(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240422BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240422BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20240422BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B24B47/22
B24B49/12
(21)【出願番号】P 2020111522
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 芳昌
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087141(JP,A)
【文献】特開2015-088515(JP,A)
【文献】特開2010-082644(JP,A)
【文献】特開2019-136765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 47/22
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に設定されている複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域の各々にデバイスが設けられている板状の被加工物の該表面側を保持した状態で該被加工物を加工する加工装置であって、
一面と、該一面とは反対側に位置する他面と、を含み、該一面から該他面まで透明材で形成されている所定の領域を有する板状の保持部材を有し、該被加工物の該表面側を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルで該表面が保持された該被加工物を加工して、該被加工物に加工溝を形成する加工ユニットと、
第1の撮像素子を有し、該チャックテーブルの上方に配置され、該チャックテーブルで保持された該被加工物の裏面側を撮像する第1の撮像ユニットと、
第2の撮像素子を有し、該チャックテーブルの下方に配置され、該第1の撮像ユニットで撮像する領域と該被加工物の厚さ方向で対応する領域において該被加工物の該表面側を、該保持部材を介して撮像する第2の撮像ユニットと、
該第1の撮像ユニット及び該第2の撮像ユニットの少なくともいずれかで取得した該被加工物の画像を表示する表示装置と、
画像処理を実行するプログラムが記憶された記憶装置と、該プログラムに従って画像を処理する処理装置と、を有し、該第1の撮像ユニットの焦点位置を該被加工物の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて該加工溝を撮像することで得られる第1の画像群のうち該加工溝の形状を示す第1の画像情報と、該第2の撮像ユニットの焦点位置を該被加工物の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて該加工溝を撮像することで得られる第2の画像群のうち該加工溝の形状を示す第2の画像情報と、の少なくともいずれかを該被加工物の厚さ方向に沿って並べることにより、該加工溝の3次元画像を作成して該表示装置に表示させる制御部と、
を備え
、
該制御部は、該第1の画像情報と、該第2の画像情報との両方を、該被加工物の厚さ方向に沿って並べることにより、該加工溝の3次元画像を作成することを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側にデバイスが形成された被加工物の当該表面側を保持した状態で、被加工物の裏面側を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される半導体デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状のウェーハ(被加工物)を加工することで製造される。被加工物の表面には複数の分割予定ラインが設定されており、複数の分割予定ラインで区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイスが形成されている。
【0003】
被加工物からデバイスチップを製造するためには、例えば、被加工物の裏面側を研削することにより被加工物を所定の厚さに薄化した後、被加工物を各分割予定ラインに沿って切削することにより、被加工物をデバイス単位に分割してデバイスチップを製造する。
【0004】
被加工物を切削する切削工程では、スピンドルの一端に切削ブレードが装着された切削ユニットと、被加工物を吸引して保持するチャックテーブルと、を備える切削装置が使用される。通常の切削工程では、まず、被加工物の表面側を上向きにし、被加工物の裏面側をチャックテーブルで吸引して保持する。
【0005】
裏面側を保持した後、チャックテーブルの上方に設けられている第1のカメラで被加工物の表面側を撮像することによりアライメントを行う。第1のカメラは、被写体を可視光で撮像するためのCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を有する。
【0006】
第1のカメラで、アライメントマーク等が形成されている被加工物の表面側を撮像した結果に基づいて、被加工物の位置補正等のアライメントを行う。アライメント後に、各分割予定ラインに沿って切削ブレードで被加工物を切削する。
【0007】
しかし、近年、デバイスの多様化に伴い、被加工物の裏面側から被加工物を切削する場合がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、被加工物の表面側が下向きに配置されてチャックテーブルで保持されるので、チャックテーブルの上方に設けられている第1のカメラで被加工物の裏面側を撮像しても、アライメントマーク等は撮像できない。
【0008】
そこで、可視光に対して透明な材料で形成されたチャックテーブルと、チャックテーブルの下方に配置された可視光用の第2のカメラと、を備える切削装置が開発された(例えば、特許文献2参照)。可視光に対して透明なチャックテーブルを用いれば、被加工物の表面側をチャックテーブルで保持した状態で、チャックテーブルの下方から被加工物の表面側を撮像できる。
【0009】
ところで、近年では、パワーデバイス用の半導体チップに使用される比較的硬質の半導体基板(例えば、炭化ケイ素(SiC)基板)を切削ブレードで切削することも多い。この場合、切削溝が、基板の厚さ方向に対して斜めに形成されたり、先細りする様に形成されたりすることで、加工精度が低下する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-140341号公報
【文献】特開2010-87141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、加工精度を確認するために、切削溝がどのように形成されているかを確認することが望まれるが、上述した既存の切削装置では、被加工物の表面側の画像と、裏面側の画像と、を各々個別に確認することしかできない。
【0012】
それゆえ、現状では、切削溝の形成後に、作業者が顕微鏡等を用いて加工溝を目視検査している。しかし、目視検査を行う場合、切削溝の形成後に、別途に目視検査の作業時間が必要となるので、作業効率が低下する。
【0013】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、切削溝の加工精度を作業者が加工装置上で確認可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、表面に設定されている複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域の各々にデバイスが設けられている板状の被加工物の該表面側を保持した状態で該被加工物を加工する加工装置であって、一面と、該一面とは反対側に位置する他面と、を含み、該一面から該他面まで透明材で形成されている所定の領域を有する板状の保持部材を有し、該被加工物の該表面側を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで該表面が保持された該被加工物を加工して、該被加工物に加工溝を形成する加工ユニットと、第1の撮像素子を有し、該チャックテーブルの上方に配置され、該チャックテーブルで保持された該被加工物の裏面側を撮像する第1の撮像ユニットと、第2の撮像素子を有し、該チャックテーブルの下方に配置され、該第1の撮像ユニットで撮像する領域と該被加工物の厚さ方向で対応する領域において該被加工物の該表面側を、該保持部材を介して撮像する第2の撮像ユニットと、該第1の撮像ユニット及び該第2の撮像ユニットの少なくともいずれかで取得した該被加工物の画像を表示する表示装置と、画像処理を実行するプログラムが記憶された記憶装置と、該プログラムに従って画像を処理する処理装置と、を有し、該第1の撮像ユニットの焦点位置を該被加工物の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて該加工溝を撮像することで得られる第1の画像群のうち該加工溝の形状を示す第1の画像情報と、該第2の撮像ユニットの焦点位置を該被加工物の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて該加工溝を撮像することで得られる第2の画像群のうち該加工溝の形状を示す第2の画像情報と、の少なくともいずれかを該被加工物の厚さ方向に沿って並べることにより、該加工溝の3次元画像を作成して該表示装置に表示させる制御部と、を備え、該制御部は、該第1の画像情報と、該第2の画像情報との両方を、該被加工物の厚さ方向に沿って並べることにより、該加工溝の3次元画像を作成する加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る制御部は、第1の撮像ユニットの焦点位置を被加工物の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて加工溝を撮像することで得られる第1の画像群のうち加工溝の形状を示す第1の画像情報と、第2の撮像ユニットの焦点位置を被加工物の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて加工溝を撮像することで得られる第2の画像群のうち加工溝の形状を示す第2の画像情報と、の少なくともいずれかを被加工物の厚さ方向に沿って並べることにより、加工溝の3次元画像を作成して表示装置に表示させる。
【0017】
それゆえ、作業者は、表示装置において加工溝の形状を3次元画像で確認することで、切削溝の加工精度を確認できる。従って、被加工物を加工装置から顕微鏡へ搬送し、顕微鏡で被加工物を目視検査する必要がない。また、加工装置上で加工精度を確認できるので、目視検査を行う場合に比べて、作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】チャックテーブル等の一部断面側面図である。
【
図8】先細り形状の切削溝を撮像する様子を示す図である。
【
図10】干渉光学系を用いてカーフチェック工程を行う様子を示す図である。
【
図11】
図11(A)は切削溝の形状を点群で示す3次元画像の一例を示す図であり、
図11(B)は補間処理後の切削溝の3次元画像の一例を示す図である。
【
図12】切削溝の断面プロファイルを示す図である。
【
図13】被加工物の厚さ方向に対して斜めに形成された切削溝の3次元画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る切削装置(加工装置)2の斜視図である。なお、
図1では、構成要素の一部を機能ブロック図で示す。また、以下の説明に用いられるX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(鉛直方向、切り込み送り方向)は、互いに垂直である。
【0020】
切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前方(+Y方向)の角部には、開口4aが形成されており、この開口4a内には、カセットエレベータ(不図示)が設けられている。カセットエレベータの上面には、複数の被加工物11(
図2参照)を収容するためのカセット6が載せられる。
【0021】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状(板状)のウェーハである。但し、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等を被加工物11として用いることもできる。
【0022】
図2に示す様に、被加工物11の表面11aには、互いに交差する態様で複数の分割予定ライン(ストリート)13が設定されている。複数の分割予定ライン13によって区画されている複数の各々には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15、アライメントマーク(不図示)等が形成されている。但し、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等には制限はない。
【0023】
被加工物11の表面11a側には、被加工物11よりも大径のテープ(ダイシングテープ)17が貼り付けられている。テープ17は、可視光を透過する透明材で形成されている。テープ17は、例えば、基材層と、粘着層(糊層)との積層構造を有する。
【0024】
基材層は、例えば、ポリオレフィン(PO)等で形成されている。粘着層は、例えば、紫外線(UV)硬化型のアクリル樹脂等の粘着性樹脂で形成されている。このテープ17の粘着層側が被加工物11の表面11a側に貼り付けられる。
【0025】
テープ17の外周部分には、金属で形成された環状のフレーム19が固定される。この様に、被加工物11は、テープ17を介してフレーム19で支持された被加工物ユニット21の状態でカセット6に収容される。
図2は、被加工物ユニット21の斜視図である。
【0026】
図1に示す様に、開口4aの後方(-Y方向)には、X軸方向に長い開口4bが形成されている。開口4bには、円盤状のチャックテーブル10が配置されている。なお、チャックテーブル10の外周部には、円周方向に沿って離散的に吸引口が形成された円環状のフレーム吸引板(不図示)が設けられる。
【0027】
ここで、
図3から
図5を参照して、チャックテーブル10等について更に詳しく説明する。
図3は、チャックテーブル10等の斜視図であり、
図4は、チャックテーブル10等の一部断面側面図である。但し、
図4では、便宜上、ハッチングを省略している。
図5は、
図4の領域Aの拡大図である。
図5では、構成要素の一部を機能ブロック図で示す。
【0028】
チャックテーブル10は、円盤状(板状)の保持部材12を有する。保持部材12は、概ね平坦な一面12aと、当該一面12aとは反対側に位置する他面12b(
図5参照)とを含む。保持部材12は、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の可視光を透過する透明材で形成されている。
【0029】
保持部材12の内部には、複数の流路が形成されている。本実施形態の保持部材12の内部には、保持部材12を上面視した場合に、円盤の中心軸を横切る様に直線状の第1吸引路12c1が形成されている。また、XY平面方向において第1吸引路12c1と直交する態様で、直線状の第2吸引路12c2が形成されている。
【0030】
第1吸引路12c1及び第2吸引路12c2は、円盤の中心軸に位置する点12c3で交わっており、互いに接続している。一面12aの外周部には、円周方向において互いに離れる様に、複数の開口部12dが形成されている。各開口部12dは、他面12bには達しない一面12aから所定の深さまで形成されている。
【0031】
第1吸引路12c1の両端部と、第2吸引路12c2の両端部とには、それぞれ開口部12dが形成されている。各開口部12dは、保持部材12の外周部の所定の深さに形成されている外周吸引路12eにより円周方向で接続されている。
【0032】
開口部12dの外周側には径方向に延びる吸引路12fが形成されており、吸引路12fには、エジェクタ等の吸引源14が接続されている(
図5参照)。吸引源14を動作させて負圧を発生させると、開口部12dには負圧が発生する。それゆえ、一面12aは、被加工物ユニット21(被加工物11)を吸引して保持する保持面として機能する。
【0033】
ところで、第1吸引路12c1、第2吸引路12c2、開口部12d、外周吸引路12e、吸引路12f等の保持部材12の流路では、入射した光の一部が散乱又は反射される。それゆえ、保持部材12の流路は、一面12a又は他面12bから見た場合に、可視光に対して完全に透明ではなく、透光性を有する場合や不透明である場合がある。
【0034】
しかし、保持部材12の流路を除く所定の領域は、一面12aから他面12bまで透明である。例えば、第1吸引路12c1及び第2吸引路12c2により4分割され、且つ、保持部材12の径方向において外周吸引路12eよりも内側に位置する領域は、一面12aから他面12bまで透明である。
【0035】
保持部材12の外周には、ステンレス等の金属材料で形成された円筒状の枠体16が設けられている。枠体16の上部には開口部16aが形成されており(
図5参照)、保持部材12は、この開口部16aを塞ぐ様に配置されている。
【0036】
枠体16は、
図3及び
図4に示す様に、X軸移動テーブル18に支持されている。X軸移動テーブル18は、Z軸方向から見た形状が長方形である底板18aを含む。底板18aの前方(+Y方向)の一端には、Y軸方向から見た形状が長方形である側板18bの下端が接続されている。
【0037】
側板18bの上端には、Z軸方向から見た形状が底板18aと同じ長方形である天板18cの前方の一端が接続されている。底板18aと天板18cとの間には、後方(-Y方向)の一端及びX軸方向の両端が開放された空間18dが形成されている。
【0038】
底板18aの下方(-Z方向)には、底板18aがスライド可能な態様で、X軸方向に概ね平行な一対のX軸ガイドレール20が設けられている。一対のX軸ガイドレール20は、静止基台(不図示)の上面に固定されている。
【0039】
X軸ガイドレール20に隣接する位置には、X軸移動テーブル18のX軸方向の位置を検出する際に使用されるX軸リニアスケール20aが設けられている。また、X軸移動テーブル18の下面側には読み取りヘッド(不図示)が設けられている。
【0040】
X軸移動テーブル18の移動時には、X軸リニアスケール20aの目盛りを読み取りヘッドで検出することにより、X軸移動テーブル18のX軸方向の位置(座標)や、X軸方向の移動量が算出される。
【0041】
X軸移動テーブル18の底板18aの下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール20に概ね平行なX軸ボールネジ22が回転可能な態様で連結されている。
【0042】
X軸ボールネジ22の一端部には、X軸パルスモーター24が連結されている。X軸パルスモーター24でX軸ボールネジ22を回転させれば、X軸移動テーブル18は、X軸ガイドレール20に沿ってX軸方向に移動する。X軸ガイドレール20、X軸ボールネジ22、X軸パルスモーター24等は、X軸移動テーブル18を移動させるX軸移動機構26を構成する。
【0043】
X軸移動テーブル18の天板18cの上面側には、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転できる態様で、枠体16が天板18cに支持されている。枠体16は、円筒状の側面であるプーリー部16bを含む。プーリー部16bは、枠体16がX軸移動テーブル18で支持された場合に、天板18cよりも上方に位置する。
【0044】
X軸移動テーブル18の側板18bには、モーター等の回転駆動源30が設けられている。回転駆動源30の回転軸には、プーリー30aが設けられている。プーリー30a及びプーリー部16bには、1つの回転無端ベルト(ベルト28)が掛けられている。
【0045】
回転駆動源30を動作させてプーリー30aを回転させると、ベルト28を介して伝達される力によって、枠体16は、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。プーリー30aの回転を制御することで、回転軸の周りで任意の角度だけチャックテーブル10を回転できる。
【0046】
X軸移動機構26のX軸方向の延長線上には、Y軸移動機構32が設けられている。Y軸移動機構32は、Y軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール34を備える。一対のY軸ガイドレール34は、静止基台(不図示)の上面に固定されている。
【0047】
Y軸ガイドレール34上には、Y軸移動テーブル36がスライド可能に取り付けられている。Y軸移動テーブル36の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール34に概ね平行なY軸ボールネジ38が回転可能な態様で連結されている。
【0048】
Y軸ボールネジ38の一端部には、Y軸パルスモーター40が連結されている。Y軸パルスモーター40でY軸ボールネジ38を回転させれば、Y軸移動テーブル36は、Y軸ガイドレール34に沿ってY軸方向に移動する。
【0049】
Y軸ガイドレール34に隣接する位置には、Y軸移動テーブル36のY軸方向の位置を検出する際に使用されるY軸リニアスケール(不図示)が設けられている。また、Y軸移動テーブル36の下面側には読み取りヘッド(不図示)が設けられている。
【0050】
Y軸移動テーブル36の移動時には、Y軸リニアスケールの目盛りを読み取りヘッドで検出することにより、Y軸移動テーブル36のY軸方向の位置(座標)や、Y軸方向の移動量が算出される。
【0051】
Y軸移動テーブル36の上面には、Z軸移動機構42が設けられている。
図6は、Z軸移動機構42等の拡大斜視図である。Z軸移動機構42は、Y軸移動テーブル36の上面に固定された支持構造42aを有する。
【0052】
支持構造42aのX軸移動テーブル18側の側面には、Z軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール44が固定されている。Z軸ガイドレール44には、Z軸移動プレート46がスライド可能に取り付けられている。
【0053】
Z軸移動プレート46の裏面側(Z軸ガイドレール44側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール44に概ね平行なZ軸ボールネジ48が回転可能な態様で連結されている。
【0054】
Z軸ボールネジ48の一端部には、Z軸パルスモーター50が連結されている。Z軸パルスモーター50でZ軸ボールネジ48を回転させれば、Z軸移動プレート46は、Z軸ガイドレール44に沿ってZ軸方向に移動する。
【0055】
Z軸ガイドレール44に隣接する位置には、Z軸リニアスケール(不図示)が設けられており、Z軸移動プレート46のZ軸ガイドレール44側には、読み取りヘッド(不図示)が設けられている。Z軸移動プレート46の移動時には、Z軸リニアスケールの目盛りを読み取りヘッドで検出することにより、Z軸移動プレート46のZ軸方向の位置(座標)等が算出される。
【0056】
Z軸移動プレート46には、X軸方向に長い支持アーム52を介して下方撮像ユニット(第2の撮像ユニット)54が固定されている。本実施形態の下方撮像ユニット54は、低倍率カメラ56と、高倍率カメラ58とを含む。
【0057】
低倍率カメラ56及び高倍率カメラ58の各々は、集光レンズ等の所定の光学系と、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子(第2の撮像素子)とを有する。
【0058】
下方撮像ユニット54は、チャックテーブル10よりも下方に配置されており、各集光レンズの光軸が保持部材12の他面12bに略垂直となる態様で、他面12bに対向して設けられている。
【0059】
低倍率カメラ56の側方には、上方に位置する被写体(例えば、被加工物11)に対して可視光を照射する照明装置56aが設けられている。同様に、高倍率カメラ58の側方にも、照明装置58aが設けられている。
【0060】
下方撮像ユニット54で被加工物11を撮像する場合には、X軸移動テーブル18をY軸移動テーブル36側に移動させて、空間18dに下方撮像ユニット54を配置する。そして、保持部材12の一面12a側に配置される被加工物11を、保持部材12を介して下方から撮像する。
【0061】
この様にして、表面11a側の正像(即ち、実際に見たままの画像)を取得できる。なお、下方撮像ユニット54は、必ずしも、低倍率カメラ56及び高倍率カメラ58の2つのカメラを有さなくてもよい。下方撮像ユニット54は、所定の倍率のカメラを1つだけ有してもよい。
【0062】
ここで、
図1に戻り、切削装置2の他の構成要素について説明する。X軸移動テーブル18の天板18cよりも+X方向及び-X方向には、開口4bを覆う態様で伸縮自在な蛇腹状の防塵防滴カバーが取り付けられている。
【0063】
開口4bの上方には、開口4bを跨ぐ様に門型の支持構造4cが設けられている。支持構造4cの側面のうち開口4a側に位置する一側面には、2つの加工ユニット移動機構(割り出し送りユニット、切り込み送りユニット)60が設けられている。
【0064】
各加工ユニット移動機構60は、支持構造4cの一側面に固定され且つY軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール62を共有している。Y軸ガイドレール62には、2つのY軸移動プレート64が互いに独立にスライド可能な態様で取り付けられている。
【0065】
Y軸移動プレート64の支持構造4c側に位置する一面には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール62に概ね平行なY軸ボールネジ66が回転可能な態様で連結されている。なお、各Y軸移動プレート64のナット部は、異なるY軸ボールネジ66に連結されている。
【0066】
各Y軸ボールネジ66の一端部には、Y軸パルスモーター68が連結されている。Y軸パルスモーター68でY軸ボールネジ66を回転させれば、Y軸移動プレート64は、Y軸ガイドレール62に沿ってY軸方向に移動する。
【0067】
各Y軸移動プレート64の支持構造4cとは反対側に位置する他面には、Z軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール72がそれぞれ設けられている。Z軸ガイドレール72には、Z軸移動プレート70がスライド可能に取り付けられている。
【0068】
Z軸移動プレート70の支持構造4c側に位置する一面には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール72に平行なZ軸ボールネジ74が回転可能な態様で連結されている。
【0069】
Z軸ボールネジ74の一端部には、Z軸パルスモーター76が連結されている。Z軸パルスモーター76でZ軸ボールネジ74を回転させれば、Z軸移動プレート70は、Z軸ガイドレール72に沿ってZ軸方向に移動する。
【0070】
Z軸移動プレート70の下部には、切削ユニット(加工ユニット)78が設けられている。切削ユニット78は、筒状のスピンドルハウジング80を備えている。スピンドルハウジング80内には、略円柱状のスピンドル82a(
図7参照)の一部が回転可能な態様で収容されている。
【0071】
スピンドル82aの一端には、スピンドル82aを回転させるサーボモーター等の回転駆動機構(不図示)が連結されている。また、スピンドル82aの他端には、円環状の切り刃を有する切削ブレード82bが装着されている。
【0072】
切削ブレード82bで被加工物11を切削(加工)するときには、まず、チャックテーブル10で被加工物11の表面11aを吸引保持した後、分割予定ライン13をX軸方向と略平行に位置付ける。
【0073】
そして、回転する切削ブレード82bの下端を、表面11aと、保持部材12の一面12aと、の間に位置付けた状態で、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、
図7に示す様に、被加工物11を切削して切削溝(加工溝)11cを形成する。
図7は、被加工物11に切削溝11cを形成する様子を示す図である。
【0074】
本実施形態の切削溝11cは、裏面11bから表面11aまで貫通する所謂フルカット溝である。切削溝11cは、被加工物11の厚さ方向に対して斜めに形成されたり、裏面11bから表面11aへ進むにつれて先細りする様に形成されたりすることがある。
【0075】
そこで、被加工物11において切削溝11cがどのように形成されているかを切削装置2上で確認することが望まれる。本実施形態では、上述の下方撮像ユニット54と、上方撮像ユニット(第1の撮像ユニット)84と、を用いて、切削溝11cの形状を確認する。
【0076】
上方撮像ユニット84は、切削ユニット78に隣接する態様で、Z軸移動プレート70の下部に連結されている。上方撮像ユニット84は、集光レンズ等の所定の光学系と、撮像素子(第1の撮像素子)と、を有する。
【0077】
上方撮像ユニット84は、チャックテーブル10の上方に配置されており、集光レンズの光軸が保持部材12の一面12aに略垂直となる態様で、一面12aに対向して設けられている。上方撮像ユニット84は、一面12aで表面11a側が保持された被加工物11の裏面11bを撮像する。この様にして、裏面11b側の正像を取得できる。
【0078】
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、開口4dが設けられている。開口4d内には、切削後の被加工物11等を洗浄するための洗浄ユニット86が設けられている。洗浄ユニット86は、被加工物11を吸引保持する洗浄テーブル88と、洗浄テーブル88に対向するように噴射口が配置されたノズル90とを含む。
【0079】
基台4上には、不図示の筐体が設けられており、筐体の前方の側面には、入力部と、表示部とを兼ねるタッチパネル(表示装置)92が設けられている。タッチパネル92には、下方撮像ユニット54及び上方撮像ユニット84の少なくともいずれかで撮像された画像、加工条件、GUI(Graphical User Interface)等が表示される。
【0080】
なお、入力部と表示部とは分離されてもよい。この場合、タッチパネル92に代えて、ビデオモニター、コンピュータースクリーン等の表示装置と、ユーザーインターフェースとなるキーボード、マウス等の入力装置とが、例えば、筐体の前方の側面設けられる。
【0081】
切削装置2は、吸引源14、X軸移動機構26、回転駆動源30、Y軸移動機構32、Z軸移動機構42、下方撮像ユニット54、加工ユニット移動機構60、上方撮像ユニット84、切削ユニット78、タッチパネル92等を制御する制御部94を備える。
【0082】
制御部94は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0083】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部94の機能が実現される。なお、補助記憶装置の一部は、処理装置に所定の画像処理(3次元画像の作成)を実行させるプログラムを記憶した記憶装置96として機能する。
【0084】
ここで、本実施形態での画像取得及び画像処理について説明する。本実施形態では、まず、上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54の各焦点位置を被加工物11の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて、切削溝11cを撮像する。
【0085】
被加工物11は、表面11aから裏面11bに向かう被加工物11の厚さ方向がZ軸方向と略平行となる様に配置されている。
図8は、上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54で、先細り形状の切削溝11cを撮像する様子を示す図である。
【0086】
本実施形態では、裏面11bに焦点を合わせた上方撮像ユニット84で切削溝11cを撮像した後、加工ユニット移動機構60を用いて1μmピッチで上方撮像ユニット84を下方に移動させ、各位置で切削溝11cを撮像する。これにより、第1の画像群23を得る。
【0087】
更に、表面11aに焦点を合わせた下方撮像ユニット54で切削溝11cを撮像した後、Z軸移動機構42を用いて1μmピッチで下方撮像ユニット54を上方に移動させ、各位置で切削溝11cを撮像する。これにより、第2の画像群25を得る。
【0088】
このとき、下方撮像ユニット54及び上方撮像ユニット84が、被加工物11の厚さ方向で対応する領域を撮像する様に、X軸移動機構26、Y軸移動機構32、加工ユニット移動機構60等で各集光レンズのXY座標を調整する。
【0089】
なお、第1の画像群23及び第2の画像群25を取得する順番は、特に限定されない。また、上方撮像ユニット84を所定のピッチで上方に移動させてもよく、下方撮像ユニット54を所定のピッチで下方に移動させてもよい。
【0090】
第1の画像群23を構成する複数の画像の各々には、焦点位置に対応する深さでの切削溝11cの縁部を示す(即ち、切削溝11cの形状を示す)第1の画像情報23aが含まれている。同様に、第2の画像群25を構成する複数の画像の各々には、切削溝11cの形状を示す第2の画像情報25aが含まれている。
【0091】
画像取得後、画像処理を行う。画像処理では、第1の画像情報23a及び第2の画像情報25aの両方を、焦点位置の高さ順に被加工物11の厚さ方向に沿って並べる。但し、第1の画像情報23a及び第2の画像情報25aは、被加工物11の厚さ方向において離散的である。
【0092】
そこで、隣接する画像情報の間を、最近傍補間、双一次補間等の既知の手法により補間する。これにより、切削溝11cの3次元画像を作成する。この3次元画像は、タッチパネル92に表示される(
図9参照)。
【0093】
作業者は、3次元画像で切削溝11cの形状を確認することで、切削溝11cの加工精度を確認できる。従って、被加工物11を切削装置2から顕微鏡へ搬送し、顕微鏡で被加工物11を目視検査する必要がない。また、切削装置2上で加工精度を確認できるので、目視検査を行う場合に比べて、作業効率を向上できる。
【0094】
次に、被加工物11の加工方法について説明する。まず、裏面11b側が上方に露出する態様で被加工物ユニット21をチャックテーブル10の一面12aに載置する(載置工程S10)。
【0095】
載置工程S10後、吸引源14を動作させ、テープ17を介して被加工物11の表面11a側を一面12aで保持し、フレーム19をフレーム吸引板(不図示)で保持する(保持工程S20)。保持工程S20後、ティーチ工程S30を行う。
【0096】
ティーチ工程S30では、例えば、下方撮像ユニット54を用いて表面11a側を撮像し、これを鏡像に変換した画像をタッチパネル92にリアルタイムで表示させた状態で、作業者が、表面11a側のアライメントマーク(不図示)を探索する。
【0097】
所望のアライメントマークが発見された後、当該アライメントマークを含む表面11a側の画像を下方撮像ユニット54で取得する。アライメントマークの形状、座標等は、パターンマッチングのテンプレートとして、例えば記憶装置96に記憶される。
【0098】
また、アライメントマークと分割予定ライン13の中心線との距離、及び、Y軸方向において隣接する2つの分割予定ライン13の距離(ストリートピッチ)が記憶装置96に記憶される。なお、記憶される各座標は、上述の点12c3を原点とするXY座標である。
【0099】
ティーチ工程S30後、被加工物11のアライメントを行う(アライメント工程S40)。アライメント工程S40でも、作業者は、下方撮像ユニット54で取得された表面11a側の正像が鏡像に変換された画像をタッチパネル92にリアルタイムで表示させた状態で、作業を行う。
【0100】
アライメント工程S40では、まず、X軸方向に沿う1つの分割予定ライン13における互いに離れた複数箇所で、下方撮像ユニット54(例えば、低倍率カメラ56)を用いて表面11a側の画像を取得する。
【0101】
そして、複数箇所で取得された表面11a側の画像において、パターンマッチング等の所定の処理によりテンプレートとして記憶されたアライメントマークと同一のパターンを検出する。検出されたアライメントマークと同一のパターンに基づいて、保持部材12の中心軸周りにおける分割予定ライン13のθ方向のズレを特定する。
【0102】
その後、回転駆動源30を動作させて、ベルト28を所定量だけ回転させることで、分割予定ライン13のθ方向のズレを補正する。これにより、分割予定ライン13をX軸方向と略平行に位置付ける。
【0103】
アライメント工程S40後、表面11a側をチャックテーブル10で吸引保持した状態で、被加工物11を切削(加工)する(切削工程S50)(
図7参照)。切削工程S50では、まず、高速で回転している切削ブレード82bを分割予定ライン13の延長線上に位置付ける。
【0104】
このとき、切削ブレード82bの下端を、表面11aと保持部材12の一面12aとの間に位置付ける。そして、X軸移動機構26でチャックテーブル10と切削ブレード82bとをX軸方向に沿って相対的に移動させる。これにより、被加工物11の厚さ方向で被加工物11がフルカットされた切削溝11cが形成される。
【0105】
X軸方向に平行な1つの分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削した後、切削ユニット78を割り出し送りすることにより、Y軸方向に隣接する分割予定ライン13の延長線上に切削ブレード82bを位置付ける。そして、同様に、分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削する。
【0106】
この様にして、第1の方向に平行な全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削した後、回転駆動源30を動作させて、チャックテーブル10を90度回転させる。そして、第1の方向と直交する第2の方向をX軸方向と平行に位置付け、第2の方向に平行な全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削する。
【0107】
切削工程S50の後、カーフチェック工程S60を行う。
図9は、カーフチェック工程S60を示す図である。カーフチェック工程S60では、上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54の各焦点位置を切削溝11cの深さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて、切削溝11cを撮像する。
【0108】
作業者は、タッチパネル92に表示される3次元画像で、切削溝11cの形状を確認することで、切削溝11cの加工精度を確認できる。従って、被加工物11を切削装置2から顕微鏡へ搬送し、顕微鏡で被加工物11を目視検査する必要がない。また、切削装置2上で加工精度を確認できるので、目視検査を行う場合に比べて、作業効率を向上できる。
【0109】
なお、本実施形態では、切削工程S50の完了後に、カーフチェック工程S60を行う場合について述べたが、1つ以上の切削溝11cを形成した後であれば、切削工程S50の途中にカーフチェック工程S60を行ってもよい。
【0110】
上述の実施形態では、上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54の両方の焦点位置を変えて切削溝11cを撮像する場合を説明した。両方の焦点位置を変えることで、切削溝11cが先細り形状である場合や、被加工物11の厚さ方向に対して斜めに形成される場合であっても、撮像視野の死角を互いに補完することで、切削溝11cの形状を適切に把握できる。
【0111】
しかし、上方撮像ユニット84のみの焦点位置を切削溝11cの深さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて、切削溝11cを撮像してもよい。この場合、上方撮像ユニット84で切削溝11cを撮像して第1の画像群23を取得する。
【0112】
そして、第1の画像群23の各画像における第1の画像情報23aを、被加工物11の厚さ方向に沿って並べる。但し、第1の画像情報23aは、被加工物11の厚さ方向において離散的であるので、隣接する画像情報の間を補間することで、切削溝11cの3次元画像を作成する。
【0113】
なお、この3次元画像には、下方撮像ユニット54の焦点を表面11aに位置付けて表面11aを撮像して得られた表面画像と、3次元画像及び表面画像の間を補間する補助線と、が付加されてもよい。
【0114】
同様に、下方撮像ユニット54のみの焦点位置を切削溝11cの深さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて、切削溝11cを撮像してもよい。この場合、下方撮像ユニット54で切削溝11cを撮像して第2の画像群25を取得する。
【0115】
そして、第2の画像群25の各画像における第2の画像情報25aを、被加工物11の厚さ方向に沿って並べる。但し、第2の画像情報25aは、被加工物11の厚さ方向において離散的であるので、隣接する画像情報の間を補間することで、切削溝11cの3次元画像を作成する。
【0116】
なお、この3次元画像には、上方撮像ユニット84の焦点を表面11aに位置付けて表面11aを撮像して得られた裏面画像と、3次元画像及び裏面画像の間を補間する補助線と、が付加されてもよい。
【0117】
この様に、第1の画像情報23a及び第2の画像情報25aの少なくともいずれかを被加工物11の厚さ方向に沿って並べることで、切削溝11cの3次元画像を少なくとも部分的に作成してもよい。この場合であっても、3次元画像により切削溝11cの形状を確認することで、切削溝11cの加工精度をある程度確認できる。
【0118】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。当該変形例において、上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54の各々は、干渉光学系を有する撮像ユニットである。干渉光学系としては、ミラウ型、マイケルソン型、リニーク型等を採用できる。
【0119】
図10は、干渉光学系を用いてカーフチェック工程S60を行う様子を示す図である。干渉光学系を用いる場合も、上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54の各焦点位置を被加工物11の厚さ方向に沿って異なる複数の位置に順次位置付けて、切削溝11cを撮像する。
【0120】
例えば、上方撮像ユニット84の焦点を裏面11bに合わせた状態で、チャックテーブル10をX軸方向に沿って所定の長さだけ移動させる。次いで、上方撮像ユニット84をY軸方向に所定の長さだけ移動させた後、X軸方向に沿って逆方向に所定の長さだけ移動させる。
【0121】
これにより、上方撮像ユニット84の焦点を、裏面11bの所定の平面内で走査する。上方撮像ユニット84の焦点が合った個所では光強度の高い干渉光が発生する。
【0122】
上方撮像ユニット84で裏面11bを走査した後、加工ユニット移動機構60を用いて上方撮像ユニット84を0.1μmだけ下方に移動させる。そして、この高さ位置で、上方撮像ユニット84の焦点を所定のXY平面内で再び走査する。
【0123】
上方撮像ユニット84を0.1μmピッチで下方に移動させ、各高さ位置で、上方撮像ユニット84の焦点を所定のXY平面内で走査することにより、切削溝11cを撮像する。これにより、第1の画像群33を得る。
【0124】
第1の画像群33を構成する各画像には、切削溝11cの縁部に焦点が合うことで光強度の高い干渉光が発生した点を示す第1の点群(即ち、第1の画像情報)33aが含まれている。つまり、第1の点群33aは、切削溝11cの内壁等を特定しており、切削溝11cの形状を示す。
【0125】
同様に、下方撮像ユニット54で表面11aを走査した後、下方撮像ユニット54を0.1μmピッチで上方に移動させ、各高さ位置で、下方撮像ユニット54の焦点を所定のXY平面内で走査することにより、切削溝11cを撮像する。これにより、第2の画像群35を得る。
【0126】
第2の画像群35を構成する各画像にも、切削溝11cの形状を示す第2の点群(即ち、第2の画像情報)35aが含まれている。第1の点群33a及び第2の点群35aの両方を、画像処理により被加工物11の厚さ方向に沿って並べることにより、切削溝11cの3次元画像が作成される。
【0127】
この3次元画像は、タッチパネル92に表示される。
図11(A)は、切削溝11cの形状を点群で示す3次元画像の一例を示す図である。なお、隣接する点の間を画像処理により補間することで、切削溝11cの3次元画像を作成してもよい。
図11(B)は、補間処理後の切削溝11cの3次元画像の一例を示す図である。
【0128】
作業者は、
図11(A)又は
図11(B)に示す3次元画像で、切削溝11cの形状を確認することで、切削溝11cの加工精度を確認できる。従って、被加工物11を切削装置2から顕微鏡へ搬送し、顕微鏡で被加工物11を目視検査する必要がない。また、切削装置2上で加工精度を確認できるので、目視検査を行う場合に比べて、作業効率を向上できる。
【0129】
なお、上述の様に、第1の点群33a及び第2の点群35aの少なくともいずれかを被加工物11の厚さ方向に沿って並べることで、切削溝11cの3次元画像を少なくとも部分的に作成してもよい。
【0130】
図12は、X軸方向と略平行に配置されている切削溝11cをYZ平面で切断した場合の、切削溝11cの断面プロファイルを示す図である。横軸は、切削溝11cの幅(μm)を示し、縦軸は、切削溝11cの深さ(μm)を示す。
【0131】
ところで、
図8から
図12では、裏面11bから表面11aへ進むにつれて切削溝11cが先細りしている場合を説明した。しかし、切削溝11cが被加工物11の厚さ方向に対して斜めに形成されている場合であっても、切削装置2上で切削溝11cの加工精度を確認できる。
【0132】
図13は、被加工物11の厚さ方向に対して斜めに形成された切削溝11cの3次元画像の模式図である。なお、
図13の裏面11b及び表面11aは、第1の実施形態の上方撮像ユニット84及び下方撮像ユニット54で取得した画像であるが、裏面11b及び表面11aの間は補助線で補間されている。
【0133】
また、
図13において、破線は切削溝11cの縁部を示し、実線は切削溝11cの幅の中心を示す。表面11a側において、切削溝11cは分割予定ライン13からずれて形成されている。切削溝11cが斜めに形成された場合であっても、第1の実施形態又はその変形例に従い3次元画像を作成することで切削溝11cの形状を確認できる。
【0134】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、切削装置2に代えてレーザー加工装置(加工装置)102を用いて、被加工物11を加工する。但し、上述の載置工程S10からアライメント工程S40は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0135】
図14は、第2の実施形態に係るレーザー加工装置102の斜視図である。なお、第1の実施形態に係る切削装置2と同じ構成要素には同じ符号を付す。以下では、切削装置2との差異を主として説明する。
【0136】
レーザー加工装置102では、静止基台104に下方撮像ユニット54が固定されている。なお、下方撮像ユニット54は、X軸方向又はY軸方向に移動可能な態様で設けられてもよい。
【0137】
静止基台104上には、X軸移動テーブル18が配置されている。X軸移動テーブル18は、X軸移動テーブル18の側板18bとは反対側に位置する領域から下方撮像ユニット54が空間18d内に進入できるように、配置されている。
【0138】
X軸移動テーブル18は、1対のX軸ガイドレール20上にスライド可能な態様で設けられている。1対のX軸ガイドレール20は、Y軸移動テーブル106上に固定されている。
【0139】
X軸移動テーブル18の底板18aの下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール20に概ね平行なX軸ボールネジ22が回転可能な態様で連結されている。
【0140】
X軸ボールネジ22の一端部には、X軸パルスモーター24が連結されている。X軸パルスモーター24でX軸ボールネジ22を回転させれば、X軸移動テーブル18は、X軸ガイドレール20に沿ってX軸方向に移動する。
【0141】
X軸移動テーブル18を支持するY軸移動テーブル106は、静止基台104の上面に固定された一対のY軸ガイドレール108上に、スライド可能に取り付けられている。Y軸ガイドレール108に隣接する位置には、Y軸移動テーブル106のY軸方向の位置を検出する際に使用されるY軸スケール108aが設けられている。
【0142】
Y軸移動テーブル106の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール108に概ね平行なY軸ボールネジ110が回転可能な態様で連結されている。Y軸ボールネジ110の一端部には、Y軸パルスモーター112が連結されている。
【0143】
Y軸パルスモーター112でY軸ボールネジ110を回転させれば、Y軸移動テーブル106は、Y軸ガイドレール108に沿ってY軸方向に移動する。Y軸ガイドレール108、Y軸ボールネジ110、Y軸パルスモーター112等は、Y軸移動テーブル106を移動させるY軸移動機構114を構成する。
【0144】
下方撮像ユニット54に隣接する位置には、静止基台104の上面から上方に突出する態様でコラム116が設けられている。コラム116には、X軸方向に略平行な長手部を有するケーシング118が設けられている。
【0145】
ケーシング118には、レーザー照射ユニット120の少なくとも一部が設けられている。レーザー照射ユニット120は、被加工物11に吸収される波長、又は、被加工物11を透過する波長を有するパルス状のレーザービームを発生させるレーザー発振器120a等を有する。
【0146】
レーザー照射ユニット120のX軸方向の先端部には、集光レンズ122aを含む照射ヘッド122が設けられている。レーザー発振器120aから出射されたレーザービームは、集光レンズ122aにより集光され、照射ヘッド122から下方に照射される。
【0147】
図14では、照射ヘッド122から下方に照射されるレーザービームLを破線矢印で示す。なお、ケーシング118の先端部において、照射ヘッド122に隣接する位置には、上述の上方撮像ユニット84が設けられている。
【0148】
第2の実施形態の切削工程S50では、レーザービームLの集光点を被加工物11の裏面11b近傍に位置付け、集光点と被加工物11とをX軸方向に相対的に移動させることで、分割予定ライン13に沿って
図8に示す様なレーザー加工溝(不図示)を形成する。
【0149】
そして、カーフチェック工程S60を行うでは、制御部94が、第1の実施形態又はその変形例と同様に、切削溝11cの3次元画像を作成する。作業者は、タッチパネル92に表示される3次元画像で、レーザー加工溝の形状を確認することで、レーザー加工溝の加工精度を確認できる。
【0150】
従って、被加工物11を切削装置2から顕微鏡へ搬送し、顕微鏡で被加工物11を目視検査する必要がない。また、レーザー加工装置102上で加工精度を確認できるので、目視検査を行う場合に比べて、作業効率を向上できる。
【0151】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0152】
2:切削装置
4:基台
4a,4b,4d:開口
4c:支持構造
6:カセット
10:チャックテーブル
11:被加工物
11a:表面
11b:裏面
11c:切削溝
12:保持部材
12a:一面
12b:他面
12c1:第1吸引路
12c2:第2吸引路
12c3:点
12d:開口部
12e:外周吸引路
12f:吸引路
13:分割予定ライン
14:吸引源
15:デバイス
16:枠体
16a:開口部
16b:プーリー部
17:テープ
18:X軸移動テーブル
18a:底板
18b:側板
18c:天板
18d:空間
19:フレーム
20:X軸ガイドレール
20a:X軸リニアスケール
21:被加工物ユニット
22:X軸ボールネジ
23:第1の画像群
23a:第1の画像情報
24:X軸パルスモーター
25:第2の画像群
25a:第2の画像情報
26:X軸移動機構
28:ベルト
30:回転駆動源
30a:プーリー
32:Y軸移動機構
33:第1の画像群
33a:第1の点群(第1の画像情報)
34:Y軸ガイドレール
35:第2の画像群
35a:第2の点群(第2の画像情報)
36:Y軸移動テーブル
38:Y軸ボールネジ
40:Y軸パルスモーター
42:Z軸移動機構
42a:支持構造
44:Z軸ガイドレール
46:Z軸移動プレート
48:Z軸ボールネジ
50:Z軸パルスモーター
52:支持アーム
54:下方撮像ユニット
56:低倍率カメラ
56a:照明装置
58:高倍率カメラ
58a:照明装置
60:加工ユニット移動機構
62:Y軸ガイドレール
64:Y軸移動プレート
66:Y軸ボールネジ
68:Y軸パルスモーター
70:Z軸移動プレート
72:Z軸ガイドレール
74:Z軸ボールネジ
76:Z軸パルスモーター
78:切削ユニット
80:スピンドルハウジング
82a:スピンドル
82b:切削ブレード
84:上方撮像ユニット
86:洗浄ユニット
88:洗浄テーブル
90:ノズル
92:タッチパネル
94:制御部
96:記憶装置
102:レーザー加工装置
104:静止基台
106:Y軸移動テーブル
108:Y軸ガイドレール
108a:Y軸スケール
110:Y軸ボールネジ
112:Y軸パルスモーター
114:Y軸移動機構
116:コラム
118:ケーシング
120:レーザー照射ユニット
120a:レーザー発振器
122:照射ヘッド
122a:集光レンズ
A:領域
L:レーザービーム