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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20240422BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20240422BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240422BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240422BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240422BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F220/06
C08F2/44 B
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
B01J20/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023515175
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2021019249
(87)【国際公開番号】W WO2022131838
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178431
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180490
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジヘ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】テビン・アン
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252080(JP,A)
【文献】特開2002-265528(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117541(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0318793(US,A1)
【文献】国際公開第2012/033025(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08J 99/00
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
C08F 2/00-2/60
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む粉末形態のベース樹脂;および
前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記高吸水性樹脂は、
i)300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ下記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.9以下であり、
ii)24.0℃での吸収速度(vortex time)が60秒以下である、
高吸水性樹脂:
[式1]
凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲
前記式1において、
前記膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、
前記実際の粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。
【請求項2】
前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP241.3の方法により測定した遠心分離保水能(CRC)が27g/g以上であり、EDANA法WSP242.3の方法により測定した0.7psiの加圧吸収能(AUP)が23.5g/g以上である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記高吸水性樹脂は複数の気孔を含み、前記複数の気孔は平均直径が10μm~400μmである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記高吸水性樹脂は0.2μm~50μmの平均粒径を有する疎水性粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記疎水性粒子は疎水性シリカ、炭素数7~24の脂肪酸の金属塩および疎水性有機粒子で構成される群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載の高吸水性樹脂。
【請求項6】
前記炭素数7~24の脂肪酸の金属塩はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カリウムで構成される群より選ばれる1種以上のステアリン酸の金属塩である、請求項5に記載の高吸水性樹脂。
【請求項7】
酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階(段階1);
疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階2);
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階(段階3);および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成して、高吸水性樹脂を製造する段階(段階4)を含み、
前記疎水性粒子水分散液は0.2μm~50μmの平均粒径を有する疎水性粒子が分散しているコロイド溶液であり、
前記高吸水性樹脂は、
i)300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ下記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.9以下であり、
ii)24.0℃での吸収速度(vortex time)が60秒以下である、
高吸水性樹脂の製造方法:
[式1]
凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲
前記式1において、
前記膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、
前記実際の粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。
【請求項8】
前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~5重量部で使用される、請求項7に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記炭酸塩系発泡剤は炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesiumbicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)で構成される群より選ばれる1種以上である、請求項7または8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子は1:0.1~1:4の重量比で使用される、請求項7から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記疎水性粒子水分散液は界面活性剤の存在下で前記疎水性粒子として炭素数7~24の脂肪酸の金属塩が分散しているコロイド溶液である、請求項7から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を含む、請求項11に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年12月18日付韓国特許出願第10-2020-0178431号および2021年12月16日付韓国特許出願第10-2021-0180490号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。より具体的には、高い縦横比値を有し、かつ吸収速度および吸収性能に優れた高吸水性樹脂およびそれを製造できる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは、自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有した合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で名付けられている。前記のような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は主におむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で広く使用されている。前記衛生材内で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に拡がった状態で含まれることが一般的である。ところが、最近では、より薄い厚さのおむつなど衛生材を提供するための努力が続けられており、その一環としてパルプの含有量が減少するか、延いてはパルプが全く使用されないいわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このようにパルプの含有量が減少するか、またはパルプが使用されていないパルプレスおむつなどの衛生材において、高吸水性樹脂は小便などの液体を吸収する吸収体の役割だけでなく、パルプの役割もまた行わなければならないので、高い吸収性能だけでなく速い吸収速度を示すことが求められる。
【0006】
このような吸収速度が向上した高吸水性樹脂の製造のためには高吸水性樹脂に気孔構造を導入して比表面積を向上させる方法が主に使用される。具体的には、高吸水性樹脂の比表面積を向上させるために、重合段階で発泡剤を使用して気泡を発生させるかまたは二酸化炭素ガス、空気、または窒素ガスなどの気体を注入することができる。しかし、気泡は中和溶液内で不安定であるので、このような気泡を捕獲できる気泡安定剤を使用しない場合、気泡が中和溶液の外に抜け出て、気孔構造を有する高吸水性樹脂の製造が不可能である。また、前記気泡安定剤を過量に使用する場合は高吸水性樹脂の諸般物性が低下するという問題があった。
【0007】
そのため、高吸水性樹脂の基本的な吸収性能を維持しながらも、速い吸収速度を示す高吸水性樹脂の開発が引き続き要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、粒子の縦横比(Aspect ratio)が一定水準以上であり、かつ粗度(Roughness)が大きくて向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、
酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む粉末形態のベース樹脂;および
前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記高吸水性樹脂は、
i)300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ下記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.9以下であり、
ii)24.0℃での吸収速度(vortex time)が60秒以下である、
高吸水性樹脂を提供する:
[式1]
凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲
前記式1において、
前記膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、
前記実際の粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。
【0010】
また、本発明は、
酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階(段階1);
疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階2);
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階(段階3);および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成して、高吸水性樹脂を製造する段階(段階4)を含み、
前記疎水性粒子水分散液は0.2μm~10μmの平均粒径を有する疎水性粒子が分散しているコロイド溶液であり、
製造された高吸水性樹脂が、
i)300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ前記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.9以下であり、
ii)24.0℃での吸収速度(vortex time)が60秒以下である
高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高吸水性樹脂によれば、粒子の縦横比(Aspect ratio)の平均値が0.75以上で球形に近い形状を有しながらも表面の粗度(Roughness)が大きくて凸性(convexity)の平均値が0.9以下である粒子からなり、向上した吸収速度を示すことができる。また、このような高吸水性樹脂は所定の平均粒径を有する疎水性粒子を水分散液形態で投入して製造されるが、このような水分散された特定の大きさの疎水性粒子の使用によって生成される二酸化炭素を効果的に捕集することができ、高吸水性樹脂の表面に小さくて均一な大きさの気孔を形成させて比表面積を増加させることができ、そのため、生成される高吸水性樹脂の吸収速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で製造した高吸水性樹脂に対するSEMイメージに係る図である。
図2】比較例1で製造した高吸水性樹脂に対するSEMイメージに係る図である。
図3】比較例2で製造した高吸水性樹脂に対するSEMイメージに係る図である。
図4】Malvern Panalytical社のmorphologi 4でのSample Dispersion UnitのSetting値を示す図である。
図5】Malvern Panalytical社のmorphologi 4でのIllunination Setting値を示す図である。
図6】Malvern Panalytical社のmorphologi 4でのOptics Selection Setting値を示す図である。
図7】Malvern Panalytical社のmorphologi 4でのScan Area Setting値を示す図である。
図8】Malvern Panalytical社のmorphologi 4でのParticle Filtering Setting値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0015】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0016】
本発明の明細書に使用される用語の「重合体」、または「高分子」は水溶性エチレン系不飽和単量体であるアクリル酸系単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のもので含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と指称し、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と指称することができる。
【0017】
また、用語の「高吸水性樹脂粒子」は酸性基を含み前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体単量体が重合されて内部架橋剤によって架橋した架橋重合体を含む、粒子状の物質を指す。
【0018】
また、用語の「高吸水性樹脂」は文脈によって酸性基を含み前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合された架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適する状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。したがって、用語の「高吸水性樹脂」はすなわち、複数の高吸水性樹脂粒子を含むものとして解釈されることができる。
【0019】
また、気孔の「平均直径」という用語は高吸水性樹脂に含まれた複数の気孔それぞれの最長直径値に対する中央値(median)を意味する。これは、単なる平均値(average)に比べて外れ値(outlier)の影響を少なくするためである。
【0020】
速い吸収速度を有する高吸水性樹脂を製造するためには高吸水性樹脂粒子内の比表面積が増加しなければならない。そのため、比表面積が高い高吸水性樹脂の実現のために製造工程中に発泡工程を誘導して高吸水性樹脂内に多数の気孔を形成させる方法または機械的に高吸水性樹脂を変形させる方法が使用されてきた。特に、発泡メカニズムをどのように調節するかによって形成される発泡の大きさが変わり、これにより粉砕後の最終粒子の形状が変わり、比表面積増加のためには同じ粒子の大きさでは縦横比が小さいことが有利である。しかし、縦横比がある水準以下に小さくなると、吸収速度は速くなるが保水能および加圧吸水能などの他の物性バランスが悪化する。したがって、一定水準以上の粒子の縦横比を達成しながらも、粒子の比表面積が広くなる発泡メカニズムを実現しなければならない。
【0021】
そこで、本発明者らは高吸水性樹脂の粒子が球形に近いながらも、すなわち、一定水準以上の縦横比を有しながらも、粒子表面に効果的な大きさの気孔を形成することによって粒子表面の粗度を増大させて比表面積を同時に広げる場合、高吸水性樹脂の吸収速度および吸収性能を同時に向上させ得ることを確認して本発明を完成した。
【0022】
より具体的には、吸収速度および吸収性能に影響を及ぼす高吸水性樹脂粒子の形状を数値化するために鋭意努力した結果、高吸水性樹脂粒子が球形に近い形態であるかを判断できるパラメータとして縦横比(Aspect ratio)を考慮し、高吸水性樹脂粒子表面の粗度を判断できるパラメータとして凸性(convexity)を考慮し、かつこれらパラメータそれぞれが特定水準以上の値を有するようにする場合、高吸水性樹脂が速い吸収速度および向上した保水能と加圧吸水能のバランスを示し得ることを確認した。
【0023】
このような高吸水性樹脂は通常使用される気泡安定剤の代わりに疎水性粒子が含まれている水分散液を気泡安定剤として使用して製造されることができる。具体的には、0.2μm~50μmの平均粒径を有する疎水性粒子を水分散液の形態で単量体の重合段階で投入する場合、別途の気泡安定剤の投入がなくとも水分散した疎水性粒子がシード(seed)の役割をして気泡を効果的に捕集して大きさが小さくて均一な形態の気孔が架橋重合体全領域に均一に分布した気孔構造を有する高吸水性樹脂の製造が可能である。
【0024】
より具体的には、一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、2種の疎水性粒子を粉末形態で使用せず、それぞれ「疎水性粒子水分散液」の形態で、すなわち、それぞれの疎水性粒子が沈殿するか凝集せず安定するように分散しているコロイド溶液の形態で単量体組成物に投入される。これは疎水性粒子を粉末形態で単量体組成物に投入して重合工程を行う場合、水溶液形態である単量体組成物に疎水性粒子が分散せず沈殿して発生する気泡を効果的に安定化させることができないからである。
【0025】
また、疎水性粒子は水分散液内で後述する界面活性剤などの分散安定剤により粒子間の凝集なしに安定して分散することができる。具体的には、前記分散安定剤は前記疎水性粒子表面に電気二重層(electric double layer)を形成して粒子間の静電気的な反発力(electrostatic repulsive force)を誘導して前記疎水性粒子を安定化させることもでき、または前記疎水性粒子の表面に吸着して粒子間の立体反発力(steric repulsive force)を誘導して粒子が互いに凝集することを防止することもできる。反面、前記疎水性粒子水分散液にこのような分散安定剤が含まれていない場合、前記疎水性粒子が互いに凝集するか、または重力によって沈む現象が引き起こされて疎水性粒子の分散の安定化が行われない。そのため、重合段階で分散安定剤を含んでいない疎水性粒子水分散液を発泡剤とともに使用する場合、気泡を効果的に捕集できず、高吸水性樹脂内に気孔形成が不可能であるので、高吸水性樹脂の吸収速度が改善されにくいという問題がある。
【0026】
一方、一実施形態による高吸水性樹脂粒子の形状を示す各パラメータについて説明すると、下記のとおりである。
【0027】
先に、前記縦横比(Aspect ratio)は粒子が規則的対称性を有するかどうかを判断するためのパラメータであり、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味し、「粒子の最短直径/粒子の最長直径」により計算することができる。この時、粒子の最長直径は粒子の中心を通る長軸を意味し、粒子の最短直径は前記長軸に直交して粒子の中心を通る短軸を意味する。
【0028】
したがって、前記縦横比が1に近いほど粒子は球形または正六面体のように規則的対称性を有すると見ることができ、縦横比が1から離れるほど粒子は針形状または楕円のように一つの軸に沿って異なるサイズを有すると見ることができる。
【0029】
この時、前記縦横比の平均値は測定機器内で真空により任意の方法でステージ(stage)上に散布された後に測定され、n数200個以上を確保してこれを平均した統計的な結果により導き出される。
【0030】
また、前記凸性(convexity)は粒子輪郭(outline)および粒子の表面粗さを測定するためのパラメータであり、下記式1によって計算される:
【0031】
[式1]
凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲
【0032】
前記式1において、
膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、
前記粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。
【0033】
したがって、前記凸性の値は0~1値を有するが、凸性が1に近いほど粒子は非常に滑らかな輪郭を有すると見ることができ、凸性が0に近いほど粒子は粗いかまたは凹凸が多い輪郭を有すると見ることができる。
【0034】
この時、前記凸性の平均値もまた、前記縦横比の平均値と同様に測定機器内で真空によって任意の方法でステージ(stage)上に散布された後に測定され、n数200個以上を確保してこれを平均した統計的な結果により導き出される。
【0035】
このようなパラメータは粒子のイメージ分析に基づいて粒子のモルフォロジー(morphologi)を定量化して分析する多様な商業的機器を用いて測定することができる。一例として、前記パラメータはMalvern Panalytical社のmorphologi 4で測定されるが、具体的には下記の4段階により測定することができ、これについては後述する実験例でより詳細に説明する。
【0036】
1)試料準備:高吸水性樹脂の粒子のうち粒径が300μm~600μmの粒子をRetsch社の分級機を用いて1.0amplitudeで1分間分級して試料を準備する。この時、高吸水性樹脂粒子の粒径は欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association,EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法に従って測定することができる。
2)映像取得:準備された試料を装置内のステージ(stage)にセッティングした後2.5倍率でスキャンして個別粒子の映像を取得する。
3)映像処理:取得された映像に対して各粒子に対する3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージ、CE直径(Circle Equivalent diameter)、最短直径、最長直径、実際の粒子の周囲および膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)などの媒介変数値を測定する。
4)各粒子に対して分析したデータに基づいて試料に含まれた粒子全体に対する媒介変数に対する分布度を導き出す。
【0037】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂および高吸水性樹脂の製造方法について各段階別により詳細に説明する。
【0038】
高吸水性樹脂
一実施形態による高吸水性樹脂は、酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む粉末形態のベース樹脂;および前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む。
【0039】
上述した高吸水性樹脂は300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ前記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.90以下である。前記高吸水性樹脂内の300μm~600μmの粒径を有する粒子の縦横比の平均値が0.75未満の場合、粒子は球形形態を有することができず、吸収速度は速いが、下記式2で表示される保水能と加圧吸水能のバランスが低下する恐れがあり、前記高吸水性樹脂内の300μm~600μmの粒径を有する粒子の凸性(convexity)の平均値が0.9超である場合、粒子内の気孔構造が発達しないかあるいは滑らかな表面を有するようになって高吸水性樹脂の吸収速度が低下する問題がある。したがって、前記高吸水性樹脂内の300μm~600μmの粒径を有する粒子が0.75以上の縦横比の平均値を有し、同時に0.90以下の凸性の平均値を満たす場合に吸収速度と吸収性能の間のバランスに優れた高吸水性樹脂の実現が可能である。
【0040】
より具体的には、例えば、上述した高吸水性樹脂は300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した粒子の縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値は0.75以上であり、かつ0.90以下、0.85以下、または0.80以下であり得る。また、上述した高吸水性樹脂は300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した粒子の凸性(convexity)の平均値が0.7以上、0.8以上、または0.85以上であり、かつ0.9以下であり得る。
【0041】
また、上述した高吸水性樹脂は24.0℃での吸収速度(vortex time)が60秒以下である。より具体的には、前記吸収速度(vortex time)は50秒以下、48秒以下、46秒以下、または45秒以下であり得る。また、前記吸収速度はその値が小さいほど優れ、前記吸収速度の下限は理論上0秒であるが、一例として10秒以上、または20秒以上、30秒以上、または35秒以上であり得る。この時、前記高吸水性樹脂の吸収速度を測定する方法は後述する実験例でより具体的に説明する。
【0042】
一方、前記アクリル酸系単量体は下記化学式1で表される化合物である:
【0043】
[化学式1]
-COOM
【0044】
前記化学式1において、
は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0045】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体はアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0046】
ここで、前記アクリル酸系単量体は酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性により調節されることができる。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われず、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことができる。
【0047】
前記アクリル酸系単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度にすることができる。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると、高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が生じ得、逆に濃度が過度に高くなると単量体の一部が析出されたり重合された含水ゲル重合体の粉砕時の粉砕効率が低く現れるなど工程上問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0048】
また、本明細書で使用する用語の「内部架橋剤」は後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別するために使用する用語であり、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割をする。前記段階での架橋は表面または内部を区別せずに行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合、最終的に製造された高吸水性樹脂の粒子表面は表面架橋剤によって架橋した構造で形成されており、内部は前記内部架橋剤によって架橋した構造からなっている。
【0049】
前記内部架橋剤としては前記アクリル酸系不飽和単量体の重合時に架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物も使用可能である。具体的には、前記内部架橋剤としては前記アクリル酸系不飽和単量体の水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有し、かつエチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解によって形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0050】
非制限的な例として、前記内部架橋剤はN,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤を単独使用または2以上を併用することができ、これらに制限されるものではない。
【0051】
好ましくは、前記内部架橋剤としてはこの中でポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、またはポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート系化合物を使用することができる。これは前記のような内部架橋剤使用時に後述する炭酸塩系発泡剤による発泡が容易に行われるからである。
【0052】
このような内部架橋剤の存在下での前記水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合は、重合開始剤、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの存在下で熱重合、光重合または混成重合により行われることができるが、具体的な内容は後述する。
【0053】
また、前記高吸水性樹脂は前記ベース樹脂の表面の少なくとも一部に、表面架橋剤を媒介に前記ベース樹脂内に含まれた架橋重合体が追加架橋して形成された表面架橋層をさらに含む。これは高吸水性樹脂の表面架橋密度を高めるためのものであり、上記のように高吸水性樹脂が表面架橋層をさらに含む場合、内部より外部の架橋密度が高い構造を有する。
【0054】
前記表面架橋剤としては従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特に制限なくすべて使用することができる。例えば、前記表面架橋剤は多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ポリアミン化合物、ハロエポキシ化合物、ハロエポキシ化合物の縮合産物、オキサゾリン系化合物およびアルキレンカーボネート系化合物で構成される群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0055】
具体的には、前記多価アルコール系化合物としてはモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、または1,2-シクロヘキサンジメタノールなどを使用することができる。
【0056】
また、前記多価エポキシ系化合物としてはエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはグリシドールなどを使用することができる。
【0057】
また、前記ポリアミン化合物としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、またはポリアミドポリアミンなどを使用することができる。
【0058】
また、前記ハロエポキシ化合物としてはエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンまたはα-メチルエピクロロヒドリンなどを使用することができる。
【0059】
また、オキサゾリン系化合物としてはモノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノンなどを使用することができる。
【0060】
そして、アルキレンカーボネート化合物としてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはグリセロールカーボネートなどを使用することができる。
【0061】
より具体的には、前記表面架橋剤として上述した表面架橋剤の一つを単独で使用するか、または互いに組み合わせて使用することができる。一例として、前記表面架橋剤としてエチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物を使用することができる。
【0062】
また、前記高吸水性樹脂は疎水性粒子を含むことができる。ここで、疎水性粒子とは水に対する接触角が50°以上であるか、または水に溶けない水不溶性(water-insoluble)粒子を意味する。水に対する接触角が50°未満である粒子および水溶性(water-soluble)粒子は水溶液形態である単量体組成物に溶解することができ、重合工程で発生する気泡を捕獲する役割をすることが難しいことに対して、疎水性粒子は中和液の内部で疎水性を帯びる二酸化炭素などの気泡と中和液の間の界面に位置するようになって気泡を効果的に捕獲した後安定化させることができる。
【0063】
したがって、前記疎水性粒子は水に対する接触角が50°以上である。より具体的には、前記疎水性粒子は水に対する接触角が70°以上、100°以上、120°以上、または150°以上であり、かつ175°以下であり得る。
【0064】
この時、前記疎水性粒子の接触角はそれぞれ次のような方法で測定されることができる。先に、前記疎水性粒子を5重量%の濃度でメチレンクロリド溶媒に分散させたコート液を製造する。次に、このようなコート液を表面粗さがないウエハにスピンコーティングした後常温に乾燥して残っている溶媒を除去した後、このようなコート層上に水を滴下(dropwise)で落として接触角を測定し、これを各疎水性粒子の接触角と定義する。
【0065】
また、前記疎水性粒子は0.2μm~50μmの平均粒径を有するが、前記疎水性粒子の平均粒径が0.2μm未満である場合、製造工程中に発生する気泡を効果的に捕集することが難しいため均一な気孔が作られない問題があり、前記疎水性粒子が50μm超過の平均粒径を有する場合、作られる気孔大きさが過度に大きくなって高吸水性樹脂の吸収速度を向上させにくい。具体的には、例えば、前記疎水性粒子は平均粒径(μm)が0.5以上、1以上、2以上、または4以上であり、かつ40以下、35以下、または30以下であり得る。
【0066】
ここで、前記疎水性粒子の平均粒径はD50を意味し、前記「粒径Dn」は、粒径による粒子個数累積分布のn%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は粒径による粒子個数累積分布の50%地点での粒径であり、D90は粒径による粒子個数累積分布の90%地点での粒径を、D10は粒径による粒子個数累積分布の10%地点での粒径である。前記Dnはレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えばMicrotrac S3500)に導入して粒子がレーザービームを通過する時粒子の大きさによる回折パターンの差異を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の10%、50%および90%になる地点での粒子直径を算出することによって、D10、D50およびD90を測定することができる。
【0067】
このような疎水性粒子は疎水性シリカ、炭素数7~24の脂肪酸の金属塩および疎水性有機粒子で構成される群より選ばれる1種以上であり得る。
【0068】
ここで、疎水性シリカは表面にシラノール(-SiOH)の含有量が少なくて水に対する接触角が50°以上であるシリカを総称するものであり、当該技術分野に知られている疎水性シリカを制限なく使用することができる。
【0069】
また、炭素数7~24の脂肪酸の金属塩とは、分子内の炭素数が炭素数7~24個であり、かつ線状構造を有する不飽和または飽和脂肪酸末端のカルボキシル基の水素イオンの代わりに金属陽イオンが結合された化合物を指すものであり、この時、金属塩は1価金属塩または2価以上の多価金属塩であり得る。この時、前記疎水性粒子が炭素数7未満の脂肪酸の金属塩である場合、水溶液状態でイオン化されて粒子形態で発生する気泡を捕集できず、前記疎水性粒子が炭素数24超過の脂肪酸の金属塩である場合、脂肪酸の鎖(chain)が長くなって分散が難しい。
【0070】
具体的には、前記脂肪酸の金属塩が1価金属塩である場合は1価の金属陽イオンであるアルカリイオンに1個の脂肪酸カルボキシレート陰イオンが結合されている構造を有する。また、前記脂肪酸の金属塩が2価以上の多価金属塩である場合には金属陽イオンに金属陽イオンの原子価(valance)個数の脂肪酸カルボキシレート陰イオンが結合された構造を有する。
【0071】
一実施形態で、前記疎水性粒子は炭素数12~20の飽和脂肪酸の金属塩であり得る。例えば、前記疎水性粒子は分子内の炭素数12個を含むラウリン酸の金属塩;分子内の炭素数13個を含むトリデシル酸の金属塩;分子内の炭素数14個を含むミリスチン酸の金属塩;分子内の炭素数15個を含むペンタデカン酸の金属塩;分子内の炭素数16個を含むパルミチン酸の金属塩;分子内の炭素数17個を含むマルガリン酸の金属塩;分子内の炭素数18個を含むステアリン酸の金属塩;分子内の炭素数19個を含むノナデシル酸の金属塩;および分子内の炭素数20個を含むアラキジン酸の金属塩で構成される群より選ばれる1種以上の飽和脂肪酸の金属塩であり得る。
【0072】
好ましくは、前記脂肪酸の金属塩はステアリン酸金属塩であり得るが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カリウムで構成される群より選ばれる1種以上のステアリン酸の金属塩であり得る。
【0073】
また、疎水性有機粒子はエチレン重合体、プロピレン重合体、スチレン重合体、ブタジエン重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アルキルアクリレート重合体、アルキルメタアクリレート重合体、アルキルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-アルキルアクリレート-スチレン共重合体、アルキルメタアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体およびアルキルアクリレート-アルキルメタアクリレート共重合体で構成される群より選ばれる1種以上の疎水性高分子粒子であり得る。
【0074】
また、前記高吸水性樹脂は複数の気孔を含み、前記複数の気孔の平均直径は10μm~400μmであり得る。前記高吸水性樹脂の気孔の平均直径が過度に小さいか、または過度に大きい場合は高吸水性樹脂の比表面積が十分に確保できず吸収速度の向上を期待し難い。この時、前記高吸水性樹脂内に含まれた気孔構造は後述するように発泡剤によって発泡されたガスを捕獲する役割をする水分散された疎水性粒子の種類によって変わり得る。
【0075】
具体的には、前記高吸水性樹脂が疎水性粒子としてステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびステアリン酸カリウムなどのステアリン酸の金属塩を含む場合、前記高吸水性樹脂に含まれた複数の気孔の平均直径は60μm~200μmであり得る。
【0076】
また、前記高吸水性樹脂が疎水性粒子として疎水性シリカを含む場合、前記高吸水性樹脂に含まれた複数の気孔の平均直径は100μm~400μmであり得る。
【0077】
このような気孔の平均直径は前記疎水性粒子の水分散液を使用して高吸水性樹脂を製造することにより、高吸水性樹脂の表面に均一な直径、例えば、10μm~400μm、あるいは50μm~300μm、あるいは150μm~220μmの均一な直径を有する気孔が均一に形成されることで達成されることができる。
【0078】
反面、前記高吸水性樹脂がこのような疎水性粒子を使用しないか、従来の気泡安定剤として使用される界面活性剤の種類を使用するか、または疎水性シリカを粉末形態として使用する場合、上述した範囲より大きくて均一でない気孔が形成されて好ましくない。
【0079】
この時、前記高吸水性樹脂内の気孔の平均直径は測定しようとする高吸水性樹脂粒子の内部構造を電子顕微鏡(SEM;倍率:X50またはX200)で観察して確認することができる。より具体的には、高吸水性樹脂粒子内に含まれた粒子それぞれの最長直径を測定した後、測定された粒子の最長直径に対する中央値(median)を平均直径として求めることができる。この時、一つの高吸水性樹脂サンプルに対して300個以上の気孔に対して直径測定後の平均直径を求めることが好ましい。
【0080】
また、前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP241.3の方法により測定した遠心分離保水能(CRC)が27g/g以上であり、EDANA法WSP242.3の方法により測定した0.7psiの加圧吸収能(AUP)が23.5g/g以上であり得る。
【0081】
具体的には、前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP241.3の方法により測定した遠心分離保水能(CRC)が27g/g以上、または27.5g/g以上であり、かつ34g/g以下、または33g/g以下であり得る。
【0082】
また、前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP242.3の方法により測定した0.7psiの加圧吸収能(AUP)が23.5g/g以上、または24g/g以上であり、かつ28g/g以下、または27g/g以下であり得る。
【0083】
一方、このような前記高吸水性樹脂は約150~約850μmの粒径を有する粒子を総重量を基準として90重量%以上含み得、このような高吸水性樹脂粒子の粒径は欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association, EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法に従って測定することができる。
【0084】
高吸水性樹脂の製造方法
一方、前記高吸水性樹脂は酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階(段階1);第1疎水性粒子水分散液、第2疎水性粒子水分散液、および発泡剤または気泡発生器の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階2);前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階(段階3);および表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階(段階4)を含んで製造されることができ、ここで、疎水性粒子水分散液は0.2μm~50μmの平均粒径を有する疎水性粒子が分散しているコロイド溶液であり、製造される高吸水性樹脂は上述した縦横比、凸性および吸収速度値を満たす。また、前記疎水性粒子に係る説明は前述する内容を参照する。
【0085】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法について各段階別により具体的に説明する。
【0086】
(段階1)
一実施形態による製造方法で、前記段階1は酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階である。前記でアクリル酸系単量体および内部架橋剤に係る説明は上述する内容を参照する。
【0087】
前記単量体組成物で、このような内部架橋剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~5重量部で使用することができる。例えば、前記内部架橋剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部、または0.45重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.7重量部以下で使用することができる。上部内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらず適正水準以上の強度の実現が難しく、上部内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の実現が難しい。
【0088】
また、前記単量体組成物は前記単量体の重合反応を開始するための重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては高吸水性樹脂の製造に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。
【0089】
具体的には、前記重合開始剤は重合方法により熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0090】
前記光重合開始剤は紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用することができる。
【0091】
前記光重合開始剤としては例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、すなわち、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年))p.115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0092】
前記光重合開始剤は前記単量体組成物に対して約0.01~約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0093】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K )、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」,p.203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0094】
前記熱重合開始剤は前記単量体組成物に対して約0.001~約0.5重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず熱重合開始剤の追加による効果が微小であり、熱重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0095】
このような重合開始剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して2重量部以下で使用することができる。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存単量体が多量抽出され得るので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0096】
前記単量体組成物は必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0097】
そして、前記単量体を含む単量体組成物は、例えば、水などの溶媒に溶解した溶液状態であり得、このような溶液状態の単量体組成物中の固形分含有量、すなわち単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は重合時間および反応条件などを考慮して適宜調節することができる。例えば、前記単量体組成物内の固形分含有量は10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であり得る。
【0098】
前記単量体組成物が前記のような範囲の固形分含有量を有する場合、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を用いて重合後の未反応単量体を除去する必要が無いようにしながらも、後述する重合体の粉砕時の粉砕効率を調節するために有利である。
【0099】
この時使用できる溶媒は上述した成分を溶解できればその構成の限定なく使用することができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどより選ばれた1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
(段階2)
次に、疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階が行われる。前記段階で炭酸塩系発泡剤から二酸化炭素気泡が発生するようになり、このような気泡を水分散した疎水性粒子が効果的に捕集して製造された含水ゲル重合体の比表面積が増加し得る。
【0101】
前記疎水性粒子はそれぞれ水分散液内に前記水分散液総重量を基準として10~70重量%で含まれている。前記疎水性水分散液内に前記疎水性粒子の含有量が過度に低い場合、粒子間の引力(attraction force)が低くなって分散安定性は良くなるが、高吸水性樹脂の製造時に多量投入しなければならないという問題があり、前記疎水性水分散液内に前記疎水性粒子の含有量が過度に高い場合、粒子間の凝集により分散安定性が低下する問題が発生し得る。
【0102】
一方、前記疎水性粒子はそれぞれ界面活性剤、高分子などの粒子表面を囲む分散安定剤によって水分散液に均一に分散している。前記界面活性剤は主に前記疎水性粒子表面に電気二重層(electric double layer)を形成して粒子間の静電気的な反発力(electrostatic repulsive force)を誘導して前記疎水性粒子を安定化させて疎水性粒子の分散安定性を向上させることができる。そして、前記高分子は前記疎水性粒子の表面に吸着して粒子間の立体反発力(steric repulsive force)を誘導して粒子が互いに凝集することを防止することによって疎水性粒子の分散安定性を向上させることができる。
【0103】
例えば、前記界面活性剤としてカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤で構成される群より選ばれる1種以上の界面活性剤を使用することができる。好ましくは、前記疎水性粒子の分散の安定化の側面で2種以上の界面活性剤を使用することができる。より具体的には、前記疎水性粒子として、例えば、上述した脂肪酸の金属塩が含まれる場合、その形態などを考慮して、このような疎水性粒子をより効果的に水分散および分散安定化させるために、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤、例えば、炭素数10以上の長鎖炭化水素が結合された非イオン性界面活性剤および硫酸塩系またはリン酸塩系アニオン性界面活性剤を共に分散安定剤として使用することができる。
【0104】
一例として、前記カチオン性界面活性剤としてはジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩などが挙げられ、前記アニオン性界面活性剤としては脂肪酸アルコールポリエテノキシエーテルのナトリウム硫酸塩などのアルキルポリオキシエチレン硫酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナトリウムピロリン酸塩またはナトリウムホスフェート三量体などのモノアルキルリン酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウムまたはラウレス硫酸ナトリウムなどの長鎖炭化水素またはその塩含有官能基を有する硫酸塩などが挙げられ、前記両性界面活性剤はアルキルスルホベタイン、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられ、前記非イオン性界面活性剤としてはスチレン-マレイン酸無水物共重合体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ステアリルポリエテノキシエーテルなどのポリオキシエチレン-脂肪酸エーテル、ポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリソルベート、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリグリセロールモノラウレート、ポリエチレングリコールラウレートまたはグリセリンモノステアレートなどの脂肪酸エステル、アルキルモノグリセリルエーテル、アルカノールアミド、アルキルポリグルコシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
また、前記分散安定剤として使用される高分子としてはポリアルキレングリコール、ポリエチレンイミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリールアミド、またはポリビニルピロリドンなどを使用することができる。
【0106】
一方、前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~5重量部で使用される。前記疎水性粒子水分散液の含有量が過度に低い場合、発生する気泡を効率的に捕集できず、前記疎水性粒子水分散液の含有量が過度に高い場合、過度に多い気泡を捕集してバルク密度(Bulk Density)が低くなる。具体的には、前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上、または0.07重量部以上であり、かつ3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.5重量部以下で使用することができる。
【0107】
また、前記炭酸塩系発泡剤は重合時に発泡が起こり含水ゲル重合体内の気孔を形成して表面積を増やす役割をし、一例として炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesiumbicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)で構成される群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0108】
前記炭酸塩系発泡剤は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.005~1重量部で使用することができる。前記発泡剤の含有量が0.005重量部未満の場合は発泡剤としての役割が微小であり、前記発泡剤の含有量が1重量部を超える場合は架橋重合体内気孔が過度に多くて製造される高吸水性樹脂のゲル強度が落ちて密度が小さくなって流通と保管に問題を招く。例えば、前記炭酸塩系発泡剤は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上であり、かつ0.5重量部以下、0.3重量部以下、または0.2重量部以下であり得る。
【0109】
また、このような炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子水分散液は1:0.1~1:4の重量比で使用することができる。前記疎水性粒子水分散液が前記炭酸塩系発泡剤に比べて過度に低い含有量で使用される場合、発生する気泡を効果的に捕集することが難しく、発泡剤に比べて過度に高い含有量で使用される場合、保水能および吸収速度などの諸般物性が低下し得る。具体的には、前記炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子は1:0.4以上、1:0.6以上、または1:0.8以上であり、かつ1:1.7以下、1:1.5以下、または1:1.2以下の重量比で使用することができる。一例として、前記炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子は1:1の重量比で使用することができる。
【0110】
また、前記段階1および段階2で通常気泡安定剤として使用されるアルキルスルフェート系化合物およびポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物などの界面活性剤は使用されない。例えば、前記段階1および段階2でドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、ラウリル硫酸アンモニウム(ammonium lauryl sulfate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulfate)、またはミレス硫酸ナトリウム(sodium myreth sulfate)などのアニオン性界面活性剤であるアルキルスルフェート系化合物や、またはポリオキシエチレンラウリルエーテルのような非イオン性界面活性剤であるアルキルエーテルスルフェート系化合物は使用されない。そのため、前記界面活性剤の使用により高吸水性樹脂の表面張力が低くなる問題が防止されることができる。
【0111】
一方、このような疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下での単量体組成物の重合は、通常使用される重合方法であれば特に構成の限定はない。
【0112】
具体的には、重合方法は重合エネルギ源により大きく熱重合および光重合に分かれ、通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行うことができ、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行うことができるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0113】
一例として、前述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給するか反応器を加熱して熱重合をして得られた含水ゲル重合体は反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器排出口に排出される含水ゲル重合体は数センチメートルないし数ミリメートル形態であり得る。具体的には、得られる含水ゲル重合体の大きさは注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様に現れるが、通常重量平均粒径が2~50mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0114】
また、前述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有したシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄いほど単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合は過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均一に起きない。
【0115】
この時、このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は約40~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体での「含水率」は全体重合体重量に対して占める水分の含有量であり、重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値であると定義する。この時、乾燥条件は常温で約180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含む20分に設定して、含水率を測定する。
【0116】
(段階3)
次に、前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階が行われる。必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経る。
【0117】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0118】
前記含水ゲル重合体のゲル粉砕は、前記含水ゲル重合体の粒径が0.01mm~50mm、あるいは0.01mm~30mmになるように行われることができる。すなわち、乾燥効率の増大のために前記含水ゲル重合体は50mm以下の粒子で粉砕されることが好ましい。しかし、過度な粉砕時に粒子間凝集現象が発生し得るので、前記含水ゲル重合体は0.01mm以上の粒子にゲル粉砕されることが好ましい。
【0119】
上記のように粉砕されるか、あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約150~約250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面だけ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生し得、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは前記乾燥は約150~約200℃の温度で、さらに好ましくは約160~約180℃の温度で行うことができる。
【0120】
一方、乾燥時間は工程効率などを考慮して、約20~約90分間行うが、これに限定されない。
【0121】
前記乾燥段階の乾燥方法は含水ゲル重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は約5~約10重量%であり得る。
【0122】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0123】
粉砕段階後に得られる重合体粉末であるベース樹脂は粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0124】
そして、このような粉砕段階後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られるベース樹脂を粒径により分級する。好ましくは粒径が約150~約850μmである重合体を分級し、このような粒径を有するベース樹脂に対してのみ表面架橋反応段階を経ることができる。
【0125】
(段階4)
一方、上述した分級工程までを経てベース樹脂粉末を製造した後には、表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理しながら表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成することができる。前記表面架橋は表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂粉末の表面に架橋反応を誘導することで、このような表面架橋により前記ベース樹脂粉末の表面には表面改質層(表面架橋層)が形成されることができる。
【0126】
前記表面架橋剤の含有量は具体的に追加される表面架橋剤の種類や反応条件によって適宜選択できるが、ベース樹脂100重量部に対して、約0.001~約5重量部を使用することができる。前記表面架橋剤の含有量が過度に低くなると、表面改質がきちんと行われず、最終樹脂の物性が低下し得る。逆に過量の表面架橋剤が使用されると過度な表面架橋反応により樹脂の基本的な吸収性能がかえって低下し得るので好ましくない。
【0127】
前記表面架橋剤をベース樹脂に混合する方法についてはその構成の限定はない。表面架橋剤とベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋剤を噴射する方法、連続して運転されるミキサーにベース樹脂と表面架橋剤を連続して供給して混合する方法などを用いることができる。
【0128】
前記表面架橋剤の添加時、水を共に混合して表面架橋溶液の形態で添加することができる。水を添加する場合、表面架橋剤が重合体に均一に分散できる利点がある。この時、追加される水の含有量は表面架橋剤の均一な分散を誘導して重合体粉末の固まる現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透の深さを最適化するための目的で、前記ベース樹脂100重量部に対して、約1~約10重量部の割合で添加されることが好ましい。
【0129】
そして、上述した表面架橋段階は前記表面架橋剤の他に多価金属塩、例えば、アルミニウム塩、より具体的にはアルミニウムの硫酸塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩および塩酸塩からなる群より選ばれた1種以上をさらに使用して行うことができる。
【0130】
このような多価金属塩は追加で使用するにつれ、一実施形態の方法で製造された高吸水性樹脂の通液性などをより向上させることができる。このような多価金属塩は前記表面架橋剤とともに表面架橋溶液に添加され得、前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.01~4重量部の含有量で使用することができる。
【0131】
一方、前記表面架橋工程は上述した表面架橋剤などと共に、液相媒質として水および/または親水性有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系極性有機溶媒)を含む表面架橋液を使用して行うことができる。この時、水および親水性有機溶媒の含有量は表面架橋液の均一な分散を誘導してベース樹脂粉末の固まる現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透の深さを最適化するための目的でベース樹脂粉末100重量部に対する添加比率を調節して適用することができる。
【0132】
上述した表面架橋液をベース樹脂粉末に添加する方法についてもその構成の特別な限定はない。例えば、表面架橋液と、ベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋液を噴射する方法、連続して運転されるミキサーにベース樹脂粉末と表面架橋液を連続して供給して混合する方法などを用いることができる。
【0133】
具体的には、前記表面架橋は前記表面架橋液が添加されたベース樹脂粉末を20℃~130℃の初期温度で10分~30分にわたって140℃~200℃の最高温度に昇温し、前記最高温度を5分~60分間維持して熱処理することによって行うことができる。より具体的には、140℃~200℃、または170℃~195℃の最高温度を5分~60分、または10分~50分間維持して熱処理することによって行うことができる。
【0134】
このような表面架橋工程条件(特に、昇温条件および反応最高温度での反応条件)を満たすことにより一実施形態の物性を適切に満たす高吸水性樹脂がより効果的に製造されることができる。
【0135】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用できるが、これに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。上記のように前記ベース樹脂の表面に表面架橋層を形成した後に、追加的に無機物をさらに混合することができる。
【0136】
前記無機物は例えば、シリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、およびチタニアからなる群より選ばれた1種以上を使用することができ、好ましくはシリカを使用することができる。
【0137】
このような無機物は前記高吸水性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、かつ5重量部以下、または3重量部以下、または1重量部以下の含有量で使用することができる
【0138】
上述した製造方法により得られた高吸水性樹脂は保水能と加圧吸収能などの吸収性能に優れて維持され、より向上した吸収速度などを満たし、一実施形態の諸般物性を満たすことができ、おむつなど衛生材、特に、パルプの含有量が減少した超薄型衛生材などを適宜使用することができる。
【0139】
本発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0140】
<製造例>
以下実施例で使用された疎水性粒子水分散液は下記のような方法で製造された。
【0141】
製造例1:ステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の製造
先に、高剪断ミキサー(high shear mixer)に2種以上の界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤および硫酸塩系アニオン性界面活性剤含む)が含有された水50gを入れて165℃まで昇温させた後ステアリン酸カルシウム粉末50gを投入した。次に、ステアリン酸カルシウムが十分に粉砕されるように常圧で4000rpmで30分間攪拌して、平均粒径が5μmであるステアリン酸カルシウムが50重量%分散した水分散液Ca-st(5)を得た。この時、前記水分散液のpHは9.5であった。また、前記Ca-st(5)の製造後、その平均粒径(D50)はレーザ回折粒度測定装置(Microtrac S3500)を用いて、粒子個数累積分布の50%地点の粒径で測定/算出した。
【0142】
製造例2:ステアリン酸マグネシウム水分散液Mg-st(5)の製造
先に、高剪断ミキサー(high shear mixer)に2種以上の界面活性剤(硫酸塩系アニオン性界面活性剤および脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤含む)が含有された水50gを入れて150℃まで昇温させた後ステアリン酸マグネシウム粉末50gを投入した。次に、ステアリン酸マグネシウムが十分に粉砕されるように常圧下で4000rpmで30分間攪拌して、平均粒径が5μmであるステアリン酸マグネシウムが50重量%分散した水分散液Mg-st(5)を得た。この時、前記水分散液のpHは9であり、Mg-st(5)の平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0143】
製造例3:ステアリン酸ナトリウム水分散液Na-st(5)の製造
先に、高剪断ミキサー(high shear mixer)に2種以上の界面活性剤(硫酸塩系アニオン性界面活性剤および脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤含む)が含有された水50gを入れて常温でステアリン酸ナトリウム粉末50gを投入した。次に、ステアリン酸ナトリウムが十分に粉砕されるように常圧下で2000rpmで5分間攪拌して、平均粒径が5μmであるステアリン酸ナトリウムが50重量%分散した水分散液Na-st(5)を得た。この時、前記水分散液のpHは9であり、Na-st(5)の平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0144】
製造例4:ステアリン酸カリウム水分散液K-st(5)の製造
先に、高剪断ミキサー(high shear mixer)に2種以上の界面活性剤(硫酸塩系アニオン性界面活性剤および脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤含む)が含有された水50gを入れて100℃まで昇温させた後ステアリン酸カリウム粉末20gを投入した。次に、ステアリン酸カリウムが十分に粉砕されるように常圧下で4000rpmで30分間攪拌して、平均粒径が5μmであるステアリン酸カリウムが29重量%分散した水分散液K-st(5)を得た。この時、前記水分散液のpHは9であり、Na-st(5)の平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0145】
製造例5:疎水性シリカ水分散液の製造
高剪断ミキサー(high shear mixer)に水100gを入れた次に5000rpmで攪拌しながら、平均粒径が10μmであり、水に対する接触角が130°である疎水性シリカが最終水分散液総重量を基準として2重量%になるように分散させながら徐々に投入した。前記シリカが完全に添加されると、45℃の温度で8000rpmで30分間攪拌した。この時、前記水分散液のpHは9であり、疎水性シリカの平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0146】
製造例6:疎水性シリカ水分散液の製造
前記製造例5で平均粒径が20μmであり、水に対する接触角が130°である疎水性シリカを最終水分散液総重量を基準として2重量%になるように投入したことを除いては、製造例5と同様の方法で疎水性シリカ水分散液を製造し、疎水性シリカの平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0147】
製造例7:疎水性シリカ水分散液の製造
前記製造例5で平均粒径が30μmであり、水に対する接触角が130°である疎水性シリカを最終水分散液総重量を基準として2重量%になるように投入したことを除いては、製造例5と同様の方法で疎水性シリカ水分散液を製造し、疎水性シリカの平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0148】
<実施例>
実施例1
(段階1)攪拌機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸100g、内部架橋剤であるPEGDA 400(ポリエチレングリコールジアクリレート400)の0.5g、光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.01gを添加して溶解させた後、22%水酸化ナトリウム溶液890gを添加して単量体組成物を製造した。
【0149】
(段階2)前記単量体組成物にステアリン酸カルシウムがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるように前記製造例1で製造したステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)を添加して、また、炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウム(SBC)0.1gを添加した。その後、前記単量体組成物を幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。そして、前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cmの強度を有する紫外線を照射して60秒間重合反応を行って、含水率が55重量%であるシート状の含水ゲル重合体を得た。
【0150】
(段階3)の次にシート状の含水ゲル重合体を約5cm×5cmの大きさに切った後、ミートチョッパー(meat chopper)に投入して重合体を粉砕して1mm~10mm大きさを有する含水ゲル粒子粉(crumb)を得た。その後、前記粉(crumb)を上下に風量転移が可能なオーブンで乾燥させた。180℃以上のホットエア(hot air)を15分間下方から上方に、再び15分間上方から下方に流れるようにして均一に乾燥させ、乾燥後乾燥体の含水量は2%以下になるようにした。乾燥後、粉砕機で粉砕した後分級して150~850μmの大きさを選別してベース樹脂を準備した。
【0151】
(段階4)製造されたベース樹脂粉末100重量部に、エチレンカーボネート3重量部を含む表面架橋剤水溶液6重量部を噴射して常温で攪拌してベース樹脂粉末上に表面架橋液が均一に分布するように混合した。次に、表面架橋液と混合されたベース樹脂粉末を表面架橋反応器に入れて表面架橋反応を行った。
【0152】
このような表面架橋反応器内で、ベース樹脂粉末は80℃近傍の初期温度で徐々に昇温することが確認され、30分経過後に190℃の反応最高温度に到達するように操作した。このような反応最高温度に到達した後に、15分間追加反応させた後最終的に製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。前記表面架橋工程後、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂を製造した。
【0153】
実施例2
実施例1で疎水性粒子水分散液としてステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、前記製造例2で製造したステアリン酸マグネシウムがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるようにステアリン酸マグネシウム水分散液Mg-st(5)を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0154】
実施例3
実施例1で疎水性粒子水分散液としてステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、前記製造例3で製造したステアリン酸ナトリウムがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるようにステアリン酸ナトリウム水分散液Na-st(5)を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0155】
実施例4
実施例1で疎水性粒子水分散液としてステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、前記製造例4で製造したステアリン酸カリウムがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるようにステアリン酸カリウム水分散液K-st(5)を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0156】
実施例5
実施例1で疎水性粒子水分散液としてステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、前記製造例5で製造した平均粒径が10μmである疎水性シリカがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるように疎水性シリカ水分散液を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0157】
実施例6
実施例1で疎水性粒子水分散液としてステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、前記製造例6で製造した平均粒径が20μmである疎水性シリカがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるように疎水性シリカ水分散液を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0158】
実施例7
実施例1で疎水性粒子水分散液としてステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、前記製造例7で製造した平均粒径が10μmである疎水性シリカがアクリル酸100gに対して0.1g添加されるように疎水性シリカ水分散液を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0159】
比較例1
実施例1で疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤をいずれも使用しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0160】
比較例2
実施例1で疎水性粒子水分散液を使用しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0161】
比較例3
実施例1ステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st(5)の代わりに、25wt%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液(Sigma Aldrich社製)0.02gを投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0162】
比較例4
実施例1で疎水性粒子水分散液形態のCa-st(5)の代わりに、粉末形態の平均粒径5μmを有するステアリン酸カルシウムをアクリル酸100gに対して0.1g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。ただし、粉末形態のステアリン酸カルシウムが単量体組成物に分散できず中和液の上に浮遊することを確認することができた。
【0163】
実験例1:高吸水性樹脂の気孔大きさの測定
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂の気孔構造を確認するために、SEM(Scanning Electron Microscope、製品名:JCM-6000,製造会社:JEOL)機器を用いて高吸水性樹脂粒子の内部イメージを20~24倍率で撮影した。具体的には、下記のような方法で高吸水性樹脂の気孔の大きさを測定し、測定したイメージのうち実施例1、比較例1および比較例2に対するイメージをそれぞれ図1~3に示した。
【0164】
1)先に、実施例および高吸水性樹脂をRetsch社の粒子分級機を用いて1.0amplitudeで1分間分級して600μm~710μmの粒径を有する個別粒子として粒子の損傷なく分離した試料2gを準備した。
2)その後、準備された試料粒子を任意に配列してSEM stageに入れた。
3)の次に、SEM stage内に任意に配列されている試料粒子をカーボンテープ(carbon tape)で固定させて、20~24倍率で高吸水性粒子表面に形成された気孔の大きさを測定した。この時、平均1千個以上の高吸水性樹脂粒子を対象にするが、そのうち、気孔がくっきりと見える300個以上の粒子の気孔の大きさを測定した。ここで、「気孔がくっきりと見えるもの」の基準は気泡が球形に形成されることを仮定すると、粉砕過程を経て高吸水性樹脂粒子表面に概ね半球の形状になるときに最もくっきりと見えると判断する。
4)次に、最終的に測定された300個以上の粒子の気孔の大きさを得て統計的に中央値で平均直径を求めてその結果を表1に示した。この時、気孔の大きさの分布を確認するために四分位数範囲を使用したが、これは測定者および外れ値(outlier)による測定誤差を排除するためである。
【0165】
図1~3を参照すると、実施例1の高吸水性樹脂は比較例2および3の高吸水性樹脂とは異なり、直径が150~220μmである複数の気孔が均一に形成されていることを確認することができる。
【0166】
実験例2:高吸水性樹脂の物性測定
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂について、次のような方法で物性を評価して下記表1に示した。
【0167】
特記しない限り、下記物性評価はすべて常温(25℃)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0168】
また、下記物性評価で使用した水道水はOrion Star A222(会社:Thermo Scientific)を用いて測定した時、電気伝導度が170~180μS/cmであるものを使用した。
【0169】
(1)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下の吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3により測定した。
【0170】
具体的には、高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を用いず同じ操作をした後にその時の質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0171】
[数式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0172】
(2)加圧吸収能(AUP:Absorbtion Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸収能を、EDANA法WSP242.3により測定した。
【0173】
具体的には、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400mesh金網を取り付けた。常温および湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W(g)(0.90g)を均一に散布して、その上に0.3psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径60mmより若干小さく円筒の内壁との間隙がなくて上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0174】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せて、液を荷重下で1時間の間吸収させた。1時間後測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0175】
得られた各質量を用いて次の式により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【0176】
[数式2]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0177】
(3)吸収速度(Vortex time)
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂の吸収速度(vortex time)を下記のような方法で測定した。
【0178】
(i)先に、平底の100mLのビーカーに100mLのメスシリンダ(Mass Cylinder)を用いて50mLの0.9%塩水を入れた。
(ii)次に、前記ビーカーがマグネチック攪拌機の中央に位置するように置いた後、前記ビーカーの中に円形マグネチックバー(直径30mm)を入れた。
(iii)その後、前記マグネチックバーが600rpmで攪拌するように攪拌機を作動させて、攪拌によってできた渦流(vortex)の最下部分が前記マグネチックバーの上に位置するようにした。
(iv)ビーカー内の塩水温度が24.0℃になったことを確認した後2±0.01gの高吸水性樹脂試料を投入しながら同時にストップウォッチを作動させて、渦流が消えて液表面が完全に水平になるまでの時間を秒単位で測定し、これを吸収速度とした。
【0179】
(4)高吸水性樹脂粒子の形状パラメータ測定
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂について下記のような方法によってMalvern Panalytical社のmorphologi 4で縦横比(Aspect ratio)および凸性(convexity)を測定した。
【0180】
(i)試料準備:先に、高吸水性樹脂をRetsch社の粒子分級機を用いて1.0amplitudeで1分間分級して300μm~600μmの粒径を有する個別粒子で粒子の損傷なく分離した試料1gを準備した。このときのSample Dispersion UnitのSetting値を示すと図4のとおりである。
(ii)映像取得:準備された試料を装置内のステージ(stage)にセッティングした後2.5倍率でスキャンして個別粒子の映像を取得した。この時、Illunination Setting値およびOptics Selection Setting値を示すとそれぞれ図5および図6のとおりである。
(iii)映像処理:取得された映像に対して各粒子に対する3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージ、CE直径(Circle Equivalent diameter)、最短直径、最長直径、実際の粒子の周囲および膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)などの媒介変数値を測定した。この時、Scan Area Setting値およびParticle Filtering Setting値を示すと、それぞれ図7および図8のとおりである。
(iv)各粒子に対して分析したデータに基づいて試料に含まれた粒子全体に対する媒介変数に対する分布度を導き出した。
【0181】
【表1】
【0182】
前記表1に示す通り、疎水性粒子水分散液の存在下で単量体の重合反応を行った実施例の高吸水性樹脂の場合、比較例の高吸水性樹脂とは異なり、含まれた粒子の縦横比の平均値が0.75以上であり、同時に凸性平均値が0.90以下であり、小さくて均一な大きさの気孔が分布した構造を有することがわかる。そのため、実施例の高吸水性樹脂は比較例の高吸水性樹脂に対して改善された吸収能および顕著に向上した吸収速度を示すことが確認される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8