(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】リチウム電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240422BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240422BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240422BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240422BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240422BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240422BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240422BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240422BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2019194573
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129340
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100210480
【氏名又は名称】後藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100210170
【氏名又は名称】光末 竜太
(72)【発明者】
【氏名】朴 仁仙
(72)【発明者】
【氏名】高 明天
(72)【発明者】
【氏名】金 東泳
(72)【発明者】
【氏名】徐 眞娥
(72)【発明者】
【氏名】鄭 然知
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138453(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138452(WO,A1)
【文献】特開2016-157679(JP,A)
【文献】特開2016-091962(JP,A)
【文献】特開2004-185810(JP,A)
【文献】特開2015-173103(JP,A)
【文献】特開2015-173107(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038041(WO,A1)
【文献】特開2009-245922(JP,A)
【文献】特開2013-030465(JP,A)
【文献】特表2018-530871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極;負極;及び前記正極と負極との間に介在される電解質;を含み、
前記正極は、下記化学式1で表される正極活物質を含み、
前記電解質は、リチウム塩;非水系溶媒;及び下記化学式2で表されるジアリル(diallyl)化合物を含むリチウム電池:
<化学式1>
Li
xNi
yM
1-yO
2-zA
z
前記化学式1において、
0.9≦x≦1.2、0.7≦y≦0.98、0≦z<0.2であり、
Mは、Al、Mg、Mn、Co、Fe、Cr、V、Ti、Cu、B、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、W及びBiからなる群から選択される1つ以上の元素であり;
Aは、酸化数-1、-2、または、-3である元素であり;
【化1】
前記化学式2において、
L
1及びL
2は、互いに独立して、単一結合、置換もしくは非置換のC
1-C
20アルキレン基及び置換もしくは非置換のC
2-C
20アルケニレン基のうちから選択され、
A
1は、-NH-または、-Si(R
1)(R
2)-のうちから選択され、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して
、置換もしくは非置換のC
6-C
60アリール
基から選択される。
【請求項2】
前記ジアリル化合物の含量は、前記電解質100重量部当たり0.05重量部ないし5重量部である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記ジアリル化合物は、下記化学式3または化学式4で表される化合物である、請求項1に記載のリチウム電池:
【化2】
前記化学式3及び4において、
n1及びn2は、それぞれ0ないし5の整数であり、
R
11及びR
12は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基及びイソブチル基のうちから選択される。
【請求項4】
前記ジアリル化合物は、下記化学式5または6で表される化合物である、請求項1に記載のリチウム電池:
【化3】
【請求項5】
前記リチウム塩がLiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
2F
5SO
3、Li(FSO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiN(SO
2CF
2CF
3)
2、及び化学式22ないし25で表される化合物のうちから選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム電池:
【化4】
【請求項6】
前記電解質のうち、前記リチウム塩の濃度は、1.0Mないし1.5Mである、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項7】
前記非水系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピオネート(Methyl Propionate:MP)、エチルプロピオネート(Ethyl Propionate)、プロピルプロピオネート(Propyl Propionate:PP)テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項8】
前記電解質は、環状カーボネート(cyclicCarbonate)化合物、環状酸無水物(cyclic acid anhydride)化合物、リン(P)含有化合物、硫黄(S)含有化合物またはこれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項9】
前記電解質は、環状カーボネート化合物、環状酸無水物化合物、またはこれらの混合物を含み、
前記ジアリル化合物の還元電位が前記環状カーボネート化合物、または前記環状酸無水物化合物の還元電位よりも高い、請求項8に記載のリチウム電池。
【請求項10】
前記電解質100重量部当たり、前記環状カーボネート化合物、環状酸無水物化合物、またはこれらの混合物の含量は、0.1重量部ないし30重量部である、請求項9に記載のリチウム電池。
【請求項11】
前記環状カーボネート化合物は、フッ化エチレンカーボネート(fluoro-ethyleneCarbonate:FEC)、ビニレンカーボネート(vinyleneCarbonate:VC)及びビニルエチレンカーボネート(vinyl ethyleneCarbonate:VEC)のうちから選択された1つ以上であり、
前記環状酸無水物化合物は、無水マレイン酸(maleic anhydride)及び無水コハク酸(succinic anhydride)のうちから選択された1つ以上である、請求項8に記載のリチウム電池。
【請求項12】
前記リン含有化合物は、ホスフィン化合物、ホスフェート化合物及びホスファイト化合物のうちから選択された1つ以上であり、
前記硫黄含有化合物は、スルホン化合物、スルホネート化合物、スルトン(sultone)化合物及びジスルホネート化合物のうちから選択された1つ以上である、請求項8に記載のリチウム電池。
【請求項13】
前記化学式1において、yが0.8≦y≦0.98を満たす、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項14】
前記化学式1において、Mは、Co、Ni及びMnのうち、1つ以上の元素である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項15】
前記正極活物質は、下記化学式3または化学式4で表される、請求項1に記載のリチウム電池:
<化学式3>
Li
xNi
yCo
1-y-zAl
zO
2
<化学式4>
Li
xNi
yCo
1-y-zMn
zO
2
前記化学式3及び化学式4において、0.9≦x≦1.2、0.88≦y≦0.98、0<z<0.1、0<1-y-z<0.2である。
【請求項16】
前記正極は、 Li
1.02Ni
0.88Co
0.08Mn
0.04O
2, Li
1.02Ni
0.88Co
0.10Mn
0.02O
2, Li
1.02Ni
0.91Co
0.06Mn
0.03O
2, LiNi
0.94Co
0.04Mn
0.02O
2, Li
1.02Ni
0.88Co
0.08Al
0.04O
2, Li
1.02Ni
0.88Co
0.10Al
0.02O
2, Li
1.02Ni
0.91Co
0.06Al
0.03O
2、LiNi
0.88Co
0.10Mn
0.02O
2、LiNi
0.88Co
0.08Mn
0.04O
2、及びLiNi
0.94Co
0.04Al
0.02O
2のうちから選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項17】
前記負極は、負極活物質を含み、
前記負極活物質が、シリコン系化合物、炭素系化合物、シリコン系化合物と炭素系化合物の複合体、及びシリコン酸化物(SiO
x1、0<x1<2)のうちから選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項18】
前記負極活物質がシリコン系化合物またはシリコン酸化物を含み、
前記シリコン系化合物は、シリコン粒子を含み、前記シリコン粒子の平均径は、200nm以下である、請求項17に記載のリチウム電池。
【請求項19】
25℃で200サイクル充放電後の容量維持率は、75%以上である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項20】
セルエネルギー密度は、500Wh/L以上である、請求項1に記載のリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコンなど携帯用電子機器の駆動電源として使用される。再充電が可能なリチウム二次電池は、既存の鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池と対比して、単位重量当たりエネルギー密度が3倍以上高く、高速充電が可能である。
【0003】
エネルギー密度の高いリチウム二次電池を製造するために増加された放電容量を提供する正極活物質が使用される。増加された放電容量を有する正極活物質は、相対的に電気化学的安定性が低い。したがって、リチウム二次電池の充放電過程で正極活物質と電解質の副反応が発生してリチウム二次電池の安定性が低下する。したがって、増加された放電容量を提供する正極活物質を含むリチウム二次電池の安定性を改善させる方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、新たなリチウム電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によって、
正極;負極;及び前記正極と負極との間に介在される電解質;を含み、
前記正極は、下記化学式1で表される正極活物質を含み、
前記電解質は、リチウム塩;非水系溶媒;及び下記化学式2で表されるジアリル(diallyl)化合物を含むリチウム電池が提供される:
<化学式1>
LixNiyM1-yO2-zAz
前記化学式1において、
0.9≦x≦1.2、0.7≦y≦0.98、0≦z<0.2であり、
Mは、Al、Mg、Mn、Co、Fe、Cr、V、Ti、Cu、B、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、W及びBiからなる群から選択される1つ以上の元素であり;
Aは、酸化数-1、-2または、-3である元素であり;
【0006】
【0007】
前記化学式2において、
L1及びL2は、互いに独立して、単一結合、置換もしくは非置換のC1-C20アルキレン基及び置換もしくは非置換のC2-C20アルケニレン基のうちから選択され、
A1は、-NH-または、-Si(R1)(R2)-のうちから選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換の線形または分枝状のC1-C30アルキル基、置換もしくは非置換のC2-C20アルケニル基、置換もしくは非置換のC2-C20ビニル基、置換もしくは非置換のC2-C20アリル基及び置換もしくは非置換のC6-C60アリール基のうちから選択される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、前記ジアリル化合物を含む有機電解液を採用することによりリチウム電池の副反応が抑制され、ガス低減特性及び寿命特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な具現例によるリチウム電池の模式図である。
【
図2】充放電容量を電圧で微分して得られる微分容量(dQ/dV)と、電圧(V)の関係を示す微分容量曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な具現例によるリチウム電池用有機電解液及び前記有機電解液を採用したリチウム電池についてさらに詳細に説明する。
【0011】
一具現例によるリチウム電池は、正極;負極;及び前記正極と負極との間に介在される電解質;を含み、
【0012】
前記正極は、下記化学式1で表される正極活物質を含み、
【0013】
前記電解質は、リチウム塩;非水系溶媒;及び下記化学式2で表されるジアリル化合物を含む:
<化学式1>
LixNiyM1-yO2-zAz
前記化学式1において、
0.9≦x≦1.2、0.7≦y≦0.98、0≦z<0.2であり、
Mは、Al、Mg、Mn、Co、Fe、Cr、V、Ti、Cu、B、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、W及びBiからなる群から選択される1つ以上の元素であり;
Aは、酸化数-1、-2、または、-3である元素であり;
【0014】
【0015】
前記化学式2において、
L1及びL2は、互いに独立して、単一結合、置換もしくは非置換のC1-C20アルキレン基及び置換もしくは非置換のC2-C20アルケニレン基のうちから選択され、
A1は、-NH-または、-Si(R1)(R2)-のうちから選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換の線形または分枝状のC1-C30アルキル基、置換もしくは非置換のC2-C20アルケニル基、置換もしくは非置換のC2-C20ビニル基、置換もしくは非置換のC2-C20アリル基及び置換もしくは非置換のC6-C60アリール基のうちから選択される。
【0016】
前記化学式1で表される正極活物質のようにNiの含量が高いリチウム金属複合酸化物の場合、高出力及び高容量の電池を具現可能であるという長所にもかかわらず、正極からリチウム金属複合酸化物に含まれたNi3+などの金属陽イオンが電解質内に溶出されて正極の劣化が発生し、前記陽イオンが負極の不動態膜(SEI)と反応してSEI被膜を分解させて、負極活物質の一部が電解質に露出されて副反応が起こるなどの現象によって容量及び寿命特性が低下し、副反応によるガス発生量が上昇する問題点があった。
【0017】
前記リチウム電池は、それを解決するための構成として、前記化学式2で表されるジアリル化合物を含む電解質を含んで、Ni3+陽イオンによる副反応を最小化することで、ガス発生を減少させ、これにより、電池の寿命が向上することができる。
【0018】
具体的に、前記ジアリル化合物は、Ni3+陽イオンと高い親和性を有し、これを通じてNi3+陽イオンの副反応を抑制する効果があり、特に電池が高い電圧下で駆動される最中にも、Ni3+陽イオンとの高い親和性を保持し、これを通じてSEI被膜の分解を抑制する効果を有する。また、前記ジアリル化合物は、溶媒よりも先に金属系負極で還元分解され、還元分解された後の生成物の構造が安定した物質であって、より安定したSEI被膜を形成することができる。前記負極表面に形成されるSEI被膜は、副反応によるガス発生を減少させることで、電池の電気化学的特性を向上させうる。結果として、前記ジアリル化合物は、SEI被膜の安定性を向上させことにより、リチウム二次電池のガス発生を低め、電池性能を向上させうる効果を奏することができる。
【0019】
この際、前記電解質に含まれるジアリル化合物の含量は、前記電解質100重量部当たり5重量部以下で含まれるが、必ずしもその限りではなく、正極活物質から電解質内に溶出されたNi3+を安定化させ、ジアリル化合物によって負極表面に保護膜の形成がよくなされる含量範囲であれば、いかなるものでもよい。もし、ジアリル化合物の含量が5重量%を超えれば、ジアリル化合物の自体分解が大きく起こって、被膜抵抗を増加させ、生成されるCO2が悪影響を与えて、電池容量、保存安定性、及びサイクル特性を低下させる恐れがあって、望ましくない。
【0020】
一具現例によれば、前記ジアリル化合物の含量は、前記電解質100重量部当たり0.05重量部ないし5重量部であってもよい。例えば、前記ジアリル化合物の含量は、前記電解質100重量部当たり0.1重量部ないし3重量部、または0.2重量部ないし3重量部、または0.5重量部ないし2重量部であってもよい。
【0021】
もし、前記ジアリル化合物の含量が0.05重量部未満である場合、その含量が過度に少なくて、前記保護膜が形成されず、十分な抵抗減少効果が得難い。
【0022】
一具現例によれば、前記L1及びL2は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、ter-ブチレン基、ペンチレン基、2-ペンチレン基、3-ペンチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-メチルブチレン基、2-メチル-2-ブチレン基、3-メチルブチレン基、3-メチル-2-ブチレン基、ヘキシレン基、2-ヘキシレン基、3-ヘキシレン基、2-メチルペンチレン基、2-メチル-2-ペンチレン基、2-メチル-3-ペンチレン基、3-メチルペンチレン基、3-メチル-2-ペンチレン基、3-メチル-3-ペンチレン基、4-メチルペンチレン基、4-メチル-2-ペンチレン基、3-ジメチル-2-ブチレン基、3,3-ジメチルブチレン基、3,3-ジメチル-2-ブチレン基及び2-エチルブチレン基のうちから選択される。
【0023】
一具現例によれば、前記R1及びR2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の線形または分枝状のC1-C30アルキル基、置換もしくは非置換のC2-C20アルケニル基、置換もしくは非置換のC2-C20ビニル基、置換もしくは非置換のC2-C20アリル基及び置換もしくは非置換のC6-C60アリール基のうちから選択される。
【0024】
他の具現例によれば、前記R1及びR2は、それぞれ独立して、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基及びターフェニル基;及び
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基及びイソブチル基のうちから選択された少なくとも1つで置換された、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基及びターフェニル基;のうちから選択される。
【0025】
前記C1-C30アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基及びイソブチル基のうちから選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0026】
前記C2-C20ビニル基は、ビニル基(-CH=CH2)を含むC2-C20の置換基を意味する。
【0027】
前記C6-C60アリール基は、例えば、フェニル基、ビフェニル基及びターフェニル基のうちから選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0028】
一具現例によれば、前記ジアリル化合物は、下記化学式3または化学式4で表される化合物である:
【0029】
【0030】
前記化学式3及び4において、
n1及びn2は、それぞれ0ないし5の整数であり、
R11及びR12は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基及びイソブチル基のうちから選択される。
【0031】
例えば、前記ジアリル化合物は、下記化学式5または6で表される化合物である:
【0032】
【0033】
前記化学式2で表されるジアリル化合物は、アリル基に含まれた二重結合によって還元電位が高く、リチウム電池のガス発生が低減し、またA1モイエティによって還元分解された後の生成物の構造が安定化し、負極表面に安定した不動態膜(solidel ectrolyte interphase:SEI)を形成して負極を保護することができるので、リチウム電池の寿命特性が向上する。
【0034】
電解質は、リチウム塩を含む。リチウム塩は、有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、例えば、正極と負極とのリチウムイオンの移動を促進する役割を果たすことができる。
【0035】
電解質に含まれた前記リチウム塩の陰イオンは、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、C4F9SO3
-、ClO4
-、AlO2
-、AlCl4
-、CxF2x+1SO3
-(ここで、xは、自然数)、(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)N-(ここで、x及びyは、自然数)、及びハライドからなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0036】
前記電解質のうち、リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC2F5SO3、Li(FSO2)2N、LiC4F9SO3、LiN(SO2CF2CF3)2、及び化学式22ないし25で表される化合物のうちから選択された1つ以上を含んでもよい:
【0037】
【0038】
前記リチウム塩の濃度は、0.01Mないし5.0M、0.05Mないし5.0M、0.1Mないし5.0M、または、0.1Mないし2.0Mでもあるが、必ずしもその限りではなく、必要に応じて適切な濃度が使用されてもよい。
【0039】
溶媒非含有電解質でリチウム塩の含量は、前記溶媒非含有電解質100重量部当たり0.001重量部ないし30重量部であるが、必ずしもその範囲には限定されず、電解質が充放電過程で効果的にリチウムイオン及び/または電子を伝達することができる範囲であれば、いかなるものでもよい。
【0040】
溶媒含有電解質においてリチウム塩の含量は、100mMないし10Mである。例えば、前記含量は、100mMないし2Mである。例えば、前記含量は、500mMないし2Mである。しかし、前記含量が、必ずしもそのような範囲には限定されず、電解質が充放電過程で効果的にリチウムイオン及び/または電子を伝達することができる範囲であれば、いかなるものでもよい。
【0041】
一具現例によれば、前記電解質のうち、前記リチウム塩の濃度は、1.1Mないし2.5Mである。例えば、前記リチウム塩の濃度は、1.15Mないし2.2M、または、1.3Mないし2Mである。
【0042】
前記非水系溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、非量子性溶媒及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
カーボネート系溶媒として、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などが使用され、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート(Methyl Propionate:MP)、エチルプロピオネート(Ethyl Propionate)、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用される。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用され、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用され、ニトリル系溶媒としてアセトニトリル(AN)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリルなどが使用される。
【0044】
非量子性溶媒は、単独または1つ以上混合して使用することができ、1つ以上混合して使用する場合の混合比率は、電池性能によって適切に調節することができ、これは当業者に自明である。
【0045】
その他の溶媒として、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランなどが使用されるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野で有機溶媒として使用可能なものであれば、いかなるものでもよい。
【0046】
例えば、前記非水系溶媒は、鎖状カーボネート50体積%ないし95体積%、及び環状カーボネート5体積%ないし50体積%、鎖状カーボネート55体積%ないし95体積%、及び環状カーボネート5体積%ないし45体積%、鎖状カーボネート60体積%ないし95体積%、及び環状カーボネート5体積%ないし40体積%、鎖状カーボネート65体積%ないし95体積%、及び環状カーボネート5体積%ないし35体積%、または鎖状カーボネート70体積%ないし95体積%、及び環状カーボネート5体積%ないし30体積%を含んでもよい。例えば、非水系溶媒は、3種以上の非水系溶媒の混合溶媒である。
【0047】
場合によって、前記非水系溶媒に、フッ化エチレンカーボネート(Fluoro-Ethylene Carbonate)(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、リン(P)含有化合物、硫黄(S)含有化合物などをさらに含んでもよい。
【0048】
例えば、前記非水系溶媒は、フッ化エチレンカーボネート(FEC)を含んでもよい。例えば、前記リチウム二次電池は、前記FECを前記非水系溶媒の全体積を基準に0.1体積%ないし10体積%で含んでもよい。例えば、前記リチウム二次電池は、前記FECを前記非水系溶媒の全体積を基準に0.5体積%ないし7体積%含んでもよい。例えば、前記リチウム二次電池は、前記FECを前記非水系溶媒の全体積を基準に1体積%ないし7体積%含んでもよい。例えば、前記リチウム二次電池は、前記FECを前記非水系溶媒の全体積を基準に2体積%ないし7体積%含んでもよい。前記非水系溶媒のうち、前記FECが前記含量範囲として含まれる場合、リチウムイオンの拡散速度を阻害しない効果的なSEI被膜を迅速に形成することができる。
【0049】
一具現例によれば、前記非水系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピオネート(Methyl Propionate:MP)、エチルプロピオネート(Ethyl Propionate)、プロピルプロピオネート(Propyl Propionate:PP)テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
前記電解質は、炭素-炭素単一または多重結合を含むカーボネート、炭素-炭素単一または多重結合を含むカルボン酸無水物またはこれらの混合物を含んでもよい。前記多重結合は、二重結合または三重結合であり、前記カーボネート及びカルボン酸無水物は、線状または環状である。
【0051】
一具現例によれば、前記電解質は、環状カーボネート化合物、環状酸無水物化合物、リン(P)含有化合物、硫黄(S)含有化合物またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0052】
一具現例によれば、前記電解質は、環状カーボネート化合物、環状酸無水物化合物、またはこれらの混合物を含み、
前記ジアリル化合物の還元電位が前記環状カーボネート化合物、または前記環状酸無水物化合物の還元電位よりも高いものでもある。
【0053】
また、一具現例によれば、前記電解質100重量部当たり、前記環状カーボネート化合物、環状酸無水物化合物、またはこれらの混合物の含量は、0.1重量部ないし30重量部であってよく、例えば、0.1重量部ないし2重量部であってよい。
【0054】
前記環状カーボネート化合物は、例えば、フッ化エチレンカーボネート(fluoro-ethylene carbonate:FEC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate:VC)及びビニルエチレンカーボネート(vinyl ethylene carbonate:VEC)のうちから選択された1つ以上であってもよい。
【0055】
前記環状酸無水物化合物は、例えば、無水マレイン酸及び無水コハク酸のうちから選択された1つ以上であってもよい。
【0056】
前記リン含有化合物は、例えば、ホスフィン化合物、ホスフェート化合物及びホスファイト化合物のうちから選択された1つ以上であってもよい。
【0057】
前記ホスフィン化合物は、具体的に、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)またはトリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン(tris(4-fluorophenyl)phosphine)、トリス(2,4-ジフルオロフェニル)ホスフィン(tris(2,4-difluorophenyl)phosphine)、トリス(パーフルオロフェニル)ホスフィン(tris(perfluorophenyl)phosphine)であるが、それらに限定されるものではない。前記ホスフェート化合物は、具体的に、トリフェニルホスフェート(Triphenylphosphate:TPPa)、トリメチルホスフェート(Trimethyl phosphate:TMPa)であるが、それらに限定されるものではない。前記ホスファイト化合物は、具体的に、トリエチルホスファイト(TEPi)、トリメチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリフェニルホスファイトであるが、それらに限定されるものではない。
【0058】
前記硫黄含有化合物は、例えば、スルホン化合物、スルホネート化合物、スルトン化合物及びジスルホネート化合物のうちから選択された1つ以上であってもよい。
【0059】
前記スルホン化合物は、具体的に、エチルメチルスルホン、ジビニルスルホンまたはテトラメチレンスルホンであるが、それらに限定されるものではない。前記スルホネート化合物は、具体的に、メチルメタンスルホネート、エチルメタンスルホネート、またはジアリルスルホネートであるが、それらに限定されるものではない。前記ジスルホネート化合物は、具体的に、メチレンメタンジスルホネート(methylene methane disulfonate:MMDS)またはブスルファン(busulfan)であるが、それらに限定されるものではない。前記スルトン化合物は、具体的に、フルオロプロパンスルトン(fluoropropane sultone:FPS)であるが、それらに限定されるものではない。
【0060】
一具現例によれば、前記リチウム電池のうち、電解質は、1g/Ahないし3g/Ah含まれる。
【0061】
前記正極は、前記化学式1で表される正極活物質を含む。
【0062】
例えば、前記化学式1において、Aは、ハロゲン、S及びNのうち、1つであるが、それらに限定されるものではない。
【0063】
前記化学式1において、yは、正極活物質内のNiの含量を示す。一具現例によれば、前記化学式1のうち、yは、0.8≦y≦0.98を満たす。
【0064】
また、一具現例によれば、前記化学式1において、Mは、Co、Ni及びMnのうち、1つ以上の元素である。
【0065】
例えば、前記正極は、Li1.02Ni0.80Co0.15Mn0.05O2、Li1.02Ni0.85Co0.1Mn0.05O2、Li1.02Ni0.88Co0.08Mn0.04O2、Li1.02Ni0.88Co0.10Mn0.02O2、Li1.02Ni0.91Co0.06Mn0.03O2、LiNi0.94Co0.04Mn0.02O2、Li1.02Ni0.80Co0.15Al0.05O2、Li1.02Ni0.85Co0.1Al0.05O2、Li1.02Ni0.88Co0.08Al0.04O2、Li1.02Ni0.88Co0.10Al0.02O2、Li1.02Ni0.91Co0.06Al0.03O2及びLiNi0.94Co0.04Al0.02O2のうちから選択された1つ以上を含んでもよい。
【0066】
一具現例によれば、前記化学式1のうち、yは、0.88≦y≦0.98を満たす。
【0067】
例えば、前記正極活物質が下記化学式3または化学式4で表示される:
<化学式3>
LixNiyCo1-y-zAlzO2
<化学式4>
LixNiyCo1-y-zMnzO2
前記化学式3及び化学式4において、0.9≦x≦1.2、0.88≦y≦0.98、0<z<0.1、0<1-y-z<0.2である。
【0068】
例えば、前記正極は、Li1.02Ni0.88Co0.08Mn0.04O2、Li1.02Ni0.88Co0.10Mn0.02O2、Li1.02Ni0.91Co0.06Mn0.03O2、LiNi0.94Co0.04Mn0.02O2、Li1.02Ni0.88Co0.08Al0.04O2、Li1.02Ni0.88Co0.10Al0.02O2、Li1.02Ni0.91Co0.06Al0.03O2、LiNi0.88Co0.10Mn0.02O2、LiNi0.88Co0.08Mn0.04O2、及びLiNi0.94Co0.04Al0.02O2のうちから選択された1つ以上を含んでもよい。
【0069】
前述したように、Ni含量の高いリチウム金属酸化物の場合、高容量の電池を具現することができるという長所にもかかわらず、従来の構成による電池では Ni3+陽イオンの量が増えることにより、寿命特性が良くない問題点があった。
【0070】
また、後述するように、リチウムと合金可能な金属を含む負極活物質または炭素系負極活物質を含むリチウム電池は、高温での触媒作用によるガス発生と、それによる寿命特性低下の問題点があった。
【0071】
前記のように、FEC、VC、VEC、MA、SA、リン(P)含有化合物または硫黄(S)含有化合物を前記範囲で含む場合には、前記物質の化学反応結果物を含む不動態膜、すなわち、SEI被膜を負極表面の一部または全部に形成させることができる。この際、前記ジアリル化合物は、アリル基に含まれた二重結合によって還元されることで、不動態膜のうち、FECなどの化合物を保護し、堅固なSEI被膜を形成することができ、高温保存時にガス発生を防止可能なので、電池の安定性及び性能向上を具現することができる。
【0072】
また、前記正極は、前述した正極活物質以外にも、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物、及びリチウムマンガン酸化物からなる群から選択された1つ以上をさらに含むことができるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質をさらに含んでもよい。
【0073】
前記負極は、負極活物質を含み、前記負極活物質がシリコン系化合物、炭素系化合物、シリコン系化合物と炭素系化合物の複合体、及びシリコン酸化物(SiOx1、0<x1<2)のうちから選択された1つ以上を含んでもよい。または、例えば、前記負極は、リチウムと合金可能な金属を含む負極活物質、シリコン系負極活物質及び/または炭素系負極活物質を含んでもよい。
【0074】
例えば、前記シリコン系化合物は、シリコン粒子を含み、前記シリコン粒子の平均径は、200nm以下である。
【0075】
例えば、前記炭素系化合物は、グラファイトを含んでもよい。
【0076】
例えば、シリコン系化合物と炭素系物質の複合体は、シリコンナノ粒子が炭素系化合物の上部に配置された構造を有する複合体、シリコン粒子が炭素系化合物表面と内部に含まれた複合体、シリコン粒子が炭素系化合物にコーティングされて炭素系化合物内部に含まれた複合体である。シリコン系化合物と炭素系物質の複合体は、炭素系化合物粒子上に、平均粒径約200nm以下のシリコンナノ粒子を分散した後、カーボンコーティングして得られる活物質、シリコン粒子がグラファイト上部及び内部に存在する活物質などである。シリコン系化合物と炭素系化合物の複合体の2次粒子平均粒径は、5μmないし20μmであり、シリコンナノ粒子の平均粒径は、200nm以下、150nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下である。例えば、シリコンナノ粒子の平均粒径は、100nmないし150nmである。
【0077】
例えば、前記シリコン系化合物と炭素系化合物の複合体の容量は、300mAh/gないし700mAh/gである。例えば、前記シリコン系化合物と炭素系化合物の複合体の容量は、400mAh/gないし600mAh/gである。
【0078】
前記リチウム電池の25℃で200サイクル充放電後の容量維持率は、75%以上、例えば、82%以上である。例えば、前記リチウム電池の負極がグラファイトである場合、前記リチウム電池の25℃で200サイクル充放電後の容量維持率は、80%以上である。
【0079】
前記リチウム電池の25℃で200サイクル充放電後、DCIR上昇率は、180%以下である。例えば、前記リチウム電池の負極がグラファイトである場合、前記リチウム電池の25℃で200サイクル充放電後、DCIR上昇率は、150%以下、例えば、120%以下である。
【0080】
前記リチウム電池の電池単位体積当たりセルエネルギー密度が500Wh/L以上である。前記リチウム電池が500Wh/L以上の高いエネルギー密度を提供することにより、高い出力を提供することができる。
【0081】
前記リチウム電池は、その形態が特に制限されず、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムサルファ電池などを含む。
【0082】
一具現例によるリチウム二次電池は、次のような方法によって製造される。
【0083】
まず、正極が準備される。
【0084】
例えば、正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が正極集電体上に直接コーティングされて正極が製造される。一方、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて正極が製造される。前記正極は、前記に挙げられた形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもある。
【0085】
前記正極活物質は、上述した化学式1で表される正極活物質以外に一般的なリチウム含有金属酸化物を共に使用することができる。リチウム含有金属酸化物は、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びこれらの組合わせで選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち、2種以上のものを使用することができる。
【0086】
例えば、LiaA1-bBbD2(前記式において、0.90≦a≦1.8、及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bBbO2-cDc(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bBbO4-cDc(前記式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobBcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αF2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αF2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiIO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうち、いずれか1つで表現される化合物をさらに含んでもよい。
【0087】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはこれらの組合わせであり;Eは、Co、Mn、またはこれらの組合わせであり;Fは、F、S、P、またはこれらの組合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mn、またはこれらの組合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組合わせである。
【0088】
例えば、LiCoO2、LiMnxO2x(x=1または2)、LiNi1-xMnxO2x(0<x<1)、LiNi1-x-yCoxMnyO2(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、1-x-y>0.5)、LiFePO4などである。
【0089】
もちろん、前記化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または、前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して使用することもできる。そのコーティング層は、コーティング元素のオキサイド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含んでもよい。これらのコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物に、かような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレイコーティング、浸漬法など)でコーティング可能であれば、如何なるコーティング方法を使用してもよく、これは、当業者には明白なものなので、詳細な説明は省略する。
【0090】
前記正極活物質組成物には、導電材、充填剤などがさらに付加されてもよい。
【0091】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物全体重量を基準に1重量%ないし30重量%添加される。かような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発させずとも、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック;炭素纎維や金属纎維などの導電性纎維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用される。
【0092】
前記バインダとしては、活物質と導電剤などの結合と、集電体に対する活物質結合に助力する成分として、通常、正極活物質組成物の総重量を基準にして、1ないし30重量%添加される。かようなバインダの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、ポリビニリデンクロリド、ポリベンジミダゾール、ポリイミド、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアニリン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。前記充填剤は、正極の膨脹を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発しない、纎維状材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素纎維などの纎維状物質が使用される。
【0093】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されるが、これらに限定されず、当該技術分野で使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。溶媒の含量は、例えば、正極活物質100重量部を基準に10ないし100重量部である。溶媒の含量が、前記範囲であるとき、活物質層を形成することが容易である。
【0094】
前記正極活物質、導電材、充填剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電材、充填剤、バインダ及び溶媒中の1つ以上が省略される。
【0095】
例えば、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として使用し、PVdFまたPVdF共重合体をバインダとして使用し、カーボンブラック、アセチレンブラックを導電剤として使用することができる。例えば、正極活物質94重量%、バインダ3重量%、導電剤3重量%を粉末状態で混合した後、固形粉が70重量%になるように、NMPを入れてスラリーを作った後、そのスラリーを、コーティング、乾燥、圧延して正極を作製することができる。
【0096】
前記正極集電体は、一般的に3μm~50μmの厚さに作る。かような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用される。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0097】
例えば、前記正極は、正極集電体上に正極活物質を塗布、乾燥及びプレッシングして製造され、前述した正極活物質以外にも、必要によって、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティング及び乾燥されて正極板が製造される。一方、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて正極板が製造される。
【0098】
例えば、製造された正極活物質組成物のローディングレベル(loading level)は、30mg/cm2以上であり、具体的に35mg/cm2以上であり、さらに具体的に40mg/cm2以上である。また、電極密度は、3g/cc以上、具体的に3.5g/cc以上である。
【0099】
一具現例において、高いセルエネルギー密度のため、前記製造された正極活物質組成物のローディングレベルは、35mg/cm2以上ないし50mg/cm2以下であり、電極密度は、3.5g/cc以上4.2g/cc以下である。
【0100】
他の具現例において、前記正極板の両面上に、前記正極活物質組成物がローディングレベル37mg/cm2、電極密度3.6g/ccで両面コーティングされる。
【0101】
前記のような正極活物質のローディングレベル及び電極密度の範囲を満たす場合、そのような正極活物質を含む電池は、500wh/L以上の高いセルエネルギー密度を発揮することができる。例えば、前記電池は、500wh/L以上ないし900wh/L以下のセルエネルギー密度を発揮することができる。
【0102】
次いで、負極が準備される。
【0103】
例えば、負極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒を混合して負極活物質組成物が準備される。
【0104】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥及びプレッシングして製造され、前述した負極活物質以外にも、必要によって、バインダ及び溶媒が混合された負極活物質組成物が準備される。
【0105】
例えば、前記負極活物質組成物が負極集電体上に直接コーティング及び乾燥されて負極が製造される。一方、前記負極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて負極版が製造される。
【0106】
負極活物質は、例えば、シリコン系化合物、シリコン酸化物(SiOx(0<x<2)、シリコン系化合物と炭素系物質の複合体であってもよい。ここで、シリコン粒子のサイズ(例えば、平均粒径)は、200nm未満、例えば、10ないし150nmである。用語「サイズ」は、シリコン粒子が球状である場合には、平均粒径を示し、シリコン粒子が非球状である場合には、平均長軸長を示す。
【0107】
シリコン粒子のサイズが前記範囲であるとき、寿命特性に優れ、一具現例による電解質を使用した場合、リチウム二次電池の寿命がさらに改善される。
【0108】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または纎維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛であり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどであってもよい。
【0109】
シリコン系化合物と炭素系物質の複合体は、例えば、シリコン粒子がグラファイト上部に配置された構造を有する複合体またはシリコン粒子がグラファイト表面と内部に含まれた複合体を有することができる。前記複合体は、例えば、グラファイト粒子上に平均粒径約200nm以下、例えば、100ないし200nm、具体的に150nmであるSi粒子を分散した後、カーボンコーティングした活物質またはシリコン(Si)粒子がグラファイト上部及び内部に存在する活物質を有することができる。かような複合体は、商品名SCN1(Siparticle on Graphite)またはSCN2(Siparticle inside as well as on Graphite)に入手可能である。SCN1は、グラファイト粒子上に平均粒径約150nmであるSi粒子を分散した後、カーボンコーティングした活物質である。そして、SCN2は、平均粒径約150nmであるSi粒子が、グラファイト上部及び内部に存在する活物質である。
【0110】
前記負極活物質は、上述した負極活物質以外に当該技術分野でリチウム二次電池の負極活物質として使用可能なものであれば、共に使用することも可能である。例えば、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、遷移金属酸化物希土類元素またはこれらの組合元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組合元素であり、Snではない)などであってもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはこれらの組合わせであってもよい。
【0111】
例えば、前記負極活物質は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などである。
【0112】
前記負極活物質組成物には、導電材、充填剤などがさらに付け加えられる。
【0113】
一方、前記負極活物質組成物において、バインダ、溶媒、導電材及び充填剤は、前記正極活物質組成物の場合と同じものを使用することができる。
【0114】
但し、負極活物質組成物では、水を溶媒として使用することができる。例えば、水を溶媒として使用し、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリレート系重合体、メタクリレート系重合体をバインダとして使用し、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトを導電剤として使用することができる。
【0115】
前記負極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム二次電池で通常使用するレベルである。リチウム二次電池の用途及び構成によって、前記導電剤、バインダ及び溶媒中の1つ以上が省略される。
【0116】
例えば、負極活物質94重量%、バインダ3重量%、導電剤3重量%を粉末状態で混合した後、固形粉が約70重量%になるように、水を入れてスラリーを作った後、このスラリーをコーティング、乾燥、圧延して負極極板を作製することができる。
【0117】
前記負極集電体は、一般に3μm~50μmの厚さに作られる。かような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させずに、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などに表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用される。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布など多様な形態として使用される。
【0118】
前記製造された負極活物質組成物のローディングレベルは、前記正極活物質組成物のローディングレベルによって設定される。
【0119】
例えば、前記負極活物質組成物のg当たり容量によって12mg/cm2以上であり、具体的に15mg/cm2以上である。また、電極密度は、1.5g/cc以上、具体的に1.6g/cc以上である。
【0120】
一具現例において、高いセルエネルギー密度のために、前記製造された負極活物質組成物のローディングレベルは、15mg/cm2以上ないし25mg/cm2以下であり、電極密度は、1.6g/cc以上2.3g/cc以下である。
【0121】
前記のような負極活物質のローディングレベル及び電極密度の範囲を満たす場合、かような負極活物質を含む電池は、500wh/L、または600wh/L以上の高いセルエネルギー密度を発揮することができる。
【0122】
次いで、前記正極と負極との間に挿入される分離膜が準備される。
【0123】
前記分離膜は、リチウム電池で通常使用されるものであれば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動について低抵抗でありつつ、電解液含湿能に優れるものが使用される。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組合物のうちから選択されたものであって、不織布または織布形態であってもよい。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻取可能な分離膜が使用され、リチウムイオンポリマー電池には、電解質含浸能に優れた分離膜が使用される。例えば、前記分離膜は、下記方法によって製造される。
【0124】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合して分離膜組成物が準備される。前記分離膜組成物が電極上に直接コーティング及び乾燥させて分離膜が形成される。または、前記分離膜組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥させた後、前記支持体から剥離させた分離膜フィルムが電極上にラミネーションされて分離膜が形成される。
【0125】
前記分離膜製造に使用される高分子樹脂は、特に限定されず、電極板の結合材に使用される物質がいずれも使用される。例えば、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはこれらの混合物などが使用される。
【0126】
次いで、上述した電解質が準備される。
【0127】
一具現例によれば、電解質は、上述した電解質以外に非水電解液、固体電解質、無機固体電解質をさらに含んでもよい。
【0128】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用される。
【0129】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などが使用される。
【0130】
図1に示されたように、前記リチウム二次電池100は、正極114、負極112及び分離膜113を含む。上述した正極114、負極112及び分離膜113がワインディングされるか、折り畳まれて電池ケース120に収容される。次いで、前記電池ケース120に電解質が注入されてキャップアセンブリー140に密封されてリチウム二次電池100が完成される。前記電池ケース120は、円筒状、角形、薄膜状などであってもよい。例えば、前記リチウム二次電池100は、大型薄膜状電池である。前記リチウム二次電池100は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0131】
前記正極及び負極の間に分離膜が配置されて、電池構造体が形成される。前記電池構造体がバイセル構造で積層された後、電解質に含浸され、得られた結果物がパウチに収容されて、密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0132】
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、かような電池パックが高容量及び高出力が要求される全機器に使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使用される。
【0133】
一具現例によるリチウム二次電池は、一般的なニッケルリッチリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として採用したリチウム二次電池と比べて、DCIR上昇率が顕著に減少し、優秀な電池特性を発揮することができる。
【0134】
前記正極、負極、電解質を適用したリチウム二次電池の作動電圧は、例えば、下限は2.5-2.8Vないし上限は4.1-4.4Vであり、エネルギー密度は、500wh/L以上に優秀である。
【0135】
また、前記リチウム二次電池は、例えば、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール;電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力保存用システムなどを挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0136】
本明細書でアルキルは、完全飽和された分枝状または非分枝状(または直鎖状または線形状)炭化水素をいう。
【0137】
「アルキル」の非制限的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチルなどを挙げられる。
【0138】
「アルキル」のうち、1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC1-C20のアルキル基(例:CCF3、CHCF2、CH2F、CCl3など)、C1-C20のアルコキシ基、C2-C20のアルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾーン、カルボキシル基やその塩、スルホニル基、スルファモイル(sulfamoyl)基、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、またはC1-C20のアルキル基、C2-C20アルケニル基、C2-C20アルキニル基、C1-C20のヘテロアルキル基、C6-C20のアリール基、C6-C20のアリールアルキル基、C6-C20のヘテロアリール基、C7-C20のヘテロアリールアルキル基、C6-C20のヘテロアリールオキシ基、C6-C20のヘテロアリールオキシアルキル基またはC6-C20のヘテロアリールアルキル基で置換され得る。なお、「アルキレン」及び「アルケニレン」も、上記「アルキル」の置換基と同じ置換基で置換され得る。
【0139】
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。
【0140】
「アルコキシ」は、「アルキル-O-」を示し、アルキルは、上述した通りである。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、2-プロポキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。前記アルコキシのうち、1つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同じ置換基で置換され得る。
【0141】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する分枝状または非分枝状炭化水素を言う。アルケニル基の非制限的な例としては、ビニル、アリル、ブテニル、プロペニル、イソブテニルなどが挙げられ、前記アルケニルのうち、1つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同じ置換基で置換され得る。
【0142】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する分枝状または非分枝状炭化水素を言う。前記「アルキニル」の非制限的な例としては、エチニル、ブチニル、イソブチニル、イソプロピニルなどが挙げられる。
【0143】
「アルキニル」のうち、1つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同じ置換基で置換される。「アリール」は、芳香族環が1つ以上の炭素環に選択的に融合された基も含む。「アリール」の非制限的な例として、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルなどがある。また「アリール」基のうち、1つ以上の水素原子は、上述したアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0144】
「ヘテロアリール」は、N、O、PまたはSのうちから選択された1つ以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素であるモノサイクリックまたはバイサイクリック有機基を意味する。前記ヘテロアリール基は、例えば、1-5個のヘテロ原子を含み、5-10環員(ring member)を含んでもよい。前記SまたはNは、酸化されて多用な酸化状態を有することができる。
【0145】
ヘテロアリールの例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル基、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、イソチアゾール-3-イル、イソチアゾール-4-イル、イソチアゾール-5-イル、オキサゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、オキサゾール-5-イル、イソオキサゾール-3-イル、イソオキサゾール-4-イル、イソオキサゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イル、テトラゾリル、ピリド-2-イル、ピリド-3-イル、2-ピラジン-2イル、ピラジン-4-イル、ピラジン-5-イル、2-ピリミジン-2-イル、4-ピリミジン-2-イル、または5-ピリミジン-2-イルを有することができる。
【0146】
用語「ヘテロアリール」は、ヘテロ芳香族環が1つ以上のアリール、脂環族(cyclyaliphatic)、またはヘテロサイクルに選択的に融合された場合を含む。
【0147】
以下の実施例及び比較例を通じて本発明がさらに詳細に説明される。但し、実施例は、本発明を例示するためのものであって、それらによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0148】
実施例1ないし5及び比較例1ないし9
下記表1に記載の構成の通り、リチウム電池を製造した。各構成は、具体的に下記のように製造した。
【0149】
(正極1の製造)
正極活物質としてLiNi0.88Co0.10Mn0.02O2、導電材としてカーボンブラック、バインダとしてPVdFを使用し、前記正極活物質、導電材、バインダを97.7:1:1.1の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に入れてミキシングした後、15μm厚さのアルミニウムホイルに一面当り33mg/cm2で分散させて両面コーティングし、乾燥後圧延して、電極密度が3.6g/ccになるように正極1を製造した。
【0150】
(正極2の製造)
正極活物質としてLiNi0.88Co0.08Mn0.04O2、導電材としてカーボンブラック、バインダとしてPVdFを使用し、前記正極活物質、導電材、バインダを97.7:1:1.1の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に入れてミキシングした後、12μm厚さのアルミニウムホイルに一面当り33.58mg/cm2で分散させて両面コーティングし、乾燥後圧延して、電極密度が3.6g/ccになるように正極2を製造した。
【0151】
(負極1の製造)
負極活物質として、SSC-G(SSC(約100nmサイズのSiを含む2次粒子を作った後、CVD及びピッチでカーボンコーティングして、1300mAh/gの容量を発揮するように設計した活物質):グラファイト=14.7:85:3)とバインダ(AGバインダ)を96:4の重量比でNMPに入れてミキシングした後、8μm厚さの銅ホイルに一面当り15.5mg/cm2で分散させて両面コーティングし、乾燥後圧延して、電極密度が1.65g/ccになるように負極1を製造した。
【0152】
(負極2の製造)
SCN2(約100nmサイズのSiを含む2次粒子を作った後、カーボンコーティングして、1300mAh/gの容量を発揮するように設計した活物質)、グラファイト、CMC、SBRを13:85:1.5:0.5の重量比でNMPに入れてミキシングした後、15μm厚さの銅ホイルに一面当り17.25mg/cm2で分散させて両面コーティングし、乾燥後圧延して、電極密度が1.65g/ccになるように負極を製造した。
【0153】
(電解質の製造)
溶媒1としては、1.15M LiPF6、FEC/EC/EMC/DMC(体積比:3/10/47/40)、溶媒2としては、1.15M LiPF6、FEC/EC/EMC/DMC(体積比:5/20/35/40)を利用し、添加剤として下記表1に記載の添加剤を添加して、電解質を製造した。
DADPS: Diallyldiphenylsilane
DAA: Diallylamine
TAA: Triallylamine
TEA: Triethylamine
BR2: Fluorodimethyl(phenyl)silane
BR8: Fluoro(methyl)diphenylsilane
FTPhSi: fluorotriphenylsilane
HQC: 3-Hydroxy-2-quinoxalinecarboxylic acid
【0154】
(リチウム電池の組立)
前記正極と負極との間にポリプロピレンで製造された16μ厚さの分離膜を介在し、前記電解質を注入してリチウム電池を製造した。
【0155】
評価例1:ガス発生量及び直流内部抵抗特性評価
実施例1ないし5及び比較例1ないし9でそれぞれ製造されたリチウム電池を、25℃で0.2C rateの電流で電圧が3.6V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで、0.2 rateの定電流で放電した(化成段階、1stサイクル)。次いで、0.2C rateの電流で電圧が4.25V(vs.Li)に至るまで定電流充電した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.2 rateの定電流で放電した(化成段階2ndサイクル)。3番目に、0.5C rateの電流で電圧が4.25V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.25Vを保持しつつ0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.2 rateの定電流で放電した。四番目に、化成工程は、三番目工程の反復である(0.5C充電/0.2C放電)。最後に、0.2C rateで4.25Vまで定電流充電し、定電圧モードで4.25V保持しつつ0.05C rateの電流でカットオフする。
【0156】
上記で1C充電とは、電池の容量(mAh)が1時間の充電によって到達されるように充電することを意味する。同様に、1C放電とは、電池の容量(mAh)が1時間の放電によっていずれも消耗されるように放電することを意味する。
【0157】
前記化成段階を経たリチウム電池を60℃で10日間放置した後のガス発生量及び直流内部抵抗特性を評価して下記表1に示す。
【0158】
【0159】
前記表1を参照して、実施例1ないし5のリチウム電池は、比較例1ないし9のリチウム電池に比べてガス発生量が顕著に減少し、実質的に同等なレベルであるか、さらに減少した直流内部抵抗上昇率を示し、安定性が優秀であることを確認した。
【0160】
評価例2:dQ/dV特性確認
実施例1、2、比較例1及び2でそれぞれ製造されたリチウム電池の初期充電時の充電グラフから得られた微分容量曲線を
図2に示す。微分容量曲線とは、充放電容量を電圧で微分して得られる微分容量(dQ/dV)と、電圧(V)の関係を示すグラフである。すなわち、微分容量曲線は、単位電圧当たりのセル容量の変化量を示す。
【0161】
図2を参照して、実施例1及び2のリチウム電池の場合にそれぞれDADPS及びDAAが溶媒分子よりも先に分解されるか、溶媒(例えば、FEC)の分解を減少させることが分かった。具体的に、添加剤として、DADPSを用いた実施例1の場合、添加剤を利用していない比較例1の場合に比べて、dQ/dVピークが小さく示されるので、それを通じて負極における溶媒分子の分解が防止される。これとは異なって、添加剤としてTAAを用いた比較例2の場合には、dQ/dVピークがさらに大きく示され、SEIが劣化されることが分かった。また、添加剤としてDAAを用いた実施例2の場合、添加剤を利用していない比較例1に比べて、dQ/dVピークの位置が移動して、溶媒分子よりもDAAが先に分解された。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明のリチウム電池は、リチウム二次電池の安定性を改善させた新たなリチウム電池関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0163】
100 リチウム電池
112 負極
113 セパレータ
114 正極セパレータ
120 電池ケース
140 キャップアセンブリー