(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】抗菌性高分子組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240422BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240422BHJP
C08F 20/34 20060101ALI20240422BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240422BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240422BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20240422BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240422BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240422BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L33/14
C08F20/34
C09D5/14
C09D201/00
C09D133/14
A01P1/00
A01P3/00
A01N37/06
(21)【出願番号】P 2022550005
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2021013766
(87)【国際公開番号】W WO2022075763
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0129644
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132845
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-293186(JP,A)
【文献】特開2017-202982(JP,A)
【文献】特開2015-166346(JP,A)
【文献】特開2000-154105(JP,A)
【文献】LIU,Y et.al.,Synthesisof VO2/poly(MMA-co-dMEMUABr)antimicrobial/thermochromicdual-functional coatings,Progress in organic coatings,2020年,Vol.142, 105589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08F 6/00-246/00
A01N 1/00- 65/48
A01P 1/00- 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選択される1種以上である、親水性高分子;
下記の化学式1で表される繰り返し単位を含む抗菌性高分子;および
水を含む溶媒を含
み、
前記抗菌性高分子は、前記親水性高分子100重量部に対して、1重量部以上50重量部未満で含まれる、
抗菌性高分子組成物:
【化1】
前記化学式1において、
Lは、炭素数1~10のアルキレンであり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
R
4~R
6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数である。
【請求項2】
前記化学式1において、
Lは、メチレン、エチレン、またはプロピレンである、
請求項
1に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項3】
前記化学式1において、
R
4~R
6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルである、
請求項1
または2に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項4】
前記化学式1において、
R
1は、水素、またはメチルであり、R
2およびR
3は、水素であり、R
4~R
6のうちの1つは、炭素数10~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルである、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項5】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記の化学式1-1~1-4のいずれか1つで表される、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物:
【化2】
前記化学式1-1において、
aは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数であり、
【化3】
前記化学式1-2において、
bは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数であり、
【化4】
前記化学式1-3において、
cは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数であり、
【化5】
前記化学式1-4において、
dは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数である。
【請求項6】
前記抗菌性高分子は、前記化学式1で表される繰り返し単位のみを含む単一重合体(homopolymer)であるか、または下記の化学式2で表される繰り返し単位をさらに含む共重合体(copolymer)である、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物:
【化6】
前記化学式2において、
R’
1~R’
3は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
mは、1以上の整数である。
【請求項7】
前記抗菌性高分子が前記化学式2で表される繰り返し単位をさらに含む共重合体の場合、前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位のモル比は、1:0.01~1:100である、
請求項
6に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項8】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記の化学式2-1で表される、
請求項
6または
7に記載の抗菌性高分子組成物:
【化7】
前記化学式2-1において、
mは、1以上の整数である。
【請求項9】
前記抗菌性高分子は、重量平均分子量が10,000~1,000,000g/molである、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項10】
前記溶媒は、水であるか、または水とエタノールとの混合物である、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項11】
前記抗菌性高分子組成物は、固形分の含有量が5~50重量%である、
請求項1から
10のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項12】
前記抗菌性高分子組成物は、恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度がBrookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、1,000cP~10,000cPである、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項13】
前記抗菌性高分子組成物は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに対して抗菌性を示す、
請求項1から
12のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項14】
前記グラム陰性菌は、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、または大腸菌(Escherichia coli)であり、
前記グラム陽性菌は、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)である、
請求項
13に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項15】
前記抗菌性高分子組成物は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)のすべてに対して抗菌性を示す、
請求項
13に記載の抗菌性高分子組成物。
【請求項16】
基材;および
前記基材上の少なくとも一面に備えられたコーティング層を含み、
前記コーティング層は、請求項1から
15のいずれか一項に記載の抗菌性高分子組成物によって形成されたものである、
抗菌性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年10月7日付の韓国特許出願第10-2020-0129644号および2021年10月7日付の韓国特許出願第10-2021-0132845号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、抗菌性高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、生活の多様化、生活水準の向上、意識の変化および改善により、個人の生活環境での衛生と快適さの増進に対する関心が高まっている。これによって、これを脅かす微生物に関する研究が行われているが、日常生活環境に存在する微生物はその種類が非常に多いだけでなく、自然界に広範囲に分布していて被害が深刻なのが現状である。
【0004】
特に、食生活、住居環境、衣服、工業製品などの多様な環境にバクテリア、カビなどの微生物が生息しうるが、この時、バクテリアは、各種炎症や食中毒などの原因になり、カビは、悪臭を発生させるだけでなく、各種皮膚疾患、呼吸器疾患、アレルギー、アトピー性皮膚炎などの原因になりかねず、問題になる。また、電子製品および生活用品類の表面に生息する微生物の場合、製品の性能低下の要因にもなりかねない。
【0005】
そこで、このような微生物による人間の被害を防ぐために、微生物の増殖を抑制したり、あるいは微生物を死滅するための多様な抗菌物質が開発されている。
【0006】
具体的には、かつて開発された抗菌物質は、大きく、無機抗菌剤と有機抗菌剤とに分けられる。前記無機抗菌剤は、銀や銅などの金属を含有した抗菌剤で、熱安定性に優れて高温条件でも抗菌特性が維持できるというメリットがあるが、価格が高く、加工後に含有された金属イオンによる変色の可能性があるという問題がある。また、有機抗菌剤は、無機抗菌剤に比べて低価格で少量でも抗菌効果に優れているというメリットがあるが、製品への適用後に溶出する可能性があり、抗菌持続性が良くないという問題があった。
【0007】
さらに、有機抗菌剤は、微生物の繁殖の阻止および死滅の面から製品の安定性を確保することはできるが、同時に毒性があり、使用者の皮膚に刺激を誘発する原因にもなる。
【0008】
これによって、多様な製品に容易にコーティングできかつ、コーティング後に溶出することなく抗菌性が持続できる抗菌性コーティング組成物に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、バクテリア増殖抑制効果に優れた抗菌性高分子組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記抗菌性高分子組成物によって形成されたコーティング層を備えた抗菌性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、
親水性高分子;
化学式1で表される繰り返し単位を含む抗菌性高分子;および
水を含む溶媒を含む、
抗菌性高分子組成物を提供する:
【0013】
【0014】
前記化学式1において、
Lは、炭素数1~10のアルキレンであり、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
R4~R6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数である。
【0015】
また、本発明は、基材;および前記基材上の少なくとも一面に備えられたコーティング層を含み、前記コーティング層は、前記抗菌性高分子組成物によって形成されたものである、抗菌性物品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による抗菌性高分子組成物は、バクテリア増殖抑制効果に優れたコーティング層を製造できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の製造例Cで製造した抗菌性単量体2-1’のNMRデータ(
1H-NMR;CDCl
3)を示したものである。
【
図2】本発明の製造例Dで製造した抗菌性単量体2-2’のNMRデータ(
1H-NMR;CDCl
3)を示したものである。
【
図3】本発明の製造例Eで製造した抗菌性単量体2-3’のNMRデータ(
1H-NMR;CDCl
3)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0019】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0020】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されると言及された場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材の上に追加的に形成されうることを意味する。
【0021】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0022】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0023】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む。
【0024】
また、本明細書において、前記アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~20のものが好ましい。一実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。前記アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3、3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。さらに、本明細書において、アルキレンは、2価の基であることを除けば、前述したアルキル基に関する説明が適用可能である。
【0025】
一般に、家庭、オフィス、多重施設などの日常的な生活空間で使用される生活化学製品に抗菌特性を示すために、このような生活化学製品の表面にバクテリアなどの微生物の繁殖の阻止および/または死滅可能な抗菌コーティングが行われている。この時、抗菌コーティング内に含まれている抗菌剤が微生物の細胞膜または細胞壁を損傷させたりこれらのタンパク質の変性を誘導し、これによって微生物の成長が阻害されて、微生物の繁殖および/または死滅が行われる。
【0026】
また、バクテリア(細菌)は、確認されたものだけでも5千種を超えるほど多様な種類が存在する。具体的には、バクテリアは、球状、棒状、螺旋状などとその細胞の形状が多様であり、酸素を要求する程度も菌ごとに異なって、好気性菌、通性菌および嫌気性細菌に分けられる。したがって、通常、1種類の抗菌剤が多様なバクテリアの細胞膜/細胞壁を損傷させたりタンパク質を変性させることができる物理/化学的メカニズムを有することは容易ではなかった。
【0027】
さらに、時間が経過するほど、抗菌コーティングのために使用された抗菌剤が溶出したり、あるいは持続的な抗菌剤に使用者が曝露する場合、むしろ使用者の健康を脅かすなどの問題が発生した。
【0028】
しかし、特定の構造を有する4級アンモニウム塩を含有した繰り返し単位を含む抗菌性高分子および親水性高分子が溶解した水性高分子コーティング組成物を用いて生活化学製品の表面に抗菌コーティング層を形成する場合、形成された抗菌コーティング層は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに、より具体的には、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)のすべてに抗菌性を示すことができることを確認して、本発明を完成した。
【0029】
前記グラム陽性菌は、グラム染色法で染色すれば紫色に染色されるバクテリアを総称するもので、グラム陽性菌の細胞壁は幾重のペプチドグリカンで構成されていて、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理しても脱色せずに紫色を示す。このようなグラム陽性菌に分類されるバクテリアとしては、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、腸球菌(Enterococcus faecium)、または乳酸レンサ球菌(Lactobacillus lactis)などがある。
【0030】
また、前記グラム陰性菌は、グラム染色法で染色すれば赤色に染色されるバクテリアを総称するもので、グラム陽性菌に比べて相対的に少量のペプチドグリカンを有する細胞壁を有する代わりに、脂質多糖質、脂質タンパク質、および他の複雑な高分子物質で構成された外膜を有する。これによって、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理すれば脱色が起こり、サフラニンなどの赤色の染料で対比染色をすれば赤色を示す。このようなグラム陰性菌に分類されるバクテリアとしては、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)などが挙げられる。
【0031】
したがって、前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌は接触時に多様な疾病を誘発しうるだけでなく、免疫力が低下した重症患者には2次感染も起こしうるので、1つの抗菌剤を用いて前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌のすべてに対して抗菌性を示すことが好ましい。
【0032】
一方、一実施形態による抗菌性高分子組成物は、前記抗菌性高分子が前記化学式1で表される繰り返し単位を含むことによって、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも1つに対して抗菌性を示す。具体的には、前記抗菌性高分子組成物に含まれる抗菌性高分子をなす特定の炭素数以上のアルキル基を有する4級アンモニウム塩部分(moiety)によって、4級アンモニウム塩のアンモニウム陽イオンがグラム陽性菌またはグラム陰性菌の細胞壁に静電的に吸着し、以後、疎水性を示す4級アンモニウム塩のアルキル基との相互作用によってバクテリアの細胞表層構造に影響を与えてコーティング組成物は抗菌性を示すことができる。
【0033】
より具体的には、前記抗菌性高分子組成物は、グラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。あるいは、前記抗菌性高分子組成物は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。あるいは、前記抗菌性高分子組成物は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上およびグラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。
【0034】
また、一実施形態による抗菌性高分子組成物は、特定の炭素数以上のアルキル基を有する4級アンモニウム塩を含有した繰り返し単位を含む高分子を抗菌剤として用いて、このような構造を有しないコーティング組成物とは異なり、時間が経過した後にもコーティング層から抗菌剤の溶出する現象が防止されて、抗菌性を持続的に示すだけでなく、人体に吸収されにくくて使用者の安定性の問題から自由であり得る。
【0035】
さらに、前記抗菌性高分子組成物は、特定量の親水性高分子を含むことで、多様な種類および形態の物品に容易に塗布できる程度の作業性を示しかつ、有機溶媒を使用しないので、環境にやさしいというメリットがある。
【0036】
以下、発明の具体的な実施形態により抗菌性高分子組成物および抗菌性物品についてより詳しく説明する。
【0037】
抗菌性高分子組成物
一実施形態の抗菌性高分子組成物は、親水性高分子;下記の化学式1で表される繰り返し単位を含む抗菌性高分子;および水を含む溶媒を含む:
【0038】
【0039】
前記化学式1において、
Lは、炭素数1~10のアルキレンであり、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
R4~R6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数である。
【0040】
まず、前記親水性高分子は、水に溶解できる高分子を総称するもので、前記親水性高分子内に含まれている親水性基によって水分子と容易に結合することができる。この時、前記親水性高分子の分子内に含まれる親水性基としては、ヒドロキシ基(-OH)、カルボニル基(-C(=O)-)、またはカルボキシル基(-COOH)などが挙げられる。前記抗菌性高分子組成物がこのような親水性高分子を含む場合、前記親水性高分子内に含まれている親水性基によってコーティング組成物のコーティングに適したチキソトロピー(thixotropy)が付与できる。
【0041】
また、前記親水性高分子は、水に溶解しやすいため、前記化学式1で表される繰り返し単位を含む抗菌性高分子との相溶性(compatibility)に優れることができる。さらに、前記親水性高分子内に含まれている親水性基と、前記抗菌性高分子内の窒素原子または酸素原子との水素結合が形成される。これによって、前記コーティング組成物によって形成された抗菌性コーティング層から抗菌性高分子が漏れ出る溶出が防止できる。
【0042】
この時、親水性高分子ではない他の高分子を用いる場合、コーティングのためには有機溶媒の使用を回避できないので、使用者にとって有機溶媒に露出する問題が発生しうるが、前記抗菌性高分子組成物の場合、ベースとして水を使用するため、環境にやさしい。また、親水性の抗菌高分子は、コーティング組成物が乾燥した後にも水によって溶解しやすいので、抗菌作用を完了した後に、必要時に形成されたコーティング層を基材から簡単に分離できる。
【0043】
前記親水性高分子は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より1種以上が選択されてもよい。特に、水に対する溶解度に優れて使用が便利であり、コーティング組成物の乾燥後に形成されたコーティング層がフィルムの形状をよく維持するという面から、ポリビニルアルコール(PVA)が前記親水性高分子として使用できるが、これに限定されるものではない。
【0044】
また、この時、親水性高分子は、100,000~500,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。前記高分子の分子量範囲を超える場合、水で容易に溶解せずコーティング液の製造が難しく、分子量が低い場合には、十分な粘度を形成できずコーティングが難しいことがある。例えば、前記親水性高分子の重量平均分子量(Mw、g/mol)は、100,000以上、150,000以上、または180,000以上かつ、500,000以下、400,000以下、300,000以下、または250,000以下であってもよい。この時、親水性高分子の重量平均分子量は、後述する抗菌性高分子と同様の方法で測定できる。
【0045】
このような親水性高分子は、前記抗菌性高分子組成物中に、前記抗菌性高分子組成物の総重量を基準として5重量%~50重量%含まれる。前記親水性高分子の含有量が低すぎると、十分な粘度を形成できずコーティング液を塗布できない問題があり、前記親水性高分子の含有量が高すぎると、高分子の粘度が急激に増加して溶液の流れ性が低下して、コーティング液の塗布が難しいことがある。例えば、前記親水性高分子は、前記抗菌性高分子組成物の総重量を基準として6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上かつ、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、または15重量%以下で含まれる。
【0046】
また、前記抗菌性高分子は、前記抗菌性高分子組成物中に、前記親水性高分子100重量部に対して、1重量部以上50重量部未満で含まれる。前記抗菌性高分子が組成物中に過度に少なく含まれる場合、十分な抗菌および消臭効果を示しにくく、前記抗菌性高分子が組成物中に過度に多く含まれる場合、成分を発生する微生物以外にも使用者の正常細胞にも危険を加えることがあるので、人体安定性の面から適合せず、組成物の粘度が増加して基材上に均一な厚さに容易に塗布されにくい。例えば、前記抗菌性高分子は、前記親水性高分子100重量部に対して、3重量部以上、5重量部以上、または7重量部以上かつ、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、または15重量部以下で含まれる。
【0047】
一方、前記抗菌性高分子の繰り返し単位に含まれている4級アンモニウム陽イオンは、主鎖に連結されたリンカー(L)と3個の末端基R4、R5およびR6置換基を有する。この時、リンカー(L)は、炭素数1~10の線状アルキレンであってもよい。より具体的には、Lは、炭素数1~5の線状アルキレン、例えば、メチレン、エチレンまたはプロピレンであってもよい。
【0048】
また、前記抗菌性高分子の4級アンモニウム陽イオンに置換された3個の末端基R4、R5およびR6置換基のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルである。より具体的には、R4、R5およびR6置換基のうちの1つは、炭素数5~20の線状、つまり、直鎖アルキルである。この時、R4、R5およびR6置換基のうちの1つが炭素数5個未満のアルキルの場合、抗菌性を示さない問題があり、炭素数20個超過のアルキルの場合、前記高分子製造のための出発物質が溶媒に溶解せず合成自体が不可能という面がある。
【0049】
さらに、前記化学式1において、R4~R6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであってもよい。
【0050】
より具体的には、R1は、水素、またはメチルであり、R2およびR3は、水素であり、R4~R6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであるか、または
R1~R3は、すべて水素であり、R4~R6のうちの1つは、炭素数5~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであってもよい。
【0051】
好ましくは、前記化学式1において、R4~R6のうちの1つは、炭素数10~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルである。このような抗菌性高分子が含まれている抗菌性高分子組成物は、より優れた抗菌特性を示すことができる。
【0052】
例えば、R1は、水素、またはメチルであり、R2およびR3は、水素であり、R4~R6のうちの1つは、炭素数10~20のアルキルであり、残りは、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであってもよい。このような構造の繰り返し単位を含む抗菌性高分子を含む抗菌性コーティング組成物は、前記抗菌性高分子組成物中に、前記抗菌性高分子を前記親水性高分子100重量部に対して3重量部~15重量部のように少ない含有量で含んでいても、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも1つ、より具体的には、グラム陽性菌およびグラム陰性菌のすべてに対して優れた抗菌性を示すことができる。
【0053】
また、前記抗菌性高分子内に含まれている前記化学式1で表される繰り返し単位は、最小10個以上、つまり、前記繰り返し単位の個数を意味するnが10以上でなければならず、最大10,000以下、つまり、nが10,000以下である。前記nが10未満の場合、抗菌高分子ではない抗菌単量体またはオリゴマー形態を有し、乾燥後に形成されたコーティング層から溶出しやすい問題があり、nが10,000超過の場合、コーティング液の粘度が大きく上昇してコーティングが不可能になりうるので適合しない。具体的には、nは、50以上、60以上、70以上、80以上、または90以上かつ、5,000以下、1,000以下、500以下、または300以下であってもよい。
【0054】
さらに、前記化学式1において、Xは、ハロゲンで、好ましくは、クロロ(Cl)またはブロモ(Br)であってもよい。
【0055】
そして、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記の化学式1-1~1-4のいずれか1つで表される:
【0056】
【0057】
前記化学式1-1において、
aは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数であり、
【0058】
【0059】
前記化学式1-2において、
bは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数であり、
【0060】
【0061】
前記化学式1-3において、
cは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数であり、
【0062】
【0063】
前記化学式1-4において、
dは、2~9の整数であり、
Xは、ハロゲンであり、
nは、10~10,000の整数である。
【0064】
好ましくは、前記化学式1-1~1-4において、aおよびbは、それぞれ独立して、3~8、または4~8の整数であってもよい。
【0065】
この時、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記の化学式1’で表される単量体化合物に由来できる。
【0066】
【0067】
前記化学式1’において、
各置換基の定義は、前記化学式1で定義した通りである。
【0068】
一方、前記抗菌性高分子は、下記の化学式2で表される繰り返し単位をさらに含むことができる:
【0069】
【0070】
前記化学式2において、
R’1~R’3は、それぞれ独立して、水素またはメチルであり、
mは、1以上の整数である。
【0071】
前記化学式2において、前記化学式2で表される繰り返し単位の個数を意味するmは、1以上、より具体的には1~2,000の整数であってもよい。上述した範囲を満足する場合、前記化学式2の官能基であるカルボキシル基(-COOH)が親水性高分子に存在するヒドロキシ基(-OH)と水素結合を効果的に形成して、抗菌性高分子の溶出がさらに防止できる。例えば、mは、10以上、100以上、300以上、または500以上かつ、2,000以下、1,800以下、または1,500以下であってもよい。
【0072】
例えば、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記の化学式2-1で表される:
【0073】
【0074】
前記化学式2-1において、
mは、1以上の整数である。
【0075】
この時、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記の化学式2’で表される単量体化合物に由来できる。
【0076】
【0077】
前記化学式2’において、
各置換基の定義は、前記化学式1で定義した通りである。
【0078】
これによって、一実施形態による前記抗菌性高分子は、前記化学式1で表される繰り返し単位のみを含む単一重合体(homopolymer)であるか、または前記化学式2で表される繰り返し単位をさらに含む共重合体(copolymer)であってもよい。この時、前記抗菌性高分子は、どのような構造を有しても、繰り返し単位が長い鎖で配列された構造を有する1次元の線状高分子(linear polymer)形態を有する。これは、繰り返し単位が別途に添加される架橋剤によって連結される3次元網状構造を有する網状高分子(network polymer)とは区分される。このような線状高分子形態の抗菌性高分子を用いる場合に、高分子の分子量調節が容易であり、抗菌高分子の粘度を容易に調節することができる。
【0079】
より具体的には、前記抗菌性高分子が単一重合体(homopolymer)の場合、前記高分子は、前記化学式1で表される繰り返し単位のみが連続的に連結された線状高分子であってもよい。
【0080】
具体的には、前記化学式1で表される繰り返し単位のみが連続的に連結された線状高分子は、前記化学式1’で表される単量体の重合によって製造され、重合時、別途の末端キャッピング剤を投入しなくてもよい。
【0081】
また、前記抗菌性高分子が共重合体(copolymer)の場合、前記高分子は、上記の化学式1で表される繰り返し単位と上記の化学式2で表される繰り返し単位とが線状に連結された下記の化学式3で表される構造を有することができるが、この時、前記抗菌性高分子は、前記繰り返し単位のブロックが共有結合によって連結されているブロックコポリマーであってもよく、あるいは前記繰り返し単位がランダムに配列されているランダムコポリマーであってもよい。
【0082】
【0083】
前記化学式3において、
各置換基に関する説明は、前記化学式1および2で定義した通りである。
【0084】
例えば、前記抗菌性高分子が共重合体(copolymer)の場合、前記抗菌性高分子は、下記の化学式3-1~3-4のいずれか1つで表される:
【化12】
【化13】
【0085】
前記化学式3-1~3-4において、
a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、2~9の整数であり、
nは、10~10,000の整数であり、
mは、1以上の整数である。
【0086】
また、前記抗菌性高分子が前記化学式3で表される共重合体の場合、前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位のモル比(つまり、n:m)は、1:0.01~1:100であってもよい。より具体的には、前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位のモル比は、1:0.1以上、1:1以上、1:2以上、または1:5以上かつ、1:50以下、1:40以下、1:30以下、または1:20以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
このような前記化学式1で表される繰り返し単位と前記化学式2で表される繰り返し単位のモル比は、上述した化学式1’で表される単量体および/または化学式2’で表される単量体の反応モル比を調節して調節可能である。
【0088】
また、前記抗菌性高分子は、重量平均分子量(Mw)が10,000~1,000,000g/molであってもよい。前記抗菌性高分子の重量平均分子量が10,000g/mol未満の場合、高分子の形態ではない単量体の形態で存在して溶出しやすく、低い分子量によって人体に吸収される問題が発生することがあり、前記抗菌性高分子の重量平均分子量が1,000,000g/molを超える場合、分子量が大きくなって粘度が高くて塗布が不可能であったり、または水に溶解しないことがある。より好ましくは、前記抗菌性高分子の重量平均分子量(Mw:g/mol)は、15,000以上、20,000以上、30,000以上、または40,000以上かつ、500,000以下、400,000以下、300,000以下、200,000以下、または150,000以下である。
【0089】
この時、前記抗菌性高分子の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン(PS)をCalibration用標準試料として用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。より具体的には、前記抗菌性高分子200mgを200mlのN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide)(DMF)溶媒に希釈して約1000ppmのサンプルを製造した後、Agilent 1200 series GPC機器を用いて1ml/min FlowでRI detectorにより重量平均分子量を測定できる。この時、サンプルの分子量は、標準PSスタンダード(Standard)8種を用いて検量線を作成した後、これを基準として算出される。
【0090】
一方、前記抗菌性高分子組成物に含まれている溶媒は、水を含む。より具体的には、前記溶媒は、エタノール、アセトン、またはイソプロピルアルコールをさらに含むことができる。例えば、前記抗菌性高分子組成物に含まれる溶媒は、水であるか、または水とエタノールとの混合物であってもよい。
【0091】
また、前記抗菌性高分子組成物は、前記親水性高分子100重量部対比、1~10重量部のグリセロールをさらに含むことができる。この時、グリセロールは、分子内のヒドロキシ基が3個存在する化合物で、前記抗菌性高分子組成物に含まれてコーティング液の乾燥後に形成されるフィルムの柔軟性を向上させることができる。
【0092】
また、前記抗菌性高分子組成物は、固形分の含有量が5~50重量%であってもよい。ここで、「固形分」とは、前記組成物中に揮発性成分を除いた成分を意味する。したがって、前記抗菌性高分子組成物に存在する固形分の含有量は、前記抗菌性高分子組成物の総重量から揮発性成分である溶媒の含有量を除いたものを意味し、溶媒を除いて親水性高分子および抗菌性高分子だけを含む場合、固形分の含有量は、親水性高分子と抗菌性高分子との重量の合計を意味する。この時、前記抗菌性高分子組成物の固形分の含有量が過度に低い場合、溶液の粘度が非常に低くて水のように流れることがあるのでコーティングが不可能であり、固形分の含有量が過度に高い場合、コーティング液の粘度が高くなって溶液の塗布が不可能になって適合しない。より具体的には、前記抗菌性高分子組成物の固形分の含有量は、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、または10.9重量%以上かつ、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、または15重量%以下であってもよい。
【0093】
また、前記抗菌性高分子組成物は、恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度が、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、1,000cP~10,000cPであってもよい。上述した粘度範囲を満足する場合に、コーティングしようとする基材上に容易に塗布できる程度の作業性が確保され、同時に溶媒の除去が容易であり得る。より具体的には、前記抗菌性高分子組成物の粘度は、上述した方法で測定時、1,100cP以上、1,200cP以上、1,300cP以上、1,400cP以上、1,500cP以上、1,600cP以上、1,700cP以上、1,800cP以上、1,900cP以上、2,000cP以上、2,100cP以上、2,200cP以上、2,300cP以上、2,400cP以上、または2,500cP以上かつ、8,000cP以下、7000cP以下、6,000cP以下、5,000cP以下、4,000cP以下、または3,000cP以下であってもよい。
【0094】
また、前記抗菌性高分子組成物は、銀化合物、銅化合物、亜鉛化合物およびこれらの組み合わせなどの金属化合物は含まない。このような化合物が含まれる場合、コーティング組成液の透明度が低下して最終コーティング層の透明度が低下し、機械的物性の弱化が起こることがある。
【0095】
一方、一実施形態による抗菌性高分子組成物は、
前記組成物の総重量を基準として、
前記親水性高分子;
前記親水性高分子100重量部に対して、1重量部以上50重量部未満の抗菌性高分子;および
最終固形分の含有量が5~50重量%となるようにする溶媒を含む。
【0096】
このような前記抗菌性高分子組成物は、前記親水性高分子および前記抗菌性高分子を最終固形分の含有量が5~50重量%となるように溶媒に溶解させて製造される。
【0097】
この時、前記溶媒に各成分を溶解させる工程は、約45℃~60℃の温度で60分~4時間、通常知られた撹拌機を用いて撹拌することによって行われる。
【0098】
また、前記抗菌性高分子組成物は、微生物、特にグラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに対して優れた抗菌効果を示すことができる。この時、前記抗菌性高分子組成物が抗菌性を示すグラム陰性菌は、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、または大腸菌(Escherichia coli)であり、前記グラム陽性菌は、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)であってもよいが、これに限定されるものではない。より好ましくは、前記抗菌性高分子組成物は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)のすべてに対して抗菌性を示すことができる。この時、抗菌性高分子組成物が抗菌性を示すとの意味は、前記抗菌性高分子組成物が基材にコーティングされた後に乾燥して形成された、つまり、前記コーティング組成物から溶媒が除去されて形成されたコーティング層が抗菌性を示すことを意味し、これは、後述する吸光度を用いた抗菌特性評価で測定される菌増殖抑制率が60%以上であることが確認可能である。
【0099】
ここで、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)は、グラム陰性(Gram negative)の桿菌、通性嫌気性または好気性細菌で、多様な環境に分布し、人と動物の呼吸器や皮膚に感染して泌尿系関連疾病を起すことがある。特に、人が前記プロテウスミラビリスに感染する場合、尿路感染や急性腎盂腎炎を起こすことが知られている。また、プロテウスミラビリスは、小便をアルカリ化してアンモニアが排出されるようにすることで臭いを誘発することがある。
【0100】
具体的には、前記抗菌性高分子組成物のプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)に対する抗菌性評価は、吸光度を用いて測定することができ、これによって測定された、下記の数式1によって計算される前記抗菌性高分子組成物のプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)に対する菌増殖抑制率は、60%以上であってもよい。
【0101】
【0102】
上記式中、Asは、実験群の吸光度で試料を投入したプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(E.coli)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)培養液の600nmの波長での吸光度であり、A0は、対照群の吸光度で試料を投入しないプロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis)純粋培養液の600nmの波長での吸光度を意味する。
【0103】
好ましくは、前記数式1によって計算される前記抗菌性高分子組成物のプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)に対する菌増殖抑制率は、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、または77%以上であり、100%以下、99.999%以下、99%以下である。
【0104】
前記抗菌性高分子組成物の大腸菌(E.coli)およびエンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)それぞれに対する抗菌性評価も、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)に対する抗菌性評価と同様の方法で行われる。
【0105】
したがって、一実施形態による抗菌性高分子組成物は、i)親水性高分子および特定構造の抗菌性高分子を同時に含みかつ、ii)この時、抗菌性高分子を親水性高分子に対する特定の重量比で含みかつ、iii)組成物中の固形分の含有量を特定水準に含むことで、基材上に均一な厚さに容易に塗布可能であり、これによって多様なバクテリアに優れた抗菌性を示しかつ、このような抗菌性が長い時間経過後にも維持可能であり、人体安定性の面でも適合する。
【0106】
抗菌性物品
一方、他の側面によれば、基材;および前記基材上の少なくとも一面に備えられたコーティング層を含み、前記コーティング層は、上述した抗菌性高分子組成物によって形成された抗菌性物品が提供される。
【0107】
前記基材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)などの高分子フィルムであってもよい。
【0108】
また、前記抗菌性物品は、抗菌性が要求される生活化学用品であれば、その種類に限定はないが、例えば、農業用フィルム、鮮度保持用材料、加工食品などの容器、電子部品包装材料などであってもよい。
【0109】
さらに、前記コーティング層は、10μm~100μmの厚さで備えられ、このようなコーティング層は、前記基材上の少なくとも一面に前記抗菌性高分子組成物を塗布した後、40℃~80℃の温度で60分~240分間乾燥することによって、薄膜コーティングして形成することができる。
【0110】
また、前記コーティング層は、必要な場合、前記基材から分離可能である。より具体的には、前記コーティング層は、乾燥が完了した後、フィルムの形状を維持できる。これによって、離型処理されたPETフィルムなどを基材として用いる場合、前記コーティング層は基材から分離できる。これは、上述した抗菌性高分子組成物の親水性高分子がフィルムの形状を維持させるため可能である。
【0111】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0112】
製造例A:抗菌性単量体1-1’の製造
【0113】
【0114】
250mlのフラスコに、アセトニトリル30ml、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート0.05mol、1-ブロモヘキサン(オクチルブロミド)0.05mol、p-メトキシフェノール4mgを投入した。以後、45℃でマグネチックバーを用いて24時間撹拌して、アミノ基にアルキル基を置換して4級アンモニウム塩を製造する反応を進行させた。24時間後、反応が完了した溶液をジエチルエーテル溶液200mlに入れて抽出を進行させた。以後、真空フィルタを用いて反応物をろ過し、残っているジエチルエーテルを完全に除去して、前記抗菌性単量体1-1’を製造した(15g、収率:75%)。
【0115】
MS[M+H]+ = 322
1H NMR (500MHz, DMSO-d6,δ[ppm]): 6.07, 5.76(R2,R3), 1.90(R1), 4.51, 3.70, 3.69(L), 3.09(R4,R6), 1.26, 0.87(R5)
【0116】
製造例B:抗菌性単量体1-2’の製造
【0117】
【0118】
前記製造例Aにおいて、ブロモヘキサン(bromohexane)の代わりにブロモドデカン(bromododecane)を用いたことを除けば、前記製造例Aと同様の方法を用いて前記抗菌性単量体1-2’を製造した(15g、収率:75%)。
【0119】
MS[M+H]+ = 406
1H NMR (500MHz, DMSO-d6,δ[ppm]): 6.07, 5.76(R2,R3), 1.90(R1), 4.51, 3.70, 3.69(L), 3.09(R4,R6), 1.26, 0.87(R5)
【0120】
製造例C:抗菌性単量体2-1’の製造
【0121】
【0122】
250mlのフラスコに、テトラヒドロフラン100ml、2-(ジブチルアミノ)エタノール0.1mol、トリエチルアミン0.1mol、ヒドロキノン0.11gを投入した。前記混合物を撹拌しながらアクリロイルクロライド(acryloyl chloride)0.1molを滴加した。以後、常温でマグネチックバーを用いて2時間撹拌した後、真空フィルタを用いて反応物をろ過し、残っている溶媒を完全に除去して、2-(ジブチルアミノ)エチルアクリレートを製造した。
【0123】
100mlのフラスコに、アセトニトリル10ml、2-(ジブチルアミノ)エチルアクリレート0.01mol、ブロモオクタン(bromooctane)0.01mol、p-メトキシフェノール2mgを投入した。以後、50℃でマグネチックバーを用いて20時間撹拌して、アミノ基にアルキル基を置換して4級アンモニウム塩を製造する反応を進行させた。反応が完了した混合物からヘキサン溶媒を用いて生成物を抽出し、回転蒸発器(rotary evaporator)で溶媒を除去して、前記抗菌性単量体2-1’を製造した(3.4g、収率:80%)。前記製造した抗菌性単量体2-1’のNMRデータ(
1H-NMR;CDCl
3)は
図1に示した。
【0124】
製造例D:抗菌性単量体2-2’の製造
【0125】
【0126】
前記製造例Cにおいて、ブロモオクタン(bromooctane)の代わりにブロモデカン(bromodecane)を用いたことを除けば、前記製造例Cと同様の方法を用いて前記抗菌性単量体2-2’を製造した(4.5g、収率:99%)。前記製造した抗菌性単量体2-2’のNMRデータ(
1H-NMR;CDCl
3)は
図2に示した。
【0127】
製造例E:抗菌性単量体2-3’の製造
【0128】
【0129】
前記製造例Cにおいて、ブロモオクタン(bromooctane)の代わりにブロモドデカン(bromododecane)を用いたことを除けば、前記製造例Cと同様の方法を用いて前記抗菌性単量体2-3’を製造した(4.4g、収率:93%)。前記製造した抗菌性単量体2-3’のNMRデータ(
1H-NMR;CDCl
3)は
図3に示した。
【0130】
製造例1:抗菌性高分子1-1の製造
【0131】
【0132】
250mlのフラスコに、エタノール10mlに製造例Aで製造した抗菌性単量体1-1’6gおよびアゾビスイソブチロニトリル2モル%を投入した。以後、78℃の温度でマグネチックバーを用いて8時間撹拌して重合反応を進行させた。以後、反応が完了した溶液を常温に冷却後、十分な量の水に溶解させた。溶解が完了すれば、NaClを過剰に添加して固体の重合物を抽出し、以後、真空フィルタを用いて反応物をろ過した後、真空オーブンに残っているエタノールと水を完全に除去して、最終的に高分子1-1を得た。
【0133】
この時、製造された高分子1-1は上述した繰り返し単位からなる単一重合体で、前記単一重合体の重量平均分子量は50,000g/molであり、nは156であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0134】
製造例2:抗菌性高分子1-2の製造
【0135】
【0136】
前記製造例1において、抗菌性単量体1-1’の代わりに製造例Bで製造した抗菌性単量体1-2’を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の方法を用いて前記抗菌性高分子1-2を製造した。
【0137】
この時、製造された高分子1-2は上述した繰り返し単位からなる単一重合体で、前記単一重合体の重量平均分子量は70,000g/molであり、nは172であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0138】
製造例3:抗菌性高分子2-1の製造
【0139】
【0140】
前記製造例1において、抗菌性単量体1-1’の代わりに製造例Cで製造した抗菌性単量体2-1’を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の方法を用いて前記抗菌性高分子2-1を製造した。
【0141】
この時、製造された高分子2-1は上述した繰り返し単位からなる単一重合体で、前記単一重合体の重量平均分子量は61,000g/molであり、nは147であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0142】
製造例4:抗菌性高分子2-2の製造
【0143】
【0144】
前記製造例1において、抗菌性単量体1-1’の代わりに製造例Dで製造した抗菌性単量体2-2’を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の方法を用いて前記抗菌性高分子2-2を製造した。
【0145】
この時、製造された高分子2-2は上述した繰り返し単位からなる単一重合体で、前記単一重合体の重量平均分子量は63,000g/molであり、nは142であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0146】
製造例5:抗菌性高分子2-3の製造
【0147】
【0148】
前記製造例1において、抗菌性単量体1-1’の代わりに製造例Eで製造した抗菌性単量体2-3’を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の方法を用いて前記抗菌性高分子2-3を製造した。
【0149】
この時、製造された高分子2-3は上述した繰り返し単位からなる単一重合体で、前記単一重合体の重量平均分子量は77,000g/molであり、nは163であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0150】
製造例6:抗菌性高分子3-1の製造
【0151】
【0152】
前記製造例1において、抗菌性単量体1-1’の代わりにアクリル酸:抗菌性単量体1-1’を10:1のモル比で水100重量部対比10重量部だけ投入した後、製造例1と同様の方法で前記構造を有する抗菌性高分子3-1を製造した。この時、製造された高分子は上述した繰り返し単位からなる共重合体で、重量平均分子量は100,000g/molであり、この時、nは96であり、mは960であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0153】
製造例7:抗菌性高分子3-2の製造
【0154】
【0155】
前記製造例6において、アクリル酸:抗菌性単量体1-1’の代わりにアクリル酸:抗菌性単量体1-2’を10:1のモル比で水100重量部対比10重量部だけ投入した後、製造例6と同様の方法で前記構造を有する抗菌性高分子3-2を製造した。この時、製造された高分子は上述した繰り返し単位からなる共重合体で、重量平均分子量は120,000g/molであり、この時、nは107であり、mは1070であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0156】
製造例8:抗菌性高分子4-1の製造
【0157】
【0158】
前記製造例6において、アクリル酸:抗菌性単量体1-1’の代わりにアクリル酸:抗菌性単量体2-1’を10:1のモル比で水100重量部対比10重量部だけ投入した後、製造例6と同様の方法で前記構造を有する抗菌性高分子4-1、重量平均分子量は163,000g/molであり、この時、nは38であり、mは380であった。この時、高分子の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに高分子を溶解して測定された。
【0159】
実施例-抗菌性高分子組成物の製造
実施例1-1
親水性高分子としてSigma-aldrich社製のポリビニルアルコール(PVA、重量平均分子量(Mw):200,000g/mol)100重量部と、抗菌性高分子として前記製造例1で製造した抗菌性高分子1-1を前記親水性高分子(a)100重量部対比10重量部を、60℃の最終固形分の含有量が10.9重量%となるように調節された含有量の水に投入し、前記高分子が十分に溶解するように磁力撹拌機(Hei-Tec、heidolph-instrument社製造)で6時間混合して、抗菌性高分子組成物を製造した。
【0160】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、1,500cPであった。
【0161】
実施例1-2
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子1-2を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0162】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、2000cPであった。
【0163】
実施例2-1
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子2-1を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0164】
実施例2-2
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子2-2を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0165】
実施例2-3
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子2-3を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0166】
実施例3-1
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子3-1を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0167】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、1500cPであった。
【0168】
実施例3-2
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子3-2を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0169】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、2500cPであった。
【0170】
実施例4-1
実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに抗菌性高分子4-1を用いたことを除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて抗菌性高分子コーティング液を製造した。
【0171】
比較例1
前記実施例1-1における抗菌性高分子1-1を用いないことを除けば、実施例1-1と同様の方法で高分子コーティング組成物(固形分含有量:10.9重量%)を製造した。
【0172】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、1300cPであった。
【0173】
比較例2
前記実施例1-1における抗菌性高分子を用いず、最終固形分の含有量が20重量%となるように水の含有量を調節したことを除けば、実施例1-1と同様の方法で高分子コーティング組成物を製造した。
【0174】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、36,000cPであった。
【0175】
比較例3
まず、前記製造例2と同様の方法で重量平均分子量が2,000g/molであり、nが5である単一重合体の低分子量抗菌性高分子LM-1-2を製造した。
【0176】
前記実施例1-1における抗菌性高分子1-1の代わりに前記で製造した低分子量抗菌性高分子LM-1-2を用いたことを除けば、実施例1-1と同様の方法で抗菌性高分子組成物(固形分含有量:10.9重量%)を製造した。
【0177】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、1,200cpであった。
【0178】
参照例1
前記実施例1-1における抗菌性高分子1-1の含有量をPVA100重量部に対して50重量部を用いかつ、最終固形分の含有量が実施例1-1と同様に10.9重量%となるように水の含有量を調節したことを除けば、実施例1-1と同様の方法で高分子コーティング組成物を製造した。
【0179】
製造されたコーティング組成物の恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件での粘度は、Brookfield DV2T LV TJ0モデル装置により、V-75 spindleで200rpmで測定時、300cPであった。
【0180】
実験例-抗菌特性評価
(1)抗菌性フィルムの製造
他に表記しない限り、下記の特性評価は恒温/恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で進行させた。
【0181】
前記実施例、比較例および参照例で製造した高分子コーティング組成物を、離型処理されたPETフィルム(R3300N、SKC社製造)基材上に、バーコーター(Bar coater)を用いて200μmの厚さとなるように塗布した後、80℃で240分間乾燥して、前記基材上の一面にコーティング層が形成された抗菌性フィルムをそれぞれ製造した。
【0182】
ただし、比較例2および参照例1の高分子コーティング組成物の場合、前記基材上にコーティングが不可能で、菌増殖抑制率および菌数を測定できなかった。
【0183】
(2)プロテウスミラビリスに対する抗菌性評価
前記で製造した抗菌性フィルムそれぞれに対して抗菌性評価を進行させた。具体的には、抗菌試験で下記の方法で菌増殖抑制率(%)を測定し、JIS Z2081の抗菌評価法を用いて菌数を確認した。
【0184】
試験バクテリアであるプロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis、ATCC29906)が3300CFU/mlで接種されたbroth type培地(Nutrient broth、BD DIFCO、8g/L)25mlを50mL コニカルチューブ(Conical tube)に移し入れた後、これに前記で製造した抗菌性フィルムをアルコールで消毒したはさみで適当に切断して0.1gを入れて、ボルテックス(vortexing)した。以後、シェーキングインキュベーター(shaking incubator)(VS-37SIF、ビジョンテック社製造)で35℃、16時間培養した。培養した溶液をUV-Vis Spectrophotometer(Optizen POP、K Lab社製造)を用いて600nmの波長の吸光度を測定した。また、抗菌性フィルムを投入しない純粋な培養液でプロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis、ATCC29906)を35℃、16時間培養した溶液を対照群として用意し、前記と同様の方法で600nmの波長の吸光度を測定した。測定結果を用いて、下記の数式1によりプロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis、ATCC29906)の菌増殖抑制率(%)を計算し、その結果を下記表1に示した。
【0185】
【0186】
上記式中、Asは、実験群の吸光度で試料を投入したプロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis)培養液の600nmの波長での吸光度であり、A0は、対照群の吸光度で試料を投入しないプロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis)純粋培養液の600nmの波長での吸光度を意味する。
【0187】
また、前記で製造した抗菌性フィルムそれぞれを5cm×5cmの大きさに切断した後、JIS Z2081の抗菌評価法を用いて実験を進行させた。具体的には、24時間培養された菌を順次に希釈して、固体アガー(Agar)培地に塗抹して現れる群集を通して菌数を確認し、その結果を表1に示した。
【0188】
【0189】
前記表1を参照すれば、実施例の抗菌性高分子組成物を用いて抗菌性フィルムを製造する場合、抗菌性高分子を含まない比較例1および2の抗菌性フィルムとは異なり、基材上に均一な厚さに容易に塗布可能であると同時に、形成されたコーティング層がグラム陰性菌のプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)に対して60%以上の優れた菌増殖抑制率を示すことが分かる。
【0190】
また、抗菌性高分子を親水性高分子に対して特定の含有量以上含む組成物を用いて製造された参照例1の抗菌性フィルムは、基材上に組成物の均一な塗布が実質的に不可能で菌増殖抑制率および菌数を測定できなかった。これは、たとえ、参照例1の組成物が実施例1-1と固形分含有量は同一であるが、親水性高分子の重量対比の抗菌性高分子の含有量が過度に高くて組成物中の親水性高分子の含有量が低くなり、粘度が低くコーティングするのに適したレオロジー特性を示すことができないためと判断される。
【0191】
(3)抗菌剤溶出実験
前記実施例1-2の抗菌性コーティング組成物によってコーティング層が形成された抗菌性フィルム、および前記比較例3の抗菌性コーティング組成物によってコーティング層が形成された抗菌性フィルムそれぞれを5cm×5cmの大きさに切断した後、上述した方法で菌増殖抑制率を測定し、これを初期菌増殖抑制率(T0)とした。以後、それぞれの抗菌性フィルムを35℃、相対湿度90%の条件が形成された培養器(IB-05G、Jeio tech社製造)に入れた後、24時間経過した後に取り出して、同様の方法で菌増殖抑制率を測定し、これを菌増殖抑制率(T1)とした。これに基づいて、下記の数式2により菌増殖抑制率変化量(%)を計算した後、その結果を下記表2に示した。
【0192】
【0193】
【0194】
前記表2を参照すれば、前記実施例1-2の抗菌性コーティング組成物によってコーティング層が形成された抗菌性フィルムは、前記比較例3の抗菌性コーティング組成物によってコーティング層が形成された抗菌性フィルムに比べて、高温条件下でも抗菌剤の流出が少なくて抗菌特性が低下しないことが分かる。これによって、前記化学式1で表される繰り返し単位を特定数以上含む高分子量の抗菌性高分子を用いる実施例の抗菌性コーティング組成物を用いる場合、低い分子量の抗菌性高分子を用いる比較例3とは異なり、時間が経過しても抗菌剤溶出現象が防止されて、持続的に抗菌性を示す抗菌層の製造が可能であることを確認可能である。
【0195】
(4)大腸菌に対する抗菌性評価
前記実施例で製造した抗菌性高分子組成物の大腸菌に対する抗菌特性を知るために、前記プロテウスミラビリスに対する抗菌性評価において、プロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis、ATCC7002)が3000±300CFU/mlで接種されたbroth type培地の代わりに大腸菌(E.coli、ATCC25922)が105±1000CFU/mlで接種されたbroth type培地を用いたことを除けば、前記プロテウスミラビリスに対する抗菌性評価と同様の方法を用いて大腸菌(E.coli、ATCC25922)の菌増殖抑制率(%)を計算し、その結果を下記表3に示した。
【0196】
(5)エンテロコッカスフェカリスに対する抗菌性評価
前記実施例で製造した抗菌性高分子組成物のエンテロコッカスフェカリスに対する抗菌特性を知るために、前記プロテウスミラビリスに対する抗菌性評価において、プロテウスミラビリス(Proteus Mirabilis、ATCC7002)が3000±300CFU/mlで接種されたbroth type培地の代わりにエンテロコッカスフェカリス(E.faecalis、ATCC29212)が3000±300CFU/mlで接種されたbroth type培地を用いたことを除けば、前記プロテウスミラビリスに対する抗菌性評価と同様の方法を用いてエンテロコッカスフェカリス(E.faecalis、ATCC29212)の菌増殖抑制率(%)を計算し、その結果を下記表3に示した。
【0197】
【0198】
前記表3を参照すれば、前記実施例の抗菌性コーティング組成物によってコーティング層が形成された抗菌性フィルムは、グラム陰性菌の大腸菌およびグラム陽性菌のエンテロコッカスフェカリスに対しても優れた抗菌性を示すことが分かる。
【0199】
これによって、特定構造の4級アンモニウム塩部分を有する繰り返し単位を含む高分子が含まれている上述した抗菌性高分子組成物を用いて、グラム陽性菌およびグラム陰性菌のすべてに対して抗菌性を示しかつ、抗菌剤の溶出なしに抗菌性が持続するコーティング層の製造が可能であることを確認した。