圧装置を湛水直播装置1に適用した第1実施形態~第7実施形態に係る鎮圧装置10について図面を参照して説明する。
【0032】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る鎮圧装置10が装備された湛水直播装置1の構成について説明する。
湛水直播装置1は、湛水土壌の上を移動しながら湛水土壌に種子を播種する装置である。湛水直播装置1は、
図1と
図2に示すように、ロータリ3が装着されたトラクタ2の後部に取り付けられている。ロータリ3は、トラクタ2から伝達される駆動力によって回転駆動される複数の爪を有しており、爪の回転により代かきを行い、湛水土壌を生成することができる。
【0033】
湛水直播装置1は、トラクタ2のロータリ3よりも後方の位置に配置されており、トラクタ2から後方に向かって播種ユニット4と鎮圧装置10が順番に並ぶように取り付けられている。
【0034】
播種ユニット4は、ロータリ3の後方にて、トラクタ2の左右方向に所定間隔をおいて複数並べて配置された複数のホッパ4bを有している。播種ユニット4は、トラクタ2を前進させて湛水土壌の上にユニット駆動輪4aを転がすことにより、各ホッパ4bから一定量の種子を間欠的に落下させる構成を有しており、湛水土壌にトラクタ2の移動方向に所定間隔をおいて播種することができる。播種ユニット4は、これらの複数のホッパ4bによって、圃場において所定の条間を有して複数の列をなすように播種する条播又は点播を行うことができる。
【0035】
なお、第1実施形態に係る播種ユニット4は、図に示すように、トラクタ2の左右方向にホッパ4bが5個並んで配置された構造を有しているが、5個以外の数で配置された構造としてもよい。例えば、ホッパ4bが6個並んで配置された構造としてもよい。各ホッパ4bが並ぶ間隔は、湛水土壌に播種する複数列の列間隔(条間)に応じて設定される。一般的には、100mm~400mm程度であり、本実施形態では、300mmの間隔に設定されている。
【0036】
鎮圧装置10は、支持部材6によって播種ユニット4に連結されている。鎮圧装置10は、湛水直播装置1の進行方向の後部に取り付けられており、ロータリ3によって膨軟とされた湛水土壌の上を、湛水直播装置1に牽引されて追従して移動することにより、湛水土壌を鎮圧・均平化するとともに、播種された種子を埋没させる機能を有する。
【0037】
鎮圧装置10は、円筒体11と、支持部材6に回動可能に連結された一対の連結部材12と、各連結部材12と円筒体11の両端部をそれぞれ連結する一対のリンク機構13とを有している。鎮圧装置10は、支持軸を中心に水平方向に回動可能に支持されるとともに、リンク機構13によって円筒体11が上下動することで、田面に追従するようになっている。
【0038】
鎮圧装置10は、円筒体11の自重を利用して湛水土壌を鎮圧し均平化し、湛水土壌に播種された種子をごく浅く埋没させる。連結部材12は、湛水直播装置1(トラクタ2)の前後方向に軸心が延びるように固定された支持軸によって支持部材6に回動可能に支持されており、円筒体11が湛水土壌の傾きに追従できるようになっている。
【0039】
円筒体11は、湛水直播装置1の移動によって牽引されて湛水土壌の上を転がって移動するように湛水直播装置1の移動方向に回転自在に支持されている。円筒体11は、本実施形態では、回動自在に支持された構成を有しているが、駆動モータによって回転駆動される構成としてもよい。
【0040】
円筒体11は、具体的には、
図3および
図4に示すように、本体21と、複数の輪体22と、管体23と、一対の蓋体24と、複数の環状支持体25と、複数の板状支持体26と、連結体27とを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。
【0041】
本体21は、長軸円筒形状を有しており、その外周面には、複数の第1貫通孔31が開口して設けられている。複数の第1貫通孔31は、本体21の板厚部を貫通して本体21の外周面と内周面との間を連通しており、本体21の全体に亘って広がるように設けられている。第1貫通孔31は、湛水直播装置1の移動によって鎮圧装置10を牽引して、本体21を湛水土壌の上に転がして移動させた際に、湛水土壌の表面水が通過可能な大きさを有している。本体21は、例えば複数の第1貫通孔31が設けられた板状の第1パンチングメタルを一定径D(mm)の筒状に丸めるように変形させることによって形成される。第1貫通孔31の孔径は、後述する第2貫通孔32の孔径よりも大きく、石や泥の通り抜けを抑制しかつ湛水土壌の表面の水が容易に通過可能な大きさに設定されている。第1貫通孔31の孔径は、φ5mm以上φ10mm以下が好ましい。
【0042】
本体21の第1パンチングメタルは、ステンレス鋼板や鉄鋼板などの高い機械的強度を有し、所定の厚みを有する金属板または金属管などの金属材料からなる。第1パンチングメタルは、金属等の板をパンチングプレスの金型で貫通孔を形成した板状体からなるので、孔径を適宜選択することができる。第1パンチングメタルは、剛性が高いので、湛水土壌の上を転がした際に歪むのを防ぐことができ、湛水土壌を鎮圧して平らにならすことができ、湛水土壌の表面の高い均平性を得ることができる。第1パンチングメタルは、平坦な表面を有しているので耐久性が高く、藁や残渣などが絡みにくく、洗浄などのメンテナンスも容易である。
【0043】
なお、本体21は、第1パンチングメタルのような金属材料に限定されるものではなく、合成樹脂や、金属材料と同等の高い機械的強度を有する繊維強化プラスチックにより形成されていてもよい。本体21の直径Dは、種籾鎮圧装置10の構造、形状、大きさ、質量および材質などの設定諸元や、湛水土壌や種子の種類、実験値などのデータに基づいて適宜選択される。
【0044】
輪体22は、短軸円環形状を有しており、その外周面には、複数の第2貫通孔32が開口して設けられている。複数の第2貫通孔32は、輪体22の板厚部を貫通して輪体22の外周面と内周面との間を連通しており、輪体22の全体に亘って広がるように設けられている。輪体22は、例えば複数の第2貫通孔32が設けられた帯状の第2パンチングメタルを筒状に丸めるように変形させることによって形成される。輪体22は、本体21に外嵌された状態で配置固定されている。輪体22は、少なくとも一部の第2貫通孔32が本体21の少なくとも一部の第1貫通孔31と径方向に重なり、連通する位置に配置される。輪体22は、本体21の外周面に軸方向に所定の間隔で複数取り付けられる。
【0045】
第2貫通孔32は、種子よりも孔径が小さく、種子が通過できない大きさ、もしくは通過することが困難な大きさを有している。第2貫通孔32は、例えば
図5(a)および
図5(b)に示すように、直径a(mm)が、湛水土壌に播種される種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されており、播種された種子を通過させない大きさとなっている。第2貫通孔32の孔径は、φ2.0mm以下が好ましい。なお、第2貫通孔32は、必須の構成要素ではなく、輪体22に形成されていなくてもよいが、輪体22に形成されていた方が湛水土壌における水流の発生がさらに抑制されるので好ましい。
【0046】
輪体22の幅(mm)は、湛水直播装置1や播種ユニット4の大きさ、構造などの設定諸元や、実験値などのデータに基づいて適宜選択される。輪体22の幅(mm)は、播種ユニット4の各ホッパ4bから種子を落下させたときの種子の横方向の分散幅に応じて設定される。ホッパ4bの違いや種子を排出して落下させる排出口の高さによって分散幅は異なる。輪体22の幅(mm)は、50mm~200mmの範囲が好ましく、100mm~150mm程度が更に好ましく、本実施形態では、150mmに設定されている。
【0047】
輪体22の厚さ(mm)は、本体21よりも薄く、輪体22と本体21との境界部分に形成される段差は低く抑えられている。したがって、円筒体11を転がして湛水土壌を鎮圧した際に、湛水土壌の表面に段差が形成されないか、または、形成されても僅かな高さの段差とすることができ、湛水土壌の適切な均平性を確保することができる。
【0048】
輪体22の第2パンチングメタルは、第1パンチングメタルと同様、金属材料からなる。輪体22は、合成樹脂や、繊維強化プラスチックにより形成されていてもよい。本体21の外周面に取り付けられる輪体22の所定の間隔は、
図2に示すように、湛水直播装置1の進行方向で、播種ユニット4の各ホッパ4bの後方にそれぞれ位置する間隔となっている。即ち、各ホッパ4bから落下して湛水土壌の上に播種された種子の上を転がって通過する位置に輪体22が配置されている。したがって、ホッパ4bの数が5個の場合は、輪体22は、5個であり、ホッパ4bの数が6個の場合は、輪体22は、6個になる。互いに隣接する輪体22の間隔は、本実施形態では、各ホッパ4bの間隔に合わせて、300mmに設定されている。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は各輪体22によって埋没される。
【0049】
なお、第1実施形態の本体21および輪体22が径方向に重なった部分は、種子を埋没させるので、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応する。そして、第1実施形態の各輪体22の両側に位置して径方向に本体21のみとなる部分(本体21が露出した部分)は、転がって移動する際に湛水土壌の表面の水を通過させるので、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。なお、本体21と輪体22の代わりに、円筒状の第1パンチングメタルと、円環状の第2パンチングメタルとを軸方向に連結して円筒体11を構成してもよい。かかる場合には、第1パンチングメタルの部分が排水領域部に対応し、第2パンチングメタルの部分が埋没領域部に対応する。
【0050】
管体23は、所定の厚み(mm)および直径(mm)を有し、本体21の長さ(mm)とほぼ同じ長さを有する塩化ビニール管等の合成樹脂管を用いている。塩化ビニール管等の合成樹脂管は、金属製のものと比較して耐腐食性に優れており、軽量で搬送容易という効果を有している。管体23は、本体21の内部に挿入されており、軸方向の両端部の内周側には、一対の蓋体24が嵌め込まれている。各蓋体24は、管体23に嵌め込まれて管体23と結合する結合部24aと、リンク機構13に連結される連結部24bとを有している。
【0051】
複数の環状支持体25は、所定の厚み(mm)および直径(mm)を有する金属材料からなり、管体23の外周面に密着して取り付けられている。環状支持体25は、管体23の軸方向の両端部に配置されるとともに、管体23の軸方向に所定間隔をおいて複数配置されている。
【0052】
複数の板状支持体26は、方形の金属材料からなる。板状支持体26は、環状支持体25の外周面に等角度間隔で突出して複数設けられており、一端が環状支持体25に溶接などの接合手段により接合されている。各板状支持体26は、本体21の軸方向に延在する各連結体27により、連結されている。各板状支持体26と連結体27は溶接などの接合手段により接合されおり、複数の環状支持体25は各板状支持体26を介して複数の連結体27により、一体化されている。
【0053】
一体化された各環状支持体25、各板状支持体26および連結体27は、本体21の内部に挿入されて、各板状支持体26の放射方向の外側面が本体21の内周面に接触し、本体21を支持している。一体化された各環状支持体25、各板状支持体26および連結体27と本体21とは、図示しない針金などの固定手段により互いに固定される。この構成により、円筒体11は、各構成要素が一体化された単一構造となる。なお、第1実施形態の一体化された各環状支持体25、各板状支持体26および連結体27は、本発明に係る鎮圧装置の支持部材に対応する。
【0054】
次いで、第1実施形態に係る鎮圧装置10の効果について説明する。
第1実施形態に係る鎮圧装置10は、湛水土壌の上を移動しながら播種を行う湛水直播装置1の後部に取り付けられており、湛水直播装置1に追従して湛水土壌の上を移動する。鎮圧装置10は、湛水直播装置1の移動方向に回転自在に支持されて湛水直播装置1の移動によって湛水土壌の上を転がって移動可能な円筒体11を有している。
【0055】
円筒体11は、本体21と複数の輪体22とを有している。本体21は、長軸円筒形状を有しており、その外周面には、複数の第1貫通孔31が開口している。複数の第1貫通孔31は、本体21の板厚部を貫通して本体21の外周面と内周面との間を連通しており、本体21の全体に亘って広がるように設けられている。第1貫通孔31は、湛水土壌の表面の水が通過可能な大きさであって、種子および第2貫通孔32よりも大きな孔径を有している。
【0056】
輪体22は、短軸円環形状を有しており、その外周面には複数の第2貫通孔32が開口して設けられている。複数の第2貫通孔32は、輪体22の板厚部を貫通して輪体22の外周面と内周面との間を連通しており、輪体22の全体に亘って広がるように設けられている。輪体22は、本体21に外嵌された状態で配置固定されている。輪体22は、湛水土壌の上に播種された種子よりも移動方向後ろ側の位置、つまり、湛水土壌の種子が播種された部分の上を転がる位置に配置され、湛水土壌の上を転がることができるようになっている。
【0057】
この構成によれば、長軸円筒状の円筒体11を湛水土壌の表面に転がすことによって鎮圧して平らにならすことができ、湛水土壌の高い均平性を得ることができる。そして、本体21と輪体22とが径方向に重なる部分で種子を軽く埋没させ、本体21のみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21と輪体22とが径方向に重なる部分で埋没効果が得られ、本体21のみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。つまり、湛水土壌の上に播種された種子が輪体22によって的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面の水が本体21を通過して排水されるので、円筒体11によって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。
【0058】
また、円筒体11の輪体22には、種子の大きさよりも孔径が小さい第2貫通孔32が複数設けられているので、輪体22において鎮圧だけでなく排水も行うことができ、鎮圧効果および水流発生抑制効果の双方の効果が得られる。つまり、種子を埋没させる機能に加えて、円筒体11の移動方向前方に位置する湛水土壌の表面水を輪体22の複数の第2貫通孔32に通過させて排水させる排水機能も発揮することができる。したがって、埋没領域部で種子の埋没が行われるとともに、水流の発生も抑制される。
【0059】
また、鎮圧装置10は、円筒体11が、湛水直播装置1の左右方向に一定径D(mm)で延在する長軸円筒状の本体21と、本体21の外周面に取り付けられる短軸円環状の輪体22とを有し、本体21には複数の第1貫通孔31が設けられている。鎮圧装置10においては、本体21と輪体22とが径方向に重なる部分によって種子が埋没され、本体21のみとなる部分で排水が行われる。この構成により、円筒体11の径方向に本体21と輪体22とが重なる部分で種子を埋没させる効果が得られ、円筒体11の径方向に本体21のみとなる部分で水流の発生を抑制する効果が得られる。
【0060】
鎮圧装置10は、円筒体11に、本体21に対して本体21の軸方向に所定間隔を開けて輪体22が複数配置されており、湛水直播装置1の進行方向で、播種ユニット4の各ホッパ4bの後方にそれぞれ位置する間隔となるように各輪体22が配置されている。即ち、各ホッパ4bから播種された種子が埋没されるように、各輪体22が配置されている。この構成により、各ホッパ4bから落下して湛水土壌に播種された種子は、輪体22によって湛水土壌に確実に埋没されるという効果が得られる。
【0061】
種子鎮圧装置10は、湛水土壌の表面の水を、各輪体22の第2貫通孔32および各輪体22の軸方向に隣接する本体21の第1貫通孔31の両方にそれぞれ通過させて排水することができる。したがって、円筒体11の前方において、湛水土壌の表面の水が円筒体11の軸方向中央から両端部に向かって長くて大きな流れとなるのを防ぐことができ、水流によって種子が流されるのを効果的に防ぐことができる。
【0062】
鎮圧装置10は、本体21が第1貫通孔31を有する第1パンチングメタルで形成され、輪体22が第2貫通孔32を有する第2パンチングメタルで形成されている。第1パンチングメタルは、金属等の板をパンチングプレスの金型で貫通孔を形成した板状体からなるので、孔径や開口率を適宜選択することができ、平坦な表面を有しているので耐摩耗等の耐久性が高く、貫通孔などの目が崩れることがないという効果が得られる。また、第1パンチングメタルと第2パンチングメタルは、所定の重量を有しているので、円筒体11を湛水土壌に押さえつける必要が無く、円筒体11が湛水土壌から浮き上がるのを防止して、適切に湛水土壌の鎮圧・均平化を行うことができる。
【0063】
また、鎮圧装置10においては、本体21が一体化された各環状支持体25、各板状支持体26および連結体27で支持されているので、剛性が高められ、耐久性が高められるという効果が得られる。
【0064】
第1実施形態の鎮圧装置10においては、本体21が第1パンチングメタルで形成され、輪体22が第2パンチングメタルで形成されたパンチングメタル構造の場合を例に説明した。しかしながら、本発明に係る鎮圧装置においては、パンチングメタル構造以外の構造で構成してもよい。パンチングメタル構造以外の構造を有する第2実施形態~第7実施形態に係る鎮圧装置10A、10B、10C、10D、10E、10Fについて、順次図面を参照して説明する。各実施形態の鎮圧装置は、第1実施形態に係る鎮圧装置10と同様に構成されているので、それぞれ異なる構成について説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図6、
図7を用いて説明する。
なお、上述の各実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、輪体22Aを網体によって構成したことである。
【0066】
鎮圧装置10Aは、円筒体11Aを有している。円筒体11Aは、
図6および
図7に示すように、本体21と、複数の輪体22Aと、管体23と、一対の蓋体24と、複数の環状支持体25と、複数の板状支持体26と、連結体27とを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。本実施形態では、本体21は、第1貫通孔31の孔径がφ10mmのパンチングメタルを使用している。
【0067】
輪体22Aは、金網で構成される第2網体からなり、方形の網目を有している。網目は、
図5(c)に示すように、網目32Aの対角の長さbが、
図5(a)に示す種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されており、播種された種子を通過させない大きさとなっている。なお、網目32Aは、本発明に係る鎮圧装置の第2貫通孔に対応する。網目32Aは、播種された種子を通過させない大きさであれば方形以外の形状、例えば菱形、六角形であってもよい。本実施形態では、輪体22Aは、線径φ1mm、網目(目開き)1.5mm、(L=2.1mm)の金網を使用している。
【0068】
輪体22Aは、本体21の外周面に取り付けられている。輪体22Aは、第1実施形態の輪体22と同様に、種子を播種する列の間隔に対応するように、本体21の軸方向に所定間隔を空けて複数が取り付けられている。輪体22Aは、例えば針金や結束バンドなどの紐状体により本体21に固定されている。
【0069】
第2実施形態の本体21および輪体22Aが重なった部分は、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応し、第2実施形態の各輪体22Aの両側に位置する本体21のみとなる部分は、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。
【0070】
次いで、第2実施形態に係る鎮圧装置10Aの効果について説明する。
第2実施形態に係る鎮圧装置10Aは、第1実施形態と同様、円筒体11Aを有し、円筒体11Aは、輪体22Aと、本体21とを有する。そして、輪体22Aは、金網からなる第2網体によって構成されている。したがって、パンチングメタルによって構成されている第1実施形態の輪体22と比較して安価であり、比較的容易に交換を行うことができる。したがって、例えば種子の大きさや形状に応じて、網目の大きさが異なる網体に容易に変更することができ、種々の種子に迅速に対応することができる。
【0071】
円筒体11Aは、第1実施形態と同様に、本体21の第1貫通孔31の大きさが、第2貫通孔である網目32Aよりも大きく形成されているので、より的確に排水することができ、円筒体11Aによる水流の発生を確実に抑制することができるという効果が得られる。また、輪体22Aの網目32Aの対角の長さbが、種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されているので、種子を埋没させる効果に加えて、水流発生抑制効果も得られる。
【0072】
そして、第1実施形態と同様に、長軸円筒状の円筒体11Aを湛水土壌の表面に転がすことによって鎮圧して平らにならすことができ、湛水土壌の高い均平性を得ることができる。そして、本体21と輪体22Aとが径方向に重なる部分で種子を軽く埋没させ、本体21のみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21と輪体22Aとが径方向に重なる部分で埋没効果が得られ、本体21のみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。つまり、湛水土壌の上に播種された種子が輪体22Aによって的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面水が本体21を通過して排水されるので、円筒体11Aによって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。
【0073】
また、円筒体11Aは、第1実施形態と同様、本体21に対して本体21の軸方向に所定間隔を開けて輪体22Aが複数配置されているので、播種ユニット4の各ホッパ4bから播種された種子が埋没されるように、各輪体22Aを位置させることができる。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は輪体22Aで確実に埋没されるという効果が得られる。また、本体21に対する輪体22Aの位置を変更することによって、種子を播種する列の間隔に容易に対応することができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図8、
図9を用いて説明する。
なお、上述の各実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、円筒体11Bの本体21Bと輪体22Aの両方を網体によって構成したことである。
【0075】
鎮圧装置10Bは、円筒体11Bを有している。円筒体11Bは、
図8および
図9に示すように、本体21Bと、複数の輪体22Aと、管体23と、一対の蓋体24と、複数の環状支持体25と、複数の板状支持体26と、連結体27とを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。
【0076】
本体21Bは、金網で構成される第1網体からなり方形の網目を有している。第1網体の網目は、湛水土壌の表面水が通過可能な大きさに設定されており、第1実施形態の第1パンチングメタルよりも大きな開孔率を有している。そして、本体21Bと輪体22Aは、本体21Bの方が輪体22Aよりも網目が大きい。なお、第1網体の網目は、本発明に係る鎮圧装置の第1貫通孔に対応する。第1網体の網目は、方形以外の形状、例えば菱形、六角形であってもよい。本体21Bは、第1実施形態と同様、湛水直播装置1の左右方向に一定径D(mm)で延在し、長軸円筒状に形成されている。
【0077】
輪体22Aは、本体21Bの外周面に取り付けられている。輪体22Aは、第1実施形態と同様に、種子を播種する列の間隔に対応するように、本体21Bの軸方向に所定間隔を空けて複数が取り付けられている。
【0078】
なお、第3実施形態の本体21Bおよび輪体22Aが重なった部分は、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応し、第3実施形態の各輪体22Aの両側に位置する本体21Bのみとなる部分は、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。
【0079】
次いで、第3実施形態に係る鎮圧装置10Bの効果について説明する。
第3実施形態に係る鎮圧装置10Bは、円筒体11Bを有し、円筒体11Bは、輪体22Aと、本体21Bとを有する。そして、円筒体11Bは、金網で構成される第1網体によって構成されている。したがって、パンチングメタルによって構成されている第1実施形態の円筒体11と比較して安価であり、比較的容易に作製することができる。そして、比較的簡単に交換することができる。したがって、例えば湛水土壌の状態に応じて網目の大きさが異なる網体に変更することができる。
【0080】
円筒体11Bは、本体21Bの第1網体の網目の大きさが、第2網体よりも大きく形成されており、また、第1実施形態の第1パンチングメタルと比較して第1網体の方が開孔率が高いので、より的確に排水することができ、円筒体11Bによる水流の発生を確実に抑制することができるという効果が得られる。また、輪体22Aの網目の対角の長さbが、種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されているので、種子を埋没させる効果に加えて、水流発生抑制効果も得られる。
【0081】
そして、上述の各実施形態と同様に、長軸円筒状の円筒体11Bを湛水土壌の表面に転がすことによって鎮圧して平らにならすことができ、湛水土壌の高い均平性を得ることができる。そして、本体21Bと輪体22Aとが径方向に重なる部分で種子を軽く埋没させ、本体21Bのみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21Bと輪体22Aとが径方向に重なる部分で埋没効果が得られ、本体21Bのみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。つまり、湛水土壌の上に播種された種子が輪体22Aによって的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面水が本体21Bを通過して排水されるので、円筒体11Bによって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。特に、本体21Bを構成する第1網体の網目が、第1パンチングメタルよりも大きな開孔率を有しているので、より的確に排水することができ、水流の発生を確実に抑制することができるという効果が得られる。
【0082】
また、円筒体11Bは、上述の各実施形態と同様に、本体21Bに対して本体21Bの軸方向に所定間隔を開けて輪体22Aが複数配置されているので、播種ユニット4の各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子が埋没されるように、各輪体22Aを位置させることができる。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は輪体22Aで確実に鎮圧されるという効果が得られる。また、本体21Bに対する輪体22Aの位置を変更することによって、種子を播種する列の間隔に容易に対応することができる。
【0083】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図10、
図11を用いて説明する。
なお上述の各実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、円筒体11Cの本体21の内周面に輪体22Cが重なるように配置された構成としたことである。
【0084】
鎮圧装置10Cは、円筒体11Cを有している。円筒体11Cは、
図10および
図11に示すように、本体21と、複数の輪体22Cと、管体23と、一対の蓋体24と、複数の環状支持体25と、複数の板状支持体26と、連結体27とを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。
【0085】
輪体22Cは、第2貫通孔32Cが全体に亘って複数形成された第2パンチングメタルからなり、短軸円環状に形成され、本体21の内周面に所定の間隔で複数個嵌め込まれる。つまり、輪体22Cは、その外周面に本体21の内周面が対向するように、本体21の内部において軸方向に所定間隔をおいて複数配置される。第2貫通孔32Cは、
図5(a)および
図5(b)に示すように、直径a(mm)が、湛水土壌に播種される種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されており、播種された種子を通過させない大きさで構成されている。
【0086】
本体21の内周面に嵌め込まれる輪体22Cの所定の間隔は、第1実施形態の間隔と同じであり、播種ユニット4の各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は、内側に配置されている輪体22Cと重なる本体21の外周部分で鎮圧される。
【0087】
なお、第4実施形態の本体21および輪体22Cが重なった部分は、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応し、第4実施形態の各輪体22Cの両側に位置する本体21のみとなる部分は、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。
【0088】
次いで、第4実施形態に係る鎮圧装置10Cの効果について説明する。
第4実施形態に係る鎮圧装置10Cは、円筒体11Cを有し、円筒体11Cは、輪体22Cと、本体21とを有する。そして、輪体22Cは、その外周面が本体21の内周面に対向するように、本体21の内部に収容されている。そして、本体21と輪体22Cは、それぞれパンチングメタルによって構成されており、本体21の方が輪体22Cよりもパンチングメタルの貫通孔の大きさが大きくなるように設定されている。
【0089】
第4実施形態によれば、輪体22Cが本体21の内部に収容されているので、円筒体11Cは、その外径が一定となる。したがって、湛水土壌の表面に転がして鎮圧した際に、湛水土壌の表面を段差のない均一な平面にならすことができ、より高い均平性を得ることができる。
【0090】
そして、本体21と輪体22Cとが径方向に重なる部分で種子が埋没され、本体21のみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21と輪体22Cとが径方向に重なる部分で埋没効果が得られ、本体21のみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。つまり、湛水土壌の上に播種された種子が輪体22Cによって的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面水が本体21を通過して排水されるので、円筒体11Cによって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。
【0091】
また、円筒体11Cは、第1実施形態と同様、本体21に対して本体21の軸方向に所定間隔を開けて輪体22Cが複数配置されているので、播種ユニット4の各ホッパ4bから播種された種子が埋没されるように、各輪体22Cを位置させることができる。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は輪体22Cで確実に埋没されるという効果が得られる。また、本体21に対する輪体22Cの位置を変更することによって、種子を播種する列の間隔に容易に対応することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、円筒体11の本体21の内周面に輪体22Cが重なるように配置した構成について説明したが、かかる構成に限定されるものではなく、種々の組み合わせが可能である。例えば、本実施形態の構成に加えて、円筒体11の本体21の外周面に更に輪体22や22Aを追加して配置してもよい。つまり、本発明の実施形態には、円筒体11の本体21の内周面と外周面の少なくとも一方に輪体を配置する構成が含まれる。
【0093】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図12、
図13を用いて説明する。
なお、上述の各実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、第4実施形態においてパンチングメタルで構成された輪体22Cの代わりに、網体によって構成された輪体22Dを用いたことである。
【0094】
鎮圧装置10Dは、円筒体11Dを有している。円筒体11Dは、
図12および
図13に示すように、本体21と、複数の輪体22Dと、管体23と、一対の蓋体24と、複数の環状支持体25と、複数の板状支持体26と、連結体27とを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。
【0095】
輪体22Dは、金網で構成される第2網体からなり、方形の網目を有している。網目32Aは、
図5(c)に示すように、網目32Aの対角の長さbが、
図5(a)に示す種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されており、播種された種子を通過させない大きさとなっている。なお、網目32Aは、本発明に係る鎮圧装置の第2貫通孔に対応する。網目32Aは、播種された種子を通過させない大きさであれば方形以外の形状、例えば菱形、六角形であってもよい。本実施形態では、輪体22Aは、線径φ1mm、網目(目開き)1.5mm、(L=2.1mm)の金網を使用している。
【0096】
輪体22Dは、本体21の内周面に取り付けられている。輪体22Dは、第2実施形態の輪体22Aと同様に、種子を播種する列の間隔に対応するように、本体21の軸方向に所定間隔を空けて複数が取り付けられている。
【0097】
第5実施形態の本体21および輪体22Dが重なった部分は、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応し、第5実施形態の各輪体22Dの両側に位置する本体21のみとなる部分は、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。
【0098】
次いで、第5実施形態に係る鎮圧装置10Dの効果について説明する。
第5実施形態に係る鎮圧装置10Dは、第1実施形態と同様、円筒体11Dを有し、円筒体11Dは、輪体22Dと、本体21とを有する。そして、輪体22Dは、金網からなる第2網体によって構成されている。したがって、パンチングメタルによって構成されている第1実施形態の輪体22と比較して安価であり、製造が容易である。また、軽量化を図ることもできる。
【0099】
円筒体11Dは、第1実施形態と同様に、本体21の第1貫通孔31の大きさが、第2網体の網目32Aよりも大きく形成されているので、より的確に排水することができ、円筒体11Dによる水流の発生を確実に抑制することができるという効果が得られる。また、輪体22Dの網目32Aの対角の長さbが、種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されているので、種子を埋没させる効果に加えて、水流発生抑制効果も得られる。
【0100】
そして、第1実施形態と同様に、長軸円筒状の円筒体11Dを湛水土壌の表面に転がすことによって鎮圧して平らにならすことができ、湛水土壌の高い均平性を得ることができる。そして、本体21と輪体22Dとが径方向に重なる部分で種子を軽く埋没させ、本体21のみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21と輪体22Dとが径方向に重なる部分で埋没効果が得られ、本体21のみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。つまり、湛水土壌の上に播種された種子が輪体22Dによって的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面水が本体21を通過して排水されるので、円筒体11Dによって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。
【0101】
また、円筒体11Dは、第1実施形態と同様、本体21に対して本体21の軸方向に所定間隔を開けて輪体22Dが複数配置されているので、播種ユニット4の各ホッパ4bから播種された種子が埋没されるように、各輪体22Dを位置させることができる。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は輪体22Dで確実に埋没されるという効果が得られる。また、本体21に対する輪体22Dの位置を変更することによって、種子を播種する列の間隔に容易に対応することができる。
【0102】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について
図14、
図15を用いて説明する。
なお上述の各実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、複数の環状支持体25を省略した構成としたことである。
【0103】
鎮圧装置10Eは、円筒体11Eを有している。円筒体11Eは、
図14および
図15に示すように、本体21と、複数の輪体22Eと、管体23と、一対の蓋体24と、複数の板状支持体26Eと、連結体27Eとを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。
【0104】
輪体22Eは、第2貫通孔32Eが全体に亘って複数形成された第2パンチングメタルからなり、短軸円環状に形成され、本体21の内周面に所定の間隔で複数個取り付けられる。つまり、輪体22Eは、その外周面に本体21の内周面が対向するように、本体21の内部において軸方向に所定間隔をおいて複数配置される。第2貫通孔32Eは、
図5(a)および
図5(b)に示すように、直径a(mm)が、湛水土壌に播種される種子の短径の長さX(mm)よりも小さく形成されており、播種された種子を通過させない大きさで構成されている。
【0105】
輪体22Eは、その内周面に複数の板状支持体26Eが等角度間隔で固定されており、輪体22Eと板状支持体26Eとが溶接などの接合手段により接合され一体化されている。したがって、輪体22Eは、本体21を支持する機能を有している。
【0106】
複数の板状支持体26Eは、それぞれ所定の厚み(mm)を有し、輪体22Eの軸方向の長さと同じ長さを有しており、方形の金属材料からなる。各板状支持体26Eは、本体21の軸方向に延在する各連結体27Eにより、連結されている。各板状支持体26Eと連結体27Eは溶接などの接合手段により接合されおり、各輪体22Eおよび各板状支持体26Eは複数の連結体27Eにより、一体化されている。なお、第6実施形態の一体化された輪体22E、各板状支持体26Eおよび各連結体27Eは、本発明に係る鎮圧装置の支持部材に対応する。
【0107】
本体21の内周面に位置する輪体22Eの所定の間隔は、第1実施形態の間隔と同じであり、播種ユニット4の各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は、内側に配置されている輪体22Eと重なる本体21の外周部分で鎮圧される。
【0108】
なお、第6実施形態の本体21および輪体22Eが重なった部分は、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応し、第6実施形態の各輪体22Eの両側に位置する本体21のみとなる部分は、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。
【0109】
次いで、第6実施形態に係る鎮圧装置10Eの効果について説明する。
第6実施形態では、複数の環状支持体25を省略した構成としたので、円筒体11を構成する構成部品の数を減らすことができ、円筒体11の製造容易化と、軽量化を図ることができる。
【0110】
そして、第6実施形態に係る鎮圧装置10Eは、円筒体11Eを有し、円筒体11Eは、各板状支持体26Eおよび各連結体27Eと一体化された輪体22Eと、本体21とを有する。この構成により、第1実施形態と同様に、湛水土壌の上に播種された種子が、輪体22Eと重なる本体21の外周面で的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面水が本体21の輪体22Eと重ならない部分を通過して排水されるので、円筒体11Eによって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。
【0111】
また、鎮圧装置10Eにおいては、第1貫通孔31が、第2貫通孔32Eよりも大きく形成されているので、より的確に排水することができ、水流の発生を確実に抑制することができるという効果が得られる。また、鎮圧装置10Eにおいては、輪体22Eに種子よりも大きさが小さい第2貫通孔32Eが複数設けられているので、鎮圧効果および水流発生抑制効果の双方の効果が得られる。
【0112】
また、鎮圧装置10Eは、円筒体11Eが、本体21と、本体21の内周面に位置し、各板状支持体26Eおよび各連結体27Eと一体化された短軸円環状の輪体22Eとを有し、本体21には複数の第1貫通孔31が設けられている。鎮圧装置10Eにおいては、本体21と輪体22Eとが径方向に重なる部分の本体21の外周面で播種された種子が埋没され、本体21のみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21と輪体22Eとが径方向に重なる部分で鎮圧効果が得られ、本体21のみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。
【0113】
鎮圧装置10Eは、円筒体11Eに、本体21に対して本体21の軸方向に所定間隔を開けて輪体22Eが複数配置されており、湛水直播装置1の進行方向で、播種ユニット4の各ホッパ4bの後方にそれぞれ位置する間隔となるように各輪体22Eが配置されている。即ち、各ホッパ4bから播種された種子が埋没されるように、各輪体22Eが配置されている。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は、径方向で輪体22Eと重なる部分の本体21の外周部分によって湛水土壌に確実に埋没されるという効果が得られる。
【0114】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について
図16、
図17を用いて説明する。
なお上述の各実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
本実施形態において特徴的なことは、管体23と、環状支持体25と、板状支持体26と、連結体27を省略した構成としたことである。
【0115】
第7実施形態に係る鎮圧装置10Fは、
図1および
図2に示すように、円筒体11Fと、一対の連結部材12と、各連結部材12と円筒体11Fの両端部をそれぞれ連結する一対のリンク機構13とを有している。鎮圧装置10Fは、各リンク機構13によって円筒体11Fが上下動するように構成されている。
【0116】
円筒体11Fは、
図16および
図17に示すように、本体21Fと、複数の輪体22Fと、一対の蓋体24Fとを有しており、各構成要素は組立により一体化され、機械的強度が高められている。
【0117】
本体21Fは、第1貫通孔31Fが全体に亘って複数形成された第1パンチングメタルからなり、湛水直播装置1の左右方向に一定径D(mm)で延在し、長軸円筒状に形成されている。第1貫通孔31Fは、第1実施形態の第1貫通孔31と同様に形成されている。第1パンチングメタルは、第1実施形態の第1パンチングメタルよりも、高い機械的強度を有するステンレス鋼板や鉄鋼板などの金属板または金属管などの金属材料からなる。
【0118】
輪体22Fは、第2貫通孔32Fが全体に亘って複数形成された第2パンチングメタルからなり、短軸円環状に形成され、本体21Fの外周面に所定の間隔で複数個取り付けられる。第2貫通孔32Fは、第1実施形態の第2貫通孔32と同様に形成されている。
【0119】
本体21Fの外周面に取り付けられる輪体22Fは、第1実施形態と同様の所定の間隔で配置されており、播種ユニット4の各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は輪体22Fで鎮圧される。
【0120】
なお、第7実施形態の本体21Fおよび輪体22Fが重なった部分は、本発明に係る鎮圧装置における埋没領域部に対応し、第7実施形態の各輪体22Fの両側に位置する本体21Fのみとなる部分は、本発明に係る鎮圧装置における排水領域部に対応する。
【0121】
各蓋体24Fは、本体21Fの軸方向両端部で本体21Fの内部に嵌め込まれて本体21Fと結合する結合部24Faと、リンク機構13に連結される連結部24Fbとを有している。
【0122】
次いで、第7実施形態に係る鎮圧装置10Fの効果について説明する。
第7実施形態では、管体23と、環状支持体25と、板状支持体26と、連結体27を省略した構成としたので、円筒体11を構成する構成部品の数を減らすことができ、円筒体11の製造容易化と、軽量化を図ることができる。
【0123】
そして、第7実施形態に係る鎮圧装置10Fは、第1実施形態と同様、円筒体11Fを有し、円筒体11Fは、輪体22Fと、本体21Fとを有する。この構成により、湛水土壌の上に播種された種子が輪体22Fで的確に埋没されるとともに、湛水土壌の表面水が本体21Fを通過して排水されるので、円筒体11Fによって湛水土壌の表面水が押されて水流が発生するのを抑制することができ、種子が水流によって押し流されてしまうのを防止することができるという効果が得られる。
【0124】
また、鎮圧装置10Fにおいては、第1貫通孔31Fが、第2貫通孔32Fよりも大きく形成されているので、より的確に排水することができ、水流の発生を確実に抑制することができるという効果が得られる。また、鎮圧装置10Fにおいては、輪体22Fに種子よりも大きさが小さい第2貫通孔32Fが複数設けられているので、埋没効果および水流発生抑制効果の双方の効果が得られる。
【0125】
また、鎮圧装置10Fは、円筒体11Fが、湛水直播装置1の左右方向に一定径D(mm)で延在する長軸円筒状の本体21Fと、本体21Fの外周面に取り付けられる短軸円環状の輪体22Fとを有し、本体21Fには複数の第1貫通孔31Fが設けられている。鎮圧装置10Fにおいては、本体21Fと輪体22Fとが径方向に重なる部分で播種された種子が埋没され、本体21Fのみとなる部分で排水が行われる。この構成により、本体21Fと輪体22Fとが径方向に重なる部分で鎮圧効果が得られ、本体21Fのみとなる部分で水流発生抑制効果が得られる。
【0126】
また、鎮圧装置10Fは、円筒体11Fに、本体21Fに対して本体21Fの軸方向に所定間隔を開けて輪体22Fが複数配置されているので、湛水直播装置1の進行方向で、播種ユニット4の各ホッパ4bの後方にそれぞれ位置する間隔で配置することができる。即ち、播種ユニット4の各ホッパ4bから播種された種子が埋没されるように、各輪体22Fを位置させることができる。この構成により、各ホッパ4bから落下し湛水土壌に播種された種子は輪体22Fで確実に埋没されるという効果が得られる。
【0127】
また、鎮圧装置10Fにおいては、本体21Fが第1貫通孔31Fを有する第1パンチングメタルで形成され、輪体22Fが第2貫通孔32Fを有する第2パンチングメタルで形成されており、第1パンチングメタルは、金属等の板をパンチングプレスの金型で貫通孔を形成した板状体からなるので、孔径や開口率を適宜選択することができ、平坦な表面を有しているので耐摩耗等の耐久性が高く目が崩れることがないという効果が得られる。
【0128】
また、鎮圧装置10においては、本体21Fの軸方向両端部に一対の蓋体24Fが嵌め込まれ、本体21Fと蓋体24Fとが一体化された単一構造で構成されていているので、構造が簡易化されるという効果が得られる。
【0129】
(実験例)
円筒体の種類による排水性および均平性への影響について検証する実験を行った。
(1)前提条件
検証実験を行うために圃場において湛水土壌を生成した。湛水土壌は、代かきによって湛水直播するのに適切な硬さに調整した。湛水直播用に代かきした土壌は、移植栽培用に代かきした土壌よりもやや硬めであり、例えばゴルフボールを1mの高さから落として、ゴルフボールの1/2~1/3程度の部分が埋まるくらいの硬さになるように調整した。具体的には、トラクタ2の走行速度を0.6m/sとし、ロータリ3の回転速度を270rpm程度として代かきを行った。湛水土壌の水深は、事前に耕した状態で土壌表面と同程度の水深であった。事前に耕さない不耕起のときは約5cm程度が適切な水深となる。
【0130】
(2)実験例1:網体
網体は、線材を編んだ網目構造を有しており、排水性に優れていると想定される。したがって、円筒体を網体によって構成した場合について実験を行った。
それぞれが1.5mm、2.5mm、3.0mm、5.0mmの目開きを有する複数の網体をそれぞれ円筒状に丸めて軸方向に接続し、φ350mmの円筒体を作製した。そして、トラクタ2を走行速度0.6m/sで走行させて牽引し、湛水土壌の上に円筒体を転がして移動させた。その結果、網体の目開きが、1.5mm、2.5mm、3.0mmの部分は、円筒体11の前方に水流が発生し、特に部分的に水位が高い場所では、種子の位置を移動させるほどの強い水流が発生する場合があった。
【0131】
これに対して、網体の目開きが5.0mmの部分では、円筒体11の前方に生ずる水流も弱く、種子を押し流すほどの勢いはなかった。そして、鎮圧性の悪化や、石や泥の入り込みもなかった。したがって、円筒体11の本体21を網体で構成する場合、網目の目開きが5.0mm以上のものを用いるが好ましいと判断できる。
【0132】
(3)実験例2:パンチングメタル
パンチングメタルは、板材に複数の貫通孔が形成された板構造を有しており、実験例1の網体とは、基本的な形状が異なっている。パンチングメタルは、網体と同様に排水性を確保でき、かつ鎮圧性及び均平性にも優れていると想定される。したがって、網体よりもよい効果を得られると予想して、円筒体をパンチングメタルによって構成した場合について実験を行った。
それぞれがφ5mm、φ10mm、φ25mm、φ50mmの孔径を有する複数のパンチングメタルをそれぞれ円筒状に丸めて軸方向に接続し、φ350mmの円筒体を作製した。そして、トラクタ2を走行速度0.6m/sで走行させて牽引し、湛水土壌の上に円筒体を転がして移動させた。その結果、貫通孔の孔径がφ25mm、φ50mmの部分では、土壌の表面に凸状の突起が残り、表面が荒れた状態となり、均平性が悪く、φ50mmでは、第1貫通孔31を通過した土塊が落下することがあった。一方、排水性は高く、円筒体11の前方に水流が発生することはなかった。
【0133】
貫通孔の孔径がφ5mm、φ10mmの部分では、湛水土壌の表面に凸状の突起が若干残ったが、鎮圧性及び均平性は確保されており、φ10mmよりもφ5mmの方が、より良好な仕上がりとなった。また、これらの部分では、円筒体11の前方に生ずる水流も弱く、種子を押し流すほどの勢いは生じなかった。したがって、本体21をパンチングメタルで構成する場合には、第1貫通孔11の孔径がφ5mm以上φ10mm以下のものを用いるのが好ましいと判断できる。
【0134】
以上、本発明の第1実施形態~第7実施形態について詳述したが、本発明は、前記の第1実施形態~第7実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0135】
1 湛水直播装置
2 トラクタ
2a エンジン
2b 前輪
2c 後輪
3 ロータリ
4 播種ユニット
4a ユニット駆動輪
4b ホッパ
6 支持部材
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 鎮圧装置
11、11A、11B、11C、11D、11E、11F 円筒体
12 連結部材
13 リンク機構
21、21B、21F 本体
22、22A、22C、22D、22E、22F 輪体
23 管体
24、24F 蓋体
24a、24Fa 結合部
24b、24Fb 連結部
25 環状支持体(支持部材)
26、26E 板状支持体(支持部材)
27、27E 連結体(支持部材)
31、31F 第1貫通孔
32、32C、32E、32F 第2貫通孔